説明

タンディッシュ上ノズル

【課題】 鋳造速度の変更が激しくても、しかも、ビレット鋳片やブルーム鋳片のように鋳片横断面が小さい場合であっても、安定してタンディッシュから鋳型への溶鋼供給流路におけるアルミナ付着を防止することのできる、不活性ガス吹き込み用のタンディッシュ上ノズルを提供する。
【解決手段】 上記課題は、上下2段の位置から内孔25内に不活性ガスを吹き込む上ノズルにおいて、上ノズル3の全長をLとしたときに、上段の吹き込み位置20が上端からL/4の範囲内であり、且つ、下段の吹き込み位置22が下端からL/4の範囲内であるタンディッシュ上ノズル3によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼の連続鋳造において、タンディッシュから鋳型への溶鋼供給流路の一部を構成する、タンディッシュ底に配置される上ノズルに関し、詳しくはガス吹き込み機能を有する上ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
Alで脱酸処理されるAlキルド溶鋼には、脱酸生成物である微細なアルミナ(Al23 )粒子が残留する。このAlキルド溶鋼を連続鋳造すると、タンディッシュから鋳型への溶鋼供給流路である浸漬ノズルの内壁に付着・堆積して、浸漬ノズルの閉塞が発生する。浸漬ノズルが閉塞すると、鋳造作業上及び鋳片品質上で様々な問題が発生する。例えば、鋳造速度を低下せざるを得ず、生産性が落ちるのみならず、甚だしい場合には鋳込み作業そのものの中止を余儀なくされる。また、浸漬ノズル内壁に堆積したアルミナが突然剥離し、大きなアルミナ粒子となって鋳型内に排出され、これが凝固シェルに捕捉された場合には製品欠陥となり、更には、この部分の凝固が遅れて溶鋼が流出し、ブレークアウトにつながることさえもある。
【0003】
そこで、このアルミナ付着防止対策の一つとして、タンディッシュから鋳型への溶鋼供給流路の一部を構成する上ノズルから、Arガスなどの不活性ガスを溶鋼供給流路内に吹き込むことが行われてきた。溶鋼供給流路に不活性ガスを吹き込むことで、溶鋼中に懸濁するアルミナ粒子がガス気泡により捕捉されて鋳型内へ流出する、或いは、ガス吹き込みによる乱流により溶鋼供給流路の内壁面が強制的に洗浄されて付着したアルミナが洗い流されるなどして、アルミナ付着が防止される。
【0004】
例えば、特許文献1には、上ノズルの上下2段の位置からArガスを吹き込むことのできる上ノズルを用い、上段からのArガス吹き込み量を下段からの吹き込み量の1.2倍以上として、高速鋳造時のアルミナ付着を防止する方法が開示されている。特許文献2には、上ノズルの全面或いは一部から不活性ガスを吹き込むとともに、浸漬ノズルで不活性ガスを吸引して、浸漬ノズルから鋳型内に流出する不活性ガスの総流量を調整し、不活性ガスによる鋳型内湯面変動を防止すると同時に、浸漬ノズルのアルミナ付着を防止する方法が開示されている。また、特許文献3には、上下2段の位置から不活性ガスを吹き込むことのできる上ノズルにおいて、ガス吹き込み部であるポーラス煉瓦の気孔率を所定の範囲に調製して、吹き込まれるガス気泡径を20μm以下とし、アルミナ付着防止効果を向上させた上ノズルが開示されている。
【特許文献1】特開平2−37947号公報
【特許文献2】特開2000−301300号公報
【特許文献3】特開2004−9079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に例示されるように、上ノズルからArガスなどの不活性ガスを溶鋼供給流路に吹き込むことで、浸漬ノズルを含めた溶鋼供給流路におけるアルミナの付着は抑制された。
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に開示された方法を用いても、鋳造速度の変更幅が大きい場合、つまり溶鋼供給流路における溶鋼流速が大きく変化する場合には、溶鋼流速の低速領域では吹き込まれたガスがタンディッシュ側に浮上したりして、アルミナ付着防止効果が発揮されないという問題が発生した。また、ガス吹き込み位置を上ノズルの下部に集中させてガス気泡を鋳型側に流出させようとすると、鋳造速度が低下した場合もガス気泡は鋳型内に流入し、鋳型内の湯面変動が激しくなるという問題も発生した。ビレット鋳片やブルーム鋳片のように鋳片横断面が小さい場合には、本来、スラブ鋳片に比べて単位時間当たりの溶鋼流量が少ないことから溶鋼供給流路における溶鋼流速が遅く、上記の鋳造速度の影響を特に受けやすいという問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鋳造速度の変更が激しくても、しかも、ビレット鋳片やブルーム鋳片のように鋳片横断面が小さい場合であっても、安定してタンディッシュから鋳型への溶鋼供給流路におけるアルミナ付着を防止することのできる、不活性ガス吹き込み用のタンディッシュ上ノズルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究・検討した。その結果、前記特許文献1〜3のうちで、上ノズルの上下2段からガスを吹き込むことのできる特許文献1及び特許文献3に開示された上ノズルは、それぞれの場所から任意の流量で不活性ガスを吹き込むことができることから、上記課題を解決するのに適した上ノズルであるとの知見を得た。但し、吹き込み位置を2段に分割するのみでは上記課題は解決されず、上記課題を解決するためには、それぞれの吹き込み位置を特定することが必要であるとの知見を得た。
【0009】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、第1の発明に係るタンディッシュ上ノズルは、上下2段の位置から内孔内に不活性ガスを吹き込む上ノズルにおいて、上ノズルの全長をLとしたときに、上段の吹き込み位置が上端からL/4の範囲内であり、且つ、下段の吹き込み位置が下端からL/4の範囲内であることを特徴とするものである。
【0010】
第2の発明に係るタンディッシュ上ノズルは、第1の発明において、前記上ノズルは、ブルーム鋳片の連続鋳造の際に使用されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
上記構成の本発明によれば、鋳型に向かって流れる溶鋼の流速が遅い位置に上段の吹き込み位置が設置されているので、上段の吹き込み位置から吹き込まれた不活性ガスの大半はタンディッシュの浴面に浮上し、溶鋼中のアルミナも浮上するガス気泡に捕捉されてタンディッシュの浴面に浮上・分離する。これにより、溶鋼中のアルミナが減少して、浸漬ノズルへの付着が抑制される。また、大量の不活性ガスを上段の吹き込み位置から吹き込んでもほとんどがタンディッシュに浮上するので、鋳型内の湯面変動は発生しない。一方、下段の吹き込み位置から吹き込まれた不活性ガスの大半は鋳型に流出するので、この不活性ガスにより浸漬ノズルは洗浄されて、浸漬ノズルのアルミナ付着が防止される。即ち、上段の吹き込み位置から吹き込まれる不活性ガスによる溶鋼の清浄化効果と、下段の吹き込み位置から吹き込まれる不活性ガスによる洗浄効果とが合わさり、効率良く且つ安定して、タンディッシュから鋳型への溶鋼供給流路におけるアルミナ付着を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。図1は、本発明の実施の形態例を示す図であって、本発明に係る上ノズルの拡大図、図2は、本発明に係る上ノズルを備えた連続鋳造用タンディッシュ及び鋳型の概略縦断面図である。
【0013】
図1に示すように、本発明に係る上ノズル3は、上段の吹き込み位置となる上段側吹込部20、下段の吹き込み位置となる下段側吹込部22、及びノズル母材24からなる耐火物と、これら耐火物を取り囲む鉄皮19と、上段側吹込部20に連通するガス導入管21と、下段側吹込部22に連通するガス導入管23とから構成されている。上段側吹込部20及び下段側吹込部22はポーラス煉瓦で構成されており、上ノズル3の軸芯部の内孔25がタンディッシュから鋳型への溶鋼供給流路11の一部分となる。ノズル母材24は通常高アルミナ質煉瓦を用いることが多いが、高アルミナ質煉瓦に限るものではなく、他の組成であってもよい。鉄皮19は、上段側吹込部20、下段側吹込部22及びノズル母材24の補強材としての役割と、上段側吹込部20及び下段側吹込部22に吹き込まれる不活性ガスの背面への漏洩を防止する役割とを担っている。
【0014】
上ノズル3の全長をLとしたときに、上段側吹込部20は、上ノズル3の上端からL/4までの範囲内の内孔25を構成し、一方、下段側吹込部22は、上ノズル3の下端からL/4までの範囲内の内孔25を構成している。つまり、上段側吹込部20から内孔25へのガス吹き込み位置は、上ノズル3の上端からL/4までの範囲内であり、下段側吹込部22から内孔25へのガス吹き込み位置は、上ノズル3の下端からL/4までの範囲内となっている。
【0015】
上段側吹込部20及び下段側吹込部22を構成するポーラス煉瓦は、アルミナを80質量%以上含有する高アルミナ質系の耐火物とすることが好ましい。この高アルミナ質耐火物は、高温強度が高く、溶鋼に対する耐摩耗性に優れており、上段側吹込部20及び下段側吹込部22の材料として特に好適である。その他に、上段側吹込部20及び下段側吹込部22を構成するポーラス煉瓦としては、シリカ、マグネシア、クロミアを使用することもできる。これらの耐火物原料としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、ボーキサイト、珪石、石英、マグネシアクリンカー、酸化クロムなどを用いることができる。
【0016】
このような構成の上ノズル3は、以下の方法により製造することができる。1つの方法は、先ず、これらのポーラス煉瓦用耐火物原料を所定の配合比で配合して混合し、上段側吹込部20及び下段側吹込部22の形状に圧縮成型し、次いで、成型した上段側吹込部20及び下段側吹込部22にガス導入管21,23を取り付け、ガス導入管21が取り付けられた上段側吹込部20と、ガス導入管23が取り付けられた下段側吹込部22と、ノズル母材24を構成する耐火物原料とを、上ノズル3を成型する金型内の所定の位置に配置し、これらを圧縮成型して上ノズル3を成型する。そして、成型した上ノズル3を乾燥・焼成し、その周囲に鉄皮19を取り付け、連続鋳造用タンディッシュの上ノズル3として仕上げる方法である。
【0017】
上ノズル3の他の製造方法としては、ポーラス煉瓦からなる上段側吹込部20及び下段側吹込部22を構成するための酸化アルミナ、ボーキサイト、珪石、石英、マグネシアクリンカー、酸化クロムなどが所定の配合比で混合された耐火物原料と、ノズル母材24を構成する耐火物原料と、ガス導入管21,23とを準備し、これらを上ノズル3を成型する金型内の所定の位置に配置し、圧縮成型して上ノズル3を一気に成型する。そして、成型した上ノズル3を乾燥・焼成し、その周囲に鉄皮19を取り付け、連続鋳造用タンディッシュの上ノズル3として仕上げる方法である。
【0018】
このような構成の上ノズル3を用いて溶鋼の連続鋳造を行うが、本発明に係る上ノズル3を使用する連続鋳造設備としては、例えば図2に示すような連続鋳造設備を用いることができる。
【0019】
図2において、鋳型2の上方所定位置に、外殻を鉄皮13で覆われ、内部を耐火物14で施行されたタンディッシュ1が配置され、このタンディッシュ1の底部には耐火物14に嵌合して本発明に係る上ノズル3が設けられている。図2では示していないが、上ノズル3に取りつけられたガス導入管21,23は流量計が設置されたガス供給本管に接続されており、ガス供給本管から供給されるArガスなどの不活性ガスが上ノズル3から溶鋼供給流路11に吹き込まれるようになっている。そして、この上ノズル3の下面に接続して、上部固定板5、摺動板6、下部固定板7、及び整流ノズル8からなるスライディングノズル4が配置され、更に、スライディングノズル4の下面に接して、下部に吐出孔10を有する浸漬ノズル9が配置され、タンディッシュ1から鋳型2への溶鋼供給流路11が形成されている。摺動板6は、往復型アクチュエーター12と接続されており、往復型アクチュエーター12の作動により、上部固定板5と下部固定板7との間をこれらの固定板と接触したまま移動し、摺動板6と下部固定板7とで形成する開口部面積を調整する、つまり溶鋼供給流路11の絞り部を形成することによって、溶鋼供給流路11を通過する溶鋼量が制御される。浸漬ノズル9は、その下部の吐出孔10が鋳型内の溶鋼15に埋没するようにその先端が浸漬されて使用される。
【0020】
そして、取鍋(図示せず)からタンディッシュ1に注入された溶鋼15を、上ノズル3からArガスなどの不活性ガスを吹き込みながら、スライディングノズル4で溶鋼流量を調整しつつ、溶鋼供給流路11を経由させて鋳型2に注入する。注入された溶鋼15は鋳型2により冷却されて凝固シェル18を形成し、鋳型2の下方に連続的に引き抜かれ鋳片となる。鋳型内の溶鋼湯面16の上にはモールドパウダー17を添加して鋳造する。
【0021】
溶鋼供給流路11に吹き込まれたガスの気泡は、溶鋼供給流路11における溶鋼15の流速に応じて、タンディッシュ1に浮上し或いは鋳型2に流入する。つまり、ガス気泡の浮上速度よりも、このガス気泡の生成場所における溶鋼流速が速い場合には、ガス気泡は鋳型2に流出し、ガス気泡の浮上速度よりも、このガス気泡の生成場所における溶鋼流速が遅い場合にはタンディッシュ1に浮上する。この場合、ガス気泡の浮上速度はガス気泡径が大きいものほど速くなり、大きいものほどタンディッシュ1に浮上しやすくなる。
【0022】
本発明の上ノズル3においては、上段側吹込部20は上ノズル3の上端側に配置されていて、上段側吹込部20のガス吹き込み面は、上部側ほど横断面積が大きくなる円錐状であるので、上段側吹込部20のガス吹き込み面の上部側ほど溶鋼流速が遅くなる。また、上段側吹込部20のガス吹き込み面の上部側ほど溶鋼静圧が小さくなり、生成するガス気泡はガス吹き込み面の上部側ほど相対的に大きくなる。そのために、上ノズル3の上段側吹込部20から吹き込まれた不活性ガスの大半は、タンディッシュ1に浮上する。
【0023】
タンディッシュ1に浮上するガス気泡に、溶鋼15に懸濁したアルミナ粒子が捕捉され、捕捉されたアルミナ粒子はタンディッシュ1の浴面上に浮上・分離する。つまり、溶鋼15からアルミナ粒子が除去され、溶鋼供給流路11を流下する溶鋼15は清浄化され、浸漬ノズル9におけるアルミナ付着が抑制される。この場合、上段側吹込部20から大量の不活性ガスを吹き込んでもほとんどがタンディッシュ1に浮上するので、鋳型内の溶鋼湯面16に及ぼす影響は少なく、溶鋼湯面16の湯面変動は防止される。上段側吹込部20から吹き込む不活性ガス流量は特に限定する必要はなく、溶鋼供給流路11を流下する溶鋼トン当たり例えば4〜10NL(以下、「NL/溶鋼トン」と記す)程度とすればよい。
【0024】
一方、下段側吹込部22は上ノズル3の下端側に配置されており、下段側吹込部22の直下に溶鋼供給流路11の絞り部が形成されているので、少なくとも摺動板6と下部固定板7とで形成する開口部直上位置における溶鋼流速は速く、下段側吹込部22から吹き込まれた不活性ガスの大半は、鋳型2に流出する。つまり、下段側吹込部22から吹き込まれる不活性ガスにより浸漬ノズル9の溶鋼供給流路11は洗浄されて、或いは溶鋼15に懸濁するアルミナ粒子は不活性ガス気泡に捕捉されて鋳型2に流出し、浸漬ノズル9におけるアルミナ付着が防止される。但し、下段側吹込部22から吹き込まれるガス流量は、鋳型内の溶鋼湯面16における湯面変動に大きく影響する。従って、溶鋼湯面16における湯面変動を防止する観点から、下段側吹込部22から吹き込む不活性ガス流量は、0.5〜2NL/溶鋼トンとすることが好ましい。
【0025】
このように、本発明によれば、上段側吹込部20から吹き込まれる不活性ガスによって溶鋼15に懸濁したアルミナがタンディッシュ1の浴面に分離・除去されると同時に、下段側吹込部22から吹き込まれる不活性ガスにより浸漬ノズル9の溶鋼供給流路11におけるアルミナ付着が防止される。その結果、溶鋼供給流路11のアルミナによるノズル閉塞が防止され、鋳造可能時間を飛躍的に延長させることが可能となる。また、上段側吹込部20から吹き込まれるガスの大半はタンディッシュ1に浮上するので、鋳型内の溶鋼湯面16における湯面変動が防止される。
【0026】
これらの効果は、特に、鋳片の横断面積が小さいブルーム連続鋳造機で有効である。ブルーム連続鋳造機の場合、1つの溶鋼供給流路11における単位時間当たりの溶鋼の通過量はスラブ連続鋳造機に比べてはるかに少ないが、上ノズル3及び浸漬ノズル9などは鋳造開始時の凝固地金によるノズル閉塞を防止するために、定常鋳造状態で必要とするサイズに対して大きくしている。そのために、溶鋼供給流路11における溶鋼流速は相対的に遅く、不活性ガスを鋳型側に流出させようとしても溶鋼流速が遅いことからできなかったり、また、鋳造速度の変更によって鋳型に流出する不活性ガス量が急激に増加したりするなどの問題があった。つまり、溶鋼供給流路11への不活性ガスの吹き込みを制御することが難しいという問題があった。これに対して、本発明の上ノズル3では、上段側吹込部20から吹き込まれるガスの大半はタンディッシュ1に浮上するので、鋳型内の溶鋼湯面16における湯面変動を考慮することなく、大量の不活性ガスを吹き込むことができ、一方、下段側吹込部22から吹き込まれるガスの大半は鋳型2に流出するので、安定して溶鋼供給流路11を洗浄することができる。この場合、鋳型内における湯面変動を防止するには、下段側吹込部22から吹き込む不活性ガス流量のみに留意すればよい。
【実施例1】
【0027】
4ストランドのブルーム連続鋳造機を用い、No.1ストランド及びNo.2ストランドに図1に示す本発明の上ノズルを設置し、No.3ストランド及びNo.4ストランドに本発明以外の上ノズルを設置して、ブルーム鋳片を鋳造する試験を実施した。
【0028】
本発明に係る上ノズルは、全長が245mmであり、上段側吹込部を上ノズル上端から50mmまでの範囲とし、下段側吹込部を上ノズル下端から17mm離れた位置から47mm離れた位置までの範囲とした。そして、上段側吹込部からArガスを7.2NL/分で吹き込み、下段側吹込部からArガスを0.7NL/分で吹き込んだ(以下、「本発明例」と記す)。
【0029】
比較のために使用した本発明以外の上ノズルは、上ノズルの全長及び下段側吹込部は本発明例で使用した上ノズルと同一であるが、上段側吹込部を上ノズル上端から105mmまでの範囲とした。そして、上段側吹込部からArガスを5.6NL/分で吹き込み、下段側吹込部からArガスを0.7NL/分で吹き込んだ(以下、「比較例」と記す)。比較例では、上段側吹込部から吹き込むArガス量を5.6NL/分以上にすると鋳型内の湯面変動が激しくなることから、5.6NL/分に設定した。
【0030】
この条件で25ヒート(350トン/ヒート)の溶鋼を8基のタンディッシュで鋳造し、そのときのアルミナによる浸漬ノズルの閉塞の有無及び鋳片のブローホール・ノロカミの発生率を調査した。尚、鋳型内の湯面変動が激しくなると、ブローホール・ノロカミの発生率が高くなることが知られている。
【0031】
その結果、使用した上ノズル個数当たりの閉塞発生率は本発明例では0%(0回/8タンディッシュ×2ストランド)であったが、比較例では6%(1/8×2)であった。即ち、本発明例ではアルミナによるノズル閉塞は全く発生しなかったが、比較例では6%の頻度でノズル閉塞が発生した。
【0032】
また、ブローホール・ノロカミの発生率は本発明例では鋳片1本当たり1.2個であり、比較例では1.3個であり、ブローホール・ノロカミの発生率は本発明例と比較例とで有意差は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る上ノズルの拡大図である。
【図2】本発明に係る上ノズルを備えた連続鋳造用タンディッシュ及び鋳型の概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 タンディッシュ
2 鋳型
3 上ノズル
4 スライディングノズル
5 上部固定板
6 摺動板
7 下部固定板
8 整流ノズル
9 浸漬ノズル
10 吐出孔
11 溶鋼供給流路
12 往復型アクチュエーター
13 鉄皮
14 耐火物
15 溶鋼
16 溶鋼湯面
17 モールドパウダー
18 凝固シェル
19 鉄皮
20 上段側吹込部
21 ガス導入管
22 下段側吹込部
23 ガス導入管
24 ノズル母材
25 内孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下2段の位置から内孔内に不活性ガスを吹き込む上ノズルにおいて、上ノズルの全長をLとしたときに、上段の吹き込み位置が上端からL/4の範囲内であり、且つ、下段の吹き込み位置が下端からL/4の範囲内であることを特徴とする、タンディッシュ上ノズル。
【請求項2】
前記上ノズルは、ブルーム鋳片の連続鋳造の際に使用されることを特徴とする、請求項1に記載のタンディッシュ上ノズル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−237244(P2007−237244A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63637(P2006−63637)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】