説明

タンデム式OLEDデバイスのための中間接続層

タンデム式OLEDデバイス(200)は、アノード(110)と、カソード(170)と、アノードとカソードの間に配置された少なくとも第1のエレクトロルミネッセンス・ユニット(120.1)および第2のエレクトロルミネッセンス・ユニット(120.2)とを備えている。エレクトロルミネッセンス・ユニット(120.1、120.2)は、個別に選択された有機発光層(223.1、223.2)と、第1のエレクトロルミネッセンス・ユニット(120.1)と第2のエレクトロルミネッセンス・ユニット(120.2)の間に配置された中間接続層(130.1)とを備えている。この中間接続層は、n型ドーパントと電子輸送材料とを含有するn型をドープされた有機層(331)を含んでいる。電子輸送材料は、n型をドープされた有機層に含まれる全化合物のうちで最低のLUMO値を持つ第1の有機化合物(その量は、この層の10体積%以上かつ100体積%未満)と、第1の有機化合物よりもLUMO値が大きな少なくとも1種類の第2の有機化合物との混合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンデム式OLEDデバイスに関するものであり、より詳細には、そのようなデバイスで使用される中間接続層に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイス、または有機発光ダイオード(OLED)は、印加された電圧に応答して光を出す電子デバイスである。OLEDの構造には、アノードと、有機エレクトロルミネッセンス・ユニットと、カソードが順番に含まれる。アノードとカソードの間に配置された有機エレクトロルミネッセンス・ユニットは、一般に、有機正孔輸送層(HTL)と有機電子輸送層(ETL)からなる。ETL内のHTL/ETL界面の近くで正孔と電子が再結合して光が出る。Tangらは、「有機エレクトロルミネッセンス・ダイオード」、Applied Physics Letters、第51巻、913ページ、1987年と、譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第4,769,292号において、このような層構造を利用した高効率OLEDを提示した。そのとき以来、別の層構造を有する多数のOLEDが開示されてきた。例えばHTLとETLに挟まれた有機発光層(LEL)を含む3層OLEDが存在しており、その例が、例えばAdachi他、「3層構造を有する有機膜におけるエレクトロルミネッセンス」、Japanese Journal of Applied Physics、第27巻、L269ページ、1988年や、Tang他、「ドープされた有機薄膜のエレクトロルミネッセンス」、Journal of Applied Physics、第65巻、3610ページ、1989年に開示されている。LELは、一般に、ゲスト材料をドープされた少なくとも1種類のホスト材料を含んでおり、この場合の層構造はHTL/LEL/ETLと表記される。さらに、デバイスの中により多くの機能層が含まれた他の多層OLEDが存在している。それと同時に、多くの種類のEL材料も合成され、OLEDで使用されている。これらの新しい構造と新しい材料によってデバイスの性能がさらに向上した。
【0003】
OLEDは、実際には電流駆動されるデバイスである。その輝度は電流密度に比例するが、寿命は電流密度に反比例する。非常に明るくするには、OLEDを比較的大きな電流密度で動作させねばらないが、すると動作寿命が短くなるであろう。したがって寿命を長くするには、OLEDの輝度効率を改善する一方で、目的とする輝度を実現できる可能な限り小さな電流密度で動作させることが極めて重要である。
【0004】
OLEDの輝度効率を劇的に向上させるとともに寿命を延ばすため、個々のOLEDを鉛直方向にいくつか積層させて単一の電源だけで駆動するタンデム式OLED(または積層式OLED、またはカスケード式OLED)が製造されている(アメリカ合衆国特許第6,337,492号、第6,107,734号、第6,717,358号、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0170491 A1、2003/0189401 A1、日本国特開2003/045676Aを参照のこと)。N個(N>1)のエレクトロルミネッセンス・ユニットを有するタンデム式OLEDでは、輝度効率を、エレクトロルミネッセンス・ユニットが1つだけの従来型OLEDのN倍にすることができる(もちろん駆動電圧も従来型OLEDのN倍になる可能性がある)。したがって長寿命を実現する1つの方法として、タンデム式OLEDは、従来型OLEDと同じ輝度を得るのに従来型OLEDで用いられている電流密度のほんの約1/N倍にしか必要としないが、寿命が従来型OLEDの約N倍になろう。高輝度を実現する別の方法として、タンデム式OLEDは、従来型OLEDのN倍の輝度を得るのに従来型OLEDで用いられているのとほぼ同じ電流密度しか必要としないが、ほぼ同じ寿命が維持される。
【0005】
タンデム式OLEDは多くの利点を有するが、1つの欠点は、駆動電圧の上昇である。多くのエレクトロニクス系(例えばいくつかのアクティブ・マトリックスの設計)において、利用できる電圧は限られている。したがってタンデム式OLEDの駆動に必要な電圧を低下させることが必要とされている。タンデム式OLEDで駆動電圧を低下させる1つの方法は、エレクトロルミネッセンス・ユニットの間に接続層を設けることである。その場合に接続層は、n型をドープされた有機層を含んでおり、その中には一般に、仕事関数が小さな金属をドープされた電子輸送材料が含まれる。しかしドープされた金属は、励起状態のクエンチングを引き起こして輝度効率を低下させる可能性がある。これは、n型をドープされた有機層が発光層の上に直接載っている場合や、n型をドープされた有機層のために選択した電子輸送材料が金属ドーパントと効果的に結合しない場合に起こる。そのため金属が発光層の中に拡散する。このような状況では、やはりOLEDデバイスの寿命が短くなる。
【0006】
寿命と効率が改善されたOLEDが相変わらず必要とされていることに加え、OLEDデバイスをより製造しやすくすることも望まれている。製造を簡単にする1つの方法は、シャドウ・マスクを用いたパターニングを減らし、その代わりにカラー・フィルタを用いた白色発光OLEDを提供することである。電力消費を最低にするには、白色発光OLEDの色度をCIE D65(すなわちCIEx=0.31、CIEy=0.33)に近づけることがしばしば有効である。これは特に、赤色画素、緑色画素、青色画素、白色画素を有するいわゆるRGBWディスプレイの場合である。したがってタンデム構造を利用して白色発光OLEDを作る場合には、色度がCIE D65の近くに留まっていることが重要になる可能性がある。すなわちタンデム構造を変更して電圧を低下させたとき、色度がCIE D65の近くにあるようにできねばならない。同様に、予想通りに製造できるためには、単一エレクトロルミネッセンス・ユニット白色発光OLEDの色がタンデム構造においてほぼ同じであるかどうかが重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの理由により、大きな輝度効率と長い寿命に加えて大きな色純度を維持しつつ、デバイスの駆動電圧がさらに低下し、したがって電力消費が低下した、タンデム式OLEDデバイスで使用可能な有機ELデバイスの部品が相変わらず必要とされている。
【0008】
本発明の1つの目的は、駆動電圧が低く、高効率で、寿命が長いタンデム式OLEDデバイスを製造することである。
【0009】
本発明の別の目的は、駆動電圧が低く、高効率で、寿命が長く、色度が適切な広帯域または白色発光のタンデム式OLEDデバイスを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、
a)アノードと;
b)カソードと;
c)アノードとカソードの間に配置されていて、個別に選択された少なくとも1つの有機発光層をそれぞれが含む少なくとも第1のエレクトロルミネッセンス・ユニットおよび第2のエレクトロルミネッセンス・ユニットと;
d)第1のエレクトロルミネッセンス・ユニットと第2のエレクトロルミネッセンス・ユニットの間に配置された中間接続層とを備えていて、この中間接続層が、n型ドーパントと電子輸送材料とを含有するn型をドープされた有機層を含んでおり、その電子輸送材料が、
i)n型をドープされた有機層に含まれる全化合物のうちで最低のLUMO値を持ち、この層の10体積%以上かつ100体積%未満の量である第1の有機化合物と;
ii)第1の有機化合物よりもLUMO値が大きな少なくとも1種類の第2の有機化合物との混合物であり、第2の有機化合物のうちの少なくとも1つが低電圧電子輸送材料であり、その第2の有機化合物の合計量がこの層の90体積%以下であるタンデム式OLEDデバイスによって達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1つの利点は、安定性が向上していてより低い駆動電圧で動作するOLEDデバイスが提供されることである。本発明の別の利点は、動作電圧をより低くする材料で見られることのある色のシフトなしにOLEDデバイスの動作電圧を低くできることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下の説明で使用するいくつかの用語をここに説明する。“フル・カラー”という用語は、可視スペクトルの赤、緑、青の領域における発光の色を記述するのに用いる。赤、緑、青は三原色を構成し、その三原色を適切に混合することによって他の色を作り出すことができる。広帯域発光は、可視スペクトルの複数の部分(例えば青と緑の部分)に大きな成分を有する光である。広帯域発光には、白色光を発生させるためにスペクトルの赤と緑と青の部分で光が発生する場合も含まれていてよい。白色光は、ユーザーが白色であると認識する光、またはカラー・フィルタと組み合わせて使用して実用的なフル・カラー・ディスプレイを製造するのに十分な発光スペクトルを持つ光である。白色光は強い色相を持つことができてそれでも有用だが、白色は、国際照明委員会(CIE)の色度座標がほぼCIEx=0.31±0.05、 CIEy=0.33±0.05であることが好ましい。これはD65の白色であり、WO 2004/061963に記載されているように、特に、赤色画素、緑色画素、青色画素、白色画素を有するRGBWディスプレイにとって有用である。“画素”という用語は、従来技術で使用されているように、一般に、ディスプレイ・パネルの1つ領域であって、他の領域とは独立に刺激して光を出させることのできる領域を指すのに用いる。“n型をドープされた有機層”という用語は、有機層がドーピング後に半導特性を持ち、この層を通過する電流が実質的に電子によって担われることを意味する。“p型をドープされた有機層”という用語は、有機層がドーピング後に半導特性を持ち、この層を通過する電流が実質的に正孔によって担われることを意味する。“仕事関数が大きな金属”という用語は、仕事関数が4.0eV以上の金属と定義される。同様に、“仕事関数が小さな金属”という用語は、仕事関数が4.0eV未満の金属として定義される。
【0013】
複数のエレクトロルミネッセンス・ユニットを用いたタンデム式白色OLEDデバイスの構成が、2004年8月20日にLiang-Sheng Liaoらによって「複数の白色エレクトロルミネッセンス・ユニットを有する白色OLED」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/922,606号に記載されている(その開示内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。この場合、タンデム式白色OLEDデバイスが初期の白色を維持することは難しかった。
【0014】
図1に本発明によるタンデム式OLEDデバイス100を示してある。このタンデム式OLEDデバイスはアノード110とカソード170を備えており、そのうちの少なくとも一方は透明である。アノードとカソードの間には、N個のエレクトロルミネッセンス・ユニット(“ELユニット”と表示)と(N-1)個の中間接続層(図面では“中間接続層”と表示)が配置されている。ただしNは1よりも大きな整数である。すなわち本発明は、アノードとカソードの間に配置された第1と第2のエレクトロルミネッセンス・ユニットと、第1と第2のエレクトロルミネッセンス・ユニットの間に配置された中間接続層を少なくとも必要とする。積層されて直列に接続されたエレクトロルミネッセンス・ユニットを120.1〜120.Nで示してある。ここに、120.1は(アノードに隣接する)1番目のエレクトロルミネッセンス・ユニットであり、120.2は2番目のエレクトロルミネッセンス・ユニットであり、120.(N-1)は(N-1)番目のエレクトロルミネッセンス・ユニットであり、120.Nは(カソードに隣接する)N番目のエレクトロルミネッセンス・ユニットである。エレクトロルミネッセンス・ユニットの間に配置された中間接続層は130.1〜130.(N-1)で示してある。ここに、130.1は、エレクトロルミネッセンス・ユニット120.1と120.2の間に配置された1番目の中間接続層;130.2は、エレクトロルミネッセンス・ユニット120.2と別のエレクトロルミネッセンス・ユニット(図示せず)に接触している2番目の中間接続層;130.(N-1)は、エレクトロルミネッセンス・ユニット120.(N-1)と120.Nの間に配置された最後の中間接続層である。タンデム式OLEDデバイス100のアノード110とカソード170は、導電線190を通じて電圧/電流源180に接続されている。タンデム式OLEDデバイス100は、電圧/電流源180が発生させる電位を印加することによって動作する。
【0015】
タンデム式OLEDデバイス100に含まれる各エレクトロルミネッセンス・ユニットは、正孔の注入、正孔の輸送、電子の注入、電子の輸送、電子-正孔再結合による光の発生をサポートすることができ、したがって複数の層を含むことができる。そのような層として、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、個別に選択された少なくとも1つの発光層(LEL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)、正孔阻止層(HBL)、電子阻止層(EBL)、エキシトン阻止層(XBL)や、従来技術で知られている他の層などがある。さまざまな層が多数の機能(例えばETLはHBLとしても機能する)を担うことができ、似た機能を有する複数の層が存在していてもよい(例えばLELとETLはいくつか存在することができる)。従来技術で知られている多くの有機エレクトロルミネッセンス多層構造を本発明のエレクトロルミネッセンス・ユニットとして使用できる。いくつか例示すると、HTL/(1つまたは複数のLEL)/ETL、HTL/(1つまたは複数のLEL)/EIL、HIL/HTL/(1つまたは複数のLEL)/ETL、HIL/HTL/(1つまたは複数のLEL)/ETL/EIL、HIL/HTL/EBLまたはXBL/(1つまたは複数のLEL)/ETL/EIL、HIL/HTL/(1つまたは複数のLEL)/HBL/ETL/EILなどがある。タンデム式OLEDデバイス100に含まれる各エレクトロルミネッセンス・ユニットは、他のエレクトロルミネッセンス・ユニットと層構造が同じでも異なっていてもよい。エレクトロルミネッセンス・ユニットの層構造はHTL/(1つまたは複数のLEL)/ETLであることが好ましい。ただし、アノード110に隣接するエレクトロルミネッセンス・ユニット(例えば120.1)は、アノードとHTLの間にHILを備えており、カソード170に隣接するエレクトロルミネッセンス・ユニット(例えば120.N)は、カソードとETLの間に配置されたEILを有する。各エレクトロルミネッセンス・ユニットに含まれるLELの数は一般に1〜3の範囲で変えることができる。さらに、タンデム式OLEDに含まれる各エレクトロルミネッセンス・ユニットは、同じ色を発生させてもよいし、異なる色を発生させてもよい。
【0016】
本発明は、図2に示した実施態様に、よりはっきりと示されている。タンデム式OLEDデバイス200は、中間接続層130.1によって直列に接続された1番目のエレクトロルミネッセンス・ユニット220.1と2番目のエレクトロルミネッセンス・ユニット220.2を備えている。当業者であれば、エレクトロルミネッセンス・ユニット120.1と120.2は、本発明で使用できる多数のOLED構造のほんの2つだけを表わしていることがわかるであろう。この構成における1番目のエレクトロルミネッセンス・ユニット120.1は、(アノード110に隣接した)HIL221.1と、HTL222.1と、LEL223.1と、ETL224.1を備えている。中間接続層130.1は、n型をドープされた有機層331を備えていて、他の層(例えば電子受容層333)も備えることができる。中間接続層130.1の別のいくつかの実施態様はあとで説明する。2番目のエレクトロルミネッセンス・ユニット120.2は、HTL222.2と、LEL223.2と、ETL224.2と、EIL226.2を備えている。カソード170がEIL226.2の上に設けられている。図を見やすくするため、電源と導電線は図示されていない。
【0017】
HTLは、少なくとも1種類の正孔輸送材料(例えば芳香族第三級アミン)を含んでいる。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。モノマー・トリアリールアミンの例は、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0018】
芳香族第三級アミンのより好ましい1つのクラスは、VanSlykeらによってアメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。HTLは、単一の芳香族第三級アミン化合物、または複数の芳香族第三級アミン化合物の混合物から形成することができる。有用な芳香族第三級アミンの代表例としては、以下のものがある。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン;
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4"'-ジアミノ-1,1':4',1":4",1"'-クアテルフェニル;
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン;
1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB);
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N-フェニルカルバゾール;
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン;
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニ;ル
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン;
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル;
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル;
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミノ]フルオレン;
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA);
4,4'-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)。
【0019】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1 009 041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。3つ以上のアミノ基を有する第三級芳香族アミン(オリゴマー材料を含む)を使用できる。さらに、ポリマー正孔輸送材料も使用できる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0020】
LELは、蛍光材料またはリン光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。発光層は単一の材料で構成できるが、より一般的には、1種類または複数のゲスト化合物をドープしたホスト材料を含んでいる。光は主として発光材料から発生し、任意の色が可能である。このゲスト発光材料は、発光ドーパントと呼ばれることがしばしばある。発光層内のホスト材料は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の単一の材料または組み合わせた材料にすることができる。発光材料は、通常は強い蛍光染料およびリン光化合物(例えば、WO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)の中から選択される。発光材料は、一般に、0.01〜10質量%の割合でホスト材料に組み込まれる。
【0021】
ホスト材料および発光材料としては、小さな非ポリマー分子またはポリマー材料が可能である(例えばポリフルオレン、ポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン)、PPV))。ポリマーの場合、小分子発光材料は、ホスト・ポリマーの中に分子として分散させること、または発光材料を微量成分とコポリマー化してホスト・ポリマーに添加することができる。
【0022】
発光材料を選択する際の重要な1つの関係は、その分子の最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギー差として定義されるバンドギャップ・ポテンシャルの比較である。ホスト材料から発光材料にエネルギーが効率的に移動するための必要条件は、発光材料のバンドギャップがホスト材料のバンドギャップよりも小さいことである。リン光発光体(三重項励起状態から光を出す材料、すなわちいわゆる“三重項発光体”が含まれる)では、ホスト材料から発光材料にエネルギーが移動できるよう、ホストの三重項エネルギー・レベルが十分に高いことも重要である。
【0023】
有用であることが知られているホスト材料および発光材料としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号、第6,475,648号、第6,534,199号、第6,661,023号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0127427 A1、2003/0198829 A1、2003/0203234 A1、2003/0224202 A1、2004/0001969 A1に開示されているものなどがある。
【0024】
8-ヒドロキシキノリン(オキシン)と、それと同様の誘導体の金属錯体は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト化合物の1つのクラスを形成する。有用なキレート化オキシノイド化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0025】
有用なホスト材料の別のクラスとして、アメリカ合衆国特許第5,935,721号、第5,972,247号、第6,465,115号、第6,534,199号、第6,713,192号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0048687 A1、2003/0072966 A1、WO 2004/018587 A1に記載されているようなアントラセン誘導体がある。いくつか例示すると、9,10-ジ-ナフチルアントラセンと9-ナフチル-10-フェニルアントラセンの誘導体がある。ホスト材料の別の有用なクラスとして、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているジスチリルアリーレン誘導体、ベンズアゾール誘導体(例えば2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール])などがある。
【0026】
望ましいホスト材料は、連続膜を形成することができる。発光層は、デバイスの膜の形態、電気的特性、発光効率、寿命を改善するため、2種類以上のホスト材料を含むことができる。電子輸送材料と正孔輸送材料の混合物も有用なホストとして知られている。さらに、上記のホスト材料と正孔輸送材料または電子輸送材料との混合物も適切なホストになりうる。
【0027】
有用な蛍光ドーパントとしては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体や、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタンホウ素化合物、ジスチリルベンゼンの誘導体、ジスチリルビフェニルの誘導体、カルボスチリル化合物などがある。ジスチリルベンゼンの誘導体の中では、ジアリールアミノ基で置換されたもの(非公式にはジスチリルアミンとして知られる)が特に有用である。
【0028】
リン光発光体(三重項励起状態から光を出す材料、すなわちいわゆる“三重項発光体”が含まれる)に適したホスト材料は、三重項エキシトンがホスト材料からリン光材料に効率的に移動できるように選択せねばならない。この移動が起こるためには、リン光材料の励起状態のエネルギーが、ホストの最低三重項状態と基底状態のエネルギー差よりも小さいという条件が満たされることが非常に望ましい。しかしホストのバンド・ギャップは、OLEDの駆動電圧が許容できないほど大きくなるように選択してはならない。適切なホスト材料は、WO 00/70655 A2、WO 01/39234 A2、WO 01/93642 A1、WO 02/074015 A2、WO 02/15645 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0117662 A1に記載されている。適切なホスト材料としては、ある種のアリールアミン、トリアゾール、インドール、カルバゾール化合物などがある。望ましいホスト材料の例は、4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)、2,2'-ジメチル-4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル、m-(N,N'-ジカルバゾール)ベンゼン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)であり、これらの誘導体も望ましいホスト材料に含まれる。
【0029】
本発明の発光層で使用できる有用なリン光材料の例として、WO 00/57676 A1、WO 00/70655 A1、WO 01/41512 A1、WO 02/15645 A1、WO 01/93642 A1、WO 01/39234 A2、WO 02/074015 A2、WO 02/071813 A1、アメリカ合衆国特許第6,458,475号、第6,573,651号、第6,451,455号、第6,413,656号、第6,515,298号、第6,451,415号、第6,097,147号、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0017361 A1、2002/0197511 A1、2003/0072964 A1、2003/0068528 A1、2003/0124381 A1、2003/0059646 A1、2003/0054198 A1、2002/0100906 A1、2003/0068526 A1、2003/0068535 A1、2003/0141809 A1、2003/0040627 A1、2002/0121638 A1、ヨーロッパ特許第1 239 526 A2号、ヨーロッパ特許第1 238 981 A2号、ヨーロッパ特許第1 244 155 A2号、日本国特開2003/073387A、日本国特開2003/073388A、日本国特開2003/059667A、日本国特開2003/073665Aに記載されているものなどがある。有用なリン光ドーパントとしては、遷移金属の錯体(例えばイリジウムや白金の錯体)などがある。
【0030】
1つのエレクトロルミネッセンス・ユニットに含まれる1つ以上のLELが広帯域光(例えば白色光)を出すと有用である場合がある。多数のドーパントを1つ以上の層に添加して白色発光OLEDを製造することができる。そのためには、例えば青色発光材料と黄色発光材料を組み合わせたり、シアン色発光材料と赤色発光材料を組み合わせたり、赤色発光材料と緑色発光材料と青色発光材料を組み合わせたりする。白色発光デバイスが記載されているのは、例えばヨーロッパ特許第1 187 235号、ヨーロッパ特許第1 182 244号、アメリカ合衆国特許第5,683,823号、第5,503,910号、第5,405,709号、第5,283,182号、第6,627,333号、第6,696,177号、第6,720,092号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0186214 A1、2002/0025419 A1、2004/0009367 A1である。好ましい実施態様では、白色発光エレクトロルミネッセンス・ユニットは2つ以上の発光層を備えており、その層が合わさって白色光を発生させる。これらの系の中には、1つの発光層のためのホストが正孔輸送材料であるものがある。
【0031】
ETLは、1種類以上の金属キレート化オキシノイド化合物を含むことができる。その中には、オキシンそのもの(一般に、8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)も含まれる。このような化合物は、電子を注入して輸送するのを助け、高レベルの性能を示し、薄膜の形態にするのが容易である。オキシノイド化合物の例は、上に示したCO-1〜CO-9である。
【0032】
他の電子輸送材料としては、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に記載されているさまざまなブタジエン誘導体や、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光剤がある。ベンズアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、ピリジンチアジアゾール、トリアジン、フェナントロリン誘導体と、いくつかのシロール誘導体も、有用な電子輸送材料である。
【0033】
エレクトロルミネッセンス・ユニットに含まれるそれぞれの層は、小分子OLED材料、またはポリマーLED材料、またはこれらの組み合わせから形成することができる。いくつかのエレクトロルミネッセンス・ユニットをポリマーにし、他のユニットを小分子(または非ポリマー)(例えば蛍光材料やリン光材料)にすることができる。タンデム式OLEDの各エレクトロルミネッセンス・ユニットの互いに対応する層は、対応する他の層と同じ材料または異なる材料を用いて形成することができ、層の厚さは同じにすることまたは異なった値にすることができる。
【0034】
タンデム式OLEDが効率的に機能するためには、中間接続層130.1が隣接するエレクトロルミネッセンス・ユニットにキャリアを効率的に注入する必要がある。中間接続層を構成する層の光透過率ができるだけ大きくてエレクトロルミネッセンス・ユニットで発生した光がデバイスの外に出られるようになっていることも好ましい。中間接続層には有用な構成がいくつかあるが、どの場合にも、中間接続層は、n型をドープされた少なくとも1つの有機層331を含んでいる。
【0035】
図3Aに示してあるように、図1と図2の中間接続層130.1は、少なくとも2つの層を含んでいる。それは例えば、n型をドープされた有機層331と電子受容層333である。電子受容層333は、n型をドープされた有機層331よりもカソード170の近くに配置されている。これら2つの層を図3Aに示したように互いに接触させること、または中間接続層130.1は、図3Bに示したようにn型をドープされた有機層331と電子受容層333の間に配置されたインターフェイス層332を含むことができる。中間接続層130.1は、図3Cに示したように、電子受容層333の上にp型をドープされた有機層335も備えることができる。p型をドープされた有機層335は、電子受容層333よりもカソード170に近い。p型をドープされた有機層335は、電子受容層333と接触していることが好ましい。別の一実施態様では、中間接続層130.1は、図3Dに示したように、n型をドープされた有機層331と電子受容層333の間に配置されたインターフェイス層332をさらに備えることができる。中間接続層130.1の別の一実施態様は、図3Eに示したように、n型をドープされた有機層331とp型をドープされた有機層335を備えることができ、この場合にp型をドープされた有機層335は、n型をドープされた有機層331よりもカソード170の近くに配置される。別の一実施態様では、中間接続層130.1は、図3Fに示したように、n型をドープされた有機層331とp型をドープされた有機層335の間に配置されたインターフェイス層332をさらに備えることができる。中間接続層130.1の別の一実施態様は、図3Gに示したように、n型をドープされた有機層331とインターフェイス層332を含むことができ、この場合にインターフェイス層332は、n型をドープされた有機層331よりもカソード170の近くに配置される。
【0036】
中間接続層130.1のn型をドープされた有機層331は、n型ドーパントと電子輸送材料を含んでいる。電子輸送材料は、n型をドープされた有機層331の全化合物のうちで最低のLUMO値を持つ第1の有機化合物と、第1の有機化合物よりもLUMO値が大きな少なくとも1種類の第2の有機化合物の混合物であり、第2の有機化合物のうちの少なくとも1つは低電圧電子輸送材料である。これらの材料についてさらに説明する。
【0037】
n型ドーパントは金属材料にすることができる。この明細書では、“金属材料”という用語に金属元素とその化合物の両方が含まれる。金属材料は、少なくとも1つの有機化合物を減らせる金属金属である限り、特定の1つのものに限定されることはない。金属材料は、アルカリ金属(例えばLi)、アルカリ土類金属(例えばMg)、遷移金属(希土類金属を含む)の中から選択することができる。特に、仕事関数が4.2eV以下の金属を金属材料として使用することが適しており、そのような金属材料の典型例として、Li、Na、K、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Sm、Eu、Tb、Dy、Gd、Ybなどがある。好ましい金属材料はLiとCsである。
【0038】
n型をドープされた有機層331においてn型ドーパントとして使用される材料としては、強力な電子供与特性を有する有機還元剤も可能である。“強力な電子供与特性”とは、有機ドーパントが少なくともいくつかの電荷をホストに与えてホストと電荷移動錯体を形成できねばならないことを意味する。有機分子の例としては、ビス(エチレンジチオ)-テトラチアフルバレン(BEDT-TTF)、テトラチアフルバレン(TTF)、ならびにこれらの誘導体などがある。ホストがポリマーである場合には、ドーパントは上記の任意のものが可能であり、分子として分散させた材料、または微量成分としてホストとコポリマー化した材料でもよい。n型をドープされた有機層331のn型ドーパントの濃度は特定の値に限定されないが、この層の全材料の0.01〜20体積%の範囲である。n型ドーパントの好ましい濃度は0.1%〜10%だが、1%〜8%の範囲がより好ましい。n型をドープされた有機層331の厚さは一般に200nm未満だが、100nm未満であることが好ましい。
【0039】
第1の有機化合物は、多環式芳香族化合物であることが望ましい。多環式芳香族炭化水素化合物は、炭素環を含んでいる。この明細書の全体を通じ、炭素環または炭素環基という用語は、一般に、『グラントとハックーの化学事典』、第5版、マグロー-ヒル・ブック社に定義されている通りである。炭素環は、炭素原子だけを含んでいるあらゆる芳香族環系または非芳香族環系である。本発明の多環式芳香族炭化水素化合物は、縮合した少なくとも2つの環を含んでいて、そのうちの少なくとも1つは芳香族である。多環式芳香族炭化水素にとって本発明において有用な炭素環系は、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、フルオランテン、ペリフラントレンの中から選択され、そのどれもさらに置換されていてよい。
【0040】
一実施態様では、第1の有機化合物は、一般式(A)で表わされるナフタセン誘導体の中から選択することができる。
【0041】
【化1】

ただし、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は、水素または置換基として独立に選択され、
どの置換基も、合わさってさらに縮合環を形成することができる。
【0042】
特に断わらない限り、“置換された”または“置換基”という用語は、水素以外のあらゆる基または原子を意味する。さらに、“基”という用語を用いる場合、置換基が置換可能な1つの水素を含んでいるのであれば、基には置換基が置換されていない形態が含まれるだけでなく、この明細書に記載した任意の1個または複数の置換基でさらに置換された形態も、デバイスが機能する上で必要な性質をその置換基が失わせない限りは含まれるものとする。置換基は、ハロゲンにすること、または1個の原子(炭素、ケイ素、酸素、窒素、リン、イオウ、セレン、ホウ素)によって分子の残部と結合させることが好ましい。置換基としては、例えば、ハロゲン(クロロ、ブロモ、フルオロなど);ニトロ;ヒドロキシル;シアノ;カルボキシルや;さらに置換されていてもよい基が可能である。さらに置換されていてもよい基としては、アルキル(直鎖アルキル、分岐鎖アルキル、環式アルキルが含まれ、例えばメチル、トリフルオロメチル、エチル、t-ブチル、3-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)プロピル、テトラデシルなどがある);アルケニル(例えばエチレン、2-ブテン);アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、2-メトキシエトキシ、s-ブトキシ、ヘキシルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、テトラデシルオキシ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エトキシ、2-ドデシルオキシエトキシ);アリール(例えばフェニル、4-t-ブチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、ナフチル);アリールオキシ(例えばフェノキシ、2-メチルフェノキシ、α-ナフチルオキシ、β-ナフチルオキシ、4-トリルオキシ);カーボンアミド(例えばアセトアミド、ベンズアミド、ブチルアミド、テトラデカンアミド、α-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)アセトアミド、α-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチルアミド、α-(3-ペンタデシルフェノキシ)-ヘキサンアミド、α-(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェノキシ)-テトラデカンアミド、2-オキソ-ピロリジン-1-イル、2-オキソ-5-テトラデシルピロリン-1-イル、N-メチルテトラデカンアミド、N-スクシンイミド、N-フタルイミド、2,5-ジオキソ-1-オキサゾリジニル、3-ドデシル-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリル、N-アセチル-N-ドデシルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ、2,4-ジ-t-ブチルフェノキシカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、2,5-(ジ-t-ペンチルフェニル)カルボニルアミノ、p-ドデシル-フェニルカルボニルアミノ、p-トリルカルボニルアミノ、N-メチルウレイド、N,N-ジメチルウレイド、N-メチル-N-ドデシルウレイド、N-ヘキサデシルウレイド、N,N-ジオクタデシルウレイド、N,N-ジオクチル-N'-エチルウレイド、N-フェニルウレイド、N,N-ジフェニルウレイド、N-フェニル-N-p-トリルウレイド、N-(m-ヘキサデシルフェニル)ウレイド、N,N-(2,5-ジ-t-ペンチルフェニル)-N'-エチルウレイド、t-ブチルカーボンアミド);スルホンアミド(例えばメチルスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p-トリルスルホンアミド、p-ドデシルベンゼンスルホンアミド、N-メチルテトラデシルスルホンアミド、N,N-ジプロピルスルファモイルアミノ、ヘキサデシルスルホンアミド);スルファモイル(例えばN-メチルスルファモイル、N-エチルスルファモイル、N,N-ジプロピルスルファモイル、N-ヘキサデシルスルファモイル、N,N-ジメチルスルファモイル、N-[3-(ドデシルオキシ)プロピル]スルファモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]スルファモイル、N-メチル-N-テトラデシルスルファモイル、N-ドデシルスルファモイル);カルバモイル(例えばN-メチルカルバモイル、N,N-ジブチルカルバモイル、N-オクタデシルカルバモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]カルバモイル、N-メチル-N-テトラデシルカルバモイル、N,N-ジオクチルカルバモイル);アシル(例えばアセチル、(2,4-ジ-t-アミルフェノキシ)アセチル、フェノキシカルボニル、p-ドデシルオキシフェノキシカルボニル、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、3-ペンタデシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル);スルホニル(例えばメトキシスルホニル、オクチルオキシスルホニル、テトラデシルオキシスルホニル、2-エチルヘキシルオキシスルホニル、フェノキシスルホニル、2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシスルホニル、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、2-エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、フェニルスルホニル、4-ノニルフェニルスルホニル、p-トリルスルホニル);スルホニルオキシ(例えばドデシルスルホニルオキシ、ヘキサデシルスルホニルオキシ);スルフィニル(例えばメチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、2-エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、ヘキサデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、4-ノニルフェニルスルフィニル、p-トリルスルフィニル);チオ(例えばエチルチオ、オクチルチオ、ベンジルチオ、テトラデシルチオ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エチルチオ、フェニルチオ、2-ブトキシ-5-t-オクチルフェニルチオ、p-トリルチオ);アシルオキシ(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、オクタデカノイルオキシ、p-ドデシルアミドベンゾイルオキシ、N-フェニルカルバモイルオキシ、N-エチルカルバモイルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ);アミン(例えばフェニルアニリノ、2-クロロアニリノ、ジエチルアミン、ドデシルアミン);イミノ(例えば1(N-フェニルイミド)エチル、N-スクシンイミド、3-ベンジルヒダントイニル);ホスフェート(例えばジメチルホスフェート、エチルブチルホスフェート);ホスフィト(例えばジエチルホスフィト、ジヘキシルホスフィト);複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基(どの基も置換されていてよく、炭素原子と少なくとも1個のヘテロ原子(酸素、窒素、イオウ、リン、ホウ素からなるグループの中から選択する)からなる3〜7員の複素環を含んでいる。2-フリル、2-チエニル、2-ベンゾイミダゾリルオキシ、2-ベンゾチアゾリルなどが例として挙げられる);第四級アンモニウム(例えばトリエチルアンモニウム);第四級ホスホニウム(例えばトリフェニルホスホニウム);シリルオキシ(例えばトリメチルシリルオキシ)がある。
【0043】
望むのであれば、置換基それ自体がさらに上記の置換基で1回以上置換されていてもよい。使用する具体的な置換基は、当業者が、特定の用途にとって望ましい性質が実現されるように選択することができ、例えば、電子求引基、電子供与基、立体基などが挙げられる。1つの分子が2つ以上の置換基を持てる場合には、特に断わらない限り、その置換基を互いに結合させて環(例えば縮合環)を形成することができる。一般に、上記の基と、その基に対する置換基は、48個までの炭素原子(一般には1〜36個であり、通常は24個未満である)を含むことができるが、選択した具体的な置換基が何であるかにより、それよりも多くすることも可能である。
【0044】
一般式(I)で表わされる本発明の第1の有機化合物は、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12のうちの少なくとも1つがアルキル基とアリール基の中から独立に選択された有機化合物であることが好ましい。
【0045】
別の一実施態様では、第1の有機化合物は、一般式(B)で表わされるアントラセン誘導体の中から選択することができる。
【0046】
【化2】

ただし、
R13、R14、R15、R16は、水素または1個以上の置換基を表わし、その置換基の選択は、以下のグループ:
グループ1:水素、ならびに炭素原子が一般に1〜24個のアルキル基とアルコキシ基;
グループ2:炭素原子が一般に6〜20個の環基;
グループ3:ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、ペリレニル基などの一般に6〜30個の炭素原子を持つ縮合炭素環基を完成させるのに必要な原子;
グループ4:フリル基、チエニル基、ピリジル基、キノリニル基などの一般に 5〜24個の炭素原子を持つ縮合複素環基を完成させるのに必要な原子;
グループ5:炭素原子を1〜24個持つアルコキシアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基;
グループ6:フッ素基、塩素基、臭素基、シアノ基
の中からなされる。
【0047】
より詳細には、本発明の第1の有機化合物は、以下の構造式によって表わされる化合物の中から選択することができる。
【0048】
【化3】

【0049】
【化4】

【0050】
【化5】

【0051】
【化6】

【0052】
【化7】

【0053】
上記の構造式には、本発明による第1の有機化合物の材料として機能する上で望ましい特徴を有する構造にするのに適した置換基を有する構造上の特徴を備えた化合物も含まれる。
【0054】
第1の有機化合物の条件は、第1の有機化合物が、n型をドープされた有機層に含まれる化合物のうちで最低LUMO値を持つというものである。特に好ましい第1の有機化合物はルブレン(構造式C-1)またはその誘導体である。
【0055】
n型をドープされた有機層331の電子輸送材料は、第1の有機化合物よりも大きなLUMO値を持つ1種類以上の第2の有機化合物も含んでいる。第2の有機化合物のうちの少なくとも1つは低電子輸送材料である。この明細書では、“低電圧電子輸送材料”という用語は、単独で電子輸送層に組み込まれたとき、駆動電圧が、13ボルト以下になる材料を意味する。駆動電圧が10ボルト以下の低電圧電子輸送材料も本発明による第2の化合物として有用だが、8ボルト以下の材料のほうが第2の化合物として好ましい。このような材料は、Begleyらによって2005年3月10に「混合電子輸送材料を含む有機発光デバイス」という名称で出願されたアメリカ合衆国特許出願第11/077,218号に詳細に記載されている。第2の有機化合物は、場合によっては炭素環および/または複素環を含むこともできる。複素環は、炭素原子と非炭素原子(例えば、窒素(N)、酸素(O)、イオウ(S)、リン(P)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、ホウ素(B)、ベリリウム(Be)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)や、環系を形成するのに役立つ周期表の他の元素)の両方を含むあらゆる芳香族環系または非芳香族環系である。本発明の目的では、複素環の定義に、配位結合を含む環も含まれる。配位結合の定義は、『グラントとハックーの化学事典』、91ページに見いだすことができる。要するに、配位結合は、電子が豊富な原子(例えばOやN)が一対の電子を電子が欠乏した原子(例えばAlやB)に与えるときに形成される。その一例は、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(Alqとも呼ばれる)に見られる。この場合には、キノリン部分に存在する窒素がその孤立電子対をアルミニウム原子に与えて複素環を形成し、したがって合計で3つの環が縮合したAlqが得られる。仕事関数の定義は、『CRC 化学と物理学のハンドブック』、第70版、1989〜1990年、CRCプレス社、F-132ページに見いだすことができ、さまざまな金属の仕事関数のリストは、E-93ページとE-94ページに見いだすことができる。本発明で第2の化合物として役立つ炭素環系と複素環系の選択は、金属キレート化オキシノイド、非金属キレート化オキシノイド、アントラセン、ビピリジル、ブタジエン、イミダゾール、フェナントレン、フェナントロリン、スチリルアリーレン、ベンズアゾール、バックミンスターフラーレン-C60(バッキーボールまたはフラーレン-C60としても知られる)、テトラセン、キサンテン、ペリレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン、チオピラン、ポリメチン、ピリリウム、フルオランテン、ペリフラントレン、シラシクロペンタジエンまたはシロール、チアピリリウム、トリアジン、カルボスチリル、金属キレート化ビス(アジニル)アミン、非金属キレート化ビス(アジニル)アミン、金属キレート化ビス(アジニル)メテン、非金属キレート化ビス(アジニル)メテンの中からなされる。
【0056】
本発明による第2の有機化合物は、一般式(D)で表わされる金属オキシノイド化合物の中から選択することができる。
【0057】
【化8】

ただし、
Mは金属を表わし;
nは1〜4の整数であり;
Zは、各々独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす。
【0058】
第2の有機化合物は、一般式(E)で表わされる金属オキシノイド化合物の中から選択することができる。
【0059】
(RS-Q)2-M-O-L (E)
ただし、
Mは、金属または非金属であり;
Qは、現われるごとに、置換された8-キノリノラト・リガンドを表わし;
RSは、3つ以上の置換された8-キノリノラト・リガンドがアルミニウム原子に結合するのを立体的に阻止するように選択された8-キノリノラト環置換基を表わし;
Lはフェニル部分または縮合芳香族環部分であり、炭化水素基で置換してLが6〜24個の炭素原子を持つようにすることができる。
【0060】
第2の有機化合物は、一般式(D)または(E)で表わされる化合物の中から選択できるが、少なくとも1つの第2の有機化合物は低電圧電子輸送材料であり、どの第2の有機化合物も、第1の有機化合物よりLUMO値が大きい。別の第2の有機化合物は、一般式(D)と(E)を持つように選択することができる。第2の有機化合物の別の例は一般式(E)で表わされ、Bryanらのアメリカ合衆国特許第5,141,671号に見いだすことができる(その内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0061】
本発明による第2の有機化合物は、一般式(F)で表わされるフェナントロリンまたはその誘導体の中から選択することができる。
【0062】
【化9】

ただし、
R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24は、水素または置換基であり、
どの置換基も、合わさってさらに縮合環を形成することができる。
【0063】
一般式(G)で表わされる複素環誘導体は、本発明による第2の有機化合物を選択することのできる材料グループを形成する。
【0064】
【化10】

ただし、
mは3〜8の整数であり;
Zは、O、NR29、Sのいずれかであり;
R25、R26、R27、R28、R29は、水素;炭素原子が1〜24個のアルキル;炭素原子が5〜20個のアリールまたはヘテロ原子で置換されたアリール;ハロ;縮合炭素環または縮合複素環を完成させるのに必要な原子のいずれかを表わし;
Yは、通常はアルキル基またはアリール基を含んでいて複数のベンズアゾールを互いに共役または非共役に結合させる結合単位である)
【0065】
本発明による別の第2の有機化合物は、一般式(H)で表わされるシロール誘導体またはシラシクロペンタジエン誘導体の中から選択することができる。
【0066】
【化11】

ただし、R30、R31、R32は、水素または置換基であるか、縮合炭素環または縮合複素環を完成させるのに必要な原子である。
【0067】
本発明による別の第2の有機化合物は、一般式(I)で表わされるトリアジン誘導体の中から選択することができる。
【0068】
【化12】

ただし、
kは1〜4の整数であり;
R33は、水素、置換基、炭素環、複素環のいずれかであり;
Yは、通常はアルキル基またはアリール基を含んでいて複数のトリアジンを互いに共役または非共役に結合させる結合単位である)
【0069】
一般式(D)、(E)、(F)、(G)、(H)、(I)をベースとした特別な第2の有機化合物は、以下の構造式で表わされる。
【0070】
【化13】

【0071】
【化14】

【0072】
【化15】

【0073】
【化16】

【0074】
n型をドープされた有機層に含まれる第1の有機化合物の量は、この層の10体積%以上だが、100体積%未満であり、第2の有機化合物の合計量は、この層の90体積%以下だが、0%よりも多い。第1の有機化合物の特に有用な範囲は、20、40、50、60、75、90%であり、第2の有機化合物とn型ドーパントの合計量は、それぞれ80、60、50、40、25、10%である。本発明の実施態様は、第1の有機化合物の量が上記の範囲の中の任意の値に選択され、第2の有機化合物の合計量が上記の範囲の中の任意の値に選択され、n型ドーパントの量が上記の範囲から選択されて合計が100%となるものである。
【0075】
本発明の好ましい組み合わせは、第1の有機化合物がC-7、C-8、C-9、C-11の中から選択され、第2の有機化合物がJ-1、J-2、J-3、J-4、J-5の中から選択される組み合わせである。
【0076】
上に説明したように、本発明の中間接続層は、n型ドーパントと電子輸送材料とを含むn型をドープされた層を備えており、その電子輸送材料には、この明細書に記載した第1の化合物と、少なくとも1種類の第2の化合物が含まれている。中間接続層におけるこの組み合わせを上記の比にすることにより、第1の有機化合物または第2の有機化合物が単独でこの中間接続層に組み込まれたデバイスと比べて駆動電圧が低いデバイスが得られる。
【0077】
本発明で言及する化合物に関係した化学名と略号を以下に示す:C-1、ルブレン、5,6,11,12-テトラフェニルナフタセン;C-2、ペリレン;C-4、9-(2-ナフチル)-10-(4-フェニル)フェニルアントラセン;C-5、ADN、9,10-ビス(2-ナフチル)-アントラセン;C-6、tBADN、2-t-ブチル-9,10-ビス(2-ナフチル)-アントラセン;C-7、tBDPN、5,12-ビス(4-t-ブチルフェニル)ナフタセン;C-10、TBP、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレン;J-1、AlqまたはAlq3、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III);J-2、BAlq;B-3、GaqまたはGaq3、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III);J-4、BPhen、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン;J-5、BCP、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン;J-6、TPBI、2,2',2"-1,3,5-トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル]ベンゼン;J-8、TRAZ、4,4'-ビス(4,6-(p-トリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1,1'-ビフェニル。
【0078】
中間接続層130.1の電子受容層333(使用する場合)は、1種類以上の有機材料を含んでいてその中間接続層130.1の50体積%を超える割合を占めており、それぞれの有機材料は、電子受容特性を持ち、還元電位が飽和カロメル電極(SCE)を基準にして-0.5Vよりも大きい。このような層は、タンデム式OLEDの中で有効なキャリア注入特性と有効な光学的透明性の両方を持つことができる。電子受容層333は、還元電位がSCEを基準にして-0.1Vよりも大きい1種類以上の有機材料を含んでいることが好ましい。より好ましいのは、電子受容層333が単一の有機材料を含んでいて、その有機材料が電子受容特性を持ち、還元電位がSCEを基準にして-0.1Vよりも大きいことである。“電子受容特性”とは、有機材料が、隣接している他のタイプの材料から少なくともいくつかの電荷を受け入れる能力または傾向を持つことを意味する。“還元電位”という用語はボルトを単位として表現され、ある物質が電子に対して持っている親和性の測定値である。正の値が大きいほど親和性が大きい。ヒドロニウム・イオンを還元して水素ガスにするときの還元電位は、標準的な条件下では0.00Vであろう。ある物質の還元電位はサイクリック・ボルタンメトリー(CV)によって容易に得られ、SCEを基準にして測定される。この明細書に記載した材料のための有用な1つの方法が、2005年4月20日にHatwarらによって「タンデム式OLEDデバイス」という名称で出願されたアメリカ合衆国特許出願第11/110,071号に記載されている(その内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0079】
電子受容層333で用いるのに適した有機材料としては、少なくとも炭素と水素を含んでいる単純な化合物だけでなく、還元電位がSCEを基準にして-0.5Vよりも大きい金属錯体(例えば有機リガンドと有機金属化合物を含む遷移金属錯体)も挙げられる。電子受容層333のための有機材料としては、小分子(蒸着によって堆積させることのできるもの)、ポリマー、デンドリマー、またはこれらの組み合わせが可能である。電子受容層333の少なくとも一部が隣接する層と顕著に混合しないことも重要である。それは、このような拡散を阻止する十分に大きな分子量を持つ材料を選択することによって実現される。電子受容材料の分子量は350よりも大きいことが好ましい。電子受容層の適切な電子受容特性を維持するためには、上記の1種類以上の有機材料がこの層の90体積%を超える割合を占めることが望ましい。簡単に製造できるようにするため、電子受容層333では単一の化合物を用いるとよい。還元電位がSCEを基準にして-0.5Vよりも大きくて電子受容層333の形成に使用できる有機材料のいくつかの例として、ヘキサアザトリフェニレンの誘導体や、テトラシアノキノジメタンの誘導体などがある。電子受容層333の有効な厚さは、一般に3〜100nmである。
【0080】
場合によっては存在しているp型をドープされた有機層335は、本発明で使用する場合には、少なくとも1種類の有機ホスト材料と、1種類のp型ドーパントとを含んでおり、有機ホスト材料は、正孔輸送をサポートすることができる。従来のOLEDデバイスで使用される正孔輸送材料は、上に説明したように、p型をドープされた有機層335にとって有用なホスト材料の有用な1つのクラスである。好ましい材料として、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含む芳香族第三級アミンがある。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。芳香族第三級アミンのより好ましい1つのクラスは、VanSlykeらによってアメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。例として、N,N'-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ジフェニル-ベンジジン(NPB)、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4'-ジアミン(TPD)、N,N,N',N'-テトラナフチル-ベンジジン(TNB)などがある。芳香族アミンの別の好ましいクラスは、2003年3月18日にKevin P. Klubekらによって「カスケード式有機エレクトロルミネッセンス・デバイス」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/390,973号(その内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に記載されているジヒドロフェナジン化合物である。上記材料の組み合わせもp型をドープされた有機層335を形成するのに役立つ。より詳細には、p型をドープされた有機層335の有機ホスト材料として、NPB、TPD、TNB、4,4',4"-トリス(N-3-メチルフェニル-N-フェニル-アミノ)-トリフェニルアミン(m-MTDATA)、4,4',4"-トリス(N,N-ジフェニル-アミノ)-トリフェニルアミン(TDATA)、ジヒドロフェナジン化合物などと、これらの組み合わせがある。
【0081】
同じホスト材料が上に示した正孔輸送特性と電子輸送特性の両方を示すのであれば、そのホスト材料をn型をドープされた有機層とp型をドープされた有機層の両方で使用できる場合がある。n型をドープされた有機層またはp型をドープされた有機層のホストとして使用できる材料の例として、アメリカ合衆国特許第5,972,247号に記載されているさまざまなアントラセン誘導体、4,4'-ビス(9-ジカルバゾリル)-ビフェニル(CBP)などのある種のカルバゾール誘導体、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されている4,4'-ビス(2,2-ジフェニルビニル)-1,1'-ビフェニルなどのジスチリルアリーレン誘導体などが挙げられる。
【0082】
p型をドープされた有機層335のp型ドーパントには、強い電子求引特性を有する酸化剤が含まれる。“強い電子求引特性”とは、有機ドーパントがホストからいくつかの電荷を受け取ってホスト材料と電荷移動錯体を形成できねばならないことを意味する。いくつか例示すると、有機化合物である2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)や、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)の他の誘導体と、無機酸化剤であるFeCl3、FeF3、SbCl5、他のいくつかの金属塩化物、他のいくつかの金属フッ化物などがある。複数のp型ドーパントの組み合わせもp型をドープされた有機層335を形成するのに役立つ。p型ドーパントの濃度は0.01〜20体積%の範囲であることが好ましい。p型をドープされた有機層の厚さは一般に150nm未満だが、約1〜100nmの範囲が好ましい。
【0083】
p型をドープされた有機層は、単にHTL材料を堆積させることによって電子受容層333とHTLの界面に形成することができる。本発明では、電子受容層とHTLのために選択する材料は、混合がほんの少ししか起こらないようなものである。すなわち電子受容層の少なくとも一部がHTl材料と混合しないことが重要である。
【0084】
中間接続層130.1に場合によっては含まれるインターフェイス層332は、本発明で使用する場合には、主に、n型をドープされた有機層331と電子受容層333の間で起こる可能性のある相互拡散を阻止するのに使用されるが、他の構造でも使用できることがわかるであろう。このインターフェイス層332は、金属化合物または金属にすることができる。この層は、用いる場合には、有効な状態を維持しつつできるだけ薄くし、光学的損失を減らさなくてはならない。
【0085】
インターフェイス層332は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、ケイ素、ゲルマニウムいずれかの化学量論的酸化物か非化学量論的酸化物、または化学量論的硫化物か非化学量論的硫化物、または化学量論的セレン化物か非化学量論的セレン化物、または化学量論的テルル化物か非化学量論的テルル化物、または化学量論的窒化物か非化学量論的窒化物、または化学量論的炭化物か非化学量論的炭化物、または亜鉛の化学量論的酸化物か非化学量論的酸化物、または化学量論的窒化物か非化学量論的窒化物、または化学量論的炭化物か非化学量論的炭化物、またはガリウムの化学量論的窒化物か非化学量論的窒化物、またはアルミニウムの化学量論的炭化物か非化学量論的炭化物、またはこれらの組み合わせの中から選択した金属化合物を含むことができる。インターフェイス層332で用いるのに特に有用な金属化合物は、MoO3、NiMoO4、CuMoO4、WO3、ZnTe、Al4C3、AlF3、B2S3、CuS、GaP、InP、SnTeの中から選択することができる。金属化合物は、MoO3、NiMoO4、CuMoO4、WO3の中から選択することが好ましい。金属化合物を用いる場合には、中間接続層130.1に含まれるインターフェイス層332の厚さは0.5nm〜20nmの範囲である。
【0086】
あるいはインターフェイス層332は、仕事関数が大きな金属層を含むこともできる。この層を形成するのに用いられる仕事関数が大きな金属は仕事関数が4.0eV以上であり、Ti、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Al、In、Snなど、またはこれらの組み合わせが挙げられる。仕事関数が大きな金属層は、Ag、Al、Cu、Au、Zn、In、Sn、またはこれらの組み合わせを含んでいることが好ましい。仕事関数が大きな金属層は、AgまたはAlを含んでいることがより好ましい。仕事関数が大きな金属を用いる場合には、中間接続層130.1に含まれるインターフェイス層332の厚さは、0.1nm〜5nmの範囲である。
【0087】
エレクトロルミネッセンス・ユニットのHTLのHOMO上の電子は、隣接する電子受容層333のLUMOに容易に注入することができ、その電子はその後、電子受容層333に隣接するn型をドープされた有機層331のLUMOに注入される。n型をドープされた有機層331は隣接するエレクトロルミネッセンス・ユニットのETLに電子を注入し、その電子は次にLEL(発光領域)に移動し、そこで正孔と再結合して光を発生させる。その場所は、一般にLELの発光ドーパント部位である。本発明の中間接続層では、従来の中間接続層と比較し、層全体の電位の低下(または電圧降下)を小さくし、光透過率を大きくすることができる。中間接続層130.1は1つ以上の有機層を備えているため、比較的低温で容易に形成することができる。そのとき熱による蒸着法を利用することが好ましい。
【0088】
中間接続層(例えば130.1)全体の厚さは一般に5nm〜200nmである。タンデム式OLEDに2つ以上の中間接続層が存在している場合には、中間接続層は、層の厚さと材料の選択の一方または両方に関して互いに同じでも異なっていてもよい。
【0089】
すでに述べたように、正孔注入層(HIL)をアノードとHTLの間に設けると有用であることがしばしばある。正孔注入材料は、後に続く有機層の膜形成能力を向上させ、正孔を正孔輸送層に容易に注入できるようにする機能を持つ。正孔注入層で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物や、アメリカ合衆国特許第6,127,004号、第6,208,075号、第6,208,077号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーや、いくつかの芳香族アミン(例えばm-MTDATA(4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン))や、無機酸化物(例えばバナジウム酸化物(VOx)、モリブデン酸化物(MoOx)、ニッケル酸化物(NiOx))などがある。有機ELデバイスにおいて有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許第0 891 121 A1号と第1 029 909 A1号に記載されている。中間接続層で使用されるすでに説明したp型をドープされた有機材料も、正孔注入材料の有用な1つのクラスである。アメリカ合衆国特許第6,720,573号に記載されているヘキサアザトリフェニレン誘導体も有用なHIL材料である。特に有用な1つのHIL材料を以下に示す。
【0090】
【化17】

【0091】
電子注入層(EIL)をカソードとETLの間に設けると有用であることがしばしばある。中間接続層で使用されるすでに説明したn型をドープされた有機層は、電子注入材料の有用な1つのクラスである。
【0092】
本発明のタンデム式OLEDは、支持用基板(図示せず)の上に形成されて、カソードまたはアノードが基板と接触できるようになっているのが一般的である。基板と接触する電極は、通常、底部電極と呼ばれる。底部電極はアノードであることが一般的だが、本発明がこの構成に限定されることはない。基板は、どの方向に光を出したいかに応じ、透過性または不透明にすることができる。透光特性は、基板を通してEL光を見る上で望ましい。その場合には、透明なガラスまたはプラスチックが一般に用いられる。EL光を上部電極を通じて見るような用途では、底部支持体の透過特性は重要でないため、底部支持体は、光透過性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。この場合に用いる基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、シリコン、セラミック、回路板材料などがある。もちろん、このような構成のデバイスでは、透光性のある上部電極を設ける必要がある。
【0093】
EL光をアノード110を通して見る場合には、アノードは、興味の対象となる光に対して透明か、実質的に透明である必要がある。本発明で用いられる透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、スズ酸化物であるが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノードとして用いることができる。EL光をカソードだけを通して見るような用途では、アノードの透過特性は重要でなく、あらゆる導電性材料(透明なもの、不透明なもの、反射性のもの)を使用することができる。この用途での導電性材料の例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金などがある。典型的なアノード用材料は、透光性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.0eV以上である。望ましいアノード用材料は、一般に適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積させる。アノードは、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。場合によっては、アノードを研磨した後に他の層を付着させて表面の粗さを小さくすることで、短絡を最少にすること、または反射性を大きくすることができる。
【0094】
アノード110だけを通して発光を見る場合には、本発明で使用するカソード170は、ほぼ任意の導電性材料で構成することができる。望ましい材料は優れた膜形成特性を有するため、下にある有機層との接触がよくなり、低電圧で電子の注入が促進され、優れた安定性を得ることができる。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな(4.0eV未満)金属または合金を含んでいることがしばしばある。有用な1つのカソード材料は、アメリカ合衆国特許第4,885,221号に記載されているように、銀が1〜20%の割合で含まれたMgAg合金からなる。適切なカソード材料の別のクラスとして、有機層(例えば有機EIL、有機ETL)に接する薄い無機EILと、その上に被せられたより厚い導電性金属層を含む二層がある。その場合、無機EILは、仕事関数が小さな金属または金属塩を含んでいることが好ましく、そうなっている場合には、より厚い被覆層は仕事関数が小さい必要がない。このような1つのカソードは、アメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFからなる薄い層と、その上に載るより厚いAl層からなる。他の有用なカソード材料としては、アメリカ合衆国特許第5,059,861号、第5,059,862号、第6,140,763号などに開示されているものがあるが、これだけに限定されるわけではない。
【0095】
カソード170を通して発光を見る場合、カソードは、透明であるか、ほぼ透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、このような材料の組み合わせを使用する必要がある。光学的に透明なカソードは、アメリカ合衆国特許第4,885,211号、第5,247,190号、第5,703,436号、第5,608,287号、第5,837,391号、第5,677,572号、第5,776,622号、第5,776,623号、第5,714,838号、第5,969,474号、第5,739,545号、第5,981,306号、第6,137,223号、第6,140,763号、第6,172,459号、第6,278,236号、第6,284,393号、ヨーロッパ特許第1 076 368号に、より詳細に記載されている。カソード材料は、一般に、適切な任意の方法(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着)によって堆積させる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー・マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0 732 868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー除去、選択的化学蒸着などがある。
【0096】
ここで図2に戻ると、本発明の重要な特徴は、n型をドープされた有機層331がETL224.1に隣接していて、ETLで用いられる電子輸送材料とは異なる電子輸送材料を含んでいることである。ETLとそれに隣接したn型をドープされた有機層で異なる電子輸送材料を選択することにはいくつか理由がある。
【0097】
第1に、ETLの電子輸送材料は、n型ドーパントの拡散が、n型をドープされた有機層の電子輸送材料におけるよりも少なくなるように選択することができる。このように選択することで、発光層へのn型ドーパントの拡散を減らすことができ、その結果として望まない励起状態のクエンチングが減る。例えばアルカリ金属ドーパントはフェナントロリンをベースとした電子輸送材料への拡散性が比較的大きい。n型をドープされた有機層331とETL224.1の両方が主にフェナントロリン誘導体を含んでいる場合には、アルカリ金属ドーパントはn型をドープされた有機層331からETL224.1へと容易に拡散し、LEL223.1の中に入る。しかしETL224.1が主に金属オキシノイドまたはトリアジン誘導体を含んでいる場合には、アルカリ金属ドーパントの拡散は減少する。酸素原子を含む電子輸送材料はアルカリ金属のカチオンを結合させるのに特に有効であり、そのことによってアルカリ金属の拡散が減ると考えられている。
【0098】
第2に、ETLの電子輸送材料は、LUMOがLELとn型をドープされた有機層331の電子輸送材料の中間になるように選択することができる。
【0099】
第3に、ETLの電子輸送材料は、LEL内の再結合領域が変化するように選択できる。通常は、再結合はLELとHTLの界面近くで起こる。いくつかの場合、特に白色発光エレクトロルミネッセンス・ユニットの場合には、HTLまたはその一部にも発光性ドーパントをドープするため、HTLは第2の発光層になることができる。ETLの電子輸送材料として(電子の大きな易動度またはLUMOの相対位置を通じて)LELへの電子注入を容易に促進する材料を選択することにより、LELまたはドープされたHTLからの相対的発光を調節することができる。
【0100】
好ましい一実施態様では、電子注入層は、カソードと、隣接したエレクトロルミネッセンス・ユニットの電子輸送層の間に配置される。特に好ましい一実施態様では、このような電子注入層は、n型ドーパントを含むとともに、隣接したエレクトロルミネッセンス・ユニットの電子輸送層で使用する電子輸送材料とは異なる電子輸送材料を含んでいる。
【0101】
上記の有機材料は、昇華などの気相法を通じてうまく堆積するが、流体から堆積させることもできる(例えば溶媒から堆積させ、場合によっては結合剤も用いて膜の形成を改善する)。材料がポリマーである場合には、溶媒堆積が好ましいが、他の方法(例えばスパッタリングやドナー・シートからの熱転写)も利用できる。昇華によって堆積させる材料は、タンタル材料からなることの多い昇華用“ボート”から気化させること(例えばアメリカ合衆国特許第6,237,529号に記載されている)や、まず最初にドナー・シートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。混合材料からなる層では、別々の昇華用ボートを用いること、または材料をあらかじめ混合し、単一のボートまたはドナー・シートからコーティングすることができる。パターニングした堆積は、シャドウ・マスク、一体化シャドウ・マスク(アメリカ合衆国特許第5,294,870号)、ドナー・シートからの空間的に限定された染料熱転写(アメリカ合衆国特許第5,688,551号、第5,851,709号、第6,066,357号)、インクジェット法(アメリカ合衆国特許第6,066,357号)を利用して実現することができる。
【0102】
たいていのOLEDデバイスは、水分と酸素の一方または両方に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば窒素やアルゴン)中で密封される。不活性雰囲気でOLEDデバイスを密封する際には、有機接着剤、金属ハンダ、低融点ガラスのいずれかを用いて保護カバーを付着させることができる。一般に、ゲッターまたは乾燥剤も密封空間の中に入れられる。有用なゲッターおよび乾燥剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、ハロゲン化金属、過塩素酸塩などがある。封止と乾燥のための方法としては、アメリカ合衆国特許第6,226,890号に記載されている方法などがある。さらに、障壁層(例えばSiOx、テフロン(登録商標))や、交互に積層された無機層/ポリマー層が、封止法として知られている。
【0103】
本発明のOLEDデバイスでは、特性の向上を望むのであれば、よく知られたさまざまな光学的効果を利用することが可能である。例示すると、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、反射性電極の代わりに光吸収性電極にすること、グレア防止または反射防止のコーティングをディスプレイの表面に設けること、偏光媒体をディスプレイの表面に設けること、カラー・フィルタ、中性フィルタ、色変換フィルタをディスプレイの発光領域と関係するように設けることなどがある。フィルタ、偏光装置、グレア防止用または反射防止用コーティングを、カバーの上に、またはカバーの一部として特別に設けることができる。
【0104】
白色発光または広帯域発光をカラー・フィルタと組み合わせてフル・カラー・ディスプレイまたはマルチカラー・ディスプレイにすることができる。カラー・フィルタとしては、赤フィルタ、緑フィルタ、青フィルタなどが可能である。例えばアメリカ合衆国特許出願公開2004/0113875 A1に記載されているように、赤色画素、緑色画素、青色画素、白色画素を提供するカラー・フィルタを含むカラー・システムを用いることもできる。白の代わりにイエローまたはシアンを用いることができる。5色またはそれ以上のカラー・システムも有用である。
【0105】
OLEDデバイスはマイクロキャビティ構造を持つことができる。有用な一実施態様では、金属電極の一方は実質的に不透明かつ反射性であり、他方の電極は反射性かつ半透明である。反射性電極は、Au、Ag、Mg、Ca、またはこれらの合金の中から選択することが好ましい。2つの反射性金属電極が存在しているため、デバイスはマイクロキャビティ構造を有する。この構造内での強い光学的干渉によって共鳴条件が生まれる。共鳴波長に近い発光は増幅され、共鳴波長から離れた発光は抑制される。電極間に透明な光学的スペーサを配置して有機層の厚さを選択することにより、光路長を調節することができる。例えば本発明のOLEDデバイスは、反射性アノードと有機エレクトロルミネッセンス媒体の間にITOスペーサ層を備え、半透明なカソードがその有機エレクトロルミネッセンス媒体の上に載った状態にすることができる。
【0106】
本発明はたいていの構成のOLEDデバイスで使用することができる。その中には、単一のアノードとカソードを備える単純な構造から、より複雑なデバイス(例えば、エリア・カラー・ディスプレイや、画素を形成するアノードとカソードの直交アレイからなるパッシブ-マトリックス・ディスプレイや、各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)を用いて独立に制御されるアクティブ-マトリックス・ディスプレイ)までが含まれる。本発明は、OLEDが例えば固体発光ディスプレイやLCDディスプレイのバックライトの光源として利用されるデバイスでも使用することができる。
【0107】
本発明のエレクトロルミネッセンス・デバイスは、安定な発光が望ましいあらゆるデバイス(例えばランプや、静的または動的なイメージング装置(テレビ、携帯電話、DVDプレイヤー、コンピュータのモニタなど)の部品)で役立つ。本発明の典型的な実施態様によって駆動電圧が改善されるだけでなく、輝度効率と動作安定性も改善され、電圧の上昇も小さくなる。
【実施例】
【0108】
本発明とその利点は、以下に示す本発明の実施例と比較例からよりよく理解できよう。
【0109】
例1(比較例)
比較用OLEDデバイスを以下のようにして構成した。
【0110】
1.クリーンなガラス基板にインジウム-スズ酸化物(ITO)を真空蒸着して厚さ20nmの透明な電極を形成した。
【0111】
2.上記のようにして準備したITOの表面をプラズマ酸素エッチングで処理した後、まずアメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにして0.5nmのフルオロカーボン・ポリマー(CFx)層をプラズマ堆積させ、次いで10nmのヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン(化合物K-1)を堆積させた。
【0112】
3.上記のようにして準備した基板に、正孔輸送層(HTL)として厚さ20nmの4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)をさらに真空蒸着した。
【0113】
4.加熱したグラファイト・ボートを備えるコーティング・ステーションにおいて、20%の9-(2-ナフチル)-10-(ビフェニル-4-イル)アントラセン(上記の化合物AH3)と2.5%の5,11-ビス(ビフェニル-4-イル)-6,12-ビス(4-t-ブチルフェニル)-3,9-ジ-t-ブチルナフタセン(上記の化合物C-8)を含むNPB(ホスト)からなる厚さ20nmの層を基板の上に真空蒸着し、黄色発光層(黄色LRL)を形成した。
【0114】
5.6%のNPBと1.5%の2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレン(TBP、C-10)を含むホストとしての化合物AH3からなる厚さ20nmのコーティングを上記の基板上に蒸着し、青色発光層(青色LEL)を形成した。
【0115】
6.加熱したグラファイト・ボートを備えるコーティング・ステーションにおいて、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(Alq)からなる厚さ2.5nmの層を基板上に真空蒸着し、緩衝層を形成した。
【0116】
7.加熱したグラファイト・ボートを備えるコーティング・ステーションにおいて、2%の金属リチウムをドープしたトリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(Alq)からなる厚さ20nmの層を基板上に真空蒸着し、中間接続層のn型をドープされた有機層を形成した。
【0117】
8.中間接続層の電子受容層として、化合物K-1からなる厚さ12nmの層を堆積させた。
【0118】
9.上記のようにして準備した基板に、正孔輸送層(HTL)として、4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる厚さ75nmの層をさらに真空蒸着した。
【0119】
10.加熱したグラファイト・ボートを備えるコーティング・ステーションにおいて、20%の9-(2-ナフチル)-10-(ビフェニル-4-イル)アントラセン(上記の化合物AH3)と2.5%の5,11-ビス(ビフェニル-4-イル)-6,12-ビス(4-t-ブチルフェニル)-3,9-ジ-t-ブチルナフタセン(上記の化合物C-8)を含むNPB(ホスト)からなる厚さ20nmの層を基板の上に真空蒸着し、黄色発光層(黄色LRL)を形成した。
【0120】
11.6%のNPBと1.5%の2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレン(TBP、C-10)を含むホストとしての化合物AH3からなる厚さ20nmのコーティングを上記の基板上に蒸着し、青色発光層(青色LEL)を形成した。
【0121】
12.加熱したグラファイト・ボートを備えるコーティング・ステーションにおいて、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(Alq)からなる厚さ2.5nmの層を基板上に真空蒸着し、緩衝層を形成した。
【0122】
13.加熱したグラファイト・ボートを備えるコーティング・ステーションにおいて、2%の金属リチウムをドープしたトリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(Alq)からなる厚さ20nmの層を基板上に真空蒸着し、電子輸送層を形成した。
【0123】
14.電子注入層として厚さ0.5nmのLiF層を堆積させた。
【0124】
15.タンタル・ボートを備えるコーティング・ステーションにおいて電子輸送層の上に厚さ100nmのカソード層を堆積させた。
【0125】
16.次に、デバイスを乾燥ボックスに移して封止した。
【0126】
例2(本発明)
本発明のOLEDデバイスを例1のようにして構成したが、ステップ7と13における層が、Alqと化合物C-8の50:50混合物に2%の金属リチウムをドープしたものである点が異なっていた。
【0127】
結果(例1〜2)
電極間に20mA/cm2の電流を印加することによってデバイスをテストし、スペクトルと必要な駆動電圧を測定した。相対輝度効率は、実施例のデバイスの輝度効率(単位はcd/A)を、基準とする例1の輝度効率(単位はcd/A)で割った値として定義される。CIEの変化の大きさは、CIE色空間における色を基準とする例1と比較したときの変化の大きさである。以下の表に結果を示す。
【0128】
【表1】

【0129】
LUMO値
本発明の第1の化合物と第2の化合物を選択するときに重要な関係が1つ存在している。本発明の層に含まれる第1の化合物と第2の化合物のLUMO値の比較結果を注意深く考慮する必要がある。本発明のデバイスでは、第1の化合物だけ、または第2の化合物だけを含むデバイスよりも駆動電圧を低下させるには、化合物間にLUMO値の差があることが望ましい。第1の化合物は、第2の化合物よりもLUMO値が小さく(よりマイナスの値で)なければならない。
【0130】
LUMO値は、一般に電気化学的な方法で実験的に決定される。モデルCHI660電気化学分析装置(CHインスツルメンツ社、オースチン、テキサス州)を使用して電気化学的測定を行なった。サイクリック・ボルタンメトリー(CV)とオスターヤング矩形波ボルタンメトリー(SWV)を利用して興味の対象となる化合物の酸化還元特性を明らかにした。ガラス状炭素(GC)からなるディスク電極(A=0.071cm2)を作用電極として使用した。GC電極は、0.05μmのアルミナ・スラリーで研磨した後、ミリ-Q脱イオン水の中で超音波洗浄し、次いでアセトンを用いてリンスし、再びミリ-Q脱イオン水の中で超音波洗浄した。電極を最終的にクリーンにして電気化学的処理によって活性化した後、使用した。白金ワイヤーを補助電極として用い、SCEを準参照電極として用いて標準的な3電極電気化学的セルを完成させた。フェロセン(Fc)を内標準(1:1アセトニトリル/トルエン、0.1MのTBAFの中で飽和カロメル電極(SCE)を基準にしてEFc=0.50V)として使用した。アセトニトリルとトルエンの混合物(50%/50%v/vすなわち1:1)を有機溶媒系として用いた。サポート用電解質であるテトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム(TBAF)をイソプロパノールの中で2回再結晶させ、真空下で乾燥させた。使用したどの溶媒も、含水量が極めて少ないグレードであった(水が20ppm未満)。テスト溶液を高純度窒素ガスで約5分間にわたってパージして酸素を除去し、実験中は窒素ブランケットが溶液の上部に被さった状態を維持した。すべての測定を25±1℃という周囲温度で実施した。可逆的電極プロセスまたは準可逆的電極プロセスに関してはアノード・ピーク電位(Ep, a)とカソード・ピーク電位(Ep, c)を平均することによって、または不可逆的プロセスに関しては(SWVにおける)ピーク電位に基づき、酸化還元電位を決定した。本出願に関するすべてのLUMO値は以下の式から計算される。
【0131】
可逆的プロセスまたは準可逆的プロセスに関してSCEを基準とした正式な還元電位:
E0'還元 = (Epa + Epc)/2
【0132】
Fcを基準とした正式な還元電位:
Fcに対するE0'還元= (SCEに対するE0'還元 ) - EFc
ただしEFcはフェロセンの酸化電位E酸化である。
【0133】
LUMO値の予想される下限:
LUMO = HOMOFc - (Fcに対するE0'還元 )
ただしHOMOFc(フェロセンの最高被占軌道)は-4.8eVである。
【0134】
いくつかの第1の化合物と第2の化合物に関するLUMO値を表2にリストにしてある。本発明において有用な化合物を選択するには、第1の化合物は、それと対になる第2の化合物よりもLUMO値が小さくなければならない。
【0135】
【表2】

【0136】
低電圧電子輸送材料を決定するためのデバイスの製造
ある材料が低電圧電子輸送材料であるかどうかを調べるためのELデバイスを以下のようにして構成した。
【0137】
アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)を85nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0138】
a)プラズマ支援CHF3堆積により、ITOの上にフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を1nm堆積させた。
【0139】
b)次に、N,N'-ジ-1-ナフタレニル-N,N'-ジフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル(NPB)からなる厚さが75nmの正孔輸送層(HTL)をa)の上に蒸着した。
【0140】
c)次に、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(Alq)からなる厚さ35nmの発光層(LEL)を正孔輸送層の上に堆積させた。
【0141】
d)次に、低電圧電子輸送特性に関してテストする表3に例示した材料からなる厚さ35nmの層を発光層の上に堆積させた。
【0142】
e)ETLの上に厚さ0.5nmのLiF層を堆積させた。
【0143】
f)LiF層の上に厚さ130nmのAl層を堆積させてカソードを形成した。
【0144】
上記の順番でELデバイスの堆積が完了した。次に、このデバイスを保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封した。
【0145】
本発明で説明した追加の層は、第1の化合物と第2の化合物を含んでいる。第2の化合物は低電圧電子輸送材料である。本発明による追加の層において第1の化合物と第2の化合物の両方を上記の比率で組み合わせると、第1の化合物または第2の化合物のいずれかを単独でこの層に組み込んだデバイスと比較して駆動電圧がはるかに低下したデバイスが得られる。
【0146】
低電圧電子輸送材料は、ステップd)に記載したようにして電子輸送層に単独で組み込まれたとき、試験電圧が13ボルト以下になる材料である。試験電圧が10ボルト以下の低電圧電子輸送材料も本発明の第2の化合物として望ましいが、試験電圧が8ボルト以下である材料のほうが好ましい。低い駆動電圧に関してテストした材料と結果を表3に示す。
【0147】
【表3】

【0148】
表3から、化合物J-1、J-5、J-6は低電圧電子輸送材料だが、C-4、C-7、C-10、CBPはそうでないことがわかる。
【0149】
表1からわかるように、低電圧電子輸送材料を、n型をドープされた有機層に含まれる全化合物のうちでLUMO値が最低の多環式芳香族炭化水素化合物(化合物C-8)および金属リチウムと組み合わせて用いると(例2)、駆動電圧が低下し、高輝度効率で、色のシフトが無視できる結果になる。これは、この明細書に記載したように、この層に含まれる全化合物のうちでLUMO値が最低の多環式芳香族炭化水素化合物と、やはり低電圧電子輸送材料であるより大きなLUMO値を持つ第2の化合物と、仕事関数が4.2eV未満の金属をベースとした金属材料とを組み合わせると、動作電圧をより低くする他の材料で見られることのある色のシフトなしにより低い駆動電圧でOLEDデバイスが動作するという利点が提供されることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】(N-1)個の中間接続層によって直列に接続されたN個(N>1)のエレクトロルミネッセンス・ユニットを備えるタンデム式OLEDの概略断面図である。
【図2】1個の中間接続層によって直列に接続された2個のエレクトロルミネッセンス・ユニットを備える特別なタンデム式OLEDの概略断面図である。
【図3A】特別な中間接続層の構造の概略断面図である。
【図3B】特別な中間接続層の構造の概略断面図である。
【図3C】特別な中間接続層の構造の概略断面図である。
【図3D】特別な中間接続層の構造の概略断面図である。
【図3E】特別な中間接続層の構造の概略断面図である。
【図3F】特別な中間接続層の構造の概略断面図である。
【図3G】特別な中間接続層の構造の概略断面図である。
【符号の説明】
【0151】
100 タンデム式OLEDデバイス
110 アノード
120.1 1番目のエレクトロルミネッセンス・ユニット
120.2 2番目のエレクトロルミネッセンス・ユニット
120.(N-1) (N-1)番目のエレクトロルミネッセンス・ユニット
120.N N番目のエレクトロルミネッセンス・ユニット
130.1 1番目の中間接続層
130.2 2番目の中間接続層
130.(N-1) (N-1)番目の中間接続層
170 カソード
180 電圧/電流源
190 導電線
200 タンデム式OLEDデバイス
221.1 1番目のエレクトロルミネッセンス・ユニットのHIL
222.1 1番目のエレクトロルミネッセンス・ユニットのHTL
222.2 2番目のエレクトロルミネッセンス・ユニットのHTL
223.1 1番目のエレクトロルミネッセンス・ユニットのLEL
223.2 2番目のエレクトロルミネッセンス・ユニットのLEL
224.1 1番目のエレクトロルミネッセンス・ユニットのETL
224.2 2番目のエレクトロルミネッセンス・ユニットのETL
226.2 2番目のエレクトロルミネッセンス・ユニットのEIL
331 n型をドープされた有機層
332 インターフェイス層
333 電子受容層
335 p型をドープされた有機層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アノードと;
b)カソードと;
c)アノードとカソードの間に配置されていて、個別に選択された少なくとも1つの有機発光層をそれぞれが含む少なくとも第1のエレクトロルミネッセンス・ユニットおよび第2のエレクトロルミネッセンス・ユニットと;
d)第1のエレクトロルミネッセンス・ユニットと第2のエレクトロルミネッセンス・ユニットの間に配置された中間接続層とを備えていて、この中間接続層が、n型ドーパントと電子輸送材料とを含有するn型をドープされた有機層を含んでおり、その電子輸送材料が、
i)n型をドープされた有機層に含まれる全化合物のうちで最低のLUMO値を持ち、この層の10体積%以上かつ100体積%未満の量である第1の有機化合物と;
ii)第1の有機化合物よりもLUMO値が大きな少なくとも1種類の第2の有機化合物との混合物であり、第2の有機化合物のうちの少なくとも1つが低電圧電子輸送材料であり、その第2の有機化合物の合計量がこの層の90体積%以下であるタンデム式OLEDデバイス。
【請求項2】
上記n型ドーパントが金属材料である、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項3】
上記金属材料がCsまたはLiである、請求項2に記載のOLEDデバイス。
【請求項4】
上記第2の有機化合物が、フェナントロリンまたはその誘導体である、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項5】
上記第2の有機化合物が金属オキシノイドである、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項6】
上記第1の有機化合物が多環式芳香族炭化水素化合物である、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項7】
上記多環式芳香族炭化水素化合物が一般式(A):
【化1】

で表わされる(ただし、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は、水素または置換基として独立に選択され;
どの置換基も、合わさってさらに縮合環を形成することができる)、請求項6に記載のOLEDデバイス。
【請求項8】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12のうちの少なくとも1つがアルキル基とアリール基の中から独立に選択される、請求項7に記載のOLEDデバイス。
【請求項9】
上記多環式芳香族炭化水素化合物が、ルブレンまたはその誘導体である、請求項7に記載のOLEDデバイス。
【請求項10】
上記第2の化合物が、フェナントロリンまたはその誘導体である、請求項9に記載のOLEDデバイス。
【請求項11】
上記第2の化合物が金属オキシノイドである、請求項10に記載のOLEDデバイス。
【請求項12】
上記n型ドーパントが金属材料である、請求項7に記載のOLEDデバイス。
【請求項13】
上記金属材料がCsまたはLiである、請求項12に記載のOLEDデバイス。
【請求項14】
上記エレクトロルミネッセンス・ユニットのうちの少なくとも1つから出る光が白色である、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項15】
上記白色発光エレクトロルミネッセンス・ユニットのそれぞれが2つ以上の発光層を備えていて、その発光層が合わさって白色光を発生させる、請求項14に記載のOLEDデバイス。
【請求項16】
上記中間接続層がp型をドープされた有機層をさらに備えていて、そのp型をドープされた有機層が、n型をドープされた有機層よりもカソードの近くに配置されている、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項17】
上記中間接続層が、n型をドープされた有機層とp型をドープされた有機層の間に配置されたインターフェイス層をさらに備えていて、そのインターフェイス層が金属または金属化合物を含んでいる、請求項16に記載のOLEDデバイス。
【請求項18】
上記中間接続層が、n型をドープされた有機層よりもカソードの近くに配置された電子受容層をさらに備えていて、その電子受容層が1種類以上の有機材料を含んでおり、それぞれの有機材料は還元電位が標準カロメル電極を基準にして-0.5Vよりも大きく、1種類以上のその有機材料が電子受容層の50体積%を超える、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項19】
上記中間接続層が、上記電子受容層と接触したp型をドープされた有機層をさらに備えていて、そのp型をドープされた有機層が、電子受容層よりもカソードの近くに配置されている、請求項18に記載のOLEDデバイス。
【請求項20】
上記中間接続層が、n型をドープされた有機層と電子受容層の間に配置されたインターフェイス層をさらに備えていて、そのインターフェイス層が金属または金属化合物を含んでいる、請求項19に記載のOLEDデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【公表番号】特表2009−506513(P2009−506513A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529097(P2008−529097)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/032115
【国際公開番号】WO2007/027441
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】