説明

タンデム配列にまたがるプライマーの設計方法

【課題】本発明の目的は、塩基配列の少なくとも大部分が同一か完全に同一の第一、第二の塩基配列が、5‘末端側から第一、第二の塩基配列の順に連続してならぶ核酸配列において、核酸増幅または塩基配列解析用オリゴヌクレオチドを提供することである。
【解決手段】塩基配列の少なくとも大部分が同一か完全に同一の第一、第二の塩基配列が、5‘末端側から第一、第二の塩基配列の順に連続してならぶ核酸配列において、第二
の塩基配列へのまたがりが3〜11塩基であるオリゴヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基配列の少なくとも大部分が同一か完全に同一の第一、第二の塩基配列が、5‘末端側から第一、第二の塩基配列の順に連続してならぶ核酸配列において、第一、第二の塩基配列にまたがる核酸増幅または塩基配列解析用オリゴヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
プロモーターの転写活性を測定するレポーター遺伝子ベクターでは、プロモーター機能に依存しない、レポーター遺伝子のバックグラウンドとなるシグナルを低減させる必要がある。そのため、レポーター遺伝子の上流に、転写終結シグナルとなる配列を配置する。例えば、強力な転写終結シグナルであるSV40 early polyA signalを2つ(タンデムに)配置するという手法がとられてきた(非特許文献1)。
【0003】
レポーター遺伝子ベクターでは、前記転写終結シグナルとレポーター遺伝子の間のマルチクローニングサイトにプロモーター断片を挿入する。挿入後、挿入クローンをスクリーニングするため、挿入配列をはさむ領域をPCR増幅したり、挿入配列の塩基配列を確認するため、シーケンス解析を行う。
【0004】
前記SV40 early polyA signalタンデムを用いた場合、タンデム配列の第二配列の末端の配列を有するオリゴヌクレオチドは、第一の末端配列にも相補的であるため、PCRやシーケンス反応のプライマーとしては利用できない。また、SV40 early polyA signalタンデムよりも上流の配列のオリゴヌクレオチドでは、マルチクローニングサイト(挿入プロモーター)領域のシーケンス解析は難しい。そのため、これらの問題を克服した方法が必要とされていた。
【非特許文献1】Andrew, G.B. et al. Plasmid 44、173−182(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、塩基配列の少なくとも大部分が同一か完全に同一の第一、第二の塩基配列が、5‘末端側から第一、第二の塩基配列の順に連続してならぶ核酸配列において、核酸増幅または塩基配列解析用オリゴヌクレオチドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、塩基配列の少なくとも大部分が同一か完全に同一の第一、第二の塩基配列が、5‘末端側から第一、第二の塩基配列の順に連続してならぶ核酸配列において、第一、第二の塩基配列にまたがるオリゴヌクレオチドにより、核酸増幅または塩基配列解析を行うことが可能であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
1. ベクターのマルチクローニングサイトとレポーター遺伝子の間の、少なくとも第一塩基配列(5’側)と第二塩基配列(3’側)がこの順に並ぶ2以上の繰り返し塩基配列からなる挿入配列を確認するための方法であって、第一塩基配列と第二塩基配列を含む前記繰り返し配列は、各々50塩基以上の長さを有し、第一塩基配列と第二塩基配列にまたがるオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする方法。
【0007】
2. 3’→5’エキソヌクレアーゼ活性のあるDNAポリメラーゼと前記オリゴヌクレオチドを使用して前記挿入配列の確認を行うことを特徴とする項1に記載の方法。
【0008】
3. 第一塩基配列および第二塩基配列が、いずれもSV40 early polyAシグナルである、項2に記載のオリゴヌクレオチド。
【0009】
4. ベクターのマルチクローニングサイトとレポーター遺伝子の間の、少なくとも第一塩基配列(5’側)と第二塩基配列(3’側)がこの順に並ぶ2以上の繰り返し塩基配列からなる挿入配列を確認するためのオリゴヌクレオチドであって、第一塩基配列と第二塩基配列にまたがることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【0010】
5. 第一塩基配列に相補的な10〜25個の塩基配列と、第二塩基配列に相補的な3〜11個の塩基配列を有し、全体で15〜35個の塩基配列を有することを特徴とする請4に記載のオリゴヌクレオチド。
【0011】
6. 第二塩基配列に相補的な5〜11個の塩基配列を有することを特徴とする項5に記載のオリゴヌクレオチド。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法により、塩基配列の少なくとも大部分が同一か完全に同一の第一、第二の塩基配列が、5‘末端側から第一、第二の塩基配列の順に連続してならぶ核酸配列において、第一、第二の塩基配列にまたがるオリゴヌクレオチドにより、核酸増幅または塩基配列解析を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
PCRによる核酸増幅を行ったり、塩基配列解析のため、シーケンス反応を実施するためには少なくとも15残基以上(例えば、15〜35残基)、より好ましくは20残基以上(例えば、20〜35残基)からなるオリゴヌクレオチドが必要である。第一、第二の塩基配列にまたがるオリゴヌクレオチドを設計する際に、第二の塩基配列の配列を多く含んでしまうと、第一の塩基配列にも十分アニ―リング可能になってしまい、核酸増幅やシーケンス反応が不調となる。一方、第二の塩基配列の5’末端側の配列にあたる塩基が少ないと、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性のあるDNAポリメラーゼに5’末端側の配列にあたる塩基が削られてしまい、核酸増幅やシーケンス反応が不調となると予想される。好ましくは、第二の塩基配列へのまたがり(第二塩基配列と相補性の塩基配列)が3〜11塩基、より好ましくは5〜8塩基である。
【0014】
また、第一塩基配列と相補性の配列の長さは、好ましくは10〜25塩基である。塩基数が多すぎると第二塩基配列にも十分アニ―リング可能になってしまい、核酸増幅やシーケンス反応が不調となる。一方、第一塩基配列の3’末端側の配列にあたる塩基が少なすぎると、全体の塩基数が少なくなりすぎる。
【0015】
・ 第二の塩基配列にまたがるオリゴヌクレオチドは、通常15〜35塩基からなる。
【0016】
第一塩基配列及び第二塩基配列のような繰り返し配列は、短い場合には繰り返し配列全体を増幅させることが可能になる。従って、本発明では、第一塩基配列、第二塩基配列などの1つの繰り返し配列の長さは通常50〜400塩基、より好ましくは100〜300塩基からなる。
【0017】
第一塩基配列と第二塩基配列の長さは同一であるのが好ましいが、その長さの差は通常
10個以下、好ましくは3個以下、より好ましくは1個または0個である。長さの差が大きすぎる場合には、一方の繰り返し単位のみにハイブリダイズする塩基配列を容易に選択できるからである。
【0018】
第一塩基配列と第二塩基配列は、同一の配列であることが好ましいが、1または数個(通常5個以下)、好ましくは3個以下、より好ましくは1個または0個の置換、付加、挿入または欠失があってもよい。
【0019】
好ましい繰り返し配列は、SV40 early polyA signal、β-globin polyAシグナル及びこれらを改良したpolyAシグナルである。
【0020】
SV40 early polyA signalはポリA付加シグナルとなるAATAA配列を2つ含み、強力な転写終結シグナルと考えられ、プロモーター活性解析用のレポーター遺伝子ベクターにタンデムで配置させて利用される。
【0021】
本発明の特に好ましい実施態様は、SV40 early polyA signalタンデムを含むレポーター遺伝子ベクター用のプロモーター挿入確認用のオリゴヌクレオチド(プライマー)である。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例を例示することによって、本発明の効果をより一層明確なものとする。
実施例1 オリゴヌクレオチドによるシーケンス反応
レポーター遺伝子ベクターpSLG-test(東洋紡績)200 ngを鋳型として、第二配列へ5塩基またがったオリゴヌクレオチド1(PRORIGO)(配列番号1)、第二配列へ11塩基またがったオリゴヌクレオチド2(PRORIGO)(配列番号2)を用いて、 BigDye Terminator Sequencing v3.1 sequencing Kit(アプライドバイオシステムズジャパン)でシーケンス反応を行い、ABI PRISM 3100(アプライドバイオシステムズジャパン)で解析した。図2、3にそれぞれのオリゴヌクレオチドによる解析で良好な読取が行われたことを示唆する波形図を示す。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のSV40 early polyA signalタンデムを含むレポーター遺伝子ベクター用のプロモーター挿入の確認用のオリゴヌクレオチド(プライマー)として利用することができ、創薬などの産業界に寄与することが大である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】タンデム配列及び解析用オリゴヌクレオチドを示す図である。
【図2】オリゴヌクレオチド1による良好な解析結果を示す図である。
【図3】オリゴヌクレオチド2による良好な解析結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベクターのマルチクローニングサイトとレポーター遺伝子の間の、少なくとも第一塩基配列(5’側)と第二塩基配列(3’側)がこの順に並ぶ2以上の繰り返し塩基配列からなる挿入配列を確認するための方法であって、第一塩基配列と第二塩基配列を含む前記繰り返し配列は、各々50塩基以上の長さを有し、第一塩基配列と第二塩基配列にまたがるオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする方法。
【請求項2】
3’→5’エキソヌクレアーゼ活性のあるDNAポリメラーゼと前記オリゴヌクレオチドを使用して前記挿入配列の確認を行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一塩基配列および第二塩基配列が、いずれもSV40 early polyAシグナルである、請求項2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
ベクターのマルチクローニングサイトとレポーター遺伝子の間の、少なくとも第一塩基配列(5’側)と第二塩基配列(3’側)がこの順に並ぶ2以上の繰り返し塩基配列からなる挿入配列を確認するためのオリゴヌクレオチドであって、第一塩基配列と第二塩基配列にまたがることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
第一塩基配列に相補的な10〜25個の塩基配列と、第二塩基配列に相補的な3〜11個の塩基配列を有し、全体で15〜35個の塩基配列を有することを特徴とする請求項4に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
第二塩基配列に相補的な5〜11個の塩基配列を有することを特徴とする請求項5に記載のオリゴヌクレオチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−158291(P2006−158291A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354189(P2004−354189)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】