説明

タンパク質のグリコシル化を低下させる方法、その産生方法およびタンパク質

本開示は、ピキア属の種によって産生されるインスリンまたはインスリン類似体前駆体分子のO−グリコシル化レベルを低下させる方法に関する。本開示は、タンパク質マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)遺伝子の破壊による、ピキア、特にピキア・パストリスをはじめとするメタノール資化性酵母の遺伝子改変ノックアウト株を提供し、これらの株が低下したグリコシル化を有する異種タンパク質を産生することができるようにする。メタノール資化性酵母を形質転換するための、PMT1、PMT2、PMT4、PMT5、およびPMT6遺伝子のコード配列を含むベクターが本開示によって企図される。本開示のPMT不活化株は、チャンディーガルのMTCCに寄託されている。これらの株は、PMT1/GS115(MTCC 5515)、PMT4/GS115(MTCC 5516)、PMT5/GS115(MTCC 5517)およびPMT6/GS115(MTCC 5518)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ピキア属の種によって産生されるインスリン前駆体分子のO−グリコシル化レベルの低下をもたらす、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)のタンパク質マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)遺伝子の破壊に関する。本開示は、グリコシル化が低下した異種タンパク質を産生することができる、ピキア、特にピキア・パストリスをはじめとするメタノール資化性酵母の遺伝子改変ノックアウト株を提供する。メタノール資化性酵母を形質転換するための、PMT1、PMT2、PMT4、PMT5、およびPMT6遺伝子のコード配列を含むベクターが本開示によって企図される。
【背景技術】
【0002】
組換え型のインスリン、インスリン類似体および/または誘導体が、様々な微生物発現系で生産されている。現在、大腸菌(E.coli)、出芽酵母(S.cerevisiae)などの生物が、組換えヒトインスリンおよびその誘導体の商業生産に利用されている。低い発現レベル、終了段階の精製の困難などの、これらの系の特定のデメリットのために、メタノール資化性酵母ピキア・パストリスの使用がタンパク質発現系として好まれている。この発現系には、高発現、簡単な処理、低い生産コスト、高密度培養などのいくつかの利点がある(US6800606号)。
【0003】
酵母発現系は、増殖させるのが簡単で、迅速で、かつ拡大縮小が可能なので、人気がある;しかしながら、いくつかの酵母発現系では、一貫性のない結果が得られており、高収量を達成するのが難しいこともある。大いに期待できる1つの酵母発現系は、メタノール資化性酵母のピキア・パストリスである。他の真核生物発現系と比べて、ピキアには、多くの利点があるが、それは、ピキアには、動物細胞培養で産生されるタンパク質の細菌またはウイルス汚染の問題と関連するエンドトキシン問題がないからである(Cino,Am Biotech Lab,May 1999)。
【0004】
様々な利点が、ピキア・パストリスなどの酵母ベースの発現系に帰せられるにも関わらず、この系の大きなデメリットの1つは、得られるタンパク質の翻訳後修飾であり、これは後に、精製が困難な最終産物中の不純物として存在する。タンパク質のいくつかの翻訳後修飾が知られているが、最も一般的な形態の翻訳後修飾は、グリコシル化である(Hart G.W,Glycosylation,Curr.Opin.Cell.Biol 1992;4:1017)。グリコシル化は、発現系によって、N結合型またはO結合型のどちらかであることができる(Gemmill TR et al.,Overview of N− and O−linked oligosaccharide structures found in various yeast species,Biochemica et Biophysica Acta,1999;1426:227)。グリコシル化は、タンパク質立体構造の安定性、免疫原性、クリアランス速度、タンパク質分解からの保護に影響を及ぼし、タンパク質の溶解度を向上させる(Walsh G,Biopharmaceutical benchmarks 2006,Nature Biotechnology,2006;24:769)。
【0005】
酵母では、ゴルジ装置における糖分岐の修飾は、様々なマンノシルトランスフェラーゼによる一連のマンノース残基付加(「外鎖」グリコシル化)を伴う。外鎖グリコシル化の構造は、生物に特異的である。そのようなグリコシル化は、タンパク質精製を複雑にし得る、炭水化物の組成と分子量の両方における組換えタンパク質産物の不均質性をもたらすので、望ましくないことが多い。それは、タンパク質を非常に免疫原性の高いものにすることもあるし、または望ましくないアレルギー反応を引き起こすこともある。
【0006】
バイオテクノロジー的製造の向上に大きな進歩が見られるにも関わらず、あらゆるタンパク質に対する包括的な解決法は存在しない。特定の治療用タンパク質の製造方法は、そのタンパク質またはタンパク質ファミリーに特異的であり得る問題に対する新規でかつ革新的な解決法を必要としている。
【0007】
したがって、タンパク質のグリコシル化を改変して、これを本質的に低下させことができ、かつ所望の最終産物の生産性に影響を及ぼすことなく、哺乳動物様の翻訳後パターンを有する組換え糖タンパク質を産生することができる、ピキア・パストリスなどのメタノール資化性酵母株を遺伝子改変することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本開示は、それぞれ、配列番号1、2、3、4および5によって表されるヌクレオチド配列と少なくとも80%相同であるヌクレオチド配列を有するPMT1、PMT2、PMT4、PMT5およびPMT6遺伝子を含む群から選択される少なくとも1つまたは複数の遺伝子の不活化によって可能になったメタノール資化性酵母から産生されるタンパク質のグリコシル化を低下させる方法であって、該配列が、タンパク質マンノシルトランスフェラーゼまたはその機能部分をコードする、方法;それぞれ、配列番号1、2、3、4および5によって表されるヌクレオチド配列と少なくとも80%相同であるヌクレオチド配列を有するPMT1、PMT2、PMT4、PMT5およびPMT6遺伝子を含む群から選択されるタンパク質マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子またはその機能部分を含むベクターであって、このベクターの相同遺伝子座への組込みが、宿主、好ましくは、メタノール資化性酵母内での機能的なタンパク質マンノシルトランスフェラーゼの発現を阻害する、ベクター;(a)ベクターが、それぞれ、配列番号1、2、3、4および5によって表されるヌクレオチド配列と少なくとも80%相同であるヌクレオチド配列を有するPMT1、PMT2、PMT4、PMT5およびPMT6を含む群から選択される遺伝子のうちの少なくとも1つをコードする標的核酸配列と、選択マーカーをコードする核酸配列とを含む、相同組換えが可能な核酸配列を組み込み、(b)ベクター中の標的遺伝子をコードするDNAと、宿主細胞内の標的遺伝子をコードするDNAとの間の相同組換えが生じるのを可能にする条件下で細胞を培養し、それにより、宿主細胞内での標的遺伝子の破壊をもたらし、(c)不活化された標的遺伝子を有する宿主細胞を選択する、メタノール資化性酵母のノックアウト株の産生方法;上記の方法から産生されるタンパク質;メタノール資化性酵母のノックアウト株であって、該株が、それぞれ、配列番号1、2、3、4および5によって表されるヌクレオチド配列と少なくとも80%相同であるヌクレオチド配列を有するPMT1、PMT2、PMT4、PMT5およびPMT6を含む群から選択される少なくとも1つの不活化遺伝子を有する、ノックアウト株;上記のPMT1遺伝子不活化株;上記のPMT4遺伝子不活化株;上記のPMT5遺伝子不活化株;上記のPMT6遺伝子不活化株;上記のノックアウト株から産生されるタンパク質;請求項23に記載のノックアウト株から産生されるタンパク質、ここで、このノックアウト株は、MTCC 5515、MTCC 5516、MTCC 5517、MTCC 5518またはそれらの任意の修飾株のうちの1つである;ならびに上記の内容のいずれかによるタンパク質、ここで、このタンパク質は修飾されたグリコシル化を示す、に関するものである。
【0009】
本開示の概要
本開示は、グリコシル化が低下したタンパク質を産生する方法であって、該方法が、メタノール資化性酵母株を遺伝子改変し、その株がグリコシル化が低下したタンパク質を産生できるようにするベクターの使用を含む、方法に関する。
【0010】
好ましい実施形態では、本開示の不活化ベクターは、タンパク質マンノシルトランスフェラーゼ(PMT、ドリチル−リン酸−マンノース−タンパク質マンノシルトランスフェラーゼタンパク質、E.C.2.4.1.109)またはその機能部分をコードするヌクレオチド配列を含み、メタノール資化性酵母株のタンパク質マンノシルトランスフェラーゼまたはその機能部分を破壊または不活化することができる。好ましいヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10に示した遺伝子を破壊するために選択された、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5に示したPMT1、PMT2、PMT4、PMT5、PMT6遺伝子およびそれらの機能部分をコードするヌクレオチド配列である。
【0011】
本開示に示される方法に従って、異種タンパク質を発現することができるヌクレオチド配列を、本開示のベクターの1つまたは複数で前もって段階的に形質転換されたメタノール資化性酵母株に導入することができる。そのような酵母株を、本開示の1つまたは複数のベクターで、連続的にまたは同時に形質転換することができる。さらに、メタノール資化性酵母株を、配列表に示したタンパク質マンノシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む本不活化ベクターの1つまたは複数で形質転換することができる。
【0012】
本方法およびベクターを用いて作製されるメタノール資化性酵母株、ならびにそのような遺伝子改変株から産生されるタンパク質も提供される。
【0013】
本開示の方法を用いて産生される異種タンパク質産物、すなわち、O−グリコシル化が低下したタンパク質も本開示の一部である。
【0014】
本開示の最も重要な態様によれば、所望の最終産物の生産性は、影響を受けないままである。
【0015】
本開示のさらなる目的および利点は以下の記載に一部示されており、この記載から一部明らかとなるか、または本開示の実施から習得することができる。これらの目的および利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘されている手段および組合せによって実現および達成することができる。
【0016】
本明細書に組み込まれ、かつ本出願の一部を構成する添付の図面は、本開示において有用な様々な属性を例示しており、本記載とともに、本開示の最も重要な点を形成する様々な重要な属性を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】PMT遺伝子をpPICZαにサブクローニングすることによって得られたクローン。レーン1=制限酵素BamHIおよびSmaIで消化されたPMBL184プラスミド(1775+576bp断片)、レーン2=制限酵素BstEIIで消化されたPMBL184プラスミド(2351bp断片を線状化する)、レーン3=制限酵素BamHIおよびSmaIで消化されたPMBL185プラスミド(1930+431bp断片)レーン4=制限酵素KpnIで消化されたPMBL185プラスミド(2361bp断片を線状化する)、レーン5=マーカー、λDNA EcoRIおよびHindIII消化物、レーン6=制限酵素BamHIおよびSmaIで消化されたPMBL186プラスミド(1923+428bp断片)、レーン7=制限酵素XmnIで消化されたPMBL186プラスミド(2351bp断片を線状化する)。レーン8=制限酵素BamHIおよびSmaIで消化されたPMBL187プラスミド(1929+437bp断片)、レーン9=制限酵素BstEIIで消化されたPMBL187プラスミド(2366bp断片を線状化する)、レーン10=制限酵素BamHIおよびSmaIで消化されたPMBL188プラスミド(1929+497bp断片)ならびにレーン11=制限酵素NdeIで消化されたPMBL188プラスミド(2426bp断片を線状化する)。
【図2a】pMBL184は、pPICZαにクローニングされたPMT1破壊遺伝子を表している。このプラスミドを線状化するために制限部位BstEIIを用いた。
【図2b】PMT1遺伝子が破壊されたノックアウトBICC#9104、レーン1および13=λマーカー、レーン18=BICC#9104。
【図2c】ゲノムDNAを制限酵素HindIIIで消化し、PMT1破壊断片をプローブとして用いることによるサザンブロット。レーンM=1Kb DNAマーカー、レーン1=インスリン前駆体産生親クローン#11、レーン2=PMT1ノックアウトインスリン前駆体産生クローン#11、レーン3=インスリン前駆体産生親クローン#8、レーン4=#8のPMT1ノックアウトインスリン前駆体産生クローン、レーン5=インスリン類似体前駆体産生親クローン、レーン6=PMT1ノックアウトインスリン類似体前駆体産生クローンおよびプラスミド対照。
【図3a】pMBL188は、pPICZαプラスミドにクローニングされたPMT6破壊遺伝子を表している。このプラスミドを線状化するために制限部位NdeIを用いた。
【図3b】PMT6遺伝子ノックアウトのPCR確認の結果。レーン1=DNAマーカー、1kbラダー、レーン2=InsteZRPおよびPMT6DSCHKを用いた親クローンPCR(産物なし)、レーン3=InsteZRPおよびPMT6DSCHKを用いたBICC#9107 PCR(895bp産物)、レーン4=TEFDSRPおよびSPMT6DCFPを用いた親クローンPCR(産物なし)、レーン5=TEFDSRPおよびSPMT6DCFPを用いたBICC#9107 PCR(639bp産物)、レーン6=ISCHKFPおよびPMT6DSCHKを用いたBICC#9107 PCR(835bp産物)。
【図4a】pMBL186は、pPICZαプラスミドにクローニングされたPMT4破壊遺伝子を表している。このプラスミドを線状化するために制限部位XcmIを用いた。
【図4b】破壊されたPMT4遺伝子のPCR確認の結果。レーン1=InsteZRPおよびPMT4DSCHKを用いた親クローンPCR(産物なし、陰性対照)、レーン2=InsteZRPおよびPMT6DSCHKを用いた陽性対照PMT6 #79(895bp産物)、レーン3=InsteZRPおよびPMT4DSCHKを用いたBICC#9105 PCR(981bp産物)(4次継代培養)、レーン4=TEFDSRPおよびSPMT4DCFPを用いたBICC#9105 PCR(649bp産物)(4次継代培養)、レーン5=1kbラダーDNAマーカー、レーン6=InsteZRPおよびPMT4DSCHKを用いたBICC#9105 PCR(981bp産物)(1次継代培養)、レーン7=TEFDSRPおよびSPMT4DRPを用いたBICC#9105 PCR(649bp産物)(1次継代培養)。
【図5a】pMBL187は、pPICZαプラスミドにクローニングされたPMT5破壊遺伝子を表している。このプラスミドを線状化するために制限部位BstEIIを用いた。
【図5b】PMT5破壊クローンのPCRスクリーニング。レーン1および13=DNA分子量マーカーレーン2〜12および14〜21は、スクリーニングされた様々なPMT5破壊クローンである。
【図6a】pMBL185は、pPICZαプラスミドにクローニングされたPMT2破壊遺伝子を表している。このプラスミドを線状化するために制限部位KpnIを用いた。
【図6b】PMT2遺伝子ノックアウト陽性スクリーニング。
【図7】PMT1/インスリンクローンのグリコシル化の低下を示すクロマトグラムの重ね合わせ。
【図8】PMT1遺伝子不活化前後のインスリン類似体1に関するグリコシル化プロファイルを示すRPHPLCプロファイル。
【図9】PMT1遺伝子不活化前後のインスリン類似体2に関するグリコシル化プロファイルを示すRPHPLCプロファイル。
【0018】
添付の配列表の表示
配列番号1:PMT1のヌクレオチドコード配列
配列番号2:PMT2のヌクレオチドコード配列
配列番号3:PMT4のヌクレオチドコード配列
配列番号4:PMT5のヌクレオチドコード配列
配列番号5:PMT6のヌクレオチドコード配列
配列番号6:PMT1の破壊された配列
配列番号7:PMT2の破壊された配列
配列番号8:PMT4の破壊された配列
配列番号9:PMT5の破壊された配列
配列番号10:PMT6の破壊された配列
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、それぞれ、配列番号1、2、3、4および5によって表されるヌクレオチド配列と少なくとも80%相同であるヌクレオチド配列を有するPMT1、PMT2、PMT4、PMT5およびPMT6遺伝子を含む群から選択される少なくとも1つまたは複数の遺伝子の不活化によって可能になったメタノール資化性酵母から産生されるタンパク質のグリコシル化を低下させる方法であって、該配列がタンパク質マンノシルトランスフェラーゼまたはその機能部分をコードする、方法に関する。
【0020】
本開示の一実施形態では、メタノール資化性酵母はピキア属の種に属する。
【0021】
本開示の別の実施形態では、メタノール資化性酵母はピキア・パストリスである。
【0022】
本開示のさらなる実施形態では、タンパク質は、式Iによって表される。
【化1】

(式中、
Xは、少なくとも1つのアミノ酸を含むリーダーペプチド配列であり、
Bは、インスリン分子のB鎖、その誘導体または類似体のアミノ酸配列であり、
Yは、少なくとも1つのアミノ酸を含むリンカーペプチドであり、
Aは、インスリン分子のA鎖、その誘導体または類似体のアミノ酸配列であり、かつ
このA鎖およびB鎖は、アミノ酸の置換、欠失および/または付加によって修飾することができる。)
【0023】
本開示の別の実施形態では、グリコシル化の様式はO−グリコシル化である。
【0024】
本開示のさらに別の実施形態では、グリコシル化は、少なくとも10%〜約99%低下する。
【0025】
本開示のまた別の実施形態では、グリコシル化は25%低下する。
【0026】
本開示のまた別の実施形態では、グリコシル化は65%低下する。
【0027】
本開示は、それぞれ、配列番号1、2、3、4および5によって表されるヌクレオチド配列と少なくとも80%相同であるヌクレオチド配列を有するPMT1、PMT2、PMT4、PMT5およびPMT6遺伝子を含む群から選択されるタンパク質マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子またはその機能部分を含むベクターに関するものであり、このベクターの相同遺伝子座への組込みは、宿主、好ましくは、メタノール資化性酵母内での機能的なタンパク質マンノシルトランスフェラーゼの発現を阻害する。
【0028】
本開示の一実施形態では、メタノール資化性酵母から産生されるタンパク質上のグリコシル化を低下させるかまたは修飾する方法であって、該酵母を上記のベクターで形質転換することを含む、方法である。
【0029】
本開示の別の実施形態では、メタノール資化性酵母はピキア属の種に属する。
【0030】
本開示のさらに別の実施形態では、メタノール資化性酵母はピキア・パストリスである。
【0031】
本開示は、メタノール資化性酵母のノックアウト株の産生方法であって、
(a)ベクターが、それぞれ、配列番号1、2、3、4および5によって表されるヌクレオチド配列と少なくとも80%相同であるヌクレオチド配列を有するPMT1、PMT2、PMT4、PMT5およびPMT6を含む群から選択される遺伝子のうちの少なくとも1つをコードする標的核酸配列と、選択マーカーをコードする核酸配列とを含む、相同組換えが可能な核酸配列を組み込み、
(b)ベクター中の標的遺伝子をコードするDNAと、宿主細胞内の標的遺伝子をコードするDNAとの間の相同組換えが生じるのを可能にする条件下で細胞を培養し、それにより、宿主細胞内での標的遺伝子の破壊をもたらし、
(c)不活化された標的遺伝子を有する宿主細胞を選択する、
前記方法に関する。
【0032】
本開示はさらに、該前述の項のいずれかに記載の方法から産生されるタンパク質に関する。
【0033】
本開示はさらに、メタノール資化性酵母のノックアウト株であって、該株が、それぞれ、配列番号1、2、3、4および5によって表されるヌクレオチド配列と少なくとも80%相同であるヌクレオチド配列を有するPMT1、PMT2、PMT4、PMT5およびPMT6を含む群から選択される少なくとも1つの不活化遺伝子を有するノックアウト株に関する。
【0034】
本開示は、受託番号MTCC5515を有する、上記のPMT1遺伝子不活化株に関する。
【0035】
本開示はさらに、受託番号MTCC5516を有する、上記のPMT4遺伝子不活化株に関する。
【0036】
本開示は、受託番号MTCC5517を有する、上記のPMT5遺伝子不活化株に関する。
【0037】
本開示はさらに、受託番号MTCC5518を有する、上記のPMT6遺伝子不活化株に関する。
【0038】
本開示の一実施形態では、宿主株は、改変されていない宿主株内で発現されるタンパク質産物と比べてグリコシル化のレベルが低下したタンパク質を産出する。
【0039】
本開示のさらに別の実施形態では、グリコシル化は、少なくとも25%低下する。
【0040】
本開示のまた別の実施形態では、グリコシル化は、少なくとも65%低下する。
【0041】
本開示は、上記のノックアウト株から産生されるタンパク質に関する。
【0042】
本開示は、請求項23に記載のノックアウト株から産生されるタンパク質に関するものであり、ここで、このノックアウト株は、MTCC 5515、MTCC 5516、MTCC 5517、MTCC 5518またはそれらの任意の修飾株のうちの1つである。
【0043】
本開示の一実施形態では、選択マーカーはゼオシン耐性マーカーである。
【0044】
本開示の別の実施形態では、タンパク質はインスリン/インスリン類似体/インスリン前駆体分子である。
【0045】
本開示のまた別の実施形態では、産生されるタンパク質は異種タンパク質産物である。
【0046】
本開示のまた別の実施形態では、タンパク質は、修飾されたグリコシル化を示す。
【0047】
本開示のまた別の実施形態では、所望のタンパク質最終産物の生産性は、影響を受けないままである
【0048】
これから、以下の実施例とともに、本開示の原則を説明するのに役立つ、本開示の現在好ましい実施形態に関して詳細に言及する。
【0049】
以下の実施例は、本開示の理解を助けるために示されるが、決して、その範囲を限定することが意図されるものではなく、また、そのようなものと解釈されるべきではない。本実施例は、ベクターの構築、ポリペプチドをコードする遺伝子のそのようなベクターへの挿入または得られたプラスミドの宿主への導入に利用される従来法に関する詳細な説明を含まない。本実施例は、そのような宿主ベクター系によって産生されるポリペプチドをアッセイするのに利用される従来法に関する詳細な説明も含まない。そのような方法は当業者に周知であり、一例として挙げたものを含む、多くの刊行物に記載されている。
【0050】
標準的な技術が、様々な組換えDNA技術、形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)およびアッセイに用いられる。組換え技術および手順は、通常、当技術分野で周知であり、かつ本明細書を通じて引用および考察されている様々な一般的参考文献およびより具体的な参考文献に記載されているような従来法によって実施される。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001))を参照されたい。
【0051】
本開示を記載し、かつ特許請求する際には、本明細書に示す定義に従って、以下の専門用語を用いる。本明細書で特に定義しない限り、本開示と関連する科学用語および技術用語は、当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有するものとする。さらに、文脈上、他の意味に解すべき場合を除き、単数形の用語は複数物を含むものとし、また、複数形の用語は単数物を含むものとする。本開示の方法および技術は、通常、当技術分野で周知の従来法に従って実施される。通常、本明細書に記載の分子細胞生物学、生化学、タンパク質化学および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションとの関連で用いられる命名法、ならびに本明細書に記載の分子細胞生物学、生化学、タンパク質化学および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションの技術は、当技術分野で周知であり、かつ一般に用いられているものである。本開示の方法および技術は、通常、当技術分野で周知の従来法に従って実施される。
【0052】
本明細書で使用する場合、「アミノ酸」は、ペプチドもしくはタンパク質配列またはそれらの部分を指す。「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語は、互換的に用いられる。
【0053】
本開示の好ましい実施形態による異種タンパク質は、インスリンまたはインスリン類似体前駆体分子である。
【0054】
式Iによって表される異種タンパク質をコードするDNA。
【化2】

(式中、
Xは、少なくとも1つのアミノ酸を含むリーダーペプチド配列であり、
Bは、インスリン分子のB鎖、その誘導体または類似体のアミノ酸配列であり、
Yは、少なくとも1つのアミノ酸を含むリンカーペプチドであり、
Aは、インスリン分子のA鎖、その誘導体または類似体のアミノ酸配列であり、かつ
このA鎖およびB鎖は、アミノ酸の置換、欠失および/または付加によって修飾することができる。)
【0055】
本明細書で使用される「C−ペプチド」または「リンカーペプチド」という用語は、天然または合成のペプチドを含む、全ての形態のインスリンC−ペプチドを含む。そのようなインスリンC−ペプチドは、ヒトペプチドであってもよいし、または他の動物種および属、好ましくは哺乳動物由来のものであってもよい。したがって、天然のインスリンC−ペプチドの変異体および修飾物は、それらがインスリンC−ペプチド活性を保持する限り、含まれる。その有用な活性を保持しながら、タンパク質またはペプチドの配列を修飾することが当技術分野で知られており、これは、当技術分野において標準であり、かつ文献中に広く記載されている技術、例えば、核酸のランダムなまたは部位特異的な突然変異誘発、切断およびライゲーションなどを用いて達成することができる。したがって、天然のインスリンC−ペプチド配列の機能的に等価な変異体または誘導体は、当技術分野で周知の技術によって容易に調製され、かつ天然のインスリンC−ペプチドの機能的な、例えば、生物学的な活性を有するペプチド配列を含むことができる。インスリンC−ペプチドの全てのそのような類似体、変異体、誘導体または断片が、本開示の範囲に特に含まれており、かつ「インスリンC−ペプチド」という用語に包含されている。
【0056】
リンカー配列は、少なくとも2つのアミノ酸を有する任意の配列であることができる。リンカー領域は、2〜25、2〜15、2〜12または2〜10アミノ酸残基を含むことができるが、その長さは重要ではなく、便宜を図ってもしくは選択肢に従って選択することができるか、またはそれは、リンカーを含まないものとすることができる。
【0057】
リンカーペプチドは、最初の2つのアミノ酸が「RR」に相当する条件で少なくとも2つのアミノ酸を含む任意の配列であることができる。
【0058】
本開示のさらに他の実施形態によるポリペプチドは、インスリングラルギンの活性を有すると本明細書でみなされ、例えば、ヒトインスリン構造の2つの変化:ヒトインスリンのA鎖の位置A21にある天然のアスパラギンのアミノ酸グリシンへの置換と、組換えDNA技術によって産生されたヒトインスリンB鎖のCOOH末端への2つのアルギニン分子の付加とを有するアミノ酸配列を有することが理解されるインスリングラルギン(glargine)である。インスリングラルギンを含む任意のインスリンの主な作用は、ブドウ糖代謝の調節である。インスリンおよびその類似体は、特に、骨格筋および脂肪内における末梢ブドウ糖摂取の刺激によって、および肝臓によるブドウ糖産生の阻害によって血糖値を低下させる。
【0059】
「挿入による不活化」という用語は、遺伝子機能の喪失をもたらす、外因性DNAの挿入による遺伝子のコード領域の中断を意味する。これは、形質転換後の組換え体の容易な選択を可能にするために、遺伝子技術において広く用いられている。
【0060】
「ノックアウト」という用語は遺伝子の破壊を指し、ここで、この破壊は、天然遺伝子の機能的不活化;天然遺伝子もしくはその一部の欠失、または天然遺伝子の突然変異をもたらす。特に、本開示との関連で、「ノックアウト」は、PMT1、PMT2、PMT4、PMT5、PMT6遺伝子の破壊を指す。
【0061】
ノックアウト株を、当技術分野で効果的であることが知られている様々な方法のいずれかによって調製することができる。例えば、所望の核酸欠失配列の5’および3’に相同な標的化遺伝子配列を含む相同組換えベクターを、宿主細胞に形質転換することができる。理想的には、相同組換えによって、所望の標的化酵素遺伝子ノックアウト体を産生することができる。
【0062】
「相同組換え」は、同一またはほぼ同一のヌクレオチド配列の部位での2つのDNA分子対合染色体間のDNA断片の交換を意味する。相同組換えでは、入ってくるDNAが、実質的に相同なDNA配列を含むゲノム中の部位と相互作用し、その部位の中に組み込まれる。非相同組換えによる(「ランダムな」または「不正な」)組込みでは、入ってくるDNAが、ゲノム中の相同配列ではなく、どこか別の、可能性がある多くの場所のうちの1つに組み込まれる。
【0063】
例えば、内在性標的遺伝子に相同なDNAが隣接する、機能的または非機能的な突然変異体遺伝子(例えば、標的遺伝子に隣接するコード領域)を、選択マーカーおよび/もしくは陰性選択マーカーとともに、またはこれらのマーカーなしで用いて、インビボで望ましくない形態の標的遺伝子をコードする細胞を形質転換することができる。標的相同組換えによるDNAコンストラクトの挿入は、内在性遺伝子の不活化をもたらす。
【0064】
本明細書で使用する場合、「相同な」という用語は、i)所与のもとのタンパク質もしくはペプチドの配列と実質的に(すなわち、少なくとも70、75、80、85、90、95、もしくは98%)類似しているアミノ酸配列を有し、かつもとのタンパク質もしくはペプチドの所望の機能を保持するタンパク質もしくはペプチド、またはii)所与の核酸の配列と実質的に(すなわち、少なくとも70、75、80、85、90、95、もしくは98%)類似している配列を有し、かつもとの核酸配列の所望の機能を保持する核酸のいずれかを意味する。本開示および開示の実施形態の全てにおいて、任意の開示されたタンパク質、ペプチドまたは核酸を、所望の機能を保持する相同または実質的に相同なタンパク質、ペプチドまたは核酸と置き換えることができる。本開示および開示の実施形態の全てにおいて、任意の核酸が開示される場合、本開示が、開示された核酸にハイブリダイズする全ての核酸も含むと考えられるべきである。
【0065】
「機能部分」とは、全長タンパク質の酵素活性を実質的に保持しているPMT遺伝子の断片を意味する。「実質的に」とは、全長PMTの酵素活性の少なくとも約40%、または好ましくは、少なくとも50%またはそれより多くが保持されていることを意味する。
【0066】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれている場合、「機能的に連結されて」いる。したがって、制御配列と「機能的に連結された」コード配列は、コード配列をこれらの配列の制御下で発現することができ、かつ連結されているDNA配列が連続的である配置を指す。
【0067】
本明細書で使用する場合、「発現」という用語は、遺伝子の核酸配列に基づいてポリペプチドが産生される方法を指す。この方法には、転写と翻訳の両方が含まれる。
【0068】
一態様では、単離された核酸分子は、PMT1、PMT2、PMT4、PMT5、PMT6遺伝子をコードするDNA分子との少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約82%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約83%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約84%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約86%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約87%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約88%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約89%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約90%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約91%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約92%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約93%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約94%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約95%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約96%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約97%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約98%の核酸配列同一性、およびあるいは少なくとも約99%の核酸配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0069】
あるいは、比較のための配列の最適アラインメントを、Smith and Waterman(1981)Add.APL.Math 2:482の局所同一性アルゴリズムによるか、Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443の同一性アラインメントアルゴリズムによるか、Pearson and Lipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444の類似性検索の方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ制御された履行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group(GCG),575 Science Dr.,Madison,Wis.におけるBLAST、FASTA、GAP、BESTFITおよびTFASTA)によるか、または目視によって実施することができる。パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに好適であり得るアルゴリズムの一例は、それぞれ、Altschul et al.(1977)Nucl.Acids Res.25:3389−3402およびAltschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−410に記載されている、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。
【0070】
より具体的には、本開示は、少なくとも配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5を含む(include)かもしくは含む(comprise)核酸配列、好適には、単離された核酸配列、それらの変異体もしくはそれらの部分、または変異体もしくは部分を含む、PMT1、PMT2、PMT4、PMT5、PMT6遺伝子のうちの少なくとも1つに関する。本開示はまた、ストリンジェントな条件下でこれらの核酸配列とハイブリダイズすることができる単離された核酸配列に関する。
【0071】
本開示は、本明細書に記載の遺伝子のいずれかをコードするDNAを含むベクターを提供する。任意のそのようなベクターを含む宿主細胞も提供する。例として、宿主細胞は、細菌、真菌、または哺乳動物であってもよい。
【0072】
本開示はまた、上で定義した核酸配列の少なくとも一部が破壊されて、対応するもとの組換え宿主細胞と比べて、グリコシル化のレベルが低下したインスリン前駆体を産生する組換え宿主細胞を生じさせる組換え宿主細胞に関する。組換え発現系は、原核生物および真核生物宿主から選択される。真核生物宿主としては、酵母細胞(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア・パストリス)、哺乳動物細胞または植物細胞が挙げられる。細菌細胞および真核生物細胞は、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC;Rockville,Md.)などの、市販供給源を含むいくつかの異なる供給源から当業者に入手可能である。組換えタンパク質発現に用いられる細胞の市販供給源は、細胞の使用のための指示書も提供する。発現系の選択は、発現されるポリペプチドに望ましい特徴によって決まる。
【0073】
最も好ましくは、本開示に対する態様に関連して、最も好ましい宿主細胞は、メタノール資化性酵母である。本開示を用いて修飾することができるメタノール資化性酵母の株としては、ピキア属、カンジダ属、ハンセヌラ属、またはトルロプシス属の酵母などの、メタノールで増殖することができる酵母株が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいメタノール資化性酵母は、ピキア属のものである。本方法を用いて修飾することができるメタノール資化性酵母株には、目的の1以上の異種タンパク質を発現するように改変されているメタノール資化性酵母株も含まれる。これらの前もって遺伝子改変された株から発現された異種タンパク質上のグリコシル化は、そのような株を本開示のベクターの1つまたは複数で形質転換することによって低下させることができる。
【0074】
宿主細胞または生物を、標準的な技術を用いて、組換えタンパク質またはペプチドを発現するように改変することができる。例えば、組換えタンパク質を、ベクターから、または宿主のゲノム中に挿入された外因性遺伝子から発現させることができる。
【0075】
外因性タンパク質を発現させるために用いることができるベクターは当技術分野で周知であり、以下に記載されている。組換えタンパク質またはペプチドを発現させるための遺伝子を、本開示に記載されているように、相同組換えまたは異種組換えなどの技術を用いてゲノム中に挿入することもできる。タンパク質マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子を有する本開示の好ましいベクターとしては、pPICZαおよびpTZ57Rが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
別の態様では、本開示は、メタノール資化性酵母株に導入され、遺伝子を不活化または破壊し、それにより、最終産物の生産性に影響を及ぼすことなく、メタノール資化性酵母株で産生される所望のタンパク質最終産物のグリコシル化の低下を促進する不活化ベクターを提供する。
【0077】
組換えタンパク質またはペプチドは、化学化合物による誘導後、または内在性遺伝子もしくは遺伝子産物の発現により発現されることができる。組換えタンパク質は、宿主細胞が特定の環境に置かれたときに発現されることもできる。特定のプロモーターエレメントを以下に記載する。
【0078】
本明細書で使用する場合、「形質転換された」および「安定に形質転換された」という用語は、少なくとも2世代の間維持されるエピソーム性プラスミドの中に組み込まれた非天然(異種)ポリヌクレオチド配列を組み込むように作製された細胞を指す。
【0079】
本明細書で使用する場合、「組換え」は、異種核酸配列の導入によって修飾されている細胞もしくはベクター、または細胞が、そのように修飾された細胞に由来することに対する言及を含む。
【0080】
ベクターは、エレクトロポレーション、ウイルス感染、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラン、直接的なマイクロインジェクション、DNAをローディングしたリポソームおよびリポフェクトアミン−DNA複合体、細胞の超音波処理、高速マイクロプロジェクタイルを用いる遺伝子衝撃または本明細書に記載のもしくは当技術分野で公知の任意の他の手段を含むが、これらに限定されない、手段によって宿主細胞に形質転換することができる。
【0081】
本開示はまた、所望のタンパク質を産生する方法であって、所望の最終産物の産生を導くのに十分なポリペプチドをコードする遺伝子が組み込まれている、ピキア属の種などの生物内で、そのようなタンパク質化合物またはその類似体を産生するのに好適な条件下および培地中で発酵させることを含む、方法に関する。
【0082】
タンパク質マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子(PMT)は、小胞体中のタンパク質のセリンおよびトレオニン残基のO−グリコシル化を触媒することが分かっている。本開示では、PMT遺伝子の破壊によって、産生されるインスリン前駆体分子のO−グリコシル化レベルが劇的に減少することが示されている。PMT1遺伝子の破壊によって、約65%のマンノシル化の減少を示すインスリン前駆体が生じた。PMT5およびPMT6遺伝子の個々の破壊によって、それぞれ、31%および28%のインスリン前駆体グリコシル化レベルの低下が生じた。PMT2およびPMT4の破壊は、マンノシル化に影響を及ぼさなかった。
【0083】
本明細書で使用する場合、「低下した発現」という用語は、目的のタンパク質の低下した産生を含むものと広く解釈される。低下した発現とは、本明細書中の教示によって改変されていないが、本質的に同じ増殖条件の下で増殖した対応する宿主株内での通常の発現レベルを下回る発現のことである。本開示との関連において、目的の酵素またはタンパク質は、インスリン/インスリン類似体前駆体分子のマンノース残基のグリコシル化において重要な役割を果たすマンノシルトランスフェラーゼである。
【0084】
本開示の一態様によれば、グリコシル化の低下は、少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、最も好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも65%および最も好ましくは少なくとも70%であることができる。本開示のまた別の態様によれば、得られるグリコシル化の低下は、約100%である。
【0085】
本明細書で使用する場合、「プライマー」という用語は、精製された制限消化物と同様に天然に見られるものであれ、合成によって産生されたものであれ、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下に(すなわち、ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼなどの誘導作用物質の存在下、かつ好適な温度およびpHに)置かれたときに、合成の開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドを指す。
【0086】
PCRの技術は、PCR:A Practical Approach,M.J.McPherson et al.,IRL Press(1991)、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innis et al.著,Academic Press(1990)、およびPCR Technology:Principals and Applications of DNA Amplification,H.A.Erlich,Stockton Press(1989)をはじめとする、多くの刊行物に記載されている。
【0087】
PCRは、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号;第4,800,159号;第4,965,188号;第4,889,818号;第5,075,216号;第5,079,352号;第5,104,792号、第5,023,171号;第5,091,310号;および第5,066,584をはじめとする、多くの米国特許にも記載されている。
【0088】
本開示の最も重要な態様によれば、(a)ベクターが、それぞれ、配列番号1、2、3、4および5によって表されるPMT1、PMT2、PMT4、PMT5、およびPMT6からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子をコードする核酸配列と、選択マーカーをコードする核酸配列とを組み込み、(b)相同組換えが起こる条件下で細胞を培養し、それにより、宿主細胞内の標的核酸配列を破壊し、それにより、(c)相同組換えが起こった細胞を選択し、かつ(d)改変された株におけるグリコシル化の減少のレベルを評価する、メタノール資化性酵母の「ノックアウト」株の産生方法。
【0089】
ピキア・パストリス宿主に対する形質転換は全て、エレクトロポレーションにより行なわれた。ゼオシン耐性遺伝子を有するベクターの形質転換体を、100μg/mlのゼオシンを含むYPDプレート上で選択した。
【0090】
したがって、本開示の方法は、目的のタンパク質を産生することができる改変された酵母株(ここで、該株は、それぞれ、配列番号1、2、3、4および5によって表されるPMT1、PMT2、PMT4、PMT5、およびPMT6を含む群から選択される少なくとも1つの不活化遺伝子を有する)を生じさせ、かつ(b)該改変された株を、改変されていない宿主株内で産生されるタンパク質産物と比較して、グリコシル化された最終産物のレベルを低下させるような条件下での増殖をもたらす。
【0091】
記載された特定の方法論、プロトコル、細胞株、ベクター、種または属、および培地成分は、様々に異なり得るので、本開示は、そのようなものに限定されないことが理解されるべきである。本明細書で用いられる専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものであるに過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本開示の範囲を限定することを意図したものではないことも理解されるべきである。上の記載は、本開示の実施の仕方を当業者に教示するためのものであり、この記載を読めば当業者には明らかになるその全ての明白な修飾および変化形を詳述することを意図したものではない。
【0092】
PMT遺伝子不活化株の寄託
全面開示の要求に応じて、本開示の株を、(ブダペスト条約に基づく国際寄託に準拠して)IMTEC Institute of Microbial Technology,Sector 39−A,Chandigarh 160036,Indiaに寄託した。これらの株は、(括弧内に示す受託番号)である:
【表1】

【0093】
本開示は、以下の実施例を参照しながら、より完全に説明され、かつ理解されるであろう。これらの実施例は、例示として提供されるのであって、決して、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0094】
実施例1:
PMT1の破壊:
ピキア・パストリスPMT1コード領域の一部を含む約477bpのコード配列を、以下のPMT1プライマーを用いて増幅させた。
PMT1FP=5’GGA TCC TAA TAG CCC ACT CTG ATC TAC CTC ACT 3’
PMT1RP=5’GGA TCC AAA GCC CTC ATG TCC ATA AGC AGA 3’
【0095】
ベクター中の潜在的な早期の翻訳開始部位からのいかなる読み飛ばしも避けるために、2つの終止コドンをフォワードプライマー中にインフレームで含めた。PCR産物をpTZ57Rベクターにクローニングし、M13FPおよびM13RPを用いて配列決定し、クローンを確認した。PMT1断片をBamHIを用いて切り出し、pPICZαのBamHIおよびBglII部位にクローニングした。1775bpと576bpの断片を生じるクローンを選択した。
【0096】
PMT1破壊カセットをピキア・パストリスGS115に形質転換した。エレクトロポレーションによってピキア株に形質転換されるPMT1破壊断片のほぼ中央にあるBstEII部位を用いて、プラスミドを線状化した。形質転換したクローンを、100μg/mlのゼオシンを用いて選択する。数百個のコロニーを取得し、個々のコロニーをYPDプレート上にストリークした。各々のクローンからゲノムDNAを単離し、PCRを行なって、正確に破壊されたクローンを調べた。ノックアウトされたPMT1をPCR(図2b参照)、さらにサザンブロッティング(図2c参照)で確認した。選択されたクローンをMTCC5515として寄託した。
【0097】
プライマー配列:
InSTEzRP:5’TAG CAG AGC GAG GTA TGT AGG CGG TGC 3’
TEFDSRP:GAG TCC GAG AAA ATC TGG AAG AGT 3’
ISCHKFP:5’GCT ACA CTA GAA GGA CAG TAT TTG GTA 3’
SPMT1DCFP:5’GGA CTT ATG GTT CAT CAT TGG TGA 3’
【0098】
実施例2:
PMT6の破壊:
PMT6コード領域の一部を含む約515bpのコード配列を、以下のプライマーを用いて増幅させた。
PMT6FP=5’GGA TCC TAA TAG CTT GCC GTT AAG AGA TAC GAT GA 3’
PMT6RP=5’GGA TCC TGA GAA TGC AAG TTT GCA CCA GTA 3’
【0099】
ベクター中の潜在的な早期の翻訳開始部位からのいかなる読み飛ばしも避けるために、2つの終止コドンをフォワードプライマー中にインフレームで含めた。PCR産物をpTZ57Rベクターにクローニングし、M13FPおよびM13RPを用いて配列決定し、クローンを確認した。
【0100】
PMT6破壊カセットをピキア・パストリスGS115に形質転換した。エレクトロポレーションによってピキア株に形質転換されるPMT6破壊断片のほぼ中央にある固有のNdeI部位を用いて、プラスミドを線状化した。形質転換したクローンを、100μg/mlのゼオシンを用いて選択する。数百個のコロニーを取得し、個々のコロニーをYPDプレート上にストリークした。各々のクローンからゲノムDNAを単離し、PCRを行なって、正確に破壊されたクローンをスクリーニングした(図3b参照)。選択されたクローンをMTCC5518として寄託した。
【0101】
実施例3:
PMT4の破壊:
PMT4コード領域の一部を含む約516bpのコード配列を、以下のプライマーを用いて増幅させた。
PMT4FP=5’GGA TCC TAA TAG GTT CAT TTC GCT ATT CTA AGC A 3’
PMT4RP=5’GGA TCC TTT CGA CTT CAA AGG ACG GGT T 3’
【0102】
ベクター中の潜在的な早期の翻訳開始部位からのいかなる読み飛ばしも避けるために、2つの終止コドンをフォワードプライマー中にインフレームで含めた。PCR産物をpTZ57Rベクターにクローニングし、M13FPおよびM13RPを用いて配列決定し、クローンを確認した。
【0103】
PMT4破壊カセットをピキア・パストリスGS115に形質転換した。エレクトロポレーションによってピキア株に形質転換されるPMT4破壊断片のほぼ中央にある固有のXcmI部位を用いて、プラスミドを線状化した。形質転換したクローンを、100μg/mlのゼオシンを用いて選択する。数百個のコロニーを取得し、個々のコロニーをYPDプレート上にストリークした。各々のクローンからゲノムDNAを単離し、PCRを行なって、正確に破壊されたクローンをスクリーニングした(図4b参照)。選択されたクローンをMTCC5516として寄託した。
【0104】
実施例4:
PMT5の破壊:
PMT5コード領域の一部を含む約455bpのコード配列を、プライマーを用いて増幅させた。
PMT5FP=5’AGA TCT TAA TAG ATC CTA CCA GTG ATC ATT TAC CT 3’
PMT5RP=5’AGA TCT TCA CTA ATT GGA AGG TCT AGA ATC 3’
【0105】
ベクター中の潜在的な早期の翻訳開始部位からのいかなる読み飛ばしも避けるために、2つの終止コドンをフォワードプライマー中にインフレームで含めた。PCR産物をpTZ57Rベクターにクローニングし、M13FPおよびM13RPを用いて配列決定し、クローンを確認した。
【0106】
PMT5破壊カセットをピキア・パストリスGS115に形質転換した。エレクトロポレーションによってピキア株に形質転換されるPMT5破壊断片のほぼ中央にある固有のBstEII部位を用いて、プラスミドを線状化した。形質転換したクローンを、100μg/mlのゼオシンを用いて選択する。数百個のコロニーを取得し、個々のコロニーをYPDプレート上にストリークした。各々のクローンからゲノムDNAを単離し、PCRを行なって、正確に破壊されたクローンをスクリーニングし、クローンをPCRで確認した(図5b参照)。選択されたクローンをMTCC5517として寄託した。
【0107】
実施例5:
PMT2の破壊:
PMT2コード領域の一部を含む約439bpのコード配列を、以下のプライマーセットを用いて増幅させた。
PMT2FP=5’GGA TCC TAA TAG GTG GGT TTA TTT GTC ACA GTA 3’
Pmt2RP=5’GGA TCC GAA ACA CCC AAT CAT TGT TGG CA 3’
【0108】
ベクター中の潜在的な早期の翻訳開始部位からのいかなる読み飛ばしも避けるために、2つの終止コドンをフォワードプライマー中にインフレームで含めた。PCR産物をpTZ57Rベクターにクローニングし、M13FPおよびM13RPを用いて配列決定し、クローンを確認した。
【0109】
PMT2破壊カセットをピキア・パストリスGS115に形質転換した。エレクトロポレーションによってピキア株に形質転換されるPMT2破壊断片のほぼ中央にある固有のKpnI部位を用いて、プラスミドを線状化した。形質転換したクローンを、100μg/mlのゼオシンを用いて選択する。数百個のコロニーを取得し、個々のコロニーをYPDプレート上にストリークした。各々のクローンからゲノムDNAを単離し、PCRを行なって、正確に破壊されたクローンをスクリーニングした(図6)。
【0110】
実施例6:
PMTノックアウトによるインスリンのグリコシル化の低下
ピキア・パストリスGS115をインスリン発現コンストラクトで形質転換して、グリコシル化レベルの対照としてのクローンBICC#7743を取得し;分泌されたインスリンは、1.90〜2.0(100%とみなす)のグリコシル化レベルを有していた。また、このインスリン発現コンストラクトを用いて、PMTノックアウト株のMTCC 5515、MTCC 5517およびMTCC 5518をクローニングし、分泌されたインスリンのグリコシル化レベルを対照と比較した。対照のBICC#7743によって産生されたインスリンと比較した場合、それぞれ、61%、31%および28%の顕著なグリコシル化の低下が見られた(図7参照)。
【表2】

【0111】
実施例7:
PMTノックアウトによるインスリン類似体1のグリコシル化の低下
ピキア・パストリスGS115をインスリン発現コンストラクトで形質転換して、グリコシル化レベルの対照としてのクローンBICC#7744を取得し;分泌されたインスリンは、1.66(100%とみなす)のグリコシル化レベルを有していた。また、このインスリン発現コンストラクトを用いて、PMTノックアウト株のMTCC 5515をクローニングし、分泌されたインスリンのグリコシル化レベルを対照と比較した。対照のBICC#7744によって産生されたインスリン類似体1と比較した場合、46%の顕著なグリコシル化の低下が見られた(図8)。
【表3】

【0112】
実施例8:
PMTノックアウトによるインスリン類似体2のグリコシル化の低下
ピキア・パストリスGS115をインスリン発現コンストラクトで形質転換して、グリコシル化レベルの対照としてのクローンBICC#7996を取得し;分泌されたインスリンは、1.92(100%とみなす)のグリコシル化レベルを有していた。また、このインスリン発現コンストラクトを用いて、PMTノックアウト株のMTCC 5515をクローニングし、分泌されたインスリンのグリコシル化レベルを対照と比較した。対照のBICC#7996によって産生されたインスリン類似体1と比較した場合、65%の顕著なグリコシル化の低下が見られた(図9)。
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ、配列番号1、2、3、4および5によって表されるヌクレオチド配列と少なくとも80%相同であるヌクレオチド配列を有するPMT1、PMT2、PMT4、PMT5およびPMT6遺伝子を含む群から選択される少なくとも1つまたは複数の遺伝子の不活化によって可能になったメタノール資化性酵母から産生されるタンパク質のグリコシル化を低下させる方法であって、前記配列がタンパク質マンノシルトランスフェラーゼまたはその機能部分をコードする、方法。
【請求項2】
前記メタノール資化性酵母がピキア属の種に属する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メタノール資化性酵母がピキア・パストリス(Pichia pastoris)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質が、式Iによって表される、請求項1に記載の方法。
【化3】

(式中、
Xは、少なくとも1つのアミノ酸を含むリーダーペプチド配列であり、
Bは、インスリン分子のB鎖、その誘導体または類似体のアミノ酸配列であり、
Yは、少なくとも1つのアミノ酸を含むリンカーペプチドであり、
Aは、インスリン分子のA鎖、その誘導体または類似体のアミノ酸配列であり、かつ
前記A鎖およびB鎖は、アミノ酸の置換、欠失および/または付加によって修飾することができる。)
【請求項5】
グリコシル化の様式がO−グリコシル化である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
グリコシル化が、少なくとも10%〜約99%低下する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
グリコシル化が25%低下する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
グリコシル化が65%低下する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
それぞれ、配列番号1、2、3、4および5によって表されるヌクレオチド配列と少なくとも80%相同であるヌクレオチド配列を有するPMT1、PMT2、PMT4、PMT5およびPMT6遺伝子を含む群から選択されるタンパク質マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子またはその機能部分を含むベクターであって、前記ベクターの相同遺伝子座への組込みが、宿主、好ましくは、メタノール資化性酵母内での機能的なタンパク質マンノシルトランスフェラーゼの発現を阻害する、ベクター。
【請求項10】
メタノール資化性酵母から産生されるタンパク質上のグリコシル化を低下させるかまたは修飾する方法であって、前記酵母を請求項9に記載のベクターで形質転換することを含む、方法。
【請求項11】
前記メタノール資化性酵母がピキア属の種に属する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記メタノール資化性酵母がピキア・パストリスである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
メタノール資化性酵母のノックアウト株の産生方法であって、
(a)ベクターが、それぞれ、配列番号1、2、3、4および5によって表されるヌク前述の請求項のいずれかに記載のヌクレオチド配列と少なくとも80%相同であるヌクレオチド配列を有するPMT1、PMT2、PMT4、PMT5およびPMT6を含む群から選択される遺伝子のうちの少なくとも1つをコードする標的核酸配列と、選択マーカーをコードする核酸配列とを含む、相同組換えが可能な核酸配列を組み込み、
(b)前記ベクター中の前記標的遺伝子をコードするDNAと、前記宿主細胞内の前記標的遺伝子をコードするDNAとの間の相同組換えが生じるのを可能にする条件下で細胞を培養し、それにより、前記宿主細胞内での前記標的遺伝子の破壊をもたらし、
(c)不活化された標的遺伝子を有する宿主細胞を選択する、
前記方法。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法から産生されるタンパク質。
【請求項15】
それぞれ、配列番号1、2、3、4および5によって表されるヌクレオチド配列と少なくとも80%相同であるヌクレオチド配列を有するPMT1、PMT2、PMT4、PMT5およびPMT6を含む群から選択される少なくとも1つの不活化遺伝子を有する、メタノール資化性酵母のノックアウト株。
【請求項16】
受託番号がMTCC5515である、請求項15に記載のPMT1遺伝子不活化株。
【請求項17】
受託番号がMTCC5516である、請求項15に記載のPMT4遺伝子不活化株。
【請求項18】
受託番号がMTCC5517である、請求項15に記載のPMT5遺伝子不活化株。
【請求項19】
受託番号がMTCC5518である、請求項15に記載のPMT6遺伝子不活化株。
【請求項20】
前記宿主株が、改変されていない宿主株内で発現されるタンパク質産物と比べてグリコシル化のレベルが低下したタンパク質を産出する、請求項15に記載のノックアウト株。
【請求項21】
グリコシル化が少なくとも25%低下しているタンパク質を発現する、請求項15に記載のノックアウト株。
【請求項22】
グリコシル化が少なくとも65%低下しているタンパク質を発現する、請求項15に記載のノックアウト株。
【請求項23】
請求項15に記載のノックアウト株から産生されるタンパク質。
【請求項24】
請求項23に記載のノックアウト株から産生されるタンパク質であって、前記ノックアウト株が、MTCC 5515、MTCC 5516、MTCC 5517、MTCC 5518またはそれらの任意の修飾株のうちの1つである、タンパク質。
【請求項25】
選択マーカーがゼオシン耐性マーカーである、請求項14または23に記載のタンパク質。
【請求項26】
前記タンパク質がインスリン/インスリン類似体/インスリン前駆体分子である、請求項23に記載のタンパク質。
【請求項27】
異種タンパク質産物である、請求項1に記載の方法によって産生されるタンパク質。
【請求項28】
前記タンパク質が、修飾されたグリコシル化を示す、請求項1〜27のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項29】
所望のタンパク質最終産物の生産性が影響を受けないままである、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−519370(P2013−519370A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552520(P2012−552520)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000190
【国際公開番号】WO2011/099028
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(512205647)バイオコン リミテッド (1)
【Fターム(参考)】