説明

タンパク質相互作用を中和し得る細胞内抗体を単離するための方法

細胞内でタンパク質リガンドxとタンパク質リガンドyとの間の相互作用の中和細胞内抗体を単離するための方法が記載される。xとyとの間の相互作用を阻害し得る細胞内抗体を使用して既知のyリガンドと結合し得るタンパク質リガンドxを同定するための方法もまた記載される。所定の細胞の有意な割合のタンパク質-タンパク質相互作用(インタラクトーム)または細胞内の経路もしくはネットワークを構成するタンパク質相互作用に対する抗体フラグメントのセットの単離のための方法もまた記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質相互作用を中和し得る安定な細胞内抗体の単離のための方法に関する。特に本発明は、細胞内環境において特定の標的タンパク質と相互作用し得る、細胞内環境中の機能的抗体(細胞内抗体)を単離および発現するための抗体フラグメントライブラリーに関する。本発明は、所定の細胞のタンパク質-タンパク質相互作用(インタラクトーム)の重要部分または細胞内経路もしくはネットワークを構成するタンパク質相互作用に対する抗体フラグメントのセットの単離のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体が細胞内の生物学的プロセスを高度に特異的な様式で妨害するために使用できることが公知である(CattaneoおよびBiocca 1997) (CattaneoおよびBiocca 1999) (Biocca,Neubergerら 1990)。特異的な細胞内発現は、標的タンパク質機能の阻害(タンパク質ノックアウト)を生じ得る。この方式において、目的の表現型が、適切な細胞内抗体によって細胞または生物に付与できる。特に、タンパク質ノックアウトは、機能ゲノミクス(遺伝子から機能へ)における障害にアプローチして解決するための有利な方法を示す。実際、ゲノムプログラムおよびプロテオームプログラムは、遺伝子およびタンパク質の同定のための豊富な情報を提供するが、それらの機能の同定のための情報は提供しない。先行技術の問題点の解決は、薬物開発のための標的タンパク質の同定および確認もまた促進し得る。タンパク質ノックアウトは、代替的方法(遺伝子ノックアウトもしくはRNAノックアウト、アンチセンス、リボザイムまたはRNAi)を超える顕著な利点を有する(Rossi 1999;Capecchi 1989;Fire 1999;Tavernarakis, Wangら 2000)。なぜなら:
このタンパク質は、その生物学的機能と直接相関する;
これは、ノックアウトすべきタンパク質またはそのタンパク質の区画化された下位集団の形質導入後改変バージョンを可能にする;
これは、ノックアウト強度(漸次ノックアウトまたはノックダウン)の調節を可能にするからである。
【0003】
タンパク質機能は、特異的なタンパク質-タンパク質相互作用に依存することが非常に多いので、タンパク質-タンパク質相互作用を妨害し得る抗体または抗体フラグメントは、他のタンパク質相互作用に依存して、同じタンパク質の他の機能を許容しつつ、選択的かつ特異的なタンパク質機能の中和を可能にする。
【0004】
細胞内抗体技術は、機能ゲノミクスに非常に有用であり得る。なぜなら、これは以下を利用するからである:
任意のタンパク質に対する抗体の実質的に無制限のレパートリー;
細胞内の、このタンパク質がその機能を発揮する部位にこれらの抗体を指向させる可能性;および
特異的かつ局在化したタンパク質ノックアウトを得る可能性。
【0005】
しかし、機能ゲノミクスおよび包括的なプロテオミクスへのその適用は、高スループットのプロセスにおいてこの技術が実施されることを必要とする。これが、現在細胞内抗体技術を機能ゲノミクスに適用できない理由である。
【0006】
細胞内抗体技術は、天然の免疫系(マウスまたはヒト)または抗体フラグメントとして線維状ファージの表面上に露出された抗体ライブラリー(合成または天然)から適切に改変されて得られた特異的抗体の遺伝子を使用する(ファージディスプレイ技術、ScFv)。
【0007】
親和性、安定性および可溶性に関して、ファージディスプレイ技術により単離された抗体フラグメントの品質は、目的の特性を有する抗体を見出す確率がライブラリーの密度に比例するとすると、in vitro選択のために使用されるライブラリーのサイズに比例する(Vaughan, Williamsら 1996)。これが、任意の抗原を認識し得る高親和性の抗体を得るために大きい抗体ライブラリーを有する必要があることの理由である(Griffiths, Malmqvistら 1993) (Griffiths, Williamsら 1994) (Sheets, Amersdorferら 1998) (Vaughan, Williamsら 1996) (SblatteroおよびBradbury 2000)。これらのライブラリーは、目的の抗原で試験されて、固相中で連結される;次いでこれらの抗体は、吸着、洗浄、溶出および増殖の連続サイクルによって選択される。しかし、全ての抗体が細胞内環境中で機能し得るわけではないので、この選択手順は選択された抗体が細胞内発現に適切であることを確実にはしない。当該技術の現在の状態で、細胞内発現に適した抗体の性能は先験的に予測できない(Biocca, Rubertiら 1995;Proba, Wornら 1998)。なぜなら、細胞内の物理化学的条件(細胞質および核)は、抗体が天然に見出され正常に合成される条件(小胞体および分泌経路)とは大きく異なるからである。
【0008】
従って、機能ゲノミクスへのこの技術の適用は、細胞内環境において機能し得る抗体を先験的に選択するための強力かつ予測可能な方法を必要とする。改善は、ダブルハイブリッド(double-hybrid)システムに基づく選択方法(IACTすなわち細胞内抗体捕捉技術(Intracellular Antibody Capture Technology))を用いて達成されており(Visintinら 1999;Visintinら 2002)、国際特許出願PCT WO 00/54057号に記載されている。IACT形式中の抗体は、対応する抗原と相互作用し得、最終使用者の系において通常の細胞内抗体として発現された場合に有効かつ機能的であるという結果が得られる。IACT選択ストラテジーは、大きいライブラリーから開始する機能的細胞内抗体の同定について、有効に診断的かつ予測的である。IACT技術はまた、そのそれぞれの抗原上の、選択された抗体によって認識されるエピトープを迅速かつ有効に同定する派生手順において使用されている(in vivoエピトープマッピング、IVEM、特許出願RM2000A00561号) (Visintinら 2002)。
【0009】
しかし、IACTの開発は、少なくとも500個〜1000個の遺伝子〜数千個の遺伝子の平行スループットを必要とする機能ゲノミクスに細胞内抗体技術が適用されることを未だ可能にしていない。さらに、IACT手順は、選択された抗体フラグメントが標的タンパク質の機能を中和し得ることを確実にしない。多くても選択された抗体のサブセットのみが、中和抗体であるという特性を有する。
【非特許文献1】CattaneoおよびBiocca 1997
【非特許文献2】CattaneoおよびBiocca 1999
【非特許文献3】Biocca, Neubergerら 1990
【非特許文献4】Rossi 1999
【非特許文献5】Capecchi 1989
【非特許文献6】Fire 1999
【非特許文献7】Tavernarakis, Wangら 2000
【非特許文献8】Vaughan, Williamsら 1996
【非特許文献9】Griffiths, Malmqvistら 1993
【非特許文献10】Griffiths, Williamsら 1994
【非特許文献11】Sheets, Amersdorferら 1998
【非特許文献12】SblatteroおよびBradbury 2000
【非特許文献13】Biocca, Rubertiら 1995
【非特許文献14】Proba, Wornら 1998
【非特許文献15】Visintinら 1999
【非特許文献16】Visintinら 2002
【特許文献1】国際特許出願PCT WO 00/54057号
【特許文献2】特許出願RM2000A00561号
【特許文献3】PCT WO 00311246号
【非特許文献17】Hollenbergら 1995
【非特許文献18】Orlandiら, 1992
【非特許文献19】Bartel, Chienら 1993
【非特許文献20】Rheeら, 2000
【非特許文献21】Prasherら, 1992
【非特許文献22】Bairdら, 1999
【非特許文献23】Engbergら, 1996
【非特許文献24】SiegelおよびIsacoff, 1997
【非特許文献25】Persic, Righiら 1997
【非特許文献26】VisintinおよびCattaneo 2001
【非特許文献27】Venturaら, 2002
【非特許文献28】Yanagiら, 2001
【非特許文献29】Girardi, 2003
【非特許文献30】Priorら, 1992
【非特許文献31】Sassoe-PognettoおよびFritschy,2000
【非特許文献32】CraigおよびLichtman, 2001
【非特許文献33】Butterfield, 2002
【非特許文献34】SinhaおよびLieberburg, 1999
【非特許文献35】Roy, 2001
【非特許文献36】Rotaら, 2003
【非特許文献37】Snijderら, 2003
【非特許文献38】Zengら, 2003
【非特許文献39】TanakaおよびRabbitts, 2003
【非特許文献40】Tseら, 2002
【非特許文献41】Feldhausら, 2003
【非特許文献42】Probaら, 1997
【非特許文献43】Vidal Mら 1996
【非特許文献44】Huang Jら 1997
【非特許文献45】Leanna CAら 1996
【非特許文献46】Shi HMら 1996
【非特許文献47】Vidal Mら 1999
【非特許文献48】Chenら, 2000
【非特許文献49】Zhongら, 1997
【非特許文献50】Zhongら, 1998
【非特許文献51】Kunschら, 1992
【非特許文献52】GlassおよびRosenfeld, 2000
【非特許文献53】ClarkeおよびCarbon, 1976
【非特許文献54】TomlinsonおよびHolliger, 2000
【非特許文献55】WuおよびYazaki, 2000
【非特許文献56】Korttら, 2001
【非特許文献57】Todorovskaら, 2001
【非特許文献58】Tanakaら, 2003
【非特許文献59】Uetz,P., Giot,L., Cagney,G., Mansfield,T.A., Judson,R.S., Knight,J.R., Lockshon,D., Narayan,V., Srinivasan,M., Pochart,P.,Qureshi-Emili,A., Li,Y., Godwin,B., Conover,D., Kalbfleisch,T., Vijayadamodar,G., Yang,M., Johnston,M., Fields,S.およびRothberg,J.M.(2000)A comprehensive analysis of protein-protein interactions in Saccharomyces cerevisiae. Nature 403,623-7.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この問題に対する解決が本発明の目的を構成し、遺伝子から確認された細胞内抗体(これは次いで、対応するタンパク質の機能を研究および中和するために適切な細胞モデルにおいて発現される)への迅速で有効な高体積の処理を可能にする。
【0011】
特定の実施において、本発明中に記載される手順は、タンパク質-タンパク質相互作用を特異的に阻害し得、それによって、選択的かつ特異的にタンパク質機能を中和する能力を有する抗体フラグメントの直接的単離を可能にする。従って、記載される手順により、確認された、細胞内でタンパク質機能を中和する抗体フラグメントを単離することが可能である。
【0012】
すでに言及したように、確認された細胞内抗体を単離するためのIACTの使用は、ダブルハイブリッド選択が実施され、次に、所望の特性を有するクローンを見出す有意な確率を確実にするために必要な範囲(1010〜1011)から離れた範囲である、105抗体よりも大きい密度を有する(scFvまたは単一ドメイン抗体の)抗体ライブラリーの導入を可能にしない、低い細胞形質転換効率(酵母または哺乳動物)によって厳密に制限される。
【0013】
現在、このIACTステップの前に、以下を使用することにより、ダブルハイブリッド選択のための細胞における形質転換と適合するレベルにまでその密度を低下させるためのライブラリーの富化が実施される(図1):
ファージ抗体ライブラリーの場合には固相中の抗原カラムに対する1回または2回の吸着サイクル、あるいは
抗体ライブラリーがマウスリンパ球から調製される場合には抗原を用いたマウスの免疫。
【0014】
これらのステップは、非常に費用がかかり遅いものである。さらに、第一の工程のために、良好なファージディスプレイライブラリーが必要である。両方の場合において、この富化工程は、目的の遺伝子によってコードされたタンパク質の利用可能性を必要とする。機能ゲノミクスプログラムは遺伝子(cDNA、EST、ORFなど)を提供するがタンパク質を提供しないので、このことは高度に重要な障害を生む。従って、当該分野の現在の状態で可能な補給路は、目的の遺伝子の各群について、特別な予めの選択が各回毎に実施されなければならないという事実によって制限される。
【0015】
この問題に対する解決は、ファージディスプレイ形式においてではなくダブルハイブリッドにおいて直接的に発現される抗体ライブラリーの構築によって提供される。インプットとしての遺伝子から開始する細胞内抗体を得るための全手順は、容易にされ、短縮され、加速され、より平行にされる。なぜなら、目的の遺伝子はIACT選択またはその改変のためにベクター中に直接挿入され得、従って、対応するタンパク質を発現および精製する必要性を省くからである。
【0016】
IACTシステムに関するさらなる実行は、中和細胞内抗体の単離を確実にするためのものである。実際、IACTシステムは、細胞内環境における生物学的に機能的な抗体の単離のみを確実にするが、中和抗体について選択しない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以下において、細胞内抗体は、単鎖形式(scFv)の合成もしくは組換えの抗体、FAb抗体または単一ドメイン(dAb)抗体であり、細胞内環境(すなわち、細胞質、核)中で折り畳みできかつ機能的であり得る。
【0018】
細胞内抗体のライブラリーは以下を含むべきである:
a)抗体遺伝子が、
i)マウスリンパ球;
ii)自己免疫疾患を有する患者由来のリンパ球;
iii)健康な人由来のリンパ球
に由来するV領域である、細胞内抗体のライブラリー;
b)2つの相同組換え部位による遺伝子組換えの方法(BIG-SPLINT)を用いて得られた箇条a)の細胞内抗体のライブラリー;
c)細胞内抗体中に存在する細胞内コンセンサス配列に基づいて設計された特定のフレームワークについて操作された細胞内抗体のライブラリー。
【0019】
本発明の特定の目的は、細胞内で既知のタンパク質リガンドxと既知のタンパク質リガンドyとの間の相互作用を中和し得る細胞内抗体を単離するための方法であり、この方法は、
a)組換え酵母株を得るステップであって、この組換え酵母株において、
i)タンパク質リガンドxおよびタンパク質リガンドyが発現されるが、
ii)xまたはyのうち少なくとも1つが誘導可能な様式で発現され、かつ
iii)タンパク質リガンドxとタンパク質リガンドとの間の相互作用が、酵母細胞の必須機能のリプレッサーまたは毒性因子のいずれかの産生を引き起こし、その結果、生存可能な酵母細胞が得られないステップ;
b)ステップa)の組換え酵母細胞株において細胞内抗体の発現ライブラリーを構築するステップ;
c)リガンドxおよびリガンドyの両方の発現を誘導することによって形質転換された酵母クローンを選択するステップ;ならびに
d)増殖し得るレシピエント酵母クローンを単離するステップを含む。
【0020】
本発明の別の目的は、細胞内で既知のタンパク質リガンドxと既知のタンパク質リガンドyとの間の相互作用を中和し得る細胞内抗体を単離するための方法であり、この方法は、
a)mat-aまたはmat-αの性能力を有する酵母株において細胞内抗体の発現ライブラリーを得るステップ;
b)ステップa)中の酵母株の性能力と反対の性能力を有する組換え酵母株を得るステップであって、この組換え酵母株において、
i)タンパク質リガンドxおよびタンパク質リガンドyが発現されるが、
ii)xまたはyのうち少なくとも1つが誘導可能な様式で発現され、かつ
iii)タンパク質リガンドxとタンパク質リガンドとの間の相互作用が、酵母細胞の必須機能のリプレッサーまたは毒性因子のいずれかの産生を引き起こし、その結果、生存可能な酵母細胞が得られないステップ;
c)ステップa)の酵母およびステップb)の組換え酵母を、有性接合ならびにリガンドxおよびyの発現を促進し得る条件に曝露させるステップ;
d)リガンドxおよびリガンドyの両方の発現を誘導することによって形質転換された酵母クローンを選択するステップ;ならびに
e)増殖し得るレシピエント酵母クローンを単離するステップを含む。
【0021】
好ましい実施形態において、この組換え酵母株は、
a)上記タンパク質リガンドxをコードする第一の配列および上記タンパク質リガンドyをコードする第二の配列を酵母発現ベクター中にクローニングするステップであって、第一の配列および第二の配列の各々が、二方向性プロモーターの2つの部分のうち各1つの制御下にあり、第一の配列が第一の分子をコードする配列に融合されかつ第二の配列が第二の分子をコードする配列に融合され、その結果、タンパク質リガンドxおよびタンパク質リガンドyが相互作用すると、酵母細胞の必須機能のリプレッサーまたは毒性因子のいずれかの産生を誘導する方式でこの第一の分子および第二の分子もまた相互作用するステップ;
b)ステップa)のベクターを用いて上記レシピエント酵母株を形質転換するステップ;ならびに
c)形質転換した酵母を選択するステップによって得られる。
【0022】
好ましくは、この酵母中の発現ベクターは、二方向性プロモーターとしてプロモーターGal 1およびプロモーターGal 10を含む。
【0023】
好ましくは、この第一の分子および第二の分子は、酵母のHIS3遺伝子の転写を妨害し得るリプレッサーの産生を引き起こす。
【0024】
好ましくは、この酵母中の細胞内抗体の発現ライブラリーは、マウスまたはヒトのリンパ球から得られる。
【0025】
好ましくは、酵母中の細胞内抗体の発現ライブラリーは、scFvまたは単一ドメイン抗体形式で得られる。
【0026】
本発明の別の目的は、記載される方法に従って得ることができる、細胞内でタンパク質リガンドxとタンパク質リガンドyとの間の相互作用を中和し得る細胞内抗体である。好ましくは、この細胞内抗体は、p65 RelAとp65 RelAとの間の相互作用;あるいはp65 RelAとp50 NF-κB1との間の相互作用;あるいはAβ1-42とAβ1-42との間の相互作用;あるいはJX-TK TrkAとPTB p66 Shcとの間の相互作用;あるいはシヌクレインとシンフィリンとの間の相互作用を中和する。
【0027】
本発明の別の目的は、上に規定したような細胞内抗体をコードするヌクレオチド配列である。
【0028】
本発明の別の目的は、互いに相互作用し得るタンパク質リガンドxをコードする配列およびタンパク質リガンドyをコードする配列をクローニングするための酵母発現ベクターであり、この発現ベクターは二方向性プロモーターを含み、この二方向性プロモーター中、第一のプロモーター部分には5'から3'の方向で、タンパク質リガンドxをコードする配列および第一の分子をコードする第一の配列のための適切な制限クローニング部位がその後に続き;かつ第二のプロモーター部分には5'から3'の方向で、タンパク質リガンドyをコードする配列および第二の分子をコードする第二の配列のための適切な制限クローニング部位がその後に続き、その結果、このタンパク質リガンドxおよびタンパク質リガンドyが相互作用すると、酵母細胞の必須機能のリプレッサーまたは毒性因子のいずれかの産生を誘導する方式で第一の分子および第二の分子もまた相互作用する。
【0029】
本発明の別の目的は、真核細胞内で既知のタンパク質リガンドyに結合し得るタンパク質リガンドxおよびこのタンパク質リガンドxとこの既知のタンパク質リガンドyとの間の相互作用を中和し得る細胞内抗体を同時に同定するための方法であり、この方法は、
a)mat-aまたはmat-αの性能力を有する酵母株において細胞内抗体の発現ライブラリーを得るステップ;
b)ステップa)中の酵母株の性能力と反対の性能力を有する組換え酵母株を得るステップであって、この組換え酵母株において、
i)タンパク質リガンドyが誘導可能な様式で発現され、かつ
ii)タンパク質リガンドxとタンパク質リガンドyとの間の相互作用が酵母細胞の必須機能のリプレッサーまたは毒性因子のいずれかの産生を引き起こし、その結果、生存可能な酵母細胞が得られないステップ;
c)適切な酵母発現ベクター中にタンパク質リガンドxをコードする配列を含むcDNAライブラリーをクローニングするステップ;
d)ステップb)の酵母株をステップc)のcDNAライブラリーを用いて形質転換するステップ
e)形質転換された酵母を選択するステップ;
f)ステップa)の酵母およびステップe)の酵母を、タンパク質リガンドxおよびタンパク質リガンドyの発現を誘導し得る環境中で、有性生殖および前記二方向性プロモーターの発現を促進するような条件に供するステップ;
g)タンパク質リガンドxとタンパク質リガンドyとの間の相互作用が細胞内抗体によって阻害されている生存可能な酵母クローンを選択するステップを含む。
【0030】
本発明の別の目的は、真核細胞内で既知のタンパク質リガンドyに結合し得るタンパク質リガンドxおよびこのタンパク質リガンドxと既知のタンパク質リガンドyとの間の相互作用を中和し得る細胞内抗体を同時に同定するための方法であり、この方法は、
a)mat-aまたはmat-αの性能力を有する酵母株において細胞内抗体の発現ライブラリーを得るステップ;
b)タンパク質リガンドxをコードする配列およびタンパク質リガンドyをコードする配列を含むcDNAライブラリーを酵母発現ベクター中にクローニングするステップであって、このcDNAライブラリー配列が二方向性誘導性プロモーターの2つの部分のうち1つの制御下にあり、このcDNAライブラリー配列は第一の分子をコードする配列に融合され;かつタンパク質リガンドyをコードする配列がこの二方向性プロモーターの2つの部分のうち他方の制御下にありかつ第二の分子をコードする配列に融合され、その結果、タンパク質リガンドxおよびタンパク質リガンドyが相互作用すると、酵母細胞の必須機能のリプレッサーまたは毒性因子のいずれかの産生を誘導する方式で第一の分子および第二の分子もまた相互作用するステップ;
c)ステップa)の酵母株の性能力と反対の性能力を有する酵母株をステップb)の組換え酵母発現ベクターを用いて形質転換するステップ;
d)形質転換された酵母を選択するステップ;
e)ステップa)の酵母およびステップd)の酵母を、タンパク質リガンドxおよびタンパク質リガンドyの発現を誘導し得る環境中で、有性生殖および二方向性プロモーターの発現を促進するような条件に供するステップ;
g)タンパク質リガンドxとタンパク質リガンドyとの間の相互作用が細胞内抗体によって阻害されている生存可能な酵母クローンを選択するステップ
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
著者らは、以下のステップを含む方法に従って細胞内抗体ライブラリーを開発した(図2):
a)RNAの単離、相補的DNAの合成ならびに免疫グロブリンの軽鎖および重鎖をコードするDNAの増幅によって、脾臓細胞由来のB細胞または末梢リンパ球の免疫グロブリンの天然V領域をコードするDNAを回収するステップ;
b)発現ベクターに適切な制限部位を含むように設計されたプライマーを使用してこのDNAをクローニングするステップであって、この発現ベクターは以下を含む:
1)タンパク質xリガンドおよびタンパク質yリガンドを発現するベクターとは異なる抗生物質耐性遺伝子(すなわちアンピシリン);
2)xタンパク質リガンドおよびyタンパク質リガンドを発現するベクターとは異なる栄養マーカー(すなわちLEU2);
3)E.coliについての複製基点(すなわちColE1、f1)および酵母についての複製基点(すなわち2μ)の両方;
4)抗体ライブラリーの挿入に適切なポリリンカー;
5)scFvをコードするがFAbおよび抗体ドメインもまたコードする配列から下流の1つまたは複数の核局在シグナル;
c)コロニーPCRフィンガープリントによって得られたライブラリーを特徴付けるステップ、ならびに
d)抗原の既知のパネルに対してIACT(SPLINT-2HY)によってSPLINTを選択するステップ。
【0032】
項目b)のベクターは、ベクターpVP16/mv1である(図3)。
【0033】
低い酵母形質転換効率によってもたらされる制限を克服するために、著者らは、より小さい一次ライブラリーを生成した後に大きい細胞内ライブラリーを得るために組換え事象を使用する、BIG-SPLINTと称される技術(図4a、図4b)を計画した。組換えストラテジーは、ファージ中で発現されるscFvフラグメントライブラリーを生成する代替法として記載されているが(SblatteroおよびBradbury, 2000; PCT WO 00311246号)、真核細胞中の細胞内抗体ライブラリーを得るためにはまったく適用されていなかった。組換え事象は、SPLINT細胞内ライブラリーに適用され、VH遺伝子とVL遺伝子との間に2つのlox組換え部位(lox Pおよびlox P511)をクローニングするようなpVP16ベクターの改変に基づく(pVP/16mv1-lox ベクター、図5)。
【0034】
この系は、酵母ゲノム中に組み込まれた、ガラクトースの存在下でのみGAL1プロモーターによって誘導されるCREリコンビナーゼをコードする遺伝子を導入する。最初に、2つのミニライブラリーが、その栄養マーカーおよび抗生物質マーカーのみが異なる2つのpVP16/mv1-loxベクター中で得られる。次いで、VH鎖およびVL鎖が、CREリコンビナーゼ遺伝子(その活性は、この酵母株中の2つのscFvライブラリーの導入後にのみ誘導される)を含む酵母株における形質転換(または接合)の後に組換えられる(図4a、図4b)。
【0035】
本発明は、プロセス「遺伝子-細胞内抗体」におけるタンパク質操作工程を完全に回避することによって、以前の技術上の問題点を克服し、従って、ゲノムによってコードされる任意のタンパク質に対する細胞内抗体の単離を可能にし、細胞中の全てのタンパク質-タンパク質相互作用に対する細胞内抗体の単離を可能にする。
【0036】
本発明のSPLINT技術は、細胞内環境において抗体によって好まれる配列について予測し、従って、生理学的に非適合性の環境中の細胞内抗体によって採用される構造の知識を増大させ、細胞内での発現について確認された抗体足場のコンセンサス配列のファミリーの形成を導く。
【0037】
本発明の好ましい実施形態は、以下の方法に従うIACT手順によってすでに確認された抗体配列を使用する:
SUPER-SPLINT
細胞内抗体についての選択手順が実施される場合、確認された細胞内抗体配列についての情報が得られる。従って、種々のSPLINT世代(SUPER-SPLINT)が、WO0054057号出願に開示されるような現在のIACT技術と共に、確認された抗体配列を使用することによって得られ得、従って、in vivoで選択された抗体の細胞内での安定性および親和性を増大させ得る。次いで、いわゆるSUPER-SPLINTライブラリーが、確認された細胞内抗体の研究から得られた情報に基づいて設計された抗体足場に対してCDR(相補性決定領域)ライブラリーを移植することによって得られる。この方式において、インプットライブラリーのサイズはより小さく、従って、細胞内発現のためにさらに標的化される抗体構造において抗体密度が増大されるのを可能にする。
【0038】
このSPLINTライブラリーは、診断、研究、産業および治療における種々の使用のため、ならびに一般に、より安定な抗体を必要とする全ての適用のための無制限な抗体供給源を構成する。
【0039】
このSPLINT技術は、宿主細胞によって発現されるタンパク質に対する抗体を有するという可能な制限を回避するように、酵母以外の他の細胞型(E.coli細胞および哺乳動物細胞を含む)に適合できる。
【0040】
このSPLINT技術は、目的の細胞内機能に関与するタンパク質の同定を導く、いわゆる逆機能ゲノミクスすなわちAntiGENomics(図6)において、以前には不可能であった細胞内抗体についての適用の新たな分野を提供する。この形式において、SPLINT(SUB-SPLINT)によって誘導された細胞内抗体ライブラリーは、目的の表現型を誘導するため、および下敷きとなる生物学的プロセスを担うタンパク質を同定するために、適切な細胞系統(例えば哺乳動物細胞系統)において使用される。従って、このAntiGENomics法は、所定の生物学的機能に関与するタンパク質の同定を可能にし、プロテオームスクリーニングの典型的な障害を解決する。すなわち、同定されたタンパク質に機能を割当てる。
【0041】
本発明は、以下の実施例に従ってここに記載される。
【0042】
ベクター
plinker220(図3)
scFvまたはscFvフラグメントのライブラリーの発現のためのベクターを、ポリリンカー上に存在する制限部位と同一の唯一の制限部位をその末端に含む抗体フラグメントをクローニングするために使用できるポリリンカーを含むように設計した。このベクターを生成するために、pDAN3ベクターのポリリンカーをVP16*(Hollenbergら 1995)中にクローニングした(Sblatteroら 2000)。このベクターを得るために、このVP16*ベクターをNcoI酵素で切断し、仔ウシ小腸ホスファターゼ(CIP)で処理して、0.75%のアガロースゲル調製物で精製した。このpDAN3ポリリンカー(ここには、scFvが予めクローニングされていた)を、以下のオリゴヌクレオチドを使用して増幅した:
【数1】

【数2】

【0043】
次いで、増幅したフラグメントをNcoI制限酵素で消化して、1.5%アガロースゲルで精製した。2つのフラグメントをT4 DNAリガーゼを使用して連結した。挿入物の完全な方向を確認し、クローニングを確認するために、このベクターを配列決定した。次いで、VP16活性化ドメインを、いくつかの重要でないアミノ酸を除去することによって改変した。これを実施するために、plinker200をテンプレートとして使用し、VP16を以下のヌクレオチドを使用して増幅した:
【数3】

【0044】
次いで、VP16活性化ドメインを含むフラグメントを制限酵素NheIおよびEcoRIを使用して消化し、同じ様式で切断し、仔ウシ小腸ホスファターゼ(CIP)で処理して0.75%のアガロースゲル調製物で精製した改変VP16ベクター中にクローニングした。2つのフラグメントをT4 DNAリガーゼを使用して連結した。次いで、得られたベクターをplinker220と呼んだ。
【0045】
pVP16/mv1(図3)
scFvまたはscFvフラグメントのライブラリーの発現ベクターであるpVP16/mv1を、ポリリンカー上に存在する制限部位と同一の唯一の制限部位をその末端に含む抗体フラグメントをクローニングするために使用できるポリリンカーを含むように設計した。2つの核位置シグナルをシフトさせて、scFvから下流かつVP16活性化ドメインから直ぐ上流でのそれらの直列の発現を可能にした。このシフトにより、その5'末端に立体障害を有さないscFvが得られ、従って、その3'末端でVP16活性化ドメインと融合した抗体フラグメントの特異性および折り畳みを増大させる。pVP16/mv1を、以下の方式:
【数4】

で構築し、ミックスとしてのマウスVLオリゴヌクレオチドの混合物(Orlandiら, 1992)を使用して、plinker220中にクローニングされた軽鎖を増幅した。MIC-AD1 backは、ATG転写開始コドンならびに制限部位HindIIIおよびBssHIIIを含むが、一方で混合物としてのVLマウスオリゴヌクレオチドのミックスは、制限部位SalIを含む。これらのヌクレオチドで増幅されたDNAフラグメントを、酵素HindIIIおよびSalIを使用して切断し、1.5%アガロースゲル調製物で精製した。plinker220ベクターを同じ様式で切断し、仔ウシ小腸ホスファターゼ (CIP)で処理し、0.75%アガロースゲル調製物で精製した。2つのフラグメントをT4 DNAリガーゼを使用して連結した。次いで、得られたベクターをpMIC-AD1と呼んだ。
【0046】
pMIC-AD1を使用して、最終的なpVP16/mv1ベクターを調製した。以下のオリゴを使用した:
【数5】

【0047】
このヌクレオチドは、2つの核位置配列(NLS)およびNheI制限部位を含む。
【数6】

【0048】
このヌクレオチドは、EcoRI制限部位を含む。
【0049】
以下のヌクレオチドを使用して、plinker220ベクターからVP16活性化ドメインを増幅して、そこから上流に、直列にコードされた2つのNLSを付加した。得られたDNAフラグメントを、NheI-EcoRIを使用して切断し、1.5%アガロースゲル調製物で精製した。このplinker220ベクターを同じ様式で切断し、仔ウシ小腸ホスファターゼ(CIP)で処理して、0.75%アガロースゲル調製物で精製した。2つのフラグメントをT4 DNAリガーゼを使用して連結して、pVP16/mv1ベクターを生成した。
【0050】
pMIC-BD1(図7)
発現ベクターpVP16/mvおよびpMIC-BDを、E.coli中での発現のために耐性を選択的に変化させるように設計した。2つの異なる抗生物質耐性(それぞれ、アンピシリンおよびクロラムフェニコール)の導入により、2つのプラスミドを用いて同時形質転換された細胞からのベイトプラスミドの除去が可能となり、従って、酵母における古典的な分離(これは、非常に長く費用がかかる)の必要性を排除する。
【0051】
酵母における抗原発現のためのベクターを、抗生物質クロラムフェニコールによって選択可能な原核生物マーカーを含むように設計した。このpMIC-BD1ベクターはそのように構築した:DNA結合ドメインlexAをコードする領域、ADH1遺伝子の転写終止配列およびTRP1酵母遺伝子の一部を含む配列を、HindIIIでプラスミドを消化することによって、pBTM116ベクター(Bartel, Chienら 1993)から単離した。このフラグメントを1.5%アガロースゲルで精製した。骨格として使用した発現ベクターであるpBD-GAL4 Cam(Stratagene)もまた、HindIIIを使用して切断し、仔ウシ小腸ホスファターゼ(CIP)で脱リン酸化し、0.75%アガロースゲルで精製してlexA-ADHIt-TRP1フラグメントと連結して、pMIC-BD1を生成した。挿入物の正確な方向を配列分析によって確認した。
【0052】
pMIC-BD2(図7)
pMIC-BD1中にクローニングされたlexAタンパク質を変化させて、このタンパク質の内側に存在する核位置シグナルを完全に破壊した。
【数7】

【0053】
次いで、lexAをコードする領域のCGCコドンおよびAAAコドンを、以下の方式で変異させた:
制限部位HpaIを含む
【数8】

ならびに2つの変異およびPmeI制限部位を含むlexA-NLS for
【数9】

を使用して、lexAの一部を増幅した。これらのオリゴヌクレオチドで増幅したDNAフラグメントを酵素HpaIおよびPmeIで切断し、2%アガロースゲル調製物で精製した。このpMIC-BD1ベクターを同じ様式で切断し、仔ウシ小腸ホスファターゼ(CIP)で処理して、0.75%アガロースゲル調製物で精製した。2つのフラグメントをT4 DNAリガーゼを使用して連結した。次いで、得られたベクターをpMIC-BD2と呼んだ。
【0054】
pVP16mv1-loxおよびpVP16mv2-kan(図5)
Sblattero D.ら 2000に記載されるように、以下の組換え配列をpVP16mv1ベクター中に挿入した:
【数10】

【0055】
このベクターのポリリンカーをそのように改変する:
【数11】

【0056】
第一のlox部位(loxP511)を、可変鎖VLおよびVHの引き抜きによって付加する。可変鎖引き抜きのためのプライマーは以下であった:
【数12】

【0057】
第二のlox部位(loxPWT)を、VP16活性化ドメインの3'側でベクターpVP16に直接付加する。このVP16遺伝子を、以下のプライマーを用いてpVP16mv1から増幅する:
【数13】

【0058】
次いで増幅産物を、同じ酵素で切断したベクターpVP16mv1およびpVP16mv1-kanに、フラグメントHindIII-BamHIとして直接付加する。kan遺伝子+ColE1を、プラスミドpZero-2(Invitrogen)によって増幅された増幅産物としてベクターpVP16*中に挿入し、部位DraIIIおよびAaTII中にクローニングする。
【数14】

【0059】
colE1およびカナマイシン耐性遺伝子をクローニングしたところで、このベクターを以前に記載したように変化させて、pVP16mv2-kanベクターを得る。
【0060】
可変鎖の組換えは、酵母細胞中でin vivoで生じる。リコンビナーゼをコードするCRE遺伝子は、Gal1誘導性プロモーターによって転写される。pGal1-CREは、酵母株中の組み込まれたプラスミドであり得るか、またはGal1プロモーター下でCREを発現するエピソームベクターに抗生物質耐性(ネオマイシン)が導入できる。CREは例えば、Gal1プロモーターによって制御されるpESCベクター(Stratagene)中にクローニングできる。このベクターにおいて、抗生物質耐性(G418、ネオマイシン)が、酵母細胞におけるこのプラスミドの選択を容易にするためにクローニングできる。遺伝子G418は、Gal1に関して二方向性プロモーターであるGal10プロモーターによって転写される。両方のプロモーターが培養培地中ガラクトースの存在下で誘導され、従って、CRE酵素リコンビナーゼの発現の制御を可能にする。
【0061】
pBiDi3HYベクター(図18):
pBiDi3HYベクターを構築するために、2つのベクターを使用した。pESC-TRPベクター(Stratagene)をPvuIIで切断して二方向性プロモーターGal1-Gal10を単離した。pMIC-BD1ベクターをSphIで切断し、DNAポリメラーゼI、Large(Klenow)フラグメントを引き続いて使用して、3'突出部分を除去して平滑末端を形成した。このベクターをまた仔ウシ小腸アルカリホスファターゼで脱リン酸化して、クローニングベクターの再環状化を防止した。PvuII消化したGal1-Gal10の、SphI切断して平滑末端化したpMIC-BD1へのクローニングにより、pBiDi3HYを得た。
【0062】
pBiDi3HYlexA-VP16ベクター(図18):
DNAフラグメントVP16を、VP16*ベクター(Hollenbergら, 1995)から増幅して、pBiDi3HYプラスミドのBamHI/ApaI間にクローニングした。
【0063】
DNAフラグメントlexAをpMIC-BD1から増幅して、pBiDi3HY-VP16ベクターのEcoRI/SpeI間にクローニングした。最終的なベクターpBiDi3HY-lexA-VP16を配列決定し、lexAタンパク質およびVP16タンパク質の発現を、ガラクトース20%を用いたプロモーターの誘導後の酵母粗製抽出物のウエスタンブロット分析によって確認した(図23を参照のこと)。
【0064】
pBiDi3HYlexAp65-VP16p65ベクター:
NF-κB/Relファミリーのメンバーであるp65タンパク質を、lexAドメインおよびVP16ドメインとのC末端融合タンパク質としてクローニングした。DNAフラグメントp65をpRSV NF-κB relA(p65)プラスミドから増幅して、SpeI中にクローニングしてlexA-p65融合タンパク質を生成し、ApaI/SalI間にクローニングしてVP16-p65融合タンパク質を生成した。両方のp65融合タンパク質の発現を、ウエスタンブロット分析および配列によって確認した(図24を参照のこと)。
【0065】
全てのクローンを、Li-Cor 4000L自動シークエンサー(Lincoln、NE)と共にEpicentre Sequitherm Excel IIキット(Alsbyte、Mill Valley、CA)を使用して配列決定した。
【0066】
免疫したマウスのライブラリーの構築(抗GFP)(図8)
本発明を導く予備研究において、IACT技術の開発の中で、抗体ライブラリーを目的の種々の抗原(EGFP(緑色蛍光タンパク質)(Prasherら, 1992)、ヒトタンパク質Aβ1-42およびその他を含む)に対して免疫したマウスの脾臓から構築した。免疫した抗原に対するこれらのライブラリーの選択は新たな態様を構成しないが、以下の段落に記載される予測していなかった結果を導入するので、これに言及する。
【0067】
タンパク質EGFPをE.coli中で発現させ、(Bairdら, 1999)によって開発された標準的なプロトコルに従って精製した。次いで、EGFPをBSA(ウシ血清アルブミン)とコンジュゲート化して、GFPが高度に圧縮されたタンパク質である限りその免疫原性を増大させた。0.7mgの精製タンパク質(ネイティブGFPおよびコンジュゲート化GFPの両方)を、3匹のマウスの初回免疫のために使用した。引き続くブーストは、1.0mg〜1.7mgの精製タンパク質(マウス1匹当たり約200μg〜500μgの精製タンパク質)を含んだ。
【0068】
約2カ月後、免疫したマウスの血清をELISAによって分析した。これらの結果は、これらのマウスがGFPに対する高力価の抗体を提示したことを示した(本発明者らは、より高い希釈(すなわち1:10000)でも、分析した血清中で特異的な抗GFP抗体を見出し得る)。次いでその脾臓を取り出してRNA抽出のために使用した。
【0069】
免疫グロブリン可変領域を、以下のプライマー(表I)を使用し、V領域PCR(Orlandiら, 1992)を使用して増幅した:
表I.SPLINTライブラリーの構築のために使用した変性プライマーのパネル
【数15】

【数16】

【数17】

【数18】

【0070】
可能な限り代表的なライブラリーを生成するために、以下のスキームに従って上記の各オリゴヌクレオチドを使用して単回の増幅を実施した:
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
この手順により、他よりも容易に増幅される明確な可変領域の普及を導入する必要なしに、ライブラリーの品質の確認が可能である。この特定の場合において、免疫したマウスの脾臓から抽出した総RNAから得られたcDNAから開始して、141の個々の増幅を実施する。可変鎖を増幅するために使用した条件は以下であった:
cDNA 0.5μ1;H2O 30.5μl;10×PCR緩衝液5μl;dNTP 2.5mM 各5μl;MgCl2 25mM 3μl;オリゴ1(10pmol/μl)2.5μl;オリゴ2(10pmol/μl);2.5μl Taqポリメラーゼ 1μlを混合する。
【0074】
鉱油(50μl〜100μl)を添加して、反応混合物を含む試験管中の蒸発を防止する。次いでこの管を以下のようにプログラムしたサーモサイクラー中に配置する:
94℃-5分、(94℃-1分 60℃-1分 72℃-1分)を30サイクル;72℃-10分;4℃-24時間。
【0075】
可変領域を増幅した後、これらを1.5%アガロースゲル上で分析して定量する。次いで、クローニングのために各増幅産物について同量のDNAを使用する。次いで、合計10μgの可変鎖を各クローニングのために使用する。
【0076】
初期VLライブラリーを生成する。
【0077】
軽鎖を以下のように処理した:
VL DNAミックス10μg;BssHII(NEB 20U/μl)1.5μl;緩衝液3(NEB)10μl;H2O充分量(最終体積=100μl)。
【0078】
この反応混合物を50℃で8時間インキュベートする。次いで、消化した鎖を、精製キット(Gel抽出キット、Qiagen)を使用して1.5%ゲルで精製する。次いで、精製したDNAを、以下のスキームに従ってSalI酵素を使用して消化する:VL DNAミックス BssHII 100μl;SalI(NEB 20U/μl)1.5μl;緩衝液Sal(NEB)2μl;H2O 78.5μl。
【0079】
この反応混合物を37℃で8時間インキュベートする。次いで、消化した鎖を、精製キット(Gel抽出キット、Qiagen)を使用して1.5%ゲルで精製する。精製後、このDNAを1.5%アガロースゲル上で定量し、260nmの波長で分光光度法で分析する。
【0080】
10μgのpVP16/mv1ベクターを同じ様式で切断する:pVP16/mv1 DNA 10μg;BssHII(NEB 20U/μl)1.5μl;緩衝液3(NEB)10μl;H2O充分量(最終体積=100μl)。
【0081】
この反応混合物を50℃で8時間インキュベートする。次いで、消化した鎖を、精製キット(Gel抽出キット、Qiagen)を使用して0.75%ゲルで精製する。次いで、精製したDNAを、以下のスキームに従ってSalI酵素を使用して消化する:pVP16/mv1 BssHII 100μl;SalI(NEB 20U/μl)1.5μl;緩衝液Sal(NEB)20μl;H2O 78.5μl。
【0082】
この反応混合物を37℃で8時間インキュベートする。消化したベクターをCalf Intestinal Phosphastase(CIF)で脱リン酸化し、0.75%アガロースゲルで精製する。精製後、このDNAを0.75%アガロースゲル上で定量し、260nmの波長で分光光度法で分析する。次いで、pVP16/mv1(BssHII-SalI-CIP)を、リガーゼまたはH2Oのみと共に一晩インキュベートした既知量の消化したDNAのエレクトロポレーションによってE.coli中で試験して、全体の消化および脱リン酸化を確認する。ベクターの部分的消化またはその再ライゲーション由来のベクターバックグラウンドを確認した後(このバックグラウンドは、0に等しいかまたは可能な限り0に近くなければならない)、pVP16/mv1(BssHII-SalI-CIP)を、挿入物:ベクター=5:1の割合で、精製した軽鎖可変領域と連結する。
【0083】
約6μgのベクターをリガーゼ混合物中で使用する。次いで、リガーゼ反応を16℃で一晩放置し、次いでこのリガーゼを70℃で10分間不活化し;次いでこのリガーゼミックスを以下の方式で精製する:フェノール(1:1)による1回の精製工程;フェノール-クロロホルム(1:1)による1回の精製工程;クロロホルム-イソアミル(25:24:1)による1回の精製工程;3体積の酢酸ナトリウム/エタノール(1mlのNaAc(pH5.2)+27.5mlのEtOHの溶液)によるDNA沈殿。200μlの70%EtOHで、沈殿したDNAを洗浄する。次いで、DNAペレットを20μl〜30μlの蒸留H2O中に再懸濁する。
【0084】
次いで、10ng〜40ngの精製したリガーゼを各エレクトロポレーションのために使用する。次いで、DH5αF'またはTG1を、以下の方法(Engbergら, 1996)でエレクトロコンピテントにする。約3個〜4個のE.coliコロニーを、100mlの2YT中に接種し、O.D.が0.8〜1になるまで37℃で増殖させる。2個の50mlのファルコン管を満たし、氷上に約10分間放置する。その後、全ての工程を4℃で低温室中で実施する。これらの管を4℃で3500rpmで8分間遠心分離する。その上清を除去する。各ペレットを2mlの10%氷冷グリセロール緩衝液(蒸留滅菌H2O中10%の滅菌グリセロール)中に再懸濁する。次いで、再懸濁した細菌を、グリセロース緩衝液中で50mlの体積にする。これらの管を4℃で3500rpmで8分間遠心分離する。その上清を排除する。これらのペレットを2mlの10%氷冷グリセロール緩衝液中に再懸濁し、ファルコン管に移す。次いで、これらの細菌を、グリセロース緩衝液中で50mlの体積にする。さらに2回の洗浄を、ポイント6〜8に記載されるスキームに従って実施する。最後に、最終ペレットを、10%グリセロール緩衝液中に1mlで再懸濁して3mlにした。これらの管を4℃で3500rpmで8分間遠心分離する。その上清を除去する。最終ペレットを125μlの10%グリセロール緩衝液中に再懸濁する。次いで、これらの細菌を、0.5mlのEppendorf管中でアリコート(管1本当たり30μl)に分割し、約1ヶ月間-80℃で保存する。
【0085】
エレクトロポレーターを1800Vに設定し、エレクトロコンピテント細胞をキュベットと一緒に氷上に配置し、約10分〜15分間冷却する。
【0086】
各エレクトロポレーションについて、30μlの細菌+1μlのリガーゼ混合物(10ng〜40ngのDNA)を使用する。形質転換後、これらの細菌を1mlのSOC培地+10mMのMgCl2中に再懸濁し、37℃で1時間インキュベートする。次いで、これらの細菌をLB+アンピシリンプレート上に播く。次の日、形質転換効率を評価する。VLライブラリーの密度を制御するために、100コロニーをプレートからランダムにサンプリングし、BstNI制限酵素を使用したPCRフィンガープリントによって分析する。密度を確認した後、これらの細菌をプレートから収集し、20%グリセロール中で-80℃で凍結する。
【0087】
VH鎖とVL鎖とのアセンブリは、VLライブラリー上で直接実施される。約10μlをVLライブラリーグリセロレート(glycerolate)から取り出し、50mlのLB+Amp中に一晩接種する。次の日、VH鎖クローニングのためのDNAを調製する。可変重鎖を以下のように処理する:VH DNA ミックス 10μg;XhoI(NEB 20U/μl)1.5μl;NheI(NEB 20U/μl)1.5μl;緩衝液2(NEB)10μl;BSA(10mg/ml)1μl;H2O充分量(最終体積=100μl)。この反応混合物を37℃で8時間インキュベートする。次いで、消化した鎖を、精製キット(Gel抽出キット、Qiagen)を使用して1.5%ゲルで精製する。精製後、このDNAを1.5%アガロースゲル上で定量し、260nmの波長で分光光度法で分析する。
【0088】
10μgのVLライブラリーを同じ様式で切断する:VH DNAミックス10μg;XhoI(NEB 20U/μl)1.5μl;NheI(NEB 20U/μl)1.5μl;緩衝液2(NEB)10μl;BSA(10mg/ml)1μl;H2O充分量(最終体積=100μl)。この反応混合物を37℃で8時間インキュベートする。消化したベクターをCalf Intestinal Phosphastase(CIF)で脱リン酸化して、0.75%アガロースゲルで精製する。精製後、このDNAを0.75%アガロースゲル上で定量し、260nmの波長で分光光度法で分析する。次いで、VLライブラリー(XhoI-NheI-CIP)を、リガーゼまたはH2Oのみと共に一晩インキュベートした既知量の消化したDNAのエレクトロポレーションによってE.coli中で試験して、全体の消化および脱リン酸化を確認する。ベクターの部分的消化またはその再結合由来のベクターバックグラウンドを確認した後(このバックグラウンドは、0に等しいかまたは可能な限り0に近くなければならない)、このライブラリーを、挿入物:ベクター=5:1の割合で、精製した重鎖可変領域と連結する。
【0089】
その後、この手順を、VLライブラリーの調製物によって上記のように継続する。良好なライブラリーは、使用したDNA1μg当たり約106〜107の異なるscFvを有するべきである。次いで、このpVP16/mv1ベクターライブラリーを、GFPベイト(免疫抗原)を用いてアッセイする。
【0090】
このGFPベイトはpEGFP-N1から増幅した。GFP遺伝子の増幅プライマーは以下であった:GFPセンス:CCG GTC GAA TTC ATG GTG AGC AAG GGC GAG GAGおよびGFPアンチセンス:TGA TCT GGA TCC GCG GCC GCT TTA AGT GAT CCC GGC。
【0091】
以前の実験により、GFP単独で酵母の系においてレポーター遺伝子の転写をトランス活性化し得ることが示されているので、GFP欠失の変異体をこの実験のために使用した。GFPの最後の8アミノ酸の除去がこのタンパク質の蛍光活性を維持し、その立体配座が変化していないことが文献により報告されている(SiegelおよびIsacoff, 1997)。
【0092】
これらのオリゴヌクレオチドで増幅したDNAフラグメントを、次いで、酵素EcoRIおよびBamHIで切断し、1.5%アガロースゲル調製物で精製した。pMIC-BD1ベクターを同じ様式で切断し、仔ウシ小腸ホスファターゼ(CIP)で処理して、0.75%アガロースゲル調製物で精製した。これら2つのフラグメントをT4 DNAリガーゼを使用して連結した。
【0093】
ベイトGFPのトランス活性化を確認するために、レポーター遺伝子転写の自己活性化を、以下に示される形質転換工程に従って試験した:
【0094】
【表3】

【0095】
酵母株におけるベイトGFPのトランス活性化がないことおよびその良好な発現を確認した後(ベイトGFPで形質転換した酵母抽出物を、lexAタンパク質を認識する一次抗体を使用してウエスタンブロット分析によって試験する)、この酵母細胞においてライブラリーの選択を実施する。ベイトGFPを発現するL40を、以下に記載するプロトコルに従って100μgのscFv抗GFPライブラリーを用いて形質転換する:
1日目:5mlのYC-UW中へのベイトGFPを含むL40の一晩の接種;
2日目:次の日に対数増殖期に到達するのを可能にする希釈にするための、一晩培養物のアリコートの100mlのYC-UWへの接種;
3日目:この一晩培養物を、1lの加熱YPAD中に移して、OD 600=0.3を有する培養物を得る;この酵母を30℃で3時間増殖させ、これらの細胞を室温で1500rpmで5分間遠心分離する;この酵母ペレットを500mlの1×TEで洗浄し、次いで室温で1500rpmで5分間遠心分離する;このペレットを20mlの1×LiAC、0.5×TE中に再懸濁し、新しいフラスコに移す;100μgのscFv抗GFPライブラリーおよび1mlの変性サケ精子を添加する;140mlの1×LiAc、40%のPEG 3350、1×TE;この産物を混合し、低速攪拌器中で30℃で30分間インキュベートする;17.6mlのDMSOを添加して混合する。熱ショックを、時々攪拌しながら42℃で10分間実施する。この産物を、400mlのYPAを添加することによって迅速に冷却する。この酵母を遠心分離によってペレット化し、500mlのYPAで1回洗浄する。遠心分離後、このペレットを、予め30℃に加熱した1lのYPAD中に再懸濁する。この産物を30℃で1時間インキュベートする;1mlの培養物を単離し、このmlの遠心分離によって得られたペレットを、1mlのYC-UWL中に再懸濁する。1:10、1:100および1:1000の希釈物をYC-UWLプレート上に播いて、形質転換効率を計算する。残りの培養物から得られたペレットをYC-WHULKで2回洗浄する。最終ペレットを10mlのYC-WHULK中に再懸濁する。これらのアリコートをYC-WHULKプレート上にプレートし、3日〜4日後に増殖したコロニーを分析して相互作用を決定する。
【0096】
YC-WHULK上で増殖した、β-Galアッセイで青色について試験した96個のコロニーを、BstNI制限酵素を使用したPCRフィンガープリント分析によって分析した。消化パターンおよびHIS+lacZ+コロニーから単離したscFv配列の分析により、各選択についてベイト(また、酵母細胞における第二のスクリーニングに加えて、L40において単離されたscFvと共にGFPを発現する同じベイトが形質転換される)を認識する約12個の異なるscFvの単離が可能である。次いで、この単離されたscFvを、哺乳動物細胞での発現のためにscFv発現ベクター(Persic, Righiら 1997)中にクローニングし、同時にE.coli中でのこのタンパク質の発現および産生のためにpUC119CAT中にクローニングした。アフィニティカラムで精製したこれらのタンパク質の結合親和性を、表面プラズモン共鳴を使用して分析した。平均して、IACTで単離されたscFvは、100nM〜500nMの親和性定数を有する。哺乳動物細胞(COS、CHO、PC12、C6など)においてin vivoで発現されたscFvは、その標的タンパク質に結合し、ほとんどの場合、これらのscFvが抗原発現の局在シグナルとは異なる局在シグナルを伴って発現される場合に、その細胞発現環境からその標的タンパク質の位置をうまく変える。また、抗原機能を阻害する中和scFvが見出すことができるか、またはAg-Ab特異的結合を使用して別の細胞区画にその抗原を置くことによって抗原が中和される。
【0097】
この選択の結果は、免疫によって得られた富化により、酵母形質転換に適切なサイズおよび免疫タンパク質に対する多数の抗体のパネルの単離を確実にするのに充分な密度幅を有するライブラリーの構築が可能であることを実証する。
【0098】
類似の結果が、免疫タンパク質に対する多数の抗体が誘導されたヒトタンパク質であるタンパク質Aβ1-42に対して免疫されたマウスの脾臓から生成されたライブラリーで得られている(表2を参照のこと)。
【0099】
この時点で、驚くべき完全に予測していなかった結果が、免疫のために適切でないタンパク質から構築したベイトを用いた高度免疫脾臓由来のライブラリーのスクリーニングから明らかになった。
【0100】
免疫のために使用した抗原とは異なる抗原に対する高度免疫SPLINTライブラリーの選択
上の段落に記載されるように免疫したマウスの脾臓(GFPで免疫したマウス)から得られたライブラリーを、タンパク質Shc(細胞の増殖、アポトーシスおよび寿命を調節するタンパク質)およびヒトAβ1-42(アルツハイマー病の病原に関連する高度にアミロイド原性の成分の蓄積)に対してスクリーニングした。
【0101】
Shcタンパク質の機能的ドメイン(CH2-Shc)およびヒトAβ1-42をpMIC-BD1ベクター中にクローニングし、これら2つの抗原がレポーター遺伝子をトランス活性化する能力を制御するために酵母において発現させた。
【0102】
ベイトの構築:
CH2-Shc/MIC-BD1:DNAフラグメントCH2-Shcを、pGEX4T1-p66ShcからPCR増幅し、pMIC-BD1プラスミドのEcoRI/BamHI制限部位間にクローニングした。
【0103】
Aβ1-42/MIC-BD1:βアミロイド1-42ドメインのDNAフラグメントを、プライマーアニーリングによって合成し、次いでpMIC-BD1プラスミドのBamHI/PstI制限部位中にクローニングした。
【0104】
タンパク質lexAについてのオペレーター部位の制御下にレポーター遺伝子を保持する酵母株において使用されるpMIC-BDベクターを構築した。このベクターはまた、E.coliにおける表現型マーカーとしてクロラムフェニコールを利用するので、活性化ドメインを含むベクターとしてアンピシリン耐性プラスミドを使用するツーハイブリッドシステムにおける抗体-抗原相互作用の確認後の、ポジティブクローンの迅速な抽出を可能にする。
【0105】
全ての抗原を、他に記載されたように(VisintinおよびCattaneo 2001) (Visintin, Tseら 1999)in vivoで試験し、これらの融合タンパク質の発現を、これらのタンパク質を形質転換された酵母株から抽出した後にアッセイした。全ての抗原が酵母において最適な量で発現されるが、レポーター遺伝子(HIS3およびlacZ)をトランス活性化しないことが見出された。
【0106】
CH2-Shcを、ライブラリースクリーニングのための抗原として選択した。ライブラリーの形質転換効率は、DNA1μg当たり約2.5×104クローンであった。予測していなかったことに、数百のポジティブクローン(表III)もまた、このライブラリーを形質転換の第1日目の後にプレートした後に得られた(VisintinおよびCattaneo 2001のプロトコルを参照のこと)。本明細書中で使用したプロトコルは上記のプロトコルと同じであった(抗GFP免疫マウスのライブラリーの構築を参照のこと)。
【0107】
約15分後、これらのコロニーはX-Galアッセイで青色に変化し、観察された相互作用がかなり強力であったことを示す。20個の青色コロニーを単離し、分析すべきscFvフラグメントを含むプラスミドを、酵母からの総DNAの抽出後に迅速に単離し、E.coli中に形質転換した。PCR-BstNIフィンガープリントおよび第二のツーハイブリッドスクリーニングによる分析によって、以下の結果が得られた(図9):19のscFv、9クラスの異なるscFv。9クラスのscFvのうち、CH2-Shcに対して特異的であるが無関係な抗原(ラミニン)に対して特異的でない試験した8クラスのscFvをスクリーニングのために使用した。同様に、無関係な抗原に対する脾臓高度免疫に由来し、Aβ1-42ベイトでチャレンジしたライブラリーからの別個の選択において、Aβ1-42タンパク質に対する多数の異なる抗体ドメインを単離した(データ示さず、表III)。
【0108】
【表4】

【0109】
これらの結果は、ベイトクローニングの開始(ベクター制御および再スクリーニングが含まれる)からちょうど1ヶ月で得られ、目的の任意のタンパク質に対する抗体を得ることにおけるこの系の迅速性および正確さを実証した。次いでこれらの抗体を、in vitro特異性試験ELISAおよび表面プラズモン共鳴のための可溶性scFvを産生するためにファージミドベクター中にクローニングした。
【0110】
この結論は、選択ライブラリーがそれぞれの免疫抗原に対する高度免疫であった(かつ上の段落において実証したように、免疫タンパク質に対する多数の抗体を含んだ)ものの、これらの選択ライブラリーはまた、一般的なタンパク質に対する細胞内抗体の最適な供給源を示すというものである。従って、これらはSPLINTライブラリーを示し、脾臓由来のライブラリーが、一般的な抗原に対する抗体の単離を可能にするのに充分な密度幅を有するが、SPLINTライブラリーに必要な予測していなかった特性(すなわち、酵母細胞形質転換に適切なサイズ)を有することを実証する。
【0111】
免疫抗原に対する抗体についてのみ富化されるべきである高度免疫ライブラリーから得られた予測していなかったポジティブな結果は、以下に記載される実験(すなわち、明白に免疫されていないマウス脾臓のプールから開始するSPLINTライブラリーの構築)についての基礎を確立した。
【0112】
非免疫マウスのリンパ球由来のSPLINTライブラリー(図2)
SPLINTライブラリーの構築
脾臓はB細胞に富んでおり、長く労力のかかる方法によってリンパ球を精製することを必要とせずにリンパ球が比較的容易に抽出できる最適な組織である。マウスの脾臓(新たに屠殺された3月齢〜6月齢のマウスから抽出した)を、PBS中で洗浄して清浄化し、そのリンパ球を皮下針および滅菌スパチュラを用いて脾臓を圧迫することによって放出させた。次いで、この細胞懸濁物を滅菌管に移し、5分間沈殿させた。次いで上清を除去し、細胞をPBSおよびH2O中で2回洗浄し、赤血球を除去した。次いでこれらの細胞を、総RNA抽出のために直ぐに使用した。総RNAを、製造業者のプロトコルに従ってキット(Rneasy Mini Kit、Qiagen)を使用して抽出した。抽出後、このRNAを定量し(元の組織10mgから約30μg)、ランダムプライマー(GIBCO Brl)を用いたcDNA合成のために使用した。個々のRNAフラグメントに相補的なDNAの合成は、Superscript II Rnase H-Reverse Transcriptase酵素(GIBCO Brl)を使用することによって得た。
【0113】
以下のプロトコルをcDNA産生のために使用した:ランダムプライマー(3μg/μl);1μl(100μg);RNA合計5μl;dNTPミックス(生理学的pHで各10mMのdATP、dGTP、dCTP、dTTP)1μl;H2O DEPC 5μl。このミックスを65℃で5分間加熱し、次いで氷上で迅速に冷却する。この管の内容物を短時間の遠心分離の後に収集して、第一鎖緩衝液5×4μl、DTT 0.1M 2μlを添加する。この管の内容物を混合し、次いで42℃で2分間インキュベートし、その後1μl(200U)のSuperscript IIを添加し、42℃で50分間インキュベートする。この反応を70℃で15分間インキュベートする。1μl(2U)のRNAseHを添加して、形成されたDNAに結合した残留RNAを除去し、37℃で20分間放置する。次いでこのcDNAを、可変鎖を増幅するために使用し得る。
【0114】
免疫グロブリン可変領域からcDNAを得るために、V領域を、より多数の可変鎖の増幅を可能にする変性された5'プライマーおよび3'プライマー(表I)を使用したPCRによって増幅した。
【0115】
可変鎖の増幅プライマーは、抗GFP免疫マウスライブラリーの構築の節に記載されるものと同一である。
【0116】
合計141の増幅を実施して、大多数の抗体ファミリーが最終ライブラリー中で発現されることを確実にした。単一の抗体鎖の増幅は図10中に示される。
【0117】
全てのVL可変領域およびVH可変領域をこのcDNAから増幅した後、これらを再増幅して、クローニングのためにDNAの量を増大させて変性プライマーで予め増幅された可変領域の各末端に余分な部位を付加する。可変鎖(PTVLおよびPTVH)が引き抜きを受けた後、増幅産物をゲルで精製する(図11を参照のこと)。精製後、このPTVLおよびPTVHをin vitroのアセンブリのために使用する。この引き抜きを使用して、in vitroのアセンブリの後で単一の鎖の配列を再構築するために次に必要とされる小さいポリペプチド鎖(リンカーと称される)を挿入する(図12を参照のこと)。このアセンブリを、抗GFPライブラリーのクローニングについての節で記載したような2工程ではなく単一の工程で実施した。なぜなら、VP16mvベクター中の可変鎖の連続的クローニングにおいて問題点が注目されたからである。これについての可能な説明は、E.coli中でのpLinker220ベクターの乏しい形質転換性およびこのベクターにおけるクローニングを特に困難にするいくつかの可変鎖ファミリーの可能性のある部分的増幅である。
【0118】
引き抜きのために使用したプライマーは以下であった:
【数19】

【0119】
引き抜きプロトコルは以下であった:VL 5μl(約100ng);VL PTL 220 FOR 5μl;VL PTMIC BACK 5μl;MgCl2 2μl;dNTP 10μl;緩衝液 10×10μl;Taqポリメラーゼ 2μl;H2O 61μl;VH 5μl(約100ng);VH PTL 220 BACK 5μl;VH PTMIC FOR 5μl;MgCl2 2μl;dNTP 10μl;緩衝液 10×10μl;Taqポリメラーゼ 2μl;H2O 61μl。
【0120】
鉱油(50μl〜100μl)を添加して、この反応混合物を含む試験管中の蒸発を防止する。次いでこの管を、以下のようにプログラムしたサーモサイクラー中に配置する:94℃-5分;(94℃-30秒、60℃-30秒、72℃-30秒)を20サイクル;72℃-10分;4℃-24時間。
【0121】
引き抜きの後、VHおよびVLについてのバンドを単離し、これらの鎖をゲルで精製し、その増幅産物をin vitroでのアセンブリに使用する。全てにおいて、約200ngのDNAを反応に使用する(100ngのPTVLおよび100ngのPTVH)。
【0122】
アセンブリ反応プライマーは以下の通りである:
【数20】

【0123】
この反応は以下の通りである:PTVL 100ng;PTVH 100ng;VL PT2 BACK(100μM)0.5μl;VH PT2 FOR(100μM)0.5μl;dNTP 10μl;緩衝液 10×10μl;MgCl2 2μl;Taqポリメラーゼ 2μl;H2Oを添加して100μlにする。鉱油(50μl〜100μl)を添加して、この反応混合物を含む試験管中の蒸発を防止する。次いでこの管を、以下のようにプログラムしたサーモサイクラー中に配置する:94℃-5分;(94℃-30秒、68℃-30秒、72℃-30秒)をプライマーなしで8サイクルおよびプライマーありで12サイクル;72℃-10分;4℃-24時間。
【0124】
このVHおよびVLのアセンブリの後、アセンブリしたscFvライブラリーを、上記のようにゲルで精製する。精製後、以下の方式でこのDNAを酵素NheIおよびBssH2で消化する:DNAミックス10μg;NheI(NEB 20U/μl)1.5μl;緩衝液2(NEB)10μl BSA(10mg/ml)1μl;H2O充分量(最終体積=100μl)、37℃で4時間消化させる。
【0125】
消化およびゲルでの精製後、このDNAをBssH2で切断する:DNAミックス 10μg BssH2(NEB 20U/μl)1.5μl;緩衝液3(NEB)10μl;H2O充分量(最終体積=100μl)。
【0126】
この反応混合物を50℃で4時間インキュベートする。次いで、消化した鎖を精製キット(Gel抽出キット、Qiagen)を使用して1.5%ゲルで精製する。精製後、260nmの波長で分光光度法を使用してこのDNAを1.5%アガロース上で定量する。
【0127】
次いで、このライブラリーをベクターpLinker220中に連結する:約200ngのベクターをこの工程のためにした;ライゲーションを、反応を最適化するために勾配中で実施した。この反応混合物は以下の通りである:pLinker220:1μl(200ng);VL-VHアセンブリ:2μl(250ng);リガーゼ:1μl(400U/μl);緩衝液:1μl;H2O:5μl;この反応混合物をEppendorf管中に配置し、低温室中で18℃で水を満たしたビーカー中で一晩インキュベートする。次の日、この反応管を低温室から取り出し、1μlのリガーゼを添加し、室温で2時間放置する。インキュベーション後、この反応混合物をフェノール-クロロホルムで(上記のように)精製し、10μlのH2O中に再懸濁し、次いで細菌株中にエレクトロポレーションした。
【0128】
各エレクトロポレーションについて、30μlの細菌+1μlのリガーゼミックスを使用する(1回のエレクトロポレーション当たり最大100ng)。形質転換後、これらの細菌を1mlのSOC培地+10nMのMgCl2中に再懸濁し、37℃で1時間インキュベートし、その後これらをLB+アンピシリンプレート上に播く。次の日、形質転換効率を評価する。こうして得られたライブラリーは、約4.105CFUであると推測された。
【0129】
この時点で、SPLINTライブラリーを、コントロール試験(例えば、ライブラリーの多様性、ランダムに採取された抗体配列を試験するためのPCRフィンガープリント、酵母における個々の鎖の発現をチェックするためのウエスタンブロット分析および既知の抗原のパネルでのスクリーニング)のために使用した。
【0130】
これらの結果は、この初期SPLINTライブラリーからでさえ、広範な種々の抗原に対する細胞内抗体が単離できることを実証する。
【0131】
抗原の説明およびリスト(表II):
SPLINTを以下の抗原に対して選択した:Shcの2つのドメイン(図13、15)、K-RAS(図14、15)、Syk(図16)、遍在性β4-チモシン、リンパ系β4-チモシン(図17、18)、アミロイドβ1-42、ゲフィリン、TFII-IおよびX5 ORF SARS-CoVタンパク質。
【0132】
ベイトの構築:
SH2-Shc/MIC-BD1:DNAフラグメントSH2-Shcを、pGEX4T1-p66ShcからPCR増幅し、pMIC-BD1プラスミドのEcoRI/BamHI制限部位間にクローニングした。
【0133】
CH2-Shc/MIC-BD1:DNAフラグメントCH2-Shcを、pGEX4T1-p66ShcからPCR増幅し、pMIC-BD1プラスミドのEcoRI/BamHI制限部位間にクローニングした。
【0134】
Syk/MIC-BD2:Syk/BTM116(Visintinら, 1999)由来のSyk EcoRI/BamHIフラグメントを、pMIC-BD2プラスミドのEcoRI/BamHI制限部位間にサブクローニングした。
【0135】
K-RAS/MIC-BD1およびK-RAS/MIC-BD2:K-RAS/BTM116(Visintinら, 1999)由来のK-RAS BamHI/PstIを、それぞれ、pMIC-BD1およびpMIC-BD2のBamHI/PstI制限部位間にサブクローニングした。
【0136】
LTβ4/MIC-BD1:DNAフラグメントLTβ4を、LTβ4/pCI-neoベクターから増幅し、pMIC-BD1プラスミドのEcoRI/BamHI制限部位間にクローニングした。
【0137】
UTβ4/MIC-BD1:DNAフラグメントLTβ4を、UTβ4/pCI-neoベクターから増幅し、pMIC-BD1プラスミドのEcoRI/BamHI制限部位間にクローニングした。
【0138】
ゲフィリン/MIC-BD1:ゲフィリンタンパク質の153-348ドメインのDNAフラグメントを増幅し、pMIC-BD1プラスミドのEcoRI/BamHI制限部位間にクローニングした。
【0139】
SPLINTライブラリーの選択を開始する前に、全てのベイトを、記載されるように(VisintinおよびCattaneo, 2001)レポーター遺伝子のトランス活性化について試験した。全てのベイトがトランス活性化しないという結果が得られ、従って、選択のために使用した。
【0140】
Aβ1-42/MIC-BD1:βアミロイド1-42ドメインのDNAフラグメントをプライマーアニーリングによって合成し、次いでpMIC-BD1プラスミドのBamHI/PstI制限部位中にクローニングした。
【0141】
TFII-I 1-397/MIC-BD1:TFII-I転写因子の1-397ドメインのDNAフラグメントを、ヒトTFII-I cDNAから増幅し、pMIC-BD1プラスミドのBamHI制限部位中にクローニングした。
【0142】
X5 ORF SARS-CoV/MIC-BD1:SARS-コロナウイルスのX5 ORFのDNAフラグメントをプライマーアニーリングによって合成し、次いでpMIC-BD1プラスミドのEcoRI/SalI制限部位中にクローニングした。
【0143】
IACTによる、異なる特異性を有するscFv細胞内抗体の選択
本発明者らがシグナル伝達タンパク質および他の細胞内タンパク質に対する細胞内抗体をこのライブラリーから選択できたか否かを確認するために、本発明者らは、異なるベイトのパネル(表II)に対してこのライブラリーをスクリーニングした。これらには、Shcの2つのドメイン、K-RAS、Syk、遍在性β4-チモシン、リンパ系β4-チモシン、アミロイドβ1-42、ゲフィリン、TFII-IおよびX5 ORF SARS-CoVタンパク質が含まれる。
【0144】
表II.SPLINT-2HY選択のために使用した異なるベイトのパネル
・ヒトp66Shc CH2ドメイン(CH2-Shc)
・ヒトp66Shc SH2ドメイン(SH2-Shc)
・ヒトK-RAS
・ヒトSyk
・マウス遍在性β4-チモシン(TUβ4)
・マウスリンパ系β4-チモシン(TLβ4)
・ヒトアミロイドβ1-42
・ラットゲフィリン
・ヒトTFII-I
・X5 ORF SARS-CoV
【0145】
このSPLINTライブラリーの確認のために選択したベイトには、異なる種のタンパク質、ウイルス起源のタンパク質ならびに非常に異なる機能および細胞位置のタンパク質が含まれる:独自のアミノ末端プロリンリッチ領域(CH2)およびNH2末端ホスホチロシン結合ドメイン(PTB)とその後のコラーゲン相同性ドメイン(CH1)およびCOOH末端のSH2ドメインを含む、ヒトp66Shcアダプタータンパク質(Venturaら, 2002)の2つの異なるドメイン(CH2およびSH2)。そのPTBドメインおよびSH2ドメインによって、下流の細胞質へのShcタンパク質連結レセプターおよび非レセプターチモシンキナーゼの活性化は、チロシンがリン酸化されている活性化されたレセプターに結合し得る。このタンパク質は、環境ストレスおよび寿命の調節によって活性化される経路に関与する。
【0146】
ヒトK-Rasは、分子事象または核事象として機能する21kdのモノマー膜局在Gタンパク質である。rasシグナル伝達経路は、発癌におけるその重要な役割に起因して、抗癌治療のための魅力的な標的である。
【0147】
Sykタンパク質-チロシンキナーゼは、種々の造血細胞応答、特に増殖、分化および食作用を含む多様な細胞応答を媒介する免疫レセプターのシグナル伝達事象に関与している。Sykはまた、ニューロン細胞を含む広範な種々の細胞において普遍的な生理学的機能を果たすようであり、神経突起の伸長のためのシグナル伝達段階において重要な役割を果たすことが示唆される(Yanagiら, 2001)。
【0148】
チモシンβ4は、好中球の浸潤を阻害する能力が実証された遍在性のアクチン結合タンパク質(UTβ4)と、樹状表皮T細胞および他の上皮内リンパ球によって発現されて局所的炎症をダウンレギュレートする、活性化応答性であることが示されているリンパ系組織に限定されたスプライス改変体(LTβ4)との両方をコードする(Girardi, 2003)。
【0149】
ゲフィリンは、グリシンレセプター(GlyR)を用いて同時精製された93kDaのタンパク質であり、グリシン作動性シナプスのシナプス後側に局在することが見出されている(Priorら, 1992) (Sassoe-PognettoおよびFritschy, 2000;CraigおよびLichtman, 2001)。
【0150】
アルツハイマー病における老人斑の主要成分は、42アミノ酸のペプチドであり、βアミロイド(Aβ)と称される。Aβは、内部タンパク質分解(endoproteolytic)プロセシングによって、差別的にスプライシングされたAPPと呼ばれる1型膜貫通ドメイン(TM)含有タンパク質のファミリーから生成される。細胞培養物におけるAPP代謝の主要な比較的遍在性の経路は、Aβ配列内を切断するα-セクレターゼによる切断を含み、従って、Aβの形成および沈着を予め除外する。アミロイドβペプチド(1-42)(Butterfield, 2002)は、ADの病原の中心であり得る(SinhaおよびLieberburg, 1999)。
【0151】
TFII-Iは、種々の細胞外シグナルに応答して活性化される誘導性の多機能転写因子であり、核に移行してシグナルにより誘導される遺伝子のスイッチを入れる(Roy, 2001)。
【0152】
重症急性呼吸症候群(SARS)は、生命を脅かす形態の異型肺炎である。SARS-CoVゲノムは約29.7kb長であり、5'非翻訳領域および3'非翻訳領域が隣接した14個のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。コロナウイルスは、多数の非構造タンパク質をコードする。異なるコロナウイルス種間で広く変動するこれらの非構造タンパク質は、未知の機能のものであり、ウイルスの複製にとって重要でないと考えられる(Rotaら, 2003;Snijderら, 2003;Zengら, 2003)。
【0153】
抗原特異的ベイトを生成するためにlexAタンパク質に融合されたこれらのタンパク質の各々をコードするDNA配列を、SPLINTライブラリーを発現する酵母細胞中に形質転換によって導入し、IACT選択を記載されるように実施した(Visintinら, 2002)。対応するタンパク質の操作はまったく実施されていなかったことに留意すべきである。
【0154】
二重形質転換体をヒスチジン原栄養性およびlacZ活性について選択した。抗原結合scFvフラグメントについての研究において、各抗原について約10個〜20個の異なるHis+/lacZ+クローンを、第二のツーハイブリッドスクリーニングにおいて分析した(そのスクリーニングがより徹底的であった(90個より多い異なるHis+/lacZ+クローン)UTβ4、LTβ4、Aβ1-42、ゲフィリンおよびTFII-I(表II)を除く)。特異的に結合するクローンが各場合において得られ、ベイト特異的な単鎖抗体が酵母細胞の細胞質および核において発現され得ることが実証された(表III)。引き続く二次的なスクリーニングにより、元のベイトと特異的に相互作用するが他のlexA融合物(lexA-ラミン)とは相互作用しない真のポジティブが同定できることが確認された。
【0155】
それらの抗原と相互作用するがlexA-ラミンと相互作用しなかった、CH2-Shcについて8個のクローン、SH2-Shcについて5個のクローン、K-RASについて2個のクローン、Sykについて6個のクローン、LTβ4について11個のクローン、UTβ4について2個のクローンおよびゲフェリンについて6個のクローン、Aβ1-42について6個のクローン、TFII-Iについて4個のクローンならびにX5 ORF SARS-CoVについて6個のクローンが同定された。
【0156】
LTβ4スクリーニングから得られた抗体フラグメントのサブセットもまた、UTβ4への結合について分析した(図18)。
【0157】
リンパ系特異的チモシンは、チモシンの遍在性形態と比較して6残基のNH2末端の伸長をコードする。リンパ系形態にのみ特異的なscFvを単離することが可能であるか否かを確認するために、本発明者らは、UTβ4を結合するその能力について、単離されたscFvの中で最も異なるアミノ酸配列を有することが示された、LTβ4スクリーニングから得られた5つの抗体フラグメントを試験した。試験した全てのscFvは、リンパ系形態に高度に特異的であって遍在性形態に結合できないとの結果が得られる(図18)。UTβ4に対するSPLINTの平行選択は非常に厳密であるとの結果が得られ;非常に少ない異なるフィンガープリントパターンが、96個の分析したクローンの中で見出された。さらに、UTβ4ベイトに対するSPLINTの選択が、そのアミノ酸配列が以前にLTβ4に対して単離されたいくつかのscFvに対応するscFvを単離し得たことが示され、従って、LTβ4に対するSPLINTの選択が、チモシンタンパク質の両方の形態に対して特異的な抗体を探し出すのに充分に徹底的であったことを示す。
【0158】
結論において、得られた結果により、構築されたSPLINTライブラリーが実際に、広範な種々の異なるタンパク質に対する確認された細胞内抗体の良好な供給源を示すことが確認された。このような抗体を単離するための手順は、ライブラリーの形式に直接依存し、標的タンパク質の操作をまったく必要とせず、従って、抗体単離のスループットを増大させるための重要な実験上の障害を示すタンパク質の発現および精製の必要性を除く。SPLINTライブラリーの構築に依存する記載された手順により、遺伝子配列から直接的に、安定な確認された抗体を単離することが可能である。
【0159】
選択の厳密性の改善
表III中にまとめた結果は、選択された各標的タンパク質について、多数の異なる抗原特異的抗体が遺伝子配列から直接単離できることを示す。この手順は、実験的に最適化および洗練されており、非常に強力で迅速かつ有効である。
【0160】
非常に強力な結合因子を探し出し、選択の厳密性を改善するために、必要な場合、本発明者らはまた、変異体lexAタンパク質と融合した改変されたベイトを使用することによって、本発明者らのSPLINTライブラリーを試験した。pMIC-BD1ベクターの細菌LexAタンパク質を改変して(mLexA)、以前に記載されたように(Rheeら, 2000)、その固有のNLSを完全に破壊した(図7)。この方式において、細胞質中で形成された抗体/抗原複合体だけが、核に標的化されるという情報を有する。SPLINTもまた(pMIC-BD2ベクターの場合のように)酵母細胞質中でのみ発現される抗原を用いてスクリーニングすることが可能であるはずであるか否かをチェックするために、本発明者らは、標的抗原としてタンパク質K-RASを選択する。RASの選択もまた、標準的な選択手順で細胞内抗体を単離することの見掛けの困難さに起因した(表III)。この改変された選択手順において、抗原とscFvとの間の相互作用は細胞質中で生じるはずである。なぜなら、この抗原は、lexAの固有の核局在シグナルなしに酵母細胞中で発現されるからである。scFvおよび抗原は、その複合体が核中に移行して転写を活性化する前に細胞の細胞質において相互作用する。本発明者らは、核局在シグナルありまたはなしで、lexAベイト融合タンパク質としてのK-RASの選択を平行して試みた。両方の場合において、本発明者らは、同じ数の機能的細胞内抗体を得た。
【0161】
このことは、このような親和性を有するscFvの選択が抗体-抗原複合体を核中にもたらしてレポーター遺伝子の転写を活性化することを可能にするのに、この技術が充分に強力であったことを示す。
【0162】
一般的なコメントとして、NLSありまたはなしのいずれかのK-RASでの選択により、他の抗原と比較した場合に非常に少ないポジティブクローンが得られた(表II))。非常に少ないポジティブクローンがまた、RASをベイトとして使用した場合の他の報告されたIACT選択ストラテジーにおいて得られたことに留意すべきである(TanakaおよびRabbitts, 2003)。このことは、この抗原が核に入るのは困難であり、この困難性が通常の選択手順を妨害することを示し得る。あるいは、内因性RASタンパク質の妨害が、この選択から得られたコロニーの低い数を説明し得る。
【0163】
結論において、本発明者らは、機能的抗原特異的なICAbが、ウイルスタンパク質を含む非常に異なるタンパク質抗原の広いスペクトルに対する天然のSPLINTライブラリーから選択されたことを確立した。最適化された選択手順は、これらの選択された抗体が哺乳動物細胞中で発現される場合にも全て機能的であることを確実にすることに留意すべきである。
【0164】
実際、IACT選択は、全ての場合に機能的細胞内発現抗体である特性を予測する(Visintinら, 2002) (Tseら, 2002)。これは、哺乳動物細胞中で発現される場合に良好な可溶性および半減期を示した、SPLINTから選択した多数のICAbについて確認された(データ示さず)。従って、SPLINTライブラリーは、細胞内環境中で機能する抗体についての豊富で良好な供給源を示す。
【0165】
BIG SPLINT:SPLINTのサイズの増大
ライブラリーサイズは、抗体フラグメントの単離のための決定的な変数である。しかし、ライブラリーの真の多様性は容易に決定可能ではない;これは実際、独立した計数されたクローンの数に依存するのみならず、scFvタンパク質を実際に発現するクローンの数にも依存する。
【0166】
本発明者らが106クローン〜107クローンのSPLINTライブラリーから機能的な細胞内抗体を選択することが可能であることを本明細書中で実証したという事実にもかかわらず、機能的ICAbはより容易に直接選択されて、より大きいSPLINTライブラリーを作製し得る。これは、細菌(SblatteroおよびBradbury, 2000)および表面にディスプレイされたFabフラグメントの大きい抗体ライブラリーを作製するために酵母において(Feldhausら, 2003)実施されているように、直接的にスケールアップすること(すなわち、上記の手順の多数回の反復)によって、または組換え方法(図4a〜b)によって達成されている。この方式で得られたBIG-SPLINTライブラリーは、安定な細胞内抗体を単離することのみならず、細胞内発現について可能な抗体候補の数を増大させることが可能である。
【0167】
コンセンサス配列フレームワークベースのライブラリー
SPLINTライブラリーのさらなる洗練は、IACTによって単離されたscFv配列の研究で実施される。
【0168】
これらの技術を用いて選択された抗体のセットは多数の高度に保存的な残基によって特徴付けられることが注目されてきた。これらの必須残基は、そうでなければその場所で機能できない多数のscFvに関して、細胞内環境中で発現され得る抗体を同定するある種の特徴を示す。SPLINTと組み合わせたIACT技術もまた、天然に存在する免疫グロブリンのデータベース中に存在するコンセンサス配列に非常に類似した最適の配列を保有するscFvを選択し得る。この技術を用いて選択された細胞内抗体のデータベースが成長するにつれて、保存された残基の数は減少する。従って、細胞内使用のための抗体ライブラリーが操作できる最終的な普遍的フレームワークを達成することが可能である。これは、酵母の低い形質転換性と適合するライブラリーの生成を可能にし、より一般的には、任意の細胞環境または非細胞環境での発現について機能的な高度に安定なscFvのファージミドライブラリーまたはファージライブラリーを可能にする。IACTおよびSPLINTの両方がそれらの内在的な可能性を超え、従って、さらにより洗練されて確認されたライブラリーを生成する能力を有する2つの技術であることが結論付けられ得る。
【0169】
遺伝子配列から迅速かつ直接的に単離できる、非常に安定な抗体の供給源としてのSPLINTライブラリー
上記のようなSPLINTライブラリーが、細胞内発現の条件下で目的の任意の抗原を結合し得る抗体/抗体ドメインである細胞内抗体の良好な一般的供給源を示すことが上で実証されている。全ての既知の抗体可変領域中に存在する2つのシステイン残基を連結する鎖内ジスルフィド結合を形成できないという事実にもかかわらず、これらの確認された細胞内抗体が細胞内環境中で折り畳まるという事実の見地から(Visintinら 1999;Bioccaら 1995)、そしてこのジスルフィド結合が約4.5kCal/molの抗体ドメインの折り畳み安定性に寄与するという事実の見地から(Probaら, 1997)、SPLINTライブラリーからIACT手順を介して生成された抗体は、任意の所定のレパートリー中の平均的な抗体よりもかなり安定であると結論付けられ得る。実際、SPLINT由来の抗体が通常の酸化条件下で発現され、従って、鎖内ジスルフィド結合が形成される場合、実験的に制御された変性条件(例えば、尿素、グアニジニウムまたは熱による変性)下でのそれらの折り畳み安定性は、平均的な抗体の折り畳み安定性よりかなり大きい(データ示さず)。
【0170】
従って、SPLINTライブラリーにより、優れた安定性の抗体を単離することが可能である。この特性は、遺伝子配列から直接的に抗体を単離する可能性と共に、このSPLINTライブラリーを、抗体アレイのような適用において進歩した診断ツールとして使用される安定な抗体の高スループットの生成およびプロテオミクスにおけるタンパク質発現プロフィールについての障害を解消するための選択のツールにしている。
【0171】
SPLINTライブラリー由来の、タンパク質-タンパク質相互作用を標的化した抗体:
上記のようなSPLINTライブラリーが細胞内抗体の良好な供給源を示すという予測していなかった実証は、適切な操作の後の、本来的に中和抗体の単離のための本発明の最終的な開発(すなわち、SPLINTライブラリーの利用)のための必須の先行条件を示す。実際、SPLINTから単離された抗体には、それらの標的タンパク質の生物学的機能を阻害する特性が必ずしも付与される必要はない。実際、タンパク質機能の中和(PKO)は付加的な特性であり、例えば、輸送の迂回などのストラテジーと共に、特別の個々の事例に従って操作または実施されなければならない。これらの方法は一般的ではなく、従って、確認された細胞内抗体であるというそれらの元々備わった特性にもかかわらず、抗体のサブセットのみがタンパク質機能を中和するために使用可能である。
【0172】
本発明者らは、所定のタンパク質-タンパク質相互作用を妨害する能力を本来的に付与された抗体を迅速に(遺伝子配列から直接的に)生成するためのSPLINTライブラリーの使用を以下に記載する。これらは、本来的に中和抗体である。
【0173】
タンパク質相互作用は、多様な生物学的機能の発見において重要な役割を果たす。ヒトゲノムから配列決定された遺伝子の解釈は、未だ未発見の遺伝子の予測できない機能の解釈のための新たな技術を開発するための研究を導いている。多様なインタラクトームが探索されてきた(単一の生物におけるタンパク質相互作用)。ツーハイブリッドシステムは、2Dゲル、質量分析などのような他のバイオテクノロジーシステムによってさらに確認できる接続の大きいネットワークを生成するために使用できることが理解されている。タンパク質機能を研究するために現在利用可能なアプローチは限定され、一般性に乏しい。対称的に、DNA研究のために適合された方法論を用いると、これらのタンパク質は非常に変化するので、タンパク質相互作用によるゲノムの研究は、単一の方法論を使用しては保証され得ない。
【0174】
この理由のために、研究者らは、抗体細胞内技術が、機能ゲノミクスの種々の分野に適切なアプローチを提供し得るか否かを試験している。
【0175】
例えば、特定のプロテオームについて選択された抗体フラグメントの特別なライブラリーを構築することを想像し得る(図6)。この技術は、cDNAライブラリーが細胞型、組織、ウイルスまたは細菌などから生成される第一工程を必要とする。次いでこのライブラリーを、DNA(例えばpMIC-BD2)を結合するタンパク質に融合されたツーハイブリッドベクター中に直接クローニングして、in vivoでSPLINTライブラリーに対して試験する。ポジティブクローンを得た後、相互作用に関与するscFvを単離し、真核生物発現ベクター(例えばscFvexpress)中に(ライブラリー形式のプールで)クローニングする。新たなサブライブラリーを生成した後、このscFvは、cDNAライブラリーが元々構築された細胞型、組織、ウイルスまたは細菌中で発現され得る。一旦ライブラリーが導入されると、タンパク質抽出物が調製されて、免疫沈降実験において使用される。免疫沈降したタンパク質は二方向ゲル(2Dゲル)で分離され、単離されたタンパク質は次いで、質量分析法によって分析できる。この技術(IntrAP)を用いると、全細胞プロテオームに対して指向された抗体が単一の工程で得ることができる。
【0176】
別の可能な考慮は、完全ゲノムのレベルでの遺伝的調節の相互作用およびネットワークである。この方式において、特定の相互作用を安定化するようにプログラムされたタンパク質によって発現される機能の複合体としてゲノムを理解することが可能である。これを考慮すると、生物中の遺伝子の総数は、同じゲノムによって潜在的にコードできる相互作用の完全なレパートリー(インタラクトーム)よりも重要性が低いようである。この理由のために、相互作用の機能的一部として認識されたタンパク質モジュールまたはペプチド配列を認識するscFvのみを単離することによる、scFvライブラリーのサブセット(上の段落中に記載したものに類似する)の構築を理解し得る。次いでこのライブラリーは、スリーハイブリッドシステムに基づく方法論を介して既知のインタラクトームを直接妨害するために使用できる(図19)。この3HY-SPLINTストラテジーは、スリーハイブリッドシステムの分野からの種々の刊行物を利用している(Vidal Mら 1996;Huang Jら 1997;Leanna CAら 1996;Shi HMら 1996;Vidal Mら 1999)。
【0177】
このストラテジーは、相互作用の解離がこの目的のために使用される酵母株にとって選択上の利点となる遺伝的選択を使用する。この概念を繰り返すために、この系において毒性遺伝子がレポーター遺伝子として使用されるので、タンパク質X-DNA-BDとタンパク質Y-ADとの間の結合は、酵母細胞にとって致死である。XとYとの間の2つの相互作用ドメインのうち1つを結合する抗体による解離は、簡便に同定できる選択上の利点を提供する。
【0178】
本発明者らの3-HYシステムにおいて、テトラサイクリンリプレッサーの発現は、HIS3遺伝子の発現を抑制する。これらの条件下で、XとYとの間の相互作用は、ヒスチジンに対する栄養要求性表現型を提供する。抗体がXとYとの間の相互作用を阻害する場合、TetRリプレッサーは発現されず、この株はヒスチジンの非存在下でも生存できる。なぜなら、遺伝子HIS3の転写がもはや抑制されないからである。
【0179】
本発明者らの系の新規性は、2つの相互作用するタンパク質のいずれかおよび中和抗体のライブラリーを発現するための3つのベクターの古典的なセットの代わりに、2つのベクターを使用することである。このことによりこの方法論を単純化して、異なる栄養マーカーおよび異なる抗生物質耐性を有する3つのベクターの困難な操作、ならびにこれもまた操作すべき特定の酵母株(この株において、3つより多い遺伝子がノックアウトされねばならない)の必要性を回避することが可能である。さらに、酵母細胞の形質転換のための高度に最適化されたプロトコルは、従って、これらの実験の非常に乏しい再現性を生じると評価されるはずである。
【0180】
本発明者らのスリーハイブリッド方法論により、IAC技術の現在の方法論をほとんど改変なしに維持することが可能であり、従って、専門でない研究者にアクセス可能にする。
【0181】
これまでに得られた結果は以下の通りである:
工程1:lexA-p65およびVP16-p65は、ツーハイブリッドシステムにおいて相互作用する
ベイトおよびプレイの構築:
p65/MIC-BD1:NF-κB/Relファミリーのp65タンパク質メンバーのDNAフラグメントをpRSV NF-κB relA(p65)プラスミドから増幅し、pMIC-BD1のBamHI/SalI制限部位間にクローニングした。
【0182】
p65/VP16c-t:p65のDNAフラグメントをpRSV NF-κB relA(p65)プラスミドから増幅し、VP16c-tのBamHI/NotI制限部位間にクローニングした。
【0183】
lexA-p65融合タンパク質およびVP16-p65融合タンパク質の細胞内相互作用:L40酵母細胞を、酢酸リチウム形質転換プロトコルを使用することによってベイトベクターおよびプレイベクターで同時トランスフェクトした。ポジティブな相互作用を、両方のプラスミドおよびヒスチジン原栄養性についての栄養要求性マーカーを使用することによって確認した。ヒスチジンポジティブコロニーおよびコントロールを液体窒素中で溶解させ、記載されるとように(VisintinおよびCattaneo, 2001)フィルター上でb-gal活性についてアッセイした。
【0184】
工程2:lexA-p65およびVP16-p65は、pBiDi3HYlexA-VP16ベクター中にクローニングした場合ツーハイブリッドシステムにおいて相互作用する
pBiDi3HYベクターの構築:pBiDi3HYベクターを構築するために、2つのベクターを使用した。pESC-TRPベクターをPvuIIで切断して、二方向性プロモーターGal1-Gal10を単離した。pMIC-BD1ベクターをSphIで切断し、DNAポリメラーゼI、Large(Klenow)フラグメントを引き続いて使用して、3'突出部分を除去して平滑末端を形成した。このベクターをまた、仔ウシ小腸アルカリホスファターゼで脱リン酸化して、クローニングベクターの再環状化を防止した。PvuII消化したGal1-Gal10の、SphI切断して平滑末端化したpMIC-BD1へのクローニングにより、pBiDi3HYを生成した。
【0185】
pBiDi3HYlexA-VP16ベクターの構築:DNAフラグメントVP16を、VP16*ベクター(Hollenbergら, 1995)から増幅し、pBiDi3HYプラスミドのBamHI/ApaI間にクローニングした。
【0186】
DNAフラグメントlexAをpMIC-BD1から増幅し、pBiDi3HY-VP16ベクターのEcoRI/SpeI間にクローニングした。最終ベクターpBiDi3HY-lexA-VP16を配列決定し、lexAタンパク質およびVP16タンパク質の発現を、ガラクトース20%を用いたプロモーターの誘導後の酵母粗製抽出物のウエスタンブロット分析によって確認した(図20を参照のこと)。
【0187】
pBiDi3HYlexAp65-VP16p65ベクターの構築:NF-κB/Relファミリーのメンバーであるp65タンパク質を、lexAドメインおよびVP16ドメインとのC末端融合タンパク質としてクローニングした。DNAフラグメントp65をpRSV NF-κB relA(p65)プラスミド(Francesca Demarchi博士の厚意により提供された)から増幅し、SpeI中にクローニングしてlexA-p65融合タンパク質を生成し、ApaI/SalI間にクローニングしてVP16-p65融合タンパク質を生成した。両方のp65融合タンパク質の発現を、ウエスタンブロット分析および配列によって確認した(図21を参照のこと)。
【0188】
全てのクローンを、Li-Cor 4000L自動シークエンサー(Lincoln、NE)と共にEpicentre Sequitherm Excel IIキット(Alsbyte、Mill Valley、CA)を使用して配列決定した。
【0189】
pSPLINTベクターの構築(図20):プラスミドpSPLINTの構築のために、以下のクローニングストラテジーを適用した。pLINKER220由来の220リンカーでクローニングしたPCR VkおよびVHを、これらのオリゴヌクレオチドを使用することによって実施した:センス5'-CATCATCATAAGCTTATTTAGGTGACACTA-3'およびアンチセンス5'ACCCGGGGATCCCTAATGGTGATGGTGATGGTGAGTACTATCCAGGCCCAGCAGTGGGTTTGGGATTGGTTTGCCGACCTTCCGCTTCTT-3'。得られたPCR産物をHindIII/BamHIで消化し、HindIII/BamHIで消化したベクターVP16*(Hollenbergら, 1995)に連結して、pSPLINTを得た。scFv間の両方の核局在シグナルを維持しつつ、活性化ドメインVP16を除去した。タグシグナルSV5を、scFvリンカーのC末端に付加した。
【0190】
SPLINT-3HYライブラリーの構築
SPLINTライブラリーからアセンブリしたscFvのプールもまた、BssHII/NheIで消化したpSPLINT中にクローニングして、E.coli中で1.5〜105の異なるクローンのSPLINT/pSPLINTライブラリーを得た。
【0191】
工程3:lexA-p65およびVP16-p65の相互作用は、SPLINT-3HY選択ストラテジーにおいて中和抗体によって排除できる
YI596酵母株におけるpBiDi3HYlexAp65-VP16p65ベクターとSPLINT-3HYライブラリーとの同時形質転換
Saccharomyces cerevisiaeレポーター株YI596の遺伝子型は、MATa/α、his3Δ200/his3Δ200、trp 1-901 leu 2-3、112/leu2-3、112ade2/ade2、URA::lexAOp)8-TetRLYS2::ADH(TetOp)2-HISである。
【0192】
構築された系は、in vivoでタンパク質-タンパク質相互作用を阻害する抗体ドメインを同定するために設計されたポジティブ選択方法である。目的のタンパク質(p65ホモダイマー)を、lexA DNA結合ドメインおよび転写アクチベータVP16との融合物として、誘導性二方向性プロモーターGal1-Gal10の制御下で発現させる。lexA-p65とVP16-p65との間の相互作用は、HIS3レポーター遺伝子の転写を防止してヒスチジンを欠く培地上で酵母細胞が増殖できないようにするテトラサイクリンリプレッサータンパク質(TetR)の発現を引き起こす。中和抗体によるP65タンパク質のホモ二量体化の阻害は、このような培地上で増殖する能力を回復する。lexA-p65融合タンパク質は、活性化能力を示すことが示された。ヒスチジン産生を遮断してヒスチジンを欠く培地上でのバックグラウンド増殖を抑制するために、テトラサイクリン/3-ATを用いたこの系の改変を実施した。lexAp65-VP16p65ホモダイマーの成長条件の同定後、この構築物を、in vivoでp65ホモダイマーの形成を阻害する中和抗体を同定するために、SPLINTライブラリーの選択のために使用した。
【0193】
SPLINTライブラリーを、酵母形質転換の改変プロトコル(VisintinおよびCattaneo, 2001)によってYI595株中に導入する。各形質転換体は、p65ホモダイマータンパク質に加えて、scFvをコードする個々のライブラリープラスミドをおそらく含む。1つまたは両方のp65相互作用タンパク質を結合するscFvをコードするプラスミドを含む細胞は、SG-Raf-WHULK上で選択される。高い形質転換効率を確実にするために、これらの形質転換手順に注意深く従うべきである。
【0194】
SPLINT-3HY形質転換
以下の形質転換プロトコルは、刊行された方法(VisintinおよびCattaneo, 2001)の改変である。
【0195】
材料:500μgのSPLINT/pSPLINTライブラリー;150mlのYC-UKW;2lのYPAD;1lのYPA;1.5lのYC-UKWL+10枚のYC-UKWLプレート(100mm);1lのYC-WHULK;1lのSG-Raf-WHULK+3AT 25mM(以下のレシピを参照のこと);20枚のSG-Raf-WHULK+3AT 25mMプレート 100mlの10×TE;20mlの10×LiAc;1mlの10mg/ml変性サケ精子;150mlの50% PEG 4000;20mlのDMSO。
【0196】
手順:
1日目:p65ホモダイマープラスミドを含むYI595酵母をYC-UKW中で一晩増殖させる
2日目:100mlの培養物を次の日に対数増殖期になるようにする希釈を見出すために、この一晩培養物のアリコートを100mlのYC-UKWに接種する
3日目:充分な一晩培養物を予め30℃に暖めた1lのYPAD中に移してOD600=0.3にする。30℃で3時間増殖させる。細胞を1500×gで5分間室温で遠心分離する。ペレットを500mlの1×TEで洗浄し、次いで1500×gで5分間室温でこれらの細胞を再度遠心分離する。ペレットを20mlの1×LiAc、0.5×TE中に再懸濁し、新たなフラスコに移す。500μgのDNAライブラリーおよび1mlの変性サケ精子を添加する。140mlの1×LiAc、40% PEG 3350、1×TEを添加し;混合して穏やかに振盪しながら30℃で30分間インキュベートする。17.6mlのDMSOを添加し;かき混ぜて混合する。水浴中で42℃で10分間熱ショックにかけ、時々かき混ぜて混合する。400mlのYPAで希釈して、水浴中の細胞を室温で迅速に冷却する。遠心分離によって細胞をペレット化し、500mlのYPAで洗浄する。遠心分離後、1lの予め暖めたYPAD中にペレットを再懸濁する。穏やかに振盪しながら30℃で1時間インキュベートする。1mlから細胞をペレット化し;1mlのYC-UKWL中に再懸濁し;形質転換効率のコントロールとして、100μlの1:1000希釈、1:100希釈、1:10希釈を広げる。残りの培養物から細胞をペレット化する。ペレットを500mlのYC-UWLで洗浄する。1lの予め暖めたYC-UWL中に再懸濁し、穏やかに振盪しながら30℃で一晩インキュベートする。
4日目:細胞をペレット化し、500mlのYC-WHULKで洗浄する。細胞をペレット化し、500mlのSG-Raf-WHULK+3AT 25mMで洗浄する。最終ペレットを10mlのSG-Raf-WHULK+3AT 25mM中に再懸濁する。YC-UKWLプレート上に全希釈物を広げて、初代形質転換体の数を比較する。残りの形質転換体の懸濁物をSG-Raf-WHULK+3AT 25mMプレート上に広げる。
【0197】
合成ガラクトース最小培地(GS欠落培地)
1.YNB w/o アミノ酸および(NH4)2SO4:1.2gの酵母窒素ベース、w/oアミノ酸および硫酸アンモニウム(Difco # 0335-15-9);20gのbacto-agar;H2Oを添加して800mlにする。121℃で15分間オートクレーブする。
2.塩:5.4gのNaOH;10gのコハク酸(Sigma # S-7501);5gの硫酸アンモニウム(Sigma # A-3920)。
3.Gal-Raf:20gのガラクトース;10gのラフィノース
H2Oを添加して100mlにし、全ての成分を1つずつ溶解させる。ガラクトースおよびラフィノースを添加し、H2Oを添加して150mlの最終体積にする。
4.アミノ酸ミックス:5.8gのNaOH;1gのアデニンヘミスルファート(hemisulfate)塩;1gのL-アルギニンHCl(Sigma # A-5131);1gのL-システイン(Sigma # C-8277);1gのL-スレオニン(Sigma # T-8625);0.5gのL-アスパラギン酸(Sigma # A-4534);0.5gのL-イソロイシン(Sigma # I-7383)0.5gのL-メチオニン(Sigma # M-9625);0.5gのL-フェニルアラニン(Sigma # P-5030)0.5gのL-プロリン(Sigma # P-4655);0.5gのL-セリン(Sigma # S-5511)。80mlのH2O中に溶解させる。
5.L-チロシン:0.5gのL-チロシン(Sigma # T-3754);0.2gのNaOH;加熱することによって10ml中に溶解させる。
6.省いたアミノ酸溶液:
L-ヒスチジン(Sigma # H-9511):1lのH2O当たり5g
ウラシル(Sigma # U-0750):1lのH2O当たり10g(+2粒のNaOH)
L-ロイシン(Sigma # L-1512):1lのH2O当たり10g
L-リジンHCl(Sigma # L-1262):1lのH2O当たり10g
L-トリプトファン(Sigma # T-0254):1lのH2O当たり10g
【0198】
アミノ酸ミックス(4.)にL-チロシン溶液(5.)およびH2Oを添加して、100mlの最終体積にする。フィルター滅菌し、アリコートにして、1年まで-20℃で保存する。省いたアミノ酸(aa)溶液(H、W、L、K、U)をフィルター滅菌し、個々にアリコートにして、1年まで-20℃で保存する。適切な溶液を混合することによってSG-Rafプレートまたは培地を調製する前に、培地は、pH5.8に調整し、塩+アミノ酸最終ミックスを濾過することによって滅菌しなければならない。
【0199】
SPLINT-2HY選択の結果
IACTは、抗原遺伝子配列からの可溶性細胞内発現抗体の直接的な単離を可能にする遺伝学的な選択方法であることがすでに実証されている(Visintinら, 2002)。
【0200】
IAC技術の主な目的は、全ての考えうる特異性を有する抗体(細胞内での発現について高い可溶性、安定性および良好な親和性を有する抗体を含む)の単離を容易にするのに充分なサイズおよび密度の細胞内ワンポットscFvライブラリーを開発することであった。この代替的なin vitro免疫系の組成および密度の重要な決定因子は、ライブラリーを構築するための基本要素として使用される抗体遺伝子の供給源である。初代マウス抗体レパートリーから細胞内発現抗体を直接単離する確率を探究するために、本発明者らは、活性化ドメインベクターにおいて単一ポット抗体ライブラリーを操作し、異なる抗原の広いパネルを使用することによってツーハイブリッド選択ストラテジーでこれを試験した。
【0201】
全ての異なる選択から得られた結果は、SPLINTライブラリーが抗体フラグメントの良好な供給源であることを示している。実際、IAC技術を用いて、チャレンジされた各抗原に対するいくつかのscFvを選択することが可能であった。いくつかの標的抗原について、いくつかの抗体を単離することもまた可能であり、従ってこのことは、このライブラリーがそれほど複雑ではないものの、得られた多様性は特定の抗原(例えば、種間で高度に保存されたタンパク質)を認識する免疫学的試薬を獲得するのになお充分であることを示す。
【0202】
本発明者らは、機能的抗体が富化されていることが証明された小さいライブラリーが、異所的発現のための抗体の良好な供給源をなお提供し得ることを実証した。なぜなら、抗体フラグメントを選択するための方法は濾過漏斗として作用するからである。SPLINTは、ネイティブのレパートリー中に天然に存在するが、使用される方法論が特殊化されていない場合には見出すことが困難な、安定な優れた抗体の供給源を含むことを実証した。
【0203】
本来の形式において、SPLINT-2HYは、選択された抗体が良好な細胞内結合因子であることを保証するが、中和抗体について保証し得ない。
【0204】
中和抗体を容易に提供する方法を生成するために、IAC技術およびSPLINTライブラリーを改変して、SPLINT-3HYと命名した新規システムを生成した。
【0205】
3-HY選択の結果
IAC技術の本来の形式において、抗原-抗体相互作用は、2つのハイブリッドタンパク質を一緒にし、レポーター遺伝子の活性化を引き起こす。この技術の新たな世代であるスリーハイブリッドバージョンにおいて、本発明者らは、規定された高分子相互作用を解離または排除する抗体ドメインを同定し得る。この技術の原理の証拠を達成するために、本発明者らはSPLINT-3HYを使用して、NF-κB RelA p65タンパク質に対するscFv抗体フラグメントの新規の選択を保証した。
【0206】
哺乳動物のNF-κBは、ホモダイマーおよびヘテロダイマーを形成する、p65/RelAを含む構造的に関連するタンパク質のファミリーである。NF-κB/relファミリーの転写因子による遺伝子発現の調節は、阻害的なIκBタンパク質によって主に制御される。NF-κBの活性複合体は、p50、RelA、RelBおよびc-Relのホモダイマーおよびヘテロダイマーからなる。これらの複合体は、IκBによって細胞質中で封鎖される。細胞外シグナルにより誘導されたIκBのリン酸化および引き続く分解は、NF-κBの核移行に必須である。NF-κBは、標的遺伝子のプロモーター領域中の認識エレメントに結合して転写を活性化する。IκBタンパク質は、NF-κBによるトランス活性化の持続時間を決定する。IκBaは、刺激の際に迅速に分解され、活性化されたNF-κBによって再合成されるので、NF-κBの一過的な活性化に関与する。NF-κBのインデューサーのほとんどは、IκBαの分解を引き起こす。新たに合成されたIκBαは、細胞質中でNF-κBを封鎖し、シグナルを決定する。
【0207】
p65は、二部構造(DNA結合rel相同領域およびC末端転写活性化ドメイン)を有する。これら2つの機能敵領域は、核輸送シグナルを含むセグメントによって連結される(Chenら, 2000)。
【0208】
IκBの分解はこのPKAcを活性化し、このPKAcは、Ser 276でNF-κB p65サブユニットをリン酸化して、CREB結合タンパク質(CBP)/p300のリクルートを介して、核に入るNF-κBを転写的に活性にする(Zhongら, 1997;Zhongら, 1998)。
【0209】
p50ホモダイマーは、結合するκB部位について、トランス活性化ドメインを有するp65のようなサブユニットを含むNF-κB複合体と競合すると考えられている。しかし、古典的κB部位に対するそれらの親和性はp50:p65のようなヘテロダイマーの親和性よりも低いので、これはそれらの主な抑制機構ではない可能性がある(Kunschら, 1992)。他の抑制的DNA結合タンパク質について実証された1つの可能な機構(GlassおよびRosenfeld, 2000)は、核p50が、HDACを含むコリプレッサー複合体を遺伝子プロモーターへとリクルートする別個の阻害タンパク質と相互作用し得るということである。
【0210】
p65タンパク質のホモダイマーを、(VisintinおよびCattaneo, 2001)に記載される大規模手順に従って、SPLINT/pSPLINT scFvライブラリーで酵母細胞YI595中に共形質転換した。共形質転換したライブラリーをSG-Raf-WHULK+25mMプレート上に広げて、Gal 1-10プロモーターの活性化を可能にし、His3遺伝子の転写を回復するテトラサイクリンリプレッサーの抑制に起因して、1つまたは両方のp65相互作用タンパク質を結合するscFvをコードするプラスミドの選択を可能にする。この実験において得られた高い形質転換効率(2.6e107)は、初代形質転換体の収率がライブラリーの複雑さの3倍であったことを確実にした。従って、このライブラリーの複雑さは、ライブラリー中に示されたコロニーの95%が試験されたことを確実にする(ClarkeおよびCarbon, 1976)。3日後、-HISプレート上で増殖した4個のクローンをつつき、his遺伝子の転写活性化の第二の確認のために新たな-HISプレート格子上で増殖させた。4日後、第1回の選択で選択した最初の4個のクローンのうち2個のクローンのみがSG-Raf-WHULK+25mMプレート上でレスキューされ得た。二次的スクリーニングからの両方のクローンをつつき、DNAの単離のために増殖させた。単離されたscFv/pSPLINTプラスミドを、PCR-BstNIフィンガープリントおよび配列によって分析した。
【0211】
これらの実験の第一の部分からの結論は、SPLINT-3HYから選択した両方のscFvが、p65-p65ダイマー間の相互作用を排除し得たというものである。2つの単離されたscFvもまたp65をモノマーとして認識し得たことを確認するために、両方の抗体フラグメントを、VP16との融合物でpLINKER220ベクター中にクローニングした。
【0212】
工程4:抗p65により単離されたscFv結合因子はp65モノマーに対するものであるのか?
抗p65(A1およびA2)/pLinker220プラスミドの構築
抗p65 scFvsフラグメントを、BssHII-NheI制限部位間でpLinker220中にサブクローニングした。
【0213】
図23中に示されるように、クローンA2は、p65モノマーとのポジティブな相互作用を示し、従ってこのことは、標的タンパク質に対するその特異性を示す。
【0214】
対称的に、クローンA1は、DNA結合ドメインlexAを認識できたにすぎなかった。A1クローンはlexAタンパク質に特異的であるという結論が得られるが、得られた結果は、scFv A1が、従来にない様式でかまたは立体障害によって、p65結合ドメインまたはp65-DNA結合ドメインをおそらく阻害し得ることを示す。
【0215】
scFv A2を、哺乳動物発現ベクターscFvexcyto-SV5中に引き続いてクローニングした。
【0216】
工程5:in vivoの哺乳動物細胞の研究
抗p65A2/scFvexcyto-SV5プラスミドの構築。抗p65 scFvフラグメントを、BssHII-NheI制限部位間でscFvexcyto-SV5中にサブクローニングした。
【0217】
抗p65 A2を、リーダーなしの細胞質タンパク質として、HEK細胞系統中で発現させた。
【0218】
トランスフェクトされた細胞は、可溶性細胞質タンパク質の典型である拡散性の細胞内染色を示す(図24を参照のこと)。
【0219】
抗p65 A2阻害がp65ダイマーとp50との間の物理的結合を妨害するか否かを評価するために、免疫共沈降実験を実施した(図25)。図25は、抗p65で免疫染色した(写真の上の部分)および抗p50で免疫染色した(下の部分)、コントロール(レーン1-3-5-トランスフェクトしていないHEKによって発現されるp65およびp50(c)、抗p65でトランスフェクトしたHEKによって発現されるp65およびp50(レーン3)ならびに無関係なscFvでトランスフェクトしたHEKによって発現されるp65およびp50(レーン5)を示す。レーン4は、p65モノマー(上の部分)およびp50タンパク質(下の部分)に対応する、免疫共沈降したバンドを示す。この実験についての結論は、抗p65がHEK細胞系統中の内因性p65を認識し得るということである。この実験において、p50タンパク質もp65と共に沈降しており、従ってこのことは、抗p65とp65との間の相互作用が、p65およびp50の天然の結合部位を妨害しないことを示す。
【0220】
SPLINT-3HYもまた、相互作用対のパネルを用いたチャレンジであった(表IVを参照のこと)。各選択ストラテジーからいくつかの中和抗体が単離され(データ示さず)、従って、このことは、このSPLINT-3HYストラテジーが、シグナル伝達の領域において特に顕著な多数の分野において、細胞機構を説明するための強力な方法論を提供するはずであることを示す。遺伝子機能の評価は、ペプチド、アプタマーおよび抗体を含むタンパク質ノックアウトのツールを使用して実施できる。これらのアプローチは、上に列挙した技術よりもタンパク質機能の調査のためにかなりの効力を示す細胞内抗体技術によって取って代わられていた。実際、これらのアプローチは、高分子相互作用を遮断または安定化し得、活性部位を占拠するか、基質を封鎖するか、または活性もしくは不活性な立体配座で酵素を固定することによって酵素機能を調節し得、それらの通常の細胞区画からタンパク質を逸らし得、所定のタンパク質の転写後改変バージョン(ヘテロダイマー化を含む)を特異的に標的化し得、所定のタンパク質の細胞下の局在を特異的に標的化し得、そして最後に非タンパク質抗原を選択的に標的化し得る。
【0221】
SPLINT-3HYは、安定な抗体の良好な供給源を提供するだけでなく、細胞内の中和抗体の良好な供給源を1工程の選択で提供し、従って、この目的のために操作された第一の抗体ベースの選択ストラテジーとなっている。
【0222】
【表5】

【0223】
コンセンサス配列フレームワークベースのライブラリー
SPLINTライブラリーのさらなる洗練は、IACTによって単離されたscFv配列の研究によって実施される。
【0224】
これらの技術によって選択された抗体のセットは、多数の高度に保存された残基によって特徴付けられることが注目されている。これらの必須残基は、そうでなければその場所で機能できない多数のscFvによって、細胞内環境中で発現され得る抗体を同定するある種の特徴を示す。SPLINTと組み合わせたIACT技術もまた、天然に存在する免疫グロブリンのデータベース中に存在するコンセンサス配列に非常に類似した最適の配列を保有するscFvを選択し得る。この技術を用いて選択された細胞内抗体のデータベースが成長するにつれて、保存された残基の数は減少する。従って、細胞内使用のための抗体ライブラリーが操作できる最終的な一般的フレームワークを達成することが可能である。これは、酵母の低い形質転換性と適合するライブラリーの生成を可能にし、より一般的には、任意の細胞環境または非細胞環境中での発現について機能的である高度に安定なscFvのファージミドライブラリーまたはファージライブラリーを可能にする。IACTおよびSPLINTの両方がそれらの内在的な可能性を超え、従って、さらにより洗練されて確認されたライブラリーを生成する能力を有する2つの技術であることが結論付けられ得る。
【0225】
配列:
URA3(酵素オロチジン-5'リン酸デカルボキシラーゼをコードする栄養マーカー。この酵素は、ウラシル生合成の最終工程において活性であり、化合物Cのウラシルへの転換を担う)。
【数21】

【0226】
TRP1(酵素N-(5-ホスホリボシル)アントラニレートイソメラーゼをコードする栄養マーカー。この酵素は、トリプトファンの最終工程に隣接して見出される)。
【数22】

【0227】
LEU2(酵素β-イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする栄養的に必須のマーカー。Leu3pは、ロイシンの生合成のための3つ全ての遺伝子のポジティブレギュレータであり、イソロイシル-バリンILV2およびILV5についてこれらの遺伝子の発現を活性化すると考えられている)。
【数23】

【0228】
HIS3(酵素イミダゾールグリセロールリン酸デヒドラターゼをコードする栄養マーカー。この酵素は、ヒスチジン生合成の調節サイクルに関与する)。
【数24】

【0229】
LYS2(酵素α-アミノアジピン酸セミアルデヒドをコードする栄養マーカー。LYS2によって制御される反応の産物は、産物LYS14と一緒にコインデューサーとして作用して、同じサイクルに関与する多数の遺伝子の発現を刺激すると考えられる)。
【数25】


【0230】
KAN(抗生物質耐性:これは、リボソームサブユニット30Sに結合することによってタンパク質合成に対して作用して、‘mRNAとの複合体の開始を防止するアミノグリコシダーゼである。これはまた、メッセンジャーの読み違えを引き起こして、ノンセンスペプチドの形成を生じ得る。アミノグリコシダーゼの別の重要な機能は、膜透過性を増大させることである)。
【数26】

【0231】
BLA(β-ラクタマーゼ:抗生物質耐性。この遺伝子の産物は、細菌の細胞壁合成に関与する特定の酵素を阻害する。β-ラクタマーゼは、抗生物質アンピシリン中に含まれるβ-ラクタムを加水分解する)。
【数27】

【0232】
CAM(抗生物質耐性:この遺伝子の産物は、リボソームサブユニット50Sに結合することによって作用し、従って、ペプチド結合の形成を遮断し、ペプチジルトランスフェラーゼの活性を阻害する。これは、真核細胞におけるタンパク質合成の強力なインヒビターである)。
【数28】

【0233】
TetR(抗生物質耐性:細菌におけるリボソームサブユニット30SへのアミノアシルtRNAの結合を阻害する)。
【数29】

【0234】
G418-ネオマイシン(抗生物質耐性。これは、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼである。これは、真核生物、哺乳動物および酵母のベクターにおいて使用される)。
【数30】

【0235】
ColE1(E.coli中の複製起点)
【数31】

【0236】
2μ(S.serevisiae中の複製起点)
【数32】

【0237】
LexA(DNA結合ドメイン)
【数33】

【0238】
VP16(活性化ドメイン)
【数34】

【0239】
B42(活性化ドメイン)
【数35】

【0240】
ADH1 prom(プロモーター)
【数36】

【0241】
GAL1-10二方向性prom(誘導性二方向性プロモーター)
【数37】

【0242】
GAL1 prom(誘導性プロモーター)
【数38】

【0243】
ADH1 term(転写終止配列)
【数39】

【0244】
ADH2 term(転写終止配列)
【数40】

【0245】
CRE遺伝子
【数41】

【0246】
ポリリンカーpMIC-BD1およびpMIC-BD2およびpBTM116
【数42】

【0247】
ポリリンカーpVP16
【数43】

【0248】
ポリリンカーplinker220およびpVP16mv1
【数44】

[参考文献]




【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】IACT技術の図である。細胞内抗体は、ツーハイブリッドシステムとファージディスプレイ技術の間の組み合わせの後またはマウスの免疫および活性化ドメインを発現したベクター上でのscFvもしくは抗体ドメインライブラリーの引き続く構築(TomlinsonおよびHolliger, 2000) (WuおよびYazaki, 2000;Korttら, 2001;Todorovskaら, 2001) (Tanakaら, 2003))の後に、単離できる。酵母細胞におけるin vivo選択の後、ポジティブ試験クローンが単離され、scFvは、in vitroおよびin vivoの適用のために使用できる。
【図2】SPLINTライブラリーの構築の図である:抗体可変領域は、scFv抗体フラグメントの後に直列に融合された活性化ドメインおよび2つのNLSを発現するベクター上に、非免疫マウスから直接クローニングできる。次いで、このSPLINTライブラリーは、エピソーム形態で酵母株中に挿入され、次いでベイトとして使用されることになっている抗原の形質転換の直後にIACTスクリーニングのために使用できる。
【図3】plinker220ベクターおよびpVP16mv1ベクターの図である。これらのベクターは、pLinker220についてはscFvの3'末端および5'末端で融合した2つのNLSを示し、またはpVP16mv1においてはscFvの後に直列に融合した2つのNLSを示す。このcsFvライブラリーは、ADH1プロモーターによって転写される。このライブラリーの下流に、ADH term終結配列が存在する。このベクターはまた、アンピシリナーゼ遺伝子(bla)、遺伝子配列LEU2(酵母における選択のための栄養マーカー)、E.coli複製起点f1および酵母複製起点2μをコードする配列を含む。
【図4a】BIG-SPLINTライブラリーを生成するために使用した技術の図である。この系において、E.coliへの抗生物質耐性のみが異なる2つのpVP16mv1ベクター中にクローニングされた2つのSPLINTライブラリーが使用される。これらのベクターは、抗体鎖間に異種組換えのためのlox部位を示す。CREリコンビナーゼをコードする遺伝子は、エピソームベクター中にクローニングされた誘導性Gal1プロモーターによって発現される遺伝子として挿入できるか、またはこの目的のために予め構築された酵母株中に存在し得る。
【図4b】BIG-SPLINTライブラリーを生成するために使用した技術の図である。この系において、E.coliへの抗生物質耐性のみが異なる2つのpVP16mv1ベクター中にクローニングされた2つのSPLINTライブラリーが使用される。これらのベクターは、抗体鎖間に異種組換えのためのlox部位を示す。CREリコンビナーゼをコードする遺伝子は、エピソームベクター中にクローニングされた誘導性Gal1プロモーターによって発現される遺伝子として挿入できるか、またはこの目的のために予め構築された酵母株中に存在し得る。
【図5】pVP16mv1-loxベクターおよびpVP16m2 kanベクターの図である。これら2つのベクターは、pVP16mv1ベクターと概念的に同一である。唯一の差異は、scFv-VP16構築物の上流および下流に、細胞内環境において可変鎖の組換えを直接的に開始するCRE酵素によって認識される2つのlox511-loxPWT配列が存在することである。
【図6】AntiGENomics技術の図である。この技術は、細胞系統から生成したcDNAライブラリーおよびSPLINT抗体ライブラリーのin vivoでの選択を使用する。Ag-scFv対の大きいパネルの単離後、単離された遺伝子が同定され、それらが認識するscFvが配列決定される。次いでこれらのscFvは、細胞特異的ライブラリー(SUB-SPLINT)として目的の標的細胞中でin vivoで発現され、直接的にかまたは表現型選択の後のいずれかで、この細胞中で発現されたタンパク質をin vivoで再捕捉するために使用される。次いで、細胞内scFv-タンパク質複合体は、scFv配列タグを使用して免疫沈降され、2DゲルおよびMSのような古典的なプロテオーム技術を使用して分析される。
【図7】ベクターpMIC-BD1およびpMIC-BD2の図である。以下のベクターを構築して、DNA結合ドメイン(lexA)の下流で、ベイトとして使用される抗原を発現させた。これら2つのベクターは、変異誘発の前に除去されたpMIC-BD2中のNLSを欠く点でのみ異なる。ADH1プロモーターは、lexA-Ag融合タンパク質の転写を促進する。この構築物の下流に、ADH1 term阻害配列が存在する。このベクターはまた、クロラムフェニコール(cam)遺伝子、TRP1遺伝子配列(酵母における選択のための栄養マーカー)、E.coli中の複製起点f1および酵母についての複製起点2μをコードする配列を有する。
【図8】抗GFPライブラリーの構築の図である。マウスがGFPタンパク質で免疫される。次いで、このマウスの脾臓が、免疫グロブリン可変鎖をコードするRNAを抽出するために、リンパ球の供給源として使用される。一旦cDNAが調製されると、可変鎖は、特異的な変性プライマーで増幅される。次いで、scFv形式の抗GFPライブラリーは、pVP16mv1ベクター中にクローニングされ、pBMIC-BD1ベクター中にクローニングされたGFPに対してスクリーニングされる。
【図9】GFPタンパク質でのマウスの免疫後に得られた高度免疫ライブラリーから単離され、IACT方法で選択された抗CH2-Shcクローンに対するX-galアッセイおよびPCR-BSTNIフィンガープリントを示す図である。
【図10】SPLINTライブラリーの種々のクローニング工程を示す図である。左に向かって第一のパネルにおいて、非免疫マウスの脾臓から抽出した総RNAの分析を見ることができる。右に向かって、可変鎖に特異的なプライマーのミックスで再増幅したRT-PCR産物を見ることができる。この工程の目的は、種々のプライマー対を用いてプログラムした増幅に進む前に、cDNAの品質を評価することである(表1を参照のこと)。その下に、各々変性されたプライマー対でのVHおよびVLについての増幅の分析を見ることができる。最後に、VHおよびVLについて各単回の増幅を定量した後、各層副産物を同じ濃度で混合する。最終結果は、右上の写真に示される。
【図11】VH鎖およびVL鎖の引き抜きの写真を示す図である。
【図12a】scFv形式でのSPLINTライブラリーアセンブリの写真を示す図である。
【図12b】DH5αF'株におけるエレクトロポレーション後のSPLINTライブラリーのPCR-BstNIフィンガープリントを示す図である。
【図13】IACT方法を用いて選択したSPLINTライブラリーから単離した抗SH2-Shcクローンに対するX-galアッセイおよびPCR-BstNIフィンガープリントを示す図である。
【図14】IACT方法を用いて選択したSPLINTライブラリーから単離した抗K-RASクローンに対するX-galアッセイおよびPCR-BstNIフィンガープリントを示す図である。
【図15】ベイトとして使用されるそれぞれの抗原を用いた抗SH2-SHcクローンおよび抗K-RASクローンに対する二次的スクリーニングのためのX-galアッセイを示す図である。
【図16】IACT方法を用いて選択したSPLINTライブラリーから単離した抗Sykクローンに対するX-galアッセイおよびPCR-BstNIフィンガープリントを示す図である。
【図17】レスキューscFvプラスミドが、特異性を確認するために元の選択株および異なるベイト株中に再導入される。scFv(すなわち抗LTβ4)を発現する単離されたプラスミドが、標的抗原(LTβ4)を含む株および他の無関係の抗原(ラミン)を含む株中に再導入される。例として、クローンbおよびhはLTβ4のみに特異的であり、ラミン抗原とは相互作用できないという結果が得られ、従って、LTβ4に対するそれらの特異性が確認される。
【図18】抗LTβ4 scFvフラグメントはLTβ4を特異的に認識し、UTβ4ベイトは認識できない。これらのチモシンは、単一のWH2ドメイン(アクチン細胞骨格の多数の異なるレギュレータにおいて見出される約35残基のアクチンモノマー結合モチーフ)から完全になる小さいタンパク質のファミリーである。リンパ系特異的チモシンは、余分な6残基のNH2末端伸長をコードする。LTβ4スクリーニングから得られた5つの抗体フラグメントを、それらがUTβ4に結合する能力について試験した。図中に示されるように、試験した全てのscFvは、リンパ系形態についてのみ特異的であって、遍在性形態には特異的でないという結果を生じる。
【図19】スリーハイブリッドシステムにおいてSPLINTと共に使用した方法の図である(結果における説明を参照のこと)。
【図20】pBiDi3HYベクター、pBiDi3HYlexA-VP16ベクターおよびpSLINTベクターの図である。pBiDi3HYlexA-VP16は、2つのcDNAライブラリー(1および2)の発現のために二方向性プロモーターを含む。ライブラリーcDNA1はlexAとの融合タンパク質として発現され、その一方でライブラリーcDNA2はVP16との融合ベクターとして発現される。両方のライブラリーは2つの異なる終止配列を有する。このベクターは、TRP1酵母における選択のための栄養マーカーとして発現する。このベクターはまた、クロラムフェニコール遺伝子(cam)、E.coli中での複製起点f1および酵母についての複製起点2μをコードする配列を有する。pSPLINTは、pVP16mv1と同一であるがVP16活性化ドメインのないベクターである。このベクターは、細胞内環境中でscFvを発現するためだけに使用される。
【図21】pBiDi3HYlexA-VP16ベクターにおける、ガラクトースでの誘導の際に発現されるlexAタンパク質およびVP16タンパク質のウエスタンブロット分析を示す図である。ブロッティング後、lexAを抗lexAポリクローナル抗体(Invitrogen)で検出し、VP16を抗VP16ポリクローナル抗体(Clontech)で検出した。
【図22】pBiDi3HYlexA-VP16ベクターにおける、ガラクトースでの誘導の際に発現されるlexA-p65融合タンパク質およびVP16-p65融合タンパク質のウエスタンブロット分析を示す図である。ブロッティング後、lexA-p65を抗lexAポリクローナル抗体(Invitrogen)で検出し、VP16-p65を抗VP16ポリクローナル抗体(Clontech)で検出した。
【図23】酵母IACTシステムにおけるp65モノマー-抗p65 scFv相互作用を示す図である。L40酵母細胞を、pLinker220ベクター中の抗p65 A1-VP16融合物または抗p65 A2-VP16融合物と共に、lexA-p65ベイトベクターおよび/またはラミンベイトで同時形質転換した。酵母コロニーを-hisプレート上で増殖させ、β-galアッセイについてスコアリングした。クローンA2は、p65モノマーとのポジティブな相互作用を示し、従って、標的タンパク質とのその特異性を示す。対称的に、クローンA1は、DNA結合ドメインlexAのみを認識し得た。
【図24】HEK細胞中に一過的にトランスフェクトされた抗p65 A2 scFvの免疫蛍光顕微鏡検査を示す図である。細胞を、抗SV5タグモノクローナル抗体と反応させ、その後抗FITCコンジュゲート化抗マウス(Vector)と共にインキュベートした。
【図25】HEK2973T細胞を、scFvex cyto-SV5ベクター中にクローニングした抗p65 A2で一過的にトランスフェクトした。細胞溶解物を、p65タンパク質およびp50タンパク質の発現(コントロール、c)ならびに抗p65 A2または無関係の抗体での免疫沈降分析についてアッセイした。P65タンパク質を抗p65ポリクローナル抗体(上のレーン)および抗p50ポリクローナル抗体(下のレーン)(Santa Crutz)で検出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内で既知のタンパク質リガンドxと既知のタンパク質リガンドyとの間の相互作用を中和し得る細胞内抗体を単離するための方法であって、
a)組換え酵母株を得るステップであって、
i)前記タンパク質リガンドxおよび前記タンパク質リガンドyが発現されるが、
ii)xまたはyのうち少なくとも1つが誘導可能な様式で発現され、かつ
iii)前記タンパク質リガンドxと前記タンパク質リガンドとの間の相互作用が、酵母細胞の必須機能のリプレッサーまたは毒性因子のいずれかの産生を引き起こし、その結果、生存可能な酵母細胞が得られないステップ;
b)ステップa)の組換え酵母細胞株において細胞内抗体の発現ライブラリーを構築するステップ;
c)リガンドxおよびリガンドyの両方の発現を誘導することによって、形質転換された酵母クローンを選択するステップ;ならびに
d)増殖し得るレシピエント酵母クローンを単離するステップ
を含む方法。
【請求項2】
細胞内で既知のタンパク質リガンドxと既知のタンパク質リガンドyとの間の相互作用を中和し得る細胞内抗体を単離するための方法であって、
a)mat-aまたはmat-αの性能力を有する酵母株において細胞内抗体の発現ライブラリーを得るステップ;
b)ステップa)中の酵母株の性能力と反対の性能力を有する組換え酵母株を得るステップであって、
i)前記タンパク質リガンドxおよび前記タンパク質リガンドyが発現されるが、
ii)xまたはyのうち少なくとも1つが誘導可能な様式で発現され、かつ
iii)前記タンパク質リガンドxと前記タンパク質リガンドとの間の相互作用が、酵母細胞の必須機能のリプレッサーまたは毒性因子のいずれかの産生を引き起こし、その結果、生存可能な酵母細胞が得られないステップ;
c)ステップa)の酵母およびステップb)の組換え酵母を、有性接合ならびに前記リガンドxおよびyの発現を促進し得る条件に曝露させるステップ;
d)リガンドxおよびリガンドyの両方の発現を誘導することによって形質転換された酵母クローンを選択するステップ;ならびに
e)増殖し得るレシピエント酵母クローンを単離するステップ
を含む方法。
【請求項3】
請求項1のステップa)または請求項2のステップb)に記載の組換え酵母株が、
a)前記タンパク質リガンドxをコードする第一の配列および前記タンパク質リガンドyをコードする第二の配列を酵母発現ベクター中にクローニングするステップであって、第一の配列および第二の配列の各々が、二方向性プロモーターの2つの部分のうち各1つの制御下にあり、前記第一の配列が第一の分子をコードする配列に融合され、かつ前記第二の配列が第二の分子をコードする配列に融合され、その結果、前記タンパク質リガンドxおよび前記タンパク質リガンドyが相互作用すると、酵母細胞の必須機能のリプレッサーまたは毒性因子のいずれかの産生を誘導する方式で前記第一の分子および前記第二の分子もまた相互作用するステップ;
b)ステップa)のベクターを用いて前記レシピエント酵母株を形質転換するステップ;ならびに
c)形質転換した酵母を選択するステップ
によって得られる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記酵母中の発現ベクターが、二方向性プロモーターとしてプロモーターGal 1およびプロモーターGal 10を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第一の分子および前記第二の分子が、前記酵母のHIS3遺伝子の転写を妨害し得るリプレッサーの産生を引き起こす、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記酵母中の細胞内抗体の発現ライブラリーが、マウスまたはヒトのリンパ球から得られる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記酵母中の細胞内抗体の発現ライブラリーが、scFvまたは単一ドメイン抗体形式で得られる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記請求項のいずれかに記載の方法に従って得ることができる、細胞内でタンパク質リガンドxとタンパク質リガンドyとの間の相互作用を中和し得る細胞内抗体。
【請求項9】
前記タンパク質リガンドxおよび前記タンパク質リガンドyがそれぞれ、p65 RelAおよびp65 RelAである、請求項8に記載の細胞内抗体。
【請求項10】
前記タンパク質リガンドxおよび前記タンパク質リガンドyがそれぞれ、p65 RelAおよびp50 NF-κB1である、請求項8に記載の細胞内抗体。
【請求項11】
前記タンパク質リガンドxおよび前記タンパク質リガンドyがそれぞれ、Aβ1-42およびAβ1-42である、請求項8に記載の細胞内抗体。
【請求項12】
前記タンパク質リガンドxおよび前記タンパク質リガンドyがそれぞれ、JX-TK TrkAおよびPTB p66 Shcである、請求項8に記載の細胞内抗体。
【請求項13】
前記タンパク質リガンドxおよび前記タンパク質リガンドyがそれぞれ、シヌクレインおよびシンフィリンである、請求項8に記載の細胞内抗体。
【請求項14】
請求項8から13のいずれかに記載の細胞内抗体をコードするヌクレオチド配列。
【請求項15】
互いに相互作用し得るタンパク質リガンドxをコードする配列およびタンパク質リガンドyをコードする配列をクローニングするための酵母発現ベクターであって、二方向性プロモーターを含み、前記二方向性プロモーター中、第一のプロモーター部分は5'から3'の方向で、前記タンパク質リガンドxをコードする配列および第一の分子をコードする第一の配列のための適切な制限クローニング部位がその後に続き;かつ第二のプロモーター部分は5'から3'の方向で、前記タンパク質リガンドyをコードする配列および第二の分子をコードする第二の配列のための適切な制限クローニング部位がその後に続き、その結果、前記タンパク質リガンドxおよび前記タンパク質リガンドyが相互作用すると、酵母細胞の必須機能のリプレッサーまたは毒性因子のいずれかの産生を誘導する方式で前記第一の分子および前記第二の分子もまた相互作用する、酵母発現ベクター。
【請求項16】
真核細胞内で既知のタンパク質リガンドyに結合し得るタンパク質リガンドxおよび前記タンパク質リガンドxと前記既知のタンパク質リガンドyとの間の相互作用を中和し得る細胞内抗体を同時に同定するための方法であって、
a)mat-aまたはmat-αの性能力を有する酵母株において細胞内抗体の発現ライブラリーを得るステップ;
b)ステップa)中の酵母株の性能力と反対の性能力を有する組換え酵母株を得るステップであって、
i)前記タンパク質リガンドyが誘導可能な様式で発現され、かつ
ii)前記タンパク質リガンドxと前記タンパク質リガンドyとの間の相互作用が、酵母細胞の必須機能のリプレッサーまたは毒性因子のいずれかの産生を引き起こし、その結果、生存可能な酵母細胞が得られないステップ;
c)適切な酵母発現ベクター中に前記タンパク質リガンドxをコードする配列を含むcDNAライブラリーをクローニングするステップ;
d)ステップb)の酵母株をステップc)のcDNAライブラリーを用いて形質転換するステップ、
e)形質転換された酵母を選択するステップ;
f)ステップa)の酵母およびステップe)の酵母を、前記タンパク質リガンドxおよび前記タンパク質リガンドyの発現を誘導し得る環境中で、有性生殖および前記二方向性プロモーターの発現を促進するような条件に供するステップ;
g)前記タンパク質リガンドxと前記タンパク質リガンドyとの間の相互作用が前記細胞内抗体によって阻害されている生存可能な酵母クローンを選択するステップ
を含む、方法。
【請求項17】
真核細胞内で既知のタンパク質リガンドyに結合し得るタンパク質リガンドxおよび前記タンパク質リガンドxと前記既知のタンパク質リガンドyとの間の相互作用を中和し得る細胞内抗体を同時に同定するための方法であって、
a)mat-aまたはmat-αの性能力を有する酵母株において細胞内抗体の発現ライブラリーを得るステップ;
b)前記タンパク質リガンドxをコードする配列および前記タンパク質リガンドyをコードする配列を含むcDNAライブラリーを酵母発現ベクター中にクローニングするステップであって、前記cDNAライブラリー配列が、二方向性誘導性プロモーターの2つの部分のうち1つの制御下にあり、前記cDNAライブラリー配列が第一の分子をコードする配列に融合され;かつ前記タンパク質リガンドyをコードする配列が前記二方向性プロモーターの2つの部分のうち他方の制御下にありかつ第二の分子をコードする配列に融合され、その結果、前記タンパク質リガンドxおよび前記タンパク質リガンドyが相互作用すると、酵母細胞の必須機能のリプレッサーまたは毒性因子のいずれかの産生を誘導する方式で前記第一の分子および前記第二の分子もまた相互作用するステップ;
c)ステップa)の酵母株の性能力と反対の性能力を有する酵母株をステップb)の組換え酵母発現ベクターを用いて形質転換するステップ;
d)形質転換された酵母を選択するステップ;
e)ステップa)の酵母およびステップd)の酵母を、前記タンパク質リガンドxおよび前記タンパク質リガンドyの発現を誘導し得る環境中で、有性生殖および前記二方向性プロモーターの発現を促進するような条件に供するステップ;
g)前記タンパク質リガンドxと前記タンパク質リガンドyとの間の相互作用が前記細胞内抗体によって阻害されている生存可能な酵母クローンを選択するステップ
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2006−518988(P2006−518988A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553091(P2004−553091)
【出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【国際出願番号】PCT/IT2003/000764
【国際公開番号】WO2004/046192
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(505187725)レイ・ライン・ジェノミクス・ソシエタ・ペル・アツィオーニ (6)
【Fターム(参考)】