説明

タービン出力を増加するためのシステム及びその増加方法

【課題】多数の運転モードで使用可能なガスタービンエンジンの軸出力を増加する方法及びシステムを提供する。
【解決手段】システムは、ガスタービンエンジンに霧状水を噴射でき、これにより少なくとも1つのコンプレッサブレードから付着物を解放する洗浄装置と、空気流の質量流量を増加するべく数値流体力学モデルの制御の下、ガスタービンエンジンの吸気ダクトの空気流か、又はガスタービンに霧状水を噴射可能な少なくとも1つの水噴射装置とを有する。これによりガスタービンエンジンの出力を増やすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ガスタービンの分野に関する。特に本発明は、質量増加によりガスタービンの出力を増加する水分配装置と組み合わせ、高圧でコンプレッサを洗浄するためのシステム及びその方法に関する。ここでシステムは、所定の数値流体力学的伝達モデルを用いて制御される。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの出力発生のためには、タービンが大量の空気を消費することが要求される。ガスタービン性能は外気の状態にかなり依存する。温度、圧力、水分といったような外気条件は、空気を圧縮するガスタービンのコンプレッサの能力に影響を与え、それによりその性能にも影響を及ぼす。言い換えれば、ガスタービンの出力は、タービン部分を駆動する燃料や膨張仕事と組み合わせた形で、圧縮に使われる全質量流量の機能である。質量流量はエンジンの出力と直接的な比例関係にある。ガスタービンは一定の容積をもった機械である(決まった幾何学的形状に従って作動する)。従って空気密度は、出力を発生するガスタービンの能力において重要な役割を果たす1つのパラメータである。気温と空気密度は直接相関関係にある。気温が上がると空気の密度は下がり、結果として質量流量の全ポテンシャルが減少することになる。質量流量が下がるとガスタービンの出力も低下する。ガスタービンの性能に大きく影響するその他のキーパラメータとしては、圧縮比と圧縮効率がある。
【0003】
質量流量は、ガスタービンの空気取り入れ口における水蒸気含有量を操作することで管理することができる。即ち、空気を水蒸気で飽和し、全質量流量をタービン設計の最大レベルまで戻すことが可能である。この飽和は、ガスタービンを取り巻く空気を単純に飽和状態にすることから達成することができる。或いは又、全質量流量の増加のためより積極的なアプローチは、タービンのコンプレッサや燃焼室に水を噴射し、空気を過飽和状態にすることである。過飽和状態になると、融解熱により作動流体をさらに昇圧することができ、タービン出力を、飽和した空気の出力レベルよりも上のレベルまで増加することができる。
【0004】
しかしながら、付与された期間を通してガスタービンが遭遇する温度幅のせいで空気の適当な飽和は不確かなものとなる可能性がある(温度は24時間又は年間を通して変化する)。このような温度変動の結果、飽和に必要な水量は変化することになる。与えられた気候や機関負荷状況に対し飽和や過飽和を達成するためには、それに応じた水量が必要である。従って、適当なレベルの飽和や過飽和のために適切な水量を提供する際には、湿度を検出したり、ポンプ設備が必要となる。使用水量が多すぎると、結果として空気が過剰の水を吸収・保持できなくなるといったような所謂“過剰噴霧”となる。過剰の水はガスタービンの空気ダクトを腐食及び/又は水浸しにし、その作動に害を与える可能性がある。逆にあまりにも水が少な過ぎると、空気を飽和状態にできず、全質量流量を増加する効果が達成されなくなる。
【0005】
もう1つの問題は、タービン、特にコンプレッサ内部における付着物や異物の増加があり、これらはガスタービンの効率やその出力に悪影響を与える。タービンのような機械は大量の空気を消費する。空気にはエアロゾルや微細粒子の形態の異物が含まれており、往々にしてコンプレッサに流入し、コンプレッサガス通路の構成部品に付着する。コンプレッサへの付着物は、堆積物が構成部品の表面粗さを増やすために、ガス通路構成部品の境界層気流の特性を変化させてしまう。空気は構成部品の表面にそって流動するため、このような表面粗さの増加は、結果として境界層気流の厚肉化をまねく。境界層気流の厚肉化は、コンプレッサの空気力学性に悪影響を与える。コンプレッサブレードの翼後縁では、気流は伴流を形成する。この伴流は渦巻き型の乱流であり、空気の流れには悪影響を与える。境界層が厚くなればそれだけ強い後方乱気流が生じる。厚くなった境界層を伴った後方乱気流は、エンジンを通過する質量流量を下げるという結果をもたらす。厚い境界層と強い後方乱気流の組み合わせは結果として圧縮圧増加率を減じることとなり、換言すれば低められた圧縮比でエンジンを運転することとなる。低い圧縮比はエンジンの低効率にする。更に、コンプレッサの付着物はコンプレッサの等エントロピ効率やポリトロープ効率を減少させる。コンプレッサの効率が減少するということは、同量の空気を圧縮するためにコンプレッサはより大きな力が必要であるということである。結果として、コンプレッサ駆動に要する力は増加し、負荷駆動に使用される余剰出力は小さくなる。
【0006】
ガスタービン洗浄は前記付着に歯止めをかけることができ、エンジンを停止した状態か、或いはエンジン運転中に実行することができる。前者の場合、スタータモータを用いてエンジンシャフトをクランク回転し、その一方で洗浄水がコンプレッサに噴射されることになる。クランク回転中、付着物は薬品の作用と機械的運動によって解放される。水と開放された付着物は、空気流によりエンジンの排気エンドまで運ばれる。この処理を“クランク”洗浄或いは“オフライン”洗浄と呼ぶ。“オフライン”洗浄に対してもう一方の“オンライン”洗浄は、エンジン運転中にエンジン洗浄することを意味する。即ち、“オンライン”又は“燃焼”洗浄は、エンジンが燃料点火している時に実行される。洗浄水はロータが高速回転している間に燃焼室に噴射される。高いロータ回転速度と短い処理時間故、この洗浄はクランク洗浄に比較して効率的ではないが、運転中の洗浄が可能である。
【0007】
これまでガスタービン出力を増加しようとする試みは、タービン全体を通して、温度、容積、圧力、機械の負荷レベルを計測する大規模な計測器を使用してきた。しかしながら、そのように大規模な計測器に依存する出力増加は、その価格や使用上の複雑さ、更に計測器の不整合や不具合に起因する操作誤差の可能性が増大するといった観点からとかく問題が多い。ガスタービン出力を増加させるために、そのような複雑かつ高価な計測器に依存することからの脱却が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許USP5,868,860号公報
【特許文献2】米国特許USP6,718,771号公報
【特許文献3】米国特許USP6,644,935号公報
【特許文献4】米国特許USP3,976,661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、産業界においては、数値流体力学的伝達モデルを使用してシステムが制御されるような広範囲の作動条件にわたって、定置ガスタービンエンジン(これに限定されないが)を含むガスタービンエンジンの出力を増加する方法及び装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、ガスタービンの出力を増加する模範的システムであって、
(a) 可変周波数制御の有無にかかわらず、好ましい容量型ポンプの形状を有したポンプ装置;
(b) 前記ポンプ装置に接続され、始動時の出力サージを回避するべく噴射列に予備噴射する制御装置であって、制御モデルを構成する少なくとも1つの確定したパラメータに基づいた所定のサイクルデッキ及び数値流体力学解析の組合せにしたがってポンプ装置の作動を調整する制御装置;
(c) 前記ポンプ装置に接続され、少なくとも1個のノズルと、このノズルに供給される水の流量を制御する少なくとも1個のバルブとを有する洗浄装置;
(d) 前記ポンプ装置に接続される少なくとも1つの水噴射装置であって、少なくとも1個のノズルと、このノズルに供給される水の流量を制御する少なくとも1個のバルブとを有する水噴射装置;
(e) 前記制御装置に接続される気候監視装置であって、少なくとも1つの前記確定パラメータの内の少なくとも1つを指示する気候監視装置;
(f) 少なくとも1個の完全に捕捉されたノズルとノズル支持構造を有する列;及び
(g) 霧状の凝縮液と接触によって耐食性がなくなる吸気ダクトを保護するための吸気ダクト処理デザイン、
を有するシステムを提供する。
【0011】
本システムの構成及びその作動に関連して本発明の種々の特徴は、その更なる目的と利点も含めた形で、添付図面を参照する以下の記述によってより理解することができる。添付図面は、あくまで例示及び説明の目的で提供したものであり、限定要件を定義するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ガスタービンの代表的な空気吸い込み口を示す模範図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す模範図である。
【図3】本発明の一実施形態を示す模範である。
【図4】本発明の一実施形態を示す模範図である。
【図5】本発明の一実施形態を示す模範図である。
【図6】本発明の一実施形態を示す模範図である。
【図7】本発明の一実施形態を示す模範図である。
【図8】本発明の一実施形態を示す模範線図である。
【図9】噴射列及びノズル構造の捕捉を示す模範図である。
【図9a】噴射列及びノズル構造の捕捉を示す模範図である。
【図9b】噴射列及びノズル構造の捕捉を示す模範図である。
【図9c】噴射列及びノズル構造の捕捉を示す模範図である。
【図10】入口の腐食保護及びコンプレッサ樋を示す模範図である。
【図11】入口の廃液バルブの模範図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明を詳細に説明をする。
【0014】
ガスタービンは、例えば発電やガス圧縮、その他多くの機械的な駆動用途に広範囲にわたり使用されている。ここに提示する種々の特徴は如何なるタイプのガスタービンに対しても使用可能であるが、便宜上、ここでは発電所設備内のガスタービンに関して記述する。他のタイプの適当なタービンに適用する場合に必要な調整は、当業者であるならば容易に理解できるものである。
【0015】
図1はガスタービン吸気部の代表的構造を示している。図中の矢印は空気の流動方向を示している。外気は、吸い込みルーバー102、塵スクリーン103、エアフィルタ104を介してダクト101に流入し、ガスタービン10の入口へと流れる。ガスタービン10は、ブレード付きロータと外ケーシング11を有する。タービン軸の先端において、コンプレッサブレード12は空気を高圧に圧縮し、例えば大気圧の10〜30倍の高圧状態にする。このようにして圧縮された空気は燃焼室13へと供給される。燃料(図示せず)は燃焼室13内で点火される。高温の燃焼ガスはタービン14を介して膨張し、排気ダクト(図示せず)を通って設備外へと排出される。タービン出力はコンプレッサの要求出力よりも大きく、従ってその出力はタービン軸に有効利用される。このようにして余剰出力は発電機、ポンプ、コンプレッサ、プロペラ等の負荷を駆動するために使用される。
【0016】
吸い込みルーバー、塵スクリーン、フィルタを通った外気の流れは、一般的に約10m/s〜約20m/sの速度であり、より典型的には約10m/sである。空気はその速度をほぼ維持しつつ領域Bから領域Cへと移動する。空気はガスタービンの吸気プレナム部である領域Dに入る。本実施形態では、吸気プレナム19は空気を加速するように鐘(ベルマウス)形に形成されている。吸気プレナム19自体は鐘形に限定されず、他の形状でも良い。コンプレッサ入口面E及びコンプレッサブレード12の手前側において、支柱(図示せず)を吸気プレナム19に沿って配置しても良い。コンプレッサ入口面Eでは、一般に空気の流速は約0.4マッハ〜約0.6マッハとなり、より典型的には音速の約半分、約180m/sとなる。空気は加速され、コンプレッサがその圧縮仕事を達成するのに必要な高い速度をもつことになる。一般に、空気圧縮比は約9:1〜約25:1となる。コンプレッサの内部では空気の速度は、圧縮された結果としての高密度化によって減少する。次いでこの圧縮空気は燃焼室に送られる。典型例として燃焼室に流入する際、速度は100m/s以下であるが、要求によっては他の速度で流入するようにしても良い。
【0017】
ここで開示されるものは、複数の運転モードで使用可能なガスタービンエンジン出力増加及びガスタービン洗浄のための方法及びシステムである。一般にガスタービンエンジンの出力は、機械の中に液体を噴射して質量流れを管理して空気密度、即ち空気質量を大きくすることにより増加する。通常、その液体は水であるが、場合によっては液体の凝固点を低下させるべくアルコールや不凍剤を添加してもよい。水は空気質量流量を増加することに加え、排出物減少といったような環境的な利点もある。制御モデルは、サイクルモデルと計算流体力学的解析(CFD)を用いて決定される。
【0018】
更に詳しく言えば、ここではガスタービンを洗浄し、その出力を増加するシステムが開示される。図2を参照し、システムは一般に、(a)例えば容積型速度ポンプのような、少なくとも1台の変速ポンプを有するポンプ装置201;(b)第1の信号供給ライン204によってポンプ装置201に接続されて装置201の速度/運転を制御する制御装置202であって、所定のサイクルデッキと数値流体力学的解析を使って、周囲の気候条件、タービンの幾何学的形状、空気移動の速度分野及び特定のタービン構成要素の内、少なくとも1つの確定したパラメータに基づく制御モデルを作る制御装置202;(c)供給ラインによってポンプ装置201に接続された洗浄装置であって、少なくとも1個のノズルと、前記供給ラインによってポンプ装置に接続されると共に導管によって少なくとも1個の前記ノズルに接続されノズルに供給される水の流量を制御する少なくとも1個のバルブとを有し、この洗浄装置の少なくとも1個のノズルは、霧状化した水のスプレィを噴射して少なくとも1つのコンプレッサブレードに衝突させてこれを濡らし、以ってこのコンプレッサブレードから付着物を離反させるようにしたような、以上の洗浄装置;及び/又は(d)少なくとも1個のノズルと、供給ラインによって前記ポンプ装置に接続されると共に導管によって前記ノズルに接続され、前記ノズルに供給される水の流量を制御するような少なくとも1個のバルブとを有する、少なくとも1つの水噴射装置であって、この装置の少なくとも1個の前記ノズルはタービンの吸気ダクト内の空気流に霧状の水のスプレィを噴射することで空気流の質量流量を増加しこれによりガスタービンエンジンの出力が増加するような、以上の水噴射装置、を有して構成される。
【0019】
実施形態では更に、(e)信号ライン205によって制御装置202に接続された気候監視装置203(図2参照)であって、ガスタービンの性能に影響する周囲の条件を観測すると共に、これを、サイクルデッキモデルを使って展開された数値流体力学的解析用モデルの形で制御装置202に報告し、以って吸気飽和の目標レベルを供給するべく適量の水を割り振るベースを確立するような装置203を有する。周囲条件とは、ガスタービンの運転に影響を与える可能性のある環境要因であって、以下のものに限定されるものではないが、温度、湿度、気圧などがある。一実施形態では、これら温度、湿度、気圧の夫々が監視される。模範的な一実施形態において、気候監視装置203(詳細は図示せず)は乾球温度計と空気湿度測定装置を有する。他の実施形態では、気候監視装置203は乾球温度計と湿球温度計を備えることができる。又、別の実施形態では、気候監視装置203が大気圧測定装置を備えるようにしてもよい。大気圧測定に関し、更なる実施形態として、気候監視装置は当業者に公知の他の構成要素及び/又はそれらの組み合わせを備え、周囲の気候条件を監視及び/又は計測するようにしてもよい。このようにして得られた気候情報は制御装置202で処理され、同装置202は例えば、許容可能な気化水量、着氷リスクなどのオペレータにとってキーとなる運転情報を配信する。
【0020】
ポンプ装置201は、単一のポンプ(ポンプ装置201がサービスで適切に管理されているのが条件)や、1台の変速ポンプ(その速度が周波数によって決められ、適切な周波数が周波数コントローラによって設定されるもの)や、例えば異なる流量容積の5台のポンプを用いた或る実施形態に代表されるような複数のポンプによっても構成してもよい。1台、2台またはそれ以上の異なる組み合わせによるポンプを運転することで、広範囲のポンプ容積が達成される。ポンプは更に、ループ制御する制御装置202に流量を指示する発信機を備えた容積型設計品でもよい。
【0021】
図2は、出力増加ノズル列に低圧で予備充填するポンプと、出力増加を目的として割り振られた水噴射のために水を高圧にするポンプとを備えたポンプ装置201(詳細は図示せず)を示している。低圧の予備充填ポンプは、出力増加のスタート時点において常に一貫した給水がなされるよう、その出力増加作動全体を確固なものするために設けられるものであり、これにより出力サージが回避される。ポンプ装置から噴射された圧縮水は供給ライン(別名:分配主管)に送られる。分配主管は、例えば気化冷却システム、洗浄システム、コンプレッサ中間冷却システム、燃焼火炎冷却システムなどの異なる使用状況に対しては、高圧水の分配器として作用する。ポンプ装置は、周波数制御の電気式ACモータによって駆動される容積型ポンプであってもよく、その場合周波数がポンプ速度を決定する。或いは、モータ電流がポンプ速度を支配するような例えばDCモータのようなモータを備えてもよい。当業者に公知の他の適当なポンプ装置でもよい。或る実施形態では、ポンプは水圧を、最大値で約80バール、一般には35バール、より典型的には70バールに上昇させるが、当然ながら要求に応じて他の値でもよい。ポンプの最大容積はガスタービンの定格空気流量に関係して設定される。ポンプ容積は、水の流量と空気質量流量との比(分子:水の流量、分母:空気流量)に従ってその大きさが決められる。代表的なものとして、或る実施形態では、水量をリットル/分、空気流量をkg/秒で表した状態で上記比は約0.3〜約0.5となる。なお、他の実施形態において異なる範囲の比でもよい。
【0022】
加えて、洗浄目的で、加熱した水(例:コンプレッサ洗浄用)や薬品(例:運転期間の終了時の洗浄剤やコンプレッサ腐食防止剤として使用)の使用も有効である。このため、ポンプ装置201は更に、水に薬品を噴射する薬品噴射装置のみならず、タンクやヒータ(加熱水供給用)を備えるようにしてもよい。
【0023】
洗浄時及び/又は出力増加時、ガスタービンエンジンからは廃液が排出されるため、ポンプ装置201を導管209によって水収集装置や水処理装置(水浄化用)206に接続することが可能である。水処理装置206は粒子分離フィルタや脱イオンフィルタを有することができる。例えば、廃液は排気塔を通る水蒸気の形態であったり、濃縮化された状態で生成されてもよく、オフライン洗浄の場合、洗浄水はガスタービンエンジンのコンプレッサ廃液管から出ることになる。この廃液にはガスタービンエンジンそれ自体から出たオイル、油脂、金属イオンだけでなく離反した付着物も含まれている。この水は一般に有害であり、収集されて処理されるか、或いは管理下の排水路に放出することが好ましい。蒸発スプレィによる冷却を実行する際には、吸気ダクト内に水ができる可能性もある。この水は水収集装置によって収集され、水処理装置206により処理することが可能である。また、水処理装置206は水源(図示せず)から導管207を介して供給される原水を処理することも可能である。浄化された水は導管209を介してポンプ装置201に送られる。処理後の廃液はリサイクルされ洗浄用として再利用することができ、所謂、排水なき閉じたループシステムを提供できる。このように水を再利用することが、システム全体の水消費量を減じることにもなる。
【0024】
水処理装置206は、ガスタービンの空気通路に適切に噴射できるように、水を“脱鉱化”された水質へと浄化する。この水の全溶解固定物は、或る実施形態では1〜5ppmである。適切な浄水システムは当業者にとっては公知のものである。
【0025】
ポンプ装置201は制御装置202によって制御される。例えば、制御装置202は、制御室やポンプ装置201の側の操作パネルによって制御することができる。制御装置202は、信号供給ライン204を介してポンプ装置201の作動を可能にするプログラマブル制御機能だけでなく手動制御機能も備えている。制御装置202は記憶手段218を有する。記憶手段218は、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び/又はリードオンリメモリ(ROM)のような不揮発性メモリを有する。当業者であるならば、記憶装置は、(それらに限定されないが)例えば半導体装置、磁気装置、光学装置、それらの組み合わせ装置といったような、一時的及び/又は永続的にデータを記憶する様々なタイプの物理的装置を含み得ることが容易に理解できるであろう。一例として記憶手段を、例えばDRAM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ等の1個、又はそれ以上の物理的装置を使用することで構成するようにしてもよい。記憶手段218は、本実施形態による方法の各ステップを実行するため、ソフトウエアコード部分を含むコンピュータプログラムプロダクトを更に備えることができ、コンピュータプログラムプロダクトがコンピュータ装置上で動く際には、例えば、少なくとも1個のノズルに供給される流水量を制御するためにバルブの開度を調整したり、制御モデルを成すサイクルデッキ及び数値流体力学的制御伝達スケジューリングによって定義される水噴射割り振る作動を実行する。加えて、制御装置202は、予定された流量を実際の流量と比較した形で監視してもよい。実際の流量が予想されたレベルより下回る際には、オペレータにノズル閉じ警報を出してもよい。また、実際の流量が予定流量よりも大きい場合、漏れチェック警報をオペレータに出してもよい。
【0026】
本出力増加システムに対し作動の要求があった時、予備充填ポンプを制御装置202によって作動させ、増加噴射ノズル列に水を充填してもよい。この工程は、不連続な出力段差を避けるためのものである。
【0027】
加えて、分配主管20や全ての導管(例えば、管28、29、215)は、水圧式高圧可撓性ホースで構成し、装着を容易にすることも可能である。また別な方法としては固定パイプを装着してもよい。バルブ(例えばバルブ24、27、210、216)は、制御室や他の遠隔箇所からの指令によって開閉可能である。或いは、これらのバルブを手動で開閉するようにしてもよい。
【0028】
制御装置202は又、数値流体力学的伝達解析(CFD)を実行するのにも使用可能である。CFDは、空気を十分に飽和又は過飽和するべくガスタービンエンジンに噴射要求される水量予想(即ち、モデル形成)を可能にする。CFDは本実施形態によるシステムを表す数値モデルを提供する。次いで、システムを通る流体流れの動力学が、確定したパラメータの1つ又はそれ以上の観点で分析、予想できる。尚、確定したパラメータは、それらに限定されるものではないが、ガスタービンに関係する周囲の気候条件や特定パラメータ(即ち、タービンの幾何学、空気挙動の速度分野)及びタービン(即ち、コンプレッサブレード、エンジンケーシング、燃焼室の構成要素、熱風路作用要素)の負荷制限設計の面を含んでいる。CFDは又、水噴射レベルを調整するためのプログラム化された論理制御器(PLC)によって解明・実行される制御モデルを提供する。確定パラメータ又は境界は、手動又は各種センサ及び/又は気候監視装置を用いて自動的に本実施形態のシステムに入力することができる。CFDによって模擬の流体流れ、即ち予想されるガスタービンの性能レベルが提供され、それはタービンを通過する空気流量に相当するものである。生成されたモデルの結果として各実施形態では、ガスタービン出力が最適化されるように、継続する形態か、或いは間欠した形態で噴射される水のレベルを調整可能としている。模範的な一実施形態において基本的なCFD工程は、ガスタービンの幾何学的構造を限定し、流体(例えば水蒸気)によって占有される容積であって個々のセルに分割されるような(セル全体でメッシュを成すような)容積を決定し、(初期の境界条件は一般的に確定したような境界条件に関し、実質的に一定の変化を受ける工程に対しては)使用される流体の特性のような境界条件を限定し、アルゴリズムや方程式(即ち、コンピュータのソフトウエアやデジタル計算装置に搭載可能なコンピュータ搭載プロダクト)を採用し、モデルを成す予想結果を解析する、以上のような工程からなる。
【0029】
完全な飽和の例としては、ガスタービン入口への噴射は、サイズで約10〜50ミクロンの水滴を有する細かなスプレィの形態をとるが、要求によっては他のサイズの水滴でもよい。空気を飽和状態にするにあたり、CFD発生モデルはタービンに入力される空気流量を決定し、ガスタービンの出力を維持する。
【0030】
別な例として、空気の過飽和に向けた実施形態でもよく、この場合完全飽和よりも空気流量が大きくなる。この例では、もう1つの数値流体力学モデルによって、過飽和流量によって生じる機械の特定負荷だけでなく、ガスタービンエンジンへの水噴射位置を考慮することが好ましい。それらに限定されるものではないが、噴射地点は気化冷却、コンプレッサ中間冷却、燃焼火炎冷却又は機関洗浄に関連して本明細書で記述される地点を含むことができる。空気を過飽和状態にするにあたり、上記モデルはガスタービンに流入する空気量を限定する一方、ガスタービンの構成要素は、その空気流量がガスタービンエンジン設計の許容限界内に納まるように水噴射レベルの制限を加えて限定される。その後は、周囲の気候条件やガスタービンの負荷要求をプログラム化された論理制御器に入力する。
【0031】
プログラム化された論理制御器は、ガスタービンエンジンを通る空気流量を調整する際、制御モデルに従って作動する。具体的には、プログラム化された論理制御器は、特定圧力までポンプ装置201を作動させ、それぞれの目的に応じて使用される特定ノズルを調整することによる出力増加時及び/又は洗浄時において使用される水の流量を調整する。更に、出力増加のために、少なくとも1個のノズルが作動又は不作動状態になり、その流量が要求出力と周囲の気候条件に適合するように、CFDモデルに従った適切な流量を達成する。従って、CFDモデルとプログラム化された論理制御器は、空気飽和か過飽和のために設けられる。出力増加開始時、制御装置202はサイクルモデル予想によって算出された空気流量に基づく水噴射レベルを計算する。次いで、この空気流量は、噴射水量を確定するための目標相対湿度レベルの計算に使用される。噴射水量が安定した流れに向かって収束するように給水が割り振られるため、上記計算は何度も繰り返される。
【0032】
実施形態は更に操作装置300を備えることができ、図3に示すように、装置は制御室内に設置し、信号供給ライン301を介して制御装置202に接続してもよい。制御装置は、例えばポンプ装置201への制御指令のようなシステム指令をオペレータが入力できるキーボード302(これに限定されないが)を有する入力装置を備えてもよい。例えばポンプの運転パラメータの履歴やその状態情報といったような、ポンプ装置201作動に関連する情報表示のためにディスプレイ、モニター又は画面304を備えることができる。このようにして、オペレータは異なる運転パラメータのみならずポンプの運転状況を監視することができる。或いは又、ディスプレイ304は、例えばその上に多数のソフトキーを配したタッチスクリーンでもよく、これによりディスプレイ上に異なるインターフェースでの異なる指令を提示することができる。操作装置300は更に、上述したような記憶手段(図示せず)を有することができる。
【0033】
本実施形態によれば、洗浄装置と少なくとも1つの噴射装置の双方は、少なくとも1個のノズルと少なくとも1個のノズルを有する。洗浄装置への給水サブシステムは、飲用サプライから脱イオン水を作り、この水を洗浄流体か出力増加用として使用される保水タンクに分配することができる。例えば、洗浄装置は、それに限定されるものではないが、全溶解固形物が一例として約1〜5ppmとなるような水を提供する浸透装置を使うことができる。洗浄装置及び少なくとも1つの噴射装置を、分離ユニットとしてガスタービン内に装着するか、或いは洗浄装置を少なくとも1つの前記噴射装置の一つとして作用させてもよい。少なくとも1個の前記ノズル(例えば、1から10個のノズルの内の1つ)を用いて、コンプレッサと燃焼室内に水を噴霧可能である。この少なくとも1個のノズルは、吸気部内の支柱間に配置してもよい。このようなノズル配置は、鐘形吸気プレナム19の壁面と支柱に対する濡れを低減するかもしれない。少なくとも1個の前記ノズルを、その開口部をエンジンに向けてリングフィーダに取り付けることができ、コンプレッサや燃焼室の中だけでなく吸気ダクト域内に装着することも可能である。ホース(例えば、高圧可撓性ホース)をリングフィーダと水容器(この場合、それらに限定されるものではないが、地面据付型容器又は他の適当な水源を備える)の双方に接続し、この水容器から給水を遠隔操作してもよい。或いは、ホースを地上車両に接続して洗浄工程を様々な位置(例えば、地上車両や定置式ガスタービンプラントの制御室)から遠隔操作することも可能である。
【0034】
一般に、少なくとも1個のノズルが、洗浄や質量流れ増加のために多量の細粒水をガスタービンに供給する。水は、質量流れと同じ流動ルートを辿るように細粒化される。洗浄時において水滴は、ガスタービンを汚す空気伝染汚染物が流れるルートと同じ流動ルートを辿る。
【0035】
一般に、模範となる実施形態において、洗浄装置は約10〜約80バール、より典型的には約50〜約80バールの圧力で作動するが、要求によっては他の圧力で作動してもよい。或る実施形態では、噴霧水の水滴は一般に、約80〜250μm(平均質量ベース)の直径を有し、約40〜240m/分の速度(約0.2〜約240リットル/分の流量)を持っている。その他の実施形態において、噴霧水の水滴は要求に応じて異なる値を持つようにしてもよい。例えば、洗浄装置の少なくとも1個のノズルから直径が約150μmの水滴であって、約70バールの圧力、0.1リットル/秒の流量で約30秒間にわたって水を噴射してもよい。或る実施形態では一般に、全容積流量は約0.2〜240リットル/分の範囲内となり得るが、他の実施形態では全容積流量は異なる範囲内でもよい。洗浄工程で幾つかのノズルを使用する際には、この流量は全てのノズルに対し一括して適用される。Asplundの特許文献1は、ガスタービンコンプレッサの洗浄用として高い水圧を使用する例を開示しており、そのまま本願に引用して援用されている。
【0036】
模範的な実施形態では一般に、少なくとも1つの噴射装置が、約50〜約160バールの圧力、より典型的には約80〜約140バールの圧力で作動する。散水の水滴は一般に、約<10〜20μmの直径、より典型的には約<10〜25μmの直径と、約20〜約80m/秒の粒子速度を持っている。例えば、少なくとも1つの噴射装置の少なくとも1個のノズルに、サイズ(直径)が約10μmの水滴であって、0.1リットル/秒、約120バールの圧力で約6時間にわたり水を供給してもよい。一般的に全容積流量は約4リットル/分の範囲内である。噴射工程で幾つかのノズルを使用する際には、この水流量は全てのノズルに対し一括して適用される。
【0037】
細粒水の噴霧又は噴射は、質量流れを増加するべく使用される本方法を示したものである。図2は図1で記述したガスタービンへの吸気口を示している。又図2は、気化冷却システム、洗浄システム、コンプレッサ中間冷却システム及び燃焼火炎冷却の適用例を示している。気化冷却システムは、水が、気化する微細な水滴の噴霧(霧)の形で水を吸気入口で吹き付ける“霧発生”システムである。洗浄システムは、コンプレッサ入口に水を吹き付けるシステムである。コンプレッサ中間冷却システムは、水をコンプレッサ中間段階において高濃度気流に水を噴射する“濡れ圧縮”システムである。燃焼冷却システムは水を燃焼室に吹き付けるためのシステムである。
【0038】
或る実施形態においては、気化冷却、コンプレッサ中間冷却、燃焼火炎冷却又は機関洗浄は、決まったスケジュールに従って実行されることはめったにない。例えば、気温は時間と共に変化するため、気化冷却の実行可能性もまた変化する。
【0039】
模範的な気化冷却システムを図4に示す。分配主管20がバルブ24を介して導管23に接続される。バルブ24の開弁時、高圧水がノズルホルダ21に供給される。ノズルホルダ21はダクト内側にあってコンプレッサ入口面よりも遥か上流側に配置される。典型例として、ノズルホルダ21は、水を細かな水滴からなるスプレィ22へと霧状にする複数のノズルを持ったチューブを有する。水滴は例えば約10〜約20ミクロン、より典型的には約10〜約15ミクロンの大きさになる。この水滴は、典型的には約80〜約140バールの圧力で霧化した結果である。水滴は気流によって運ばれ/浮遊し、空気がノズル先端からコンプレッサ入口まで移動するまでには十分長い滞留時間のため、水滴はコンプレッサに流入する前に気化する。気化は水の潜熱を空気の顕熱へと交換し、その結果、気温は気化によって低くなる。気温が低くなることは空気の密度が高くなることであり、結果として高い軸出力をもたらす高い質量流れとなる。要求された流水量は変速ポンプにより設定される。気化冷却はバルブ24を閉じることで完結する。Kopkoの特許文献2は、高温でのガスタービン運転を可能にする気化冷却システムを例証しており、そのまま本願に引用して援用されている。ノズルに供給される水の量は、数値流体力学的解析によって生成され、かつプログラム式論理制御器によって調整された制御モデルに従って決定される。
【0040】
模範的なコンプレッサ中間冷却システムを図5に示す。このシステムは湿式圧縮システムであり、それは小さな水滴の形態なる水が圧縮仕事の間にコンプレッサ内側で気化することを意味している。コンプレッサを通る空気の保持時間はミリ秒の範囲内である。この時間に、水滴は最初の水滴サイズのまま気化する。気化処理は、圧縮仕事の結果生じる急激な温度上昇によって行われる。模範システムでは、分配主管20はバルブ210を介して導管29に接続される。バルブ210の開弁時、高圧水が少なくとも1個のノズル212に供給される。この少なくとも1個のノズル212は、水をコンプレッサガス通路に噴射するために装着される(例えば、2枚のディスク間に水を噴射するべく複数ノズルを装着してもよい)。少なくとも1個のノズル212は、水を細かな水滴からなるスプレィ211へと霧状化する。水滴は例えば約10〜約50ミクロン、より好ましくは約10〜約30ミクロンの大きさになる。この水滴は、好ましくは約10〜80バールの圧力で霧化した結果である。当然他の適当なバール圧力値を使ってもよい。小さな水滴はコンプレッサを退去する前に気化することになる。Ingistovの特許文献3は、中間段階のコンプレッサ水噴射のための模範的なノズルアセンブリを開示しており、そのまま本願に引用して援用されている。気化は空気を冷却し、これにより空気密度が増大し、質量流れを増加して出力がより高くなる。加えてコンプレッサを冷却するとコンプレッサ出口温度も低くなり、それは冷気が燃焼室に供給されることを意味している。燃焼手段へ冷気を送ることは、一定の燃焼温度を保ちつつより多くの燃料を燃焼できることを意味しており、これにより出力を増加することができる。要求された流水量は変速ポンプにより設定される。湿式圧縮を停止する際には作動バルブ210が閉じられる。別の方法としては、湿式圧縮用ノズルをコンプレッサ入口の上流側に装着してもよい。その基本作動は、上述したような中間段階で据え付けられたノズルのそれと同じである。少なくとも1個のノズルに供給される水の量は、数値流体力学的解析によって生成され、かつプログラム式論理制御器によって調整された制御モデルに従って決定される。
【0041】
模範的な燃焼室冷却システムを図6に示す。この燃焼室冷却システムは、燃焼室に水滴を噴射する少なくとも1個のノズルを有する。水の潜熱は火炎顕熱へと交換され、それにより火炎温度上昇を抑えることができる。分配主管20はバルブ216を介して導管215に接続される。バルブ216が開くと、少なくとも1個のノズル214への高圧水の供給が可能になる。少なくとも1個のノズル214は水をスプレィ213へと霧状化する。スプレィ213は、サイズにおいて通常約10〜約50ミクロンであって、より典型的には約10〜30ミクロンの水滴からなる。このような水滴は約100〜約200バールの圧力で噴霧することで得られる。当然ながら、水滴に関しては、要求に応じて他のサイズ及び/又は他の圧力での噴霧も採用してもよい。火炎は水を水蒸気へと気化する。水蒸気はタービンにより膨張し、その結果質量流量に寄与して出力増加作用を与える。加えて、火炎の温度を抑えるため、一定の燃焼温度を維持しつつ多くの燃料を燃焼することができる。より多くの燃料を燃焼すると出力がそれだけ増加することになる。要求された水の流量は変速型ポンプにより設定される。燃焼室冷却を停止する際にはバルブ215が閉じられる。少なくとも1個のノズルに供給される水の量は、数値流体力学的解析によって生成されかつプログラム化論理制御器によって調整された制御モデルに従って決定される。Chengの特許文献4は、燃焼室噴射による出力増加作用の一例を示しており、そのまま本願に引用して援用されている。その全体がここに参考として示される。
【0042】
図8を参照し、全出力増加・洗浄システムの更なる特徴は、コンピュータやPLCデータロガーを使用して、出力増加及び/又は水洗浄における性能上の変化を監視することにある。周囲の気候条件や動力装置の性能データは、条件前後を示す性能動向データを用意するために収集される。このデータは、出力増加及び/又は洗浄システムの経済的な運転を保証したり、適切かつ予想された運転を保証する際の手助けとなる可能性がある。このデータを使用して、システムの不良状態を検出したり、それに対する処置も可能である。例えば、一般的な携帯電話を使用したインターネット接続といったような何らかの適切な通信プラットホームを使用したデータ伝送が、データロギングシステム内に提供されている。
【0043】
噴射列システム900を制御装置202に接続してもよい。又、制御装置202に管理されるようにして、ガスタービンの出力増加に先立って噴射列システム900に予備充填してもよい。噴射列システム900はノズル列であってもよい。
【0044】
図9、図9a及び図9bに示すように、クランプ装置910を用いて出力増加噴射列システム900が含まれるようにしてもよい。クランプ装置910は、コンプレッサ入口面の上流側に位置するノズルホルダでもよい。クランプ装置910は、異物が放出されるのを防止するべくフィルタハウス壁の外側に固定された適合バー構造に完全に含まれてもよい。図9cに示すように、噴射列システム900を支持するためにキー付き支持システム920を用いてもよい。一実施形態では、このキー付き支持システム920は、ウォータジェット加工することによって費用的に優位性を有利に導入してもよい。
【0045】
前記クランプは、全ての列要素を完全に捕捉する可能性がある。フィルタハウスの入口壁の外側にある2番目のクランプは列支持バーを捕捉する。完全飽和に向けた出力増加にあたっては、いくらかの水がフィルタハウスの壁面で液化する。炭素鋼や亜鉛メッキ鋼の保護のために、フィルタハウスの壁面に保護防水コーティングを施したり、コーティング自体に、例えばステンレス鋼のタイルのような耐食性タイルを設けてもよい。図10に示すように、タイルはフィルタハウス壁を通して接続された機械的締め金具によって定位置に保持してもよい。もう一つの凝縮液制御法は、入口及び吸気鐘型(ベルマウス)部にある構造物の周りに適当なサイズの樋を設けることである。これらの樋は水を入口の床に向けさせ、貯留器と水位センサを伴った廃液管によって、集められた凝縮液が排出される。これらの特徴は図10と図11に示されている。
【0046】
樋はコンプレッサに開口する鐘型部の周囲又は入口内部の構造物の周囲で円をなすJ字状構造物である。樋は、水がコンプレッサ内部に流入しないように流動水を内部の入口壁面上で捕捉する。特に、樋は水を入口の床に向けさせ、さらに入口廃液管に向けさせる。水が入口廃液管の周囲に集まるので廃液管内の貯留器には水が収集され、その流体レベルがセンサの検知レベルに達した際、センサはソレノイドバルブを作動させ、蓄積された流体を排出することになる。
【0047】
本実施形態は又、燃焼室と、少なくとも1個のコンプレッサブレードを持つコンプレッサとを備えたガスタービン、及びタービン吸気ダクトを有するガスタービンエンジンの出力を増加する方法にも関係している。この方法は、(1)少なくとも1台の変速ポンプを有するポンプ装置を使用して水圧を増加し;(2)信号供給ラインにより前記ポンプ装置に接続された制御装置であって、該制御装置は、制御モデルを構成する少なくとも1つの確定したパラメータ入力に基づいた所定のサイクルデッキ及び数値流体力学的解析にしたがってポンプ装置を制御するような制御装置を使用して、ポンプ装置の速度を制御し;(3)ある量の水を、(a)供給ラインによって前記ポンプ装置に接続された洗浄装置か(b)前記供給ラインによって前記ポンプ装置に接続された少なくとも1つの噴射装置、のいずれか一方に供給し;(4)前記洗浄装置の少なくとも1個のノズル、又はバルブを使用した少なくとも1つの噴射装置に供給される水の流量を制御し;(5)少なくとも1つの前記コンプレッサブレードに衝突してこのブレードを濡らすように、エンジン運転中に生成される気流を貫くほど十分高い速度で、前記洗浄装置の少なくとも1個のノズルから霧状化した水滴のスプレィを噴射し、以って少なくとも1個のコンプレッサブレードから付着物を解放し;(6)タービン吸気ダクトの空気流又はガスタービンに、少なくとも1台の水噴射装置の少なくとも1個のノズルから、霧状化した水のスプレィを噴射し、以って空気流の質量流量を増加してガスタービンエンジンの出力を増加し、かつスプレィの全水滴をコンプレッサに入る前に気化させ;そして(7)気候監視装置を使用し、乾球温度、空気圧、空気湿度、湿球温度の内の少なくとも1つを測定することで環境条件を監視し、監視された条件を第2の信号によって前記制御装置に伝達する、以上の各工程を有する。
【0048】
上記方法は更に、(8)導管を介して前記ポンプ装置に接続された水収集装置を使用して前記ガンタービンエンジンから出た水を収集し、水処理装置を使用して水を浄化する工程を有することができる。
【0049】
この方法はオフライン(非直結式)で実行可能である。この場合、洗浄装置の少なくとも1個のノズルがコンプレッサの上流側に位置し、コンプレッサの入口を指向する。この位置から、水をコンプレッサガス通路内に噴射できる。同様に少なくとも1台の噴射装置の少なくとも1個のノズルを燃焼室に隣接して配置することができる。
【0050】
或いは、各実施形態に沿う方法をオンライン(直結式)で実行可能である。この場合の模範的なオンライン洗浄システムを以下に記述する。オンライン洗浄時、ロータは高速回転し、空気は高速でコンプレッサに流入しつつ、エンジンは燃料着火している。図2〜図6に示すように、導管28はバルブ27によって分配主管20に接続されている。バルブ27が開くと、高圧水が少なくとも1個のノズル25に供給され、ここで水は約40m/sの噴口速度を持つようになる。少なくとも1個のノズル25がコンプレッサの入口面の上流側に装着される。ノズル25は水をスプレィ26へと霧状化する。ノズル25は基本的にコンプレッサの入口に向けられる。この高速スプレィは高速の空気流を貫通する。スプレィは気流と共にコンプレッサ内に運ばれる。コンプレッサ内部では水滴が少なくとも1個のコンプレッサブレード及びベーンに衝突し、これらを濡らす。少なくとも一個のコンプレッサブレード及びベーンを濡らすことで付着物がこれらより剥がれ、よってコンプレッサを洗浄することになる。洗浄の結果、境界層の厚さは減少し、質量流量は増加する。質量流量における増加はエンジンの出力を増加させる。スプレィ26は、サイズが約80〜約250ミクロン、好ましくは約80〜約180ミクロンの水滴からなる。このような水滴のサイズは、約10〜約80バールの圧力で噴霧したことによりもたらされたものである。必要な流水量は変速ポンプによってセットされる。この洗浄工程を終了する際にはバルブ27が閉じられる。
【0051】
オフライン型洗浄システムの一実施形態を以下に記述する。本実施形態によれば、オンライン洗浄と同じ組合せのノズルがオフライン洗浄においても使用される。オフライン洗浄中はエンジンは燃料点火しない。導管26がバルブ27を介して分配主管20に接続される。バルブ27開弁時、高圧水が少なくとも1個のノズル25に供給される。この少なくとも1個のノズル25は、コンプレッサの入口面の上流側に装着される。ノズル25は基本的にコンプレッサの入口に向けられる。ノズル25は水をスプレィ26へと霧状化する。このようにして少なくとも1個のノズルが基本的にコンプレッサの入口を指向するため、水滴はコンプレッサに流入する。これらの水滴は、少なくとも1個のコンプレッサブレードやベーンに衝突するには適当なサイズであるため、結果としてこれらを濡らすこととなる。コンプレッサブレードやベーンを濡らすことで付着物がこれらより剥がれ、よってコンプレッサを洗浄することになる。洗浄の結果、エンジン作動時の境界層の厚さは減少する。境界層の厚さが減少すると質量流量は増加する。そして、質量流量における増加はエンジンの出力を増加させる。スプレィ26は、サイズが約80〜約250ミクロン(平均質量ベース)、好ましくは約80〜約180ミクロンの水滴からなる。このような水滴のサイズは、約10〜約80バールの圧力で噴霧したことによりもたらされたものである。必要な流水量は変速ポンプによってセットされる。この洗浄工程を終了する際にはバルブ27が閉じられる。別な方法としては、異なるノズル組合せでオフライン洗浄をすることも可能であるが、基本作動は上述したようになる。
【0052】
加えて、水の使用は燃料消費量を減じる。この減少した燃料消費量は、コンプレッサやタービンのようなガスタービン構成要素がより効果的に作動したことの現われである。
【0053】
実施形態の一側面は、作用上に何が最も有利であるかに応じ、システムをオンオフさせる柔軟性にある。本例によって示されたような要求時、1システムを迅速に作動したり、他のシステムを不作動状態にすることができる。
【0054】
以上の開示は好ましい実施形態ではあるが、本発明を明確に理解してもらうための単なる例であり、本発明の精神から離れることなく、これらの実施形態に対し種々の変形例や可能である。故に、以下の請求項は、本発明の範囲内にある全ての変形例を含むことが理解されよう。
【符号の説明】
【0055】
10 ガスタービン
11 外ケーシング
12 コンプレッサブレード
13 燃焼室
14 タービン
19 吸気プレナム
20 分配主管
21 ノズルホルダ
22,26,211,213 スプレィ
23,28,29,207,208,209,215 導管
24,27,210,216 バルブ
25,212,214 ノズル
101 ダクト
102 吸い込みルーバー
103 塵スクリーン
104 エアフィルタ
201 ポンプ装置
202 制御装置
203 気候監視装置
204 信号供給ライン
205 信号ライン
206 水処理装置
218 記憶手段
300 操作装置
301 信号供給ライン
302 キーボード
304 ディスプレィ
900 噴射列システム
910 クランプ装置
920 キー付き支持システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力増大スプレィによって吸気ダクトが濡れることによる腐食からガスタービンの吸気ダクトを保護するシステムであって、該システムは、
前記吸気ダクトの内部入口壁上に流れる凝縮した水を捉える樋;
前記凝縮水を前記樋から受け取る入口廃液管;
前記入口廃液管内に位置し、補足された前記凝縮水を収集する貯留器;
前記貯留器上に位置し、補足された凝縮水が到達した際、作動する水位センサ;及び
前記水位センサが作動した際、補足された前記凝縮水を排出する廃液バルブ、を有するシステム。
【請求項2】
前記システムは、前記吸気ダクトに設けた耐食コーティング及び/又はコーティングと耐食タイルの組み合わせを更に有することを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記廃液バルブは電磁弁であることを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記樋は、前記吸気ダクトを備えた構造体の開口部周囲に円を形成するJ字状構造体を有し、前記吸気ダクトを備えた構造体が、コンプレッサに開口するベルマウスを備える、請求項に記載のシステム

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図9a】
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【図9b】
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【図11】
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【図7】
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【図9c】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−99450(P2011−99450A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6927(P2011−6927)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【分割の表示】特願2007−234429(P2007−234429)の分割
【原出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(507303402)ガス タービン エフィシエンシー スウェーデン アクティエボラーグ (18)