説明

タービン吸気冷却用冷凍機の制御装置、タービン吸気冷却用冷凍機の制御方法、ガスタービン並びに発電プラント

【課題】運転時の大気温度を考慮し、複数の冷凍機を運転制御して効率的な発電、経済性の向上を可能にするタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置、タービン吸気冷却用冷凍機の制御方法、ガスタービン並びに発電プラントを提供する。
【解決手段】冷凍機台数を仮選択する冷凍機台数設定部26と、冷凍機16の合計冷凍能力を演算する合計冷凍能力演算部27と、必要冷凍能力を演算する必要冷凍能力演算部28と、必要冷凍能力に応じた冷凍機16の動力を演算する動力演算部29と、タービン出力を演算するタービン出力演算部30と、冷凍機台数を決定する冷凍機台数決定部31とを備えて制御装置を構成する。また、冷凍機台数決定部31が、選択台数を変更した複数のケースに対してそれぞれ、タービン出力演算部30でタービン出力を求めさせ、各ケースの選択台数のタービン出力に基づいて、いずれかの選択台数を冷凍機台数として決定するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン給気冷却用の冷凍機の駆動を制御するタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置、タービン吸気冷却用冷凍機の制御方法、ガスタービン並びに発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電プラントには、圧縮機、燃焼器、タービンを主な構成要素とするガスタービンを備えたものがある。また、ガスタービンから排出される排熱を利用してボイラで蒸気を生成し、この蒸気を利用して蒸気タービンを駆動させ、ガスタービンと蒸気タービンとによって効率的に発電を行うように構成したGTCC(ガスタービンコンバインドサイクル)発電プラントがある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
一方、この種の発電プラントのガスタービンは、一定の大気温度の条件下で定格出力が規定され、一般に、吸気側の空気温度が上昇すると、この空気の密度が低下して質量流量が低下し、タービン出力が低下する。このため、夏季等、設定した吸気温度よりも高い温度の大気をガスタービンにそのまま吸気すると、タービン出力がこの大気温度に影響されて不足する場合がある。
【0004】
これに対し、従来、複数の冷凍機と、これら冷凍機で生成した冷水を供給する冷却コイル(熱交換器)とを備え、設定した吸気温度よりも大気の温度が高い場合には、大気を冷却コイルで冷却してガスタービンに吸気させてタービン出力を確保するようにしている。
【0005】
また、冷凍機の容量や台数は、夏場の暑い時期の大気の温度、湿度から決まる大気エンタルピーと、目標温度に冷却した後の冷却後エンタルピーと、空気質量流量とから必要な冷却熱量を算出し、この必要な冷却熱量を満足するように決める。そして、年中を通して吸気温度を目標温度(吸気温度、システムからこれ以上冷却できない限界温度)まで冷却するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−315127号公報
【特許文献2】特許第3769347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のガスタービン(発電プラント)においては、夏場の暑い時期の大気の温度、湿度から決まる大気エンタルピーに基づいて必要な冷却熱量を算出して決めた複数の冷凍機を、作業者が選択的に稼動させながら大気を目標温度に冷却するようにしている現状がある。そして、このように、季節によって(日々)変動する大気温度を考慮せずに複数の冷凍機を稼動させることは、年中複数の冷凍機を稼動し続けるようなことになり、効率的な発電を行う上で、また、発電プラント(ガスタービン)の経済性の点で得策ではない。このため、運転時の大気温度を考慮し、変動する大気温度に応じて冷凍機の稼動台数を決めて、複数の冷凍機を運転制御する手法が強く望まれていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、運転時の大気温度を考慮し、複数の冷凍機を運転制御して効率的な発電、経済性の向上を可能にするタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置、タービン吸気冷却用冷凍機の制御方法、ガスタービン並びに発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0010】
本発明のタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置は、複数の冷凍機から稼動させる冷凍機台数を仮選択する冷凍機台数設定部と、冷凍機台数設定部で設定された冷凍機の合計冷凍能力を演算する合計冷凍能力演算部と、目標吸気温度まで冷却するための必要冷凍能力を演算する必要冷凍能力演算部と、必要冷凍能力に応じた冷凍機を含む系の動力を演算する動力演算部と、選択された冷凍機によって冷却した場合のタービン出力を演算するタービン出力演算部と、冷凍機台数を決定する冷凍機台数決定部とを備え、前記冷凍機台数決定部は、前記冷凍機台数設定部で選択台数を変更した複数のケースに対してそれぞれ、前記タービン出力演算部でタービン出力を求めさせ、各ケースの選択台数のタービン出力に基づいて、いずれかの選択台数を冷凍機台数として決定するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のタービン吸気冷却用冷凍機の制御方法は、タービン吸気冷却用冷凍機の制御装置が冷凍機台数設定部と合計冷凍能力演算部と必要冷凍能力演算部と動力演算部とタービン出力演算部と冷凍機台数決定部とを備え、複数の冷凍機から稼動させる冷凍機台数を冷凍機台数設定部で仮選択し、冷凍機台数設定部で設定された冷凍機の合計冷凍能力を合計冷凍能力演算部で演算し、目標吸気温度まで冷却するための必要冷凍能力を必要冷凍能力演算部で演算し、必要冷凍能力に応じた冷凍機を含む系の動力を動力演算部で演算し、選択された冷凍機によって冷却した場合のタービン出力をタービン出力演算部で演算し、前記冷凍機台数決定部によって、前記冷凍機台数設定部で選択台数を変更した複数のケースに対してそれぞれ、前記タービン出力演算部でタービン出力を求めさせ、各ケースの選択台数のタービン出力に基づいて、いずれかの選択台数を冷凍機台数として決定することを特徴とする。
【0012】
これらの発明においては、冷凍機台数設定部で選択台数を変更した複数のケースに対してそれぞれタービン出力演算部でタービン出力を求め、各ケースのタービン出力に基づき、変動する大気温度に応じて最適な冷凍機の選択台数を短時間で且つ自動的に設定することが可能になる。
【0013】
また、本発明のタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置において、前記冷凍機台数決定部は、タービン出力が最大となる選択台数を冷凍機台数として決定するように構成されていることが望ましい。
【0014】
さらに、本発明のタービン吸気冷却用冷凍機の制御方法においては、前記冷凍機台数決定部によって、タービン出力が最大となる選択台数を冷凍機台数として決定することが望ましい。
【0015】
これらの発明においては、冷凍機台数決定部によってタービン出力が最大となる選択台数を決定することで、変動する大気温度に応じた発電量が最大になるように冷凍機を運転制御することが可能になる。
【0016】
また、本発明のタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置においては、発電コストを求める発電コスト演算部を備え、前記冷凍機台数決定部は、前記発電コスト演算部で求めた発電コストに基づいて選択台数を冷凍機台数として決定するように構成されていることが望ましい。
【0017】
さらに、本発明のタービン吸気冷却用冷凍機の制御方法においては、前記タービン吸気冷却用冷凍機の制御装置が発電コストを求める発電コスト演算部を備え、前記冷凍機台数決定部によって、前記発電コスト演算部で求めた発電コストに基づいて選択台数を冷凍機台数として決定することが望ましい。
【0018】
これらの発明においては、冷凍機台数決定部によって、発電コストが最大となる選択台数を決定することができ、変動する大気温度に応じた売電利益が最大になるように冷凍機を運転制御することが可能になる。
【0019】
本発明のガスタービンは、上記のいずれかのタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置を備えていることを特徴とする。
【0020】
本発明の発電プラントは、上記のガスタービンを備えていることを特徴とする。
【0021】
これらガスタービン及び発電プラントの発明においては、上記のタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置による作用効果を得ることが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置、タービン吸気冷却用冷凍機の制御方法、ガスタービン及び発電プラントにおいては、冷凍機台数設定部で選択台数を変更した複数のケースに対してそれぞれタービン出力演算部でタービン出力を求め、各ケースのタービン出力に基づき、変動する大気温度に応じて最適な冷凍機の選択台数を短時間で且つ自動的に設定することが可能になる。これにより、従来のように運転時の大気温度を考慮せずに年中冷凍機を運転し続けることをなくし、大気温度に応じてタービン出力や売電利益が最大となる最適な運転台数で冷凍機を稼動させることができるため、発電効率の向上、発電の経済性の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発電プラント、ガスタービンを示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るタービン吸気冷却用冷凍機の制御方法を示すフロー図である。
【図4】GTCC性能データとして予め記憶された吸気温度と空気流量の関係の一例を示す図である。
【図5】GTCC性能データとして予め記憶された冷凍機消費動力と負荷率の関係の一例を示す図である。
【図6】GTCC性能データとして予め記憶された吸気温度とGTCC出力の関係の一例を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るタービン吸気冷却用冷凍機の制御方法を示すフロー図である。
【図8】GTCC性能データとして予め記憶された吸気温度とCC効率の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1から図6を参照し、本発明の第1実施形態に係るタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置、タービン吸気冷却用冷凍機の制御方法、ガスタービン及び発電プラントについて説明する。
【0025】
本実施形態の発電プラント1は、GTCC発電プラントであり、図1に示すように、圧縮機2、燃焼器3、タービン4、及び圧縮機2に吸気させる大気を冷却するための吸気冷却装置5からなるガスタービン6と、排ガスボイラ7及びタービン8からなる蒸気タービン9と、ガスタービン6及び蒸気タービン9のロータに接続して設けられた発電機10と、発電プラント1全体を制御するプラント制御装置11とを備えて構成されている。
【0026】
ガスタービン6は、圧縮機2によって吸気した冷却空気を圧縮して燃焼器3に供給し、この燃焼器3で冷却空気と燃料を混合して生成した燃焼ガスをタービン4内に供給して、タービン4(ロータ)を回転駆動させることで発電を行うように構成されている。
【0027】
蒸気タービン9は、ガスタービン6から排出される排熱を利用して排ガスボイラ7で蒸気を生成し、この蒸気でタービン8(ロータ)を回転駆動させることで発電を行うように構成されている。
【0028】
一方、本実施形態の発電プラント1において、ガスタービン6の吸気冷却装置5は、大気が流通するとともにこの大気を冷却して圧縮機2に供給する冷却コイル15と、冷却コイル15に冷却水(冷水)を供給する複数の冷凍機(タービン吸気冷却用冷凍機)16と、冷却コイル15と冷凍機16の間で冷却水を循環させるための第1ポンプ17と、冷却水から排熱された熱を外部に放出するための冷却塔18と、冷凍機16と冷却塔18の間で冷却水を循環させるための第2ポンプ19と、複数の冷凍機16の運転(稼動)を制御する冷凍機用制御装置(タービン吸気冷却用冷凍機の制御装置)20とを備えて構成されている。また、第1ポンプ17と冷却塔18のファンと、第2ポンプ19が吸気冷却装置5の補機を構成している。
【0029】
また、複数の冷凍機16は、冷媒の圧縮−膨張作用によって循環する冷却水を冷却するものであり、1つの冷却コイル15に、並列に接続して設けられている。
【0030】
一方、本実施形態の冷凍機用制御装置20は、図2に示すように、冷却目標温度設定手段21と、稼働台数決定手段22と、駆動指令手段23を備えている。また、この冷凍機用制御装置20は、大気温度を測定するとともに、得られた温度情報を冷却目標温度設定手段21(及び/又は稼働台数決定手段22)に出力する気温測定手段24と、大気湿度を測定するとともに、得られた湿度情報を冷却目標温度設定手段21(及び/又は稼働台数決定手段22)に出力する大気湿度測定手段25を備えている。
【0031】
冷却目標温度設定手段21は、圧縮機2に吸気させる冷却空気(吸気)の温度を設定するため、ガスタービン6の要求出力WPRから、圧縮機2の入口温度を目標温度(目標吸気温度、吸気温度)として算出する。なお、要求出力WPRは、図2に示すようにプラント制御装置11から入力されるものとしても良いし、冷凍機用制御装置20に直接入力するようにしてもよい。
【0032】
稼働台数決定手段22は、複数の冷凍機16から稼動させる冷凍機台数を選択する冷凍機台数設定部26と、冷凍機台数設定部26で設定された冷凍機16の合計冷凍能力を演算する合計冷凍能力演算部27と、目標温度まで冷却するための必要冷凍能力を演算する必要冷凍能力演算部28と、必要冷凍能力に応じた冷凍機16を含む系の動力を演算する動力演算部29と、選択された冷凍機16によって冷却した場合のタービン出力を演算するタービン出力演算部30と、冷凍機台数を決定する冷凍機台数決定部31とを備えている。
【0033】
また、冷凍機台数決定部31は、冷凍機台数設定部26で選択台数を変更した複数のケースそれぞれに対して、タービン出力演算部30でタービン出力を求めさせ、各ケースのタービン出力に基づいて、いずれかの選択台数を冷凍機台数として決定する。さらに、本実施形態において、この冷凍機台数決定部31は、タービン出力が最大となる選択台数を冷凍機台数として決定する。
【0034】
駆動指令手段23は、稼働台数決定手段22の冷凍機台数決定部31で決定した冷凍機16に駆動指令を出力する。
【0035】
次に、上記構成からなる本実施形態の冷凍機用制御装置20を用いて冷凍機16を制御する方法について説明するとともに、本実施形態の冷凍機用制御装置20及び冷凍機制御方法の作用及び効果について説明する。
【0036】
本実施形態の冷凍機制御方法においては、気温測定手段24と大気湿度測定手段25で得られた温度情報と湿度情報が冷却目標温度設定手段21に出力されるとともに、図2及び図3に示すように、冷却目標温度設定手段21が、ガスタービン6の要求出力WPRから圧縮機の入口温度を目標温度(吸気温度、システムからこれ以上冷却できない限界温度)として算出する(Step1)。この冷却目標温度設定手段61による入口温度の算出においては、例えば、“Gas Turbine Theory 5th Edition,Sarabanamuttoo,HIH,et al.,2001”等を参照して、予め求められた要求出力WPRと入口温度の関係から目標温度を求める。
【0037】
このように目標温度が算出されるとともに、必要冷凍能力演算部28によって、目標温度まで冷却するための必要冷凍能力が算出される。このとき、必要冷凍能力演算部28では、大気温度、大気湿度、及び目標温度となる入口温度から比エンタルピー差Δhを算出し、この算出した比エンタルピー差Δhと圧縮機2の吸気流量Qから、エンタルピー差ΔHを算出する。そして、必要冷凍能力演算部28によって算出されたエンタルピー差ΔHが、複数の冷凍機16に要求される必要冷凍能力となる(Step2)。
【0038】
具体的に、エンタルピー差ΔHを求める際には、<数1>に基づいて、大気温度Tamp、入口温度Tin及び大気湿度φから比エンタルピー差Δhを算出する。
【0039】
【数1】

【0040】
このとき、<数1>において、関数fは、NC線図(例えば、「徹底マスター 空気線図の読み方・使い方」,空気調和・衛生工学会編,1998,pp16)等を利用すれば求めることができる。そして、本実施形態では、図4に示すような吸気温度と空気流量に関するGTCC性能データが予め記憶され、このGTCC性能データに基づいて圧縮機2の吸気流量Qを算出し、比エンタルピー差Δhと吸気流量Qとの乗算を行うことでエンタルピー差ΔHが算出される。
【0041】
次に、図2及び図3に示すように、冷凍機台数設定部26で、複数の冷凍機16から仮選択して稼動させる冷凍機台数を設定する。また、これとともに、冷凍機台数設定部26で仮選択した冷凍機16(冷凍機台数)の合計冷凍能力を合計冷凍能力演算部27で算出する。そして、複数の冷凍機16のそれぞれの定格出力(冷凍能力)が予め合計冷凍能力演算部27に記憶され、冷凍機台数設定部26で選択した各冷凍機16の冷凍能力を合算することにより合計冷凍能力を算出する(Step3)。
【0042】
このように合計冷凍能力演算部27で算出した合計冷凍能力が必要冷凍能力演算部28で算出した必要冷凍能力を上回っているか否かが確認される。合計冷凍能力が必要冷凍能力以下である場合には、冷却目標温度設定手段21で算出した冷却後吸気温度に予め設定した加算温度ΔTを加算して、この新たな目標温度での冷却後エンタルピーを再度求め必要冷凍能力を算出する。そして、合計冷凍能力が新たな目標温度での必要冷凍能力以上になるまでこの操作が繰り返し行われる(Step4)。
【0043】
次に、このように決定した目標温度における冷凍機16の動力と、冷凍機16と連動する補機(第1ポンプ17、第2ポンプ19、冷却塔18のファン)の動力とを動力演算部29で算出する(Step5,Step6)。すなわち、必要冷凍能力に応じた冷凍機16を含む系の動力を動力演算部29で算出する。このとき、図5に示すような冷凍機16の負荷率と冷凍機16の消費動力の関係がGTCC性能データに予め記憶され、選択した各冷凍機16の必要冷凍能力に応じた動力は、このGTCC性能データに基づいて算出される。
【0044】
さらに、図2及び図3に示すように、選択された冷凍機16によって冷却する際に冷却塔18に補給する補給水量を算出する(Step7)。
【0045】
次に、このように算出した必要冷凍能力に応じた冷凍機16を含む系の動力、補給水量から吸気温度に対する空気流量が求められ、この空気流量から、選択された冷凍機16によって冷却した場合のタービン出力をタービン出力演算部30で算出する。さらに、GTCC性能データとして記憶された図6に示すような吸気温度とGTCC出力の関係と、タービン出力演算部30で算出したタービン出力とを対比して、GTCC出力増分を算出する(Step8)。
【0046】
本実施形態では、冷凍機台数設定部26で選択台数を変更した複数のケースに対してそれぞれ、上記のようにタービン出力、GTCC流津力増分を求める。そして、冷凍機台数決定部31で、選択台数を変更した各ケースのタービン出力に基づいて、タービン出力が最大となる選択台数を冷凍機台数として決定する。このとき、複数の冷凍機16が同一仕様(同一容量)の場合、複数の冷凍機16が異なる仕様(異なる容量)の場合があるため、冷凍機台数決定部31では、単に冷凍機16の選択台数(運転台数)が少なくして最適なタービン出力となるようにするだけでなく、同一仕様の複数の冷凍機16の出力を変化させたり、仕様が異なる複数の冷凍機16を組み合わせるなどしてタービン出力が最大となるように冷凍機16の選択台数を決定する。
【0047】
したがって、本実施形態のタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置20、タービン吸気冷却用冷凍機の制御方法、ガスタービン6及び発電プラント1においては、冷凍機台数設定部26で選択台数を変更した複数のケースに対してそれぞれ、タービン出力をタービン出力演算部30で求め、各ケースのタービン出力に基づき、変動する大気温度に応じてタービン出力が最大となる最適な冷凍機16の選択台数を短時間で且つ自動的に設定することが可能になる。
【0048】
これにより、従来のように運転時の大気温度を考慮せずに年中冷凍機16を運転し続けることをなくし、大気温度に応じてタービン出力が最大となる最適な運転台数で冷凍機16を稼動させることができるため、発電効率の向上、発電の経済性の向上を図ることが可能になる。
【0049】
以上、本発明に係るタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置、タービン吸気冷却用冷凍機の制御方法、ガスタービン及び発電プラントの第1実施形態について説明したが、本発明は上記の第1実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、発電プラント1がGTCC発電プラントであるものとして説明を行ったが、勿論、蒸気タービンを備えず、ガスタービン6で発電を行う発電プラント1に本発明に係るタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置20及びタービン吸気冷却用冷凍機の制御方法を適用しても、本実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0050】
また、新設の発電プラントに限らず、既設の発電プラントに本発明に係るタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置20及びタービン吸気冷却用冷凍機の制御方法を適用してもよく、本発明を適用することで、既設の発電プラントの発電効率、経済性を容易に向上させることが可能になる。
【0051】
次に、図1、図2、図7及び図8を参照し、本発明の第2実施形態に係るタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置、タービン吸気冷却用冷凍機の制御方法、ガスタービン及び発電プラントについて説明する。ここで、本実施形態は、第1実施形態と同様にGTCC発電プラントの複数の冷凍機16の制御に関するものである。このため、第1実施形態と同様の構成に対しては同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0052】
図2に示すように、本実施形態の冷凍機用制御装置40は、第1実施形態と同様、冷却目標温度設定手段21と、稼働台数決定手段22と、駆動指令手段23を備えている。また、稼働台数決定手段22は、複数の冷凍機16から稼動させる冷凍機台数を選択する冷凍機台数設定部26と、冷凍機台数設定部26で設定された冷凍機16の合計冷凍能力を演算する合計冷凍能力演算部27と、目標温度(目標吸気温度、限界温度)まで冷却するための必要冷凍能力を演算する必要冷凍能力演算部28と、必要冷凍能力に応じた冷凍機16を含む系の動力を演算する動力演算部29と、選択された冷凍機16によって冷却した場合のタービン出力を演算するタービン出力演算部30と、冷凍機台数を決定する冷凍機台数決定部31とを備えている。
【0053】
一方、本実施形態において、稼働台数決定手段22は、これら冷凍機台数設定部26、合計冷凍能力演算部27、必要冷凍能力演算部28、動力演算部29、タービン出力演算部30、冷凍機台数決定部31に加え、発電コストを求める発電コスト演算部32を備えている。そして、本実施形態の冷凍機用制御装置40は、冷凍機台数決定部31が、発電コスト演算部32で求めた発電コストに基づいて、選択台数を冷凍機台数として決定するように構成されている。
【0054】
次に、上記構成からなる本実施形態の冷凍機用制御装置40を用いて冷凍機16を制御する方法について説明するとともに、本実施形態の冷凍機用制御装置40及び冷凍機制御方法の作用及び効果について説明する。
【0055】
本実施形態の冷凍機制御方法においては、第1実施形態と同様、図2及び図7に示すように、気温測定手段24と大気湿度測定手段25で得られた温度情報と湿度情報に基づいて、冷却目標温度設定手段21が、ガスタービン6の要求出力WPRから圧縮機2の入口温度を目標温度として算出し、必要冷凍能力演算部28によって、目標温度まで冷却するための必要冷凍能力が算出される(Step1,Step2)。
【0056】
次に、冷凍機台数設定部26で、複数の冷凍機16から選択して稼動させる冷凍機台数を設定し、選択した冷凍機16(冷凍機台数)の合計冷凍能力を合計冷凍能力演算部27で算出して、合計冷凍能力が必要冷凍能力演算部28で算出した必要冷凍能力を上回っているか否かが確認される(Step3)。
【0057】
また、決定した目標温度における冷凍機16の動力と、冷凍機16と連動する補機(第1ポンプ17、第2ポンプ19、冷却塔18のファン)の動力とを動力演算部29で算出するとともに、選択された冷凍機16によって冷却する際に冷却塔18に補給する補給水量を算出する(Step5,Step6,Step7)。さらに、算出した必要冷凍能力に応じた冷凍機16を含む系の動力、補給水量から吸気温度に対する空気流量が求められ、選択した冷凍機16によって冷却した場合のタービン出力をタービン出力演算部30で算出し、GTCC出力増分を算出する(Step8)。
【0058】
ついで、本実施形態においては、このようにGTCC出力増分を算出した後、発電コスト演算部32でCC効率(GTCC出力÷燃料量)が算出される。そして、GTCC性能データとして記憶された図8に示すような吸気温度とCC効率の関係と、発電コスト演算部32で算出したCC効率を対比して、燃料増分の計算、さらに燃料コスト増分の計算が行われる(Step9,Step10)。さらに、動力演算部29で算出した補給水量から冷却水コスト増分の計算が行われる(Step11)。
【0059】
このように燃料増分、燃料コスト増分、冷却水コスト増分を算出した後に、発電コスト演算部32で、発電プラント出力増分が求められ、この発電プラント出力増分から売上増分、すなわち、冷凍機台数設定部26で選択された冷凍機16によって冷却した場合の売電利益が算出される(Step12,Step13)。
【0060】
そして、冷凍機台数設定部26で選択台数を変更した複数のケースに対してそれぞれ、上記のように売電利益を求め、冷凍機台数決定部31で、選択台数を変更した各ケースの売電利益に基づいて、利益が最大となる選択台数を冷凍機台数として決定する。このとき、複数の冷凍機16が同一仕様(同一容量)の場合、複数の冷凍機16が異なる仕様(異なる容量)の場合があるため、第1実施形態と同様に、冷凍機台数決定部31では、同一仕様の複数の冷凍機16の出力を変化させたり、仕様が異なる複数の冷凍機16を組み合わせるなどして利益が最大となるように冷凍機16の選択台数を決定する。
【0061】
したがって、本実施形態のタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置40、タービン吸気冷却用冷凍機の制御方法、ガスタービン6及び発電プラント1においては、冷凍機台数設定部26で選択台数を変更した複数のケースに対してそれぞれ、タービン出力をタービン出力演算部30で求め、各ケースのタービン出力に基づき、変動する大気温度に応じて売電利益が最大となる最適な冷凍機16の選択台数を短時間で且つ自動的に設定することが可能になる。
【0062】
これにより、従来のように運転時の大気温度を考慮せずに年中冷凍機16を運転し続けることをなくし、大気温度に応じて売電利益が最大となる最適な運転台数で冷凍機16を稼動させることができるため、発電効率の向上、発電の経済性の向上を図ることが可能になる。
【0063】
本発明に係るタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置、タービン吸気冷却用冷凍機の制御方法、ガスタービン及び発電プラントの第2実施形態について説明したが、本発明は上記の第2実施形態に限定されるものではなく、第1実施形態の変更例を含め、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 発電プラント
2 圧縮機
3 燃焼器
4 タービン
5 吸気冷却装置
6 ガスタービン
7 排ガスボイラ
8 タービン
9 蒸気タービン
10 発電機
11 プラント制御装置
15 冷却コイル
16 冷凍機
17 第1ポンプ(補機)
18 冷却塔(補機)
19 第2ポンプ(補機)
20 冷凍機用制御装置(タービン吸気冷却用冷凍機の制御装置)
21 冷却目標温度設定手段
22 稼働台数決定手段
23 駆動指令手段
24 気温測定手段
25 大気湿度測定手段
26 冷凍機台数設定部
27 合計冷凍能力演算部
28 必要冷凍能力演算部
29 動力演算部
30 タービン出力演算部
31 冷凍機台数決定部
32 発電コスト演算部
40 冷凍機用制御装置(タービン吸気冷却用冷凍機の制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の冷凍機から稼動させる冷凍機台数を仮選択する冷凍機台数設定部と、
冷凍機台数設定部で設定された冷凍機の合計冷凍能力を演算する合計冷凍能力演算部と、
目標吸気温度まで冷却するための必要冷凍能力を演算する必要冷凍能力演算部と、
必要冷凍能力に応じた冷凍機を含む系の動力を演算する動力演算部と、
選択された冷凍機によって冷却した場合のタービン出力を演算するタービン出力演算部と、
冷凍機台数を決定する冷凍機台数決定部とを備え、
前記冷凍機台数決定部は、前記冷凍機台数設定部で選択台数を変更した複数のケースに対してそれぞれ、前記タービン出力演算部でタービン出力を求めさせ、各ケースの選択台数のタービン出力に基づいて、いずれかの選択台数を冷凍機台数として決定するように構成されていることを特徴とするタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置において、
前記冷凍機台数決定部は、タービン出力が最大となる選択台数を冷凍機台数として決定するように構成されていることを特徴とするタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置において、
発電コストを求める発電コスト演算部を備え、
前記冷凍機台数決定部は、前記発電コスト演算部で求めた発電コストに基づいて選択台数を冷凍機台数として決定するように構成されていることを特徴とするタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置。
【請求項4】
タービン吸気冷却用冷凍機の制御装置が冷凍機台数設定部と合計冷凍能力演算部と必要冷凍能力演算部と動力演算部とタービン出力演算部と冷凍機台数決定部とを備え、
複数の冷凍機から稼動させる冷凍機台数を冷凍機台数設定部で仮選択し、
冷凍機台数設定部で設定された冷凍機の合計冷凍能力を合計冷凍能力演算部で演算し、
目標吸気温度まで冷却するための必要冷凍能力を必要冷凍能力演算部で演算し、
必要冷凍能力に応じた冷凍機を含む系の動力を動力演算部で演算し、
選択された冷凍機によって冷却した場合のタービン出力をタービン出力演算部で演算し、
前記冷凍機台数決定部によって、前記冷凍機台数設定部で選択台数を変更した複数のケースに対してそれぞれ、前記タービン出力演算部でタービン出力を求めさせ、各ケースの選択台数のタービン出力に基づいて、いずれかの選択台数を冷凍機台数として決定することを特徴とするタービン吸気冷却用冷凍機の制御方法。
【請求項5】
請求項4記載のタービン吸気冷却用冷凍機の制御方法において、
前記冷凍機台数決定部によって、タービン出力が最大となる選択台数を冷凍機台数として決定することを特徴とするタービン吸気冷却用冷凍機の制御方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のタービン吸気冷却用冷凍機の制御方法において、
前記タービン吸気冷却用冷凍機の制御装置が発電コストを求める発電コスト演算部を備え、
前記冷凍機台数決定部によって、前記発電コスト演算部で求めた発電コストに基づいて選択台数を冷凍機台数として決定することを特徴とするタービン吸気冷却用冷凍機の制御方法。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のタービン吸気冷却用冷凍機の制御装置を備えていることを特徴とするガスタービン。
【請求項8】
請求項7記載のガスタービンを備えていることを特徴とする発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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