説明

ダイの固定装置

【課題】 プレート・ダイであってもブロック・ダイであっても、ダイを所定後へ容易に移動可能で、かつ位置の微調整が容易であるダイの固定装置を提供する。
【解決手段】 絵柄が形成されたブロック・ダイ4はボルト5によってベース・ブロック3に取り付けられている。ベース・ブロック3は、胴の周面に円周方向に延在する溝2に係合する係合部材6と、この係合部材6に螺合するボルト7とによって胴の周面に固定される。ベース・ブロック3の留めフランジ3bには、ボルト7が挿通される長孔3cが設けられており、この長孔3cは溝2と直交する方向(胴軸方向)に延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷されたシート状物に型を押し当てて行うエンボス加工、ダイカット加工や、箔押しをするホット・フォイル・スタンプ加工等に用いられるダイを胴に固定するダイの固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のダイは概ねプレート・ダイとブロック・ダイとに大別される。このうち、プレート・ダイには、ベース・プレートがフィルムによって形成されている樹脂版やベースプレートが鋼板やアルミ合金等の金属によって形成されている樹脂版が用いられている。
【0003】
このようなプレート・ダイはシート状に形成されており、製作が容易で安価であり、両面粘着テープまたはマグネットの磁力を利用して回転する胴の周面に固定されている。例えば、マグネット・シリンダの表面のほぼ全面に多数のマグネットを埋設し、このマグネット・シリンダの表面に鋼製のプレート・ダイを磁力によって装着したものがある(特許文献1参照)。
【0004】
一方、ブロック・ダイは銅合金や鋼等の金属を用いて、腐食加工と切削加工とによって彫刻されて製作されている。ブロック・ダイをロータリー・シリンダに装着するものとして、胴の周面にハニカム構造を有する孔を設け、これら多数の孔にピンを選択的に差し込むことによりブロック・ダイをロータリー・シリンダの周面の任意の位置に固定するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−5881号公報
【特許文献2】US1,382,151号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種のダイをロータリー・シリンダに位置決めする際には、印刷絵柄や紙工製品との見当を精度よく調整する必要がある。被加工材として、例えば印刷用紙を用いる場合、印刷用紙は湿度等の環境によって伸縮して変形する。また、エンボス加工を施すと印刷用紙に伸び変形が加えられるため、エンボス加工が集中して施される箇所とエンボス加工が施されない箇所とでは伸びが異なる。
【0007】
さらに、印刷用紙は歪みに変形するので、エンボスされる絵柄箇所の配置によっても見当は変化する。したがって、その場、その日、そのときに応じて、印刷絵柄等に対して、常にダイの位置の微細な見当合わせを行う必要があり、多くの準備時間と熟練された技術を必要としている。
【0008】
これに対して、上述したような従来のダイの固定装置のうち前者の場合は、シリンダの表面にマグネットの磁力によってプレート・ダイを装着した後では、微小の見当調整を行うのに、一度プレート・ダイをマグネットの磁力に抗してシリンダの表面から取り外す必要があるため、プレート・ダイを一度胴に固定すると微調整は難しいという問題があった。
【0009】
また、後者の場合は、ハニカム状の孔のピッチによってブロック・ダイの位置を移動させることは可能であるが、使用できる孔の位置が決められているため、ブロック・ダイを密集させようとする場合には自ずと制約があり、移動の自由度は限定的であるという問題があった。
【0010】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、プレート・ダイであってもブロック・ダイであっても、ダイを所定の位置へ容易に移動可能で、かつ位置の微調整が容易であるダイの固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明は、周面に胴軸方向または胴軸方向と直交する円周方向に互いに平行な複数の溝が設けられた胴と、前記胴の周面に固定手段により固定され、被加工材に加工を施すダイが設けられたベース・ブロックとを備え、前記固定手段は、前記溝に嵌入し前記溝に沿って移動可能に支持された係合部を備え、前記ベース・ブロックを前記胴の周面に固定し、前記ベース・ブロックは、前記固定手段による固定解除時に、前記固定手段と一体的に前記溝に沿って移動可能であるとともに、前記溝と直交する方向に移動可能となるように前記胴に支持されるものである。
【0012】
本発明は、胴の周面を覆うように装着され、周面に胴軸方向または胴軸方向と直交する円周方向に互いに平行な複数の溝が設けられた胴カバー部材と、前記胴カバー部材の周面に固定手段により固定され、被加工材に加工を施すダイが設けられたベース・ブロックとを備え、前記固定手段は、前記溝に嵌入し前記溝に沿って移動可能に支持された係合部を備え、前記ベース・ブロックを前記胴カバー部材の周面に固定し、前記ベース・ブロックは、前記固定手段による固定解除時に、前記固定手段と一体的に前記溝に沿って移動可能であるとともに、前記溝と直交する方向に移動可能となるように前記胴カバー部材に支持されるものである。
【0013】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記溝は段部により開口部が狭められており、前記固定手段は前記係合部と前記ベース・ブロックによって前記段部を挟持することによって前記胴の周面に前記ベース・ブロックを固定するものである。
【0014】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記溝は段部により開口部が狭められており、前記ベース・ブロックは前記溝が延在する方向の両端部に突設した留めフランジを備え、前記固定手段は前記係合部に螺合する穴付きボルトを備え、前記穴付きボルトを締め付けることにより前記穴付きボルトと前記係合部で前記留めフランジと前記段部を挟持し前記胴の周面に前記ベース・ブロックを固定するものである。
【0015】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記ベース・ブロックの両側に設けた留めフランジが、前記溝が延在する方向と直交する方向において互いに異なる位置に設けられているものである。
【0016】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記ベース・ブロックの前記溝が延在する方向の両端部に、表面が前記ベース・ブロックの表面と同一面をなし前記留めフランジおよび前記固定手段を覆う覆いフランジを前記溝の延在方向に突設し、前記固定手段は、前記穴付きボルトと前記係合部とで前記留めフランジと前記段部を挟持する止め具とからなり、前記覆いフランジに、前記穴付きボルトを回動操作する操作孔を設けたものである。
【0017】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記溝は段部により開口部が狭められており、前記固定手段は、前記ベース・ブロックに貫通形成したねじ孔に螺合する穴付きのクランプボルトであり、前記クランプボルトの先端部に前記係合部を設け、前記係合部と前記ベース・ブロックで前記段部を挟持して前記胴の周面に前記ベース・ブロックを固定し、前記ベース・ブロックのねじ孔に螺合する孔埋め部材を備えたものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1または2に係る発明によれば、ダイを溝の延在方向およびこれと直交する方向へ移動させることにより、ダイを胴の任意の位置に容易に移動可能であるとともに、ダイの見当の微調整が容易になる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、固定手段が溝に構成された段部を挟持することで、ダイを胴の任意の位置に確実に固定することができる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、溝の延在方向を選択することでベース・ブロックの留めフランジの突設方向を選択することができるので、ダイの密集方向を選択することができる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、互いに隣接するダイ間の間隔を狭くすることができるため、ダイをより密集して配置することが可能となる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、ダイの表面積を大きくすることができるため、被加工材に加工を施すときにしわの発生や傷付きの発生を規制できるとともに、穴付きボルトの締結を解除したときに穴付きボルトの脱落も規制できる。また、隣接するブロック・ダイ間の間隔を小さくすることができるため、被加工材を密集させることができるため、被加工材の無駄を低減することができる。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、樹脂版に形成するクランプボルトを締結するための孔の外形を小さくすることができるため、樹脂版上に設けられた絵柄が密集していても、絵柄に干渉することなく必要箇所にクランプボルトを配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るダイの固定装置が適用されたロータリー・シリンダの斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るダイの固定装置の斜視図である。
【図3】図2におけるIII-III 線断面図である。
【図4】図2におけるIV-IV 線断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るダイの固定装置におけるクランプ装置の斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の第1変形例を示し、同図(A)は胴カバー部材の斜視図、同図(B)は胴カバー部材が周面に装着されたロータリー・シリンダの斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態におけるロータリー・シリンダの斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るダイの固定装置が適用されたロータリー・シリンダの斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態におけるダイの固定装置の斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態におけるダイの固定装置の第1変形例を示す斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態におけるダイの固定装置の第2変形例を示す斜視図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態におけるダイの固定装置の第3変形例を示す斜視図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係るダイの固定装置が適用された胴カバー部材の斜視図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係るダイの固定装置の斜視図である。
【図15】図14におけるXV-XV 線断面図である。
【図16】図14におけるXVI-XVI 線断面図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態に係るダイの固定装置を示し、同図(A)は樹脂版の斜視図、同図(B)はベース・ブロックの斜視図、同図(C)はベース・ブロックに樹脂版を貼着した状態を一部破断して示す斜視図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係るダイの固定装置におけるクランプ装置の斜視図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態に係るダイの固定装置の底面図である。
【図20】本発明の第3の実施の形態に係るダイの固定装置を底面側から視た分解斜視図である。
【図21】本発明の第3の実施の形態の第1変形例に係るダイの固定装置の斜視図である。
【図22】本発明の第4の実施の形態に係るダイの固定装置と比較するために樹脂版の装着状態を示す胴カバー部材の斜視図である。
【図23】本発明の第4の実施の形態に係るダイの固定装置の斜視図である。
【図24】図23における要部の拡大図である。
【図25】図24におけるXXV-XXV 線断面図である。
【図26】図24におけるXXVI-XXVI 線断面図である。
【図27】本発明の第4の実施の形態に係るダイの固定装置における固定手段の斜視図である。
【図28】本発明の第4の実施の形態に係るダイの固定装置において、胴カバー部材20を裏面側から視た斜視図である。
【図29】本発明の第4の実施の形態に係るダイの固定装置の第1変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図29に基づいて説明する。
〔実施の形態1〕
【0026】
先ず、図1〜図6を用いて、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1において、1は胴としてのロータリー・シリンダであって、両端部に端軸1a,1aが突設され、周面1bに円周方向に延在する多数(本実施例では、二本のみ図示)の溝2が胴軸方向に等間隔をおいて互いに平行となるように設けられている。
【0027】
ロータリー・シリンダ1の周面の一部には、軸線方向全体に亘って切欠きが設けられており、この切欠きにおいて溝2は分断され、この分断された端面に、後述する係合部としての係合部材6をこの溝2内に挿入できる開口部(図示せず)が設けられている。また、図4に示すようにこの溝2は断面が逆T字状を呈するように蟻溝状に形成され、段部2aが設けられている。
【0028】
図2において、3は扁平な略直方体状に形成されたベース・ブロックであって、裏面3aがロータリー・シリンダ1の円周方向(矢印C−D方向)に向かってロータリー・シリンダ1の周面1bと同じ曲率となるように、図3に示すように全体が湾曲形成されている。
【0029】
このベース・ブロック3の湾曲方向(矢印C−D方向)の両端部には、留めフランジ3b,3bが設けられており、この留めフランジ3b,3bのそれぞれには、溝2の延在方向と直交する方向(矢印A−B方向)に延在する長孔3cが一対設けられている。
【0030】
4は扁平な略直方体でブロック状に形成されたブロック・ダイであって、表面4aに所定の絵柄の型が形成され、図3に示すように裏面4bがベース・ブロック3の表面3dの曲率と同じ曲率となるように全体が湾曲形成されている。
【0031】
このブロック・ダイ4は、裏面4bをベース・ブロック3の表面3dに対接させた状態で、ベース・ブロック3の留めフランジ3b,3bを除いた領域に、六角穴付きボルト5によって、ベース・ブロック3に固定されている。
【0032】
このようにベース・ブロック3にブロック・ダイ4が固定された状態で、留めフランジ3bの表面3dは、図3に示すようにブロック・ダイ4の表面4aから高さHだけ低い位置、すなわちブロック・ダイ4の表面4aから高さ方向(ブロック・ダイ4の厚み方向)において退避した位置に位置付けられている。
【0033】
図5において、6は上記した溝2内に挿入される係合部材であって、図4に示すように溝2よりも断面形状においてやや小さい外形寸法の凸状を呈し、上部の両端部に溝2の段部2aに係合する段部6aが設けられており、中央部にねじ孔6bが形成されている。
【0034】
7は頭部に六角穴7aを有する固定手段としての六角穴付きボルトであって、係合部材6のねじ孔6bに螺合される。8は略正方体状に形成された止め具であって、上部に座面8aを有する平面視円形の凹部8bが形成され、座面8aの中央部には挿通孔8cが設けられている。
【0035】
これら係合部材6、六角穴付きボルト7および止め具8は、後述するようにブロック・ダイ4をベース・ブロック3にクランプして固定するクランプ装置9を構成している。
【0036】
次に、このように構成されたダイの固定装置におけるダイの固定方法およびダイの見当調整方法について説明する。先ず、六角穴付きボルト7を止め具8の挿通孔8cに挿通させ、さらに、ベース・ブロック3の留めフランジ3bの四つの長孔3cのそれぞれに挿通させる。
【0037】
次いで、ベース・ブロック3の裏面側において、この六角穴付きボルト7に係合部材6のねじ孔6bを螺合させることにより、六角穴付きボルト7および係合部材6のベース・ブロック3からの脱落を規制する。
【0038】
この状態で、係合部材6を所定の溝2の開口部(図示せず)から溝2内に挿入し、ベース・ブロック3を溝2に沿ってロータリー・シリンダ1の円周方向(矢印C−D方向)に移動させ、所定の位置で六角穴付きボルト7を締め付ける。
【0039】
このボルト7の締め付けによって、図4に示すように係合部材6の段部6aが溝2の段部2aに係合するので、留めフランジ3bがロータリー・シリンダ1の周面1bに対接した状態で、係合部材6と止め具8とに挟持されるから、図1に示すように、留めフランジ3bがロータリー・シリンダ1の周面1bに固定される。
【0040】
すなわち、ブロック・ダイ4がベース・ブロック3を介してロータリー・シリンダ1の周面1bに固定される。次に、ベース・ブロック3を介してロータリー・シリンダ1の周面に固定されたブロック・ダイ4の見当調整を行うには、六角穴付きボルト7の締め付けを弛める。
【0041】
この状態で、係合部材6を溝2に沿って矢印C−D方向、すなわち、ロータリー・シリンダ1の円周方向に移動させることにより、ベース・ブロック3を介してブロック・ダイ4の円周方向の見当調整がなされる。
【0042】
同時に、長孔3cに沿ってベース・ブロック3を矢印A−B方向、すなわち、ロータリー・シリンダ1の胴軸方向に移動させることにより、ベース・ブロック3を介してブロック・ダイ4の胴軸方向の見当調整がなされる。
【0043】
このように、ベース・ブロック3を介してブロック・ダイ4をロータリー・シリンダ1の円周方向と胴軸方向とに移動できることにより、ブロック・ダイ4をロータリー・シリンダ1の任意の位置に容易に配置することができる。
【0044】
また、ブロック・ダイ4を溝2の延在方向(矢印C−D方向)および長孔3cの延在方向(矢印A−B方向)の任意の位置に移動できることにより、ブロック・ダイ4の見当の微調整が容易になる。
【0045】
この実施の形態においては、溝2の延在方向をロータリー・シリンダ1の円周方向としたことにより、図1に示すようにベース・ブロック3の留めフランジ3b,3bをベース・ブロック3の矢印C−D方向の両端部に設けることになる。
【0046】
換言すれば、ベース・ブロック3の矢印A−B方向の両端部には、留めフランジが形成されないから、ベース・ブロック3の矢印A−B方向の幅はブロック・ダイ4と同じ幅とすることができる。
【0047】
このため、矢印A−B方向において互いに隣接するブロック・ダイ4間の間隔を最小限とすることができるから、矢印A−B方向(ロータリー・シリンダ1の胴軸方向)においてブロック・ダイ4を密集させることが可能になる。
【0048】
次に、図6を用いて、第1の実施の形態の第1変形例について説明する。この第1変形例が上述した第1の実施の形態と異なる点は、溝2がロータリー・シリンダの周面に直接設けられているのではなく、ロータリー・シリンダの周面に取り付けられる胴カバー部材10に設けられており、ブロック・ダイ4が胴カバー部材10を介してロータリー・シリンダの周面に間接的に取り付けられていることにある。
【0049】
すなわち、胴カバー部材10は、同図(A)に示すようにロータリー・シリンダ15の周面と内周面が同じ曲率を有する円筒状に形成されており、両端部に開口部2bが形成され円周方向に延在する第1の実施の形態と同じ溝2が周面に設けられている。
【0050】
この胴カバー部材10は、分割線11において二つの湾曲体10A,10Bとに分割されている。この胴カバー部材10には多数の挿通孔13が設けられており、周方向の一部に軸線方向に延在する切欠き12が設けられている。
【0051】
このように形成された胴カバー部材10は、同図(B)に示すようにロータリー・シリンダ15の周面に各湾曲体10A,10Bが対接され、挿通孔13を挿通させたボルト16をロータリー・シリンダ15の周面に設けたねじ孔(図示せず)に螺合させることにより、ロータリー・シリンダ15の周面に固定される。14はロータリー・シリンダ15に設けられ切欠き12に臨むくわえ爪装置である。
【0052】
ロータリー・シリンダ15の周面に固定された胴カバー部材10の溝2には、上述した第1の実施の形態と同様な方法でブロック・ダイ4がベース・ブロック3を介して固定される。
【0053】
このように、ロータリー・シリンダ1の周面に直接溝2を形成するのではなく、胴カバー部材10に溝2を形成するようにしたことにより、加工が容易であるとともに、ロータリー・シリンダ1をそのまま利用することができるため、製造コストの低減を図ることもできる。
【0054】
なお、この第1の実施の形態の第1変形例においては、胴カバー部材を二分割したものを一体化した場合を説明したが、例えば、カウンター・シリンダ15の周面に取り付ける領域の円周方向の角度が180未満の場合には、二分割したものではなく一つの胴カバー部材でもよい。
【0055】
また、ロータリー・シリンダ15が搬送胴であってくわえ爪装置14を備えているため、胴カバー部材10を周方向の一部を胴軸方向に除去したシェルタイプのものを使用した例を説明したが、くわえ爪装置を備えていないシリンダに装着する場合は、円筒状に形成したスリーブタイプのものとしてもよい。
〔実施の形態2〕
【0056】
次に、図7〜図12を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態が上述した第1の実施の形態と異なる点は、溝2の延在方向にある。すなわち、第1の実施の形態では、溝2はロータリー・シリンダ15の円周方向に延在しているが、この第2の実施の形態においては、ロータリー・シリンダ15の円周方向と直交する方向である胴軸方向に延在している。
【0057】
図7において、ロータリー・シリンダ1の周面に取り付けられた胴カバー部材20の周面には、ロータリー・シリンダ1の胴軸方向に延在する多数の溝2が円周方向に互いに平行となるように等間隔をおいて設けられており、この溝2の延在方向の両端は開口され、開口部2b(一方の開口部2bは図示せず)が形成されている。
【0058】
また、この第2の実施の形態においては、ベース・ブロック21の留めフランジ21aに形成した長孔21bの延在方向が、溝2の延在方向と直交する方向であるロータリー・シリンダ1の円周方向(矢印C−D方向)に向かっている点が第1の実施の形態と異なる点でもある。
【0059】
ボルト5によってブロック・ダイ4が取り付けられ、後述するように胴カバー部材20を介してロータリー・シリンダ1の周面に固定されるベース・ブロック21のロータリー・シリンダ1の胴軸方向(矢印A−B方向)の両端部には、ブロック・ダイ4の表面から退避した位置に位置付けられた留めフランジ21a,21aが設けられている。
【0060】
この留めフランジ21aのそれぞれには、ロータリー・シリンダ1の円周方向(矢印C−D方向)に延在する一対の長孔21b,21bが設けられている。
【0061】
このブロック・ダイ4をロータリー・シリンダ1の周面に装着するには、先ず、六角穴付きボルト7を止め具8の挿通孔8cに挿通させ、さらに、ベース・ブロック21の留めフランジ21aの四つの長孔21bのそれぞれに挿通させる。
【0062】
次いで、ベース・ブロック21の裏面側において、この六角穴付きボルト7に係合部材6のねじ孔6bを螺合させることにより、六角穴付きボルト7および係合部材6のベース・ブロック21からの脱落を規制する。
【0063】
この状態で、係合部材6を開口部2bから所定の溝2内に挿入し、ベース・ブロック21を溝2に沿ってロータリー・シリンダ1の胴軸方向(矢印A−B方向)に移動させ、所定の位置で六角穴付きボルト7を締め付けることにより、図8に示すように、ブロック・ダイ4をロータリー・シリンダ15の周面に固定する。
【0064】
次に、このようにロータリー・シリンダ15の周面に、胴カバー部材20およびベース・ブロック21を介して固定されたブロック・ダイ4の見当調整を行うには、六角穴付きボルト7の締め付けを弛める。
【0065】
この状態で、係合部材6を溝2に沿って矢印A−B方向、すなわち、ロータリー・シリンダ1の胴軸方向に移動させることにより、ベース・ブロック21を介してブロック・ダイ4の胴軸方向の見当調整がなされる。
【0066】
同時に、長孔21bに沿ってベース・ブロック21を矢印C−D方向、すなわち、ロータリー・シリンダ15の円周方向に移動させることにより、ベース・ブロック21を介してブロック・ダイ4の円周方向の見当調整がなされる。
【0067】
このように、ベース・ブロック21を介してブロック・ダイ4をロータリー・シリンダ15の円周方向と胴軸方向とに移動できることにより、上述した第1の実施の形態と同様にブロック・ダイ4をロータリー・シリンダ15の任意の位置に容易に配置することができる。
【0068】
また、ブロック・ダイ4を溝2の延在方向(矢印A−B方向)および長孔21bの延在方向(矢印C−D方向)の任意の位置に移動できることにより、ブロック・ダイ4の見当の微調整が容易になる。
【0069】
この第2の実施の形態においては、溝2の延在方向をロータリー・シリンダ1の胴軸方向としたことにより、図8に示すようにベース・ブロック21の留めフランジ21a,21aをベース・ブロック21の溝2の延在方向(矢印A−B方向)の両端部に設けることになる。
【0070】
換言すれば、ベース・ブロック21の長孔21bの延在方向(矢印C−D方向)の両端部には、留めフランジが形成されないから、ベース・ブロック21の矢印C−D方向の幅はブロック・ダイ4と同じ幅とすることができる。
【0071】
このため、矢印C−D方向において互いに隣接するブロック・ダイ4間の間隔を最小限とすることができるから、矢印C−D方向(ロータリー・シリンダ1の円周方向)においてブロック・ダイ4を密集させることが可能になる。このように、溝2の延在方向を選択することにより、ブロック・ダイ4を密集させる方向に対応させることができる。
【0072】
次に、図10を用いて、第2の実施の形態の第1変形例について説明する。この第1変形例では、ベース・ブロック25にブロック・ダイが一体に形成されダイ部25aが設けられている。
【0073】
このベース・ブロック25のロータリー・シリンダ15の胴軸方向(矢印A−B方向)の両端部には、留めフランジ25b,25bが設けられており、この留めフランジ25bには、ロータリー・シリンダ15の円周方向に延在する一対の長孔25cが設けられている。
【0074】
次に、図8および図11を用いて、第2の実施の形態の第2変形例について説明する。同図(A)において、27は薄板状で長方形に形成された可撓性を有するプレート・ダイとしての樹脂版であって、表面に凸状の型27aが形成されている。
【0075】
ベース・ブロック28の矢印A方向の端部であって矢印C−D方向の中央部には、一つの留めフランジ29aが設けられており、ベース・ブロック28の留めフランジ29aのある端部に対する端部(矢印B方向)であって、その(矢印C−D方向)両端部には、一対の留めフランジ29b,29cが設けられている。
【0076】
すなわち、ベース・ブロック28の端部(矢印A方向)に設けたフランジ29aと留めフランジ29aのある端部に対する端部(矢印B方向)に設けた留めフランジ29b,29cとが、溝2が延在する方向(矢印A−B方向)と直交する方向(矢印C−D方向)において互いに異なる位置に設けられている。
【0077】
この実施の形態では、留めフランジ29b,29a,29cが溝2が延在する方向と直交する方向(矢印C−D方向)において千鳥状に配置されている。これら留めフランジ29a,29b,29cのそれぞれには、矢印C−D方向に延在する長孔30が設けられている。
【0078】
樹脂版27は、同図(C)に示すように両面粘着テープによってベース・ブロック28の表面に張り合わされることにより、プレート・ダイが形成される。
【0079】
このように構成されていることにより、ベース・ブロック28が係合部材6および六角穴付きボルト7ならびに止め具8によって、図8に示すように胴カバー部材20の周面に取り付けられると、一方の留めフランジ29aと他方の留めフランジ29b,29cとが干渉しない。
【0080】
したがって、隣接するベース・ブロック28間の間隔を狭めることができるため、ベース・ブロック28を溝2が延在する方向(矢印A−B方向)において密集させて配置することが可能になる。
【0081】
また、ベース・ブロック28を介して樹脂版27を胴カバー部材20に取り付けるようにしたことにより、プレート・ダイとしての樹脂版27を、図8に示すように、ブロック・ダイ4と同じロータリー・シリンダ上に装着することができる。このように、同じシリンダ上にプレート・ダイとブロック・ダイとを装着できることにより、顧客の幅広い要求に対応可能となる。
【0082】
図12は第2の実施の形態の第3変形例を示すものであって、図11において説明した第2変形例と異なる点は、ベース・ブロック28の表面に張り合わされる樹脂版32に形成された型32aが凹型である点である。この第3変形例においても、ブロック・ダイと同じロータリー・シリンダ上に装着することができる。
【0083】
なお、この第2の実施の形態においては、胴カバー部材20に溝2を設けた例を説明したが、ロータリー・シリンダ15の周面に直接溝2を設けたものでもよいことは勿論である。
【0084】
〔実施の形態3〕
【0085】
次に、図13〜図21を用いて、本発明の第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態におけるベース・ブロック40は、図13に示すように胴軸方向(矢印A−B方向)に延在する溝2が設けられた胴カバー部材20の周面に取り付けられる。
【0086】
ベース・ブロック40の溝2が延在する方向(矢印A−B方向)の両端部であってベース・ブロック40の表面40aから退避した部位、すなわち図中下端部に、留めフランジ41が矢印A−B方向に突設されている。
【0087】
ベース・ブロック40の溝2が延在する方向(矢印A−B方向)の両端部に、前記留めフランジ41を覆う覆いフランジ42,42が矢印A−B方向に突設されており、この覆いフランジ42の矢印A−B方向への突設量は、留めフランジ41の突設量よりも大きい。
【0088】
この覆いフランジ42の表面42aとベース・ブロック40の表面40aとは同一面をなしている。この覆いフランジ42のそれぞれには、溝2が延在する方向と直交する方向(矢印C−D方向)に延在する一対の長孔42bが設けられているとともに、図19に示すように裏面に後述するスプリング・ピン45が係入される長溝42cが長孔42bと平行に設けられている。
【0089】
また、この覆いフランジ42と留めフランジ41との間には、矢印C−D方向の全体に亘って係合溝43が設けられている。
【0090】
44は略正方体状に形成された止め具であって、図16に示すように中央部にすり鉢状に形成された座ぐり部44aが設けられており、この座ぐり部44aの中央部には挿通孔44bが設けられている。
【0091】
また、この止め具44の一側部の上側には、図18に示すように上記係合溝43内に係入される鍔44cが水平方向に向かって突設されており、上端面には、スプリング・ピン45が収納される一対の非貫通孔44d,44dが凹設されている。
【0092】
この非貫通孔44dに収納されたスプリング・ピン45は、常時先端部が非貫通孔44dから突出するように付勢され、先端部に荷重がかかることによりこの付勢力に抗して非貫通孔44d内に没入するように構成されている。
【0093】
図17において、46は薄板状で長方形に形成された可撓性を有する樹脂版であって、表面に凹状の型46aが形成されており、四隅のそれぞれに長孔46bが設けられている。
【0094】
この樹脂版46は、同図(C)に示すように、互いの長孔42b,46bを一致させて両面粘着テープによってベース・ブロック40の表面40aに張り合わされることにより、プレート・ダイ47が形成される。
【0095】
このように構成されたプレート・ダイ47を胴カバー部材20の周面に取り付けるには、予め、止め具44の非貫通孔44dにスプリング・ピン45を収納しておく。
【0096】
次いで、図18に示すように六角穴付きボルト7を止め具44の挿通孔44bに挿通させ、係合部材6のねじ孔6bに螺合させ、係合部材6と止め具44とを六角穴付きボルト7を介して連結する。
【0097】
図14および図20に示すように、係合部材6と連結された四つの止め具44の凸部44cをベース・ブロック40の係合溝43に係入させ、六角穴付きボルト7をベース・ブロック40の長孔42bに対応させるように、止め具44を矢印C−D方向に移動させ、四つの止め具44および四つの係合部材6をベース・ブロック40に仮組付けする。
【0098】
この状態で、止め具44の非貫通孔44dに収納されたスプリング・ピン45がベース・ブロック40の長溝42c内に係入される。
【0099】
次いで、ベース・ブロック40に仮組付けされた四つの係合部材6のそれぞれを図13に示すように開口部2bから所定の溝2内に挿入し、溝2に沿って係合部材6を矢印A−B方向の所定の位置まで移動させ、ベース・ブロック40の長孔42bからレンチ(図示せず)を差し入れる。
【0100】
差し入れたレンチによって六角穴付きボルト7を締め付ける方向に回動させると、図16に示すように係合部材6が止め具44側に移動し、係合部材6の段部6aが溝2の段部2aに係合する。このように、長孔42bは、レンチを六角穴付きボルト7の六角穴7aに嵌合させ、六角穴付きボルト7を回動操作する操作孔として機能する。
【0101】
ベース・ブロック40は、図15および図16に示すように、胴カバー部材20と一緒に係合部材6の段部6aと止め具44の鍔44cとにより挟持されることにより、裏面が胴カバー部材20の周面に対接した状態で、胴カバー部材20に固定される。
【0102】
すなわち、樹脂版46がベース・ブロック40を介して胴カバー部材20の周面に固定される。このように、係合部材6、六角穴付きボルト7および止め具44は、ベース・ブロック40を胴カバー部材20にクランプするためのクランプ装置49(図18参照)を構成している。
【0103】
次に、ベース・ブロック40を介して胴カバー部材20の周面に固定された樹脂版46の見当調整を行うには、ベース・ブロック40の長孔42bから差し入れたレンチ(図示せず)によって六角穴付きボルト7の締め付けを弛める。
【0104】
この状態で、係合部材6を溝2に沿って矢印A−B方向、すなわち、胴カバー部材20の軸線方向に移動させることにより、ベース・ブロック40を介して樹脂版46の軸線方向の見当調整がなされる。
【0105】
同時に、止め具44の鍔44cがベース・ブロック40の係合溝43に沿って案内されるように、係合部材6に対してベース・ブロック40を矢印C−D方向、すなわち、胴カバー部材20の円周方向に移動させることにより、ベース・ブロック40を介して樹脂版46の円周方向の見当調整がなされる。
【0106】
このように、ベース・ブロック40を介して樹脂版46を胴カバー部材20の円周方向と胴軸方向とに移動できることにより、樹脂版46を胴カバー部材20の任意の位置に容易に配置することができる。
【0107】
また、樹脂版46を溝2の延在方向(矢印A−B方向)および長孔42bの延在方向(矢印C−D方向)の任意の位置に移動できることにより、樹脂版46の見当の微調整が容易になる。
【0108】
また、ベース・ブロック40に覆いフランジ42を設けたことにより、ベース・ブロック40の表面積が拡がり、隣接するベース・ブロック40,40間の矢印A−B方向の間隔をほとんどなくすことが可能になる。
【0109】
したがって、ベース・ブロック40を密集させて配置することができるとともに、樹脂版46によって加工される被加工材が加工される際に、しわが発生したり傷が付いたりするのを規制することができる。
【0110】
また、覆いフランジ42を設けたことにより、係合部材6との螺合を解除させた六角穴付きボルト7の頭部がこの覆いフランジ42に当接することにより、六角穴付きボルト7が抜け止めされるので、六角穴付きボルト7の止め具44からの脱落を規制することができる。
【0111】
また、六角穴付きボルト7の止め具44からの脱落を規制することができることにより、六角穴付きボルト7の係合部材6との螺合を解除させたときに、止め具44の非貫通孔44dに収納されたスプリング・ピン45がベース・ブロック40の長溝42c内に係入されているので、止め具44やベース・ブロック40の胴カバー部材20からの脱落も規制される。
【0112】
次に、図21を用いて、本発明の第3の実施の形態の第1変形例について説明する。この第1変形例では、ベース・ブロック40の表面40aに樹脂版46が別体で装着されているのではなく、ベース・ブロック40の表面40aに凹状の型40bが一体に形成されている点が上述した第3の実施の形態と異なる。
〔実施の形態4〕
【0113】
次に、図22〜図29を用いて、本発明の第4の実施の形態について説明する。この第4の実施の形態では、外形寸法が比較的大きな樹脂版を胴の周面に装着するのに有効なダイの固定装置に関するものである。
【0114】
外形寸法が比較的大きな樹脂版をベース・ブロックに貼り合わせ、ボルトによってベース・ブロックを介して胴の周面に装着する場合、樹脂版にボルトの頭部よりも大きな孔が形成されることにより、ボルトを所定位置に配置することができないといった問題が発生する。
【0115】
これを図22を用いて説明すると、円周方向に延在する溝2が形成された胴カバー部材10の周面には、外形寸法が比較的大きい六枚の樹脂版50が表面に貼り合わされた六枚のベース・ブロック51が多数のボルト52によって固定されている。
【0116】
この場合、樹脂版50の表面に形成した型の絵柄が密集し、かつボルト52を挿通させるため樹脂版50に設けた孔が大きいと、孔が絵柄に重なり、ボルト52を所定位置に配置することができなくなる。
【0117】
したがって、この第4の実施の形態では、ボルトを締結するために樹脂版に設ける孔の外形を小さくすることにより、樹脂版に絵柄が密集していても、絵柄を欠如させることなく必要箇所にボルトを配置できるようにしたものである。
【0118】
すなわち、軸線方向に溝2が設けられた胴カバー部材20の周面には、図23に示すように六枚のベース・ブロック51が取り付けられており、このベース・ブロック51の表面に外形寸法が比較的大きな六枚の樹脂版50が貼り合わされている。
【0119】
ベース・ブロック51には、マトリックス状に配置された多数のねじ孔55A,55Bが貫通形成されている。ねじ孔55Aには、固定手段としての後述するクランプボルト56が螺合され、ねじ孔55Bには、孔埋め部材としての後述するプラグ57が螺合される。
【0120】
これらねじ孔55A,55Bは共に同じ構造を有しており、図23および図24においては、ねじ孔55Aとねじ孔55Bとを区別するために説明の便宜上、クランプボルト56が螺合されるねじ孔55Aを塗りつぶして表示している。
【0121】
ねじ孔55A,55Bは、図25および図26に示すように、後述するようにレンチが差し入れられる小径部55aと、この小径部55aよりも大径状に形成された大径部55bと、この大径部55bよりも小径の雌ねじ部55cとによって一連に形成されている。
【0122】
クランプボルト56は、図25に示すように六角穴56aが設けられた頭部56bと、上記したねじ孔55Aの雌ねじ部55cに螺合する雄ねじ部56cと、この雄ねじ部56cから延設された延設部56dと、この延設部56dの先端部に溝2内に挿入される鍔状に形成された係合部56eとによって一連かつ一体形成されている。
【0123】
上記したねじ孔55A,55Bの小径部55aの直径Rは、図25に示すようにクランプボルト56の六角穴56aの直径よりもわずかに大きく、かつ頭部56bの直径よりも小さく形成されている。
【0124】
また、溝2のクランプボルト56の延設部56dが遊挿される遊挿部2cの直径R1は、延設部56dの直径R2よりも2αだけ大きく形成されており、ベース・ブロック51は胴カバー部材20に対して矢印C−D方向(円周方向)に長さ2αの遊びが設けられている。樹脂版50には、小径部55aに対応して小径部55aと同じ直径Rに形成されたレンチ差し入れ口50aが多数設けられている。
【0125】
プラグ57は、図26に示すように上記したねじ孔55Bの小径部55aに嵌合される孔埋め部57aと、この孔埋め部57aよりもわずかに径が大きく形成された段部57bと、この段部57bの下端に突設され上記したねじ孔55Bの雌ねじ部55cに螺合され下端に六角穴57dが設けられた雄ねじ部57cとによって一連かつ一体に形成されている。58は溝2の段部2aと六角穴付きボルト56の係合部56eとの間に介装されるワッシャーである。
【0126】
ベース・ブロック51の矢印A−B方向(胴軸方向)の両端面51a,51aには(一端51aは図示せず)、図28に示すように、雌ねじ部(図示せず)が形成された複数の非貫通穴51bが矢印A−B方向に延在するように設けられている。
【0127】
59は非貫通穴51bに挿入されるプランジャーであって、非貫通穴51bの雌ねじ部に螺合することにより非貫通穴51bに埋設されて取り付けられる。60は非貫通孔51bに埋設されたプランジャー59の端部に植設されたピンであって、非貫通孔51bから矢印B方向へ突出している。
【0128】
61はベース・ブロック51の端面51aに対接される側面視円弧状に形成されたスペーサであって、ピン60が圧入される複数の孔61aが設けられている。
【0129】
次に、このように構成されたダイの固定装置において、樹脂版50をベース・ブロック51を介して胴カバー部材20の周面に固定する方法について説明する。予め、クランプボルト56およびプラグ57をベース・ブロック51のねじ孔55A,55Bに取り付けておく。
【0130】
すなわち、胴カバー部材20の裏面側から、図28に示すように、ワッシャー58を介装させた多数のクランプボルト56をねじ孔55Aに差し入れ、ねじ孔55Aの雌ねじ部55cに雄ねじ部56cをわずかに螺合させ、クランプボルト56をねじ孔55Aに仮固定する。
【0131】
同様に、胴カバー部材20の裏面側から、多数のプラグ57をねじ孔55Bに差し入れ、図26に示すように孔埋め部57aの表面がベース・ブロック51の表面に一致するまで、孔埋め部57aをねじ孔55Bの小径部55aに嵌合させるように、ねじ孔55Bの雌ねじ部55cに雄ねじ部57cを螺合させ、プラグ57をねじ孔55Bに固定する。
【0132】
この状態で、六枚の樹脂版50のそれぞれを六枚の各ベース・ブロック51に、各レンチ差し入れ口55aがねじ孔55A,55Bのそれぞれの小径部55aに一致するように貼り合わせる。次いで、六枚のベース・ブロック51を一枚ずつ胴カバー部材20の周面に取り付ける。
【0133】
すなわち、ベース・ブロック51に仮固定された複数のクランプボルト56の各係合部56eを胴カバー部材20の所定の溝2の開口部2bから溝2内に挿入し、係合部56eを溝2に沿って移動させることにより、ベース・ブロック51を矢印A−B方向(胴軸方向)の所定位置に移動させる。
【0134】
この状態で、ベース・ブロック51の表面側から、レンチ(図示せず)を樹脂版50のレンチ差し入れ口50aおよびベース・ブロック51のねじ孔55Aの小径部55aに差し入れる。
【0135】
差し入れたレンチをクランプボルト56の六角穴56aに嵌合させた状態で、クランプボルト56を回動させて、図25においてクランプボルト56を上方に移動させることにより、ワッシャー58が溝2の段部2aに圧接させる。この状態で、ベース・ブロック51が胴カバー部材20の周面に対接した状態で固定される。
【0136】
次に、ベース・ブロック51を介して胴カバー部材20の周面に固定された樹脂版50の見当調整を行うには、樹脂版50のレンチ差し入れ口50aおよびベース・ブロック51のねじ孔55Aの小径部55aから差し入れたレンチによってクランプボルト56の締め付けを弛める。
【0137】
この状態で、クランプボルト56の係合部56eを溝2に沿って矢印A−B方向に移動せるように、ベース・ブロック51を胴カバー部材20の軸線方向に移動させることにより、ベース・ブロック51を介して樹脂版50の軸線方向の見当調整がなされる。
【0138】
同時に、図25において、クランプボルト56の延設部56dと溝2の遊挿部2cとの間の長さ2αの遊びの範囲内でベース・ブロック51を矢印C−D方向、すなわち胴カバー部材20の円周方向に移動させることにより、ベース・ブロック51を介して樹脂版50の円周方向の見当調整がなされる。
【0139】
一般的に、樹脂版は印刷絵柄等に合わせて製版されるので、印刷、エンボス工程での被加工材の伸縮量に対応するわずかな見当調整で済む。したがって、長孔等を設けなくても、クランプボルト56の延設部56dと溝2の遊挿部2cとの間の遊びの範囲内での見当調整で済む。
【0140】
このように、ベース・ブロック51を介して樹脂版50を胴カバー部材20の円周方向と胴軸方向とに移動できることにより、樹脂版50を胴カバー部材20の任意の位置に配置することができる。
【0141】
また、樹脂版50を溝2の延在方向(矢印A−B方向)およびクランプボルト56の延設部56dと溝2の遊挿部2cとの間の長さ2αの遊びの範囲内で矢印C−D方向の任意の位置に移動できることにより、樹脂版50の胴軸方向および円周方向への見当の微調整が容易になる。
【0142】
また、樹脂版50には、レンチを差し入れるだけの大きさのレンチ差し入れ口50aを設ければよいので、レンチ差し入れ口50aが六角穴56aよりもわずかに大きければよく、樹脂版50に形成される孔の外形が小さくなる。
【0143】
したがって、樹脂版50上に設けられた絵柄が密集していても、レンチ差し入れ口50aが絵柄に干渉するようなことがないから、レンチ差し入れ口50aによって絵柄を欠如させるようなことがなく、必要箇所にクランプボルト56を配置できる。
【0144】
また、三枚のベース・ブロック51を胴カバー部材20の周面に装着した結果、隣接するベース・ブロック51,51間の矢印A−B方向に隙間が発生する場合は、図28に示すように隙間と同じ厚さのスペーサ61を、ベース・ブロック51の端面51aに取り付ける。
【0145】
このように、スペーサ61により、ベース・ブロック51,51間にベース・ブロック51の表面から陥没した凹部が形成されないから、被加工材が加工される際にしわが発生したり傷が付いたり、加工の押圧が不足したりするのを抑制することができる。
【0146】
同様に、プラグ57の孔埋め部57aの表面をベース・ブロック51の表面に一致させているので、ベース・ブロック51の表面の押圧加工に使用する押圧面から陥没した凹部をなくすことができるから、被加工材が加工される際にしわが発生したり傷が付いたり、加工の際に押圧が不足したりするのを抑制することができる。
【0147】
図29に示す第4の実施の形態の第1変形例では、溝2が胴カバー部材10の円周方向に延在する場合であり、この場合は胴軸方向の見当調整を、クランプボルト56の延設部56dと溝2の遊挿部2cとの間の遊び分2αの範囲内で矢印A−B方向にベース・ブロック51を移動させることにより行う。
【0148】
なお、本実施の形態においては、主として押出加工のダイについて説明したが、エンボス加工、ダイカット加工、ホット・フォイル・スタンプ加工、レター・プレス加工、スポット・ニス加工用のダイとしてもよい。
【符号の説明】
【0149】
1,15…ロータリー・シリンダ(胴)、2…溝、2a…段部、2b…開口部、3,21,25,28,51…ベース・ブロック、3b,21a,25b,29a,29b,29c…留めフランジ、3c,21b,25c,30,42b…長孔、4,40…ブロック・ダイ、6…係合部材(係合部)、7…六角穴付きボルト(固定手段)、8,44…止め具、9,49…クランプ装置、10,20…胴カバー部材、27,32,46,50…樹脂版、42b…長溝、45…スプリング・ピン、50…樹脂版、50a…レンチ差し入れ口、55a…小径部、55c…雌ねじ部、56…クランプボルト(固定手段)、56a…六角穴、56c…雄ねじ部、56e…係合部、57…プラグ(孔埋め部材)、57a…孔埋め部、57c…雄ねじ部、59…プランジャー、60…ピン、61…スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に胴軸方向または胴軸方向と直交する円周方向に互いに平行な複数の溝が設けられた胴と、
前記胴の周面に固定手段により固定され、被加工材に加工を施すダイが設けられたベース・ブロックとを備え、
前記固定手段は、前記溝に嵌入し前記溝に沿って移動可能に支持された係合部を備え、前記ベース・ブロックを前記胴の周面に固定し、
前記ベース・ブロックは、前記固定手段による固定解除時に、前記固定手段と一体的に前記溝に沿って移動可能であるとともに、前記溝と直交する方向に移動可能となるように前記胴に支持される
ことを特徴とするダイの固定装置。
【請求項2】
胴の周面を覆うように装着され、周面に胴軸方向または胴軸方向と直交する円周方向に互いに平行な複数の溝が設けられた胴カバー部材と、
前記胴カバー部材の周面に固定手段により固定され、被加工材に加工を施すダイが設けられたベース・ブロックとを備え、
前記固定手段は、前記溝に嵌入し前記溝に沿って移動可能に支持された係合部を備え、前記ベース・ブロックを前記胴カバー部材の周面に固定し、
前記ベース・ブロックは、前記固定手段による固定解除時に、前記固定手段と一体的に前記溝に沿って移動可能であるとともに、前記溝と直交する方向に移動可能となるように前記胴カバー部材に支持される
ことを特徴とするダイの固定装置。
【請求項3】
前記溝は段部により開口部が狭められており、
前記固定手段は前記係合部と前記ベース・ブロックによって前記段部を挟持することによって前記胴の周面に前記ベース・ブロックを固定する
ことを特徴とする請求項1または2記載のダイの固定装置。
【請求項4】
前記溝は段部により開口部が狭められており、
前記ベース・ブロックは前記溝が延在する方向の両端部に突設した留めフランジを備え、
前記固定手段は前記係合部に螺合する穴付きボルトを備え、
前記穴付きボルトを締め付けることにより前記穴付きボルトと前記係合部で前記留めフランジと前記段部を挟持し前記胴の周面に前記ベース・ブロックを固定する
ことを特徴とする請求項1または2記載のダイの固定装置。
【請求項5】
前記ベース・ブロックの両側に設けた留めフランジが、前記溝が延在する方向と直交する方向において互いに異なる位置に設けられている
ことを特徴とする請求項4記載のダイの固定装置。
【請求項6】
前記ベース・ブロックの前記溝が延在する方向の両端部に、表面が前記ベース・ブロックの表面と同一面をなし前記留めフランジおよび前記固定手段を覆う覆いフランジを前記溝の延在方向に突設し、
前記固定手段は、前記穴付きボルトと前記係合部とで前記留めフランジと前記段部を挟持する止め具からなり、
前記覆いフランジに、前記穴付きボルトを回動操作する操作孔を設けた
ことを特徴とする請求項4記載のダイの固定装置。
【請求項7】
前記溝は段部により開口部が狭められており、
前記固定手段は、前記ベース・ブロックに貫通形成したねじ孔に螺合する穴付きのクランプボルトであり、
前記クランプボルトの先端部に前記係合部を設け、前記係合部と前記ベース・ブロックで前記段部を挟持して前記胴の周面に前記ベース・ブロックを固定し、
前記ベース・ブロックのねじ孔に螺合する孔埋め部材を備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載のダイの固定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−254511(P2012−254511A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130199(P2011−130199)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000184735)株式会社小森コーポレーション (403)
【Fターム(参考)】