説明

ダイアダプタ及びシート押出成形装置

【課題】品質、生産性及び経済性などを向上させることができるダイアダプタ及びシート押出成形装置の提供を目的とする。
【解決手段】ダイアダプタ2は、押出機11とダイ3の間に着脱自在に連結され、アダプタ流路21を有し、樹脂流出口111と接続するアダプタ入口22の断面形状が、樹脂流出口111の断面形状と対応しており、ダイ入口32と接続するアダプタ出口23の断面形状が、ダイ入口32の断面形状と対応しており、アダプタ流路21の流れ方向の断面形状を、入口から出口に向かって、出口側の流路幅W>入口側の流路幅W´、出口側の流路厚さH<入口側の流路厚さH´とし、アダプタ入口22とアダプタ出口23の断面積を同じとした構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアダプタ及びシート押出成形装置に関し、特に、品質、生産性及び経済性などを向上させることができるダイアダプタ及びシート押出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂(適宜、樹脂と略称する。)からなるシートを製造する装置として、フラットダイを有するシート押出成形装置が使用されている。このフラットダイとして、Tダイ、フィッシュテイルダイ及びコートハンガーダイなどが挙げられる。
また、フラットダイは、シートの品質などに大きな影響を及ぼすことから、様々な技術が提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、加熱溶融した熱可塑性樹脂を各種の幅及び厚さのバンドに押出成形するTダイス(Tダイ)の技術が開示されている。
この技術は、加熱溶融した樹脂をTダイスに圧送する押出機の樹脂排出口に連通する受入口を有し、該受入口の奥側からフイッシュテイル状に樹脂の流れを拡張し、バンドの幅及び厚さ寸法とは関係なく、固定した寸法の矩形出口を有して全種バンドの成形に共用するマニホールドと、バンドの幅に適合する長辺とバンドの所定厚さに適合するように厚み調整機構によって両サイドプレート間を摺動する可動リップと固定リップとの隙間(短辺)から形成される樹脂排出口を有するリップ金具とを有し、マニホールドトリップ金具との間に、マニホールドの矩形出口と該樹脂排出口に連通するスリットを有し、該リップ金具を保持し、バンド幅変更時に該マニホールドに着脱可能で、該スリットが該マニホールドの矩形出口と該樹脂排出口の間をスムーズに結ばれた形状を成して溶融樹脂の滞留を防止する交換アダプタを配設したことを特徴としている。
【0004】
また、特許文献2には、樹脂溜めを持たないTダイを用いて溶融押出しすることを特徴とする溶融時に光学的異方性を示す液晶ポリマーからなるフィルムの製造方法の技術が開示されている。
この技術は、Tダイの樹脂が流れる方向に垂直な方向における樹脂流路の断面積が、上流から下流に向かって大きくならないこと、Tダイの形状がフィッシュテイル型であり、樹脂流路の形状が、成形されるフィルムの面と平行な面への投影図において樹脂流路が吐出部に向かって広くなってゆく部分の上流の端から下流へ向う2辺の成す角が130°以下であること、及び、樹脂吐出部分にそれぞれ独立して温度調節可能なヒーターが、樹脂の吐出部の樹脂流路の断面における長手方向に3ヶ所以上設置されていることといった特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−38790号公報
【特許文献2】特開2003−62890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、熱可塑性樹脂からなるシートの製造においては、薄膜化や高速加工性が要望されているものの、薄膜化や高速加工においては、耳切れ現象が問題となることが知られている。この耳切れ現象を防止するには、通常、溶融樹脂の温度を高くし、MFR(Melt flow rate)を高くするなどの対策が施される。
ただし、この対策は、フラットダイの流路の中央部において、溶融樹脂が流れやすくなり、樹脂の色換え作業において、両端の色抜けが悪くなる。このため、色換え時間が長くなることによって、生産性が低下し、また、色換え時間中に、多くの溶融樹脂が使用されることによって、経済性が低下するといった問題があった。
さらに、溶融樹脂の温度を上げると、ネックインも増大し製品品質にも悪影響を及ぼすといった問題があった。
【0007】
また、実際の製造現場では、一つのフラットダイは、種々の熱可塑性樹脂からなるシートの製造に用いられており、設計されたとおりの条件で用いられないことが多い。また、多種の商品を一つのラインで製造する為、汎用性を求められるのもその一因となった。このため、フラットダイは、溶融樹脂の流れを安定化させるために、通常、チョークバーや加熱手段を備えているが、品質、生産性及び経済性に優れた状態で、MFRなどの異なる特性を有する熱可塑性樹脂に容易に対応できる技術を確立することが要望されていた。
【0008】
なお、上記の特許文献1のTダイスの技術は、バンドを押出し成形するTダイスに関する技術であり、上記の問題や要望に応えることができない技術であった。また、上記の特許文献2の技術は、フィッシュテイルダイと対応する構造を有する技術であり、上記の要望に応えることができない技術であった。
【0009】
本発明は、以上のような問題などを解決するために提案されたものであり、品質、生産性及び経済性などを向上させることができるダイアダプタ及びシート押出成形装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のダイアダプタは、押出機とダイの間に着脱自在に連結されるダイアダプタであり、本体内部に樹脂の流路を有し、押出機の樹脂流出口と接続する流路の入口の断面形状が、押出機の樹脂流出口の断面形状と対応しており、ダイの樹脂流入口と接続する流路の出口の断面形状が、ダイの樹脂流入口の断面形状と対応しており、流路の流れ方向の断面形状を、入口から出口に向かって、出口側の流路幅W>入口側の流路幅W´、かつ、出口側の流路厚さH<入口側の流路厚さH´とし、さらに、流路の入口と出口の断面積を同じとした構成としてある。
【0011】
また、本発明のシート押出成形装置は、押出機とダイを有するシート押出成形装置であり、上記のダイアダプタを有する構成としてある。
【発明の効果】
【0012】
本発明のダイアダプタ及びシート押出成形装置によれば、品質を向上させることができるとともに、色換え時間が長くなることによって、生産性が低下し、また、色換え時間中に、多くの溶融樹脂を使用されることによって、経済性が低下するといった不具合を防止でき、品質、生産性及び経済性などを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態にかかるシート押出成形装置を説明するための概略正面図を示している。
【図2】図2は、本発明の第一実施形態にかかるダイアダプタなどを説明するための概略拡大図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は正面図を示している。
【図3】図3は、本発明の第一実施形態にかかるダイアダプタの効果を説明するための概略図であり、(a)は従来のTダイの流路の斜視図を示しており、(b)は比較図を示している。
【図4】図4は、本発明の第一実施形態にかかるダイアダプタなどの応用例を説明するための要部の概略平面図を示している。
【図5】図5は、本発明の第二実施形態にかかるシート押出成形装置のダイアダプタ及びダイを説明するための概略拡大図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は正面図を示している。
【図6】図6は、本発明の第三実施形態にかかるシート押出成形装置のダイアダプタ及びダイを説明するための概略拡大図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は正面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[ダイアダプタ及びシート押出成形装置の第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態にかかるシート押出成形装置を説明するための概略正面図を示している。
また、図2は、本発明の第一実施形態にかかるダイアダプタなどを説明するための概略拡大図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は正面図を示している。
図1、2において、本実施形態のシート押出成形装置1は、押出機11、ダイアダプタ2、及び、ダイ3などを有する構成としてある。このシート押出成形装置1は、熱可塑性樹脂からなるシート12を製造する。また、シート押出成形装置1は、図示してないが、つや付ロールユニット、ローラテーブル、耳切装置及び引取ロールなどを有してもよい。
なお、上記シート12の厚さは、特に限定されるものではなく、通常、3mm以下の厚さである。
【0015】
(ダイアダプタ)
ダイアダプタ2は、押出機1とダイ3の間に着脱自在に連結され、本体内部に樹脂の流路(以後、アダプタ流路21と呼称する。)を有している。
なお、図示してないが、押出機11の下流側の部分とダイアダプタ2の上流側の部分は、通常、フランジなどを介して螺着されており、また、ダイアダプタ2の下流側の部分とダイ3の上流側の部分は、通常、フランジなどを介して螺着されている。また、上記の上流側及び下流側は、溶融樹脂の流れ方向に対する上流側及び下流側といった意味である。
また、ダイアダプタ2及びダイ3は、通常、上下二つ割り構造を有しており、分解可能に螺着されている。
【0016】
上記のアダプタ流路21は、上流側に、押出機11の樹脂流出口111と接続する入口(以後、アダプタ入口22と呼称する。)を有しており、このアダプタ入口22の断面形状が、押出機11の樹脂流出口111の断面形状と対応している。また、アダプタ流路21は、下流側に、ダイ3の樹脂流入口(以後、ダイ入口32と呼称する。)と接続する出口(以後、アダプタ出口23と呼称する。)を有しており、このアダプタ出口23の断面形状が、ダイ3のダイ入口32の断面形状と対応している。
また、アダプタ流路21の流れ方向の断面形状を、アダプタ入口22からアダプタ出口23に向かって、出口側の流路幅W>入口側の流路幅W´、かつ、出口側の流路厚さH<入口側の流路厚さH´とし、さらに、アダプタ流路21のアダプタ入口22とアダプタ出口23の断面積を同じとしてある。
なお、上記の断面形状とは、溶融樹脂の流れ方向に対して垂直な仮想断面における形状をいう。また、樹脂流出口111の断面形状と対応するとは、樹脂流出口111の断面形状とほぼ同じ断面形状を有するといった意味である。また、ダイ入口32の断面形状と対応するとは、ダイ入口32の断面形状とほぼ同じ断面形状を有するといった意味である。
【0017】
本実施形態では、樹脂流出口111の断面形状が直径dの円形としてあるので、アダプタ流路21のアダプタ入口22の断面形状は、直径dの円形としてある。
また、アダプタ流路21は、アダプタ入口22から下流側の任意の位置、たとえば、A−Aの仮想線の位置において、ほぼ矩形状あるいは長円状の断面形状を有しており、流路幅がW21であり、流路厚さがH21である。
ここで、アダプタ流路21の断面形状は、円形から、下流側に行くほど徐々に、ほぼ矩形状あるいは長円状の断面形状に推移する。また、アダプタ流路21のアダプタ出口23の断面形状は、ほぼ矩形状あるいは長円状としてあり、流路幅がW23であり、流路厚さがH23である。
【0018】
そして、上記の各寸法は、d<W21<W23であり、かつd>H21>H23である。また、アダプタ入口22の断面積(=πd/4)とアダプタ出口23の断面積(≒W23×H23)とを同じとしてある。
また、アダプタ流路21の幅方向の両縁部は、上方から見ると、下流側ほど幅広となる直線状に形成され、厚さ方向の両縁部は、正面から見ると、下流側ほど薄くなる直線状に形成されている。これにより、アダプタ流路21は、ダイ3に供給する溶融樹脂を予め薄く伸ばすことができ、また、溶融樹脂が滞留するといった不具合を防止することができる。
なお、アダプタ流路21は、角部などにおいては、滑らかな曲面となるように形成されている。
【0019】
ここで、好ましくは、アダプタ出口23の流路幅が、後述するダイ3の樹脂流出口(以後、ダイ出口33と呼称する。)の流路幅の40〜70%であるとよく、さらに好ましくは、50〜60%であるとよい。このようにすると、ダイ3に供給する溶融樹脂を予め薄く伸ばすことができるとともに、ダイアダプタ2が大型化するといった不具合を防止することができる。
なお、アダプタ出口23の流路幅が、ダイ出口33の流路幅の40%未満であると、ダイ3に供給する溶融樹脂を予め薄く伸ばすといった効果を有効に発揮することができないからである。また、アダプタ出口23の流路幅が、ダイ出口33の流路幅の70%を超えると、ダイ3に対してダイアダプタ2が大型化し、交換性などが低下するからである。
【0020】
また、好ましくは、図示してないが、アダプタ流路21の流れ方向の断面積がほぼ同じであるとよい。すなわち、πd/4≒W21×H21≒W23×H23の関係を維持するように、アダプタ流路21を形成するとよい。これにより、溶融樹脂の流れ方向に沿った流速を同じにすることができ、流れの安定化を図ることができる。したがって、耳切れ現象などを効果的に防止でき品質を向上させることができる。
【0021】
また、流れの安定化は、フィルム(シート12)の製膜安定性に大きな影響を及ぼすことから、生産性を向上させるために引取りスピードを速くする場合に、重要となる。すなわち、引取りスピードを速くするために、溶融樹脂の温度を高くしMFRを高くすると、抵抗の少ない流路の中央を溶融樹脂が流れやすくなる。
ここで、図3(a)に示すように、従来のTダイのマニホールドの上流側の流路(適宜、上流側流路と略称する。)の断面積Sが、S=πd/4(≒W21×H21≒W23×H23)であると、この上流側流路の平均流速は、アダプタ流路21の平均流速と同じである。ただし、図3(b)に示すように、アダプタ流路21は、従来のTダイの上流側流路と比べると、平べったい断面形状を有しているので、壁面近傍と中央部との流速差(流速ベクトルの差)が小さくなり、流れの安定化を図ることができ、耳切れ現象やネックインを効果的に抑制でき、さらに、壁面での焼けを減少させることができる。
【0022】
さらに、好ましくは、ダイアダプタ2は、幅方向に複数のヒータ24が配設されているとよい。本実施形態では、アダプタ流路21の幅方向の両縁部に沿って二つのヒータ24と、中央に流れ方向に沿って一つのヒータ24を配設してある。また、各ヒータ24は、それぞれ温度制御される構成としてあるので、溶融樹脂の流れを安定化させることができる。すなわち、たとえば、アダプタ流路21の幅方向の両縁部及びその付近を通る溶融樹脂の温度を高めることができ、耳切れ現象を防止することができる。また、中央部を通る溶融樹脂の温度を低めに制御することができる。これにより、両縁部において溶融樹脂が流れやすくなり、樹脂の色換え作業において、両端の色抜けが悪くなることを防止することができる。したがって、色換え時間が長くなることによって、生産性が低下し、また、色換え時間中に、多くの溶融樹脂が使用されることによって、経済性が低下するといった不具合を回避することができる。
【0023】
なお、ヒータ24の本数、形状及び構造などは、特に限定されるものではない。たとえば、ヒータ24としてプレートヒータやアルミ鋳込みヒータを用いる場合、これらのヒータは、ダイアダプタ2の上面及び下面に螺着される。また、ヒータ24としてカートリッジヒータを用いる場合、これらのヒータは、ダイアダプタ2の上部及び下部に埋設される。
また、ダイアダプタ2は、図示してないが、アダプタ入口22の断面形状をほぼ矩形状とすることによって、フィードブロック法にも適用することができる。この場合、ダイアダプタ2は、上下二つ割りの界面にセラミックコーティングを施してもよく、このようにすると、アダプタ流路21内の上側と下側とで温度差(表裏温度差とも呼ばれる。)を効率よく発生させることができ、共押出の製膜コントロールを行いやすくなる。
【0024】
(ダイ)
ダイ3は、上述したように、ダイアダプタ2と着脱可能に連結され、アダプタ流路21と連通する樹脂流路(以後、ダイ流路31と呼称する。)を有している。このダイ流路31は、流れ方向の断面形状を、ダイ入口32からダイ出口33に向かって、出口側の流路幅を入口側の流路幅より広くし、かつ、出口側の流路厚さを入口側の流路厚さより薄くしてある。
【0025】
本実施形態では、ダイ入口32は、アダプタ出口23と滑らかにつながっているので、ダイ入口32の断面形状を、アダプタ出口23の断面形状とほぼ同じにしてある。すなわち、ダイ流路31のダイ入口32の断面形状は、ほぼ矩形状あるいは長円状としてあり、流路幅がW23であり、流路厚さがH23である。また、ダイ流路31のダイ出口33の断面形状は、ほぼ矩形状あるいは長円状としてあり、流路幅がW33であり、流路厚さがH33である。
そして、上記の各寸法は、W23<W33であり、かつH23>H33である。また、ダイ流路31の幅方向の両縁部は、上方から見ると、下流側ほど幅広となる直線状に形成され、厚さ方向の両縁部は、正面から見ると、下流側ほど薄くなる直線状に形成されている。これにより、ダイ流路31は、ダイアダプタ2から供給された溶融樹脂をさらに薄く伸ばすことができ、また、溶融樹脂が滞留するといった不具合を防止することができる。
なお、ダイ流路31は、角部などにおいては、滑らかな曲面となるように形成されている。また、図示してないが、ダイ流路31の流れ方向の断面積が同じになるように、ダイ流路31を形成してもよい。さらに、図示してないが、ダイ出口33の先端に、リップ部を有していてもよい。
【0026】
ここで、好ましくは、ダイ流路31の平面形状が、等脚台形状であるとよい。このようにすると、ダイ流路31の幅方向の両縁部において、溶融樹脂が滞留するといった不具合を効果的に防止することができる。
また、ダイ3は、図示してないが、チョークバー及び/又は幅方向に複数のヒータを有する構成としてもよい。なお、従来のダイは、チョークバー及び/又は幅方向に複数のヒータを有するものもあり、このことは周知の技術であるが、本実施形態においては、ダイアダプタ2が予め溶融樹脂の流れを安定化させることにより、シート12の品質や生産性などをさらに向上させることができる。
【0027】
また、ダイアダプタ2及びダイ3は、上述したように、アダプタ流路21及びダイ流路31において、下流側の流路幅を上流側の流路幅より広くし、かつ、下流側の流路厚さを上流側の流路厚さより薄くしてある。これにより、溶融樹脂が滞留するといった不具合を防止することができる。また、ダイアダプタ2が、ダイ3に供給する溶融樹脂を予め薄く伸ばすとともに、予め流れを安定化させることによって、ダイ流路31における溶融樹脂の流れを安定化させることができる。したがって、耳切れ現象が発生するといった不具合を防止することができ、かつ、色換え作業における生産性や経済性を向上させることができる。また、溶融樹脂の流れを安定化させることによって、加工速度を速くすることもでき、これによっても生産性を向上させることができる。
なお、本実施形態のダイアダプタ2は、様々な応用例を有している。
次に、これらの応用例について、図面を参照して説明する。
【0028】
図4は、本発明の第一実施形態にかかるダイアダプタなどの応用例を説明するための要部の概略平面図を示している。
図4(a)において、第一応用例のダイアダプタは、上述したダイアダプタ2と比べると、アダプタ流路211の幅方向の両縁部の形状が異なる点などが相違する。なお、本応用例の他の構成は、ダイアダプタ2とほぼ同様としてある。また、図中の破線は、正面から見た厚さ方向の両縁部の形状を示している。
すなわち、上記のアダプタ流路21及びダイ流路31は、幅方向の両縁部が、上方から見ると、下流側ほど幅広となる直線状に形成されているのに対し(図2参照)、本応用例のアダプタ流路211及びダイ流路311は、幅方向の両縁部が、中央側に向かって湾曲した形状に形成されている。
このようにしても、ダイアダプタ2とほぼ同様の効果を奏することができる。
【0029】
図4(b)において、第二応用例のダイアダプタは、上述したダイアダプタ2と比べると、アダプタ流路212の幅方向の両縁部の形状が異なる点などが相違する。なお、本応用例の他の構成は、ダイアダプタ2とほぼ同様としてある。また、図中の破線は、正面から見た厚さ方向の両縁部の形状を示している。
すなわち、上記のアダプタ流路21及びダイ流路31に対し(図2参照)、本応用例のアダプタ流路212及びダイ流路312は、幅方向の両縁部が、外側に向かって湾曲した形状に形成されている。
このようにしても、ダイアダプタ2とほぼ同様の効果を奏することができる。
【0030】
図4(c)において、第三応用例のダイアダプタは、上述したダイアダプタ2と比べると、アダプタ流路213の幅方向の両縁部の形状が異なる点、及び、アダプタ流路214を有している点などが相違する。なお、本応用例の他の構成は、ダイアダプタ2とほぼ同様としてある。また、図中の破線は、正面から見た厚さ方向の両縁部の形状を示している。
すなわち、本応用例のダイアダプタにおいて、上流側のアダプタ流路214は、幅方向の両縁部の距離が、樹脂流出口111のそれとほぼ同じであり、また、下流側のアダプタ流路213は、幅方向の両縁部どうしの角度が、ダイ流路31のそれより大きくなっている。
このようにしても、ダイアダプタ2とほぼ同様の効果を奏することができる。
なお、本実施形態のアダプタ流路21及びダイ流路31の形状は、上記の各応用例などに限定されるものではなく、様々な形状でもよい。
【0031】
次に、上記構成のシート押出成形装置1及びダイアダプタ2の動作などについて説明する。
まず、シート押出成形装置1は、押出機11が、ポリエチレンなどの溶融樹脂を樹脂流出口111からダイアダプタ2のアダプタ入口22に押し出す。次に、ダイアダプタ2において、アダプタ入口22に供給された溶融樹脂は、アダプタ流路21の内部を下流側に流れ、アダプタ出口23に到達する。この際、溶融樹脂は、アダプタ流路21によって予め薄く伸ばされるとともに、幅方向に配設された複数のヒータ24によって、流れが制御され安定化させられる。
【0032】
次に、ダイ3において、ダイ入口32に供給された溶融樹脂は、ダイ流路31の内部を下流側に流れ、続いて、ダイ出口33から押し出され、シート12が製造される。この際、ダイ3は、ダイアダプタ2によって、予め薄く伸ばされるとともに、流れの安定した溶融樹脂が供給されるので、耳切れ現象などの発生が抑制され、品質を向上させることができる。また、アダプタ流路21及びダイ流路31は、溶融樹脂の溜まりが発生しない構造となっているので、樹脂の色換え作業において、溶融樹脂の溜まりによって、両端の色抜けが悪くなり、色換え時間が長くなるといった不具合を回避することができる。さらに、色換えする際、両端の色抜けが悪い場合には、両縁部のヒータ24の温度を高めることにより、両端の色抜けを好適に行うことができる。したがって、生産性を向上させることができ、また、色換え時間中に、多くの溶融樹脂が使用されることを回避し、経済性を向上させることができる。
【0033】
また、シート押出成形装置1は、共用されるダイ3と、アダプタ流路21の形状などが異なる二以上のダイアダプタ2とが用意され、樹脂の種類に応じて、二以上のダイアダプタ2のいずれか一つが使用されてもよい。このようにすると、種々の熱可塑性樹脂からなるシート12や、当初の設計(ダイの設計)条件から異なるシート12を製造する場合であっても、ダイアダプタ2を交換することによって、溶融樹脂の流れを安定化させることができるので、品質、生産性及び経済性に優れた状態で、MFRなどの異なる熱可塑性樹脂に容易に対応することができる。
なお、シート押出成形装置1は、上記に限定されるものではなく、たとえば、共用されるダイアダプタ2と、ダイ流路31の形状などが異なる二以上のダイ3とが用意され、樹脂の種類などに応じて、二以上のダイ3のいずれか一つが使用されてもよい。
また、色の異なる樹脂は、樹脂の種類が異なるものとする。
【0034】
以上説明したように、本実施形態のダイアダプタ2及びシート押出成形装置1によれば、品質、生産性及び経済性などを向上させることができる。
なお、アダプタ流路21及びダイ流路31の形状は、ほぼフィッシュテイルダイの流路形状と対応しているが、本発明は、これに限定されるものではない。
次に、他の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0035】
[シート押出成形装置の第二実施形態]
図5は、本発明の第二実施形態にかかるシート押出成形装置のダイアダプタ及びダイを説明するための概略拡大図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は正面図を示している。
本実施形態のシート押出成形装置は、上述した第一実施形態のシート押出成形装置1と比べると、ダイアダプタ2aを有する点、及び、ダイ3aがTダイのマニホールドにほぼ対応するダイ出口33aを有する点などが相違する。なお、本実施形態の他の構成は、シート押出成形装置1とほぼ同様としてある。
したがって、図5において、図2と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0036】
(ダイアダプタ)
ダイアダプタ2aは、アダプタ流路21aの幅方向の両縁部の角度が、ダイアダプタ2のそれより小さくなっており、その他の構成については、ダイアダプタ2とほぼ同様としてある。
なお、ダイアダプタ2aの各部の寸法においても、第一実施形態とほぼ同様に、d<W21a<W23aであり、かつd>H21a>H23aである。
【0037】
(ダイ)
ダイ3aは、ダイ流路31aとして、ダイ入口32a及びダイ出口33aを有しており、さらに、ダイ出口33aの先端にリップ部34aを有している。
ダイ入口32aは、アダプタ出口23aと滑らかにつながっているので、ダイ入口32aの断面形状は、アダプタ出口23aの断面形状とほぼ同じとしてある。すなわち、ダイ流路31aのダイ入口32aの断面形状は、ほぼ矩形状あるいは長円状としてあり、流路幅がW23aであり、流路厚さがH23aである。また、ダイ流路31aのダイ出口33aの断面形状は、ほぼ矩形状あるいは長円状としてあり、流路幅がW33aであり、流路厚さがH33aである。また、リップ部34aの断面形状は、ほぼ矩形状あるいは長円状としてあり、流路幅がW34aであり、流路厚さがH34aである。
そして、上記の各寸法は、W23a<W33a=W34aであり、かつH23a>H33a>H34aである。
【0038】
ここで、H34aは、シート12の厚さtとほぼ同じであり、H33aは、通常、H34aの数倍〜数十倍である。すなわち、ダイ出口33aは、リップ部34aとの関係において、厚さ方向の樹脂溜まりとなる。また、ダイ出口33aは、下流側の断面形状が半円形状(図5(b)参照)であり、いわゆるTダイのマニホールドとして機能する。
また、ダイ3aのダイ流路31aは、流れ方向の断面形状を、ダイ入口32aからダイ出口33aに向かって、出口側の流路幅を入口側の流路幅より広くし、かつ、出口側の流路厚さを入口側の流路厚さより薄くしてあり、両縁部が、上方から見ると、滑らかに湾曲した形状を有している。これにより、薄く伸ばさせた状態でダイ出口33aに供給された溶融樹脂が、ダイ流路31aの幅方向において、滞留するといった不具合を効果的に防止することができる。
【0039】
また、ダイ3aが、リップ部34aにチョークバー及び/又は幅方向に複数のヒータを有する場合であっても、ダイアダプタ2a及びダイ流路31aによって、ダイ出口33aに供給される溶融樹脂の流れを安定化させることができるので、シート12の品質や生産性などをさらに向上させることができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態のシート押出成形装置によれば、第一実施形態のシート押出成形装置1とほぼ同様の効果を奏するとともに、ダイ3aが、いわゆるTダイのマニホールドとして機能するダイ出口33aを有する場合であっても、有効に適用することができる。
【0041】
[シート押出成形装置の第三実施形態]
図6は、本発明の第三実施形態にかかるシート押出成形装置のダイアダプタ及びダイを説明するための概略拡大図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は正面図を示している。
本実施形態のシート押出成形装置は、上述した第一実施形態のシート押出成形装置1と比べると、ダイアダプタ2bを有する点、及び、ダイ3bがコートハンガーダイのマニホールドにほぼ対応するダイ出口33bを有する点などが相違する。なお、本実施形態の他の構成は、シート押出成形装置1とほぼ同様としてある。
したがって、図6において、図2と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0042】
(ダイアダプタ)
ダイアダプタ2bは、アダプタ流路21bの幅方向の両縁部の角度が、ダイアダプタ2のそれより小さくなっており、その他の構成については、ダイアダプタ2とほぼ同様としてある。
なお、ダイアダプタ2bの各部の寸法においても、第一実施形態とほぼ同様に、d<W21b<W23bであり、かつd>H21b>H23bである。
【0043】
(ダイ)
ダイ3bは、ダイ流路31bとして、ダイ入口32b及びダイ出口33bを有しており、さらに、ダイ出口33bの先端にリップ部34bを有している。
ダイ入口32bは、アダプタ出口23bと滑らかにつながっているので、ダイ入口32bの断面形状は、アダプタ出口23bの断面形状とほぼ同じとしてある。すなわち、ダイ流路31bのダイ入口32bの断面形状は、ほぼ矩形状あるいは長円状としてあり、流路幅がW23bであり、流路厚さがH23bである。また、ダイ流路31bのダイ出口33bの断面形状は、ほぼ矩形状あるいは長円状としてあり、流路幅がW33bであり、流路厚さがH33bである。また、リップ部34bの断面形状は、ほぼ矩形状あるいは長円状としてあり、流路幅がW34bであり、流路厚さがH34bである。
そして、上記の各寸法は、W23b<W33b=W34bであり、かつH23b>H33b>H34bである。
【0044】
ここで、H34bは、シート12の厚さtとほぼ同じであり、H33bは、通常、H34bの数倍〜数十倍である。すなわち、ダイ出口33bは、リップ部34bとの関係において、厚さ方向の樹脂溜まりとなる。また、ダイ出口33bは、下流側の断面形状が半円形状(図6(b)参照)であり、いわゆるコートハンガーダイのマニホールドとして機能する。
また、ダイ3bのダイ流路31bは、流れ方向の断面形状を、ダイ入口32bからダイ出口33bに向かって、出口側の流路幅を入口側の流路幅より広くし、かつ、出口側の流路厚さを入口側の流路厚さより薄くしてあり、また、上方から見ると、ほぼコートハンガーの形状を有している。これにより、薄く伸ばさせた状態でダイ出口33bに供給された溶融樹脂が、ダイ流路31bの幅方向において、滞留するといった不具合を効果的に防止することができる。
【0045】
また、ダイ3bが、リップ部34bにチョークバー及び/又は幅方向に複数のヒータを有する場合であっても、ダイアダプタ2b及びダイ流路31bによって、ダイ出口33bに供給される溶融樹脂の流れを安定化させることができるので、シート12の品質や生産性などをさらに向上させることができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態のシート押出成形装置によれば、第一実施形態のシート押出成形装置1とほぼ同様の効果を奏するとともに、ダイ3bが、いわゆるコートハンガーダイのマニホールドとして機能するダイ出口33bを有する場合であっても、有効に適用することができる。
【0047】
以上、本発明のダイアダプタ及びシート押出成形装置について、好ましい実施形態などを示して説明したが、本発明に係るダイアダプタ及びシート押出成形装置は、上述した実施形態などにのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、ダイアダプタ2、2a、2bに、チョークバー(図示せず)を設けてもよい。このようにすると、幅方向における溶融樹脂の流れをさらに精度良く制御することができる。
また、図示してないが、ダイ3aを、マルチマニホールドダイとしての機能を有する構成とし、ダイアダプタ2aが、複数のマニホールド(ダイ出口33a)に対応する複数のアダプタ流路21aを有する構成としてもよい。このようにすると、多層シートにも適用することができる。
【0048】
また、アダプタ流路21、21a、21bの断面形状は、ほぼ矩形状あるいは長円状としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、幅方向の中央部が、緩やかに窪んだほぼ矩形状あるいは長円状としてもよい。このようにすると、幅方向の中央部を流れる溶融樹脂を効果的に低減することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 シート押出成形装置
2、2a、2b ダイアダプタ
3、3a、3b ダイ
11 押出機
12 シート
21、21a、21b、211、212、213、214 アダプタ流路
22、22a、22b アダプタ入口
23、23a、23b アダプタ出口
24 ヒータ
31、31a、31b、311、312 ダイ流路
32、32a、32b ダイ入口
33、33a、33b ダイ出口
34a、34b リップ部
111 樹脂流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機とダイの間に着脱自在に連結されるダイアダプタであって、
本体内部に樹脂の流路を有し、
前記押出機の樹脂流出口と接続する前記流路の入口の断面形状が、前記押出機の樹脂流出口の断面形状と対応しており、前記ダイの樹脂流入口と接続する前記流路の出口の断面形状が、前記ダイの樹脂流入口の断面形状と対応しており、
前記流路の流れ方向の断面形状を、前記入口から前記出口に向かって、出口側の流路幅W>入口側の流路幅W´、かつ、出口側の流路厚さH<入口側の流路厚さH´とし、さらに、前記流路の入口と出口の断面積を同じとしたことを特徴とするダイアダプタ。
【請求項2】
前記ダイアダプタの出口の流路幅が、前記ダイの樹脂流出口の流路幅の40〜70%であることを特徴とする請求項1に記載のダイアダプタ。
【請求項3】
幅方向に複数のヒータが配設されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のダイアダプタ。
【請求項4】
前記流路の流れ方向の断面積が同じであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のダイアダプタ。
【請求項5】
押出機とダイを有するシート押出成形装置において、
上記請求項1〜4のいずれか一項に記載のダイアダプタを有することを特徴とするシート押出成形装置。
【請求項6】
前記押出機が、樹脂の色換えを行うことを特徴とする請求項5に記載のシート押出成形装置。
【請求項7】
前記ダイの樹脂流路の流れ方向の断面形状を、前記樹脂流入口から前記樹脂流出口に向かって、出口側の流路幅を入口側の流路幅より広くし、かつ、出口側の流路厚さを入口側の流路厚さより薄くしたことを特徴とする請求項5又は6に記載のシート押出成形装置。
【請求項8】
前記ダイの樹脂流路の平面形状が、等脚台形状であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のシート押出成形装置。
【請求項9】
前記流路の形状が異なる二以上の前記ダイアダプタが用意され、樹脂の種類に応じて、前記二以上のダイアダプタのいずれか一つが使用されることを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載のシート押出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−103367(P2013−103367A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247235(P2011−247235)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】