説明

ダイオードミキサ回路

【課題】DCまでの低周波となるドップラー復調信号を扱う場合でも、小さな局部発振信号電力で動作させる。
【解決手段】周波数変換用の第1ダイオードD1 及び第2ダイオードD2 を有し、入力端子1から局部発振信号を入力し、かつ入力端子2から高周波信号を入力し、出力端子3からドップラー復調信号を出力するダイオードミキサで、ノードAとノードBの間に、定電流回路として機能させる第3ダイオードD3 及び第4ダイオードD4を直列に接続し、これにより、外部正電圧源6に基づいて一定のバイアス電圧をダイオードD1 ,D2 へ印加する。上記4つのダイオードD1 〜D4 は、同一の半導体チップ上に形成して同一の特性を持つようにする。また、局部発振信号及び高周波信号に対して短絡となる容量のコンデンサC1 ,C2 を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイオードミキサ回路、特に高周波帯で使用されるセンサやレーダ等の受信機等に用いられ、復調信号の周波数がDCまで動作するダイオードミキサ回路の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
図5には、従来の電磁波を用いた無線ドップラーセンサの構成が示されており、このドップラーセンサでは、発振器11にて発生したマイクロ波が分配器12で分配され、一方のマイクロ波はアンテナ13から送信され、他方のマイクロ波は受信ミキサ14に局部発振信号として入力される。そして、対象物によりドップラーシフトされた反射波は、アンテナ15にて受信され、ミキサ14に高周波信号として入力される。このミキサ14では、局部発振信号により高周波信号がダウンコンバートされ、ドップラー復調信号が出力端子16より出力される。一般に、ドップラー復調信号は数kHz以下の低周波であり、ドップラーセンサに用いられる受信ミキサでは、DC(0Hz)までの周波数で動作することが要求される。
【0003】
図6には、従来のダイオードミキサ(高周波ミキサ)回路の構成が示されており、このミキサ(受信ミキサ)は、ハイブリッド結合器とダイオードで構成されたダイオードミキサである。このダイオードミキサでは、局部発振信号(Lo)入力端子1と高周波信号(RF)入力端子2の間をアイソレートするハイブリッド結合器5を介して2つのダイオードD1 、D2 が直列接続され、この2つのダイオードD1 、D2 の間に、ドップラー復調信号出力端子3が設けられる。なお、L1 ,L2 は整合素子、C3 はコンデンサである。
【0004】
このようなダイオードミキサ回路によれば、入力端子1から局部発振信号が入力され、かつ入力端子2から高周波信号が入力され、これら局部発振信号と高周波信号がダイオードD1 、D2 で周波数混合されることで、ドップラー復調信号が出力端子3から出力される。
【0005】
上記ダイオードD1 、D2 としては、電流−電圧特性の立ち上がりが急峻なGaAsダイオードが用いられることが多いが、このGaAsダイオードは一般に順方向電圧が高いため、ダイオードD1 、D2 をオン状態にしてミキサとして動作させるためには大きな局部発振信号電力が必要になる。
【0006】
図7には、下記特許文献1の高周波ミキサの構成が示されており、このミキサは、小さい局部発振信号電力で動作することができるものである。図7では、高周波信号入力端子1と局部発振信号入力端子2の間に、ラットレース型ハイブリッドのアイソレーション18の端子がコンデンサC11,C12を介して接続され、このアイソレーション18の他の2つの端子と高周波短絡用の先端開放線路19との間に、逆極性で2個のダイオードD11、D12が接続される。このダイオードD11と先端開放線路19との間には、DC阻止コンデンサC13、DCリターン20が挿入され、上記先端開放線路19に接続したIF・DC分波器21を介して中間周波数信号(IF)出力端子3及びバイアス端子4が接続される。なお、22はIFリターンである。このミキサによれば、ダイオードD11、D12に順方向のバイアスをかけることにより、小さい局部発振信号電力で動作することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−219712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の図6のダイオードミキサ回路では、上述のように、大きな局部発振信号電力が必要になるという問題がある。即ち、図8には、局部発振信号電力に対する変換損失の関係が示されており、この図8の特性線60から分かるように、局部発振信号電力が十分に大きい場合はよいが、低下して不足する場合には、高周波ミキサの変換損失が急激に悪化し、変換効率が低下するという不都合がある。この変換損失においては、局部発振信号電力に対する依存度が高く、この変換損失を悪化させないためには、小さい局部発振信号電力でも動作可能にすることが好ましい。
【0009】
一方、小さい局部発振信号電力で動作させるミキサとして、図7で説明した特許文献1の構成が存在する。しかし、図5のように、ドップラーセンサ回路を構成する場合、ドップラー復調信号の周波数はDCまでの低い周波数となるため、図7のミキサの場合、DC阻止コンデンサC13やDCリターン20の定数を理論上無限大とする必要があり、実際には不可能となる。
【0010】
また、同様の理由により、DC−IF分波器21も構成することが不可能となるため、外部バイアス回路の持つインピーダンスが変換損失特性に影響を与えることになる。例えば、DC−IF分波器21を用いず、バイアス電圧を抵抗を介して与えた場合、この抵抗によってドップラー復調信号が吸収されて減衰するという不都合がある。逆に、抵抗を用いず直接バイアスをかけた場合は、ダイオードD11,D12の電圧−電流特性は順方向電圧付近で大きく変化するため、この順方向電圧が半導体(ダイオード)製造のバラツキや温度特性により変わる場合にはバイアス電流が大きく変化してしまうという不都合がある。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、DCまでの低周波となるドップラー復調信号を扱う場合でも、小さな局部発振信号電力で動作させることができ、またドップラー復調信号を減衰させることなく、ダイオードの製造バラツキや温度変化がある場合でも、安定した動作を確保することが可能となるダイオードミキサ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、周波数変換用ダイオードにより高周波に対する周波数変換を行うダイオードミキサ回路において、バイアス電圧源としての外部正電圧源と、定電圧回路を有し、上記外部正電圧源に基づき一定のバイアス電圧を上記周波数変換用ダイオードに印加するバイアス回路と、を設けたことを特徴とする。
請求項2の発明は、上記バイアス回路では、上記周波数変換用ダイオードと同一特性からなり、上記周波数変換用ダイオードに並列に接続されたバイアス用ダイオードを定電圧回路として設け、このバイアス用ダイオードの定電圧特性を用いて一定のバイアス電圧を供給することを特徴とする。
請求項3の発明は、上記バイアス回路では、上記周波数変換用ダイオードと同一特性からなり、上記外部正電圧源の電圧を基準電圧に変換するバイアス電圧設定用ダイオードと、このバイアス電圧設定用ダイオードで得られた基準電圧と同一かつ一定のバイアス電圧を上記周波数変換用ダイオードへ印加する定電圧回路とからなることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3の発明における上記バイアス回路では、上記バイアス電圧設定用ダイオードと共に基準電圧を設定するためのサーミスタを設け、このサーミスタにより温度変化に応じたバイアス電流を供給することを特徴とする。
【0013】
上記請求項1の構成によれば、バイアス回路により一定のバイアス電圧が周波数変換用ダイオードへ与えられるので、小さな局部発振信号電力で周波数変換の動作が行われる。また、定電圧回路により、周波数変換用ダイオードに対するバイアス回路の接続点(例えば第1ダイオードの陽極側及び第2ダイオードの陰極側)を、ドップラー復調信号の周波数に対して短絡の状態にすることで、変換損失の悪化を防止することができる。
請求項2の構成によれば、バイアス回路の定電圧回路としてバイアス用ダイオードを用い、このバイアス用ダイオードの定電圧特性によって一定のバイアス電圧が与えられることになり、また周波数変換用ダイオードとバイアス用ダイオードが同一特性で(例えば、同一基板に同一のプロセスで製作する)、全て同じ順方向電圧を持つので、例えば温度変化があった場合には、その変化に応じてバイアス電圧が変化することで、安定したバイアス電流が周波数変換用ダイオードへ与えられる。
【0014】
請求項3の構成によれば、バイアス回路を構成する定電圧回路(例えばボルテージフォロワ回路)により、バイアス電圧設定用ダイオードで得られた基準電圧と同一かつ一定のバイアス電圧が周波数変換用ダイオードへ与えられることで、小さな局部発振信号電力で周波数変換の動作が行われる。また、定電圧回路により、周波数変換用ダイオードへのバイアス回路の接続点を、ドップラー復調信号の周波数に対して短絡の状態にすることで、変換損失の悪化を防止することができる。更に、この場合も、バイアス電圧設定用ダイオードを周波数変換用ダイオードと同一特性にすることで、安定したバイアス電流の下に周波数変換が実行される。
【0015】
請求項4の構成によれば、バイアス回路に設けられたサーミスタにより、温度変化に応じたバイアス電流(温度上昇に伴って増加するバイアス電流)が供給され、温度上昇に伴って局部発振信号電力が低下する場合でも、その低下を補償するように動作させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のダイオードミキサ回路によれば、DCまでの低周波となるドップラー復調信号を扱う場合でも、小さな局部発振信号電力で動作させることができ、ミキサ回路の変換損失を悪化させることもないという効果がある。
【0017】
また、バイアス回路にダイオードを用いることにより、抵抗を介してバイアスを与える場合のようにドップラー復調信号を減衰させることもなく、しかも周波数変換用ダイオードと同一特性のダイオードを用いることで、温度変化がある場合でも、安定した動作が確保できることになる。即ち、上述のように、周波数変換用としてのダイオードには、順方向電圧付近で大きく変化する電圧−電流特性があるため、この順方向電圧が変化した場合はバイアス電流が大きく変化するが、同一特性のバイアス用ダイオードを用いることで安定したバイアス電流を供給することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、温度が上昇して局部発振信号電力が低下する場合でも、その低下を補償した安定した動作が確保できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施例に係るダイオードミキサ回路の構成を示す回路図である。
【図2】第1実施例における局部発振信号電力に対する第1ダイオードの陽極−陰極間電圧の変化を示すグラフ図である。
【図3】第1実施例における局部発振信号電力に対する変換損失の変化(変換損失特性)を示すグラフ図である。
【図4】第2実施例に係るダイオードミキサ回路の構成を示す回路図である。
【図5】電磁波を用いた従来の無線ドップラーセンサの構成を示す回路図である。
【図6】従来のダイオードミキサ回路の構成を示す図である。
【図7】従来の高周波ミキサの構成を示す回路図である。
【図8】従来のダイオードミキサ回路の変換損失特性を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、本発明の第1実施例に係るダイオードミキサ回路(シングルバランスドミキサ)の構成が示されており、この第1実施例は、局部発振信号(Lo)入力端子1と高周波信号(RF)入力端子2の間に、90°ハイブリッド結合器5が設けられ、この90°ハイブリッド結合器5に、ショットキーバリアダイオードからなる周波数変換用の第1ダイオードD1 及び第2ダイオードD2 が接続される。即ち、90°ハイブリッド結合器5のINポートに局部発振信号入力端子1、ISOポートに高周波信号入力端子2、90°ポートに第1ダイオードD1 の陽極端子、0°ポートに第2ダイオードD2 の陰極端子が接続される。
【0021】
上記第1ダイオードD1 の陰極端子と第2ダイオードD2 の陽極端子は互いに接続され、この接続点にドップラー復調信号出力端子3が配置されると共に、このダイオードD1 ,D2 の接続点と接地の間にコンデンサC3 が配置される。また、上記第1ダイオードD1 の陽極端子には、整合素子L1 の一方端が接続され、この整合素子L1 の他端と接地(GND)の間に、局部発振信号及び高周波信号に対して短絡となる容量のコンデンサC1 が接続される。他方の第2ダイオードD2 の陰極端子には、整合素子L2 を介して局部発振(Lo)信号及び高周波(RF)信号に対して短絡となる容量のコンデンサC2 が接地との間に接続される。説明の便宜上、コンデンサC1 と整合素子L1 の接続点をノードA、コンデンサC2と整合素子L2の接続点をノードBとする。
【0022】
そして、第1実施例では、ノードAとノードBの間において、上記第1及び第2ダイオードD1 ,D2 に並列(同極性)となるように、定電流回路として機能するショットキーダイオードからなる第3ダイオードD3 及び第4ダイオードD4 (バイアス用ダイオード)を直列に接続する。これらダイオードD3 ,D4 は、上記ダイオードD1 ,D2 と共に、集積回路としての同一の半導体チップ上に形成することで、4つのダイオードD1 〜D4 が同一の特性を持つようにしている。また、ノードAに対して第1抵抗R1 を介して外部正電圧源6が接続され、ノードBは第2抵抗R2 を介して接地される。
【0023】
第1実施例は以上の構成からなり、このダイオードミキサ回路においては、外部正電圧源6から第3及び第4ダイオードD3 ,D4 を介してバイアス電圧を印加すると、第1ダイオードD1 と第2ダイオードD2 に強制的にバイアス電流が与えられ、これによって、第1ダイオードD1 と第2ダイオードD2 は非線形領域にバイアスされることで、小さな局部発振信号電力でも動作することができる。
【0024】
図2には、局部発振信号電力に対する第1ダイオードD1 の陽極−陰極間ピーク電圧Vakの変化が示されており、従来の回路では、点線50のように、局部発振信号電力が低下し不足する場合に、陽極−陰極間電圧Vakが低くなる。これに対し、第1実施例では外部正電源1を設けてバイアスを印加することで、実線51のように、局部発振信号電力が低下し不足する場合でも、第1ダイオードD1 の陽極−陰極間電圧Vakが高く維持されることになり、これによって、変換効率が向上し、良好な振幅のドップラー復調信号が得られる。
【0025】
また、第1実施例では、第1ダイオードD1 及び第2ダイオードD2 からドップラー復調信号出力端子3までの間に、図7の構成とは異なり、低周波を阻止するコンデンサがないため、ドップラー復調信号はDCまでの低周波でも動作することになる。
【0026】
更に、第3ダイオードD3 と第4ダイオードD4 の定電圧特性により、ノードA(第1ダイオードD1 の陽極側)及びノードB(第2ダイオードD2 の陰極側)がドップラー復調信号の周波数に対して短絡の状態となることで、ノードA及びノードBのドップラー復調信号に対するインピーダンスが低くなり、この結果、ドップラー復調信号が第1抵抗R1 及び第2抵抗R2 にて吸収されて変換損失が悪化することも抑制される。
【0027】
図4には、第1実施例の変換損特性が示されており、この図4の特性線61と従来の図8の特性線60と比較すると、局部発振信号電力が小さな範囲でも、変換損失の悪化(損失値の増大)が少ない特性が得られていることが分かる。また、局部発振信号電力が変動した場合も、それに対する変換損失の変化は小さく、安定した特性が得られる結果となった。
【0028】
また、第1〜第4のダイオードD1 〜D4 の全てが同一チップ上に形成され、同一の順方向電圧を持つので、半導体製造のバラツキの影響を受けることもなく、また温度変化がある場合には、その変化に応じてバイアス電圧が変化することで、安定したバイアス電流を第1及び第2ダイオードD1 ,D2 へ供給することができる。
【0029】
ところで、このような第1実施例の構成においては、第3ダイオードD3 及び第4ダイオードD4 が持つ直列抵抗成分によりドップラー復調信号が吸収され変換損失がやや悪化するという不都合があり、これを解消するため、第1実施例ではこれらのダイオードD3 ,D4 の電極面積を少し大きくしている。なお、第3及び第4ダイオードD3 ,D4 の電極を大きくしたことで、これらダイオードD3 及びD4 に流れる電流が増加し、消費電力が増加することになるが、このことは、次の第2実施例によって解消することができる。
【0030】
図4には、第2実施例に係るダイオードミキサ(シングルバランスドミキサ)回路の構成が示されており、この第2実施例の基本的な構成は第1実施例と同様であり、局部発振信号入力端子1、高周波信号入力端子2、90°ハイブリッド結合器5、周波数変換用の第1ダイオードD1 及び第2ダイオードD2 、整合素子L1 、整合素子L2 、コンデイサC3 を有する。また、この第2実施例では、整合素子L1 の他端と接地(GND)との間にのみ、局部発振信号及び高周波信号に対して短絡となる容量のコンデンサC1 が接続される。
【0031】
そして、上記コンデンサC1 と整合素子L1 の接続点であるノードAに、定電圧回路(定電圧源)としてのボルテージフォロワ回路7が接続され、このボルテージフォロワ回路7の入力端子(+)と接地の間に、第5ダイオードD5 と第6ダイオードD6 が直列に接続される。即ち、この第5ダイオードD5 及び第6ダイオードD6 は、第1及び第2ダイオードD1 ,D2 と共に集積回路としての同一の半導体チップ上に形成され、第1及び第2ダイオードD1 ,D2 と同極性となるように配置される。また、第5ダイオードD5 の陽極端子と上記ボルテージフォロワ回路7の入力端子(+)との接続点(この点をノードCとする)に、第3抵抗R3 を介して外部正電圧源6が接続され、第3抵抗R3 と第5及び第6ダイオードD5 ,D6 は直列配置となる。
【0032】
このような構成の第2実施例によれば、ノードCの電位を基準電圧として、ボルテージフォロワ回路7が定電圧源として機能し、ノードCとノードAは同電位となり、第5ダイオードD5 の端子電圧を基準電圧として、この基準電圧と同電位の一定のバイアス電圧がノードAに供給される。即ち、第3抵抗R3 の値を適切に設定することにより第5ダイオードD5 及び第6ダイオードD6 の電流値を調整すれば、第1ダイオードD1 及び第2ダイオードD2 には、これらダイオードD1 ,D2 に対する第5ダイオードD5 及び第6ダイオードD6 の電極面積の比で決定されるバイアス電流が流れる。
【0033】
即ち、第2実施例のミキサ回路においては、外部正電圧源6に基づき第3抵抗R3 とダイオードD5 ,D6 で設定された基準電圧を、定電圧回路であるボルテージフォロワ回路7へ入力し、この定電圧回路を介して一定のバイアス電圧を供給することにより、第1ダイオードD1 と第2ダイオードD2 に強制的にバイアス電流が与えられ、これによって、第1ダイオードD1 と第2ダイオードD2 が非線形領域にバイアスされるので、小さな局部発振信号電力で動作することができる。
【0034】
そして、この第2実施例でも、第1実施例と同様に、ドップラー復調信号はDCまでの低周波でも動作することになり、第1ダイオードD1 の陽極側のノードAが定電圧回路に接続され、第2ダイオードD2 の陰極側は接地されているため、それぞれドップラー復調信号の周波数に対して短絡の状態となり、ノードAのドップラー復調信号に対するインピーダンスも低くなるので、変換損失が悪化することが防止される。従って、図3で示した変換損失特性と同様の特性を得ることができ、局部発振信号電力が小さな範囲でも、変換損失の悪化が少なくなる。
【0035】
更に、全てのダイオードD1 ,D2 ,D5 ,D6 が同一チップ上に形成されおり、これらの順方向電圧も同じとなるため、半導体製造のバラツキの影響を受けず、第3抵抗R3 の値によりバイアス電流の値を調節することが可能になる。しかも、温度変化がある場合は、その変化に応じてバイアス電圧が変化することで、安定したバイアス電流を第1及び第2ダイオードD1 ,D2 へ印加することができる。
【0036】
また、ボルテージフォロワ回路7の出力側は、第5ダイオードD5 及び第6ダイオードD6 の電極面積に依存せず低インピーダンスとなるため、これらのダイオードD5 ,D6 の電極面積を小さくすることができる。従って、第1実施例のダイオードD3 及びD4 の場合とは異なり、第5ダイオードD5 及び第6ダイオードD6 に流れる電流が増加することはなく、無効電流(消費電流)の増大は生じない。
【0037】
更に、第2実施例では、上記第3抵抗R3 をサーミスタとすれば、温度が上昇したときに、第5及び第6ダイオードD5 ,D6 のバイアス電流を増大させることで、これに連動して第1及び第2ダイオードD1 ,D2 への電流を増大させ、安定した動作を行わせることができる。即ち、入力端子1から入力される局部発振信号は、発振器又は増幅器から供給されるが、これら発振器や増幅器は、一般に温度の上昇に伴って出力電力が低下する特性を持つことが多い。そこで、第2実施例では、サーミスタを用い、温度上昇に連動してバイアス電流を増加させることにより、ミキサに供給される局部発振信号電力の低下を補償することが可能となる。
【0038】
第2実施例では、定電圧回路として、ボルテージフォロワ回路を用いたが、これ以外の定電圧回路を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
無線ドップラーセンサ等のセンサやレーダ等に使用される受信ミキサ、高周波ミキサ等、0Hzまでの低い周波数の入出力信号を取り扱うミキサに適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…局部発振信号(Lo)入力端子、 2…高周波信号(RF)入力端子、
3…ドップラー復調信号出力端子、
5…90°ハイブリッド結合器、
6…外部正電圧源、 7…ボルテージフォロワ回路、
D1 ,D2 …第1,第2ダイオード(周波数変換用)、
D3 ,D4 …第3,第4ダイオード(バイアス用)、
D5 ,D6 …第5,第6ダイオード(バイアス電圧設定用)、
C1 〜C3 …コンデンサ、 R1 ,R2 …抵抗、
R3 …抵抗又はサーミスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変換用ダイオードにより高周波に対する周波数変換を行うダイオードミキサ回路において、
バイアス電圧源としての外部正電圧源と、
定電圧回路を有し、上記外部正電圧源に基づき一定のバイアス電圧を上記周波数変換用ダイオードに印加するバイアス回路と、を設けたことを特徴とするダイオードミキサ回路。
【請求項2】
上記バイアス回路は、上記周波数変換用ダイオードと同一特性からなり、上記周波数変換用ダイオードに並列に接続されたバイアス用ダイオードを定電圧回路として設け、このバイアス用ダイオードの定電圧特性を用いて一定のバイアス電圧を供給することを特徴とする請求項1記載のダイオードミキサ回路。
【請求項3】
上記バイアス回路は、上記周波数変換用ダイオードと同一特性からなり、上記外部正電圧源の電圧を基準電圧に変換するバイアス電圧設定用ダイオードと、このバイアス電圧設定用ダイオードで得られた基準電圧と同一かつ一定のバイアス電圧を上記周波数変換用ダイオードへ印加する定電圧回路とからなることを特徴とする請求項1記載のダイオードミキサ回路。
【請求項4】
上記バイアス回路は、上記バイアス電圧設定用ダイオードと共に基準電圧を設定するためのサーミスタを設け、このサーミスタにより温度変化に応じたバイアス電流を供給することを特徴とする請求項3記載のダイオードミキサ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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