説明

ダイカスト用離型剤、ダイカスト用金型への離型性付与方法、及びダイカスト製品の鋳造方法

【課題】ダイカスト製品における鋳肌の荒れの発生を抑制することができるダイカスト用離型剤、離型方法及び鋳造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】二酸化ケイ素以外の金属酸化物のナノ粒子を分散剤の添加なしで水中に分散させたコロイド水溶液からなるダイカスト用離型剤、二酸化ケイ素以外の金属酸化物のナノ粒子を分散剤の添加なしで水中に分散させたコロイド水溶液をダイカスト用金型の成形面に塗布し、次いで該水を蒸発させることを特徴とするダイカスト用金型への離型性付与方法、及び二酸化ケイ素以外の金属酸化物のナノ粒子を分散剤の添加なしで水中に分散させたコロイド水溶液を塗布し、次いで該水を蒸発させた成形面を有するダイカスト用金型に、溶湯を注入することを特徴とするダイカスト製品の鋳造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイカスト用離型剤、より詳細には二酸化ケイ素以外の金属酸化物のコロイド水溶液からなるダイカスト用離型剤、並びに該コロイド水溶液を用いる離型性付与方法及びダイカスト製品鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストは、溶融したアルミニウム、マグネシウム、亜鉛などの非鉄金属又はそれらの合金(以下、「溶湯」と呼ぶ)を、精密な金型に高速で圧入し、瞬時に成形する技術をいう。ダイカストは、高い寸法精度が得られ、薄い肉厚で複雑な形状の製品を作ることができ、しかも大量生産が可能であるという特徴を有し、自動車部品や精密機械部品等の製造に広く使用されている。
【0003】
ダイカストマシンには固定型と可動型の2つの金型が取り付けられており、固定型と可動型とが合わさって構成されるキャビティ内に高速圧入された溶湯が固まると、可動型の開きに合わせ、押し出しピンが可動型から製品を押出す。金型の離型性が悪いと、可動型の開きおよび/または押出しの際に、製品の歪み、破損及び金型の破損が生じてしまう。
【0004】
これを防止するため、製品を製造する毎に金型の成形面に離型剤を噴霧して離型性を向上させることが行われている。一般には、離型剤として、鉱物油、動植物油、シリコーンオイル、ワックス又は脂肪酸等を界面活性剤で乳化させた有機系離型剤が使用されている(例えば、特開昭63−265996号公報、特開2003−275845号公報)。
【0005】
しかしながら、有機系離型剤の使用には、高温の溶湯を圧入した際、金型に付着した離型剤の有機成分がガス化し、製品に鋳肌の荒れができるという問題があった。
【0006】
特開平11−77234号公報には、有機系離型剤に無機微粒子を添加した離型剤が記載されている。しかし、この文献の実施例で実際に効果が確認されている離型剤においては、いずれも、無機微粒子は分散剤を含む有機系離型剤(ベース離型剤)中に分散されており、分散剤などの有機成分を含まない離型剤についての検討は一切なされていない。しかも、鋳造製品の鋳肌に関しては何ら言及されていない。よって、この文献は、離型剤に起因して製品に鋳肌の荒れが生じるという問題の解決策を示していない。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−265996号公報
【特許文献2】特開2003−275845号公報
【特許文献3】特開平11−77234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記問題点に鑑み、本発明は、ダイカスト製品における鋳肌の荒れの発生を抑制することができるダイカスト用離型剤、離型方法及び鋳造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、二酸化ケイ素以外の金属酸化物のナノ粒子を分散剤なしで水中に分散させたコロイド水溶液からなるダイカスト用離型剤が提供される。
また、本発明によれば、ダイカスト用金型への溶湯の注入前に、上記離型剤を該金型の成形面に塗布することを特徴とするダイカスト製品の鋳造方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、二酸化ケイ素以外の金属酸化物のナノ粒子を分散剤なしで水中に分散させたコロイド水溶液をダイカスト用金型の成形面に塗布し、次いで水を蒸発させることを特徴とするダイカスト用金型への離型性付与方法が提供される。
【0011】
更に、本発明によれば、二酸化ケイ素以外の金属酸化物のナノ粒子を分散剤なしで水中に分散させたコロイド水溶液を塗布し、次いで水を蒸発させた成形面を有するダイカスト用金型に、溶湯を注入することを特徴とするダイカスト製品の鋳造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の離型剤では、金属酸化物のナノ粒子が金型の成形面に付着して離型性を付与するが、該ナノ粒子は高温の溶湯に接してもガス化せず、また他に分散剤などのガス化する有機成分を含まないので、ダイカスト製品に鋳肌の荒れが発生せず、製品の品質を向上及び安定させることができる。
【0013】
本発明の離型剤は安定分散状態のコロイド水溶液の形態であるので、容易に(例えば噴霧のような簡便な塗布により)、金属酸化物のナノ粒子を金型成形面に均一に付着させることができる。すなわち、金型成形面に均一な離型性を付与できる。
【0014】
この結果、可動型の開きおよびダイカスト製品の押出しの際の製品の歪み及び破損並びに金型の破損を防止できるか又は減少させることができる。したがって、本発明の離型剤の使用により、製品品質の向上および/または安定、製造歩留りの向上、製造コストの低減等が可能となる。
【0015】
また、本発明の離型剤は、離型性を付与する成分として金属酸化物のナノ粒子を用い、有機成分を含有しないので、作業環境の安全性(例えば引火性、発火性、吸入による健康被害)が向上し、周辺環境への負荷(拡散/飛散による周辺環境の汚染)が軽減される。
【0016】
更に、分散媒としての水が、金型冷却用媒体としても同時に作用し得るので、作業の簡便化/効率化を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(ダイカスト用離型剤)
本発明の離型剤は、二酸化ケイ素以外の金属酸化物のナノ粒子を分散剤の添加なしで水中に分散させたコロイド水溶液からなることを特徴とする。
以下に本発明の離型剤を詳細に説明する。
【0018】
本発明において、「分散剤の添加なしで」とは、離型剤中の固形分を分散させるために分散剤が添加されていないことをいう。
水は分散剤以外の有機物も実質的に含まないことが好ましい。「有機物を実質的に含まない」とは、有機物を全く含まない場合はもちろん、有機物を含んでいる場合であっても該有機物の量が過マンガン酸カリウム消費量として測定したときで10mg/L未満である場合をも包含する。
【0019】
水としては、水道水や工業用水をそのまま使用してもよいが、イオン交換樹脂での処理等により無機物の塩を除去して使用するのが好ましい。無機物の塩を除去することで、望ましくない無機物が製品の鋳肌に析出することを予防できる。
【0020】
本発明において、「ナノ粒子」とは、1〜500nmの平均一次粒子径を有する粒子である。このようなナノ粒子は、分散剤の添加なしで、水に分散し得、また容易(安価)に入手し得る。好ましくは、平均一次粒子径は10〜250nmである。この範囲でナノ粒子は、より長期間にわったって水中で安定に分散し得る。
本発明において、「平均一次粒子径」とは、TEM等の電子顕微鏡観察又は遠心沈降法から求められる。
【0021】
本発明の離型剤において、ナノ粒子は一次粒子として分散していてもよいし、2個又はそれ以上の粒子の凝集体として分散していてもよい。
【0022】
本発明の離型剤における二酸化ケイ素以外の金属酸化物としては、水に不溶性又は難溶性(100℃にて1重量%未満の溶解度)の金属酸化物を使用し得る。このような金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化銅、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化モリブデン、酸化セリウム、酸化タングステン等が挙げられる。好ましくは、二酸化ケイ素以外の金属酸化物は、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化アルミニウムからなる群より選択される。
【0023】
これら金属酸化物は、1種類を用いてもよいし、2種類以上の混合物として用いてもよい。混合物としては、二酸化ケイ素以外の金属酸化物を1種類以上含む限り、更に二酸化ケイ素を含む混合物であってもよい。
本発明の離型剤において金属酸化物が混合物である場合、主たる2種又は3種又は4種の金属酸化物は、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム及び酸化アルミニウムからなる群より選択されることが好ましい。より好ましくは、主たる2種又は3種の金属酸化物は、酸化チタン、二酸化ケイ素及び酸化ジルコニウムからなる群より選択される。
【0024】
金属酸化物は修飾されていてもよい。修飾とは、例えば、コーティング、親水化、疎水化、吸着基付与などをいう。
金属酸化物のナノ粒子としては、例えば、PVD法、CVD法といった気相法、ゾルゲル法、逆ミセル法といった液相法により作製したものを利用することができる。
【0025】
金属酸化物のナノ粒子は、水に安定に分散する濃度で含まれ得る。
金属酸化物のナノ粒子は、該ナノ粒子の成形面への効率的な付着を考慮すれば、本発明の離型剤中に、例えば(金属酸化物が混合物として使用される場合、含まれる金属酸化物の合計として)0.01重量%以上、好ましくは0.02重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上の濃度で含まれる。より高い濃度の使用によって、少量の塗布でより良好な離型性が得られるので、より高い作業効率が達成され得る。
【0026】
一方、本発明の離型剤における金属酸化物のナノ粒子の濃度の上限は、限定されるものではないが、好ましくは水に安定に分散しやすい35重量%である。
【0027】
本発明の離型剤は、界面活性剤を含まないことが好ましい。界面活性剤を含まないことにより、拡散/飛散による周辺環境への負荷が更に低減し、及び/又は作業環境の悪化(例えば床面や工具の滑り)が防止される。
【0028】
本発明の離型剤は、金属酸化物のナノ粒子を、例えば0.01重量%以上の濃度で含み、好ましくは残部(〜99.99重量%)が水である。本発明の離型剤が金属酸化物のナノ粒子と残部の水からなる場合、前述の利点に加えて、調製及び/又は取り扱いの容易さ並びに費用の点で有利である。
【0029】
本発明の離型剤は、使用時(ダイカスト用金型への塗布時)に、0.01〜0.5重量%(好ましくは0.05〜0.2重量%)の金属酸化物のナノ粒子を含むように調製される。
【0030】
本発明の離型剤が用いられる金型の材質は特に限定されないが、例えば、鉄又は鉄の合金であり得る。また、離型の対象となる金属(溶湯)も特に限定されないが、例えば、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛などの非鉄金属又はそれらの合金であり得る。
【0031】
(離型性付与方法)
本発明のダイカスト用金型への離型性付与方法は、二酸化ケイ素以外の金属酸化物のナノ粒子を分散剤の添加なしで水中に分散させた金属酸化物コロイド水溶液を該金型の成形面に塗布し、次いで該水を蒸発させることを特徴とする。
【0032】
本発明の離型性付与方法において、金属酸化物コロイド水溶液は、上記で本発明の離型剤として説明したとおりの金属酸化物コロイド水溶液である。よって、本発明の離型性付与方法には、前述の本発明の離型剤が使用できる。
【0033】
金型の成形面への該コロイド水溶液(又は前述の本発明の離型剤)の塗布には、通常用いられる手法、例えばスプレーノズルを用いる噴霧が用いられ得る。塗布量は、特に限定されないが、好ましくは、塗布後に、成形面に塗布された該コロイド水溶液を構成する水が例えば数秒〜十数秒程度で蒸発し得る量である。塗布後に、未蒸発の水をエアーブローにより除去してもよい。塗布量は、該コロイド水溶液中の金属酸化物の濃度に依存して、例えば0.01〜10L/m2であり得る。
【0034】
本発明の離型性付与方法によれば、金型の形成面に塗布された該コロイド中の金属酸化物のナノ粒子が、該コロイド水溶液を構成する水の蒸発によって該成形面に付着して離型性を付与する。ここで、この金属酸化物のナノ粒子は高温の溶湯に接してもガス化せず、また他に分散剤などのガス化する有機成分を含まないので、この金型を用いて鋳造したダイカスト製品には鋳肌の荒れが発生せず、品質を向上および/または安定させることができる。
【0035】
また、環境に対する負荷が大きい有機成分を用いずとも離型性を付与できるので、周辺環境への負荷が軽減され及び/又は作業環境が向上する。更に、金属酸化物のナノ粒子はコロイド水溶液の形態(安定分散状態)で塗布されるので、金型成形面に均一に付着することができ、均一な離型性が付与される。
【0036】
(ダイカスト製品鋳造方法)
本発明のダイカスト製品の鋳造方法は、二酸化ケイ素以外の金属酸化物のナノ粒子を分散剤の添加なしで水中に分散させた金属酸化物コロイド水溶液を塗布し、次いで該水を蒸発させた成形面を有するダイカスト用金型に、溶湯を注入することを特徴とする。
【0037】
本発明の鋳造方法において、二酸化ケイ素以外の金属酸化物のナノ粒子を分散剤の添加なしで水中に分散させた金属酸化物コロイド水溶液には、上記で本発明の離型剤について説明したとおりのコロイド水溶液が用いられ、前述の本発明の離型剤を使用してもよい。該コロイド水溶液は、上記で本発明の離型性付与方法に関して説明したように塗布され得る。
【0038】
本発明のダイカスト鋳造法においては、ダイカスト鋳造法で通常用いられるダイカストマシンを常法に従って用いることができる。
図1を参照して、簡潔に説明すると、ダイカストマシン1は、固定型3と可動型4とからなるダイカスト用金型2と、該金型内に溶湯を高速圧入するプランジャー5と、鋳造されたダイカスト製品を押出す押出ピン6を有するダイカストマシンが用いられる。コロイド水溶液(離型剤8)の塗布装置には、離型剤及び/又は金型冷却用媒体の塗布に通常用いられるスプレーノズル7を用いることができる。
【0039】
鋳造の工程は、簡潔には、以下のとおりである。
先ず可動型4が開いた状態(図1)で、スプレー装置のスプレーノズル7を固定型3と可動型4との間に進入させ、固定型3及び可動型4のそれぞれの成形面にコロイド水溶液(又は前述の本発明の離型剤8)を噴霧する。噴霧後に、未蒸発の媒体をエアーブローにより吹き飛ばして除去してもよい。
【0040】
また、該コロイド水溶液の塗布前に、冷却用媒体により金型を所定の温度まで冷却してもよいが、該コロイド水溶液の水が金型冷却用媒体としても機能し得るので、金型の冷却と離型性付与を同時に行うことができ、作業の簡便化/効率化が図れる。
【0041】
次いで、可動型4が閉じられ、可動型4の成形面が固定型3の成形面と合わさって成形空間(キャビティ)が構成される。続いて、該キャビティ内にプランジャー5によって溶湯が高速圧入される。溶湯の冷却固化後、可動型4が開かれて押出ピン6により可動型4からダイカスト製品が押し出される。なお、ダイカスト製品は、使用するダイカストマシンの構成によっては固定型3から押出され得る。
以後、これら工程が繰り返される。
【0042】
本発明の鋳造方法によれば、鋳造に際してガス化しない金属酸化物のナノ粒子を離型性付与成分として利用できるので、有機系離型剤の使用を要さず、また分散剤などの他のガス化する有機成分を含まないので、ダイカスト製品に鋳肌の荒れを発生させることなく製品品質を向上および/または安定させることができる。また、従来の有機系離型剤を使用する鋳造方法に比べて、周辺環境への負荷が低減され、作業環境が改善される。
【0043】
更に、金属酸化物のナノ粒子のコロイド水溶液により均一な離型性を付与された金型を用いるので、製品品質の向上および/または安定、製造歩留りの向上、製造コストの低減等が可能となる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の内容を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0045】
本実施例においては、溶湯の押出圧力135tのアルミダイカストマシンを、表1に示す運転条件で用いてアルミダイカストを行った。金型材にはSKD-61を使用し、アルミニウム合金にはADC-12を使用した。
【0046】
【表1】

【0047】
表2に本発明のダイカスト用離型剤を作製するために用いた薬剤の物性を示す。なお、薬剤1〜6はいずれも触媒化成工業株式会社製である。
【表2】

【0048】
(実施例1)
薬剤1を、粒子濃度が0.22重量%となるようにイオン交換樹脂により脱塩処理した純水で希釈して実施例1のダイカスト用離型剤を作製した。
この実施例1の離型剤を固定型に10ml、可動型に10mlスプレーノズルで1秒間噴霧した(単位面積あたりの塗布量:0.74L/m2)。エアーブローにより余分な水を吹き飛ばした後、可動型と固定型と合わせて金型を構成し、溶湯をプランジャーで射出して金型内に圧入した。溶湯が固まった後に可動型を固定型から離し、次いで押出ピンにより製品を押し出した。このとき、押出ピンが製品を押し出すに必要な押出圧力を測定した。
【0049】
製品が押し出された後、再度、実施例1の離型剤を噴霧し、上記と同様の操作を繰り返した。
最初の2回は金型温度が低いため、低速射出速度で行い捨て打ちとした。その後、高速射出速度でダイカストを20回実施した。20回のダイカストにより鋳造された製品の表面を観察して鋳肌の荒れの有無を確認し、20回の平均押出圧力を算出した。
以下の実施例及び比較例においても、ダイカストの操作は上記と同様に行った。
【0050】
(実施例2)
薬剤2を、粒子濃度が0.11重量%となるように希釈して実施例2の離型剤を作製した。
(実施例3)
薬剤3を、粒子濃度が0.11重量%となるように希釈して実施例3の離型剤を作製した。
【0051】
(実施例4)
薬剤4を、粒子濃度が0.11重量%となるように希釈して実施例4の離型剤を作製した。
(実施例5)
薬剤5を、粒子濃度が0.098重量%となるように希釈して実施例5の離型剤を作製した。
(実施例6)
薬剤6を、粒子濃度が0.091重量%となるように希釈して実施例6の離型剤を作製した。
【0052】
(比較例1)
離型剤を含まない水のみを噴霧し比較例1とした。
(比較例2)
現行薬剤1(有機物を含有する離型剤;水性シリコーンエマルション系、固形分22%)を、固形分濃度が0.55重量%となるように希釈して比較例2の離型剤を作製した。
【0053】
(比較例3)
現行薬剤2(有機物を含有する離型剤;水性シリコーンエマルション系、固形分26%)を、固形分濃度が0.65重量%となるように希釈して比較例3の離型剤を作製した。
【0054】
実施例及び比較例の離型剤を用いて鋳造したダイカスト製品の表面での鋳肌の荒れの有無及び平均押出圧力を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
有機系離型剤である比較例2の離型剤を用いた場合、ダイカスト製品の表面に鋳肌の荒れが発生し、同じく有機系離型剤である比較例3の離型剤でも、ダイカスト製品の表面に鋳肌の荒れの発生が認められた。
【0057】
一方、実施例1〜6の離型剤を用いた場合には、ダイカスト製品の表面には鋳肌の荒れの発生は認められなかった。
このことから、有機系離型剤の使用により生じ得る製品の品質低下が、本発明の離型剤の使用により防止されることが理解できる。
【0058】
平均押出圧力に関して、実施例の離型剤は比較例の離型剤と同等程度であると評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のダイカスト製品鋳造方法の一態様を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 ・・・ ダイカストマシン
2 ・・・ ダイカスト用金型
3 ・・・ 固定型
4 ・・・ 可動型
5 ・・・ プランジャー
6 ・・・ 製品押出ピン
7 ・・・ 噴霧ノズル
8 ・・・ 離型剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化ケイ素以外の金属酸化物のナノ粒子を分散剤の添加なしで水中に分散させたコロイド水溶液からなるダイカスト用離型剤。
【請求項2】
前記金属酸化物のナノ粒子の平均一次粒子径が1〜500nmにある請求項1に記載のダイカスト用離型剤。
【請求項3】
前記金属酸化物のナノ粒子が離型剤の全重量を基準として0.01重量%〜35重量%で含まれる請求項1又は2に記載のダイカスト用離型剤。
【請求項4】
前記二酸化ケイ素以外の金属酸化物が酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化アルミニウムから選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載のダイカスト用離型剤。
【請求項5】
ダイカスト用金型への溶湯の注入前に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の離型剤を該金型の成形面に塗布することを特徴とするダイカスト製品の鋳造方法。
【請求項6】
二酸化ケイ素以外の金属酸化物のナノ粒子を分散剤の添加なしで水中に分散させたコロイド水溶液をダイカスト用金型の成形面に塗布し、次いで水を蒸発させることを特徴とするダイカスト用金型への離型性付与方法。
【請求項7】
二酸化ケイ素以外の金属酸化物のナノ粒子を分散剤の添加なしで水中に分散させたコロイド水溶液を塗布し、次いで水を蒸発させた成形面を有するダイカスト用金型に、溶湯を注入することを特徴とするダイカスト製品の鋳造方法。

【図1】
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