説明

ダイカッタの抜き型

【課題】シート打抜き時に、シートを弾性的に押える弾性体のエッジ部が打抜き刃によって切断されないようにした抜き型を提供することである。
【解決手段】ダイプレート1に植設された打抜き刃2を挟む両側の近接部位に、その打抜き刃2の刃の丈より高さが高い平面角形の弾性体3を設ける。弾性体3のシート押圧面3cと打抜き刃2に対向する側面3aとの交差部(エッジ部)に面取り部4を設け、弾性体3がシートSを押さえ、打抜き刃2側に倒れる状態で弾性変形しても、シート押圧面3cと側面3aの交差部が打抜き刃2の下方に臨まないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、段ボールシート等のシートを所定の形状に打ち抜くダイカッタの抜き型に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを所定の形状に打ち抜くダイカッタには、ロータリ式と平盤式とが存在する。平盤式のダイカッタにおいては、図7に示すように、平盤状のアンビル10上にダイホルダ(型板)11を対向して設け、そのダイホルダ11の下面に抜き型Aを取付け、上記ダイホルダ11とアンビル10の対向方向への相対的な移動により、アンビル10上に送り込まれて停止するシートSを抜き型Aに設けられた打抜き刃22により所定の形状に打ち抜くようにしている。
【0003】
ここで、ダイカッタの抜き型Aにおいては、合板等からなるダイプレート21に打抜き刃22を、形成しようとする製品の輪郭と同形状となるように植設しており、その打抜き刃22をアンビル10上で停止するシートSに刺通させる打抜きによってシートSに切断線を形成するようにしている。
【0004】
ここで、切断線が連続していると、切断線の内側に形成される製品部が打抜き刃22の内側に残ってシートSから分離するおそれがあるため、上記切断線を不連続として、製品部とその周囲の屑との間に僅かなつなぎ部を設けるようにしている。
【0005】
なお、打抜き処理後のシートSは次工程のストリッピング部に搬送され、そのストリッピング部において、製品部とその周囲の屑とが僅かなつなぎ部を切断されて分離されるようになっている。
【0006】
上記のような抜き型Aにおいて、ダイプレート21に打抜き刃22を単に設けた構成であると、シートSの打抜き時にシートSが浮き上がり、精度の高い打抜きを行なうことができない。
【0007】
そこで、抜き型Aにおいては、打抜き刃22を挟む両側方に、その打抜き刃22の刃の丈hより高さが高い直方体形状のゴム等からなる弾性体23を打抜き刃22の長さ方向に間隔をおいて設け、打抜き刃22が打抜きを開始する前段から打抜きが完了するまでの間、弾性体23でもってシートSをアンビル10に向けて弾力的に押えるようにしている。
【0008】
ここで、弾性体23は接着による手段を介してダイプレート21に固定され、その弾性体23が打抜き刃22との間に大きな間隔があく取付けであると、シートSの浮き上がりを完全に防止することができない。また、弾性体23は、その側面が打抜き刃22の側面に密着する取付けであると、弾性体23の弾性変形が阻害され、シートSを損傷させる場合があるため、弾性体23は、普通、打抜き刃22との間に数mm程度の間隔をあけて取付けされている。
【0009】
上記のように、打抜き刃22との間に僅かな間隔をあけて弾性体23を取付けることは非常に手間がかかるため、対向する一対の側面を波形とした弾性体が提案されている。この弾性体においては、波形の側面の波高部が打抜き刃22の側面に衝合する取付けとしても、弾性体の弾性変形が阻害されることが極めて少ないため、打抜き刃22の側面に波形の側面が当接する取付けとすることができ、取付けの容易化を図ることができるという特徴を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、従来から知られているダイカッタの抜き型Aにおいては、上記のように、弾性体23を打抜き刃22の側面に近接して取付け、あるいは、波形の側面の波高部を打抜き刃22の側面に接触させる取付けであるため、弾性体23がシートSを押え始める状態から更に圧縮変形する際に、打抜き刃22側に倒れる状態で圧縮すると、図8に示すように、弾性体23のシート押圧面23aと打抜き刃22と対向する側面23bとが交差するエッジ部23cが打抜き刃22の下方に臨むことになる。
【0011】
このとき、打抜き刃22は、上記エッジ部23cを切断する状態でシートSに刺通して切断線を形成することになるため、エッジ部23cが切断線の内側に形成される製品部上に残ることになり、上記製品部が商品包装用の箱形成用素材の場合に、その素材の折曲げによって形成される包装箱内に切断されたエッジ部23cが入り込み、そのエッジ部23cが商品に付着して、商品の品質を著しく低下させるという問題が発生する。
また、弾性体23を損傷させるという問題も生じる。
【0012】
この発明の課題は、シート打抜き時に弾性体のエッジ部が打抜き刃によって切断されないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、この発明においては、ダイプレートにシートを所定の形状に打ち抜く打抜き刃を設け、その打抜き刃の近接部位に、その打抜き刃の刃の丈より高さが高い弾性体を設け、その弾性体がシートを押え付ける状態において打抜き刃をシートに刺通させてシートを所定の形状に打ち抜くようにしたダイカッタの抜き型において、前記弾性体のシート押圧面と前記打抜き刃に対向する側面との交差部に面取り部を設けた構成を採用したのである。
【0014】
上記の構成からなるダイカッタの抜き型をダイプレートに取付け、そのダイプレートとアンビルの対向方向への相対的な移動によるシートの打抜き時、抜き型に設けられた弾性体はシートに当接し、その当接状態から弾性変形してシートを弾性的に押さえ、その押え状態において、打抜き刃がシートに刺通して切断線を形成する。
【0015】
上記のようなシートの打抜きにおいて、弾性体が弾性変形する際、弾性体は打抜き刃側に倒れる状態で弾性変形する場合がある。このとき、弾性体のシート押圧面と打抜き刃に対向する側面との交差部には面取り部が施されているため、上記交差部が打抜き刃の下側に臨むようなことはない。このため、打抜き刃によって弾性体の一部が切断されるようなことはない。
【0016】
ここで、弾性体の一対の側面とシート押圧面とが交差する交差部のそれぞれに面取り部を形成すると、弾性体の取付けの際、一対の側面のいずれか一方が打抜き刃と対向するように弾性体を取付けるようにすればよいため、取付け方向が制約されることが少なくなり、弾性体の取付けの容易化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
上記のように、この発明においては、弾性体のシート押圧面と打抜き刃に対向する側面との交差部(エッジ部)に面取り部を設けたことにより、シート打抜き時に弾性体のエッジ部が打抜き刃によって切断されるのを完全に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係る抜き型の一部分を示す斜視図
【図2】図1に示す抜き型をダイカッタにセットした状態を示す断面図
【図3】シートの打抜き状態を示す断面図
【図4】弾性体が打抜き刃側に倒れた状態で弾性変形した際の断面図
【図5】弾性体の他の例を示す断面図
【図6】図5の底面図
【図7】従来の抜き型をダイカッタにセットした状態を示す断面図
【図8】図7に示すダイカッタがシートの打抜きを開始した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図1乃至6に基づいて説明する。図1および図2に示すように、この発明に係るダイカッタの抜き型Aは、合板からなるダイプレート1を有している。ダイプレート1には打抜き刃2が植え込むように設けられている。
【0020】
打抜き刃2は、形成しようとする製品の輪郭と同一形状の配置とされているが、図1では、その一部分の打抜き刃2のみを示している。その打抜き刃2の両側には平面角形の弾性体3が設けられている。
【0021】
弾性体3は、ゴムや合成樹脂等の弾性を有する材料からなり、接着による手段を介してダイプレート1に固定されている。また、弾性体3は、その一方の側面と打抜き刃2の対応する一方の側面間に数mm程度の間隔をあけて配置された近接状態であり、その高さHは、打抜き刃2の刃の丈hよりも高くなっている。
【0022】
弾性体3の打抜き刃2と対向する一側面3aおよびその一側面3aと反対側の側面3bと下面であるシート押圧面3cとが交差するそれぞれの交差部(エッジ部)にはこれらの交差部を削り取った面取り部4が形成されている。ここで、面取り部4は図示のような斜面であってもよく、あるいは、円弧面であってもよい。
【0023】
図2は、上記の構成からなる抜き型Aをダイカッタのダイホルダ11の下面に取付けた状態を示す。
【0024】
抜き型Aの上記のようなセット状態において、ダイホルダ11をその下方に設けられたアンビル10に向けて下降させると、弾性体3のシート押圧面3cがシートSの上面に当接する。その当接状態からダイホルダ11がさらに下降すると、弾性体3が圧縮変形してシートSをアンビル10に向けて弾性的に押さえ、打抜き刃2は、図3に示すように、上記一対の弾性体3間を通り抜けてシートSに刺通して、シートSに切断線を形成する。
【0025】
上記のようなシートSの打抜きにおいて、弾性体3が弾性変形する際、打抜き刃2の両側に設けられた一対の弾性体3の一方が、図4に示すように、打抜き刃2側に倒れる状態で弾性変形する場合がある。このとき、弾性体3のシート押圧面3cと打抜き刃2に対向する一側面3aとの交差部に面取り部4が施されているため、上記交差部が打抜き刃2の下側に臨むようなことはない。このため、打抜き刃2によって弾性体3の一部が切断されるようなことはなく、また、切断片が製品部上に残されるという不都合の発生もないため、製品部が包装箱の形成用素材である場合に、屑の混入のない包装箱を形成することができる。
【0026】
実施の形態においては、弾性体3の一対の側面3a、3bとシート押圧面3cとが交差する交差部のそれぞれに面取り部4を形成しているため、弾性体3の取付けの際、一対の側面3a、3bのいずれか一方が打抜き刃2と対向するように弾性体3を取付けるようにすればよいため、弾性体3の取付け方向が制約されることが少なくなり、弾性体3の取付けの容易化を図ることができる。
【0027】
図5および図6に示すように、弾性体3の両側面3a、3bを打抜き刃2の長さ方向に向けて波形とすると、その側面3a、3bの一方の波高部が打抜き刃2と接触するよう近接する取付けにおいて、弾性体3は打抜き刃2に阻害されることなくスムーズに弾性変形する。したがって、この場合も上記と同様に、弾性体3の取付けの容易化を図ることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ダイプレート
2 打抜き刃
3 弾性体
3a 一側面
3b 他側面
4 面取り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイプレートにシートを所定の形状に打ち抜く打抜き刃を設け、その打抜き刃の近接部位に、その打抜き刃の刃の丈より高さが高い弾性体を設け、その弾性体がシートを押え付ける状態において打抜き刃をシートに刺通させてシートを所定の形状に打ち抜くようにしたダイカッタの抜き型において、
前記弾性体のシート押圧面と前記打抜き刃に対向する側面との交差部に面取り部を設けたことを特徴とするダイカッタの抜き型。
【請求項2】
前記弾性体の一対の側面とシート押圧面とが交差する交差部のそれぞれに面取り部を形成した請求項1に記載のダイカッタの抜き型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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