説明

ダイズペプチド含有油脂組成物

【課題】油相と水相の良好な分散状態を維持し、風味を損なわない油脂組成物を提供すること。
【解決手段】ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を含有してなる、油脂組成物。ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を油脂組成物に含有させることにより、油相と水相の良好な分散状態を長く維持することが可能となり食用時の風味を低下させず、さらに、ダイズペプチド由来の異味、異臭が軽減され風味が良好な油脂組成物が得られる。た、特定のダイズタンパク質由来成分を含有するため、摂取することにより、摂取後の口や喉の渇きを低減し、さらに、美肌・美容効果にも優れた効果を奏することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイズペプチド含有油脂組成物に関する。さらに詳しくは、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を含有する、ドレッシング等の油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
油水分離型のドレッシングは、使用する直前に混合することにより内容物の良好な分散状態を形成するが、混合を中止すると、前記分散状態は油相と水相が分離した状態に直ぐ戻ってしまうことから、食用時の風味の観点からは問題があった。
【0003】
これに対して、従来の方法としては、乳化剤を用いてドレッシングを乳化する技術が知られており、例えば、特許文献1では、ダイズペプチド及び水溶性多糖類を含有する組成物を乳化剤として用いる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−46851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、油水分離型のドレッシングは、油相と水相が分離することにより特有の風味を保持できるという特徴を有するため、乳化剤を用いて完全に乳化させると風味が劣るという課題がある。また、乳化剤により乳化させないとしても食用時に良好な風味を持続させる観点から、油相と水相の良好な分散状態を長く維持する技術もさらに要求されている。
【0005】
一方、乳化型のドレッシングにおいては、用いる乳化剤によっては風味が損なわれるという課題もあり、例えば、特許文献1の乳化剤を使用してドレッシングを調製しても、ダイズタンパク質やダイズペプチド由来の異味、異臭により、風味の低下が懸念される。
【0006】
本発明の課題は、油相と水相の良好な分散状態を維持し、風味を損なわない油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決する為に検討を重ねた結果、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を油脂組成物に含有させることにより、油相と水相の良好な分散状態を長く維持することが可能となり食用時の風味を低下させず、さらに、ダイズペプチド由来の異味、異臭が軽減され風味が良好な油脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を含有してなる、油脂組成物、
(2)ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物の含有量が1〜20重量%である、前記(1)記載の組成物、及び
(3)組成物がドレッシングである、前記(1)又は(2)記載の組成物
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油脂組成物は、油相と水相の良好な分散状態を長く維持することができることから食用時の風味を良好に保ち、また、ダイズペプチドを含有してもダイズペプチド由来の異味、異臭が低減されることから、風味に優れるという優れた効果を奏する。また、本発明の油脂組成物は特定のダイズタンパク質由来成分を含有するため、摂取することにより、摂取後の口や喉の渇きを低減し、さらに、美肌・美容効果にも優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の油脂組成物は、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物(以下、サーモリシン加水分解物という)を含有することに大きな特徴を有する。
【0011】
サーモリシン加水分解物は、ダイズタンパク質をサーモリシンにより加水分解することにより得られるものであるが、サーモリシンのペプチド切断特性により、低分子量にまで加水分解が進まず、低分子量にまで加水分解が進んだ際に生じる遊離アミノ酸や該アミノ酸の分解物由来の臭い成分が少ないことから、油脂組成物に含有させても、ダイズペプチド由来の異味、異臭が低減されると推定される。
【0012】
また、かかる加水分解物には多種多様なペプチドが含まれているが、理由は不明なるも、サーモリシンはタンパク質のアミノ酸配列中、特に疎水性アミノ酸のアミノ基側のペプチド結合を好んで加水分解するために、かかる加水分解物は、分子の末端側に疎水性アミノ酸、例えば、ロイシン、アラニンを有する一方、同一分子には同時にグルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジンのような親水性アミノ酸も存在するので、サーモリシン加水分解物は両親媒性ひいては乳化作用を有すると推定される。そのため、ドレッシングの油相と水相の良好な分散状態を長く維持することが可能であると推定される。
【0013】
一般に、アラニン、セリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、グルコサミン、テアニンなどのアミノ酸及びその誘導体等は保湿作用を有することが知られている。サーモリシン加水分解物は、詳細なる理由は不明なるも、保湿成分としてのアラニンやセリンの含有量が多いことから保湿能力が高く、本発明の油脂組成物を摂取しても、摂取後の口や喉の渇きが低減されるという効果を奏するものと推定される。
【0014】
さらに、サーモリシン加水分解物は、コラーゲンやヒアルロン酸の産生を促進する機能を有する活性ペプチドとしてロイシン(Leu)−グルタミン酸(Glu)−ヒスチジン(His)および、ロイシン(Leu)−グルタミン酸(Glu)−ヒスチジン(His)−アラニン(Ala)(以下、LEHおよびLEHAという)が含有されていることが既に知られているため(特開2007−145795号公報参照)、油脂組成物に含有させて摂取することにより、前記機能に由来する美肌・美容効果が得られることが期待される。
【0015】
以下に、サーモリシン加水分解物の調製方法、即ち、ダイズタンパク質をサーモリシンにより加水分解する方法を説明する。
【0016】
ダイズタンパク質は、ダイズ植物に由来するタンパク質であれば特に限定されないが、ダイズ植物の種子に由来するタンパク質であることが好ましい。
【0017】
従って、本発明においては、ダイズ植物そのものやダイズ植物の種子そのもの、あるいは該植物や該種子の破砕物又は粉砕物等を、ダイズタンパク質として用いてもよいが、好ましくはダイズ植物中の全成分からタンパク質成分を分離、精製したもの、より好ましくはダイズ植物の種子中の全成分からタンパク質成分を分離、精製したものが用いられる。このように分離、精製して得られたダイズタンパク質は、ダイズ植物又はダイズ植物の種子中に含まれる実質的に全種類のタンパク質を含むものでもよく、また、一部の種類のタンパク質を含むものであってもよい。
【0018】
ダイズタンパク質としては、市販品も好適に用いられ得、例えば、日清コスモフーズ(株)、ADMファーイースト(株)、昭和産業(株)、不二製油(株)、(株)光洋商会等の製造業者又は供給業者から容易に入手可能である。
【0019】
なお、本明細書において、ダイズ植物の種子とは、ダイズ種子と通常呼ばれる構造物全体を指すのみならず、例えば、脱皮ダイズ種子、脱脂ダイズ種子(粉末)、ダイズ種子全体より得られる雪花菜(オカラ)等でもあり得る。
【0020】
サーモリシン(EC3.4.24.27)は、Bacillus thermoproteolyticusという耐熱性菌によって生産される耐熱性のプロテアーゼである。サーモリシンは一般に、大きな側鎖をもった疎水性のアミノ酸残基(例えば、イソロイシン、ロイシン、バリン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニン等)のアミノ基側のペプチド結合を切断することが知られている。
【0021】
サーモリシンは、市販品も好適に用いられ得、大和化成(株)等の製造業者から容易に入手可能である。また、本発明においては、サーモリシンと同等のペプチド切断特性(切断配列特異性等)を有するプロテアーゼとして当該分野で公知のプロテアーゼを、サーモリシンとして用いることができる。
【0022】
なお、本発明では、ダイズタンパク質を加水分解する際に、本発明の効果を損なわない範囲で、サーモリシン以外の他のプロテアーゼを使用してもよい。他のプロテアーゼとしては、特に限定されず、例えば、パパイン、ブロメライン、トリプシン、キモトリプシン、パンクレアチン、スブリチン等が挙げられる。これらは、1種類又は2種以上を組み合わせてサーモリシンと併用してもよい。
【0023】
ダイズタンパク質をサーモリシンで加水分解する場合に用いられる反応条件は、特に制限されず、技術常識に従って当業者により適宜選択され得る。例えば、市販のサーモリシンを使用する場合には、その使用説明書に従って使用することができる。具体的な例としては、水等の溶媒に、ダイズタンパク質濃度が、好ましくは0.1〜30%(w/v)、より好ましくは1〜10%(w/v)程度となるようにダイズタンパク質又はダイズタンパク質を含む原料を懸濁し、この懸濁液に、好ましくは0.001〜3%(w/v)、より好ましくは0.01〜0.125%(w/v)程度となるようにサーモリシンを加えて加水分解反応を行う態様が挙げられる。反応温度としては、30〜80℃が好ましく、40〜70℃がより好ましく、50〜60℃がさらに好ましい。また、反応時間としては、2〜30時間が好ましく、3〜24時間がより好ましく、10〜20時間がさらに好ましく、12〜18時間がさらに好ましい。反応液のpHとしては、サーモリシンの至適pHであるpH7.0〜8.5付近であることが好ましい。
【0024】
反応の停止手段についても、特に制限はなく、公知の手段を用いることができる。かかる手段としては、例えば、加熱処理等が挙げられる。具体的には、上記反応物を80〜100℃程度の温度で好ましくは3〜20分間、より好ましくは5〜15分間加熱処理すればよく、85℃で15分間の加熱処理や100℃で5分間の加熱処理により、反応物中に含まれるサーモリシンを失活させることができる。
【0025】
上記のような加水分解反応により得られるサーモリシン加水分解物は、必要に応じて、当業者に公知の任意の方法によりさらに処理され得る。例えば、ろ過等の処理により、該加水分解物中の大きな固体粒子を取り除くことが好ましい。ろ過条件等は、特に制限されず、技術常識に従って当業者により適宜選択され得る。例えば、ろ紙が目詰まりを起こしやすい場合等には、ろ過助剤等も好適に用いられ得る。
【0026】
また、前記加水分解物を減圧濃縮し、次いで凍結乾燥することにより、粉末化することもできる。減圧濃縮及び凍結乾燥の際に使用される条件や機器類は、特に制限されず、技術常識に従って当業者により適宜選択され得る。このようにして粉末化された加水分解物は、そのまま又は水等の溶媒に溶かして、用いることができる。
【0027】
サーモリシン加水分解物は、ダイズタンパク質をサーモリシンで加水分解することにより生じた多種多様なペプチドを実質的に全て含んだ状態であってもよいし、又は、そのような多種多様なペプチドを、公知の方法で、さらに分画、精製して得られる一部分であってもよい。しかし簡便には、ダイズタンパク質をサーモリシンで加水分解して得られる、多種多様なペプチドを実質的に全て含んだ状態でそのまま用いる。
【0028】
本発明におけるサーモリシン加水分解物の平均分子量は、好ましくは300〜10000である。該平均分子量は、油脂組成物に共存する増粘剤などのアニオン性高分子と凝集・沈殿を形成する可能性のある分子量10000以上のペプチドを多く含まないという観点から、より好ましくは400〜5000であり、さらに好ましくは500〜3500であり、さらにより好ましくは550〜3200である。サーモリシン加水分解物の平均分子量は、当業者に公知の任意の方法によりに測定され得、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定され得る。本明細書において、GPC法により測定される平均分子量は「ピーク平均分子量」を意味し、「ピーク平均分子量」とは、クロマトグラムのピークトップ(最も強い強度のピーク)の溶出時間に対応する分子量を意味する。
【0029】
また、サーモリシン加水分解物における遊離アミノ酸の総含有量は、好ましくは0.01〜0.5重量%、より好ましくは0.01〜0.3重量%、さらに好ましくは0.01〜0.2重量%である。サーモリシン加水分解物における遊離アミノ酸の総含有量は、当業者に公知の任意の方法により測定され得、例えば、アミノ酸自動分析法により容易に測定され得る。
【0030】
従来のダイズペプチドは乳化剤としては使用できないが、これに対して、サーモリシン加水分解物は水に透明に溶解し、o/w型エマルジョンの乳化剤として使用できるため、経験的に知られている基準からすれば、そのHLB値は13〜16であると推定できる。
【0031】
なお、本発明では、サーモリシン加水分解物として、市販品である「コラプラスTMN」(ピーク平均分子量:711、遊離アミノ酸の総含有量:0.14重量%、ロート製薬社製)を用いることができる。
【0032】
油脂組成物中のサーモリシン加水分解物の含有量は、油脂組成物の風味を損なわないという観点から、1〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましく、3〜8重量%がさらに好ましい。
【0033】
本発明の油脂組成物は、前記サーモリシン加水分解物を含有していれば特に限定はなく、例えば、サーモリシン加水分解物を原料として用いて製造した油脂組成物であってもよく、サーモリシン加水分解物を混合することにより含有させた油脂組成物であってもよい。
【0034】
また、本発明の油脂組成物は、前記サーモリシン加水分解物を含有していれば、油相と水相が分離した油水分離型の油脂組成物であってもよく、油相と水相が乳化して分散した乳化型の油脂組成物であってもよいが、サーモリシン加水分解物が油相と水相の分散状態を良好に維持することができることから、油水分離型の油脂組成物であることが好ましい。
【0035】
油脂組成物は、サーモリシン加水分解物、及び油脂、砂糖、食塩、醸造酢等を原料として、必要により、乳化剤、調味料、香料、増粘剤、甘味料、ハーブ、酒、醤油等を使用して、当該分野に公知の方法により製造することができる。また、市販の油脂組成物に直接サーモリシン加水分解物を混合することによっても製造することができる。なお、得られる油脂組成物は、サーモリシン加水分解物が油脂組成物の全体に均一に分散するよう製造されてもよく、サーモリシン加水分解物が油脂組成物を構成する成分に含有されるよう製造されてもよく、例えば、油相と水相とを含有する油脂組成物においては、サーモリシン加水分解物はいずれの相に含有されてもよい。
【0036】
本発明の油脂組成物としては、ドレッシング、ドレッシングタイプ調味料、マヨネーズ、マーガリン、ファットスプレット等が挙げられ、これらのなかでも、油相と水相が分離しやすいドレッシングでは、使用時によく振らないと分離したままの状態で、油相もしくは水相の一方だけが食品にかかってしまう等の問題があり、油水分離型のドレッシングへのサーモリシン加水分解物の使用が好適である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例、比較例及び参考例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0038】
〔ダイズペプチドの分子量〕
ダイズペプチドを25mM Tris-HCl緩衝液(150mM NaCl含有、pH7.5)に溶解し、1mg/mLの被験溶液を調製する。HPLCカラム Superdex peptide HR(10mm I.D.×30cm,Amersham Biosciences社製)を同じ緩衝液で平衡化し、このカラムに被験溶液を100μL注入する。カラムの流速は0.5mL/分、カラム温度は室温、ペプチドの検出は214nmで行い、溶出時間から分子量分布及びピーク平均分子量を推定する。なお、分子量既知のペプチド標品として、Cytochrome C(シグマ社製、分子量12327)、Aprotinin(シグマ社製、分子量6518)、Hexaglycine(シグマ社製、分子量360)、Triglycine(シグマ社製、分子量189)、及びGlycine(シグマ社製、分子量75)を用いた。
【0039】
〔ダイズペプチド中の遊離アミノ酸の総含有量〕
アミノ酸自動分析法によりサーモリシン加水分解物、あるいは市販ダイズペプチド中の各種遊離アミノ酸を定量し、それらを合計することにより遊離アミノ酸の総含量を求める。
【0040】
実施例1〜4及び比較例1〜4
市販のドレッシング〔和風たまねぎドレッシング、(株)サラダメイト8社製〕100mLに、表1に示すペプチドを表1に示す濃度となるように添加して、1〜2分間振り混ぜることにより溶解させて、実施例1〜4及び比較例1〜4のドレッシングを得た。
【0041】
試験例1〔油相と水相の分散時間測定〕
実施例1〜4及び比較例1〜4のドレッシングについて、1〜2分間振り混ぜて油相と水相の分散状態を形成させた後、静置して、再び、油相と水相が完全に分離するまでにかかる時間を分散時間として測定した。結果を表1に示す。なお、参考例1として、ペプチドを添加しないドレッシングについても、同様の試験を行った。
【0042】
試験例2〔官能試験〕
実施例1〜4及び比較例1〜4のドレッシングについて、参考例1(ポジティブコントロール)を基準として以下の評価基準に従い、パネラー6名により、風味についての官能試験を行った。結果を表1に示す。
【0043】
〔風味の評価基準〕
○:ダイズペプチド由来の異味、異臭を感じず、ポジティブコントロールと比べるとほとんどドレッシングの味が変わらない。
△:ダイズペプチド由来の異味、異臭を微妙に感じ、ポジティブコントロールと比べるとわずかにドレッシングの味に違いが感じられる。
×:ダイズペプチド由来の異味、異臭を感じ、ポジティブコントロールと比べるとドレッシングの味が変化した。
【0044】
【表1】

【0045】
以上より、サーモリシン加水分解物を含有する実施例1〜4のドレッシングは、比較例1〜4及び参考例1に比べて、油相と水相の分散状態を長時間形成することができ、かつ、サーモリシン加水分解物を含有しても風味が損なわれないものであることが分かった。また、サーモリシン加水分解物の添加濃度が高いほど、その分散状態を維持できる時間が長いことも判明した。
【0046】
試験例3〔官能試験〕
実施例4及び参考例1のドレッシングについて、パネラー10名による官能試験を行った。即ち、実施例4又は参考例1のドレッシング20gをそれぞれ100gの野菜にかけ、試験用のサラダAとサラダBを調製した。その後、サラダAとサラダBをパネラー10名に食用させ、食後20分に口や喉の渇きについて以下の基準に従って回答してもらい、その回答数を合計した。結果を表2に示す。なお、各サラダは試験直前に調製し、また、サラダAとサラダBの評価は同日に行ったものではなく、異なる日の同時間に行った。
【0047】
〔口や喉の渇きの評価基準〕
A:喉の渇く感じもなく、潤い感がする
B:喉の渇く感じがしないが、潤い感もない
C:喉の渇く感じがするが、水を飲まなくても良い
D:喉がとても渇き、どうしても水を飲みたい
【0048】
【表2】

【0049】
表2の結果より、サーモリシン加水分解物を含有する実施例4のドレッシングは、参考例1のドレッシングに比べて、食後の口や喉に潤いを与え、乾き難い良好な後口を与えることが分かった。以上のことから本発明で使用したサーモリシン加水分解物は油脂組成物に適していると言える。
【0050】
以下の配合例1及び2に示す原材料を用い、当業者に公知の方法に従って、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物として、「コラプラスTMN」(ピーク平均分子量:711、遊離アミノ酸の総含有量:0.14重量%、ロート製薬社製)を含有する油脂組成物を作製することができる。なお、単位は重量%である。
【0051】
配合例1:油脂分離型のドレッシング
[水相部]
リンゴ酢(酸度6%) 9.0
サーモリシン加水分解物 3.0
砂糖 4.0
食塩 3.0
グルタミン酸ナトリウム 0.1
香辛料 0.1
リンゴ果汁 5.0
玉ねぎ抽出物 8.0
ジェランガム 0.01
おろし大根 7.0
清水 15.79
[油相部]
コーンサラダ油 45.0
合計100.0重量%
【0052】
配合例2:マヨネーズ
[水相部]
卵黄 5.0
サーモリシン加水分解物 1.0
食塩 1.0
食酢(15%酸度) 2.2
水 6.8
[油相部]
菜種油 84.0
合計100.0重量%
【0053】
配合例3〜18 サーモリシン加水分解物含有油脂組成物の作製
表3に示す原材料を用い、当業者に公知の方法に従って、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物(コラプラスTMN)を含有する油脂組成物を作製することができる。なお、単位は重量%である。
【0054】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の油脂組成物は、油相と水相の良好な分散状態を長く維持することができ、風味を損なわないものであり、また、摂取することにより、摂取後の口や喉の渇きを低減することから、食品分野に好適に使用される。また、本発明の油脂組成物は、ダイズペプチドを含有することから、美肌・美容効果にも優れた効果を奏するものとして期待される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を含有してなる、油脂組成物。
【請求項2】
ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物の含有量が1〜20重量%である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
組成物がドレッシングである、請求項1又は2記載の組成物。


【公開番号】特開2009−201372(P2009−201372A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44563(P2008−44563)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】