説明

ダイナミックレンジを拡大する方法及びシステム

システムのダイナミックレンジの拡大の方法及びシステムを提供する。1つの方法は、粒子によって放射された蛍光を異なる強度を有する多重光路に分割し、多重信号を発生するための種々のチャネルを用いて多重光路内の蛍光を検出し、チャネルのどれがリニア範囲で動作しているかを多重信号に基づいて判定する。本方法は、異なる強度に対して補正するためにリニア範囲で動作中のチャネルによって発生された信号を変更する。別の方法は、異なる強度を有する光で多重照射域の粒子を照射し、多重信号を発生させるための多重照射域に位置している間に粒子によって放射された蛍光を別個に検出する。本方法は、信号のいずれがリニア範囲に位置するかを判定し、異なる強度に対して補正するためにリニア範囲にある信号を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にダイナミックレンジを拡大するための方法及びシステムに関する。特定の実施態様は、フローサイトメトリー用途でのダイナミックレンジ拡大の方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
以下の説明と例は、この節に含まれているからといって従来技術であるとは認められない。
【0003】
一般にフローサイトメータは、ポリスチレンビーズ、ヒト細胞、又は離散的物質がフローチャンバを線形的に通過する際のレーザなどの励起源への照射に起因して、これらが放射する蛍光の強度を測定するのに使用することができる。幾つかのシステムでは、4つの測定が存在する。すなわち、励起源に対して90度の角度で粒子により散乱される光レベル、粒子の「素性」を判定するのに使用される蛍光の2つ又はそれ以上の測定、関心のある界面化学反応の判定及び/又は定量化に特に使用される追加の蛍光測定である。蛍光測定の各々は通常、異なる波長において実施される。
【0004】
界面化学反応の蛍光測定は通常、粒子が励起源の照射域を通過する際の光電子倍増管(PMT)又は他の光電検出器の感光域上に粒子の画像を光学的に投影することによって定量化される。検出器の出力は、電流パルスであり、該電流パルスは次いでアナログ電子機器によって調整され、アナログデジタル(A/D)変換器によってデジタル化される。A/D変換器から結果として得られたデジタル値は、更にデジタル信号処理(DSP)アルゴリズムによってデジタル領域で調整することができる。粒子当たりの最終生成物は、粒子表面上の化学反応に比例する単一の整数値である。粒子の素性に関係する蛍光測定は、同様の方法で実行することができる。或いは、粒子の素性に対応する、粒子によって放射された蛍光の整数値は、粒子の素性を求める別の方法(例えば、整数値の比率等)において使用することができる。
【0005】
上述のフローサイトメトリーシステムのダイナミックレンジ(DR)は通常、測定可能な最小蛍光レベルに対する測定可能な最大蛍光レベルの比率として定義される。このように、DRが高いほど化学反応のレベル及び/又は粒子の素性を識別するときにより有用なシステムとなる。
【0006】
現在利用可能なフローサイトメータのDRは、システム内の各個々の要素(例えば、光電検出器、アナログ電子機器及びA/D変換器を含む主要構成部品)のDRによって制限される。通常、光のフォトン的性質だけでなく検出器の増幅方式に固有のノイズが目盛の下限の検出限界を定め、アナログ電子機器及びA/D変換器が最大測定可能蛍光レベルを制限する。市販されている既製の線形構成部品に関しては、フローサイトメータの有効ダイナミックレンジは、約4ディケード(1から10,000)までに限定される。通常、フローサイトメトリーシステムは、粒子からの最小の利用可能な蛍光信号レベルを識別するために設計及び較正されて、これによりシステムのDR限界に起因する最も明るいレベルの蛍光の測定能力が犠牲にされる。
【0007】
Auerらに付与された米国特許第5,367,474号では、第1の電気増幅器と後続の処理回路構成との間に挿入された電気利得段を使用する、フローサイトメータのDRを大きくする方法が示されており、該特許は引用により全体が説明されるように本明細書に組み込まれる。増幅器の周囲にバイパス経路も設けられる。小信号入力では、小信号を増幅するために追加の利得段が使用され、これまでの大きな信号に対してはバイパス経路を選択することができる。
【0008】
その技術は、小信号と大信号範囲の両方をカバーする上で適切に見えるが、電気利得段が信号経路内に挿入される場合には、小信号レベルにノイズが加わる点で不利である。最大の電気的システム利得が最初の回路構成段でもたらされる場合に最良の信号ノイズ比が生じることは、フローサイトメータ設計の当業者には公知である。従って、フォトン・電子利得係数を求め、実際の最初の利得段である光電子倍増管上でのバイアスが最大化されるべきであり、後続の利得段は最小化されるべきである。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,367,474号公報
【特許文献2】米国特許第5,736,330号公報
【特許文献3】米国特許第5,981,180号公報
【特許文献4】第6,057,107号公報
【特許文献5】米国特許第6,268,222号公報
【特許文献6】米国特許第6,449,562号公報
【特許文献7】米国特許第6,514,295号公報
【特許文献8】米国特許第6,524,793号公報
【特許文献9】米国特許第6,528,165号公報
【特許文献10】米国特許第6,649,414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、最初の利得段において小信号レベルにノイズを加えることなく最大の信号対ノイズ比を生成するように、フローサイトメータなどの測定システムのダイナミックレンジを増大させることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ダイナミックレンジ拡大のための方法及びシステムの種々の実施態様の以下の説明は、添付の請求項の主題をどのようにも制限するものとして解釈されるべきではない。
【0012】
1つの実施態様は、粒子によって放射された蛍光を多重光路に分割することを含むシステムのダイナミックレンジを拡大する方法に関する。多重光路内での蛍光は異なる強度を有する。本方法は、多重信号を発生するための種々のチャネルを用いて多重光路内での蛍光を検出することを含む。多重信号の各々は多重光路の1つにおける蛍光を表す。加えて本方法は、種々のチャネルのどれがリニア範囲で動作しているかを多重信号に基づいて判定することを含む。本方法は更に、異なる強度に対して補正するために、リニア範囲で動作中であると判定されたチャネルによって発生された信号を変更することを含む。
【0013】
1つの実施態様では、粒子によって放射された蛍光が粒子の素性に対応する。別の実施態様では、粒子によって放射された蛍光が、粒子に付着された付加分子と反応した分子に対応する。幾つかの実施態様では、本システムは、フローサイトメータとして構成可能である。別の実施態様では、本方法は、粒子によって放射された蛍光の強度を変更された信号から求めることを含む。追加の実施態様では、信号を変更することがシステムのダイナミックレンジを増大させる。
【0014】
更なる実施態様では、第1の多重光路内の蛍光は第2の多重光路内の蛍光よりも強度が低い。このような1つの実施態様では、本方法は、検出するステップの前に、第1の多重光路内の蛍光の強度を低下させることを含む。上述の方法の実施態様の各々は、本明細書で説明するあらゆる他のステップを含むことができる。
【0015】
別の実施態様は、拡大されたダイナミックレンジを有するように構成されたシステムに関する。本システムは、粒子によって放射された蛍光を多重光路に分割するように構成された光学構成部品を含む。多重光路内の蛍光は異なる強度を有する。本システムは、多重光路内の蛍光を別個に検出して、多重信号を発生するように構成された種々のチャネルを含む。多重信号の各々は、多重光路の1つにおける蛍光を表す。更に本システムは、様々なチャネルのどれがリニア範囲で動作しているかを多重信号に基づいて判定し、異なる強度に対して補正するためにリニア範囲で動作中であると判定されたチャネルによって発生された信号を変更するように構成されたプロセッサを含む。
【0016】
粒子によって放射された蛍光は粒子の素性に対応する。或いは、粒子によって放射された蛍光は、該粒子に付着された付加分子と反応した分子に対応する。幾つかの実施態様では、本システムは、フローサイトメータとして構成可能である。追加の実施態様では、プロセッサは、粒子によって放射された蛍光の強度を変更された信号から求めるように構成することができる。信号を変更することで、適切にシステムのダイナミックレンジを増大させる。
【0017】
1つの実施態様では、種々のチャネルの各々は、光電子倍増管、フォトダイオード、アバランシェ・フォトダイオード、電荷結合素子(CCD)、又は相補型金属酸化物半導体(CMOS)検出器を含む。別の実施態様では、種々のチャネルの各々は、当業界で公知のいかなる種類のダイオード型検出器又はいかなる種類のリニアアレイ型検出器を含む。別の実施態様では、第1の多重光路内の蛍光は第2の多重光路内の蛍光よりも強度が低い。1つのこのような実施態様では、本システムは、第1の多重光路内で光学構成部品と種々のチャネルの1つとの間に配置された追加の光学構成部品を含む。追加の光学構成部品を、第1の多重光路内での蛍光の強度を減少させるように構成させることができる。上述の本システムの実施態様の各々は、本明細書で説明するように構成させることができる。
【0018】
追加の実施態様は、システムのダイナミックレンジを拡大するための別の方法に関する。本方法は、異なる強度を有する光で多重照射域で粒子を照射することを含む。本方法は、多重信号を発生するため、多重照射域内に粒子が位置している間に粒子によって放射された蛍光を別個に検出することを含む。多重信号の各々は、多重照射域の1つにおいて位置付けされた間に粒子によって放射された蛍光を表す。加えて本方法は、多重信号のいずれがリニア範囲にあるのかを判定することを含む。本方法は更に、異なる強度に対して補正するために、リニア範囲にある信号を変更することを含む。
【0019】
1つの実施態様では、多重照射域は、粒子のフロー経路に沿って離して配置される。粒子が最初位置付けられる第1の多重照射域は、粒子が続いて位置付けられる第2の多重照射域よりも低い強度である。幾つかの実施態様では、粒子によって放射された蛍光は、粒子の素性に対応する。別の実施態様では該粒子によって放射された蛍光は、粒子に付着された付加分子と反応した分子に対応する。上述の本方法の実施態様の各々は、本明細書で説明するあらゆる別のステップを含むことができる。
【0020】
別の実施態様は、拡大されたダイナミックレンジを有するように構成された別のシステムに関する。本システムは、異なる強度を有する光で多重照射域の粒子を照射するように構成された照射サブシステムを含む。本システムは、粒子が多重照射域に位置している間に粒子によって放射された蛍光を別個に検出し、多重信号を発生するように構成された検出サブシステムを含む。多重信号の各々は、粒子が多重照射域の1つに位置している間に粒子によって放射された蛍光を表す。加えて、本システムは、多重信号のいずれがリニア範囲にあるのかを判定して、異なる強度に対して補正するためにリニア範囲にある信号を変更するように構成されたプロセッサを含む。
【0021】
1つの実施態様では、多重照射域は粒子のフロー経路に沿って離して配置される。粒子が最初に位置付けられる第1の多重照射域は、粒子が続いて位置付けられる第2の多重照射域よりも低い強度である。
【0022】
幾つかの実施態様では、照射サブシステムは単一光源を含む。1つのこのような実施態様では、照射サブシステムは、単一光源によって放射される光ビームの経路内に配置され、更に光ビームに対してある角度で配置されたガラススライドを含む。別の実施態様では、照射サブシステムは、単一光源によって放射される光ビームの経路内に配置された非平行表面を備えるガラス製ウェッジを含む。別の実施態様では、照射サブシステムは、単一光源に結合された複数の光ファイバーケーブルを含む。更に別の実施態様では、照射サブシステムは、単一光源に結合された1つ又はそれ以上のデマルチプレクサを含む。更に別の実施態様では、照射サブシステムは、単一光源によって放射される光ビームの経路内に配置された回折格子を含む。別の実施態様では、照射サブシステムは、2つ又はそれ以上の光源を含む。
【0023】
幾つかの実施態様では、検出サブシステムは、単一検出器を含む。単一検出器は、光電子倍増管、或いはフォトダイオード、アバランシェ・フォトダイオード、CCD、CMOS検出器のような当業界で公知のあらゆる別の適切な検出器、又は当業界で公知のダイオード又はリニアアレイ型検出器の種類のあらゆる別の適切なものを含む。別の実施態様では、検出サブシステムは多重検出器を含む。多重検出器の各々は、光電子倍増管、或いはフォトダイオード、アバランシェ・フォトダイオード、CCD、CMOS検出器のような当業界で公知のあらゆる別の適切な検出器、若しくは、当業界で公知のダイオード又はリニアアレイ型検出器のあらゆる別の適切なタイプを含むことができる。上述の本システムの実施態様の各々は、本明細書で説明するように更に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の他の目的及び利点は、以下の詳細な説明を読み添付図面を参照すると明らかになるであろう。
本発明は、種々の修正及び代替形態が容易に可能であるが、その特定の実施形態は、例として図面中に示され、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、図面とその詳細な説明は、開示される特定の形態に本発明を限定するものではなく、逆にその意図は、添付の請求項によって定義される本発明の精神及び範囲内に含まれる全ての修正物、均等物、代替物を保護するものである点を理解されたい。
【0025】
本明細書では実施形態は粒子に関して説明するが、本明細書で説明するシステム及び方法は、微小球、ポリスチレンビーズ、微小粒子、金ナノ粒子、量子ドット、ナノドット、ナノ粒子、ナノシェル、ビーズ、マイクロビーズ、ラテックス粒子、ラテックスビーズ、蛍光ビーズ、蛍光粒子、着色粒子、着色ビーズ、細胞組織、細胞、微生物、有機物、無機物、又は当該技術分野で公知の別のあらゆる離散的物質と共に用いることができる点を理解されたい。粒子は、分子反応の媒介物としての機能を果たす。適切な粒子の例は、Fultonに付与された米国特許第5,736,330号、Chanlerらに付与された米国特許第5,981,180号、Fultonに付与された第6,057,107号、Chanlerらに付与された第6,268,222号、Chanlerらに付与された第6,449,562号、Chanlerらに付与された第6,514,295号、Chanlerらに付与された第6,524,793号、Chanlerに付与された第6,528,165号で例証されており、これらは、本明細書で全て説明するように引用により本明細書に組み込まれる。本明細書で説明するシステム及び方法は、これらの特許において説明された粒子のいずれかと共に使用することができる。更に、フローサイトメトリーで使用する粒子は、テキサス州AustinのLuminex Corp.,のような製造業者から入手することができる。用語「粒子」及び「微小球」とは、本明細書では同義語として使用される。
【0026】
加えて、本明細書で説明する本システム及び方法に適合する粒子の種類は、粒子表面に付着又は関係付けられた蛍光物質を備える粒子を含む。蛍光を分類する目的で蛍光色素又は蛍光粒子がその粒子表面に直接結合されるこれらの種類の粒子は、Chanlerらに付与された米国特許第6,268,222号、Chanlerらに付与された米国特許第6,649,414号で説明され、該特許は本明細書で全て説明したように引用により本明細書に組み込まれる。本明細書で説明する本方法及びシステムで使用することができるこの種類の粒子は、粒子のコア内に1つ又はそれ以上の蛍光色素を組み込んだ粒子を含む。本明細書で説明する本方法及びシステムで使用することができる粒子は、1つ又はそれ以上の適切な光源で照射したときに1つ又はそれ以上の蛍光信号をそれら自体が示すことになる粒子を含む。更に、励起時に粒子が複数の蛍光信号を示すように粒子を製造することができ、その各々を別個に又は組み合わせて用いて粒子の素性を判定することができる。
【0027】
本方法及びシステムを、「粒子によって放射される蛍光」に関して本明細書で説明するが、この蛍光とは、励起源による粒子の照射の結果として放射されるいかなる蛍光をも含むと理解されたい。例えば上述のように、粒子によって放射される蛍光は、粒子に付着又は組み込まれた1つ又はそれ以上の蛍光色素によって放射された光、又粒子自体が放射する光とすることができる。このように、粒子によって放射される蛍光は粒子の素性に対応する。或いは、粒子が放射する蛍光は、粒子に付着された付加分子と反応した分子に対応することもある。換言すれば、粒子によって放射される蛍光は、例えば、蛍光生体分子又は粒子表面に付着された別の生体分子(例えば、1つ又はそれ以上の別の生体分子を介して)を含む粒子に関係付けられた1つ又はそれ以上の材料を表す。1つの特定の例では、抗原は粒子表面に結合され、該抗原は試料からの抗体と反応し、該抗体はまた蛍光標識抗体と反応する。従って、蛍光標識抗体は、粒子から離れた3つの分子であるが、該蛍光標識抗体は、反応によって粒子と関係付けられる。よって本明細書で説明する方法及びシステムは、1つの用途において表面が閉じた標識生体分子からの蛍光の測定に使用することができる。同様の方法で粒子と関係付けることができる生体分子の別の例には、限定ではないが、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、酵素等が含まれる。
【0028】
関係技術部分の説明で上述したように、電気的システムの後段で利得を増大させ、小信号レベルへのノイズを付加することを含む、ダイナミックレンジを拡げる現在利用可能なシステム及び方法の欠点に対処するために、信号処理チェーンの最前部に近接して高利得段を保持する優れた方法及びシステムを本明細書で説明する。
【0029】
ここで図面を参照すると、本明細書で説明される図面は縮尺通りに描かれていない点に留意されたい。特に、図面の要素の一部の縮尺は、要素の特徴を強調するために大きく誇張されている。システムの一部の要素は、明瞭にするために図面に含まれていない。
【0030】
図1は、最も明るい粒子から放射された蛍光の強度の正確な測定に利用することができる拡大すなわち拡げられたダイナミックレンジ(DR)を有するように構成されたシステムの1つの実施形態を示す。本システムはフローサイトメータとして構成されている。しかしながら、本システムは、拡げられたすなわち拡大されたDRを有することから恩恵を受ける他のあらゆる測定システムとして構成できる。本システムは光源10を含む。光源10は、粒子がキュベット16を通過するときに光14で粒子12を照射するように構成される。キュベット16は、当該技術分野で公知のいずれかの適切なキュベットを含み、又別のチャネルを含んでもい。光源10は、レーザ、レーザダイオード、又は発光フォトダイオード(LED)のような当該技術分野で公知のいずれかの適切な光源でよい。光源は励起源を含むのが好ましい。換言すれば、光源10は、光による照射の際に粒子12が蛍光18を放射することになるような1つ又はそれ以上波長を有する光14を発生するように構成されるのが好ましい。
【0031】
蛍光18は、レンズ20によって集光することができる。レンズ20は、当該技術分野で公知のいずれかの適切なレンズを含む。加えて、レンズ20は、図1では屈折性光学構成部品であるように示されているが、レンズ20の代わりに反射性光学構成部品を用いて、粒子によって放射される蛍光を集光することができる点を理解されたい。加えて、レンズ20は、図1では単レンズであるように示されているが、マルチレンズシステムで置き換えてもよいことを理解されたい。更に本システムは、任意選択的に、レンズ20又はいずれの別の蛍光集光器を含まない場合がある。加えて、図1に示す本システムは、1つより多いレンズ及び/又は別のレンズを含むことができることを理解されたい。例えば、本システムは、光14を粒子12に合焦するように構成された合焦レンズ(図示せず)を含むことができる。
【0032】
本システムは、粒子によって放射された蛍光を多重光路に分割するように構成された光学構成部品22を含む。図1に示す実施形態では、光学構成部品22は、レンズ20によって集光された蛍光を多重光路に分割するように構成される。多重経路内での蛍光は異なる強度を有する。光学構成部品は、1つの実施形態では、部分反射ビームスプリッタ又は当該技術分野で公知のいずれかの別の適切な光学構成部品を含むことができる。1つの特定の例では、光学構成部品は、コーティングされていないビームスプリッタを含む。コーティングされていないビームスプリッタは、入射エネルギー(この場合蛍光18)の約4%を反射し、入射エネルギーの残りの部分(即ち蛍光の約96%)を透過させることになる。
【0033】
光学構成部品による透過光の強度は、標準的フローサイトメータ構成における強度よりも低く、粒子に関する蛍光の飽和レベルまで到達していないと仮定すれば、この蛍光強度の減少は、強度の減少に比例して光源10の出力(又は強度)を増大させることによって任意選択的に容易に補償することができる点に留意されたい。
【0034】
図1に示すように、光学構成部品は、蛍光を2つの光路に分割するように構成される。しかしながら、光学構成部品は、放射された蛍光を2つより多い光路に分割するように構成することができる点を理解されたい。例えば、光学構成部品は、本明細書で更に説明するように構成可能な非平行面を有するガラス製のウェッジを含むことができる。加えて光学構成部品22は、1つの光ビームを複数の光ビームに分割するのに利用可能な本明細書で説明する他の光学構成部品のいずれかを含むことができる。更に、本システムが、蛍光を多重光路に分割するように構成された1つより多い光学構成部品を含むことができることを理解されたい。例えば、本システムは、1つより多い部分反射ビームスプリッタを含むことができる。蛍光が分割される光路数は、例えば、検出器の異なる動作している範囲の数、及び/又は多重光路の各々において達成可能な異なる強度の数に応じて変わる可能性がある。
【0035】
本システムは、多重光路内で別個に蛍光を検出するように構成された種々のチャネルを含む。種々のチャネルは多重信号を発生するように構成される。多重信号の各々は、多重光路の1つの蛍光を表す。例えば図1に示すように、本システムは、検出器24、26を含み、その各々は、種々のチャネルの1つの少なくとも一部を構成する。検出器24は、光学構成部品22によって透過された蛍光を検出するように構成される。検出器24は、光路B(明るい(bright)のB)内の蛍光強度を表す信号を発生するように構成される。検出器24は、光電子倍増管(PMT)又は当該技術分野で公知のいずれかの別の適切な検出器とすることができる。例えば検出器24は、フォトダイオード、アバランシェ・フォトダイオード、電荷結合素子(CCD)、又は相補型金属酸化物半導体(CMOS)検出器とすることができる。加えて、検出器24は、当該技術分野で公知のどのような種類のダイオード型検出器、又はどのような種類のリニアアレイ型検出器であってもよい。検出器26は、光学構成部品22によって反射された蛍光を検出するように構成される。また、検出器26は光路D(薄暗い(dim)のD)における蛍光強度を表す信号を発生するように構成される。検出器26は、PMT又は当該技術分野で公知のいずれかの別の適切な検出器とすることができる。例えば検出器26は、フォトダイオード、アバランシェ・フォトダイオード、CCD、又はCMOS検出器とすることができる。加えて、検出器26は、当該技術分野で公知のどのような種類のダイオード型検出器、又はどのような種類のリニアアレイ型検出器であってもよい。通常、検出器24、26は、同じ種類の検出器になるが、しかしながら、様々な光路での異なる蛍光強度に応じて異なる範囲(例えば、リニア及び非リニア)で動作することになる。
【0036】
図1に示すように検出器24、26はそれぞれ電子構成部品28、30に結合される。電子構成部品28、30は、例えば、アナログデジタル(A/D)変換器、又は何らかの別の適切な電子構成部品を含むことができる。加えて、電子構成部品28、30は、それぞれ検出器24、26の全電子チェーンの一部だけを形成できる。例えば、アナログ構成部品(図示せず)を、検出器とA/D変換器との間に挿入することができる。更に或いは代替的に、電子チェーンは、A/D変換器の出力に結合されたデジタル構成部品(図示せず)を含むことができる。これらの任意選択的なアナログとデジタル構成部品は、当該技術分野で公知のこのようないずれかの適切な電子構成部品を含むことができる。更に検出器24、26に結合された電子チェーンは、同様に又は異なるように構成することができる。
【0037】
図1に示す本システムはまたプロセッサ32を含む。プロセッサ32は、種々のチャネルのどれがリニア範囲で動作しているかを種々のチャネルによって生成された信号に基づいて判定するように構成される。更に、プロセッサ32は、異なる強度に対して補正するために、リニア範囲で動作中であると判定されたチャネルによって生成された信号を変更するように構成される。プロセッサ32は、例えば、少なくとも本明細書で説明する機能を実施する1つ又はそれ以上のプログラム命令の実行に利用可能なデジタル信号処理器(DSP)又はいずれかの別の適切な構成部品を含むことができる。
【0038】
上述のコーティングされていないビームスプリッタ光学構成部品に基づく特定の例では、プロセッサは、検出器の各々に結合されたA/D変換器からの出力整数値(B及びD)を調べる。信号レベルに基づいて、プロセッサは、どのチャネルが検出器に対してリニア範囲で動作しているかを判定する。プロセッサは、リニア範囲で動作しているチャネルに対応する値を適切に変更すなわちスケーリングして、当該光電検出器に入射する実際の光レベルを補正する。このことの簡単な例では、プロセッサは、D(薄暗)A/D出力に1/0.04=25を乗じ(選択された場合)、又は代替的に、B(明るい)A/D出力に1/0.96=1.041を乗じて(選択された場合)、光学構成部品22によって生成された光電検出器間での光の分割に基づく結果を正確にスケーリングするであろう。リニア範囲で動作するチャネルに対応する信号のこのような変更又はスケーリングは、システムのダイナミックレンジをlog(25/1.041)=1.38ディケードだけ効果的に増大させる。
【0039】
プロセッサは、幾つかの追加機能を実行するように構成させることができる。例えば、プロセッサは、粒子によって放射された蛍光の強度を変更された信号から求めるように構成することができる。更に、プロセッサは、システムによって発生された1つ又はそれ以上の別の出力信号と場合によっては組み合わせて粒子の素性を蛍光強度から求めるように構成することができる。或いはプロセッサは、粒子表面に付着された分子の素性又は粒子の表面上で起こった反応を蛍光強度から求めるように構成することができる。加えて、プロセッサは、粒子の表面に付着された分子量又は粒子表面上で起こった反応を蛍光強度から求めるように構成することができる。プロセッサは、フローサイトメータのデータ解析で通常実行されるあらゆる他の機能を実行するように構成することができる。
【0040】
上述のダイナミックレンジの改善は、多重光路における蛍光強度間の差異を増大させることによって更に高めることができる。1つのこのような実施形態では、光学構成部品22によって反射される光の強度は、光学構成部品の入力面への反射防止コーティング(図示せず)を塗布することによって減少させることができる。別の実施形態では、図1に示すように、本システムは、より低い強度の蛍光の光路内に光学構成部品22と検出器26との間に配置された追加の光学構成部品34を含むことができる。追加の光学構成部品は、この光路内の蛍光強度を減少させるように構成される。追加の光学構成部品34は、減光フィルタのような蛍光強度の減少に利用可能なあらゆる光学構成部品を含むことができる。これらの構成の各々は、検出器26によって検出される蛍光強度を効果的に減少させ、従って本システムのDRを更に拡大すなわち拡げる。
【0041】
図1に示すシステムは、本明細書で説明するように更に構成することができる。加えて、図1に示す本システムは、1つだけの蛍光測定に対して広くされたすなわち拡大されたDRを有するように構成されたが、複数の蛍光測定が本システムによって実行される場合には、本システムのDRは、上述の方法での蛍光測定の各々又は1つより多くについて拡大させることができる点を理解されたい。例えば、粒子によって放射された蛍光は、1つの例において1つ又はそれ以上のダイクロイックビームスプリッタ(図示せず)を使用して、波長によって分離することができる。このようにして蛍光は、該蛍光を放出した蛍光色素に基づいて分離することができる。従って、粒子の素性に対応する蛍光を、粒子に付着された分子に対応する蛍光から分離することができる(例えば、粒子表面に付着された別の分子との反応を介して)。更に、1つ又はそれ以上のダイクロイックビームスプリッタによって発生された蛍光光路の2つ又はそれ以上は、多重光路における蛍光が異なる強度を有するように上述の多重光路に分割することができる。その結果、多重光路における蛍光は、上述のように検出し処理することができる。
【0042】
図1に示すシステムによって実行可能なシステムのダイナミックレンジを拡大する1つの方法は、蛍光を多重光路に分割することを含む。多重光路の蛍光は、異なる強度を有する。本方法は、多重信号を生成するための種々のチャネルで多重光路内の蛍光を検出することを含む。多重信号の各々は、多重光路の1つにおける蛍光を表す。更に本方法は、種々のチャネルのどれがリニア範囲で動作しているかを多重信号に基づいて求めることを含む。本方法は更に、異なる強度に対して補正するためリニア範囲で動作していると判定されたチャネルによって発生された信号を変更することを含む。
【0043】
1つの実施形態では、本システムは、拡げられたすなわち拡大されたDRを有することによる恩恵を受けるフローサイトメータ又は別の測定システムとして構成することができる。別の実施形態では、本方法は、粒子によって放射される蛍光の強度を変更された信号から決めることを含む。上述のように信号を変更することが、本システムのダイナミックレンジを増大させる。
【0044】
幾つかの実施形態では、第1の多重光路における蛍光は、第2の多重光路における蛍光よりも強度が低い。1つのこのような実施形態では、本方法は、検出するステップの前に、第1の多重光路における蛍光の強度を減少させることを含む。上述の方法の実施形態の各々は、本明細書で説明する他のあらゆるステップを含むことができる。
【0045】
上述のシステム及び方法の実施形態は、小信号の処理チェーンの開始において高い利得を保持するので有利であるが、上述のシステム及び方法は、第2の光電検出器、アナログ電子機器、A/D変換器回路のコスト増に起因してより高価になる。幸いにも、フローサイトメータの形状寸法により、この多重光レベル測定をはるかに少ない構成部品で行う別の方法がある。
【0046】
例えば、別の方法及びシステムは、粒子のフローチャネルに沿って空間的に分離された多重照射域の使用を伴う。上述のフローサイトメータでは、被測定粒子は、キュベットを通ってほぼ直線の経路に沿って進み、照射域を通過して、粒子に関係付けられた1つ又はそれ以上の蛍光色素の励起を生じる。結果として生じた蛍光は、検出器の感光域の一部上に投影、合焦、及び/又は撮像されると同時に、粒子が照射域内で照射され、結果として単一電流パルスが検出器によって発生される。集光器又は収集レンズの倍率は、粒子によって放射される蛍光が検出器の感光域の一部だけを満たすように選択することができる。換言すれば、検出器の感光域は、検出器上に投影、合焦、及び/又は撮像される蛍光ビームの断面積と比較して相対的に長くすることができる。従って、理論的には、粒子が照射域に位置されないときでも粒子は検出器によって依然として「見る」ことができる。しかしながら蛍光は、粒子に関係付けられる蛍光色素を励起することなく瞬時に消滅することになるので、粒子が照射域に位置されないときには、どのような信号も検出器によって生成されない。従って、検出器によって発生されるパルス幅は一般的に、粒子が照射域に位置している時間の長さに比例する。
【0047】
従って、本明細書で説明するダイナミックレンジを拡げる方法及びシステムにおいて検出器の空間的に「長い」感光区域を利用することができる。例えば、該システムに対して、あまり明るくはないが第2の照射域を追加することができ、これは主照射域からは空間的に分離される。従って、これらの照射域の両方における照射の結果として粒子によって放射される蛍光は、検出器の感光域の異なる部分に向けることができる。このようにして、検出器は、時間的に分離された2つの電流パルスを生成することになり、照射域での光の強度が異なることによって、一方のパルスは他のパルスよりもはるかに大きい強度であろう。
【0048】
DSPのようなプロセッサを、各電流パルスの振幅を測定し、上述の方法と同様にしていずれの信号が検出器のリニア範囲に位置するかを判定するように構成することができる。プロセッサは、リニア範囲に位置する信号を照射域の励起エネルギー比率に比例して変更又はスケーリングするように構成されてもよい。すなわち、システム内には単一の検出器と関連する電子機器だけを含むことができる。従って、下記に説明するシステムは、複数の検出器や関連電子機器に関するコストが排除される。しかしながらこの課題は今や、追加の薄暗い照射域を生成するためのコスト効率の良い方法を提供する。この課題に対処するために、異なる強度を有する光で多重照射域内の粒子を照射するコスト効率の良い方法を提供する、システムの幾つかの実施形態が知られており、本明細書で詳細に説明する。
【0049】
明るい照射域と薄暗い照射域の順序が重要な場合がある点に留意することが大切である。具体的には、粒子は、最初に薄暗い照射域を通り、次いで明るい照射域を通って進むのが好ましい。逆に、粒子が明るい照射域を通った後に薄暗い照射域を進む場合には、アナログ電子機器が、薄暗照射域での粒子の照射から生じるパルスを正確に再生するよう時間内に処理できない場合がある。粒子が照射域内を通って進む順序の選定における別の要因は、明るい照射域での照射によって粒子に関係付けられた蛍光色素が光崩壊する可能性である。従って、最初に粒子を薄暗照射域内で照射し、次いで明るい照射域内で照射するのが好ましい。
【0050】
図2は、拡大されたDRを有するように構成されたシステムの1つの実施形態を示す。本システムは、光源35、37を含む照射サブシステムを含む。光源35、37は、異なる強度を有する光で多重照射域38、40内でそれぞれ粒子36を照射するように構成される。図2では照射サブシステムは2つの光源を含むように図示されているが、図2に示すシステムは、2つ又はそれ以上の光源を含むことができる点を理解されたい。代替形態では、照射サブシステムは、ビーム倍増器に結合された単一光源を含むことができ、該ビーム倍増器は、本明細書で説明するビーム倍増器のいずれを含んでもよい。
【0051】
図2に示すように、照射域38、40は、粒子36のフロー経路42に沿って間隔を置いて配置される。このようにして、粒子36が上述のように構成可能なキュベット44を通って進むと、粒子は、照射域38内に入り、次いで照射域40内に入る。このように上述の理由によって、照射サブシステムは、照射域38内で粒子粒子に向けられる光が、照射域40内で粒子粒子に向けられる光よりも低い強度を有するように構成されるのが好ましい。照射サブシステムは、本明細書で説明するように更に構成することができる。加えて、図2では2つの照射域が示されているが、照射サブシステムは、2つより多い照射域の粒子を照射し、その各々は粒子のフロー経路に沿って空間的に分離されるように構成することができる点を理解されたい。
【0052】
図2に更に図示されるように、異なる照射域の粒子によって放射された蛍光は、レンズ46で集光される。レンズ46は、上述のように構成することができる。加えて、レンズ46は、状況によってはシステム内に含まれない場合がある点を理解されたい。
【0053】
図2に示すシステムは、粒子が多重照射域に位置している間は、粒子によって放射された蛍光を別個に検出するように構成された検出サブシステムを含む。検出サブシステムは、粒子が多重照射域の1つに位置している間は、多重信号を発生するように構成され、その各々は粒子によって放射された蛍光を表す。例えば、本実施形態では、検出サブシステムは、感光域50を有する検出器48を含む。このように検出サブシステムは、単一の検出器を含む。検出器48は、PMT、或いはフォトダイオード、アバランシェ・フォトダイオード、CCD、CMOS検出器といった当該技術分野で公知の何らかの他の適切な検出器、もしくは当該技術分野で公知のダイオード又はリニアアレイ検出器の他のいずれかのタイプとすることができる。
【0054】
図2に示すように感光域50は、粒子が照射域38内に位置している間、粒子によって放射された蛍光52の面積よりも大きい。また、感光域50は、粒子が照射域40内に位置している間、粒子によって放射される蛍光54の面積よりも大きい。更に感光域50は、蛍光52、54の組み合わされた面積よりも大きい。このようにして、蛍光52、54は、感光域50の空間的に分離された部分に向けることができる。代替的な実施形態では、検出サブシステムは、検出器48の代わりに多重検出器(図示せず)を含むことができる。照射域の各々での照射によって粒子が放射する蛍光は、異なる検出器に向けることができる。幾つかのこのような実施形態では、多重検出器の各々は、PMT、或いはフォトダイオード、アバランシェ・フォトダイオード、CCD、CMOS検出器といった当該技術分野で公知の何らかの他の適切な検出器、もしくは当該技術分野で公知のダイオード又はリニアアレイ検出器の他のいずれかのタイプとすることができる。
【0055】
粒子36が照射域38内にあるときには、検出器48は蛍光52を表す信号を発生する。粒子が照射域40内にあるときには、検出器48は蛍光54を表す信号を発生する。図3は、図2の検出サブシステム及び本明細書で説明する別の実施形態によって発生する信号の例を示すプロットである。図3に示すように、粒子が第1の照射域(例えば、照射域38)内にいる間に粒子によって放射された光を表す、検出サブシステムによって発生される信号は、粒子が第2の照射域(例えば、照射域40)内に位置している間に粒子によって放射された蛍光を表す、検出システムによって発生された信号よりもはるかに低い値を有する。信号の値の差異は、異なる照射域において粒子を照射する光の強度の直接の結果である。好ましくは、異なる照射域において粒子を照射する光の強度は、信号の1つが検出器のリニア動作している範囲で発生するように選択される。
【0056】
本システムは、上述のように検出器に結合可能な(例えば、1つ又はそれ以上のアナログ及び/又はデジタル電子構成部品を介して)プロセッサ(図示せず)を含む。プロセッサは、多重照射域の1つにおける粒子の照射に起因して検出器48によって発生された多重信号のいずれが検出器のリニア範囲で生成されたかを判定するように構成される。プロセッサは、異なる強度に対して補正するために、検出器のリニア範囲に位置付けられた信号を変更又はスケーリングするように構成される。例えば、プロセッサは、検出器のリニア範囲で位置付けられた信号を、異なる照射域の粒子を照射する異なる光の強度に比例してスケーリングするように構成することができる。プロセッサは、上述のように更に構成することができる。加えて図2に示すシステムは、本明細書で説明するように更に構成することができる。
【0057】
図2で説明した照射サブシステムは、レーザなどの2つ又はそれ以上の光源を含むことができる。光源の各々は、多重照射域の1つに対して照射を行うように構成することができる。レーザなどの1つ又はそれ以上の光源をシステムに追加すると、システムのコストが増大する。ある照射域での光の強度が、他の光の強度よりもはるかに小さいことが好ましいので、廉価なLEDと比較的狭帯域幅のバンドパスフィルタを2次光源として利用することができる。このようにして、システムのコストを実質上増大させることなく追加の光源をシステムに付加することができる。しかしながら、本明細書で説明する別の実施形態では、本システムは、単一光源によって発生された光を異なる強度を有する複数の光ビームに分割するように構成された1つ又はそれ以上の光学構成部品に結合された単一光源を含むことができる。
【0058】
図4は、拡大されたDRを有するように構成されたシステム内に含むことができる照射サブシステムの1つの実施形態を示す。図4に示すように、照射サブシステムは、単一光源56によって放射される光ビーム60の経路内に配置されたガラススライド58に結合されるレーザのような単一光源56を含む。更に図4に示すように、ガラススライド58は、光ビーム60に対して角度Θ1で配置される。このようにしてガラススライドを、ビーム倍増器として構成することができる。例えば、光ビーム60は、ガラススライド58に入り、ガラススライド58のコーティングされていない空気ガラス界面の境界で、光ビーム60の一部が光源に向って後方に反射される。従って、ガラススライド58を出る光ビーム62は、単一光源によって発生された光ビームの強度よりも低い強度を有する。反射光の一部がガラススライド58の第1の表面から再度部分的に反射し、次いで光ビーム64として第2の表面を出る。光ビーム60の比較的小さな部分が光源に向って後方に反射され、ガラススライド58の第1の表面から反射された光の一部は、ガラススライドの第2の表面によって再反射されることになるので、光ビーム64は、光ビーム62よりも低い強度を有することになる。光ビーム66のような追加の光ビームを、このようにして発生させることができる。追加の光ビームの各々は、その前にガラススライドから出た光ビームよりも低い強度を有することになる。
【0059】
ガラススライドは、単一光源に対してある角度で傾斜しているので、光ビーム62、64、66の間に物理的な分離が存在する。従って、光ビーム62、64、66は、粒子のフロー経路(図示せず)に沿って離して配置された照射域70、72、74にそれぞれ向けられる。粒子がキュベット68を通って進むと、粒子は、照射域74を通って進む。粒子は、照射域74を通って進んだ後に、照射域74よりも大きい強度を有する照射域72を通って進む。照射域72を通って進んだ後に、粒子は、照射域72よりも大きい強度を有する照射域70を通って進むことになる。上述のようなこの方法では粒子は、徐々により高い強度を有する照射域で照射される。光ビーム間の距離は、この角度Θ1にほぼ比例する。
【0060】
ガラススライドの角度は、光ビーム62、64、66が互いにほぼ平行で且つほぼ同一の直径を有するように選択される。従って、単一合焦レンズ(図示せず)は、粒子がそれに沿ってキュベット内を進む経路上にガラススライドから出る光ビームを合焦するように構成される。代替的に又はこれに加えて、合焦レンズ(図示せず)を、単一光源56によって発生された光ビームの経路内に位置付けることができる。加えて、単一集光レンズ(図示せず)を、粒子によって放射される蛍光を集光するように構成することができる。合焦及び集光レンズは、上述のように更に構成させることができる。
【0061】
更に、ガラススライドから出る各比較的低強度のビームの強度は、有意に減少することになる。例えば、空気ガラス界面での反射率が2%である場合には、この減少は、ビーム62、64の相対強度を比較することによって、log10(0.02×0.02×0.98)=3.4ディケードとして計算することができる。従って、図4に示す照射サブシステムの最初の2つのビームは、照射域の間のDRを3ディケードより多く付加することができる。3.4ディケード減少した別のビーム(例えば、光ビーム66)(第1のビームから−6.8ディケード)が存在し、場合によっては第3の照射域として使用可能である点に留意されたい。減少した強度の光ビームのパターンは、減少する振幅で繰り返すが、粒子と化学的性質又は電子機器のダイナミックレンジは、有用な光ビームを2つ又は3つに制限する場合があることが予想される。互いに平行な光線間の分離距離は、最小でもレーザビームの径と同等であるのが好ましい。ビーム径は、キュベット68において数10ミクロンの直径を有するスポットまで合焦されるので、ガラススライドの必要な厚さtは、ガラススライドがキュベットにより近接して設置されるに従って減少する。
【0062】
図4に示す照射サブシステムを含むシステムは、本明細書で説明するように更に構成することができる。例えば、このようなシステムは、粒子が多重照射域に位置している間に、粒子によって放射される蛍光を別個に検出するように構成された検出サブシステムを含む。検出サブシステムは、多重信号を発生するように構成され、その各々は、粒子が多重照射域の1つに位置している間に粒子によって放射される蛍光を表す。検出サブシステムは、本明細書で説明するように更に構成することができる。加えて、このようなシステムは、多重信号のいずれがリニア範囲にあるかを判定して、異なる強度に対して補正するためにリニア範囲にある信号を変更するように構成されたプロセッサを含む。プロセッサは、本明細書で説明するように更に構成することができる。
【0063】
図5は、拡大されたDRを有するように構成されたシステム内に含むことができる照射サブシステムの別の実施形態を示す。図5に示すように、照射サブシステムは、単一光源76を含む。単一光源76は、レーザ又は当該技術分野で公知の他のあらゆる適切な光源を含むことができる。照射サブシステムはガラス製のウェッジ78を含む。ガラス製ウェッジ78は、単一光源76によって放射される光ビーム80の経路内に配置された非平行表面(例えば、表面78aと78b)を有する。光ビーム80は、ガラス製ウェッジに入り、上述のガラススライドと同様に、光ビームの一部は、単一光源に向って後方に反射させられる。ガラス製ウェッジを貫通して透過した光の一部が光ビーム82を形成する。光ビーム80の比較的大部分がガラス製ウェッジ78によって透過されるので、光ビーム82は、ガラス製ウェッジ78から出る最も明るい光ビームになる。換言すれば、ガラス製ウェッジを出る光ビームの中でも光ビーム82は、最も高い強度を有する。
【0064】
単一光源に向って後方に反射された光ビーム80の一部は、ガラス製ウェッジの入射面(例えば、表面78a)によって再度反射する(少なくとも部分的に)。この光ビームの一部が、光ビーム84としてガラス製ウェッジから出る。光ビーム84は、明らかに光ビーム82よりも低い強度を有する。元の光ビームの一部は、ガラス製ウェッジ内で再度反射し、光ビーム86としてガラス製ウェッジから出る。光ビーム86は、光ビーム82、84、86の中で最も低い強度を有する。明白なことに、追加の光ビームもガラス製ウェッジから出ることができ、この追加の光ビームが十分な強度を有する場合には、これらの光ビームは、粒子の照射用に使用することができる。
【0065】
光ビーム82、84、86は、粒子(図示せず)が測定中に通過して移動するキュベット88に向けられる。具体的には、光ビーム82、84、86は、粒子のフロー経路に沿って次々に配置された多重照射域90、92、94においてそれぞれキュベットに向けられる。粒子は、好ましくは上記に説明した理由から最初に最低強度(例えば、照射域94)を有する照射域、最後に最高強度(例えば、照射域90)を有する照射域を通って移動する。ガラス製ウェッジの非平行表面により、光ビーム82、84、86は、粒子のフロー経路に沿って離れて配置された位置に向けられる。加えて、光ビーム82、84、86間の距離は、図4に示すキュベット(平均ガラス厚さ)のガラススライドによって発生されるビーム間の距離よりも大きくなる。ビーム82、84、86間の距離は、ガラス製ウェッジの入射面と出口面との間の角度Θを変えることによって変更することができる。
【0066】
照射サブシステムは、合焦レンズ(図示せず)を含むことができる。1つの例では、合焦レンズが、光ビーム80の経路内で単一光源76とガラス製ウェッジ78との間に配置される。しかしながら、非平行表面を備えたガラス製ウェッジが、ビーム倍増器として使用される場合には、光ビーム82、84、86間の距離は、同じ(平均)ガラス厚さに対して図4に示すガラススライドによって生成されるビーム間の距離よりも大きいものになり、ビーム幅が最も広い場合には、レーザと合焦レンズとの間にビーム倍増器を配置するのがより適したものになる。このようにして、合焦レンズを、光ビーム82、84、86の光路内でガラス製ウェッジとキュベット88との間に配置することができる。合焦レンズは、前述のように更に構成されてもよい。図5に示す照射サブシステムを含むシステムは、本明細書で説明するように更に構成させることができる。
【0067】
図6は、拡大されたDRを有するように構成されたシステム内に含むことができる照射サブシステムの別の実施形態を示す。図6に示すように、照射サブシステムは、単一光源96を含む。単一光源96は、レーザ又は当該技術分野で公知のあらゆる別の適切な光源でよい。この照射サブシステムはまたビームエキスパンダー98を含む。ビームエキスパンダー98は、光ビーム100の断面積を増大させるように構成される。ビームエキスパンダーを出る光ビーム102は、複合光ファイバーケーブル104、106、108の入射面に向けられる。光ファイバーケーブル104、106、108は、当該技術分野で公知のあらゆる適切な光ファイバーケーブルを含むことができる。図6に示すように、光ファイバーケーブル104、106、108は、光ファイバーケーブルの各々が光をキュベット110の異なる照射域内に向けるように配置される。具体的には、光ファイバーケーブル104、106、108は、粒子(図示せず)のフロー経路に沿って離して配置された多重照射域112、114、116にそれぞれ光を向ける。加えて、照射サブシステムは、図6では3つの光ファイバーケーブルを含むように示されているが、照射サブシステムは、このような光学構成で配置された2つ又はそれ以上の光ファイバーケーブルを含むことができることを理解されたい。
【0068】
ビームエキスパンダー98が、光ビームの断面積全体にわたり相対的に一定な強度を有する拡大された光ビームを生成することになるので、光ファイバーケーブルの各々は、ほぼ等量の光を受け取ることができる。このようにして、照射サブシステムは、減光フィルタのような1つ又はそれ以上の光学構成部品(図示せず)を1つ又はそれ以上の光ファイバーケーブルの入口面又は出口面のいずれかにおいて含むことができる。1つ又はそれ以上の光学構成部品は、粒子が異なる強度を有する光で多重照射域内で照射されるように、光ファイバーケーブルの1つ又はそれ以上から出る光の強度を変えるように構成することができる。粒子は、フロー経路に沿って進む間に、上述の理由により相対的に低い強度を有する光で次いでより高い強度を有する光で照射されるのが好ましい。
【0069】
別の実施形態では、ビームエキスパンダー以外の光学構成部品を用いて、単一光源からの光を複数の光ファイバーケーブルにほぼ同時に向けることができる。例えば、図1に示すようなコーティングされていないビームスプリッタを用いて、単一光源からの光を異なる強度を有する複数の光ビームに分割することができる。次いで、複数の光ビームの各々は、複数の光ファイバーケーブルの1つに向けることができる。明らかなことに、他の多くの光学的構成を用いて、単一光源からの光を複数の光ファイバーケーブルに供給することができ、本明細書で提示した説明は、本システムの実施形態で利用することができる光学的構成を限定するものではない。
【0070】
図6に示す照射サブシステムは、合焦レンズ(図示せず)を含むことができる。1つの実施形態では、合焦レンズは、光ビーム100の経路内で単一光源96とビームエキスパンダー98との間に設置される。或いは、合焦レンズを、光ビーム102の光路内でビームエキスパンダーと光ファイバーケーブル104、106、108との間に配置することもできる。別の実施形態では、合焦レンズは、光ファイバーケーブル104、106、108を出る光の光路内でファイバーケーブルとキュベット110との間に配置させてもよい。合焦レンズは、上述のように更に構成することができる。図6に示す照射サブシステムを含むシステムは、本明細書で説明するように更に構成可能である。
【0071】
図7は、拡大されたDRを有するように構成されたシステム内に含むことができる照射サブシステムの別の実施形態を示す。図7に示すように、照射サブシステムは、単一光源118を含む。単一光源118は、レーザ又は当該技術分野で公知のあらゆる別の適切な光源を含む。本照射サブシステムは、デマルチプレクサ120を含む。デマルチプレクサ120は、光源118によって発生された光ビーム122を受け、該光ビーム122を個々の光ビーム(例えば、光ビーム124、126、128)に分離するように構成されている。デマルチプレクサは、光ビーム122を異なる強度を有する個々の光ビームに分離するように構成されるのが好ましい。しかし、デマルチプレクサが異なる強度を有する個々の光ビームを発生するように構成されていない場合には、照射サブシステムは、減光フィルタ又は個々の光ビームの強度を変更可能なあらゆる別の構成部品といった、個々の光ビームの1つ又はそれ以上の経路内に挿入した1つ又はそれ以上の構成部品(図示せず)を含むことができる。デマルチプレクサ120は、当該技術分野で公知のあらゆる適切なデマルチプレクサを含むことができる。加えて、図7ではデマルチプレクサ120を3つの個々の光ビームを発生するように示しているが、デマルチプレクサは2つ又はそれ以上の個々の光ビームを発生するように構成することができることを理解されたい。
【0072】
個々の光ビーム124、126、128は、粒子(図示せず)が測定中に移動するキュベット130にデマルチプレクサから向けられる。具体的には、個々の光ビーム124、126、128は、キュベット130を貫通するフロー経路に沿って離して配置された多重照射域132、134、136にそれぞれ向けられる。照射域136での光の強度は、照射域134、132よりも低く、照射域134での光の強度は、照射域132よりも低いのが好ましい。このようにして、粒子がフロー経路に沿って進むときに、粒子は、異なる照射域を通って移動するにつれて、最初は低い強度の光で、次いで次第により高い強度の光で照射される。図7に更に示すように、デマルチプレクサを出る個々の光ビームは離して配置することができ、その結果、デマルチプレクサを出る個々の光ビーム間の間隔が多重照射域間の間隔を定めることになる。しかしながら、多重照射域間の間隔は、個々の光ビームの経路内に配置した1つ又はそれ以上の光学構成部品(図示せず)を使用して変更し、個々の光ビームの方向を変更する(例えば屈折により)ように構成することができる。
【0073】
照射サブシステムは、1つ又はそれ以上のデマルチプレクサを含み、該デマルチプレクサを、上述のように単一光源に結合されるように構成することができる。図7に示す照射サブシステムは更に、合焦レンズ(図示せず)を含むことができる。1つの実施形態では、合焦レンズは、光ビーム122の経路内で単一光源118とデマルチプレクサ120との間に設置することができる。或いは、合焦レンズは、光ビーム124、126、128の光路内でデマルチプレクサとキュベット130との間に位置付けることができる。合焦レンズは、上述のように更に構成することができる。図7に示す照射サブシステムを含むシステムを、本明細書で説明するように更に構成することができる。
【0074】
図8は、拡大されたDRを有するように構成されたシステム内に含めることができる照射サブシステムの別の実施形態を示す。図8に示すように照射サブシスムは、単一光源138を含む。単一光源138は、レーザ又は当該技術分野で公知のあらゆる別の適切な光源を含むことができる。照射サブシステムは、光源138によって放射される光ビーム142の経路内に配置された回折格子140を含む。回折格子140は、光源138によって発生された光ビーム142を複数の光ビーム144、146、148として反射させるように構成される。
【0075】
複数の光ビームの各々は、回折格子から反射された光の異なる次数の1つを含むことができる。具体的には、レーザのような単色光源が整列した回折格子に向けられると、複数のビームが異なる次数で反射されて、各光ビームの強度は、「次数」が高くなるにつれて減少する(例えば、ゼロ次で反射されたビームは、第1の次数で反射されたものよりもより明るいものとなる、等)。このようにして、光ビーム144は、回折格子140から反射されたゼロ次光を含む。従って、光ビーム144は、回折格子から反射された光ビームの中で最も高い強度を有する。光ビーム146は、回折格子から反射された第1次光を含む。このようにして、光ビーム146は、光ビーム144よりもより低い光の強度を有する。同様に光ビーム148は、回折格子140から反射された第2次光を含み、従って3つの光ビームの中で最も低い強度を有する。回折格子は、異なる次数の光を異なる方向に反射するように構成されている。従って回折格子は、多重照射域構成の異なる強度と適切な間隔の両方を有する個々の光ビームを発生させることができる。加えて、回折格子の線間隔は、各次数の角度と各次数で反射された光ビームの強度を変化させるよう変更することができる。更に3次よりも高次の光が、回折格子から反射することができ、キュベット150粒子に向けられる光ビームの次数は、粒子測定において十分な強度を有する異なる次数の数に応じて変化する。
【0076】
図8に示すように、照射サブシステムは合焦レンズ152を含む。合焦レンズ152は、回折格子からの反射光を受光して、異なる次数の光を異なる光ファイバーケーブルに向けるように構成されている。具体的には光ビーム144、146、148は、光ファイバーケーブル154、156、158にそれぞれ向けられる。光ファイバーケーブル154、156、158は、異なる次数の光をキュベット150内で粒子(図示せず)のフロー経路に沿って離して配置された多重照射域160、162、164にそれぞれ向けるように構成されている。照射域164内の光は、照射域162、160内の光よりもより低い強度を有し、照射域162内の光は、照射域160内の光よりも強度が低い。このようにして、粒子が照射域を通って進むと、粒子は、最初により低い強度の光で、次いで次第により高い強度の光で照射される。合焦レンズ152は更に、上述のように構成することができる。加えて、合焦レンズは、照射サブシステム内の様々な位置に配置することができる(例えば、光源138と回折格子140との間)。光ファイバーケーブル154、156、158は、当該技術分野で公知のあらゆる適切な光ファイバーケーブルを含むことができる。更に、図8に示す照射サブシステムは、光ファイバーケーブルを含まなくてもよい。このような1つの代替形態では、レンズ152からの光は、キュベット150に直接的に合焦してもよい。図8に示す照射サブシステムを含むシステムは、本明細書で説明するように更に構成することができる。
【0077】
図2に示すシステムによって実行可能なシステムと、図4−図8に示す照射サブシステムを含むシステムのダイナミックレンジを拡大する1つの方法は、異なる強度を有する光で多重照射域において粒子を照射することを含む。本方法は、多重信号を発生させるための多重照射域内に粒子が位置している間に、粒子によって放射される蛍光を別個に検出することを含む。多重信号の各々は、多重照射域の1つにおいて粒子によって放射される蛍光を表す。加えて、本方法は、多重信号のいずれがリニア範囲であるか否かを判定することを含む。本方法は更に、異なる強度に対して補正するためにリニア範囲にある信号を変更することを含む。
【0078】
1つの実施形態では、多重照射域は、粒子のフロー経路に沿って離して配置されており、粒子が最初にくる第1の多重照射域は、粒子が続いて位置づけされる第2の多重照射域よりもより強度が低い。粒子によって放射された蛍光は、粒子の素性に対応することができる。或いは、粒子によって放射された蛍光は、粒子に付着された付加分子と反応した分子に対応する。上述の本方法の実施形態の各々は、本明細書で説明したあらゆる他のステップを含むことができる。
【0079】
上述の方法及びシステムは、フローサイトメトリーの応用に関して説明したが、本明細書で説明した本方法及びシステムは、他の用途に利用可能であることを理解されたい。例えば、本明細書で説明した方法及びシステムは、吸光光度法の用途に使用することができる。赤外(IR)及び紫外−可視(UV−Vis)などの吸光技術では、光は、試料上に合焦されて、検出器は、試料によって吸収されない、すなわち透過光線として知られる光を測定する。高吸収能又は高濃度試料においては透過率は低く、低濃度又は低吸収能試料においては透過率は高いことは明らかである。従って、場合によっては、本明細書で説明したようなダイナミックレンジを拡げることは、吸光光度法の用途において有利とすることができる。
【0080】
本発明がダイナミックレンジ拡大のための方法及びシステムを提供する本開示の恩恵を有することは、当業者であれば理解されるであろう。本発明の種々の態様の別の修正実施形態及び代替実施形態は、本明細書に照らしてみると当業者には明白であろう。従って、本明細書は、説明としてみなすべきであり、本発明を実施する一般的な方法を当業者に教示する目的のものとする。本明細書で図示し且つ説明された本発明の形態は、現時点で好ましい実施形態と考えられるものとする点を理解されたい。要素及び材料は、本明細書で図示し且つ説明したものと置き換えることができ、部品及びプロセスを逆にすることも可能であり、本発明の特定の特徴は、独立して利用可能であり、全ては、本発明のこの明細書の利点を有する後では当業者には明白となるであろう。添付の請求項に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書で説明された要素に変更を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】蛍光を多重光路に分割するように構成された光学構成部品と多重光路内の蛍光を別個に検出するように構成された種々のチャネルとを含む、拡大されたDRを有するように構成されたシステムの1つの実施形態の概略断面図を示す。
【図2】異なる強度を有する光で多重照射域の粒子を照射するように構成された照射サブシステムを含む、拡大されたDRを有するように構成されたシステムの1つの実施形態の概略断面図を示す。
【図3】粒子が多重照射域に位置している間に、粒子によって放射された蛍光を別個に検出することによって発生可能な多重信号の例を示すグラフである。
【図4】異なる強度を有する光で多重照射域の粒子を照射するように構成され、拡大されたDRを有するように構成されたシステム内に含むことができる照射サブシステムの別の実施形態の概略断面図を示す。
【図5】異なる強度を有する光で多重照射域の粒子を照射するように構成され、拡大されたDRを有するように構成されたシステム内に含むことができる照射サブシステムの別の実施形態の概略断面図を示す。
【図6】異なる強度を有する光で多重照射域の粒子を照射するように構成され、拡大されたDRを有するように構成されたシステム内に含むことができる照射サブシステムの別の実施形態の概略断面図を示す。
【図7】異なる強度を有する光で多重照射域の粒子を照射するように構成され、拡大されたDRを有するように構成されたシステム内に含むことができる照射サブシステムの別の実施形態の概略断面図を示す。
【図8】異なる強度を有する光で多重照射域の粒子を照射するように構成され、拡大されたDRを有するように構成されたシステム内に含むことができる照射サブシステムの別の実施形態の概略断面図を示す。
【符号の説明】
【0082】
10 光源、12 粒子、14 光、16 キュベット、18 蛍光、20 レンズ、22 光学構成部品、24 検出器、26 検出器、28 電子構成部品、30 電子構成部品、32 プロセッサ、34 光学構成部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムのダイナミックレンジを拡大する方法であって、
多重光路内の蛍光が異なる強度を有するように、粒子によって放射された蛍光を多重光路に分割するステップと、
多重信号を発生させるため、種々のチャネルを用いて前記多重光路内の蛍光を検出するステップであって、各々の多重信号が多重光路の1つにおける蛍光を表している、前記ステップと、
前記種々のチャネルのどれが前記多重信号に基づいてリニア範囲で動作しているかを判定するステップと、
異なる強度に対して補正するためにリニア範囲で動作中であると判定された前記チャネルによって発生される信号を変更するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記粒子によって放射された蛍光が前記粒子の素性に対応する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子によって放射された蛍光が前記粒子に付着された付加分子と反応した分子に対応する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
本システムが、フローサイトメータとして構成される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記粒子によって放射された蛍光の強度を前記変更された信号から求めるステップを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記変更するステップが、前記システムのダイナミックレンジを増大させる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1の多重光路内の蛍光が第2の多重光路内の蛍光よりも強度が低く、前記方法が、前記検出ステップの前に前記第1の多重光路内の蛍光の強度を低下するステップを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
拡大されたダイナミックレンジを有するように構成されたシステムであって、
粒子によって放射された蛍光を多重光路に分割するように構成され、前記多重光路内の蛍光が異なる強度を有する光学構成部品と、
前記多重光路内の蛍光を別個に検出して各々が前記多重光路の1つにおける蛍光を表す多重信号を発生するように構成された種々のチャネルと、
前記種々のチャネルのどれがリニア範囲で動作しているかを前記多重信号に基づいて判定し、異なる強度に対して補正するために前記リニア範囲で動作中であると判定された前記チャネルによって発生された信号を変更するように構成されたプロセッサと、
を含むシステム。
【請求項9】
前記粒子によって放射された蛍光が前記粒子の素性に対応する請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記粒子によって放射された蛍光が、前記粒子に付着された付加分子と反応した分子に対応する請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムがフローサイトメータとして更に構成される請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサが、粒子によって放射された蛍光の強度を前記変更された信号から求めるように更に構成される請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサによる前記信号の変更することで、前記システムのダイナミックレンジを増大させる請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
第1の多重光路内の蛍光が第2の多重光路内の蛍光よりも強度が低く、前記システムが、前記第1の多重光路内で前記光学構成部品と前記種々のチャネルの1つとの間に配置された追加の光学構成部品を更に含み、前記追加の光学構成部品が、前記第1の多重光路内の蛍光の強度を低減するように構成される請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
システムのダイナミックレンジを拡大する方法であって、
異なる強度を有する光で多重照射域の粒子を照射するステップと、
多重信号を発生させるため、前記粒子が前記多重照射域に位置している間に前記粒子によって放射された蛍光を別個に検出するステップであって、各々の多重信号が前記多重照射域の1つにおいて前記粒子によって放射された蛍光を表す、前記ステップと、
前記多重信号のいずれがリニア範囲に位置するかを判定するステップと、
前記異なる強度に対して補正するために前記リニア範囲にある前記信号を変更するステップと、
を含む方法。
【請求項16】
前記多重照射域が、前記粒子のフロー経路に沿って離して配置されており、前記粒子が最初に位置付けられる第1の多重照射域は、前記粒子が続いて位置付けられる第2の多重照射域よりも低い強度である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記粒子によって放射された蛍光が前記粒子の素性に対応する請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記粒子によって放射された蛍光が前記粒子に付着された付加分子と反応した分子に対応する請求項15に記載の方法。
【請求項19】
拡大されたダイナミックレンジを有するように構成されたシステムであって、
異なる強度を有する光で多重照射域の粒子を照射するように構成された照射サブシステムと、
前記粒子が多重照射域に位置している間に前記粒子によって放射された蛍光を別個に検出し、前記粒子が前記多重照射域の1つに位置している間に、各々が前記粒子によって放射された蛍光を表す多重信号を発生するように構成された検出サブシステムと、
前記多重信号のいずれがリニア範囲に位置するかを判定して、異なる強度に対して補正するために前記リニア範囲にある信号を変更するように構成されたプロセッサと、
を含むシステム。
【請求項20】
前記多重照射域が、前記粒子のフロー経路に沿って離して配置され、前記粒子が最初に位置付けられる第1の多重照射域は、前記粒子が続いて位置付けられる第2の多重照射域よりも低い強度である請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記照射サブシステムが単一光源を含む請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記照射サブシステムが単一光源と、該単一光源によって放射される光ビームの経路内に配置され、更に前記光ビームに対してある角度で配置されたガラススライドとを含む請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記照射サブシステムが、単一光源と、該単一光源によって放射される光ビームの経路内に配置された非平行表面を備えるガラス製ウェッジとを含む請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
前記照射サブシステムが、複数の光ファイバーケーブルに結合された単一光源を含む請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記照射サブシステムが、1つ又はそれ以上のデマルチプレクサに結合された単一光源を含む請求項19に記載のシステム。
【請求項26】
前記照射サブシステムが、単一光源と、該単一光源によって放射される光ビームの経路内に配置された回折格子とを含む請求項19に記載のシステム。
【請求項27】
前記照射サブシステムが2つ又はそれ以上の光源を含む請求項19に記載のシステム。
【請求項28】
前記検出サブシステムが単一検出器を含む請求項19に記載のシステム。
【請求項29】
前記検出サブシステムが多重検出器を含む請求項19に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−518991(P2007−518991A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549702(P2006−549702)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/001866
【国際公開番号】WO2005/068971
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(504187249)ルミネックス・コーポレーション (21)
【Fターム(参考)】