説明

ダイピックアップ方法及びコレット

【目的】 1次元CCDラインセンサーのように細長く、表面を直接接触できないダイのウエハーシートからのピックアップを安定して行なう。
【構成】 ダイ1の長手方向両端に表面接触エリアを設け、そのエリアをコレット2で接触保持して、ダイ1をウエハーシート3からピックアップする。ダイ1は、細長く強度が弱いため、ピックアップ時大きく変形する。コレット2には、逃げ2cが設けてあるため、ダイ表面の受光部とコレットが接触せず、また表面を接触保持しているため、ダイは回転せず、安定してピックアップすることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、1次元CCDラインセンサーなどの細長いダイを組み立てる組み立て方法に関し、特にダイをウエハーシートからピックアップするダイピックアップ方法及びコレットに関する。
【0002】
【従来の技術】一般にダイのピックアップは、ウエハーシート上に貼られたウエハーを個々に分割して得られたダイを、個々に位置決めし、コレットで吸着保持するとともに、ウエハーシート下側より突上げ針にて突上げ、ダイをシートから剥がし移送する。
【0003】ここで用いるコレットには、大別して2種のコレットがある。1つは、ダイの表面に接触してダイを吸着保持する表面コレットで、もう1つはダイの対向する2辺あるいは4辺に対応して設けたテーパー部でダイのエッジ部に接触してダイを吸着保持する、2面あるいは4面(角錐)コレット(以下テーパーコレットと記す)である。
【0004】従来、1次元CCDラインセンサーはダイ表面に受光部が配列されており、メモリーなど他の半導体素子とは異なり、表面にパッシベーション膜が形成されていないため、配線が露出した状態であり、コレットで表面を吸着できないという問題点があり、ピックアップにはテーパーコレットを用いていた。
【0005】また、ピックアップ時、ダイをコレットのテーパー部で保持するために、コレットのテーパー部がダイとダイの隙間に入る必要があり、ウエハーシートを引き伸ばして、ダイとダイの間隔をダイシング時の25〜70μm程度から200〜400μmへ拡大する作業も行っていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】最近、1次元CCDラインセンサーは製作技術向上,1ウエハー当りの収率向上のため、より長く、より細くなってきた。例えば量産化されているものでは、幅0.65mm×長35mm×厚0.4mm、現在製品化検討中のものでは、幅0.8mm×長80mm×厚0.4mmなどである。
【0007】そのため、ウエハーシートからのダイピックアップ時、テーパーコレットを用いるために、従来のテーパーコレット利用目的の1つであるダイがテーパー部でスベり、ダイの位置が矯正でき、安定してピックアップできるという利点が、逆に、ダイの幅が狭いために、ダイがスベって回転してしまい、安定してピックアップできないという問題点となっていた。
【0008】また、単に表面コレット接触用のエリアを設け、表面コレットを用いるとしても、短辺側に該エリアを設けると、ダイの幅が広くなり(例えば片側400μmのエリアを設けると、幅0.65mm→1.45mm,幅0.8mm→1.6mm)ダイの1ウエハー当りの収率が激減してしまう。そこで、長辺側に該エリアを設けると収率はほぼ同等であるが、ダイが細く、強度が弱いため、ピックアップに際し、ダイが大きく変形し、コレットにダイの受光部が接触しキズを付けてしまうという問題がある。
【0009】本発明の目的は、1次元CCDラインセンサーのように細長く、表面を直接接触できないダイのウエハーシートからのピックアップを安定して行うダイピックアップ方法及びコレットを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明に係るダイピックアップ方法は、細長いダイをウエハーシートより個々にピックアップするダイピックアップ方法であって、ダイ表面の長手方向両端に能動領域の形成されている吸着エリアを設け、該エリアのみにコレットを接触させダイを保持してピックアップするものである。
【0011】また、前記吸着エリアには、目合せパターンや検査用配線など半導体装置組立後不要となる配線を設けるものである。
【0012】また、本発明に係るコレットは、細長いダイをウエハーシートより個々にピックアップするダイピックアップ方法に用いるコレットであって、コレットは、ダイ両端の吸着エリアを接触保持する部分と、ピックアップ時のダイ変形によりダイ中央部が盛り上がった場合に、中央部のエッジをテーパー面で受けとめるテーパー部とを有するものである。
【0013】
【作用】ダイ表面の長手方向両端に各400μm以上の吸着エリアを設け、表面コレットで該エリアだけを接触保持し、ダイ変形時にダイのエッジをコレットのテーパー部で受けとめる。
【0014】
【実施例】次に本発明について図面を参照して説明する。
【0015】(実施例1)図1は、本発明の実施例1におけるダイピックアップ状態を示す断面図である。
【0016】図1において、ダイ1は長辺方向両端に400μmの接触エリアを有し、ウエハーシート3に貼り付けられ個々に分割され、図示しないウエハーシート保持リング及びダイ位置決め機構により、ピックアップ位置に位置決めされている。
【0017】ダイ1の短辺側の中央を突上げる突上げ針5は、ダイ長辺方向に複数本配置されており、針ホルダー6に保持され、コレット2と同期して動作するようコントロールされている。
【0018】シート吸着ホルダー4a及び4bは、突上げ針5及び針ホルダー6を上下動作自在の状態で保持し、真空吸引によりウエハーシート3を吸着保持できるように吸引装置へ接続されている。
【0019】コレット2は、ダイ1の両端各400μmの接触エリアに対応して、接触部2bを有し、接触部2b内に設けられた真空吸引穴2aによりダイ1を吸着保持する。
【0020】またコレット2はピックアップ時ダイ1が弓形に変形してもコレット2とダイ1が接触しないよう、逃げ2cを設けてある。この逃げはダイの強度,変形量より中心で0.4mm〜0.5mm程度でよいことがわかっている。
【0021】次にピックアップ方法を順を追って説明する。ダイ1をピックアップ位置へ位置決めし、シート吸着ホルダー4a,4bによりウエハーシート3を吸着保持する。
【0022】その後、コレット2を移動し、ダイ1に接触させ、吸着保持する。
【0023】コレット2及び突上げ針5すなわち針ホルダー6を同期させて上昇して、ダイ1をウエハーシート3から剥がす。この時、ウエハーシート3は、シート吸着ホルダーにより吸着保持されているため、突上げ針5で突上げを行なった所だけが変形し、点でダイ1を支える形となって、ダイ1がウエハーシート3より剥がしやすくなるという効果がある。
【0024】ここで、ダイ1の両端の接触エリアには、半導体装置として組立後不要となる回路や配線、例えば、目合せ用のパターンや電気特性測定用の回路など、従来ダイの中に配置されていたものを設ければ、ダイのサイズをほとんど変えずに、接触エリアを設けることができるという利点がある。
【0025】また、表面コレットを用いるため、ダイの回転がなくなり、安定してピックアップできるほか、ピックアップに際し、ダイとダイの間に200〜400μmのような間隔を設ける必要はなく、シート拡大の作業が省略できるという利点がある。
【0026】(実施例2)図2は、本発明の実施例2に用いるコレットの断面図である。
【0027】コレット2′は、接触部2′bと真空吸引穴2′aを有するほか、長手方向中央にはテーパー部2′cを有し、ピックアップ時にダイが変形しても、テーパー部2′cでダイのエッジを受けとめることができる。
【0028】この場合、コレット下面に逃げは不要であり、平坦にできるため、ダイ吸着用の真空吸引穴をダイ長手方向に複数設けることができ、コレットのダイ保持力が実施例1に比べて強くできるという利点がある。
【0029】また、テーパー部2′cは、ピックアップ時にダイに接する必要がなく、ダイ表面より上方へ設ければ良いため(0.2mm程度上方が良い)、表面コレットと同等に用いることができ、実施例1と同様にシート拡大が不要である。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、ダイ長手方向両端に各400μm以上の接触エリアを設けたため、1次元CCDラインセンサーのような細長く、表面が直接接触できないダイでも、表面コレットを用いることができ、安定してピックアップできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1におけるダイピックアップ状態を示す断面図である。
【図2】(a)は、本発明の実施例2に用いるコレットを示す断面図、(b)は(a)のB−B′線断面図である。
【符号の説明】
1 ダイ
2,2′ コレット
2a,2′a 真空吸引穴
2b,2′b 接触部
2c 逃げ
2′c テーパー部
3 ウエハーシート
4a,4b シート吸着ホルダー
5 突上げ針
6 針ホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 細長いダイをウエハーシートより個々にピックアップするダイピックアップ方法であって、ダイ表面の長手方向両端に能動領域の形成されている吸着エリアを設け、該エリアのみにコレットを接触させダイを保持してピックアップすることを特徴とするダイピックアップ方法。
【請求項2】 前記吸着エリアには、目合せパターンや検査用配線など半導体装置組立後不要となる配線を設けることを特徴とする請求項1に記載のダイピックアップ方法。
【請求項3】 細長いダイをウエハーシートより個々にピックアップするダイピックアップ方法に用いるコレットであって、コレットは、ダイ両端の吸着エリアを接触保持する部分と、ピックアップ時のダイ変形によりダイ中央部が盛り上がった場合に、中央部のエッジをテーパー面で受けとめるテーパー部とを有することを特徴とするコレット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平5−243375
【公開日】平成5年(1993)9月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−75189
【出願日】平成4年(1992)2月26日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)