ダイヤフラム、ろ板及びフィルタプレス脱水機
【課題】破損の虞が低減されたダイヤフラムと、加工が容易なろ板と、前記ダイヤフラムと前記ろ板とでろ室が形成されたフィルタプレス脱水機を提供する。
【解決手段】
ろ枠として機能する厚肉部21が、原液を圧搾する薄肉部22の周囲に一体に成形されたダイヤフラム20と、一側面には隣接するろ板との間でダイヤフラム20を圧縮する圧縮部31が形成され、他側面にはダイヤフラム20を嵌入可能で、厚肉部21より厚さの小さい立上り部37が形成されたろ板でろ室8を形成する。ろ室8に原液を供給しダイヤフラム20を膨らますことで、原液を圧搾・脱水しケーキを得る。このときダイヤフラム20の厚肉部21はシール面として機能する。
【解決手段】
ろ枠として機能する厚肉部21が、原液を圧搾する薄肉部22の周囲に一体に成形されたダイヤフラム20と、一側面には隣接するろ板との間でダイヤフラム20を圧縮する圧縮部31が形成され、他側面にはダイヤフラム20を嵌入可能で、厚肉部21より厚さの小さい立上り部37が形成されたろ板でろ室8を形成する。ろ室8に原液を供給しダイヤフラム20を膨らますことで、原液を圧搾・脱水しケーキを得る。このときダイヤフラム20の厚肉部21はシール面として機能する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ枠とろ板で区画されるろ室に原液を供給して圧搾するフィルタプレス脱水機に組み込まれるダイヤフラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボン製造、チタン製造等の製品製造工程や、汚泥処理工程における固液分離用脱水機としてフィルタプレス脱水機が広く用いられている。
【0003】
フィルタプレス脱水機は、並列したろ板とダイヤフラム間にろ室を形成し、ろ板と、ダイヤフラムの前面に吊設したろ布で固液分離を行い、ろ室に生成した脱水ケーキをダイヤフラムで圧搾するように構成されている。
【0004】
このようなフィルタプレス脱水機に用いられるろ板及びダイヤフラムとして、特許文献1には、図12(a)に示すように、平坦な凹面状の脱水ケーキの支持床61と周縁部62が一体成形されたダイヤフラム60と、凹面状の支持面71と、支持面71の裏面にろ過床75が形成され、支持面71にダイヤフラム60を張設するようにしたろ板70が提案されている。
【0005】
ダイヤフラム60を張設するろ板70の縁部には、凹溝73とその外側に内部を拡開した蟻溝74をそれぞれ無端状に形成してある。ダイヤフラム60の縁部には、ろ板70の凹溝73に挿入するシール用の突条63と、その外側にろ板70の蟻溝74に挿着する先端部を拡大して切欠斜面を有する係止用の係合突部64をそれぞれ無端状に形成してある。
【0006】
図12(b)に示すように、ダイヤフラム60とろ板70を並列させ、ダイヤフラム60とろ板70の間に図示しないろ布を配置して、ダイヤフラム60の突条63と係合突部64をろ板70の凹溝73と蟻溝74にそれぞれ当押し込み、ろ板70にダイヤフラム60を挿着してろ室を形成し、原液供給部材80からろ室に圧搾対象物を供給した後、ダイヤフラム60とろ板70の支持床71の間に加圧水を圧入してダイヤフラム60の支持床61をろ過床75側へ膨らませることで、圧搾対象物を圧搾脱水する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−144393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述ようなダイヤフラム60では、圧搾工程でダイヤフラム60の膨張・収縮を繰り返すたびに可動部65に繰り返し応力が生じる。この可動部65はろ板70と接触しているため大きな応力が集中したり、圧搾脱水操作のたびに摩耗が生じるので、耐久性が悪化し、破損しやすいという問題があった。
【0009】
また、ダイヤフラム60の突条63,係合突部64と係合するような凹溝73,蟻溝74や、ダイヤフラム60の支持床61と沿うような支持面71を形成するろ板70の加工が煩雑であった。
【0010】
そこで、煩雑なろ板の加工を減らすために、図12(c)に示すように、平らなろ板66でダイヤフラム67を挟持することも考えられるが、ろ板66が平らなので、ろ板66とダイヤフラム67の間にろ室を形成する、つまり、ろ板66とダイヤフラム67の間に空間を形成するために、別に製作したろ枠68が必要であり、さらに、ろ枠68とろ板66の接触面を確実にシールするためには、シール部材69を備える必要があった。すると、構成品数が増加し、製作工程が増加するという問題があった。
【0011】
本発明は、破損の虞が低減されたダイヤフラムと、加工が容易なろ板と、前記ダイヤフラムと前記ろ板とでろ室が形成されたフィルタプレス脱水機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明によるダイヤフラムの特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、ろ枠とろ板で区画されるろ室に原液を供給して圧搾するフィルタプレス脱水機に組み込まれるダイヤフラムであって、ろ枠として機能する厚肉部が、原液を圧搾する薄肉部の周囲に一体に成形され、ろ板で圧縮されることによりシール面が形成される点にある。
【0013】
上述の構成によれば、ろ枠として機能する厚肉部と、原液を圧搾する薄肉部を一体成型することで、ろ室を構成するために別に製作したろ枠を用いる必要がなくなり、厚肉部がろ板で圧縮されることによりシール面が形成されることで、シール部材が不要となり、部品点数が低減できる。
【0014】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記薄肉部が平板状に形成され、前記薄肉部の縁部が前記厚肉部の内周の厚み方向一端部に連接されている点にある。
【0015】
上述の構成によれば、例えば、縁部がろ枠として機能する厚肉部の端面と連なる薄肉部の一面と、前記一面に対向するろ板との間にろ室を形成した場合、薄肉部に働く弾性力をろ室に圧入された原液を圧搾する力として利用できるので、原液を十分に圧搾することができる。さらに、ろ室側の薄肉部の縁部付近に、ろ布の目を抜けた脱水ケーキが付着することを防止できる。
【0016】
なお、上述とは逆に、縁部がろ枠として機能する厚肉部の端面と連なる薄肉部の一面の裏面と、前記裏面に対向するろ板との間にろ室を形成してもよい。
【0017】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二特徴構成に加えて、前記厚肉部の内周面と、前記内周面に連なる前記薄肉部の一面と、前記一面に対向するろ板との間にろ室が形成されるように構成されている点にある。
【0018】
上述の構成によれば、前記厚肉部の内周面と、前記内周面に連なる前記薄肉部の一面と、前記一面に対向するろ板との間にろ室が形成されているので、前記内周面に連なる前記平板状に形成された薄肉部の一面全体をろ室として有効に利用することができるので、圧入する原液の量を増加させることができる。
【0019】
さらに、原液の圧搾に利用した加圧水を排出する際には、薄肉部に働く弾性力を加圧水を排出する力として利用することができ、平板状に形成された薄肉部が元の位置に戻ることにより、加圧水が完全に排出されるので、開板、脱水ケーキ排出工程でろ過ユニットを開いた際に、加圧水がこぼれ落ち、周囲を汚す虞を低減することができる。
【0020】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記薄肉部が平板状に形成され、前記薄肉部の縁部が前記厚肉部の内周の厚み方向両端部から離隔した位置に連接されている点にある。
【0021】
ダイヤフラムが膨張・収縮する際に、ダイヤフラムの縁部には繰り返し応力が集中する。上述の構成によれば、当該縁部が厚肉部の内周の厚み方向端部から離隔した位置に連接されているので、ろ板に接することがなくなるので、摩耗の虞がなくなり破損の虞を低減できる。
【0022】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一、第二または第四の何れかの特徴構成に加えて、前記薄肉部の縁部が、ろ枠として機能する厚肉部の厚み方向一端部側に連接され、前記薄肉部の中央部が、前記厚肉部の厚み方向他端部側に張り出した平坦面に形成され、前記平坦面と前記縁部とが傾斜面で連接されている点にある。
【0023】
上述の構成によれば、ろ室の容積を比較的大きくとりつつも、ろ室を形成する側の薄肉部の縁部付近に、ろ布の目を抜けた脱水ケーキが付着することを防止できる。
【0024】
さらに、原液の圧搾に利用した加圧水を排出する際には、薄肉部に働く弾性力を加圧水を排出する力として利用することができ、薄肉部が元の位置に戻ることにより、加圧水を排出しやすいので、開板、脱水ケーキ排出工程でろ過ユニットを開いた際に、加圧水がこぼれ落ち、周囲を汚す虞を低減することができる。
【0025】
本発明によるろ板の第一特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成を備えたダイヤフラムで原液を圧搾するフィルタプレス脱水機に組み込まれるろ板であって、他のろ板との間で前記ダイヤフラムを圧縮する圧縮部と、ダイヤフラムの圧縮を所定圧とするための立上り部が形成されている点にある。
【0026】
上述の構成によれば、ダイヤフラムの圧縮を所定圧とする立上り部により、ダイヤフラムの厚肉部が圧縮される圧力を所定圧に維持できるので、シール面のシール効果を安定させることができ、厚肉部の締め付けすぎによる破損の虞も回避できる。
【0027】
同第二の特徴構成は、請求項7に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記立上り部の厚さは、ダイヤフラムの厚肉部の厚さより小さく設定されている点にある。
【0028】
上述の構成によれば、立上り部の厚さと厚肉部の厚さの差がダイヤフラムの圧縮代となる。ダイヤフラムが前記圧縮代以上に圧縮されることがなくなるので、シール面のシール効果を安定させることができ、厚肉部の締め付けすぎによる破損の虞も回避できる。
【0029】
本発明によるフィルタプレス脱水機の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成を備えたダイヤフラムと、上述の第一または第二特徴構成を備えたろ板を備えた点にある。
【0030】
上述の構成によれば、隣接するろ板の間にダイヤフラムが所定圧で保持された状態で圧搾を行うことができるので、安定したシール効果を得つつ、ダイヤフラムの締め付けすぎによる破損の虞が回避できる状態での脱水ができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明によれば、破損の虞が低減されたダイヤフラムと、加工が容易なろ板と、前記ダイヤフラムと前記ろ板とでろ室が形成されたフィルタプレス脱水機を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明によるフィルタプレス脱水機の概略図
【図2】ダイヤフラムの説明図であって、(a)は正面図のA−A線断面図、(b)は正面図
【図3】(a)はダイヤフラムの縁部の詳細図、(b)はダイヤフラムの厚さと立上が部の厚さの説明図
【図4】(a)はろ板の正面図、(b)はろ板の側面図
【図5】(a)は原液供給部材の正面図、(b)は原液供給部材の側面図
【図6】(a)がろ板の平面図、(b)はろ板の裏面図
【図7】ダイヤフラムをろ板に嵌入した状態の説明図であって、(a)は側断面図、(b)は平面図、(c)は裏面図
【図8】ろ過ユニットの説明図であって、(a)はろ過ユニットが開いた状態を表す概略図、(b)はろ過ユニットが閉じた状態を表す概略図
【図9】(a)は閉板工程の説明図、(b)はろ過工程の説明図、(c)は圧搾工程の説明図、(d)は開板・脱水ケーキ排出工程の説明図
【図10】(a)は本実施形態によるろ過ユニットの概略図、(b)は別実施形態によるろ過ユニットの概略図、(c)は別実施形態によるダイヤフラムの説明図
【図11】(a)は、別実施形態によるダイヤフラムの説明図、(b)は、別実施形態によるダイヤフラムを備えたろ過ユニットの説明図、(c)は、別実施形態によるダイヤフラムを備えたろ過ユニットの説明図
【図12】従来のフィルタプレス脱水機に用いられるダイヤフラムとろ板の概略図であって、(a)はダイヤフラムとろ板の係合部分の概略図、(b)はダイヤフラムとろ板を係合した状態の概略図、(c)はろ板が平らである場合の説明図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明によるダイヤフラム、ろ板及びフィルタプレス脱水機を説明する。
【0034】
図1に示すように、フィルタプレス脱水機100には、左フレーム1、右フレーム2間に一対のガイドレール3が横架してあり、一対のガイドレール3に複数のろ過ユニット4が左フレーム1と右フレーム2方向に摺動可能に載架されている。右フレーム2には押圧シリンダ6が設けられ、押圧シリンダ6のロッド6aの先端には押圧部材5が備えられている。
【0035】
複数のろ過ユニット4はそれぞれ隣接するろ過ユニット4とリンク部材(図示せず)で連結され、図1中右端のろ過ユニット4はろ過ユニット駆動装置と連結され、左端のろ過ユニット4は左フレーム1側と連結されている。右端のろ過ユニット4が右方向に移動すると、それにつられて順次ろ過ユニット4が右方向に移動し、リンク部材によってそれぞれのろ過ユニット4が所定間隔で離間するように構成されている。
【0036】
なお、ろ過ユニット4の移動は上述の構成によるものに限らず、左フレーム1と右フレーム2に備えたスプロケット(図示せず)間に配設したチェーン(図示せず)にろ過ユニット4を懸架して、スプロケットを駆動しチェーンを移動させることで、当該チェーンに懸架されたろ過ユニット4を移動させる構成であってもよい。
【0037】
隣接するろ過ユニット4間には、複数の上部支持部材7aと下部支持部材7bの間に張設された無端状のろ布7cが上下方向に配設されている。
【0038】
押圧部材5を介して押圧シリンダ6によって複数のろ過ユニット4がそれぞれの間にろ布7cを挟んだ状態で、右フレーム2方向から左フレーム1方向に所定圧力で押圧されて閉板されるように構成されている。
【0039】
ろ過ユニット4は、ろ板30とろ板30の片面に支持されたダイヤフラム20で構成され、ろ室8は、ろ枠として機能するダイヤフラム20の厚肉部とろ板30で区画されて構成される。
【0040】
左フレーム1には、ろ室8内に圧搾対象物である原液を供給する原液供給口9と、ろ室8で圧搾されたろ過液が排出されるろ過液排出口10が備えられている。
【0041】
原液供給口9から、原液をろ室8内に供給し、ろ過ユニット4で圧搾すると、ろ過液はろ過液排出口10から排出され、ろ過ユニット駆動装置でろ過ユニット4を開板すると、複数のろ過ユニット4間から脱水された脱水ケーキが排出される。
【0042】
図2(a),(b)に示すように、ダイヤフラム20は、ろ枠として機能する厚肉部21が、原液を圧搾する薄肉部22の周囲に一体に成形されている。厚肉部21は、ろ板30の間で圧縮されることにより、その被圧縮面がシール面として機能する。
【0043】
薄肉部22の縁部は、図3に示すように、厚肉部21の内周の厚み方向一端部側、例えば、厚み方向一端部から距離d離隔した位置に連接され、薄肉部22の中央部は、厚肉部21の厚み方向他端部側に張り出した平坦面に形成され、平坦面と縁部とが傾斜面23で連接されている。薄肉部22のろ室側面22aには複数のろ過液溝25が形成されている。
【0044】
薄肉部22の縁部は、ろ室内の原液を圧搾する際に薄肉部22が可動すると、応力集中が生じる部分である。しかし、上述の構成によれば、薄肉部22の縁部が厚肉部21の内周の厚み方向両端部から離隔した位置に連接されているので、応力集中が生じる前記縁部とろ板30との接触を回避できるので、摩擦等による破損の虞を低減し、ダイヤフラム20の寿命を延ばすことができる。
【0045】
ダイヤフラム20の左右下部には、厚肉部21の厚み方向に貫通したろ過液排出通路26がろ過液溝25と連通して形成され、ろ過液を通水可能に構成されている。
【0046】
このようなダイヤフラム20は、材質は特に問わないが、厚肉部21にはシール面として機能する程度の大きな圧力がかかり、薄肉部22は原液を圧搾するために可動するので、適度な硬さと柔軟さを併せもつものが好ましい。
【0047】
例えば、ダイヤフラム20は、熱可塑性エラストマのような高分子化合物を射出成形により厚肉部21及び薄肉部22を一体成形することができる。厚肉部21及び薄肉部22を一体成形することで、別に製作したろ枠のようなろ室空間の形成に必要な構成品数を減らすことができる。なお、厚肉部21は、ろ室内に供給される原液の供給圧力に耐え、シール面として機能する程度の圧力で挟まれる。
【0048】
ダイヤフラム20は、シール面としての機能を保ちつつ、原液を圧搾する可動部としての機能を保つ必要があるため、エラストマ樹脂を使用する場合の硬度は、JIS A硬度65〜90程度の範囲が好ましい。
【0049】
厚肉部21は、中実構造であってもよいし、図3に示すように、表裏互い違いになるように複数の凹部24を形成して肉をぬすみ、ダイヤフラム20の各部の厚さの差を減らすことで、射出成形の冷却時の縮みの偏りを防止するように形成してもよい。
【0050】
図4(a)に示すように、ろ板30の一側面には、隣接するダイヤフラムとの間で原液を圧縮する圧縮部31を備え、圧縮部31にろ室8で圧搾されたろ過液を通水する複数の波状のろ過液溝32aが上下方向に形成され、複数のろ過液溝32aは下部の連結溝32bで連結されている。連結溝32bはろ板30の中央から左右側方にかけて下方へ傾斜して形成され、ろ板30の左右下方に形成されたろ過液排出通路33に連通するように構成されている。
【0051】
さらに、ろ過液排出通路33の下方には、ダイヤフラム20をろ板30で挟持した状態でろ過液排出通路26と連通するようにろ過液排出通路34が形成されている。
【0052】
ろ板30の左右上方には、前後に貫通する原液供給路35が設けてあり、原液供給路35の周縁部に原液供給部材40が緩挿可能な凹部36が形成され、凹部36にはパッキン36aが備えられている。
【0053】
ろ板30の左右側方には、一対のガイドレール3に載架するための一対のスライドピース45が取り付けられている。
【0054】
図5に示すように、原液供給部材40は原液供給路35に挿通可能な原液供給管41と、ろ板30の凹部36に緩挿される原液供給部42で構成され、原液供給部42には原液供給管41から直交して分岐し、原液供給管41から供給される原液をろ室8内へと供給する給液路43が形成してある。
【0055】
原液供給部材40には、当該原液供給部材40が緩挿されるろ板30と、隣接するろ板とが開いた状態で、原液供給部材40が所定の位置に配置されるように位置決めをする一対のリンク部材44a,44bがボルト44cで固定されている。
【0056】
図8(a)、(b)に示すように、隣接したろ過ユニット4a,4bによる一対のろ布7cの締め付けの際には、原液供給部材40の原液供給部42がダイヤフラム20とろ板30bの間に位置する二重のろ布7cに挟まれる格好となり、ダイヤフラム20の薄肉部22とろ板30の圧縮部31の間に形成されたろ室8内に原液を供給することになる。
【0057】
原液供給部材40は、隣接したろ過ユニット4a,4bを押圧し一対のろ布7c間にろ室8を形成した際には、ろ板30の凹部36に緩挿される。原液供給管41は、原液供給路35内に収容され、隣接するろ過ユニット4の原液供給路35と連なるように構成されている。
【0058】
原液供給口9から、原液供給路35に原液を供給すると、原液供給部材40を介して、各ろ室8に原液が供給される。
【0059】
図6(a),(b)に示すように、ろ板30の圧縮部31の裏面の他側面にはダイヤフラム20を嵌入可能な立上り部37及び取付面38が形成されている。立上り部37の厚さは、ダイヤフラム20の厚さよりも小さく設定されている。
【0060】
つまり、ろ板30にダイヤフラム20を嵌入支持した際に、ダイヤフラム20の厚肉部21の厚さは、立上り部37の厚さより大きいため、この厚さの差が隣接するろ板との圧縮代となる。
【0061】
通常、押圧シリンダ6により加えられる押圧力は、ろ室8内の原液が漏れださないような大きさであるが、押圧シリンダ6による押圧力がダイヤフラム20のシールに必要な所定圧力以上に強い場合でも、ダイヤフラム20の厚肉部21はろ板30の立上り部37と面一になった時点で、立上り部37が隣接するろ板30と圧力を支持するので、ダイヤフラム20の厚肉部21には所定圧以上の圧力がかからないので、ダイヤフラム20の締め付けすぎによる破損、ずれ等を回避できる。
【0062】
左右の立上り部37は、取付面38にダイヤフラム20を嵌入支持した状態で、当該取付面38と隣接するろ板30の圧縮部31でダイヤフラム20を圧縮した際に、ダイヤフラム20が所定圧で圧縮されるように構成されている。なお、ダイヤフラム20は、取付面38に適宜ボルト等で固定される。
【0063】
ろ板30の取付面38の中央下方には、ダイヤフラム20を隣接するろ板の圧縮部31側へと膨らませるための加圧水を供給する加圧水導入口39a及び加圧水導入路39bが形成されている。
【0064】
図7(a),(b),(c)に示すように、ろ板30にダイヤフラム20を嵌入した際には、加圧水は、ろ板30の下部に取り付けられた加圧水供給管46から加圧水導入路39b、加圧水導入口39aを介して、取付面38とダイヤフラム20の薄肉部22の間に供給され、ダイヤフラム20の薄肉部22が隣接するろ板30の圧縮部31側へと膨張することとなる。
【0065】
なお、ダイヤフラム20の薄肉部22を隣接するろ板30の圧縮部31側へと膨張させるのは、加圧水に限らず流体であればよく、例えば、加圧気体であってもよい。
【0066】
ろ板30は、例えばポリプロピレンのような合成樹脂材を押出成形すれば、合性樹脂の特性である軽量性と耐薬品性を生かしながら、強度的にも従来の金属性ろ板に劣ることがない。ろ板30が軽量となり、並列する複数のろ過ユニット4の重量が軽減される。
【0067】
ろ布7cについて説明する。ろ布7cは無端状に形成され、ろ過ユニット4間毎に備えられた複数の上部支持部材7aと下部支持部材7b、及び、上フレーム11内に備えられたろ布緊張装置7d、ろ布蛇行防止装置7eによって張力を与えられて状態で、ろ布駆動装置7fによってろ過ユニット4間を駆動するように構成されている。なお、上フレーム11内には洗浄装置7gが備えられ、ろ布7cが目詰まりしたときや脱水ケーキの残滓がろ布7cの表面に残留したときでも、外部から供給される洗浄液を噴射して、ろ布7cの汚れを洗浄できる。
【0068】
このように、一枚のろ布7で複数のろ室8を覆えば、ろ布駆動装置7fによってろ布7cを循環させることで、全面を効率よく使用できる。なお、ろ布7cは、無端状の一枚のろ布7cを用いて、ろ布駆動装置7fによってろ布7cを循環させる構成でなくてもよい。複数のろ過ユニット4間にそれぞれ一対のろ布を張設して備え、各ろ過ユニット4間の一対のろ布がそれぞれ下方に移動するような構成であってもよい。
【0069】
以上のように構成されたフィルタプレス脱水機100は、閉板工程、ろ過工程、圧搾工程、開板・脱水ケーキ排出工程の順序で運転される。各工程を図9に示す概略図に基づいて説明する。
【0070】
閉板工程は、押圧シリンダ6のロッド6aを介して押圧部材5を前進させて複数のろ板ユニット4を押圧し、ダイヤフラム20の薄肉部22及びろ板30の圧縮部31の間に複数個のろ室を形成する工程である。図9(a)に示すように、閉板工程は、隣接するろ過ユニット4間にろ布7cが配置された状態で押圧シリンダ6を作動させてロッド6aを介して押圧部材5を前進させ、ろ過ユニット4を左フレーム1方向に押圧して、ろ枠として機能するダイヤフラム20の厚肉部21とろ板30で区画されるろ室8を複数形成する。
【0071】
ろ過工程は、閉板工程によって形成されたろ室8の一対のろ布7c内に原液を圧入してろ過する工程である。図9(b)に示すように、ろ過工程では閉板工程によって形成されたろ室8に左フレーム1側の原液供給口9から原液を圧入してろ布7cでろ過し、ろ過液は底部のろ過液排出口10から流下し、フィルタプレス脱水機100の外部に排水される。
【0072】
圧搾工程は、ろ過工程によってろ布7c間に残った水分を含んだ残存物を圧縮して脱水し、脱水ケーキ状にする工程である。図9(c)に示すように、圧搾工程では、加圧水供給管46から加圧水導入口39を通じてダイヤフラム20の裏面に加圧水を供給し、ダイヤフラム20をろ室8の中央側へ膨らませて、ろ布7c間に残留したケーキを他方のろ板30の圧縮部31側へ押圧して圧縮脱水してケーキ状にする。
【0073】
開板、脱水ケーキ排出工程は、加圧水の供給を停止し、ダイヤフラム20を収縮させた後、押圧シリンダ6のロッド6aを後退させて、各ろ過ユニット4を開き、脱水ケーキを排出する工程である。図9(d)に示すように、各ろ過ユニット4を開板すると、脱水ケーキはその自重でろ布7cから落下する。粘性のある脱水ケーキがろ布に7c付着し自重で落下しない場合は、ろ布駆動装置7fによりろ布7cを上下に動かすことで剥離させる。なお、原液の圧搾に利用した加圧水を排出する際には、薄肉部に働く弾性力を加圧水を排出する力として利用することができ、薄肉部が元の位置に戻ることにより、加圧水を排出しやすいので、開板、脱水ケーキ排出工程でろ過ユニットを開いた際に、加圧水がこぼれ落ち、周囲を汚す虞を低減することができる。
【0074】
以下に本発明によるフィルタプレス脱水機の別実施形態について説明する。上述した実施形態では、図10(a)に示すように、ろ過ユニット4を一対のダイヤフラム20とろ板30で構成し、ダイヤフラム20の薄肉部と、隣接するろ板30の圧縮部でろ室8を構成する場合について説明したが、図10(b)に示すように、一対のダイヤフラム20を対向させてろ室51を構成してもよい。この場合、ろ板50の両面にダイヤフラム20を嵌入支持するように構成することができる。
【0075】
上述した実施形態では、ダイヤフラム20の薄肉部22の縁部が、厚肉部21の厚み方向一端部側に連接され、薄肉部22の中央部が、厚肉部21の厚み方向他端部側に張り出した平坦面に形成され、平坦面と縁部とが傾斜面23で連接された場合について説明したが、図10(c)に示すように、ダイヤフラム20は、薄肉部22が平板状に形成され、薄肉部22の縁部が、ろ枠として機能する厚肉部21の内周の厚み方向両端部から離隔した位置に連接されている構成であってもよい。
【0076】
また、図11(a)に示すように、ダイヤフラム20は、薄肉部22が平板状に形成され、薄肉部22の縁部が、ろ枠として機能する厚肉部21の内周の厚み方向一端部に連接された構成であってもよい。この場合、薄肉部22の面22bが、厚肉部21の厚み方向端部と面一に形成され、あるいは、薄肉部22の縁部が、厚肉部21の厚み方向端部からわずかに離隔して連接され、薄肉部22の面22bが、厚肉部21の厚み方向端部と略面一に形成される。
【0077】
薄肉部22の縁部を、厚肉部21の厚み方向端部からわずかに、例えば、厚肉部の厚みに対して3%〜10%程度の距離だけ離隔して連接することで、応力集中が生じる前記縁部とろ板との接触を回避できるので、摩擦等による破損の虞を低減し、ダイヤフラムの寿命を延ばすことができる。
【0078】
図11(b)に示すように、上述のように構成されたダイヤフラム20の薄肉部22の面22bの裏面22cに排水溝を形成し、当該裏面22cがろ室8に対向するようにダイヤフラム20をろ板30に嵌入して用いた場合、薄肉部22自体が平板状に形成されているため、厚肉部21の内周面に連なる裏面22cの縁部22dまで全体をろ室8として利用することができるので、圧入する原液の量を増加させることができる。
【0079】
さらに、ダイヤフラム20の薄肉部22の面22b側に注入された加圧水を排出する際には、薄肉部22に働く弾性力22kを加圧水を排出する力として利用することができ、薄肉部22の面22bが厚肉部21の厚み方向端部と面一となる位置まで戻ることにより、加圧水が完全に排出され、薄肉部22の面22b側に残ることがないため、開板、脱水ケーキ排出工程でろ過ユニット4を開いた際に、加圧水がこぼれ落ち、周囲を汚す虞を低減することができる。
【0080】
逆に、図11(c)に示すように、上述のように構成されたダイヤフラム20の薄肉部22の面22bに排水溝を形成し、当該面22bがろ室8に対向するようにダイヤフラム20をろ板30に嵌入して用いた場合、薄肉部22の面22bが厚肉部21の厚み方向端部と面一の方向に戻ろうとする弾性力22kを原液を圧搾する力として利用することができる。ろ室8内に圧入された原液全体を確実に圧搾することができる。薄肉部22の縁部付近に、ろ布の目を抜けた脱水ケーキが付着することを防止できる。
【0081】
上述した実施形態では、ろ板30の圧縮部31の裏面の他側面の左右にダイヤフラム20を嵌入可能な立上り部37を備える構成について説明したが、立上り部は、ろ板の左右に限らず、上下に備える構成であってもよい。さらに、立上り部を小さな突起で形成し、ダイヤフラムを保持するダイヤフラム保持部を別に備える構成であってもよく、立上り部はダイヤフラムの厚肉部の圧縮を所定圧に維持できればどのような形態であってもよい。
【0082】
上述した実施形態は、何れも本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0083】
100:フィルタプレス脱水機
1:左フレーム
2:右フレーム
3:ガイドレール
4:ろ過ユニット
5:押圧部材
6:押圧シリンダ
6a:ロッド
7a:上部支持部材
7b:下部支持部材
7c:ろ布
7d:ろ布緊張装置
7e:ろ布蛇行防止装置
7f:ろ布駆動装置
7g:洗浄装置
8:ろ室
9:原液供給口
10:ろ過液排出口
11:上フレーム
20:ダイヤフラム
21:厚肉部
22:薄肉部
23:傾斜面
24:凹部
25:ろ過液溝
26:ろ過液排出通路
30:ろ板
30b:ろ板
31:圧縮部
32a:ろ過液溝
32b:連結溝
33:ろ過液排出通路
34:ろ過液排出通路
35:原液供給路
36:凹部
36a:パッキン
37:立上り部
38:取付面
39a:加圧水導入口
39b:加圧水導入路
40:原液供給部材
41:原液供給管
42:原液供給部
43:給液路
44a,44b:リンク部材
44c:ボルト
45:スライドピース
46:加圧水供給管
50:ろ板
51:ろ室
d:距離
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ枠とろ板で区画されるろ室に原液を供給して圧搾するフィルタプレス脱水機に組み込まれるダイヤフラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボン製造、チタン製造等の製品製造工程や、汚泥処理工程における固液分離用脱水機としてフィルタプレス脱水機が広く用いられている。
【0003】
フィルタプレス脱水機は、並列したろ板とダイヤフラム間にろ室を形成し、ろ板と、ダイヤフラムの前面に吊設したろ布で固液分離を行い、ろ室に生成した脱水ケーキをダイヤフラムで圧搾するように構成されている。
【0004】
このようなフィルタプレス脱水機に用いられるろ板及びダイヤフラムとして、特許文献1には、図12(a)に示すように、平坦な凹面状の脱水ケーキの支持床61と周縁部62が一体成形されたダイヤフラム60と、凹面状の支持面71と、支持面71の裏面にろ過床75が形成され、支持面71にダイヤフラム60を張設するようにしたろ板70が提案されている。
【0005】
ダイヤフラム60を張設するろ板70の縁部には、凹溝73とその外側に内部を拡開した蟻溝74をそれぞれ無端状に形成してある。ダイヤフラム60の縁部には、ろ板70の凹溝73に挿入するシール用の突条63と、その外側にろ板70の蟻溝74に挿着する先端部を拡大して切欠斜面を有する係止用の係合突部64をそれぞれ無端状に形成してある。
【0006】
図12(b)に示すように、ダイヤフラム60とろ板70を並列させ、ダイヤフラム60とろ板70の間に図示しないろ布を配置して、ダイヤフラム60の突条63と係合突部64をろ板70の凹溝73と蟻溝74にそれぞれ当押し込み、ろ板70にダイヤフラム60を挿着してろ室を形成し、原液供給部材80からろ室に圧搾対象物を供給した後、ダイヤフラム60とろ板70の支持床71の間に加圧水を圧入してダイヤフラム60の支持床61をろ過床75側へ膨らませることで、圧搾対象物を圧搾脱水する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−144393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述ようなダイヤフラム60では、圧搾工程でダイヤフラム60の膨張・収縮を繰り返すたびに可動部65に繰り返し応力が生じる。この可動部65はろ板70と接触しているため大きな応力が集中したり、圧搾脱水操作のたびに摩耗が生じるので、耐久性が悪化し、破損しやすいという問題があった。
【0009】
また、ダイヤフラム60の突条63,係合突部64と係合するような凹溝73,蟻溝74や、ダイヤフラム60の支持床61と沿うような支持面71を形成するろ板70の加工が煩雑であった。
【0010】
そこで、煩雑なろ板の加工を減らすために、図12(c)に示すように、平らなろ板66でダイヤフラム67を挟持することも考えられるが、ろ板66が平らなので、ろ板66とダイヤフラム67の間にろ室を形成する、つまり、ろ板66とダイヤフラム67の間に空間を形成するために、別に製作したろ枠68が必要であり、さらに、ろ枠68とろ板66の接触面を確実にシールするためには、シール部材69を備える必要があった。すると、構成品数が増加し、製作工程が増加するという問題があった。
【0011】
本発明は、破損の虞が低減されたダイヤフラムと、加工が容易なろ板と、前記ダイヤフラムと前記ろ板とでろ室が形成されたフィルタプレス脱水機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明によるダイヤフラムの特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、ろ枠とろ板で区画されるろ室に原液を供給して圧搾するフィルタプレス脱水機に組み込まれるダイヤフラムであって、ろ枠として機能する厚肉部が、原液を圧搾する薄肉部の周囲に一体に成形され、ろ板で圧縮されることによりシール面が形成される点にある。
【0013】
上述の構成によれば、ろ枠として機能する厚肉部と、原液を圧搾する薄肉部を一体成型することで、ろ室を構成するために別に製作したろ枠を用いる必要がなくなり、厚肉部がろ板で圧縮されることによりシール面が形成されることで、シール部材が不要となり、部品点数が低減できる。
【0014】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記薄肉部が平板状に形成され、前記薄肉部の縁部が前記厚肉部の内周の厚み方向一端部に連接されている点にある。
【0015】
上述の構成によれば、例えば、縁部がろ枠として機能する厚肉部の端面と連なる薄肉部の一面と、前記一面に対向するろ板との間にろ室を形成した場合、薄肉部に働く弾性力をろ室に圧入された原液を圧搾する力として利用できるので、原液を十分に圧搾することができる。さらに、ろ室側の薄肉部の縁部付近に、ろ布の目を抜けた脱水ケーキが付着することを防止できる。
【0016】
なお、上述とは逆に、縁部がろ枠として機能する厚肉部の端面と連なる薄肉部の一面の裏面と、前記裏面に対向するろ板との間にろ室を形成してもよい。
【0017】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二特徴構成に加えて、前記厚肉部の内周面と、前記内周面に連なる前記薄肉部の一面と、前記一面に対向するろ板との間にろ室が形成されるように構成されている点にある。
【0018】
上述の構成によれば、前記厚肉部の内周面と、前記内周面に連なる前記薄肉部の一面と、前記一面に対向するろ板との間にろ室が形成されているので、前記内周面に連なる前記平板状に形成された薄肉部の一面全体をろ室として有効に利用することができるので、圧入する原液の量を増加させることができる。
【0019】
さらに、原液の圧搾に利用した加圧水を排出する際には、薄肉部に働く弾性力を加圧水を排出する力として利用することができ、平板状に形成された薄肉部が元の位置に戻ることにより、加圧水が完全に排出されるので、開板、脱水ケーキ排出工程でろ過ユニットを開いた際に、加圧水がこぼれ落ち、周囲を汚す虞を低減することができる。
【0020】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記薄肉部が平板状に形成され、前記薄肉部の縁部が前記厚肉部の内周の厚み方向両端部から離隔した位置に連接されている点にある。
【0021】
ダイヤフラムが膨張・収縮する際に、ダイヤフラムの縁部には繰り返し応力が集中する。上述の構成によれば、当該縁部が厚肉部の内周の厚み方向端部から離隔した位置に連接されているので、ろ板に接することがなくなるので、摩耗の虞がなくなり破損の虞を低減できる。
【0022】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一、第二または第四の何れかの特徴構成に加えて、前記薄肉部の縁部が、ろ枠として機能する厚肉部の厚み方向一端部側に連接され、前記薄肉部の中央部が、前記厚肉部の厚み方向他端部側に張り出した平坦面に形成され、前記平坦面と前記縁部とが傾斜面で連接されている点にある。
【0023】
上述の構成によれば、ろ室の容積を比較的大きくとりつつも、ろ室を形成する側の薄肉部の縁部付近に、ろ布の目を抜けた脱水ケーキが付着することを防止できる。
【0024】
さらに、原液の圧搾に利用した加圧水を排出する際には、薄肉部に働く弾性力を加圧水を排出する力として利用することができ、薄肉部が元の位置に戻ることにより、加圧水を排出しやすいので、開板、脱水ケーキ排出工程でろ過ユニットを開いた際に、加圧水がこぼれ落ち、周囲を汚す虞を低減することができる。
【0025】
本発明によるろ板の第一特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成を備えたダイヤフラムで原液を圧搾するフィルタプレス脱水機に組み込まれるろ板であって、他のろ板との間で前記ダイヤフラムを圧縮する圧縮部と、ダイヤフラムの圧縮を所定圧とするための立上り部が形成されている点にある。
【0026】
上述の構成によれば、ダイヤフラムの圧縮を所定圧とする立上り部により、ダイヤフラムの厚肉部が圧縮される圧力を所定圧に維持できるので、シール面のシール効果を安定させることができ、厚肉部の締め付けすぎによる破損の虞も回避できる。
【0027】
同第二の特徴構成は、請求項7に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記立上り部の厚さは、ダイヤフラムの厚肉部の厚さより小さく設定されている点にある。
【0028】
上述の構成によれば、立上り部の厚さと厚肉部の厚さの差がダイヤフラムの圧縮代となる。ダイヤフラムが前記圧縮代以上に圧縮されることがなくなるので、シール面のシール効果を安定させることができ、厚肉部の締め付けすぎによる破損の虞も回避できる。
【0029】
本発明によるフィルタプレス脱水機の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成を備えたダイヤフラムと、上述の第一または第二特徴構成を備えたろ板を備えた点にある。
【0030】
上述の構成によれば、隣接するろ板の間にダイヤフラムが所定圧で保持された状態で圧搾を行うことができるので、安定したシール効果を得つつ、ダイヤフラムの締め付けすぎによる破損の虞が回避できる状態での脱水ができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明によれば、破損の虞が低減されたダイヤフラムと、加工が容易なろ板と、前記ダイヤフラムと前記ろ板とでろ室が形成されたフィルタプレス脱水機を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明によるフィルタプレス脱水機の概略図
【図2】ダイヤフラムの説明図であって、(a)は正面図のA−A線断面図、(b)は正面図
【図3】(a)はダイヤフラムの縁部の詳細図、(b)はダイヤフラムの厚さと立上が部の厚さの説明図
【図4】(a)はろ板の正面図、(b)はろ板の側面図
【図5】(a)は原液供給部材の正面図、(b)は原液供給部材の側面図
【図6】(a)がろ板の平面図、(b)はろ板の裏面図
【図7】ダイヤフラムをろ板に嵌入した状態の説明図であって、(a)は側断面図、(b)は平面図、(c)は裏面図
【図8】ろ過ユニットの説明図であって、(a)はろ過ユニットが開いた状態を表す概略図、(b)はろ過ユニットが閉じた状態を表す概略図
【図9】(a)は閉板工程の説明図、(b)はろ過工程の説明図、(c)は圧搾工程の説明図、(d)は開板・脱水ケーキ排出工程の説明図
【図10】(a)は本実施形態によるろ過ユニットの概略図、(b)は別実施形態によるろ過ユニットの概略図、(c)は別実施形態によるダイヤフラムの説明図
【図11】(a)は、別実施形態によるダイヤフラムの説明図、(b)は、別実施形態によるダイヤフラムを備えたろ過ユニットの説明図、(c)は、別実施形態によるダイヤフラムを備えたろ過ユニットの説明図
【図12】従来のフィルタプレス脱水機に用いられるダイヤフラムとろ板の概略図であって、(a)はダイヤフラムとろ板の係合部分の概略図、(b)はダイヤフラムとろ板を係合した状態の概略図、(c)はろ板が平らである場合の説明図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明によるダイヤフラム、ろ板及びフィルタプレス脱水機を説明する。
【0034】
図1に示すように、フィルタプレス脱水機100には、左フレーム1、右フレーム2間に一対のガイドレール3が横架してあり、一対のガイドレール3に複数のろ過ユニット4が左フレーム1と右フレーム2方向に摺動可能に載架されている。右フレーム2には押圧シリンダ6が設けられ、押圧シリンダ6のロッド6aの先端には押圧部材5が備えられている。
【0035】
複数のろ過ユニット4はそれぞれ隣接するろ過ユニット4とリンク部材(図示せず)で連結され、図1中右端のろ過ユニット4はろ過ユニット駆動装置と連結され、左端のろ過ユニット4は左フレーム1側と連結されている。右端のろ過ユニット4が右方向に移動すると、それにつられて順次ろ過ユニット4が右方向に移動し、リンク部材によってそれぞれのろ過ユニット4が所定間隔で離間するように構成されている。
【0036】
なお、ろ過ユニット4の移動は上述の構成によるものに限らず、左フレーム1と右フレーム2に備えたスプロケット(図示せず)間に配設したチェーン(図示せず)にろ過ユニット4を懸架して、スプロケットを駆動しチェーンを移動させることで、当該チェーンに懸架されたろ過ユニット4を移動させる構成であってもよい。
【0037】
隣接するろ過ユニット4間には、複数の上部支持部材7aと下部支持部材7bの間に張設された無端状のろ布7cが上下方向に配設されている。
【0038】
押圧部材5を介して押圧シリンダ6によって複数のろ過ユニット4がそれぞれの間にろ布7cを挟んだ状態で、右フレーム2方向から左フレーム1方向に所定圧力で押圧されて閉板されるように構成されている。
【0039】
ろ過ユニット4は、ろ板30とろ板30の片面に支持されたダイヤフラム20で構成され、ろ室8は、ろ枠として機能するダイヤフラム20の厚肉部とろ板30で区画されて構成される。
【0040】
左フレーム1には、ろ室8内に圧搾対象物である原液を供給する原液供給口9と、ろ室8で圧搾されたろ過液が排出されるろ過液排出口10が備えられている。
【0041】
原液供給口9から、原液をろ室8内に供給し、ろ過ユニット4で圧搾すると、ろ過液はろ過液排出口10から排出され、ろ過ユニット駆動装置でろ過ユニット4を開板すると、複数のろ過ユニット4間から脱水された脱水ケーキが排出される。
【0042】
図2(a),(b)に示すように、ダイヤフラム20は、ろ枠として機能する厚肉部21が、原液を圧搾する薄肉部22の周囲に一体に成形されている。厚肉部21は、ろ板30の間で圧縮されることにより、その被圧縮面がシール面として機能する。
【0043】
薄肉部22の縁部は、図3に示すように、厚肉部21の内周の厚み方向一端部側、例えば、厚み方向一端部から距離d離隔した位置に連接され、薄肉部22の中央部は、厚肉部21の厚み方向他端部側に張り出した平坦面に形成され、平坦面と縁部とが傾斜面23で連接されている。薄肉部22のろ室側面22aには複数のろ過液溝25が形成されている。
【0044】
薄肉部22の縁部は、ろ室内の原液を圧搾する際に薄肉部22が可動すると、応力集中が生じる部分である。しかし、上述の構成によれば、薄肉部22の縁部が厚肉部21の内周の厚み方向両端部から離隔した位置に連接されているので、応力集中が生じる前記縁部とろ板30との接触を回避できるので、摩擦等による破損の虞を低減し、ダイヤフラム20の寿命を延ばすことができる。
【0045】
ダイヤフラム20の左右下部には、厚肉部21の厚み方向に貫通したろ過液排出通路26がろ過液溝25と連通して形成され、ろ過液を通水可能に構成されている。
【0046】
このようなダイヤフラム20は、材質は特に問わないが、厚肉部21にはシール面として機能する程度の大きな圧力がかかり、薄肉部22は原液を圧搾するために可動するので、適度な硬さと柔軟さを併せもつものが好ましい。
【0047】
例えば、ダイヤフラム20は、熱可塑性エラストマのような高分子化合物を射出成形により厚肉部21及び薄肉部22を一体成形することができる。厚肉部21及び薄肉部22を一体成形することで、別に製作したろ枠のようなろ室空間の形成に必要な構成品数を減らすことができる。なお、厚肉部21は、ろ室内に供給される原液の供給圧力に耐え、シール面として機能する程度の圧力で挟まれる。
【0048】
ダイヤフラム20は、シール面としての機能を保ちつつ、原液を圧搾する可動部としての機能を保つ必要があるため、エラストマ樹脂を使用する場合の硬度は、JIS A硬度65〜90程度の範囲が好ましい。
【0049】
厚肉部21は、中実構造であってもよいし、図3に示すように、表裏互い違いになるように複数の凹部24を形成して肉をぬすみ、ダイヤフラム20の各部の厚さの差を減らすことで、射出成形の冷却時の縮みの偏りを防止するように形成してもよい。
【0050】
図4(a)に示すように、ろ板30の一側面には、隣接するダイヤフラムとの間で原液を圧縮する圧縮部31を備え、圧縮部31にろ室8で圧搾されたろ過液を通水する複数の波状のろ過液溝32aが上下方向に形成され、複数のろ過液溝32aは下部の連結溝32bで連結されている。連結溝32bはろ板30の中央から左右側方にかけて下方へ傾斜して形成され、ろ板30の左右下方に形成されたろ過液排出通路33に連通するように構成されている。
【0051】
さらに、ろ過液排出通路33の下方には、ダイヤフラム20をろ板30で挟持した状態でろ過液排出通路26と連通するようにろ過液排出通路34が形成されている。
【0052】
ろ板30の左右上方には、前後に貫通する原液供給路35が設けてあり、原液供給路35の周縁部に原液供給部材40が緩挿可能な凹部36が形成され、凹部36にはパッキン36aが備えられている。
【0053】
ろ板30の左右側方には、一対のガイドレール3に載架するための一対のスライドピース45が取り付けられている。
【0054】
図5に示すように、原液供給部材40は原液供給路35に挿通可能な原液供給管41と、ろ板30の凹部36に緩挿される原液供給部42で構成され、原液供給部42には原液供給管41から直交して分岐し、原液供給管41から供給される原液をろ室8内へと供給する給液路43が形成してある。
【0055】
原液供給部材40には、当該原液供給部材40が緩挿されるろ板30と、隣接するろ板とが開いた状態で、原液供給部材40が所定の位置に配置されるように位置決めをする一対のリンク部材44a,44bがボルト44cで固定されている。
【0056】
図8(a)、(b)に示すように、隣接したろ過ユニット4a,4bによる一対のろ布7cの締め付けの際には、原液供給部材40の原液供給部42がダイヤフラム20とろ板30bの間に位置する二重のろ布7cに挟まれる格好となり、ダイヤフラム20の薄肉部22とろ板30の圧縮部31の間に形成されたろ室8内に原液を供給することになる。
【0057】
原液供給部材40は、隣接したろ過ユニット4a,4bを押圧し一対のろ布7c間にろ室8を形成した際には、ろ板30の凹部36に緩挿される。原液供給管41は、原液供給路35内に収容され、隣接するろ過ユニット4の原液供給路35と連なるように構成されている。
【0058】
原液供給口9から、原液供給路35に原液を供給すると、原液供給部材40を介して、各ろ室8に原液が供給される。
【0059】
図6(a),(b)に示すように、ろ板30の圧縮部31の裏面の他側面にはダイヤフラム20を嵌入可能な立上り部37及び取付面38が形成されている。立上り部37の厚さは、ダイヤフラム20の厚さよりも小さく設定されている。
【0060】
つまり、ろ板30にダイヤフラム20を嵌入支持した際に、ダイヤフラム20の厚肉部21の厚さは、立上り部37の厚さより大きいため、この厚さの差が隣接するろ板との圧縮代となる。
【0061】
通常、押圧シリンダ6により加えられる押圧力は、ろ室8内の原液が漏れださないような大きさであるが、押圧シリンダ6による押圧力がダイヤフラム20のシールに必要な所定圧力以上に強い場合でも、ダイヤフラム20の厚肉部21はろ板30の立上り部37と面一になった時点で、立上り部37が隣接するろ板30と圧力を支持するので、ダイヤフラム20の厚肉部21には所定圧以上の圧力がかからないので、ダイヤフラム20の締め付けすぎによる破損、ずれ等を回避できる。
【0062】
左右の立上り部37は、取付面38にダイヤフラム20を嵌入支持した状態で、当該取付面38と隣接するろ板30の圧縮部31でダイヤフラム20を圧縮した際に、ダイヤフラム20が所定圧で圧縮されるように構成されている。なお、ダイヤフラム20は、取付面38に適宜ボルト等で固定される。
【0063】
ろ板30の取付面38の中央下方には、ダイヤフラム20を隣接するろ板の圧縮部31側へと膨らませるための加圧水を供給する加圧水導入口39a及び加圧水導入路39bが形成されている。
【0064】
図7(a),(b),(c)に示すように、ろ板30にダイヤフラム20を嵌入した際には、加圧水は、ろ板30の下部に取り付けられた加圧水供給管46から加圧水導入路39b、加圧水導入口39aを介して、取付面38とダイヤフラム20の薄肉部22の間に供給され、ダイヤフラム20の薄肉部22が隣接するろ板30の圧縮部31側へと膨張することとなる。
【0065】
なお、ダイヤフラム20の薄肉部22を隣接するろ板30の圧縮部31側へと膨張させるのは、加圧水に限らず流体であればよく、例えば、加圧気体であってもよい。
【0066】
ろ板30は、例えばポリプロピレンのような合成樹脂材を押出成形すれば、合性樹脂の特性である軽量性と耐薬品性を生かしながら、強度的にも従来の金属性ろ板に劣ることがない。ろ板30が軽量となり、並列する複数のろ過ユニット4の重量が軽減される。
【0067】
ろ布7cについて説明する。ろ布7cは無端状に形成され、ろ過ユニット4間毎に備えられた複数の上部支持部材7aと下部支持部材7b、及び、上フレーム11内に備えられたろ布緊張装置7d、ろ布蛇行防止装置7eによって張力を与えられて状態で、ろ布駆動装置7fによってろ過ユニット4間を駆動するように構成されている。なお、上フレーム11内には洗浄装置7gが備えられ、ろ布7cが目詰まりしたときや脱水ケーキの残滓がろ布7cの表面に残留したときでも、外部から供給される洗浄液を噴射して、ろ布7cの汚れを洗浄できる。
【0068】
このように、一枚のろ布7で複数のろ室8を覆えば、ろ布駆動装置7fによってろ布7cを循環させることで、全面を効率よく使用できる。なお、ろ布7cは、無端状の一枚のろ布7cを用いて、ろ布駆動装置7fによってろ布7cを循環させる構成でなくてもよい。複数のろ過ユニット4間にそれぞれ一対のろ布を張設して備え、各ろ過ユニット4間の一対のろ布がそれぞれ下方に移動するような構成であってもよい。
【0069】
以上のように構成されたフィルタプレス脱水機100は、閉板工程、ろ過工程、圧搾工程、開板・脱水ケーキ排出工程の順序で運転される。各工程を図9に示す概略図に基づいて説明する。
【0070】
閉板工程は、押圧シリンダ6のロッド6aを介して押圧部材5を前進させて複数のろ板ユニット4を押圧し、ダイヤフラム20の薄肉部22及びろ板30の圧縮部31の間に複数個のろ室を形成する工程である。図9(a)に示すように、閉板工程は、隣接するろ過ユニット4間にろ布7cが配置された状態で押圧シリンダ6を作動させてロッド6aを介して押圧部材5を前進させ、ろ過ユニット4を左フレーム1方向に押圧して、ろ枠として機能するダイヤフラム20の厚肉部21とろ板30で区画されるろ室8を複数形成する。
【0071】
ろ過工程は、閉板工程によって形成されたろ室8の一対のろ布7c内に原液を圧入してろ過する工程である。図9(b)に示すように、ろ過工程では閉板工程によって形成されたろ室8に左フレーム1側の原液供給口9から原液を圧入してろ布7cでろ過し、ろ過液は底部のろ過液排出口10から流下し、フィルタプレス脱水機100の外部に排水される。
【0072】
圧搾工程は、ろ過工程によってろ布7c間に残った水分を含んだ残存物を圧縮して脱水し、脱水ケーキ状にする工程である。図9(c)に示すように、圧搾工程では、加圧水供給管46から加圧水導入口39を通じてダイヤフラム20の裏面に加圧水を供給し、ダイヤフラム20をろ室8の中央側へ膨らませて、ろ布7c間に残留したケーキを他方のろ板30の圧縮部31側へ押圧して圧縮脱水してケーキ状にする。
【0073】
開板、脱水ケーキ排出工程は、加圧水の供給を停止し、ダイヤフラム20を収縮させた後、押圧シリンダ6のロッド6aを後退させて、各ろ過ユニット4を開き、脱水ケーキを排出する工程である。図9(d)に示すように、各ろ過ユニット4を開板すると、脱水ケーキはその自重でろ布7cから落下する。粘性のある脱水ケーキがろ布に7c付着し自重で落下しない場合は、ろ布駆動装置7fによりろ布7cを上下に動かすことで剥離させる。なお、原液の圧搾に利用した加圧水を排出する際には、薄肉部に働く弾性力を加圧水を排出する力として利用することができ、薄肉部が元の位置に戻ることにより、加圧水を排出しやすいので、開板、脱水ケーキ排出工程でろ過ユニットを開いた際に、加圧水がこぼれ落ち、周囲を汚す虞を低減することができる。
【0074】
以下に本発明によるフィルタプレス脱水機の別実施形態について説明する。上述した実施形態では、図10(a)に示すように、ろ過ユニット4を一対のダイヤフラム20とろ板30で構成し、ダイヤフラム20の薄肉部と、隣接するろ板30の圧縮部でろ室8を構成する場合について説明したが、図10(b)に示すように、一対のダイヤフラム20を対向させてろ室51を構成してもよい。この場合、ろ板50の両面にダイヤフラム20を嵌入支持するように構成することができる。
【0075】
上述した実施形態では、ダイヤフラム20の薄肉部22の縁部が、厚肉部21の厚み方向一端部側に連接され、薄肉部22の中央部が、厚肉部21の厚み方向他端部側に張り出した平坦面に形成され、平坦面と縁部とが傾斜面23で連接された場合について説明したが、図10(c)に示すように、ダイヤフラム20は、薄肉部22が平板状に形成され、薄肉部22の縁部が、ろ枠として機能する厚肉部21の内周の厚み方向両端部から離隔した位置に連接されている構成であってもよい。
【0076】
また、図11(a)に示すように、ダイヤフラム20は、薄肉部22が平板状に形成され、薄肉部22の縁部が、ろ枠として機能する厚肉部21の内周の厚み方向一端部に連接された構成であってもよい。この場合、薄肉部22の面22bが、厚肉部21の厚み方向端部と面一に形成され、あるいは、薄肉部22の縁部が、厚肉部21の厚み方向端部からわずかに離隔して連接され、薄肉部22の面22bが、厚肉部21の厚み方向端部と略面一に形成される。
【0077】
薄肉部22の縁部を、厚肉部21の厚み方向端部からわずかに、例えば、厚肉部の厚みに対して3%〜10%程度の距離だけ離隔して連接することで、応力集中が生じる前記縁部とろ板との接触を回避できるので、摩擦等による破損の虞を低減し、ダイヤフラムの寿命を延ばすことができる。
【0078】
図11(b)に示すように、上述のように構成されたダイヤフラム20の薄肉部22の面22bの裏面22cに排水溝を形成し、当該裏面22cがろ室8に対向するようにダイヤフラム20をろ板30に嵌入して用いた場合、薄肉部22自体が平板状に形成されているため、厚肉部21の内周面に連なる裏面22cの縁部22dまで全体をろ室8として利用することができるので、圧入する原液の量を増加させることができる。
【0079】
さらに、ダイヤフラム20の薄肉部22の面22b側に注入された加圧水を排出する際には、薄肉部22に働く弾性力22kを加圧水を排出する力として利用することができ、薄肉部22の面22bが厚肉部21の厚み方向端部と面一となる位置まで戻ることにより、加圧水が完全に排出され、薄肉部22の面22b側に残ることがないため、開板、脱水ケーキ排出工程でろ過ユニット4を開いた際に、加圧水がこぼれ落ち、周囲を汚す虞を低減することができる。
【0080】
逆に、図11(c)に示すように、上述のように構成されたダイヤフラム20の薄肉部22の面22bに排水溝を形成し、当該面22bがろ室8に対向するようにダイヤフラム20をろ板30に嵌入して用いた場合、薄肉部22の面22bが厚肉部21の厚み方向端部と面一の方向に戻ろうとする弾性力22kを原液を圧搾する力として利用することができる。ろ室8内に圧入された原液全体を確実に圧搾することができる。薄肉部22の縁部付近に、ろ布の目を抜けた脱水ケーキが付着することを防止できる。
【0081】
上述した実施形態では、ろ板30の圧縮部31の裏面の他側面の左右にダイヤフラム20を嵌入可能な立上り部37を備える構成について説明したが、立上り部は、ろ板の左右に限らず、上下に備える構成であってもよい。さらに、立上り部を小さな突起で形成し、ダイヤフラムを保持するダイヤフラム保持部を別に備える構成であってもよく、立上り部はダイヤフラムの厚肉部の圧縮を所定圧に維持できればどのような形態であってもよい。
【0082】
上述した実施形態は、何れも本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0083】
100:フィルタプレス脱水機
1:左フレーム
2:右フレーム
3:ガイドレール
4:ろ過ユニット
5:押圧部材
6:押圧シリンダ
6a:ロッド
7a:上部支持部材
7b:下部支持部材
7c:ろ布
7d:ろ布緊張装置
7e:ろ布蛇行防止装置
7f:ろ布駆動装置
7g:洗浄装置
8:ろ室
9:原液供給口
10:ろ過液排出口
11:上フレーム
20:ダイヤフラム
21:厚肉部
22:薄肉部
23:傾斜面
24:凹部
25:ろ過液溝
26:ろ過液排出通路
30:ろ板
30b:ろ板
31:圧縮部
32a:ろ過液溝
32b:連結溝
33:ろ過液排出通路
34:ろ過液排出通路
35:原液供給路
36:凹部
36a:パッキン
37:立上り部
38:取付面
39a:加圧水導入口
39b:加圧水導入路
40:原液供給部材
41:原液供給管
42:原液供給部
43:給液路
44a,44b:リンク部材
44c:ボルト
45:スライドピース
46:加圧水供給管
50:ろ板
51:ろ室
d:距離
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ枠とろ板で区画されるろ室に原液を供給して圧搾するフィルタプレス脱水機に組み込まれるダイヤフラムであって、
ろ枠として機能する厚肉部が、原液を圧搾する薄肉部の周囲に一体に成形され、ろ板で圧縮されることによりシール面が形成されるダイヤフラム。
【請求項2】
前記薄肉部が平板状に形成され、前記薄肉部の縁部が前記厚肉部の内周の厚み方向一端部に連接されている請求項1記載のダイヤフラム。
【請求項3】
前記厚肉部の内周面と、前記内周面に連なる前記薄肉部の一面と、前記一面に対向するろ板との間にろ室が形成されるように構成されている請求項2記載のダイヤフラム。
【請求項4】
前記薄肉部が平板状に形成され、前記薄肉部の縁部が前記厚肉部の内周の厚み方向両端部から離隔した位置に連接されている請求項1記載のダイヤフラム。
【請求項5】
前記薄肉部の縁部が、ろ枠として機能する厚肉部の厚み方向一端部側に連接され、前記薄肉部の中央部が、前記厚肉部の厚み方向他端部側に張り出した平坦面に形成され、前記平坦面と前記縁部とが傾斜面で連接されている請求項1、2または4の何れかに記載のダイヤフラム。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載のダイヤフラムで原液を圧搾するフィルタプレス脱水機に組み込まれるろ板であって、
他のろ板との間で前記ダイヤフラムを圧縮する圧縮部と、ダイヤフラムの圧縮を所定圧とするための立上り部が形成されているろ板。
【請求項7】
前記立上り部の厚さは、ダイヤフラムの厚肉部の厚さより小さく設定されている請求項6記載のろ板。
【請求項8】
請求項1から5の何れかに記載のダイヤフラムと、請求項6または7記載のろ板を備えたフィルタプレス脱水機。
【請求項1】
ろ枠とろ板で区画されるろ室に原液を供給して圧搾するフィルタプレス脱水機に組み込まれるダイヤフラムであって、
ろ枠として機能する厚肉部が、原液を圧搾する薄肉部の周囲に一体に成形され、ろ板で圧縮されることによりシール面が形成されるダイヤフラム。
【請求項2】
前記薄肉部が平板状に形成され、前記薄肉部の縁部が前記厚肉部の内周の厚み方向一端部に連接されている請求項1記載のダイヤフラム。
【請求項3】
前記厚肉部の内周面と、前記内周面に連なる前記薄肉部の一面と、前記一面に対向するろ板との間にろ室が形成されるように構成されている請求項2記載のダイヤフラム。
【請求項4】
前記薄肉部が平板状に形成され、前記薄肉部の縁部が前記厚肉部の内周の厚み方向両端部から離隔した位置に連接されている請求項1記載のダイヤフラム。
【請求項5】
前記薄肉部の縁部が、ろ枠として機能する厚肉部の厚み方向一端部側に連接され、前記薄肉部の中央部が、前記厚肉部の厚み方向他端部側に張り出した平坦面に形成され、前記平坦面と前記縁部とが傾斜面で連接されている請求項1、2または4の何れかに記載のダイヤフラム。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載のダイヤフラムで原液を圧搾するフィルタプレス脱水機に組み込まれるろ板であって、
他のろ板との間で前記ダイヤフラムを圧縮する圧縮部と、ダイヤフラムの圧縮を所定圧とするための立上り部が形成されているろ板。
【請求項7】
前記立上り部の厚さは、ダイヤフラムの厚肉部の厚さより小さく設定されている請求項6記載のろ板。
【請求項8】
請求項1から5の何れかに記載のダイヤフラムと、請求項6または7記載のろ板を備えたフィルタプレス脱水機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−67797(P2011−67797A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223270(P2009−223270)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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