説明

ダイヤモンドおよびダイヤモンド状セラミックのポリマー前駆体であるポリカルビンの製造のための新たな工業的に実行可能な方法

ダイヤモンドおよびダイヤモンド状セラミックのポリマー前駆体であるポリカルビンの製造のための新たな工業的に実行可能な方法。本発明は、ポリカルビンを合成する新たな方法に関する。これらのポリマーは、加熱の際に、プラズマ処理および化学蒸着によって、ダイヤモンドおよびダイヤモンド状セラミックスを製造することで知られている。ポリカルビンを合成する方法には、「トリハロアルカン(RCX3)またはあらゆる割合でのそれらの混合物、溶剤(2)および電解質を容器(1)に入れ」、「適当な電源(3)を使用し
て、電気を電極(4)へ加える」という特徴がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカルビンの新たな合成方法に関する。これらのポリマーは、プラズマ処理および化学蒸着によってダイヤモンドおよびダイヤモンド状のセラミックを加熱の際に製造することで知られている。
【背景技術】
【0002】
これまでにポリカルビンを合成した唯一の人は、パトリシア・A・ビアンコーニである。
【0003】
ビアンコーニおよび協力者達は、「ポリ(フェニルカルビン):ダイヤモンド状炭素のポリマー前駆体」において、ダイヤモンドまたはダイヤモンド状炭素(DLC)に変化させ
ることができるポリマーであるポリカルビンの初めての合成を報告している(Visscher, Glenn T.; Nesting, David C.; Badding,
John V.; Bianconi, Patricia A. アメリカ合
衆国ペンシルバニア州ユニバーシティ・パーク、ペンシルバニア州立大学化学学部、サイエンス(合衆国ワシントンDC)(1993)、260(5113)、1496-9)。縮合環の三次元網目
構造において他の3つの炭素原子に連結されている、それぞれがペンダントフェニル基を持つ4面体的に混成された炭素原子で構成されるポリマーの独特の構造によって、それが適度の加熱で、加圧なしに、ダイヤモンドを容易に形成することができる。ポリマーは、液体ナトリウムカリウム合金(NaK)および高密度超音波でモノマーを減らすことによっ
て作られる。このポリマーから製造されるダイヤモンド/DLC の特性についてのさらなる
考察は、刊行物「ダイヤモンド状炭素結合。論評への回答」(Bianconi, Patricia A. アメリカ合衆国ペンシルバニア州ユニバーシティ・パーク、ペンシルバニア州立大学化学学部、サイエンス(合衆国ワシントンDC)(1994)、266(5188)、1256-7)に記載され、
それはこの元の論文についてのW.S. Bascaの論評への回答である。
【0004】
ビアンコーニは、出版物「新種の炭素系網状ポリマーであるポリカルビンの合成および特性解析」にポリカルビンの異なる種類の合成をその後報告し続けている。(Visscher, Glenn
T.; Bianconi, Patricia A. アメリカ合衆国ペンシルバニア州ユニバーシティ・
パーク、ペンシルバニア州立大学化学学部、米国化学会誌(1994)、116(5)、1805-11
)。再度THF(テトラヒドロフラン)でのNa-K合金の超音波によって生成されたエマルジ
ョンで、さまざまな比率での適切なRCC13 (R = Ph、 Meまたは H)
モノマーの還元的縮合によって得られ作られたポリマーは、ポリ(フェニルカルビン)(I)、ポリ(メチルカルビン)、75:25ポリ(フェニル共メチルカルビン)および99:1ポリ(フェニル共ヒドリ
ドカルビン)であった。その他の各種共ポリマーもまた生成された。これらのポリマー特有の構造は、再度強調されている。
【0005】
この構造の根拠はまた、2つの理論研究論文「カルビン網状ポリマーの構造解析」(Best, Scott A.; Bianconi, Patricia A; Merz,
Kenneth M., Jr. アメリカ合衆国ペンシルバニア州ユニバーシティ・パーク、ペンシルバニア州立大学化学学部、米国化学会誌(1995)、117(36)、9251-8)および「カルビン網状ポリマーの構造解析」(Scott A.; Bianconi, Ptricia A.; Merz, Kenneth M., Jr. アメリカ合衆国ペンシルバニア州ユニバー
シティ・パーク、ペンシルバニア州立大学化学学部、ACS(米国科学会)シンポジウム・
シリーズ(1995)、589(コンピューター支援分子設計)、304-15)でも報告されている

【0006】
この種のポリマーを含む最近の出版物は「プリセラミック・ポリマーからのダイヤモン
ドおよびダイヤモンド状炭素」(Biancona, Patricia A.; Joray, Scott J.; Aldrich,
Brian L.; Sumranjit, Jitapa;
Duffy, Daniel J.; Long, David P.; Lazorcik, Jason L.;
Raboin, Louis; Kearns, James K.; Smulligan
Stephenie L.; Babyak,
Jonathan M.
アメリカ合衆国マサチューセッツ州アマースト、マサチューセッツ大学アマースト校化学ポリマー学部、米国科学会誌(2004)、126(10)、3191-3202)
である。この研究報告
において、ビアンコーニは、炭素系ランダム網状ポリマー(ポリカルビン類)の種類で最新のポリ(ヒドリドカルビン)の合成を開示している。構造的に当ポリマーは、今各炭素にはペンダント水素原子があることを除いて、以前の研究報告と同じである。この研究論文は、このポリマーから製造することができるダイヤモンドおよびDLCが高収量で製造さ
れるであろうことを示唆している。さらに、このポリマーの高sp3含有量は、高品質ダイ
ヤモンドおよびダイヤモンド状物質が製造されることを意味し、強調されている。
【0007】
ビアンコーニにはまた、これらのポリマーに関連した2件の特許もある。出願番号US 2002/000367592の2002年3月25日付および出願番号US 2002/000370555(US 2004/0010108およびUS 2006/0106184の番号で公開された)の2002年4月5日付の優先権のある「ポリアセチレンに類似した骨格構造を持つ高または超高分子量無機または炭素ポリマーの生成」と題する文献WO/03/082763において、Bianconi, Patricia A.およびJoray, Scottは、「三次元ランダム網状構造のある高分子および超高分子量(MW)ホモポリマーお
よび共ポリマー」を開示している。当ポリマーには、一般的公式[AR]nの繰り返し発生
する構造単位があり、その公式では、Aは炭素、シリコン、ゲルマニウム、スズ原子また
はその他の元素および化合物であり得る。Rは、Aと同じまたは異なる(各繰り返し単位)こともあり、約1から約30の炭素原子を含む線状または分枝鎖飽和炭化水素、環中の約5から14の炭素原子を含む不飽和環含有または環炭化水素であり、そのそれぞれが置換または非置換形態において、少なくとも20の繰り返し発生する構造単位、ハロゲン族元素、あるいはその他の元素または化合物を持つポリマー鎖基である水素であり得る。数を表す記号「n」は、少なくとも20であることがあり、高分子量ポリマーには、例えば約
30,000ダルトン、少なくとも10,000ダルトンおよび最高1,000,000ダルトン以上の分子量がある。
【0008】
「ポリカルビンおよびそれから作られるダイヤモンド状炭素材料の生成」と題する文献WO/95/24368において、Bianconi, Patricia
Aおよびその他は、「三次元ランダム連続網
状骨格を提供するために四面体的混成C原子が3 C-C単結合によって互いに連結され、1R
基が各C原子に連結されるポリマー[CR]n[R = H、(置換)ヒドロカルビルなど]は、Na-K合金のエマルジョンおよび有機溶剤(例えば、THF)でモノマーRCX3(X = Cl、Br、I
)(例えば、PhCCl3)を還元することによって、あるいはCX4(例えば、CBr4)、ヨウ化
アルキル(例えば、Mel)およびNa金属を反応させることによって生成される」ことを開
示している。ポリマー[CR]nと類似した構造のポリマー[(R1C)x(R2C)yn[R = H
、(置換)ヒドロカルビルなど]は、Na-K合金のエマルジョンおよび有機溶剤でモノマーR1CX3およびR2CX3(例えば、PhCCl3およびMeCCl3)を還元することによって生成される。ポリマー[CR]nと類似した構造のポリマー[(R1C)x(R2Si)ynは、Na-K合金のエマ
ルジョンおよび有機溶剤でモノマーR1CX3およびR2SiX3(例えば、PhCCl3およびPhSiCl3)を還元することによって生成される。ポリマー[CR]nと類似した構造のポリマー[(R1C)x(R2M)yn(M = TiまたはHfなどの金属)は、Na-K合金のエマルジョンおよび有機溶剤でモノマーR1CX3およびR2MX3(例えば、PhCCl3およびシクロペンタジエニル三塩化チタン)を還元することによって生成される。当ポリマーは、ダイヤモンド状炭素製品、例えば基板上に硬質炭素被覆を提供するための1000−1600℃での熱分解に適している。
【0009】
上記のすべての場合において、高密度の超音波および液体NaKが、これらのポリマーを
合成するために使用され、当該方法は、危険で工業的に実行不可能である。
【0010】
ポリカルビンから製造されるセラミック材料の現在および以前の研究報告において、専門用語には不明確さがある。多くの場合、ダイヤモンド、ダイヤモンド状炭素(DLC)お
よびダイヤモンド状材料という用語は、同じ意味で用いられている。本発明において、これらすべての用語はまた、ポリカルビンまたはその共ポリマーから製造することができる、あらゆるダイヤモンドまたはダイヤモンド状材料を表すために、同じ意味で用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、いかなる爆発性化学薬品、超音波なども使用せずポリカルビン(ダイヤモンドを製造するポリマー)を合成することである。本発明で提案される方法は、単に電気の使用に基づいているものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明を説明するために、図が作成され、説明に添付されている。図のリストおよび説明は、以下に示される。
【図1】ポリカルビンの合成に使用される器具の概略図
【図2】ポリ(ヒドリドカルビン)の合成を示す図式およびそれからダイヤモンドを製造する方法
【図3】一時間にわたるHCCl3(図式3)の電子重合から得られる紫外線可視スペクトル
【図4】ビスコーニおよび協力者[14]によって得られたHCCl3の重合から得られる紫外線可視スペクトル
【図5】図2の図式を用いて得られるダイヤモンド材料のXRD(X線回析図形)
【符号の説明】
【0013】
本発明を説明するために、図中の特徴は番号を付され、その定義または番号は、以下に示される。
1‐容器
2‐電解質を含む溶剤中のトリハロアルカン(RCX3
3‐バッテリーまたはその他の任意の電源
4‐電極
5‐ポリカルビン・ポリマー
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ダイヤモンド、ダイヤモンドを製造するポリマーおよびそれら両方の用途の重要性を説明するための参考文献のリストが、以下に示される。
1‐Austin, Gordon「ダイヤモンド/工業製品」米国セラミック学会誌(1995)、74(6)、120-22
2‐Klimenko, S.A.; Mukovoz, Yu.A.;
Polonsky, L.G.「超硬材料の切削工具」主要エンジニアリング材料(1996)、114 1-66
3‐Lettington, A.H.「ダイヤモンドおよびダイヤモンド状炭素薄膜の光学的特性および応用」SPIE(写真・光学計測技術者協会)の会報‐国際光学技術協会(1990)、1275(硬質材料光学)、14-24
4‐Franks, J.; Enke, K.; Richardt, A.「ダイヤモンド状炭素‐特性および応用」金属および材料(材料研究所)(1990)、6(11)、695-700
5‐Mort, J.「ダイヤモンド薄膜およびその応用」物理研究所会議シリーズ(1990)、111(新材料、その応用1990)、483-4
6‐Lettington, Alan H.「ダイヤモンド状(硬質炭素)膜の応用」NATO ASIシリーズ、
シリーズB:物理学(1991)、266(ダイヤモンド ダイヤモンド状膜被覆)、481-98
7‐Grill, A.; Patel, V.; Meyerson,
B.S.「コンピューター技術におけるダイヤモンド状炭素の応用」材料科学モノグラフ(1991)、73(応用 ダイヤモンド状膜関連材料)、683-9
8‐May, Paul W.「ダイヤモンド薄膜:21世紀材料」ロンドン王立学会会報、シリーズA
:数理、物理およびエンジニアリング科学(2000)、358(1766)、473-495
9‐Imai, Takahiro「電子材料としてのダイヤモンド」Materials Integration(2000)、13(3)、59-65
10‐Okano, Ken「ドープダイヤモンド」ダイヤモンド:電子。Prop. Appl.(1995)、139-74
11‐Barnard, A.S.; Russo, S.P.; Snook, I.K.「ナノ結晶ダイヤモンドにおけるドー
パントのシミュレーションおよび結合形成」ナノ科学およびナノテクノロジー誌(2005)、5(9)、1395-407
12‐Shankar, P.; Buijinsters, J.G.; van Enckevort, W.J.P.; Schermer,
J.J.; Raj, Baldev; ter Meulen, J.J.「CVDダイヤモンド膜の合成、特性解析および応用」表面処
理の進歩:研究および応用(ASTRA)、国際会議録、インド、ハイデラバード、2003年11
月3-6日(2004)
13‐Jeong, J.-H.; Kwon, D.; Lee, J.-K.; Lee, W.-S.; Baik,
Y.-J.「CVD処理ダイヤモンドウェーハにおける残留応力効果のマイクロメカニカル分析」材料研究学会シンポジウム会報(2000)、594(薄膜--応力および機械的特性VIII)、343-348
14‐Bianconi, Patricia A.; Joray, Scott J.; Aldrich,
Brian L.; Sumranjit, Jitapa;
Duffy, Daniel J.; Long, David P.; Lazorcik, Jason L.;
Raboin, Louis; Kearns,
James K.; Smulligan, Stephenie
L.; Babyak, Jonathan M.「プリセラミック・ポリマ
ーからのダイヤモンドおよびダイヤモンド状炭素」米国化学会誌(2004)、126(10)、3191-3202
15‐Visscher, Glenn T.; Nesting, David C.; Badding,
John V.; Bianconi, Patricia A.「ポリ(フェニルカルビン):ダイヤモンド状炭素のポリマー前駆体」サイエンス(1993)、260(5113)、1496-9
16‐Schweitz, J.-A.; Larsson, K.; Thornell, G.; Bjorkman, H.; Nikolajeff, F「MEMS応用のための新材料および新製法」材料研究学会シンポジウム会報(2000)、605(マイクロ電気機械システム(MEMS)の材料科学装置II)、57-72
17‐Catledge Shane A; Fries Marc D; Vohra Yogesh K; Lacefield William R;
Lemons Jack E; Woodard Shanna; Venugopalan
Ramakrishna「生物医学移植のためのナノ構造
セラミックス」ナノ科学およびナノテクノロジー誌(2002)、2(3-4)、293-312
18‐Hirakuri, Kenji; Ohgoe, Yasuharu「ダイヤモンド状炭素膜被覆。人工心臓のための長期使用」Materials Integration(2005)、18(6)、39-45
【0015】
ダイヤモンドは、非常に有用な材料である[1]。最も硬い天然起源材料であり、その
優れた耐摩耗性によって、切削、研削および研磨に多く応用される[2]。特にpドープ
とnドープの両方であることがあることが示されるので[10、11]、その光学的、電気的および熱的特性は、電子装置の範囲での使用のために大いに需要のある材料であることを意味している[3-9]。しかしながら問題は、特に、例えば繊維または膜など特別な形状
が必要とされる場合、あるいは小型化がますます最重要点となる電子装置にダイヤモンドを組み込もうとする場合、ダイヤモンドは、扱うには本来困難な材料であることである。化学気相蒸着(CVD)は、ダイヤモンド膜の形成における部分的解決法である。多くの方
法が見いだされ、これを達成してきたが、その処理は費用がかかるものである。別の難点は、CVDによって蒸着されるダイヤモンド膜が、電子機器での使用のため、またはマイク
ロ電気機械システム(MEMS)でのコーティングとして十分滑らかでない、または連続的ではない[12、13]ことである。蒸着されるダイヤモンド膜の純度にもまた問題点がある。想像されるダイヤモンドの用途の大部分は、極めて純度の高い最終製品を必要とする。CVDは、その結果、ダイヤモンド膜の多くの今後予想される使用に対して商業的に実現可能
とは決してならず、繊維またはフィラメントのようなその他の望ましいダイヤモンドの物体の製造においては実用にならない。
【0016】
アルゴン雰囲気中での適度な加熱によって、ダイヤモンド状材料を製造するポリマー系に措置が講じられる場合、これらの制約および問題は容易に克服される。当該系膜を用いて、あらゆる大きさまたは形状の繊維およびコーティングが容易にかつ急速に製造することができる。当該ポリマー類は実際に存在し(それらはポリカルビンと呼ばれる)、それらから製造される材料はダイヤモンド[14、15]またはダイヤモンド状炭素(DLC)と考
えることができる。問題は、それらの合成は、高密度超音波、ナトリウムカリウム合金(NaK)を必要とし、最終製品は、極めて少量だけ製造されることである。NaKが自然発火性で極度に危険であるという知識(確かに、これらの種類のポリマー類に関する最新の文書からの引用文には「注意!NaK合金は自然発火性であり、特に水およびハロカーボンと爆
発的に反応することもある。あらゆる必要な事前注意のもとに、不活性雰囲気中でのみ取り扱うこと」と書かれている)と相まったこれらの事実は、工業的にこの信じられないほど有用なポリマーが、決して製造されることなく、その無数の潜在的用途が決して実現されないことを意味している。
【0017】
貧富を問わず世界のあらゆる国で利用可能な化学反応を用いる信じられないほど簡単な方法によって、これらのポリマーは、本発明において製造されてきた。加熱の際、それらのポリマーから製造される材料は、以前に報告されたダイヤモンドを製造するポリマー[14、15]と同じ組成である。ポリマーを製造するために爆発性の還元剤を使用する代わりに、本発明においては単に電気だけが使用され、このことは、合成は費用がかからず、容易であることを意味する。これは今までに達成されたことがないことが強調されることが望ましい。電気を使用するこれらの種類のポリマー(ポリカルビン)の製造は、本発明の主要な特徴である。一般的図式は以下のとおりである。
【0018】
【化1】

【0019】
ポリカルビン・ポリマーを合成する一般的方法は、電解質を含む溶剤中にトリハロアルカン(RCX3)を入れ、電気を加えることである。
【0020】
本発明の実施のために使用できる当器具の全体図は、図1に示される。容器および電極の大きさは、必要に応じて異なることがある。本発明において開発された方法は、次のとおり実施される。
・トリハロアルカン(RCX3)またはあらゆる割合でのそれらの混合物、溶剤(2)および
電解質が容器(1)に入れられ、
・適当な電源(3)を使用して、電気が電極(4)に加えられ、
・ダイヤモンドまたはダイヤモンド状セラミックスに転化することができるポリカルビン(5)が得られる。
【0021】
本発明の実施において、
・全種類のトリハロアルカン(RCX3)またはあらゆる割合でのそれらの混合物を使用することができる。推奨トリハロアルカン(RCX3)は、クロロホルム、ブロモホルム、トリクロロトルエンなどである。
・溶剤は、アセトニトリル、テトラヒドロフランおよびアルコールなどの有機溶剤の範囲から選択することができる。
・電解質は、アルキルアンモニウム塩などの錯塩だけでなく、塩化ナトリウムのような単塩である可能性がある。
・電極に加えられる電気は、直流または交流である可能性がある。しかしながら直流が推奨される。
・電極に加えられる電気は、3ボルトから7ボルトの範囲内である。反応は、3ボルト以下では始まらないが、7ボルト以上の電圧は、溶剤および電解質の分解を引き起こす。
【0022】
本発明において成し遂げられた合成の具体的実施例および特性解析データは、以下および次ページに説明される。
【0023】
1.2 Mクロロホルム(CHCl3)溶液(アセトニトリル(AN)中)は、0.1 Mテトラブチル
アンモニウム・テトラフルオロホウ酸塩(AN溶液)の存在下で電解された。150 mLの電解質溶剤電極対は、430ステンレス鋼陰極(10cm×8cm×0.5mm)および陽極(10cm×8cm×0.5mm)が装備された電池内に置かれた。電気分解が、−6.0 Vで4時間、室温でN2雰囲気下
で行われた。重合反応は、紫外線(UV)可視(Vis)分光計(図3)を用いてモニターさ
れた。ポリカルビンには、特有の紫外線可視スペクトル[14]があり、図3は、1時間の期間にわたるこのスペクトルの推移を示す。スペクトルは、ビアンコーニおよび協力者によって得られたものと全く同じである(図4)。電気分解後、2つの異なる試案手順が実施された。最初の試案手順は、電気分解された溶液で遂行された。まず第一に、溶液はフィルターで濾され、その後ANは蒸発され、ポリ(ヒドリドカルビン)である茶色の粉末が得られた。(ナトリウムおよびベンゾフェノンの上で乾燥された)テトラヒドロフラン(THF)は、その次にポリマーを溶解するために使用され、その溶液は、LiAlH4と反応させ
られ(12時間還流)、それはポリマーからあらゆる残留ハロゲンを除去するために使用された。THFは、その後蒸発され、CHCl3は、ポリマーを溶解し、それを不要物質から分離するために溶剤として使用された。
【0024】
この合成およびその続いて起こるダイヤモンド/DLCへの転化の説明は、以下の図式および図2に示される。
【0025】
【化2】

【0026】
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)分析によって、分離された物質は、ポリマーであ
ることが示された。前述の通り、このポリマーは、紫外線可視分光分析によって存在が示されたポリカルビンである。1H NMR(核磁気共鳴)、13C NMR、ラマンおよびFTIR(フー
リエ変換赤外)分光による追加分析もまた、当製品がポリカルビン、[(RC)n]である
と確認している。陰極上で蒸着された密な不溶性ポリマーを分離するために、試案の第2の部分が行われた。このコーティングは、未反応モノマーおよび支持電解質を除去するために、ANで強力に洗浄され、真空下で乾燥された。
【0027】
ANおよびCHCl3は、メルクから購入され、テトラブチルアンモニウム・テトラフルオロ
ホウ酸塩は、オールドリッチから調達された。すべての化学薬品は、そのまま使用された。注目すべきは、発明者らが、ポリ(ヒドリドカルビン)の合成をここで報告しているのだが、最近の実験からの初期データは、この方法が、ポリ(メチルカルビン)およびポリ(フェニルカルビン)などの、その他のポリカルビンを合成するために使用することができることを示してきたことであり、それはまた、ダイヤモンドおよびダイヤモンド状炭素の前駆体であることも示されてきた。
【0028】
当ポリマーの熱処理は、一定流量のアルゴンの下で、アルミニウムのチューブが取り付けられたThemolyneの環状炉を用いて実施された。サンプルは、10℃/分のランプ速度
で1000℃まで加熱され、24時間維持され、その後室温まで冷やされた。得られた材料は、光学顕微鏡法およびXRD(X線回析)によって分析された。肉眼にも、光学顕微鏡
下でも、宝石品質のダイヤモンドのように光を屈折させる透明な材料が、はっきりと見られる。この混合物のX線粉末図形(図5)は、それがlonsdaleite(ダイヤモンドの六方
晶系‐図では◆の記号で表されている)で構成されていることを示している。発明者らが時点を定めたり、特定したりできないピークもいくつかある。
【0029】
結局この合成がどれほど容易にできたかの実証として、発明者らは、発明者らが見つけることができた電気および電解質の両方の最も基本的電源、すなわち、4つの1.5 Vバッ
テリーおよび一般的な食卓塩(10 mg)の1組を用いる実験を準備した。溶剤としてのア
セトニトリル(3 mL)、ステンレス鋼の電極および0.5 mLの水を用いて、発明者らは、クロロホルム(2μL)を重合させた。その反応に続いて、再度紫外線可視分光法が行なわれた。結果として生じたスペクトルおよび製造された材料の茶色は、ポリ(ヒドリドカルビン)の形成を裏付ける。容易な当実験的準備は、この驚くべき材料が、ほとんど誰にでも製造することができたことを示している。この作業の結果は、加熱によりダイヤモンドを形成するポリマーを製造するための費用のかからない簡単な方法を例示している。当ポリマーが可溶性であるので、あらゆる形状のダイヤ形物体の製造は、実現可能である。発明者らが開発してきた合成の単純さおよび容易さは、商業規模においてと研究所においてとの両方で、すべての研究分野の科学者達にこのポリマーの製造の可能性を開くであろう。その結果として、この材料につき予想される無数の潜在的用途は、最終的に実現される可能性がある。
【0030】
要約として、本発明においては、ダイヤモンドおよびダイヤモンド状炭素の加熱および製造の際に、電気を用いるポリカルビンの合成方法が開発されている。液相からのダイヤモンドまたはダイヤモンド状炭素膜の応用は、他のどんなダイヤモンド製作技術でも現在のところ可能ではない。非常に大きいまたは複雑な形状、MEMS[16]、および電子装置などの以前は不可能または不便であった基板の絶縁保護コーティングを可能にするであろう。当技術の容易さおよび単純さは、この方法が、大きいまたは安価な品目についてさえ、多種多様な応用につきコスト効率が良い可能性があることを意味するであろう。また、この前駆体の単純さおよび可操作性は、新たなダイヤモンドに基づく電子装置において多くの製作オプションを可能にするであろう。それは生物医学的応用での有用性を見いだすこ
とさえ可能であり、ダイヤモンドおよびダイヤモンド状材料[17,18]について急速に拡
大する使用領域である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリハロアルカン(RCX3)またはあらゆる割合でのそれらの混合物、溶剤(2)および
電解質を容器(1)に入れ、
適当な電源(3)を使用して、電気を電極(4)へ加えることを特徴とするポリカルビンを合成する方法。
【請求項2】
前記トリハロアルカン(RCX3)は、クロロホルム、ブロモホルム、トリクロロトルエンであることを特徴とする請求項1に記載のポリカルビンを合成する方法。
【請求項3】
前記溶剤は、有機溶剤であることを特徴とする先行する請求項のうちいずれか1項に記
載のポリカルビンを合成する方法。
【請求項4】
前記溶剤は、アセトニトリルまたはテトラヒドロフランであることを特徴とする先行する請求項のうちいずれか1項に記載のポリカルビンを合成する方法。
【請求項5】
前記溶剤は、アルコールであることを特徴とする先行する請求項のうちいずれか1項に
記載のポリカルビンを合成する方法。
【請求項6】
前記電解質は、単塩であることを特徴とする先行する請求項のうちいずれか1項に記載
のポリカルビンを合成する方法。
【請求項7】
前記電解質は、塩化ナトリウムであることを特徴とする先行する請求項のうちいずれか1項に記載のポリカルビンを合成する方法。
【請求項8】
前記電解質は、アルキルアンモニウム塩であることを特徴とする先行する請求項のうちいずれか1項に記載のポリカルビンを合成する方法。
【請求項9】
直流電流が、前記電極に加えられることを特徴とする先行する請求項のうちいずれか1
項に記載のポリカルビンを合成する方法。
【請求項10】
前記電極に加えられる電気は、3ボルトから7ボルトの範囲内であることを特徴とする先行する請求項のうちいずれか1項に記載のポリカルビンを合成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−519405(P2010−519405A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520713(P2009−520713)
【出願日】平成19年2月12日(2007.2.12)
【国際出願番号】PCT/TR2007/000012
【国際公開番号】WO2008/010781
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(508307919)
【氏名又は名称原語表記】TOPPARE,Levent Kamil
【住所又は居所原語表記】ODTU Kimya Bolumu,Ogretim Uyesi,06531 Ankara,Republic of Turkey
【出願人】(508307920)
【氏名又は名称原語表記】PICHER,Michael Walker
【住所又は居所原語表記】ODTU Kimya Bolumu,Ogretim Uyesi,06531 Ankara,Republic of Turkey
【Fターム(参考)】