説明

ダイレクトプロジェクター型灯具の投影レンズ

【課題】従来のダイレクトプロジェクター型灯具の投影レンズにおいては、自動車側の要求に合わせて左右に広く上下に狭い配光特性を形成しようと図るときには形状が複雑化して金型製作が困難となるなどの問題を生じていた。
【解決手段】本発明により、背面側でも配光制御する形状としたダイレクトプロジェクター型灯具の投影レンズ1において、投影レンズの背面2a形状は、この投影レンズの車両への取付状態における垂直方向に沿う軸を有するシリンドリカルレンズカット3が施され、前面は凸レンズ状の非球面とされているダイレクトプロジェクター型灯具の投影レンズとすることで、従来から使用されている投影レンズと同様な金型での生産を可能とし、課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ型灯具と称されて、例えば、1個の凸レンズにより、光源の形状、もしくは、楕円反射面を使用して第一焦点におかれた光源が第二焦点に収束するときにシェードなどで所望の形状に整えた光像を照射方向に投影するための投影レンズの構成に係るものであり、詳細には、光源からの光を効率良く照射方向に投影するための構成に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプロジェクター型灯具90の構成の例を示すものが図7であり、図に示すものは、回転楕円など楕円系の反射面91の第一焦点ににおかれた光源92からの光が集束する第二焦点f2の近傍には、投影レンズ94により投影する光から上向き光となる部分を遮蔽するための遮光板93が設置されている。
【0003】
このようにすることで、光源からの光の内の、約半分が前記遮光板93により遮蔽され失われるものとなるので、前記投影レンズ94は、光を下向きに折り曲げる屈折プリズムを背面側に取付けた形状として形成しておき、この投影レンズ94の前記屈折プリズム状の部分により、水平、もしくは、それ以下まで、反射面91からの光を前記投影レンズ94で屈折可能とまる角度αまで投影レンズ94に達するようにすることで、プロジェクター型灯具90としての光量増加を図ろうとするものである。
【特許文献1】特開2003−123519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年においては、一方向に高輝度の光を発生することのできるLEDランプが市場に供給されるものとなり、ダイレクトプロジェクター灯具80などと称されて、図8に示すように、上記に説明した第二焦点f2に相当する位置に直接に光源82を設置し、例えば、フォグランプなどの場合には、光源82の形状や、投影レンズ84の形状、特に投影レンズ84上端での屈折により直接にカットオフラインを形成するダイレクトプロジェクター型灯具80が提案されている。
【0005】
この場合、前記投影レンズ84は図示のように焦点f2を中心とする円筒面84aの外側に、照射方向に向かい水平方向で凸面となる非球面84bが組合わされた形状となり、従来例の単純な非球面レンズ状の投影レンズ94に比較して、金型間のパーティングラインが曲面となり、金型の製造、使用、あるいは、成形に高度の技術が要求されるものとなるという問題点を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記した従来の課題を解決するための具体的手段として、背面側でも配光制御する形状としたダイレクトプロジェクター型灯具の投影レンズにおいて、前記投影レンズの背面形状は、この投影レンズの車両への取付状態における垂直方向に沿う軸を有するシリンドリカルレンズカットが施され、前面は凸レンズ状の非球面とされていることを特徴とするダイレクトプロジェクター型灯具の投影レンズを提供することで課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、前面が凸レンズ状の非球面であり、背面が垂直方向に軸を有するシリンドリカルカットとされた投影レンズとしたことで、実質的には、従来からの投影レンズと、ほぼ同様な金型で形成可能な投影レンズとして、容易に生産可能なものとし、課題を解決するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
つぎに、本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1、及び、図2に符号1で示すものは、本発明に係る投影レンズ1の第一実施例であり、図1は前記投影レンズ1の正面図であり図2は図1のA−A線に沿う断面で示してある。この第一実施例では、例えばLEDなど光源5からの光の左右方向への拡散はその光源5自体が発光した角度を保つものにしておき、上下方向のみを屈折させ、例えば、自動車に取付けたときには、左右方向に広く、上下方向に狭い配光形状が得られることを目的としている。
【0009】
即ち、前記した背景技術の項で説明したものと、ほぼ同様な配光特性を得ようとするものであり、そのとき同時に金型の簡素化も図り、生産性の向上を可能とし、薄型化によるコストダウンも計ろうとするものである。また、外観的にも従来例のこの種のプロジェクター型灯具との共通化を図り、観視者に違和感を生じさせないように図るものである。
【0010】
そして、第一実施例の投影レンズ1においては、光源側に向かう面、即ち、背面2aには、前記光源5の位置を中心とし、基本としては光源5を中心とする凹曲線により形成したシリンドリカルレンズカット部3がフレネル状として設けられている。従って、光源5から射出された光は、前記シリンドリカルレンズカット部3に達したときには、それぞれの曲面と垂直となり、水平方向には屈折が行われることはなく、投影レンズ1内に入射する。
【0011】
また、前記投影レンズ1の表面2bであるレンズ部4も、図示の水平断面においては、前記光源5の位置を中心とする円弧として形成されている。よって、前記レンズ部4から照射方向に放出されるときにも、光源5からの光には何らの屈折も生じない。
【0012】
ここで、図3に示す本発明に係る投影レンズ1の自動車に取付けた状態での垂直断面(B−B断面)における前記光源5からの光に対する本発明の投影レンズ1の作用について説明を行えば、上記したように本発明の投影レンズ1は、自動車に取付けた状態での水平断面(A−A断面)では前記光源5からの光に対して実質的に収束、拡散など何らの作用も行わなかったのに対して、垂直方向断面においては、投影レンズ1の表面2b側であるレンズ部4が光学的な作用を行うものとなる。
【0013】
即ち、垂直方向においては、前記レンズ部4により図2に示すように垂直方向への収束が行われるものとなり、この結果、前記投影レンズ1を透過した後の光源5からの光は、図4に示すように、水平方向に照射角が広く、垂直方向には照射角が狭い配光特性D1が得られるものとなる。
【0014】
よって、例えば、ヘッドランプ(図示せず)よりも下方で且つ水平方向を照射するように本発明の前記に係る投影レンズ1を採用した灯具を取付けることで、フォッグランプに適する配光が得られるものとなる。なお、図3におけるレンズ部4は、水平断面において光源5を中心とする円弧が現れるものであれば、垂直断面においては、必ずしも円弧でなくとも良く、所謂、非球面と称されて、プロジェクタ型灯具の投影レンズに用いられている曲面であっても良い。
【0015】
ここで、本発明に係る投影レンズ1の形状について考察してみると、この投影レンズ1は従来例のプロジェクタ型ヘッドランプなどに使用されているレンズとフランジとから成る投影レンズと、ほぼ同一の形状として形成することが可能である。そして、レンズ部4は、光源5を中心とする球面、又は、非球面として形成すれな良いものとなる。
【0016】
また、背面2a側においては、従来は平面であった面にシリンドリカルレンズカット部3を設ければ良いものであり、このときに、例えば、投影レンズ1を保持するためのフランジ6を設けるなども自在であり、この場合には、前記フランジ6の、前記光源5に近い側の面に前記シリンドリカルレンズカット部3を設ければ良いものとなる。
【0017】
このようにしたことで、投影レンズ1は従来から使用されていたものと同じ形状のものとして、形成することが可能となり、このことは、前記投影レンズ1を保持するための構成なども従来例のものと全く同様なものが採用できるものとなる。また、前記投影レンズ1を成形するための金型も従来例と実質的に同様なものであれば良く、充分に従来技術で生産可能なものとなる。
【0018】
図5は本発明に係る投影レンズ11の第二実施例であり、前の第一実施例では、水平方向には、光源5から放射される光の放射角の角度を変えることなく、灯具としての放射角として使用していたが、このような場合、前記光源の構成などによっては、図4に配光特性D1として示すように水平方向の照射角が広く成りすぎ、車両の正面前方の照度が低下するなど、所望の配光特性の形状とは異なる場合を生じていた。
【0019】
上記の状態に対応できるようにしたものが、以下に説明する第二実施例であり、前記フランジ6の背面2aには水平断面にレンズ形状が現れるシリンドリカルレンズカット部13が設けられている点は、前記に説明した第一実施例と同様である。
【0020】
しかしながら、この第二実施例においては、中心部には、前記に説明した光源5から放射される光に対して水平方向への照射角を変化させることがないように、前記光源5を中心とする凹面状としたシリンドリカルレンズカット13aが設けられている。
【0021】
そして、上記、凹面状としたシリンドリカルレンズカット13aは、前の第一実施例で説明したように光源5の位置を中心とする凹面の円弧状に形成されて、光源からの光に照射角の変化を与えないものとされている。なお、配光を形成するための必要に応じては、適宜に凹面の曲率を変化させ、必要とする照射角に調整することは自由である。
【0022】
また、この第二実施例においては、凹面状とした前記シリンドリカルレンズカット13aの左右両端には、凸面状としたシリンドリカルレンズカット13b、13cが前記シリンドリカルレンズカット13aに接続して設けられていて、光源5からの光を集束し照射方向に放射する。このときに、前記シリンドリカルレンズカット13b、13cからの光は、図6に配光特性D2として示すように適宜にシリンドリカルレンズカット13bからの光とシリンドリカルレンズカット13cとが、前記シリンドリカルレンズカット13aからの光と重なるようにされて、照射角が狭められると共に照射照度の向上が図られている。
【0023】
この第二実施例においても、投影レンズ11全体としての形状は、従来からのプロジェクター型灯具用のレンズ部4とフランジ6とから構成される形状として形成可能であり、前記フランジ6の背面2aにシリンドリカルレンズ部を設けたのみであるので、金型においても、生産工程においても従来例のものとのほぼ同様な手段で製造が可能となるものであることは、第一実施例と同様である。
【0024】
以上に説明したように、本発明によれば、LEDランプなど一方向に向かい発光する高輝度の光を直接に照射方向に投射するダイレクトプロジェクター型灯具においても、放物系の反射面を使用し、例えば、ハロゲン電球、メタルハライド放電灯などの光源を第一焦点に配置して、第二焦点に収束させ、この第二焦点の近傍に設けた遮蔽板などで配光形状を形成していた従来のプロジェクション型灯具に使用していた投影レンズと実質的には同様な投影レンズの使用を可能とし、投影レンズ形成用の金型の構造を従来例のものと同程度に簡素化し、厚みの増加、金型製造の煩雑化などを避けて、生産の簡素化を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るダイレクトプロジェクター型灯具の投影レンズの第一実施例を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図4】第一実施例における配光特性の例を示す説明図である。
【図5】同じく本発明に係るダイレクトプロジェクター型灯具の投影レンズの第二実施例を示す断面図である。
【図6】第二実施例における配光特性の例を示す説明図である。
【図7】従来例の投影レンズを示す説明図である。
【図8】別の従来例の投影レンズを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1、11…投影レンズ
2a…背面
2b…表面
3、13…シリンドリカルレンズカット部
4…レンズ部
5…光源
6…フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面側でも配光制御する形状としたダイレクトプロジェクター型灯具の投影レンズにおいて、前記投影レンズの背面形状は、この投影レンズの車両への取付状態における垂直方向に沿う軸を有するシリンドリカルレンズカットが施され、前面は凸レンズ状の非球面とされていることを特徴とするダイレクトプロジェクター型灯具の投影レンズ。
【請求項2】
前記投影レンズの背面形状に施された前記シリンドリカルレンズカットは、水平方向に沿う断面形状が光源を中心とする円弧が複合された凹面状のフレネルレンズカットとされていることを特徴とする請求項1記載のダイレクトプロジェクター型灯具の投影レンズ。
【請求項3】
前記投影レンズの背面形状に施された前記シリンドリカルレンズカットは、水平方向に沿う断面形状が、中央部が前記光源を中心とする凹面状であり、前記凹面部の左右両端が光を正面方向に向かわせる凸面状であることを特徴とする請求項1記載のダイレクトプロジェクター型灯具の投影レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−146762(P2009−146762A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323496(P2007−323496)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】