説明

ダスト除去方法およびダスト除去装置

【課題】 可とう性を有するシート状部材の側面に付着したダストを確実に除去することができるダスト除去方法およびダスト除去装置を提供する。
【解決手段】 第1工程で、除去開始時点での当接状態として、シート側法線14と除去側法線15との成す角度θが90度より大きく、かつ180度未満となるように当接させる。次に、第2工程で、シート状部材11の側面の厚み方向に沿うように、角度θが除去開始時点の角度から小さくなるように、かつ角度θが0度より大きく、かつ90度未満となるように除去ユニット12を回転させる。最後に、第3工程で、除去面13をシート状部材11から離反して除去処理を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可とう性を有するシート状部材の側面に付着したダストを除去するためのダスト除去方法およびダスト除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶ディスプレイの製造過程においては、トランジスタやカラーフィルターが形成されたガラス基板に付着したダストは、表示品位を低下させてしまうため、洗浄工程を設けて基板の表裏面に付着したダストを除去している。このときの洗浄方法としては、薬液、純水などの液体を用いて洗い流すウェット洗浄方式や、ブラシやワイパーなどを基板の表面に当てて除去する方法、エアブローによりダストを吹き飛ばす方法、粘着ローラなどにダストを吸着して除去する方法などが用いられている。
【0003】
これらのダストの除去方法は、液晶ディスプレイに用いられているガラス基板のように、剛性の強い材料で構成された部材については有効である。
【0004】
一方、液晶ディスプレイにおいて用いられているバックライトユニットには、光を拡散させて明るさを均一にするための拡散シートや、光路を一定方向に進むように制御するためのプリズムシートなど、数種類のシート状部材が要素部品として構成されていて、これらは可とう性を有する樹脂材料で形成されている。
【0005】
通常、これらの可とう性を有するシート状部材に付着したダストを除去するにあたっては、ウェット洗浄方式では洗浄、乾燥するために大掛かりな設備導入が必要であり、ブラシやワイパーを用いる方法では、シート状部材の表裏面にブラシやワイパーの接触傷を生じる可能性がある。また、エアブロー方式では、ダストを吹き飛ばすために高いエア圧が必要であるため、可とう性を有するような軽量のシート状部材には適用することが困難である。また、吹き飛ばされたダストの再付着を防止することも困難である。
【0006】
これらの理由により、可とう性を有するシート状部材に適用されるダスト除去方式としては、粘着ローラによりダストを吸着させる方式が広く採用されている。
【0007】
昨今では、液晶ディスプレイの高輝度化、高精細化が進むことにより、基板の表裏面のみならず、側面に付着したダストについても除去する必要が生じるようになってきている。
【0008】
板状ワークの側面に付着したダストを除去する除塵装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、ワークの側面に沿って接触可能な清掃ローラを設置して、清掃ローラをワークの側面に押圧して、ローラを回転させながら移動することにより、ワーク側面に付着したダストを除去するような除塵装置が提案されている。
【0009】
【特許文献1】特開2005−152717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、液晶ディスプレイのバックライトユニットに使われている光学シートなどのような可とう性を有するシート状部材の側面に付着したダストを、特許文献1に示されるような清掃ローラを側面に押圧して、ローラを回転させながら移動する装置で除去しようとすると、シート状部材の側面から圧力をかけることによりシート状部材に方向が一定でない変形が生じ、側面に清掃ローラが当接しない領域を生じさせてしまい、当接しない領域のダストを除去できない場合がある。
【0011】
特にシート状部材を複数枚積層し、積層体の側面に付着したダストを除去しようとした場合には、シート状部材ごとに不定な変形が起こることでシート状部材間に空間が発生し、この空間にダストが入り込んで除去できなくなってしまう。
【0012】
図8は、従来の技術によって、可とう性を有するシート状部材11の側面に付着したダスト17を除去する場合の模式図である。シート状部材11は、複数のシート状部材11aを積層した積層体とする。
【0013】
ダスト17が付着したシート状部材11の側面に対して垂直方向から除去ユニット12の除去面13を押し当てると(a)、横方向からの圧力により、シート状部材11aはそれぞれランダムな方向に変形を起こしてしまう(b)。このため、隣接するシート状部材11a同士が異なる方向に変形した場合は、シート状部材間に空間ができてしまい、ダストがその空間に押し込まれてしまったり、シート状部材11の側面全体に除去ユニット12が当接しきれない状態となり、除去ユニット12で除去されたダスト18と、除去されなかったダスト22とが生じてしまう。
【0014】
さらには、清掃ローラでは、シート状部材の側面を清掃ローラが回転しながら移動することによりダストを除去するため、シート状部材が大型化すると、シート状部材の辺の長さが長くなることで清掃ローラの移動距離が長くなり、ダストの除去に要する時間が増加してしまう、という課題がある。
【0015】
本発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、可とう性を有するシート状部材の側面に付着したダストを確実に除去することができるダスト除去方法およびダスト除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、シート状部材の側面に付着したダストを、除去面を備えた除去ユニットを前記側面に当接させて除去するダスト除去方法であって、
前記除去面の法線と、シート状部材の主面の法線との成す角度θが90度より大きく、かつ180度未満となるように、シート状部材の側部に除去ユニットの除去面を当接させる第1工程と、
前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記角度θが小さくなるように、かつ0度より大きく90度未満となるように前記シート状部材と前記除去ユニットとを相対的に移動させる第2工程と、
前記シート状部材から前記除去面を離反させる第3工程とを含むことを特徴とするダスト除去方法である。
【0017】
また本発明は、前記第2工程では、前記シート状部材を固定した状態で、除去ユニットの除去面を移動させることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、シート状部材の側面に付着したダストを、除去面を備えた除去ユニットを前記側面に当接させて除去するダスト除去方法であって、
前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記シート状部材と前記除去面とを相対的に移動させて、前記シート状部材の中央部を上に凸方向または下に凸方向に変形させる第1工程と、
前記除去面を固定して前記シート状部材を挟持し、押圧部によって前記シート状部材の中央部を押圧して、前記第1工程とは反対方向に変形させる第2工程と、
前記シート状部材から前記除去面を離反させる第3工程とを含むことを特徴とするダスト除去方法である。
【0019】
また本発明は、シート状部材の側面に付着したダストを、除去面を備えた除去ユニットを前記側面に当接させて除去するダスト除去装置であって、
前記シート状部材と前記除去面とが当接、離反可能に構成され、
前記除去ユニットは、前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記除去面の法線と、シート状部材の主面の法線との成す角度θが0度より大きく180度未満となる範囲で前記除去面を移動可能に構成され、
前記除去面の法線と、シート状部材の主面の法線との成す角度θが90度より大きく、かつ180度未満となるように、シート状部材の側部に除去ユニットの除去面を当接させ、前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記角度θが小さくなるように、かつ0度より大きく90度未満となるように前記シート状部材と前記除去ユニットとを相対的に移動させ、前記シート状部材から前記除去面を離反させることを特徴とするダスト除去装置である。
【0020】
また本発明は、シート状部材の側面に付着したダストを、除去面を備えた除去ユニットを前記側面に当接させて除去するダスト除去装置であって、
前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記シート状部材の中央部を押圧して上に凸方向または下に凸方向に変形させる押圧部を備え、
前記シート状部材と前記除去面とが当接、離反可能に構成され、
前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記シート状部材と前記除去面とを相対的に移動させて、前記シート状部材の中央部を上に凸方向または下に凸方向に変形させ、前記除去面を固定して前記シート状部材を挟持し、押圧部によって前記シート状部材の中央部を押圧して、前記変更させる方向とは反対方向に変形させ、前記シート状部材から前記除去面を離反させることを特徴とするダスト除去装置である。
【0021】
また本発明は、除去ユニットの除去面は、シート状部材のダスト除去対象となる側面全体よりも大きく形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、まず第1工程で前記除去面の法線と、シート状部材の主面の法線との成す角度θが90度より大きく、かつ180度未満となるように、シート状部材の側部に除去ユニットの除去面を当接させる。第2工程では、前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記角度θが小さくなるように、かつ0度より大きく90度未満となるように前記シート状部材と前記除去ユニットとを相対的に移動させる。第3工程では、前記シート状部材から前記除去面を離反させる。
【0023】
第1工程の当接状態により、シート状部材の変形は複数枚重ね合わせた積層体であっても、全てが同じ方向に変形するため、シート状部材間に空間ができることはなく、当接によりダストがシート状部材間に押し込まれてしまうことがなくなる。第2工程のように相対移動させることで、シート状部材の側面の全体を除去面と確実に当接させることができるため、側面に付着したダストを確実に除去することができる。
【0024】
さらに、第3工程で除去面が離反するまでシート状部材の変形が同一方向となるので、シート状部材間に空間を生じることない。
【0025】
以上のように、可とう性を有するシート状部材であっても、側面に付着した異物を確実に除去することが可能となる。
【0026】
また本発明によれば、前記第2工程では、前記シート状部材を固定した状態で、除去ユニットの除去面を移動させる。
【0027】
2つの法線のなす角度が前記規定範囲となるように除去ユニットを移動させることで、シート状部材の1側面全体を一度に処理することが可能となり、シート状部材が大型化したとしても、ダスト除去処理に要する時間を増大することがない。
【0028】
また本発明によれば、第1工程では、前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記シート状部材と前記除去面とを相対的に移動させて、前記シート状部材の中央部を上に凸方向または下に凸方向に変形させる。第2工程で前記除去面を固定して前記シート状部材を挟持し、押圧部によって前記シート状部材の中央部を押圧して、前記第1工程とは反対方向に変形させる。第3工程では、前記シート状部材から前記除去面を離反させる。
【0029】
第1工程のように前記シート状部材を変形させることにより、シート状部材の変形は複数枚重ね合わせた積層体であっても、全てが同じ方向に変形するため、シート状部材間に空間ができることはなく、当接によりダストがシート状部材間に押し込まれてしまうことがなくなる。さらに第2工程で、前記第1工程とは反対方向に変形させることで、シート状部材の側面の全体を除去面と確実に当接させることができるため、側面に付着したダストを確実に除去することができる。
【0030】
また本発明によれば、除去ユニットは、前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記除去面の法線と、シート状部材の主面の法線との成す角度θが0度より大きく180度未満となる範囲で前記除去面を移動可能に構成される。
【0031】
このような除去ユニットを用いて、除去ユニットの除去面の法線と、シート状部材の主面の法線との成す角度θが90度より大きく、かつ180度未満となるように、シート状部材の側部に除去ユニットの除去面を当接させ、前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記角度θが小さくなるように、かつ0度より大きく90度未満となるように前記シート状部材と前記除去ユニットとを相対的に移動させ、前記シート状部材から前記除去面を離反させる。
【0032】
これにより、最初の当接状態では、シート状部材の変形は複数枚重ね合わせた積層体であっても、全てが同じ方向に変形するため、シート状部材間に空間ができることはなく、当接によりダストがシート状部材間に押し込まれてしまうことがなくなる。続いて前記シート状部材と前記除去ユニットとを相対移動させることで、シート状部材の側面の全体を除去面と確実に当接させることができるため、側面に付着したダストを確実に除去することができる。
【0033】
また本発明によれば、前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記シート状部材の中央部を押圧して上に凸方向または下に凸方向に変形させる押圧部を備える。
【0034】
このような押圧部を用いて、前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記シート状部材と前記除去面とを相対的に移動させて、前記シート状部材の中央部を上に凸方向または下に凸方向に変形させ、前記除去面を固定して前記シート状部材を挟持し、押圧部によって前記シート状部材の中央部を押圧して、前記変形させる方向とは反対方向に変形させ、前記シート状部材から前記除去面を離反させる。
【0035】
これにより、前記シート状部材の中央部を所定の方向に変形させることで、シート状部材の変形は複数枚重ね合わせた積層体であっても、全てが同じ方向に変形するため、シート状部材間に空間ができることはなく、当接によりダストがシート状部材間に押し込まれてしまうことがなくなる。次に最初の方向とは反対方向に変形させることで、シート状部材の側面の全体を除去面と確実に当接させることができるため、側面に付着したダストを確実に除去することができる。
【0036】
また本発明によれば、除去ユニットの除去面を、シート状部材のダスト除去対象となる側面全体よりも大きく形成する。
【0037】
これにより、シート状部材の大きさによらず、側面全体のダストが除去できるため、シート状部材が大型化しても除去処理に要する時間を増加させることが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、本発明の第1実施形態であるダスト除去方法を示す斜視図である。図2は、第1実施形態の動作を示す模式図である。
【0039】
なお、以下に示す図2、図3においては、シート状部材11の一方側面を1つの除去ユニット12で除去する方法について説明したが、図1に示すように、反対側の他方側面に対しても同時に除去を行うことが可能である。
【0040】
たとえば、2本の除去ユニット12とシート状部材11を回転させる回転機構とを準備して、対向する2辺を処理した後に、回転機構によりシート状部材側を90°回転させて、残りの2辺を処理する方法や、4本の除去ユニット12と、シート状部材11又は除去ユニット12の可動機構を準備して、2辺を処理した後に、残りの2辺を処理する位置まで可動機構によりシート状部材11又は除去ユニット12を移動させて処理する方法がある。
【0041】
本実施形態では、可とう性を有するシート状部材11の側面に、除去ユニット12の除去面13を当接させ、シート状部材11への当接角度を変化させることで側面のダストを除去する。
【0042】
除去ユニット12は、シート状部材11の長辺よりも長い辺と、シート状部材11の厚みよりも長い辺とで構成される平面状で、ダストを吸着して除去するための除去面13を有している。除去ユニット12は、このような除去面13を有しており、除去面13のシート状部材11への当接角度が変化可能な構成であればどのような構成であってもよい。本実施形態では、除去面13を一側面として有する直方体形状の部材を2つ用い、除去面13を対向するように設置する。除去面13の間隔は、シート状部材11の一辺と同程度であり、2つの除去ユニット12は、シート状部材11を側面方向から挟み込むようにして設置される。シート状部材11は、その一方面が下方から支持されるようにして図示しないステージなどの載置台に固定されていればよく、除去ユニット12によって挟持されて固定される必要はない。
【0043】
図2(a)は、除去ユニット12による除去開始時点での除去面13の当接状態を示している。
【0044】
本発明において除去面13の当接状態は、除去面13の法線(除去側法線)と、シート状部材11の主面の法線(シート側法線)との成す角度によって規定する。
【0045】
具体的には、第1工程で、除去開始時点での当接状態として、シート側法線14と除去側法線15との成す角度θが90度より大きく、かつ180度未満となるように当接させる。
【0046】
次に、第2工程で、シート状部材11の側面の厚み方向に沿うように、角度θが除去開始時点の角度から小さくなるように除去面13を回転させる。回転後の当接状態、すなわち除去終了時での除去面13の当接状態は、角度θが0度より大きく、かつ90度未満となるような状態である。
【0047】
最後に、第3工程で、除去面13をシート状部材11から離反して除去処理を終了する。
【0048】
ここで、シート状部材11の用途は、特に限定されるものではないが、たとえば液晶ディスプレイ装置に搭載されるバックライトユニットを構成する光学部品として用いられる。したがってシート状部材11を構成する各シート状部材11aは、光学シート素材から打抜かれる光学シート片であり、たとえば合成樹脂などの材料より成る。また、除去面13は、ブチルゴムやシリコンゴムなどの粘着性を有する材料より成る。
【0049】
図3は、第1実施形態において、複数重ね合わされた積層体としてシート状部材11の側面に付着したダストが除去される様子を示す模式図である。
【0050】
まず、除去開始時において、シート側法線14と除去側法線15とが成す角度θが、90度より大きく、180度未満となる角度で除去面13をシート状部材11の側面に当接すると、除去面13が当接したシート状部材11の側部には、下方向への力がかかり、図3(a)に示すように、側部が下方に曲がったように変形する。このとき、各シート状部材11aは、全て同一方向へ力がかかるため、変形する方向は一定となり、シート状部材間に空間が生じることは無い。
【0051】
次に、シート側法線14と除去側法線15との成す角度θが、より小さくなる方向へ除去面13を回転変位させる。
【0052】
図3(b)は、シート側法線14と除去側法線15との成す角度θが90度となった状態の図である。このような中間状態において、シート状部材11には、不定の変形が生じないので、シート状部材11a間に空間が生じたり、シート状部材11の側面に除去面13が接触しない領域が発生することもなくなる。
【0053】
したがって、図3(b)に示すような中間状態において、シート状部材11a間にダストが押し込まれることがなく、除去面13は、シート状部材11の側面に隙間なく接触することができ、側面に付着しているダスト17を吸着して確実に除去することができる。
【0054】
最終的には、図3(c)に示すように、シート側法線14と除去側法線15が成す角度θが0度より大きく、90度未満となるような角度まで変位させる。このとき、除去面13が、当接したシート状部材11の側部には、上方向への力がかかり、側部が上方に曲がったように変形する。このとき、各シート状部材11aの側面は、全て同一方向へ力がかかるため、変形する方向は一定となり、側面の大部分が除去面13から離反する。これによって、シート状部材11の側面に付着していたダストは、除去ユニット12へと確実に除去される。
【0055】
吸着されたダスト18は、除去面13よりも粘着力の強い再生用の転写面を、除去面13に押し当てて吸着されたダスト18を転写させることで除去面13から取り除かれ、除去ユニット12は再利用される。再生用の転写面は、一定周期でアルコールなどを用いて洗浄する。
【0056】
本発明において、除去面13の大きさを、シート状部材11のダスト除去対象となる側面全体よりも大きくすることにより、上記のように除去面13を回転させるような一連の動作を行うだけで、シート状部材11の側面全てに除去面13を当接させることができる。また除去ユニット12を、シート状部材11の1辺に沿って移動させることもないので、シート状部材11が大型化したとしても、ダスト除去処理に要する時間が、増加することも無い。
【0057】
このような第1実施形態では、シート状部材11の端部のみを変形させることでダスト除去を行うので、可とう性を有する材料の中でも、比較的硬い材料にも対応することができ、幅広い材料に適用できる。
【0058】
以下では、本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態であるダスト除去方法を示す斜視図である。図5は、第2実施形態の動作を示す模式図である。
【0059】
除去ユニット12自身の構成は、第1実施形態の構成と同じで、シート状部材11の長辺よりも長い辺と、シート状部材11の厚みよりも長い辺とで構成される平面状で、ダストを吸着して除去するための除去面13を有している。
【0060】
図5(a)は、除去ユニット12による除去開始直前の状態を示している。
シート状部材11は、ステージ21上に下方から支持されて載置される。ステージ21の中央部、すなわち載置されたシート状部材11の中央部には、除去ユニット12の長手方向に沿ってスリットが設けられ、スリットを通して上昇用プッシャーピン19を上下方向に移動可能に構成される。
【0061】
押圧部である上昇用プッシャーピン19は、除去ユニット12の長手方向に延びる略角柱状の部材で構成され、シート状部材11に当接してシート状部材11の中央部を押し上げる当接部は、外方に突き出た円柱面状の凸部として構成される。
【0062】
押圧部である下降用プッシャーピン20は、当接部の位置が上昇用プッシャーピン19と反対である以外は同様の構成であり、上下動のストロークが上昇用プッシャーピン19よりも上方である。
【0063】
シート状部材11の上方より、下降用プッシャーピン20を下降させ、上昇用プッシャーピン19と下降用プッシャーピン20とでシート状部材11の中央部を挟持する。
【0064】
図5(b)は、除去ユニット12による除去開始直後の状態を示している。
第1工程で、シート状部材11の側面に、シート側法線と除去側法線とが直交するように、すなわちシート状部材11の側面に対して垂直な方向から除去ユニット12の除去面13を当接させる。
【0065】
シート状部材11の大きさ、材質などによって異なるが、除去面13を当接させた状態での除去面13の間隔は、たとえばシート状部材11の除去面13が当接されていない辺の長さが60mmのときに両側からそれぞれ2mm程度内側となるように、すなわち除去面13の間隔が56mm程度とすることで保持が可能となる。
【0066】
除去面13の当接と同時に、上昇用プッシャーピン19および下降用プッシャーピン20で挟持した状態でシート状部材11の中央部を上方に押し上げる。これにより、シート状部材11は、除去面13より加えられる横方向からの押圧力と、上昇用プッシャーピン19および下降用プッシャーピン20より加えられる下方向からの押し上げ力によって、中央部が上に凸状の形状に変形する。
【0067】
この後、シート状部材11を載置していたステージ21を下降させると、シート状部材11は、上下方向には上昇用プッシャーピン19および下降用プッシャーピン20で挟持され、横方向には両側の除去ユニット12によって挟持された状態となる。
【0068】
次に、第2工程では図5(c)に示すように、上昇用プッシャーピン19および下降用プッシャーピン20で挟持した状態でシート状部材11の中央部を下方に押し下げると、シート状部材11は、上に凸状から凹状(下に凸状)の形状にさらに変形する。
【0069】
最後に、第3工程で、除去面13をシート状部材11から離反して除去処理を終了する。
【0070】
図6は、第2実施形態において、シート状部材11の側面に付着したダストが除去される様子を示す模式図である。
【0071】
シート状部材11の側面に対して垂直方向から除去ユニット12の除去面13を当接させて、シート状部材11の下方より上昇用プッシャーピン19を押し上げてシート状部材11を上に凸状に変形させると、図6(a)に示すようにシート状部材11の側部は、下方に曲がったように変形する。
【0072】
このとき、積層されたシート状部材11の中央部は、全て上に凸方向へ変形しているため、それぞれのシート状部材11aの変形方向が一定となり、シート状部材間に空間が生じることがなく、シート状部材11の側面に除去面13が接触しない領域が発生することもなくなる。
【0073】
次に、シート状部材11の上方より下降用プッシャーピン20を下降させて、シート状部材11を上に凸状から凹状(下に凸状)に形状を変形させると、図6(b)に示すようにシート状部材11の側部は、上方に曲がったように変形する。
【0074】
このとき、積層されたシート状部材11の中央部は、全て下に凸方向へ変形しているため、それぞれのシート状部材11aの変形方向が一定となり、シート状部材間に空間が生じることがなく、シート状部材11の側面に除去面13が接触しない領域が発生することもなくなる。
【0075】
このように、シート状部材11を上に凸状から凹状(下に凸状)に変形させることにより、重ね合わされたシート状部材11の間に空間が生じることがないため、シート状部材11の側面に付着したダスト17は、シート状部材11a間に押し込まれることはなくなる。
【0076】
本発明において、除去面13の大きさを、シート状部材11のダスト除去対象となる側面全体よりも大きくすることにより、シート状部材11の中央部を上下方向に変形させる一連の動作を行うだけで、除去面13をシート状部材11の側面全体に当接させることができる。また除去ユニット12を、シート状部材11の1辺に沿って移動させることもないので、シート状部材11が大型化したとしても、ダスト除去処理に要する時間が増加することも無くなる。
【0077】
また、第2実施形態の変形例として以下のような第3実施形態も実施可能である。
図7は、第3実施形態の動作を示す模式図である。
【0078】
上記の第2実施形態において、図5(b)に示したように、上昇用プッシャーピン19でシート状部材11の中央部を上に凸方向へ変形させたのち、図7(a)に示すように、上方から下降用プッシャーピン20を下降させてシート状部材11の中央部を、上昇用プッシャーピン19と下降用プッシャーピン20とで挟み込むように固定する。
【0079】
中央部を2つのプッシャーピンで固定した状態で、図7(b)に示すように、除去ユニット12の間隔を一定に保持したまま、2つの除去ユニット12を上昇させる。
【0080】
このように上昇用プッシャーピン19と下降用プッシャーピン20とを固定して、シート状部材11の中央部を拘束したまま除去ユニット12を上昇させることで、シート状部材11の除去面13に当接している側部は、第2実施形態と同様に図6に示すような変形を起こして側面のダストが除去される。
【0081】
除去ユニット12を固定したまま、2つのプッシャーピンを交互に動かすことによってダストを除去する第2実施形態と、2つのプッシャーピンで中央部を固定したまま、除去ユニット12を動かす第3実施形態とは、シート状部材11と除去ユニット12との相対的な移動関係は同じであるから、第2実施形態と第3実施形態とは、同じ効果が当然得られる。したがって、移動機構に応じていずれかの実施形態を選択すればよく、たとえば、ステージ21を移動させたくないような場合は、第3実施形態を選択すればよい。
【0082】
なお、上記では最初に上昇用プッシャーピン19で上に凸方向へ変形させ、その後に下降用プッシャーピン20で下に凸方向へと変形させているが、これに限らず最初に下降用プッシャーピン20で下に凸方向へと変形させ、その後に上昇用プッシャーピン19で上に凸方向へ変形させても同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態であるダスト除去方法を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態の動作を示す模式図である。
【図3】第1実施形態において、複数重ね合わされた積層体としてシート状部材11の側面に付着したダストが除去される様子を示す模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態であるダスト除去方法を示す斜視図である。
【図5】第2実施形態の動作を示す模式図である。
【図6】第2実施形態において、シート状部材11の側面に付着したダストが除去される様子を示す模式図である。
【図7】第3実施形態の動作を示す模式図である。
【図8】従来の技術によって、可とう性を有するシート状部材11の側面に付着したダスト17を除去する場合の模式図である。
【符号の説明】
【0084】
11 シート状部材
12 除去ユニット
13 除去面
14 シート側法線
15 除去側法線
17 シート状部材の側面に付着したダスト
18 シート状部材の側面から除去されたダスト
19 上昇用プッシャーピン
20 下降用プッシャーピン
21 ステージ
22 除去されなかったダスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材の側面に付着したダストを、除去面を備えた除去ユニットを前記側面に当接させて除去するダスト除去方法であって、
前記除去面の法線と、シート状部材の主面の法線との成す角度θが90度より大きく、かつ180度未満となるように、シート状部材の側部に除去ユニットの除去面を当接させる第1工程と、
前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記角度θが小さくなるように、かつ0度より大きく90度未満となるように前記シート状部材と前記除去ユニットとを相対的に移動させる第2工程と、
前記シート状部材から前記除去面を離反させる第3工程とを含むことを特徴とするダスト除去方法。
【請求項2】
前記第2工程では、前記シート状部材を固定した状態で、除去ユニットの除去面を移動させることを特徴とする請求項1に記載のダスト除去方法。
【請求項3】
シート状部材の側面に付着したダストを、除去面を備えた除去ユニットを前記側面に当接させて除去するダスト除去方法であって、
前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記シート状部材と前記除去面とを相対的に移動させて、前記シート状部材の中央部を上に凸方向または下に凸方向に変形させる第1工程と、
前記除去面を固定して前記シート状部材を挟持し、押圧部によって前記シート状部材の中央部を押圧して、前記第1工程とは反対方向に変形させる第2工程と、
前記シート状部材から前記除去面を離反させる第3工程とを含むことを特徴とするダスト除去方法。
【請求項4】
シート状部材の側面に付着したダストを、除去面を備えた除去ユニットを前記側面に当接させて除去するダスト除去装置であって、
前記シート状部材と前記除去面とが当接、離反可能に構成され、
前記除去ユニットは、前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記除去面の法線と、シート状部材の主面の法線との成す角度θが0度より大きく180度未満となる範囲で前記除去面を移動可能に構成され、
前記除去面の法線と、シート状部材の主面の法線との成す角度θが90度より大きく、かつ180度未満となるように、シート状部材の側部に除去ユニットの除去面を当接させ、前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記角度θが小さくなるように、かつ0度より大きく90度未満となるように前記シート状部材と前記除去ユニットとを相対的に移動させ、前記シート状部材から前記除去面を離反させることを特徴とするダスト除去装置。
【請求項5】
シート状部材の側面に付着したダストを、除去面を備えた除去ユニットを前記側面に当接させて除去するダスト除去装置であって、
前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記シート状部材の中央部を押圧して上に凸方向または下に凸方向に変形させる押圧部を備え、
前記シート状部材と前記除去面とが当接、離反可能に構成され、
前記シート状部材と前記除去面とが当接した状態で、前記シート状部材と前記除去面とを相対的に移動させて、前記シート状部材の中央部を上に凸方向または下に凸方向に変形させ、前記除去面を固定して前記シート状部材を挟持し、押圧部によって前記シート状部材の中央部を押圧して、前記変更させる方向とは反対方向に変形させ、前記シート状部材から前記除去面を離反させることを特徴とするダスト除去装置。
【請求項6】
除去ユニットの除去面は、シート状部材のダスト除去対象となる側面全体よりも大きく形成されることを特徴とする請求項4または5に記載のダスト除去装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−165907(P2009−165907A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3746(P2008−3746)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】