ダブルクラッドファイバ及びファイバレーザ装置
【課題】本発明は、スキュー光を低減させると同時に、励起光を効率よく導入できるダブルクラッドファイバを提供する。
【解決手段】レーザ媒質を含むコア11と、コア11への励起光を伝播するインナークラッド12と、励起光を閉じ込めるアウタークラッド13を備え、インナークラッド12は、励起光が導入される略円形の断面形状を持つ励起領域12bと、コア11を含む概円形の断面形状を持つ発振領域12aから成り、励起領域12bと発振領域12aの接合部分14の幅が長さ方向に沿って変化させたものである。
【解決手段】レーザ媒質を含むコア11と、コア11への励起光を伝播するインナークラッド12と、励起光を閉じ込めるアウタークラッド13を備え、インナークラッド12は、励起光が導入される略円形の断面形状を持つ励起領域12bと、コア11を含む概円形の断面形状を持つ発振領域12aから成り、励起領域12bと発振領域12aの接合部分14の幅が長さ方向に沿って変化させたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザに用いるダブルクラッドファイバ及びファイバレーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、材料加工に用いられるレーザの光源としてファイバレーザ装置が注目されている。
【0003】
なかでも、ダブルクラッドファイバの採用により、従来では固体レーザでしか実現できなかった高出力レーザ光を要する材料加工分野への普及が見られている。
【0004】
このようなファイバレーザ装置の場合、高品質なレーザ光を取り出す観点からコア径の大径化には限界があり、一方、高出力レーザ光を取り出す観点からは、高出力な励起光が必要となるが、高出力な励起光は集光性が悪く、大きな断面積をもつインナークラッドが必要とされている。
【0005】
そこで従来の高出力のファイバレーザ装置に用いているダブルクラッドファイバは、大きな断面積をもつインナークラッドとして励起光を導入する導波路とレーザ光を発生する導波路を一体として並行に設けているものもある(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【0006】
また、大きな断面積をもつインナークラッドにおいて発生し易いスキュー光(レーザ光発生に寄与しない光)低減のためにインナークラッドの一部に平坦部を設けているものもある(例えば特許文献3参照)。
【0007】
図10及び図11は従来のダブルクラッドファイバの断面を示す図で、レーザ媒質である希土類が添加され、発生するレーザ光を閉じ込めるコア101と、このコア101への励起光を伝播させるインナークラッド102がコア101の外部およびコア101を包むインナークラッド102と併設され、このインナークラッド102を包むように励起光を閉じ込めるアウタークラッド103を設けていた。
【0008】
なお、インナークラッド102はコア101を包む発振領域と、励起光を導入する励起領域で構成され、その断面形状は図10に示したように励起領域と発振領域を略円形状としたり、図11に示したように発振領域は略円形とし、励起領域の一部に平坦部を設けた形状としており、図10、11に示すようにダブルクラッドファイバの全長に渡って同一形状としていた。
【0009】
以上のように構成されたダブルクラッドファイバについて、その動作を説明する。
【0010】
インナークラッド102に励起光を注入し、この注入された励起光はインナークラッド102を伝播する。
【0011】
伝播中、励起光はコア101を横断してレーザ媒質である希土類を励起し、励起光を生じ、ダブルクラッドファイバ両端に設けられた光共振器(図示せず)によりレーザ光として取り出すようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−144350号公報(第1図)
【特許文献2】特許第3827819号公報(第3図)
【特許文献3】特表平10−510104号公報(第3図及び第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、従来のダブルクラッドファイバは、ファイバ長さ方向に対して同一断面形状であるため、レーザ光発生に寄与しないスキュー光が発生した場合、そのスキュー光が低減しないという課題を有していた。
【0014】
また、スキュー光低減のためにインナークラッド102の励起領域の一部に平坦部を設けた場合、導入する励起光の形状をインナークラッド102の形状に合わせる必要があるが、一部に平坦部を設けた形状に励起光を整形することが難しく、円形の励起光を用いらなければならないので、この平坦部の部分の励起光が反射されてしまい高効率な励起光導入が出来なかったり、または、励起光が反射さられないように励起光を細径化しなければならないという課題を有していた。
【0015】
さらに、平坦部を形成するためにはファイバ母材を平面状に鏡面研削する必要があり、コスト的にも母材の大型化にも不利なものであった。
【0016】
本発明はこれら従来の課題に鑑み、スキュー光を低減させると同時に、励起光を効率よく導入できるダブルクラッドファイバを提供することを第1の目的とし、効率よくレーザ光を取り出すことができるファイバレーザ装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明のダブルクラッドファイバおよびファイバレーザ装置は、レーザ媒質を含むコアと、前記コアへの励起光を伝播するインナークラッドと、前記励起光を閉じ込めるアウタークラッドを備え、前記インナークラッドは、前記励起光が導入される略円形の断面形状を持つ励起領域と、前記コアを含む概円形の断面形状を持つ発振領域から成り、前記励起領域と前記発振領域の接合部分の幅が長さ方向に沿って変化させたものである。
【0018】
このようにダブルクラッドファイバの長さ方向に接合部分の幅が変化するのでインナークラッド内のスキュー光の光路が長さ方向に対して変化し、スキュー光を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明は、インナークラッドの励起領域と発振領域の接合部分の幅を長さ方向に沿って変化させることにより、高効率な励起光導入を実現するとともに簡単な構成でスキュー光を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの断面図
【図2】本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの実施の形態における断面図
【図3】本発明の実施の形態1におけるファイバレーザ装置の概略構成図
【図4】本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの原理を説明する断面図
【図5】本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの原理を説明する断面図
【図6】本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの原理を説明する断面図
【図7】本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの原理を説明する断面図
【図8】本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの原理を説明する断面図
【図9】本発明のダブルクラッドファイバの他の実施の形態における断面図
【図10】従来のダブルクラッドファイバ断面図
【図11】従来のダブルクラッドファイバ断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態例について、図を用いて説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの断面図、図2は本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの実施の形態における断面図、図3は本発明の実施の形態1におけるファイバレーザ装置の概略構成図、図4から図8は本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの原理を説明する断面図である。
【0023】
図1において、レーザ光を発生し、伝送するコア11はレーザ媒質である希土類、望ましくはイッテルビウム(Yb)を少なくとも添加した石英ガラスで構成し、その断面形状は、ほぼ円形で、本実施の形態では直径を10マイクロメートルにしているが、このコア11の直径は10マイクロメートルから30マイクロメートル程度まで選択することが可能で、コア11の直径が大きなほど励起光を吸収しやすい利点はあるが、反面出射されるレーザビームの品質低下を招くため、所望のレーザビーム品質となる様、コアの屈折率と併せて設計することができる。
【0024】
また、コア11への励起光を伝播するインナークラッド12は石英ガラスで構成し、コア11を含み概ね円形の断面を有する発振領域12aと、励起光が導入される概ね円形断面を有する励起領域12bと、および、それぞれが溶融一体化した接合部分14から構成している。
【0025】
そして本実施の形態では、このように構成したダブルクラッドファイバの全長は数メートルから数十メートルであり、図2に示すように、その断面形状はダブルクラッドファイバ10の長さ方向に沿って変化させている。
【0026】
このダブルクラッドファイバ10の両端面(1A点、及び、1E点)における、インナークラッド12の断面形状は二つの円を重ねた達磨形状であり、それぞれ直径400マイクロメートルの円形で、その接合部分14の幅は約20マイクロメートルである。
【0027】
図2に示すように1A点からダブルクラッドファイバ10の長さ方向中央付近(1C点)に向かってインナークラッド12の断面形状は、励起領域12bと発振領域12aの一部が溶融一体化した接合部分を有する形状であり、加えて、その溶融一体化した接合部分14の幅は、長さ方向中央付近(1C点)に近づくにつれて増加している。
【0028】
同様に、1E点から1C点に向かってインナークラッド12の形状は、励起領域12bと発振領域12aの一部が溶融一体化した接合部分を有する形状であり、加えて、その溶融一体化した接合部分14の幅は1C点に近づくにつれて増加している。
【0029】
なお、インナークラッド12は、発振領域12aとなる円形断面クラッドに囲まれた希土類をドープしたコアを持つ希土類ドープファイバ母材と、励起領域12bとなる円形断面を持つ無水合成石英母材を一括線引することで得られる。
【0030】
そして、溶融一体化した接合部分の幅は、線引工程での紡糸炉温度や母材を炉に送る速度、線引張力などで、制御することが可能である。
【0031】
アウタークラッド13は上記線引き後のコーティングで用いる低屈折率ポリマーであり、ダブルクラッドファイバ10を保護する。
【0032】
また、その屈折率は、コア11、インナークラッド12、アウタークラッド13の順に低くなる構造である。インナークラッド12の屈折率は、発振領域12aと励起領域12bの屈折率が同じことが望ましい。
【0033】
図3に示すファイバレーザ装置では、電源20は励起光を発生するファイバ付き半導体レーザ21に接続しており、ファイバ付き半導体レーザ21を駆動するようにしている。
【0034】
ファイバ付き半導体レーザ21のファイバは、コア直径400マイクロメートル、クラッド直径440マイクロメートルであり、ダブルクラッドファイバ10の端面1A点において、そのコアはインナークラッド12の励起領域12bに接続している。
【0035】
同様に、電源25は励起光を発生するファイバ付き半導体レーザ26に接続しており、ファイバ付き半導体レーザ26を駆動するようにしている。
【0036】
ファイバ付き半導体レーザ26のファイバは、ダブルクラッドファイバ10の端面1E点において、そのコアをインナークラッド12の励起領域12bに接続している。
【0037】
また、ダブルクラッドファイバ10の端面1A点においては、上記の接続に併せて、コア直径10マイクロメートル、クラッド直径400マイクロメートルのファイバ型の所望の波長の光を帰還する高反射端28を発振領域12aのコア11に接続している。
【0038】
一方、ダブルクラッドファイバ10の端面1E点においては、上記の接続に併せて、コア直径10マイクロメートル、クラッド直径400マイクロメートルのファイバ型のレーザ出力を取り出す伝送用ファイバ29を発振領域12aのコア11に接続している。
【0039】
以上のように構成されたダブルクラッドファイバおよびファイバレーザ装置でのスキュー光低減の原理について、以下に図4から図8を用いて説明する。
【0040】
一般に、スキュー光は光ファイバの伝播軸に沿って螺旋を描いて進むため、その光路を光ファイバの伝播軸と垂直に交差する面に投影すると、スキュー光はある内接円に沿った軌跡を描く。
【0041】
この内接円の直径がコア11よりわずかに大きい程度であり、非常に小さな直径の内接円に投影されるスキュー光は、コア11を通過しないものの、非常に子午線光に近いスキュー光に相当する。
【0042】
逆に、内接円の直径が励起領域12bの直径と同程度であり、非常に大きな直径の内接円に投影されるスキュー光は、インナークラッド12内で、コア11から最も離れた部分を通過するもので、子午線光から最もかけ離れたスキュー光に相当する。
【0043】
以下、様々な光路のスキュー光を、投影面に描かれる内接円の直径の大小により区別して表現する。
【0044】
図4に示すものは、接合部分14が点で溶融一体化しておらず、いわゆる励起領域12b断面と発振領域12a断面が点で接しているだけの場合を示す。
【0045】
この場合、励起領域12bの光線が発振領域12aに伝播するときに通過する光路は接点部分のみである。図4において、ある大きな内接円51に沿ったスキュー光54が励起領域12bから発振領域12aに伝播する場合を考える。
【0046】
スキュー光54が励起領域12bから発振領域12aに伝播しても、このスキュー光は発振領域12a内において内接円51と同じ直径の内接円56に沿ったスキュー光となる。
【0047】
そのため、内接円51と同じ直径の内接円56に沿ったスキュー光58が発振領域12aから励起領域12bに戻ってきた場合、再度、内接円51に沿ったスキュー光となる。
【0048】
また、小さな直径の内接円52に沿ったスキュー光53についても同様で、発振領域12a内において同じ直径の内接円55に沿ったスキュー光57になる。
【0049】
従って、内接円の直径が変化しない限りスキュー光は同じ場所を通過しており、コアを横切ることがない。
【0050】
図5に示すものは、接合部分14に多少の幅が与えられ、励起領域12bと発振領域12aが緩やかに一体化している場合を示す。
【0051】
この場合、励起領域12bの光線が発振領域12aに伝播するときに、接合部分14を通過する光路は前述の接点部分以外に幾多ものルートが考えられる。
【0052】
つまり、励起領域12bにおいて、ある内接円59に沿ったスキュー光60、61は、接合部分14を通過するルートによって発振領域12aでは大小異なる内接円63,64に沿ったスキュー光に変換される。
【0053】
接合部分14の中央を通過したスキュー光60は、発振領域12a内において、内接円59と同じ直径の内接円63に沿ったスキュー光になるが、スキュー光60より浅い角度で発振領域12aに伝播するスキュー光61では、発振領域12aにおいて、より大きな直径の内接円64に沿ったスキュー光に光路変換される。
【0054】
逆に、接合部分14をスキュー光60より深い角度で発振領域12aに伝播するスキュー光62では、発振領域12aにおいて、小さな直径の内接円に沿ったスキュー光に光路変換され、図5の一点鎖線で示されるように、コア11を通過することが出来るスキュー光となり、発振領域12aにおいてコア11に吸収されてしまう。
【0055】
このように、接合部分14の幅が拡大したことにより、スキュー光の一部がコア11を通過することになる。
【0056】
次に、図6は、接合部分の幅が更に拡大した場合を示す。
【0057】
この場合、図5と同様の現象が起こるが、図5の場合と比較して、より大きな直径をもつ内接円65に沿ったスキュー光66がコア11を通過できるように光路変換されている。
【0058】
このように励起領域12bに存在するスキュー光のうち、より大きな直径の内接円に沿ったスキュー光の一部が、発振領域12aに伝播してコア11を通過することが出来るようになる。同時に励起領域12bに存在するスキュー光のうち、小さな直径の内接円に沿ったスキュー光であれば、より大きな確率でコア11を通過することが出来るようになることがわかる。
【0059】
最後に図7、図8について説明する。
【0060】
図7は、図6より融一体化が更に進んだ場合を示す。
【0061】
この場合、励起領域12bに存在するスキュー光67,68,69の全てが、つまり励起領域12bの円形断面に内接する、子午線光から最もかけ離れたスキュー光69でさえ、コア11を通過することが出来るようになる。
【0062】
励起領域12bの内接接線がコア11を通過するためには、コア11と励起領域12bの双方に外接する接線がインナークラッド12に含まれるまで接合部分の幅70が拡大する必要がある。
【0063】
図8は、図7の特殊な場合で、励起領域12bと発振領域12a双方が、溶融一体化後にも正規な円形断面を維持している場合を示している。
【0064】
この場合、励起領域12bに内接する接線の接点は、励起領域12bと発振領域12aの境界上にあり、幾何学的計算で求まるとおり、励起領域12bと発振領域12aのそれぞれの円断面中心間距離74は、コア11の半径rと励起領域12bの半径Rを用いて、(r+R)×√2と表記できる。以上より、励起光のスキュー光成分が完全になくなるためには、接合部分14、70の幅を、図7あるいは図8の状態になるまで拡大することが必要であることがわかる。
【0065】
以上のように構成されたダブルクラッドファイバ10と、これを用いたファイバレーザ装置について、図1、図2、図3を用いて、その動作を説明する。
【0066】
まず、電源20により駆動されたファイバ付き半導体レーザ21は、コア11に添加したレーザ媒質である希土類を励起する波長の励起光を発生する。
【0067】
励起光は断面が円形のファイバにより伝送され、1A点のインナークラッド12の励起領域12bに注入される。このとき、インナークラッド12の励起領域12bの断面形状が、平坦部を持たないので、励起光を効率よくインナークラッド12の励起領域12bに注入できる。
【0068】
注入された励起光は、インナークラッド12の励起領域12bと発振領域12aを伝播する。1A点に注入された励起光はインナークラッド12の励起領域12bと発振領域12aを伝播しながら1B点を経由し、1C点に達する。この間に励起領域12bと発振領域12aの接合部分14の幅は増加し、コア11を通過できなかったスキュー光が前述の原理により光路の変更を受け、励起に寄与する光線となる。
【0069】
ここで、接合部分14の幅の最大値は前記のとおり、コア11と励起領域12bの半径をそれぞれr、Rとすると、(r+R)×√2以上であることが好ましい。
【0070】
さらに、ダブルクラッドファイバの反対側端面についても同様に励起光が注入され、上記と同様にスキュー光の減少が図られる。
【0071】
励起により生じた光は、高反射端28と伝送用ファイバ29の端面で構成する光共振器内で多重帰還増幅されてレーザ光となり、伝送用ファイバ29の端面から取り出される。
【0072】
なお、本実施の形態ではインナークラッド12に平坦部を設けていないが、図9のようにインナークラッド12の発振領域12aに平坦部を設ける構造としても同様の効果が得られる。
【0073】
以上のように本実施の形態のダブルクラッドファイバおよびファイバレーザ装置は、レーザ媒質を含むコア11と、コア11への励起光を伝播するインナークラッド12と、励起光を閉じ込めるアウタークラッド13を備え、インナークラッド12は、励起光が導入される略円形の断面形状を持つ励起領域12bと、コア11を含む概円形の断面形状を持つ発振領域12aから成り、励起領域12bと発振領域12aの接合部分14の幅が長さ方向に沿って変化させたものであり、また、接合部分14の幅が最大になるときに、コア11と励起領域12bの双方に外接する接線が、インナークラッド12に含まれる形状とし、また、接合部分14の幅が最大になるときに、コア11の半径をr、励起領域12bの半径をRで表した場合、接合部分14の幅がR以上、(r+R)×√2以下とし、また、発振領域12bの接合部分14以外の部位に断面形状が平坦となる平坦部を設け、また、1つ以上の励起光入射端面を有し、励起光入射端面からの距離の増加に伴って接合部分14の幅を増加させたものである。
【0074】
このようにダブルクラッドファイバの長さ方向に接合部分の幅が変化するのでインナークラッド内のスキュー光の光路が長さ方向に対して変化し、スキュー光を低減することができるので、効率よくレーザ媒質である希土類を励起でき、効率よくレーザ光を取り出すことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明にかかるダブルクラッドファイバ及びファイバレーザ装置は、励起領域と発振領域の接合部分の幅をダブルクラッドファイバの長さ方向に沿って変化させることにより、励起光を効率よく導入できると同時に、インナークラッドを伝播するスキュー光を低減することができるので、ダブルクラッドファイバ及びファイバレーザ装置として有用である。
【符号の説明】
【0076】
10 ダブルクラッドファイバ
11 コア
12 インナークラッドクラッド
12a 発振領域
12b 励起領域
13 アウタークラッド
14 接合部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザに用いるダブルクラッドファイバ及びファイバレーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、材料加工に用いられるレーザの光源としてファイバレーザ装置が注目されている。
【0003】
なかでも、ダブルクラッドファイバの採用により、従来では固体レーザでしか実現できなかった高出力レーザ光を要する材料加工分野への普及が見られている。
【0004】
このようなファイバレーザ装置の場合、高品質なレーザ光を取り出す観点からコア径の大径化には限界があり、一方、高出力レーザ光を取り出す観点からは、高出力な励起光が必要となるが、高出力な励起光は集光性が悪く、大きな断面積をもつインナークラッドが必要とされている。
【0005】
そこで従来の高出力のファイバレーザ装置に用いているダブルクラッドファイバは、大きな断面積をもつインナークラッドとして励起光を導入する導波路とレーザ光を発生する導波路を一体として並行に設けているものもある(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【0006】
また、大きな断面積をもつインナークラッドにおいて発生し易いスキュー光(レーザ光発生に寄与しない光)低減のためにインナークラッドの一部に平坦部を設けているものもある(例えば特許文献3参照)。
【0007】
図10及び図11は従来のダブルクラッドファイバの断面を示す図で、レーザ媒質である希土類が添加され、発生するレーザ光を閉じ込めるコア101と、このコア101への励起光を伝播させるインナークラッド102がコア101の外部およびコア101を包むインナークラッド102と併設され、このインナークラッド102を包むように励起光を閉じ込めるアウタークラッド103を設けていた。
【0008】
なお、インナークラッド102はコア101を包む発振領域と、励起光を導入する励起領域で構成され、その断面形状は図10に示したように励起領域と発振領域を略円形状としたり、図11に示したように発振領域は略円形とし、励起領域の一部に平坦部を設けた形状としており、図10、11に示すようにダブルクラッドファイバの全長に渡って同一形状としていた。
【0009】
以上のように構成されたダブルクラッドファイバについて、その動作を説明する。
【0010】
インナークラッド102に励起光を注入し、この注入された励起光はインナークラッド102を伝播する。
【0011】
伝播中、励起光はコア101を横断してレーザ媒質である希土類を励起し、励起光を生じ、ダブルクラッドファイバ両端に設けられた光共振器(図示せず)によりレーザ光として取り出すようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−144350号公報(第1図)
【特許文献2】特許第3827819号公報(第3図)
【特許文献3】特表平10−510104号公報(第3図及び第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、従来のダブルクラッドファイバは、ファイバ長さ方向に対して同一断面形状であるため、レーザ光発生に寄与しないスキュー光が発生した場合、そのスキュー光が低減しないという課題を有していた。
【0014】
また、スキュー光低減のためにインナークラッド102の励起領域の一部に平坦部を設けた場合、導入する励起光の形状をインナークラッド102の形状に合わせる必要があるが、一部に平坦部を設けた形状に励起光を整形することが難しく、円形の励起光を用いらなければならないので、この平坦部の部分の励起光が反射されてしまい高効率な励起光導入が出来なかったり、または、励起光が反射さられないように励起光を細径化しなければならないという課題を有していた。
【0015】
さらに、平坦部を形成するためにはファイバ母材を平面状に鏡面研削する必要があり、コスト的にも母材の大型化にも不利なものであった。
【0016】
本発明はこれら従来の課題に鑑み、スキュー光を低減させると同時に、励起光を効率よく導入できるダブルクラッドファイバを提供することを第1の目的とし、効率よくレーザ光を取り出すことができるファイバレーザ装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明のダブルクラッドファイバおよびファイバレーザ装置は、レーザ媒質を含むコアと、前記コアへの励起光を伝播するインナークラッドと、前記励起光を閉じ込めるアウタークラッドを備え、前記インナークラッドは、前記励起光が導入される略円形の断面形状を持つ励起領域と、前記コアを含む概円形の断面形状を持つ発振領域から成り、前記励起領域と前記発振領域の接合部分の幅が長さ方向に沿って変化させたものである。
【0018】
このようにダブルクラッドファイバの長さ方向に接合部分の幅が変化するのでインナークラッド内のスキュー光の光路が長さ方向に対して変化し、スキュー光を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明は、インナークラッドの励起領域と発振領域の接合部分の幅を長さ方向に沿って変化させることにより、高効率な励起光導入を実現するとともに簡単な構成でスキュー光を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの断面図
【図2】本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの実施の形態における断面図
【図3】本発明の実施の形態1におけるファイバレーザ装置の概略構成図
【図4】本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの原理を説明する断面図
【図5】本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの原理を説明する断面図
【図6】本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの原理を説明する断面図
【図7】本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの原理を説明する断面図
【図8】本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの原理を説明する断面図
【図9】本発明のダブルクラッドファイバの他の実施の形態における断面図
【図10】従来のダブルクラッドファイバ断面図
【図11】従来のダブルクラッドファイバ断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態例について、図を用いて説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの断面図、図2は本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの実施の形態における断面図、図3は本発明の実施の形態1におけるファイバレーザ装置の概略構成図、図4から図8は本発明の実施の形態1におけるダブルクラッドファイバの原理を説明する断面図である。
【0023】
図1において、レーザ光を発生し、伝送するコア11はレーザ媒質である希土類、望ましくはイッテルビウム(Yb)を少なくとも添加した石英ガラスで構成し、その断面形状は、ほぼ円形で、本実施の形態では直径を10マイクロメートルにしているが、このコア11の直径は10マイクロメートルから30マイクロメートル程度まで選択することが可能で、コア11の直径が大きなほど励起光を吸収しやすい利点はあるが、反面出射されるレーザビームの品質低下を招くため、所望のレーザビーム品質となる様、コアの屈折率と併せて設計することができる。
【0024】
また、コア11への励起光を伝播するインナークラッド12は石英ガラスで構成し、コア11を含み概ね円形の断面を有する発振領域12aと、励起光が導入される概ね円形断面を有する励起領域12bと、および、それぞれが溶融一体化した接合部分14から構成している。
【0025】
そして本実施の形態では、このように構成したダブルクラッドファイバの全長は数メートルから数十メートルであり、図2に示すように、その断面形状はダブルクラッドファイバ10の長さ方向に沿って変化させている。
【0026】
このダブルクラッドファイバ10の両端面(1A点、及び、1E点)における、インナークラッド12の断面形状は二つの円を重ねた達磨形状であり、それぞれ直径400マイクロメートルの円形で、その接合部分14の幅は約20マイクロメートルである。
【0027】
図2に示すように1A点からダブルクラッドファイバ10の長さ方向中央付近(1C点)に向かってインナークラッド12の断面形状は、励起領域12bと発振領域12aの一部が溶融一体化した接合部分を有する形状であり、加えて、その溶融一体化した接合部分14の幅は、長さ方向中央付近(1C点)に近づくにつれて増加している。
【0028】
同様に、1E点から1C点に向かってインナークラッド12の形状は、励起領域12bと発振領域12aの一部が溶融一体化した接合部分を有する形状であり、加えて、その溶融一体化した接合部分14の幅は1C点に近づくにつれて増加している。
【0029】
なお、インナークラッド12は、発振領域12aとなる円形断面クラッドに囲まれた希土類をドープしたコアを持つ希土類ドープファイバ母材と、励起領域12bとなる円形断面を持つ無水合成石英母材を一括線引することで得られる。
【0030】
そして、溶融一体化した接合部分の幅は、線引工程での紡糸炉温度や母材を炉に送る速度、線引張力などで、制御することが可能である。
【0031】
アウタークラッド13は上記線引き後のコーティングで用いる低屈折率ポリマーであり、ダブルクラッドファイバ10を保護する。
【0032】
また、その屈折率は、コア11、インナークラッド12、アウタークラッド13の順に低くなる構造である。インナークラッド12の屈折率は、発振領域12aと励起領域12bの屈折率が同じことが望ましい。
【0033】
図3に示すファイバレーザ装置では、電源20は励起光を発生するファイバ付き半導体レーザ21に接続しており、ファイバ付き半導体レーザ21を駆動するようにしている。
【0034】
ファイバ付き半導体レーザ21のファイバは、コア直径400マイクロメートル、クラッド直径440マイクロメートルであり、ダブルクラッドファイバ10の端面1A点において、そのコアはインナークラッド12の励起領域12bに接続している。
【0035】
同様に、電源25は励起光を発生するファイバ付き半導体レーザ26に接続しており、ファイバ付き半導体レーザ26を駆動するようにしている。
【0036】
ファイバ付き半導体レーザ26のファイバは、ダブルクラッドファイバ10の端面1E点において、そのコアをインナークラッド12の励起領域12bに接続している。
【0037】
また、ダブルクラッドファイバ10の端面1A点においては、上記の接続に併せて、コア直径10マイクロメートル、クラッド直径400マイクロメートルのファイバ型の所望の波長の光を帰還する高反射端28を発振領域12aのコア11に接続している。
【0038】
一方、ダブルクラッドファイバ10の端面1E点においては、上記の接続に併せて、コア直径10マイクロメートル、クラッド直径400マイクロメートルのファイバ型のレーザ出力を取り出す伝送用ファイバ29を発振領域12aのコア11に接続している。
【0039】
以上のように構成されたダブルクラッドファイバおよびファイバレーザ装置でのスキュー光低減の原理について、以下に図4から図8を用いて説明する。
【0040】
一般に、スキュー光は光ファイバの伝播軸に沿って螺旋を描いて進むため、その光路を光ファイバの伝播軸と垂直に交差する面に投影すると、スキュー光はある内接円に沿った軌跡を描く。
【0041】
この内接円の直径がコア11よりわずかに大きい程度であり、非常に小さな直径の内接円に投影されるスキュー光は、コア11を通過しないものの、非常に子午線光に近いスキュー光に相当する。
【0042】
逆に、内接円の直径が励起領域12bの直径と同程度であり、非常に大きな直径の内接円に投影されるスキュー光は、インナークラッド12内で、コア11から最も離れた部分を通過するもので、子午線光から最もかけ離れたスキュー光に相当する。
【0043】
以下、様々な光路のスキュー光を、投影面に描かれる内接円の直径の大小により区別して表現する。
【0044】
図4に示すものは、接合部分14が点で溶融一体化しておらず、いわゆる励起領域12b断面と発振領域12a断面が点で接しているだけの場合を示す。
【0045】
この場合、励起領域12bの光線が発振領域12aに伝播するときに通過する光路は接点部分のみである。図4において、ある大きな内接円51に沿ったスキュー光54が励起領域12bから発振領域12aに伝播する場合を考える。
【0046】
スキュー光54が励起領域12bから発振領域12aに伝播しても、このスキュー光は発振領域12a内において内接円51と同じ直径の内接円56に沿ったスキュー光となる。
【0047】
そのため、内接円51と同じ直径の内接円56に沿ったスキュー光58が発振領域12aから励起領域12bに戻ってきた場合、再度、内接円51に沿ったスキュー光となる。
【0048】
また、小さな直径の内接円52に沿ったスキュー光53についても同様で、発振領域12a内において同じ直径の内接円55に沿ったスキュー光57になる。
【0049】
従って、内接円の直径が変化しない限りスキュー光は同じ場所を通過しており、コアを横切ることがない。
【0050】
図5に示すものは、接合部分14に多少の幅が与えられ、励起領域12bと発振領域12aが緩やかに一体化している場合を示す。
【0051】
この場合、励起領域12bの光線が発振領域12aに伝播するときに、接合部分14を通過する光路は前述の接点部分以外に幾多ものルートが考えられる。
【0052】
つまり、励起領域12bにおいて、ある内接円59に沿ったスキュー光60、61は、接合部分14を通過するルートによって発振領域12aでは大小異なる内接円63,64に沿ったスキュー光に変換される。
【0053】
接合部分14の中央を通過したスキュー光60は、発振領域12a内において、内接円59と同じ直径の内接円63に沿ったスキュー光になるが、スキュー光60より浅い角度で発振領域12aに伝播するスキュー光61では、発振領域12aにおいて、より大きな直径の内接円64に沿ったスキュー光に光路変換される。
【0054】
逆に、接合部分14をスキュー光60より深い角度で発振領域12aに伝播するスキュー光62では、発振領域12aにおいて、小さな直径の内接円に沿ったスキュー光に光路変換され、図5の一点鎖線で示されるように、コア11を通過することが出来るスキュー光となり、発振領域12aにおいてコア11に吸収されてしまう。
【0055】
このように、接合部分14の幅が拡大したことにより、スキュー光の一部がコア11を通過することになる。
【0056】
次に、図6は、接合部分の幅が更に拡大した場合を示す。
【0057】
この場合、図5と同様の現象が起こるが、図5の場合と比較して、より大きな直径をもつ内接円65に沿ったスキュー光66がコア11を通過できるように光路変換されている。
【0058】
このように励起領域12bに存在するスキュー光のうち、より大きな直径の内接円に沿ったスキュー光の一部が、発振領域12aに伝播してコア11を通過することが出来るようになる。同時に励起領域12bに存在するスキュー光のうち、小さな直径の内接円に沿ったスキュー光であれば、より大きな確率でコア11を通過することが出来るようになることがわかる。
【0059】
最後に図7、図8について説明する。
【0060】
図7は、図6より融一体化が更に進んだ場合を示す。
【0061】
この場合、励起領域12bに存在するスキュー光67,68,69の全てが、つまり励起領域12bの円形断面に内接する、子午線光から最もかけ離れたスキュー光69でさえ、コア11を通過することが出来るようになる。
【0062】
励起領域12bの内接接線がコア11を通過するためには、コア11と励起領域12bの双方に外接する接線がインナークラッド12に含まれるまで接合部分の幅70が拡大する必要がある。
【0063】
図8は、図7の特殊な場合で、励起領域12bと発振領域12a双方が、溶融一体化後にも正規な円形断面を維持している場合を示している。
【0064】
この場合、励起領域12bに内接する接線の接点は、励起領域12bと発振領域12aの境界上にあり、幾何学的計算で求まるとおり、励起領域12bと発振領域12aのそれぞれの円断面中心間距離74は、コア11の半径rと励起領域12bの半径Rを用いて、(r+R)×√2と表記できる。以上より、励起光のスキュー光成分が完全になくなるためには、接合部分14、70の幅を、図7あるいは図8の状態になるまで拡大することが必要であることがわかる。
【0065】
以上のように構成されたダブルクラッドファイバ10と、これを用いたファイバレーザ装置について、図1、図2、図3を用いて、その動作を説明する。
【0066】
まず、電源20により駆動されたファイバ付き半導体レーザ21は、コア11に添加したレーザ媒質である希土類を励起する波長の励起光を発生する。
【0067】
励起光は断面が円形のファイバにより伝送され、1A点のインナークラッド12の励起領域12bに注入される。このとき、インナークラッド12の励起領域12bの断面形状が、平坦部を持たないので、励起光を効率よくインナークラッド12の励起領域12bに注入できる。
【0068】
注入された励起光は、インナークラッド12の励起領域12bと発振領域12aを伝播する。1A点に注入された励起光はインナークラッド12の励起領域12bと発振領域12aを伝播しながら1B点を経由し、1C点に達する。この間に励起領域12bと発振領域12aの接合部分14の幅は増加し、コア11を通過できなかったスキュー光が前述の原理により光路の変更を受け、励起に寄与する光線となる。
【0069】
ここで、接合部分14の幅の最大値は前記のとおり、コア11と励起領域12bの半径をそれぞれr、Rとすると、(r+R)×√2以上であることが好ましい。
【0070】
さらに、ダブルクラッドファイバの反対側端面についても同様に励起光が注入され、上記と同様にスキュー光の減少が図られる。
【0071】
励起により生じた光は、高反射端28と伝送用ファイバ29の端面で構成する光共振器内で多重帰還増幅されてレーザ光となり、伝送用ファイバ29の端面から取り出される。
【0072】
なお、本実施の形態ではインナークラッド12に平坦部を設けていないが、図9のようにインナークラッド12の発振領域12aに平坦部を設ける構造としても同様の効果が得られる。
【0073】
以上のように本実施の形態のダブルクラッドファイバおよびファイバレーザ装置は、レーザ媒質を含むコア11と、コア11への励起光を伝播するインナークラッド12と、励起光を閉じ込めるアウタークラッド13を備え、インナークラッド12は、励起光が導入される略円形の断面形状を持つ励起領域12bと、コア11を含む概円形の断面形状を持つ発振領域12aから成り、励起領域12bと発振領域12aの接合部分14の幅が長さ方向に沿って変化させたものであり、また、接合部分14の幅が最大になるときに、コア11と励起領域12bの双方に外接する接線が、インナークラッド12に含まれる形状とし、また、接合部分14の幅が最大になるときに、コア11の半径をr、励起領域12bの半径をRで表した場合、接合部分14の幅がR以上、(r+R)×√2以下とし、また、発振領域12bの接合部分14以外の部位に断面形状が平坦となる平坦部を設け、また、1つ以上の励起光入射端面を有し、励起光入射端面からの距離の増加に伴って接合部分14の幅を増加させたものである。
【0074】
このようにダブルクラッドファイバの長さ方向に接合部分の幅が変化するのでインナークラッド内のスキュー光の光路が長さ方向に対して変化し、スキュー光を低減することができるので、効率よくレーザ媒質である希土類を励起でき、効率よくレーザ光を取り出すことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明にかかるダブルクラッドファイバ及びファイバレーザ装置は、励起領域と発振領域の接合部分の幅をダブルクラッドファイバの長さ方向に沿って変化させることにより、励起光を効率よく導入できると同時に、インナークラッドを伝播するスキュー光を低減することができるので、ダブルクラッドファイバ及びファイバレーザ装置として有用である。
【符号の説明】
【0076】
10 ダブルクラッドファイバ
11 コア
12 インナークラッドクラッド
12a 発振領域
12b 励起領域
13 アウタークラッド
14 接合部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ媒質を含むコアと、前記コアへの励起光を伝播するインナークラッドと、前記励起光を閉じ込めるアウタークラッドを備え、前記インナークラッドは、前記励起光が導入される略円形の断面形状を持つ励起領域と、前記コアを含む概円形の断面形状を持つ発振領域から成り、前記励起領域と前記発振領域の接合部分の幅を長さ方向に沿って変化させたダブルクラッドファイバ。
【請求項2】
前記接合部分の幅が最大になるときに、前記コアと前記励起領域の双方に外接する接線が、前記インナークラッドに含まれる形状とした請求項1記載のダブルクラッドファイバ。
【請求項3】
前記接合部分の幅が最大になるときに、前記コアの半径をr、前記励起領域の半径をRで表した場合、前記接合部分の幅がR以上、(r+R)×√2以下とした請求項1記載のダブルクラッドファイバ。
【請求項4】
前記発振領域の前記接合部分以外の部位に断面形状が平坦となる平坦部を設けた請求項1記載のダブルクラッドファイバ。
【請求項5】
1つ以上の励起光入射端面を有し、前記励起光入射端面からの距離の増加に伴って前記接合部分の幅を増加させた請求項1から請求項4のいずれかに記載のダブルクラッドファイバ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のダブルクラッドファイバを用いたファイバレーザ装置。
【請求項1】
レーザ媒質を含むコアと、前記コアへの励起光を伝播するインナークラッドと、前記励起光を閉じ込めるアウタークラッドを備え、前記インナークラッドは、前記励起光が導入される略円形の断面形状を持つ励起領域と、前記コアを含む概円形の断面形状を持つ発振領域から成り、前記励起領域と前記発振領域の接合部分の幅を長さ方向に沿って変化させたダブルクラッドファイバ。
【請求項2】
前記接合部分の幅が最大になるときに、前記コアと前記励起領域の双方に外接する接線が、前記インナークラッドに含まれる形状とした請求項1記載のダブルクラッドファイバ。
【請求項3】
前記接合部分の幅が最大になるときに、前記コアの半径をr、前記励起領域の半径をRで表した場合、前記接合部分の幅がR以上、(r+R)×√2以下とした請求項1記載のダブルクラッドファイバ。
【請求項4】
前記発振領域の前記接合部分以外の部位に断面形状が平坦となる平坦部を設けた請求項1記載のダブルクラッドファイバ。
【請求項5】
1つ以上の励起光入射端面を有し、前記励起光入射端面からの距離の増加に伴って前記接合部分の幅を増加させた請求項1から請求項4のいずれかに記載のダブルクラッドファイバ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のダブルクラッドファイバを用いたファイバレーザ装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【公開番号】特開2011−119422(P2011−119422A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275128(P2009−275128)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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