説明

ダムウェーターおよびその運転方法

【課題】ダムウェーターで荷物を運搬する際に、送り側および受取側で荷物を作業台等に置くことなく作業ができるようにすることである。
【解決手段】かご1前面の開口2を開閉するかご戸3a、3bと、建物の各階の出し入れ口5を開閉する出し入れ口戸6a、6bを、電動で連動して開閉するものとするとともに、各階の出し入れ口5の近傍にフットスイッチ10を設け、作業者が両手で荷物を持っていても、フットスイッチ10を作動させて、かご1を自階に呼んだり、かご戸3a、3bおよび出し入れ口戸6a、6bを開閉させたりできるようにすることにより、送り側と受取側のいずれでも、作業者が運搬作業の途中で荷物を作業台等に置くことなくスムーズに作業を行えるようにしたのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内に設けられた昇降路を昇降するかごで比較的小さい荷物を運搬する小荷物専用昇降機(以下、「ダムウェーター」と記す。)とその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数階の店舗やオフィス等の建物に設置されるダムウェーターは、建物内に設けられた昇降路を昇降するかごにより、上下階間で料理や書類等の比較的小さい荷物を運搬するもので、かごの荷物出し入れ用の開口を開閉するかご戸や、昇降路に通じるように建物の各階の内壁にあけられた出し入れ口を開閉する出し入れ口戸を手動で開閉するタイプのものが多い。また、かごの昇降操作は、通常、出し入れ口の近傍に設けられた操作盤の押しボタンで行うようになっている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
このようなダムウェーターによる荷物の運搬は、まず、荷物を送る側の作業者が、操作盤のボタンを押して自階にかごを呼ぶ。そして、人手で出し入れ口戸およびかご戸を開き、荷物をかごに搬入して各戸を閉めた後、再び操作盤のボタンを押してかごを送り先の階へ移動させる。かごが送り先階に到着すると、受取側の作業者が、各戸を開いて荷物を搬出した後、次の運搬に備えて各戸を閉じておく。
【0004】
しかしながら、上記の運搬方法では、荷物が料理を載せた盆や書類の束等、両手で持たざるをえないようなものである場合、送り側の作業者は、出し入れ口付近まで運んできた荷物を一旦作業台等に置かなければ、操作盤のボタンを押してかごを自階に呼ぶことも、出し入れ口戸とかご戸を開くこともできない。また、受取側の作業者も、荷物搬出後に各戸を閉じる際には、搬出した荷物を一旦作業台等に置かねばならない。このため、送り側と受取側のいずれでも作業者が不便に感じることが多いし、作業能率が低下して、例えば厨房と食堂との間で多くの料理を連続的に運搬する場合に食堂での配膳が遅くなる等の問題が生じることもある。
【非特許文献1】「DUMBWAITER」、クマリフト株式会社、カタログ、2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ダムウェーターで荷物を運搬する際に、送り側および受取側で荷物を作業台等に置くことなく作業ができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、建物内に設けられた昇降路を昇降するかごと、このかごの荷物出し入れ用の開口を開閉するかご戸と、前記昇降路に通じるように建物の各階の内壁にあけられた出し入れ口を開閉する出し入れ口戸とを備えたダムウェーターにおいて、前記かご戸および各階の出し入れ口戸を電動で開閉するものとし、前記各階の出し入れ口の近傍に、前記かごをそれぞれの階に呼んで停止させる操作と、前記かご戸およびそれぞれの階の出し入れ口戸を開閉させる操作とを行うフットスイッチを設けた構成を採用した。
【0007】
すなわち、かご戸および各階の出し入れ口戸を電動式とするとともに、各階の出し入れ口の近傍にフットスイッチを設け、作業者が両手で荷物を持っていても、フットスイッチを作動させて、かごを自階に呼んだり、かご戸および出し入れ口戸を開閉させたりできるようにすることにより、送り側と受取側のいずれでも、作業者が荷物を作業台等に置くことなく運搬作業を行えるようにしたのである。
【0008】
前記フットスイッチは、前記出し入れ口の周囲の建物内壁に収納することが好ましい。
【0009】
また、運転方法の発明では、上述した構成のダムウェーターのかごが停止していない階で前記フットスイッチを作動させたときは、前記かごをその階に呼んで停止させた後、前記かご戸およびその階の出し入れ口戸を開き、前記かごが停止している階で前記フットスイッチを作動させたときには、前記かご戸およびその階の出し入れ口戸の開閉を行うようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明のダムウェーターは、上述したように、かご戸および各階の出し入れ口戸を電動式とし、各階の出し入れ口の近傍に設けたフットスイッチで、かごを自階に呼んだり、かご戸および出し入れ口戸を開閉させたりできるようにしたものであるから、作業者が運搬作業の途中で荷物を作業台等に置くことなくスムーズに作業を行うことができる。また、従来よりも運搬作業の能率が向上するので、例えば厨房と食堂との間の料理の運搬等、特に運搬時間が短いことが望ましい用途に対して、有効に適用することができる。さらに、料理の運搬に適用した場合は、作業者が各戸に触れる必要がないこと、また料理を作業台等に置かなくてもよいことから、衛生面での改善も図れる。
【0011】
前記フットスイッチを出し入れ口の周囲の建物内壁に収納すれば、フットスイッチを誤作動させることが少なくなるし、出し入れ口周辺の見栄えも良くなる。
【0012】
また、運転方法の発明によれば、かごが停止していない階から荷物を送るときは、一度フットスイッチを作動させるだけで、かごを自階に呼んでかご戸と出し入れ口戸を開くことができるので、運搬作業がよりスムーズになる。さらに、フットスイッチは、作動時のかごの位置と各戸の状態に応じてかごの移動や各戸の開閉を操作できるようにしたので、かご呼び用や戸開閉用を別々に設ける必要がなく、誤操作のおそれがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。このダムウェーターは、図1に示すかご1を建物内に設けられた昇降路(図示省略)で昇降させて、かご1に載せた比較的小さい荷物を運搬するもので、かご1前面に形成された荷物出し入れ用の開口2を開閉する上下のかご戸3a、3bと、前記昇降路に通じるように建物の各階の内壁4にあけられた出し入れ口5を開閉する上下の出し入れ口戸6a、6bとが、電動で連動して開閉するようになっている。また、各階の出し入れ口5の周囲には、出し入れ口5を形成する三方枠7の前面に送り先階ボタン8aを有する操作盤8が設けられ、建物内壁4の床面9近傍位置にフットスイッチ10が設けられている。
【0014】
前記フットスイッチ10は、図2(a)に示すように、前面が開口したスイッチボックス11と、スイッチボックス11内に両側部を回動自在に取り付けられたスイッチ板12と、スイッチ板12の背面に取り付けられたレバー13と、レバー13を介してスイッチ板12を前面側へ回動させる方向に付勢するばね14と、スイッチ板12の前面側への回動を規制するストッパ15と、スイッチボックス11の奥側の内面の下部に取り付けられたスイッチ本体16とで構成されている。そして、図1に示したように、スイッチボックス11の開口の周縁に形成された張出部11aを除いて、全体が建物内壁4に収納されている。このため、足踏み式のペダルのようなフットスイッチを床に置く場合に比べて、誤って作動させる可能性が少ないし、出し入れ口5周辺の見栄えも良い。
【0015】
前記スイッチボックス11は、上面の幅方向中央部にばね14の一端を支持するばね押え板17が、背面の幅方向中央部にストッパ15がそれぞれ取り付けられており、ストッパ15取付位置の直上には、レバー13を通す孔11bがあけられている。また、前記スイッチ板12は、下端が背面側へコの字状に折り曲げられており、この折曲部の先端に突片12aがスイッチ本体16と対向するように設けられている。
【0016】
このフットスイッチ10では、通常は、図2(a)に示したように、スイッチ板12が、レバー13を介してばね14に付勢されるとともにストッパ15に回動を規制されて、スイッチボックス11の開口をほぼ塞いだ状態で支持されている。そして、図2(b)に示すように、作業者が足でスイッチ板12を押すと、スイッチ板12がレバー13とともにばね14の力に抗して回動し、その下端の突片12aがスイッチ本体16の突部16aを押し込むことにより、スイッチ本体16が作動する。なお、スイッチ本体の取付位置、取付方法や形状は、図2に示した例に限らず、種々の設計が可能である。
【0017】
また、図示は省略するが、スイッチ本体16はこのダムウェーターの制御装置に電気的に接続されており、後述するように、作動時のかご1の位置とかご戸3a、3bおよび出し入れ口戸6a、6bの状態に応じて、かご1の移動や各戸3a、3b、6a、6bの開閉が行われるようになっている。このため、かご呼び用や戸開閉用のスイッチを別々に設ける必要がなく、誤操作のおそれがない。
【0018】
図3および図4(a)、(b)は、フットスイッチ10の変形例を示す。この変形例では、スイッチボックス11の底部が前面の開口に向かって下方に傾斜しており、その内面の中央部にスイッチ本体16が取り付けられている。一方、スイッチ板12は、下半部が前面側へ折り曲げられており、その下面に突片12aがスイッチ本体16と対向するように設けられている。また、下半部の下面および上半部に形成されたコの字状の折曲部の背面には、それぞれストッパーゴム18が取り付けられ、スイッチボックス11内面に当接するときの衝撃が緩和されるようになっている。このスイッチ板12は、通常は、図4(a)に示すように、突片12aがスイッチ本体16と接触しないようにスイッチボックス11の奥側面に取り付けたばね14に支持されており、作業者に足で押されると、図4(b)に示すように、ばね14の力に抗して回動し、突片12aでスイッチ本体16の突部16aを押し込んでスイッチ本体16を作動させる。
【0019】
なお、フットスイッチは、上述したように作業者が足で機械的に作動させるものに限らず、例えば、スイッチボックス内に光学式のセンサを配し、作業者がスイッチボックスに足先を踏み入れることによって作動するようにしたもの等も採用することができる。
【0020】
次に、このダムウェーターの運転方法について説明する。このダムウェーターの制御装置は、建物のいずれかの階でフットスイッチを作動させると、図5に示すように、まず、フットスイッチが作動した階の識別(S1)と、かご位置の判別(S2)を行い、フットスイッチ作動階にかごが停止していないときは、かごをその階に移動させて停止させ(S3)、続いてかご戸とその階の出し入れ口戸を開く(S4)。一方、かごが停止している階でフットスイッチを作動させたときは、かご戸およびその階の出し入れ口戸の状態を判別して(S5)、これらの各戸が閉じていれば開き(S6)、開いていれば閉じる(S7)。
【0021】
また、図5には示していないが、安全性確保のため、かごの移動(S3)は、各階の出し入れ口戸およびかご戸が閉じた状態でなければ行われない。さらに、各階における各戸の閉動作(S7)の途中でフットスイッチを作動させたときは即座に開動作に切り替え、逆に開動作(S4、S6)の途中でフットスイッチを作動させたときは各戸を一旦開限まで開いてから閉動作に切り替える機能も組み込まれている。
【0022】
このダムウェーターでかごが停止していない階から荷物を送るときは、まず、フットスイッチを作動させることにより、かごを自階に呼んでかご戸と出し入れ口戸を開く。そして、荷物を搬入した後、再度フットスイッチを作動させて各戸を閉じ、送り先階ボタンを押して送り先の階へかごを移動させる。一方、荷物を受け取るときは、自階にかごが移動してきて停止しているので、フットスイッチを作動させて各戸を開き、荷物を搬出する。その後、次の運搬に備えて、再度フットスイッチを作動させて各戸を閉めておく。
【0023】
従って、送り側では、作業者が両手で荷物を持っていても、一度フットスイッチを作動させるだけで、かごを自階に呼んでかご戸と出し入れ口戸を開くことができるし、受取側では、かごから搬出した荷物を両手で持ったまま、フットスイッチを作動させて各戸を閉めておくことができる。このため、送り側と受取側のいずれでも、運搬作業の途中で荷物を一旦作業台等に置くことがなくなり、従来に比べて運搬作業がスムーズになって作業能率が向上する。また、厨房と食堂との間で料理を運搬する場合には、作業者が各戸に触れる必要がなく、料理を作業台等に置かなくてもよいので、衛生面での改善も図れる。
【0024】
なお、上述した実施形態では、荷物を持っていないとき(送り側での荷物搬入後および受取側での荷物搬出前)の各戸の開閉もフットスイッチで行うようにしたが、各戸の開閉を行う押しボタンをフットスイッチと別に操作盤に設け、荷物のないときや荷物を片手で持てるときは、この押しボタンを使用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態のダムウェーターの要部の外観斜視図
【図2】図1のダムウェーターのフットスイッチの縦断面図
【図3】図1のダムウェーターのフットスイッチの変形例の外観斜視図
【図4】図3のフットスイッチの縦断面図
【図5】図1のダムウェーターのフットスイッチ作動時の動作を説明するフローチャート
【符号の説明】
【0026】
1 かご
3a、3b かご戸
5 出し入れ口
6a、6b 出し入れ口戸
8 操作盤
8a 送り先階ボタン
10 フットスイッチ
11 スイッチボックス
12 スイッチ板
13 レバー
14 ばね
15 ストッパ
16 スイッチ本体
17 ばね押え板
18 ストッパーゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に設けられた昇降路を昇降するかごと、このかごの荷物出し入れ用の開口を開閉するかご戸と、前記昇降路に通じるように建物の各階の内壁にあけられた出し入れ口を開閉する出し入れ口戸とを備えたダムウェーターにおいて、前記かご戸および各階の出し入れ口戸を電動で開閉するものとし、前記各階の出し入れ口の近傍に、前記かごをそれぞれの階に呼んで停止させる操作と、前記かご戸およびそれぞれの階の出し入れ口戸を開閉させる操作とを行うフットスイッチを設けたことを特徴とするダムウェーター。
【請求項2】
前記フットスイッチを、前記出し入れ口の周囲の建物内壁に収納したことを特徴とする請求項1に記載のダムウェーター。
【請求項3】
請求項1または2に記載のダムウェーターの運転方法において、前記かごが停止していない階で前記フットスイッチを作動させたときは、前記かごをその階に呼んで停止させた後、前記かご戸およびその階の出し入れ口戸を開き、前記かごが停止している階で前記フットスイッチを作動させたときには、前記かご戸およびその階の出し入れ口戸の開閉を行うようにしたことを特徴とするダムウェーターの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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