説明

ダンコウバイ抽出物を有効成分として含有する血行改善組成物

本発明は、ダンコウバイ抽出物を有効成分として含有する血行改善組成物に関し、さらに詳しくは、ダンコウバイ抽出物を有効成分として含有する血行改善による血栓疾患の予防および治療用薬学組成物、並びに健康補助食品に関する。本発明のダンコウバイ抽出物および粗精製物は、水、エタノール、メタノール、ブタノールなどの様々な溶媒で抽出して得ることができ、抽出物および粗精製物は、試験管内で様々な凝集誘導により誘導された血小板凝集阻害効果に優れるだけでなく、生体内における急激な血栓生成阻害効果に優れるので、血栓塞栓症などのように血液循環障害に伴う疾患の予防および治療に有用に用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンコウバイ抽出物を有効成分として含有する血行改善組成物に関し、さらに詳しくは、ダンコウバイ抽出物を有効成分として含有する血行改善による血栓疾患の予防および治療用薬学組成物、並びに健康補助食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトは、傷口の治療と血液の損失を防ぐための生体システムを有しており、これは、血小板と血漿の凝固、繊維素の分解、そして凝固の抑制という複雑な過程の調節と均衡からなる。しかし、様々な要因によりこのような平衡状態が崩れると、血液の流れが妨害されて血栓疾患が生じ、組織の機能に障害が発生することとなる。
【0003】
血栓症(thrombosis)は、血管の内側に塊が生じたり血栓が生じたりして血液の流れが詰まることをいう。血管に傷がつくと、血管は収縮することとなり、傷口に表われたコラーゲン繊維(collagen gibrers)に血小板がくっついて血管収縮物質であるセロトニン(serotonin)とアデノシンジホスフェート(adenosine diphosphate、ADP)、そしてThromboxane A2を放出する。ADPは、より多くの血小板がくっつくようにし、Thromboxane A2は、血小板が凝集するように作用して、血管は収縮することとなる。このように、一次的に止血された後は、血液凝固作用(blood coagulation)がなされる。止血後に生成されたフィブリン(fibrin)は、繊維素溶解作用(fibrinolysis)により溶解されるが、tissue−type plasminogen activator(t−PA)とUrokinase(UK)は、plasminogenをプラスミン(plasmin)に切り替えてフィブリンを分解させる役割をする。このような血液凝集(blood coagulation)と繊維素分解(fibrinolysis)は、正常の場合は均衡をなしているが、この均衡が崩れた場合は、血管内に繊維素の塊が沈着し、血液循環障害が発生する血栓症が起きることとなる(非特許文献1)。
【0004】
血栓症は、動脈血栓症(atherothrombotic diseases)、静脈血栓症(Phlebothbombosis)、肝門脈血栓症(hepatic protal vein thrombitis)、肺動脈塞栓症(Pulmonary thromboembolism)、慢性静脈虚血(chronic limb ischemia)、下肢静脈瘤(Varicose vein)、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis diseases)、狭心症(angina pectoris)、脳梗塞(cerebral infarction)、脳出血(cerebral hemorrhage)等を引き起こし、また、感染または血管の損傷、手術後の合併症、凝固性疾患などを引き起こす。
【0005】
現在、血栓疾患の予防と治療には、抗血小板剤、抗凝固剤、形成された血栓を治療するための血栓溶解剤などが用いられているが、代表的な抗血小板製剤であるアスピリンは、効果は優れているが、胃腸管の出血と消化性潰瘍などの副作用を引き起こすものとして知られている。また、その他の抗凝固剤や高脂血症の治療剤として用いられる薬物は、ほとんど経口投与が不可能であり、血栓に対する選択性が少なく、長期間服用時に溶血現象、免疫反応、発熱、アレルギーなどの様々な副作用を示している。このような副作用と効能の不完全さにも拘わらず、市販の治療剤の価格が非常に高価であって、患者が容易に用い難いという問題点が浮上した。従って、血小板の活性化および凝固の抑制、血栓の溶解活性などの血栓生成の阻害に対する高い選択性を有し、副作用を最小化する治療剤の開発が強く求められている。
【0006】
一方、ダンコウバイ(Lindera obtusiloba)は、クスノキ科の落葉灌木である。高さは2〜3m程度成長し、開花期は3〜4月であり、結実期は9月である。実から油を絞って婦人の髪油として用い、葉や枝を折ればショウガの臭いがするといってショウガの木と呼び、ケドンベクの木若しくは黄梅木とも呼ばれる。活血、舒筋、消腫などの効能があり、打撲傷、うっ血腫痛に効くと知られており、主に搗いて傷口に付ける。主に腹痛に用い、解熱剤、せき止めとしても用いる。民間では解熱剤、せき止めとして葉と芽を茶のように煎じて飲む(非特許文献2;非特許文献3)。
【0007】
ダンコウバイの成分に関する研究としては、クォン・ハクチョルなど(非特許文献4)が、アクチフォリン(actifolin)、プルビアチロール(pluviatilol)、ジヒドロマタイレシノール(5,6−dihydromatairesinol)、(+)−シリンガレシノール((+)−syringaresinol)、トランスフェルロイル−ジメトキシラリシレシノール(9−0−trans−feruloyl−5,5−dimethoxylariciresinol)等を分離した。各分離された成分の効能としては、癌細胞の殺害作用、抗炎作用などが報告されている(非特許文献5)。
【0008】
上記文献のうち、ダンコウバイ抽出物に対する血小板凝集の阻害、血栓生成の阻害、治療および予防効果については何らの開示や教示も行われたところがない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Nesheim M.,Chest.,2003 Sep;124:33S−9S
【非特許文献2】大韓植物図鑑、イ・チャンボク、1980
【非特許文献3】韓国民間薬図鑑、パク・ジョンヒ、2005、郷薬大辞典
【非特許文献4】Archives of Pharmacal Research,22,p.417−422,1999
【非特許文献5】Planta Medica,69,610−616,2003;Archives of Pharmacal Research,22,p.417−422,1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、多数の植物抽出物を対象として血行改善剤について研究していたところ、ダンコウバイ抽出物の血小板凝集の阻害効能、生体内の血栓生成の阻害および予防効能が非常に優れていることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、上記のような発見に基づいて案出されたものであって、ダンコウバイ抽出物を有効成分として含有する血行改善による血栓疾患の予防および治療用薬学組成物を提供することに目的がある。
【0012】
本発明はまた、ダンコウバイ抽出物を有効成分として含有する血栓疾患の予防用健康機能食品を提供することをまた別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の血行改善による血栓の予防および治療用組成物は、上述したところのような目的を達成するために、ダンコウバイ抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。
【0014】
また、上記ダンコウバイ抽出物は、枝、葉、またはその混合物を抽出したものが好ましい。
【0015】
また、上記ダンコウバイ抽出物は、水、C乃至Cの低級アルコール、およびその混合物からなる群より選ばれた溶媒で抽出したものが好ましい。
【0016】
また、上記C乃至Cの低級アルコールは、メタノール、エタノール、またはブタノールであることが好ましい。
【0017】
また、上記ダンコウバイ抽出物は、30乃至95重量%のエタノール水溶液で抽出したものが好ましい。
【0018】
また、上記ダンコウバイ粗抽出物は、30乃至95℃で抽出することが好ましい。
【0019】
また、上記ダンコウバイ抽出物は、水、C乃至Cの低級アルコール、およびその混合物からなる群より選ばれた溶媒で抽出し、これをブタノールで再抽出することが好ましい。
【0020】
上記ダンコウバイ抽出物は、水、C乃至Cの低級アルコール、およびその混合物からなる群より選ばれた溶媒で抽出および濃縮して粗抽出物を得、上記粗抽出物を水に懸濁し、ヘキサン、酢酸エチル、およびブタノールの順に再抽出することが好ましい。
【0021】
また、上記粗抽出物:水は、1:5乃至25の体積割合で混合懸濁されることが好ましい。
【0022】
また、上記ダンコウバイ抽出物は、血小板凝集阻害活性を有することを特徴とする。
【0023】
また、上記ダンコウバイ抽出物は、生体内の血栓生成阻害活性を有することを特徴とする。
【0024】
また、上記血栓疾患は、動脈血栓症、静脈血栓症、肝門脈血栓症、肺動脈塞栓症、慢性静脈虚血、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症、狭心症、脳梗塞、脳出血、手術後の血管合併症、および凝固性疾患からなる群より選ばれたものであり得る。
【0025】
一方、本発明の血行改善による血栓疾患の予防用健康機能食品は、ダンコウバイ抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
上述したとおり、本発明のダンコウバイ抽出物は、試験管内で様々な凝集誘導により誘導された血小板凝集阻害効果に優れるだけでなく、生体内における急激な血栓生成阻害効果に優れるので、血栓塞栓症などのように血液循環障害に伴う疾患の予防および治療に有用に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】血小板凝集誘導剤としてコラーゲンを用いた場合、本発明の一実施例による抽出物の血小板凝集阻害効果を比較したグラフ。
【図2】血小板凝集誘導剤としてADPを用いた場合、本発明の一実施例による抽出物の血小板凝集阻害効果を比較したグラフ。
【図3】ダンコウバイ抽出物の細胞毒性の程度を測定した図面。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい具現例について詳しく説明する。また、下記の説明では、具体的な構成要素などのような多くの特定事項が示されているが、これは、本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものであるだけで、このような特定事項がなくても本発明が実施され得ることは、この技術の分野における通常の知識を有する者にとっては自明であると言える。また、本発明を説明するにあたり、関連した公知機能若しくは構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不要に不明瞭にする可能性があると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
【0029】
本発明のダンコウバイ抽出物は、下記のように得られる。
上記ダンコウバイの地上部、さらに具体的に葉と枝は、採取したもの、養殖したもの、または市販されているものなどを制限なく用いることができ、抽出のための溶媒は、水、C乃至Cの低級アルコール、およびその混合物からなる群より選ばれる。本発明者らは、ダンコウバイの枝と葉を水で洗って異物および塩分を除去して乾燥した後、ダンコウバイの試料重量の約5乃至50倍、好ましくは10乃至30倍に達する体積の水およびメタノール、エタノール、ブタノールなどのようなC1乃至C5の低級アルコールの極性溶媒、またはこれらの約1:0.1乃至1:10の混合比を有する混合溶媒で、好ましくは30乃至95重量%のエタノール水溶液で、50乃至95℃で1時間乃至7日間抽出する過程を2乃至5回、好ましくは3回繰り返して行う。または、このような水または低級アルコール水溶液で抽出した後、ブタノールで再抽出することがさらに好ましい。次に、上記抽出物を減圧濃縮および/または凍結乾燥し、ダンコウバイ粗抽出物を得ることができる。
【0030】
また、本発明の抽出物のうち、非極性溶媒の可溶抽出物は、上記粗抽出物を蒸溜水に懸濁した後、これを懸濁液の約0.1乃至100倍、好ましくは約1乃至5倍体積のヘキサン、酢酸エチル、クロロホルムのような非極性溶媒を加えて1回乃至10回、好ましくは2回乃至5回非極性溶媒で抽出、分離することによって得ることができる。また、さらに通常の分画工程を行うこともできる(Harborne.J.B.,Phytochemical methods:A guide to modern techniques of plant analysis,3rd Ed.,pp.6−7,1998)。
【0031】
さらに好ましくは上記工程で得られたダンコウバイ粗抽出物、好ましくはダンコウバイエタノール水溶液抽出物に、n−ブタノール、ヘキサン、酢酸エチルなどの有機溶媒を極性の低い溶媒から極性の高い溶媒の順に、好ましくはヘキサン、酢酸エチル、およびn−ブタノールの順に順次溶媒分画、減圧濃縮してダンコウバイヘキサン、酢酸エチル、n−ブタノールの分画物を得ることができる。
【0032】
本発明は、上記の製法で得られたダンコウバイ抽出物、粗抽出物、非極性溶媒の可溶抽出物または分画物を有効成分として含有する血栓疾患の予防および治療用薬学組成物を提供する。
【0033】
本発明による血栓疾患の予防および治療用薬学組成物は、組成物の総重量に対し、上記抽出物0.1乃至99重量%を含む。
【0034】
本発明のダンコウバイ抽出物を含む組成物は、組成物の製造に通常用いる適切な担体、賦形剤、および希釈剤をさらに含むことができる。
【0035】
本発明の抽出物の薬学的な投与形態は、これらの薬学的に許容可能な塩の形態で用いられることもでき、また、単独でまたは他の薬学的な活性化合物と結合のみながず、適当な集合として用いられることもできる。
【0036】
本発明による抽出物を含む薬学組成物は、それぞれ通常の方法により散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾールなどの経口型の剤形、外用剤、坐剤、および滅菌注射溶液の形態で剤形化して用いられ得る。
【0037】
抽出物を含む組成物に含まれ得る担体、賦形剤、および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、未結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート、および鉱物油が挙げられる。
【0038】
製剤化する場合は、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製される。
【0039】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、上記抽出物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチン、未結晶セルロースなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も用いられる。
【0040】
経口投与のための液状製剤としては、懸濁液、内用液剤、油剤、シロップ剤などが該当するが、よく用いられる単純な希釈剤である水、流動パラフィン以外に、いろいろな賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。
【0041】
非経口投与のための製剤には、滅菌した水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、油剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが用いられ得る。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)類、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが用いられ得る。
【0042】
本発明の抽出物の好ましい投与量は、患者の状態および体重、疾病の重篤度、薬物形態、投与経路、および期間によって異なるが、当業者により適切に選ばれ得る。しかし、好ましい効果のために、本発明の抽出物は、1日当り0.0001乃至100mg/kg、好ましくは0.001乃至100mg/kgで投与した方が良い。投与は、一日に一回投与することもでき、数回に分けて投与することもできる。上記投与量は、如何なる面からも本発明の範囲を限定するものではない。
【0043】
本発明は、血栓疾患の予防効果を示す上記抽出物および食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含む健康機能食品を提供する。
【0044】
ダンコウバイ抽出物を添加することができる健康機能食品としては、例えば、各種の一般食品類、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤などがある。
【0045】
また、上記ダンコウバイ抽出物は、血栓生成の予防を目的として食品または飲料に添加され得る。このとき、食品または飲料中の上記抽出物の量は、全食品重量の0.01乃至15重量%で加えることができ、健康飲料組成物は、100gを基準に0.02乃至5g、好ましくは0.3乃至1gの割合で加えることができる。
【0046】
本発明の健康機能性飲料組成物は、指示された割合で必須成分として上記抽出物を含有する他に、別の成分には特別な制限がなく、通常の飲料のようにいろいろな香味剤または天然炭水化物などの追加成分を含有することができる。上述した天然炭水化物の例としては、単糖、例えば、ブドウ糖、果糖など;二糖、例えば、マルトース、スクロースなど;および多糖、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。上述したもの以外の香味剤として、天然香味剤であるタウマチン、ステビア抽出物、例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど;および合成香味剤、例えば、サッカリン、アスパルテームなどを有利に用いることができる。上記天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100g当り、一般的に約1乃至20g、好ましくは約5乃至12gである。
【0047】
上記の他に、本発明の抽出物は、いろいろな栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成および天然の風味剤、着色剤および充填剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含有することができる。その他に、本発明の抽出物は、天然果物ジュース、果物ジュース飲料、および野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。このような成分は、独立してまたは組み合わせて用いることができる。このとき、添加剤の割合はそれほど重要ではないが、本発明の抽出物100重量部当り0.01乃至約20重量部の範囲で選ばれるのが一般的である。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を下記の実施例および試験例に基づいてより具体的に説明する。
【0049】
実施例1:ダンコウバイ粗抽出物の製造
韓国の江原道地域で採取したダンコウバイの枝と葉を水で洗って異物および塩分を除去した後、乾燥して粉砕し、抽出容器にダンコウバイの枝および葉それぞれ25gと70重量%のエタノール水溶液全500mlを加えて還流冷却しながら70℃で3時間ずつ3回繰り返して加熱抽出した後、ろ紙でろ過し、そのろ液を40℃の水浴上で減圧濃縮および凍結乾燥し、ダンコウバイの小枝の粗抽出物6.4gおよびダンコウバイの葉の粗抽出物7.0gを得た。
【0050】
実施例2:ダンコウバイ粗抽出物の分画物の製造
実施例1で得たダンコウバイの葉と枝それぞれの粗抽出物5gを50mlの精製水に懸濁した後、50mlのヘキサン、酢酸エチル、およびn−ブタノールの順に順次溶媒分画を各3回行って各溶媒分画を得、これを減圧濃縮してダンコウバイのヘキサン、酢酸エチル、n−ブタノール分画物を得た。
【0051】
試験例1:ダンコウバイ抽出物の血小板凝集阻害効果の測定
1−1.実験動物および洗浄血小板(washed Platelet)の用意
ラット(rat)をエチルエーテル(ethyl ether)で麻酔し、抗凝固剤0.15Mのクエン酸ナトリウム(sodium citrate)を血液と1:9(v/v)の割合になるように含有した注射器で腹大動脈から採血した。Platelet rich plasma(PRP)は、200 xgで10分間遠心分離して上澄み液のPRPを得、次に、800 xgで15分間遠心分離し、沈殿した血小板を洗浄緩衝液(washing buffer.137mM NaCl、2.9mM KCl、1mM MgCl、5mM glucose、12mM NaHCO、0.34mM NaHPO、1mM EDTA、20mM HEPES、0.25% BSA、pH7.4)で2回洗浄した後,懸濁緩衝液(suspension buffer.137mM NaCl、2.9mM KCl、1mM MgCl、5mM glucose、12mM NaHCO、0.34mM NaHPO、20mM HEPES、0.25% BSA、pH7.4)に懸濁させて洗浄血小板を用意した。血小板凝集阻害能に用いた洗浄血小板細胞計数器(cell counter.Hema−vet HV950FS、Drew Scientific、USA)を用いて血小板の数を計測し、緩衝液で希釈して血小板が3×10血小板/mlになるように調整した。血小板は、低温で凝集するので、以上の実験は常温で行った。
【0052】
1−2.血小板凝集程度の測定
ラットの血小板凝集阻害能は、Aggregometer(Chrono−Log Co.,Ltd.、Havertown、PA、USA)を用いた濁度測定法で測定した。洗浄血小板を37℃で3分間培養させた後、濃度別に試料を処理し、2分後、血小板の凝集を誘導する物質ADP(22μM)、コラーゲン(20μg/ml)で凝集を誘導し、10分間測定した後に阻害の程度を計算した。阻害の程度は、試料を処理していないものを対照群とし、下記のような方法で求めた。
阻害の程度=[(A−B)/A]×100
A:controlのaggregation%
B:sample処理時のaggregation%
【0053】
【表1】

【0054】
上記から見られるように、ダンコウバイの枝の抽出物のコラーゲンにより誘導された血小板凝集阻害効果の場合、0.1mg/ml、0.3mg/ml、1mg/mlにおいて、それぞれ−7.41、83.33、87.04%を示し、このとき、IC50(Inhibitory concentration of 50% 50%)値が0.28μg/mlと非常に低く確認された。また、ダンコウバイ抽出物のADPにより誘導された血小板凝集阻害効果の場合、0.1mg/ml、0.3mg/ml、1mg/mlにおいて、それぞれ15.91、68.18、81.82%を示し、このとき、IC50値が0.26μg/mlと非常に低く確認された。ダンコウバイの葉の抽出物のコラーゲンにより誘導された血小板凝集阻害効果の場合、0.1mg/ml、0.3mg/ml、1mg/mlにおいて、それぞれ7.41、57.41、88.89%を示し、このとき、IC50値が0.28μg/mlと概ね低く確認された。また、ダンコウバイ抽出物のADPにより誘導された血小板凝集阻害効果の場合、0.1mg/ml、0.3mg/ml、1mg/mlにおいて、それぞれ9.09、54.55、95.45%を示し、このとき、IC50値が0.28μg/mlと概ね低く確認された。全体的にダンコウバイの枝および葉の抽出物は、現在の血栓生成阻害剤として用いられているアスピリンよりも効能が高いことを確認した。ここで、IC50は、血小板の凝集を50%阻害する濃度の値であって、値が小さいほど阻害力が高い。
【0055】
上記の結果は、ダンコウバイの枝および葉の抽出物のコラーゲン、ADPにより誘導された血小板凝集阻害効果を示した図1および図2からも確認することができる。
【0056】
試験例2:ダンコウバイ抽出物の血栓塞栓症阻害効能の測定
動物の実験的な血栓誘導は、Diminnoなどの実験方法に準じた。マウスの尾静脈に血小板凝集誘導剤を注射すれば、短時間で肺動脈に大量の血栓の形成が誘導されて動物が死亡することとなるが、これを回復することができるかを観察することによって血栓生成の阻害の程度を測定する。血小板凝集誘導剤のコラーゲン(collagen. Chrono−Log)とエピネフリン(epinephrine. Chrono−Log)との混合溶液(20μg/mouse+2μg/mouse)が200μlの生理食塩水に含有されるように調製し、マウスの尾静脈に注射した。抗血栓効果を調べるために、血小板凝集誘導剤を注射する1時間前に薬剤懸濁液または生理食塩水を体重に比例して経口投与した。抗血栓効果は、血小板凝集誘導剤の注射により発生するマウスの後足の麻痺や死亡から保護された実験動物数の百分率で計算した。注射後、15分以上麻痺の持続、死亡、または麻痺からの回復の有無を観察し、試料の抗血栓効果を判定した。生存率(%)は、各グループ別に下記のような方法で求めた。
生存率(%)=(D/C)×100
C:コラーゲンの投与が正確に行われた個体数
D:C個体数のうち、生存した個体数
【0057】
【表2】

【0058】
上記から見られるように、ダンコウバイの枝、葉の抽出物の血栓塞栓症阻害効果の場合、生存率(%)がそれぞれ51、48%を示し、対照群と比較して25〜30%程度高い生存率であって、ダンコウバイの枝または葉の抽出物が、血栓塞栓症に相当な効果を有することを確認することができた。
【0059】
試験例3:ダンコウバイ抽出物の細胞毒性テスト
上記実施例1により製造されたダンコウバイ粗抽出物の細胞毒性の程度を比較し、その結果は、図3のとおりである。
血管動脈平滑筋細胞をMEM(minimum essential medium)と10%のFBS(Fetal bovine serum)溶液と混合し、24時間5%のCO/37℃の条件で培養した。細胞が安定化した後、上記実施例1で得たダンコウバイの抽出物を処理して振とうした後、24時間反応させた。以後、MTS溶液(cellTiter 96 Aqueous One Solution、promega)を入れて1時間培養した後、490nmで吸光度を測定した。
上記図3に示されているように、本発明のダンコウバイ抽出物は、細胞の生存に如何なる影響も観察することができず、非常に安全な薬物であることが分かる。
【0060】
試験例4:統計処理
試験結果の有意性は、実験結果をスチューデントt−テストおよび一元配置分散分析(one−way ANOVA test)を通じてpが0.05以下である場合に有意な差と判定した。
【0061】
下記に本発明の抽出物を含む薬学組成物および健康機能食品の製剤例を説明するが、本発明は、これを限定しようとするものではなく、単に具体的に説明しようとするものである。
【0062】
製剤例1:散剤の製造
ダンコウバイ抽出物の粉末 20mg
乳糖 100mg
タルク 10mg
上記の成分を混合し、気密布に充填して散剤を製造した。
【0063】
製剤例2:錠剤の製造
ダンコウバイ抽出物の粉末 10mg
コーンスターチ 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
上記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法により打錠して錠剤を製造した。
【0064】
製剤例3:カプセル剤の製造
ダンコウバイ抽出物の粉末 10mg
結晶性セルロース 3mg
ラクトース 14.8mg
マグネシウムステアレート 2mg
通常のカプセル剤の製造方法により上記の成分を混合し、ゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0065】
製剤例4:注射剤の製造
ダンコウバイ抽出物の粉末 10mg
マンニトール 180mg
注射用滅菌蒸溜水 2,794mg
通常の注射剤の製造方法により1アンプル(2ml)当り上記の成分の含量で製造した。
【0066】
製剤例5:液剤の製造
ダンコウバイ抽出物の粉末 10mg
異性化糖 10g
マンニトール 5g
精製水 適量
通常の液剤の製造方法により精製水にそれぞれの成分を加えて溶解させ、レモン香を適量加えた後、上記の成分を混合した後、精製水を加えて全体を100mlに調節し、茶色瓶に充填して滅菌させて液剤を製造した。
【0067】
製剤例6:健康飲料の製造
ダンコウバイ抽出物の粉末 10mg
ビタミンC 15g
ビタミンE(粉末) 100g
乳酸鉄 19.75g
酸化亜鉛 3.5g
ニコチン酸アミド 3.5g
ビタミンA 0.2g
ビタミンB1 0.25g
ビタミンB2 0.3g
水 適量
通常の健康飲料の製造方法により上記の成分を混合した後、約1時間85℃で撹拌加熱後、製造された溶液をろ過し、滅菌した2Lの容器に取得して密封滅菌した後、冷蔵保管して本発明による健康飲料組成物の製造に用いた。上記組成比は、比較的嗜好飲料に好適な成分を好ましい実施例として混合して組成したが、需要階層や需要国家、使用用途など、地域的、民族的嗜好度によってその配合比を任意に変形して実施しても構わない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンコウバイ抽出物を有効成分として含有する血栓疾患の予防および治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記ダンコウバイが、枝、葉、およびその混合物からなる群より選ばれたものであることを特徴とする、請求項1に記載の血栓疾患の予防および治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記ダンコウバイ抽出物が、水、C乃至Cの低級アルコール、およびその混合物からなる群より選ばれた溶媒で抽出したものであることを特徴とする、請求項1に記載の血栓疾患の予防および治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記ダンコウバイ抽出物が、30乃至95重量%のエタノール水溶液で抽出したものであることを特徴とする、請求項3に記載の血栓疾患の予防および治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記ダンコウバイ抽出物が、水、C乃至Cの低級アルコール、およびその混合物からなる群より選ばれた溶媒で抽出し、これをブタノールで再抽出したものであることを特徴とする、請求項3に記載の血栓疾患の予防および治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記ダンコウバイ抽出物が、水、C乃至Cの低級アルコール、およびその混合物からなる群より選ばれた溶媒で抽出および濃縮して粗抽出物を得、前記粗抽出物を水に懸濁し、ヘキサン、酢酸エチル、およびブタノールの順に再抽出したものであることを特徴とする、請求項3に記載の血栓疾患の予防および治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記ダンコウバイ抽出物が、血小板凝集阻害活性を有することを特徴とする、請求項1に記載の血栓疾患の予防および治療用薬学組成物。
【請求項8】
前記ダンコウバイ抽出物が、生体内の血栓生成の抑制および予防活性を有することを特徴とする、請求項1に記載の血栓疾患の予防および治療用薬学組成物。
【請求項9】
前記血栓疾患が、動脈血栓症、静脈血栓症、肝門脈血栓症、肺動脈塞栓症、慢性静脈虚血、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症、狭心症、脳梗塞、および脳出血からなる群より選ばれたものであることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の血栓疾患の予防および治療用薬学組成物。
【請求項10】
ダンコウバイ抽出物を有効成分として含有する血栓疾患の予防用健康機能食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−511513(P2013−511513A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539814(P2012−539814)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/KR2010/008182
【国際公開番号】WO2011/062436
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(510198468)ハン・ワ・ファーマ・カンパニー・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】HAN WHA PHARMA CO., LTD.
【出願人】(598076144)ヤン ジ ケミカル カンパニー リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】YANG JI CHEMICAL CO., LTD.
【Fターム(参考)】