説明

ダンパ付きスライドヒンジ

【課題】 躯体側取付部材の先端部に突出部が設けられスライドヒンジにダンパ機能を備えさせる。
【解決手段】躯体側取付部材24の先端部に突出部24aが設けられ、この突出部24aに躯体側取付部材24と扉側取付部材27とを回動可能に連結する一対のリンク25,26の各一端部が回動可能に設けられたスライドヒンジ1において、躯体側取付部材24には、当接部材4を設ける。当接部材4には、突出部24aの先端面24bの後方延長上に位置する当接面41を設ける。扉側取付部材27には、ダンパ装置3を設ける。ダンパ装置3の従動部材35は、扉側取付部材27が所定の前当接位置を越えて閉回動するのに伴って、先端面24b及び当接面41上を順次摺動するとともに、それらの面24b,41によって後退移動させられる。従動部材35の後退移動速度は、ダンパ装置3のダンパ機構部によって低速に抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダンパ装置を備えたダンパ付きスライドヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、家具等に用いられるスライドヒンジは、家具の躯体の内側面に取り付けられる躯体側取付部材と、この躯体側取付部材に一対のリンクを介して閉位置と開位置との間を水平方向へ回動可能に連結され、家具の扉の背面に固定される扉側取付部材と、この扉側取付部材が閉位置と開位置との間の所定の中立位置と閉位置との間に位置すると、扉側取付部材を閉位置に向って回動付勢する回動付勢手段とを備えている。このようなスライドヒンジにおいては、扉を開位置から閉位置に向って中立位置まで閉回動させると、その後は扉が回動付勢手段によって閉位置まで閉回動させられる。扉は、閉位置に達したときには比較的高速になっている。扉が高速で閉位置まで回動すると、家具としての格調が低くなってしまうという問題がある。また、扉が躯体に高速で衝突して大きな打撃音が発生するという問題がある。
【0003】
そこで、最近ではダンパ装置を備えたダンパ付きスライドヒンジが多用されている。ダンパ付きスライドヒンジは、下記特許文献1に記載されているように、扉側取付部材にダンパ装置が設けられている。ダンパ装置は、進退可能な可動部材と、この可動部材の後退速度を低速に抑えるダンパ機構部とを有しており、扉が閉位置から中立位置を越えて所定の当接位置に達すると、可動部材が躯体側取付部材の先端部に突き当たる。その後、可動部材は、扉の閉位置側への回動に伴って躯体側取付部材上を後端側に向って摺動するとともに、躯体側取付部材によって後退移動させれられる。このとき、可動部材の後退移動がダンパ機構によって低速に抑えられ、扉の閉回動速度が低速に抑えられる。この結果、家具としての高級感が得られる。また、扉の躯体への衝突時に大きな打撃音が発生することを防止することができる。
【0004】
ところで、スライドヒンジには、下記特許文献2に記載のように、躯体側取付部材の先部に突出部が設けられたものがある。突出部は、一対のリンクの回動軸線方向と、躯体側取付部材の先端部と後端部とを結ぶ方向との両方向に対して直交する方向に突出させられている。つまり、躯体側取付部材が取り付けられた躯体の一方の内側面から他方の内側面に向って突出させられている。そして、突出部に一対のリンクが回動可能に設けられている。これにより、扉が開位置に回動したときに、扉を一方の内面側から他方の内側面側へ向う方向においてできる限り前方に位置させるようにしている。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3129172号公報
【特許文献2】実開昭63−75277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
突出部を有するスライドヒンジにおいても、ダンパ装置を取り付けることが要望されている。そのようなスライドヒンジにダンパ装置を設けた場合には、可動部材が突出部の先端面に突き当たり、扉の閉回動に伴って突出部の先端面上を後端側に摺動する。ところが、可動部材は、扉が閉位置に達する前に突出部の先端面から後端側に外れてしまう。したがって、その後はダンパ効果が得られなくなってしまう。また、スライドヒンジによっては、可動部材を突出部に突き当てるように設計することができないこともある。いずれにしても、突出部を有するスライドヒンジの場合には、ダンパ効果を得るようにダンパ装置を取り付けることができない。このため、突出部を有する従来のスライドヒンジには、ダンパ装置を備えたものがなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の問題を解決するために、躯体側取付部材と、この躯体側取付部材の先端部に一対のリンクを介して閉位置と開位置との間を回動可能に連結された扉側取付部材と、上記扉側取付部材を上記閉位置と上記開位置との間の所定の中立位置から上記閉位置まで回動させる回動付勢手段とを備え、上記躯体側取付部材の先端部には、上記一対のリンクの回動軸線方向と、上記躯体側取付部材の先端部と後端部とを結ぶ方向との両方向に対して直交する方向に突出する突出部が形成され、この突出部に上記一対のリンクが回動可能に取り付けられたスライドヒンジにおいて、上記躯体側取付部材には、当接部材が設けられ、この当接部材には、上記突出部の突出方向を向く当接面が設けられ、上記扉側取付部材には、移動可能な可動部材及びこの可動部材の移動速度を低速に抑えるダンパ機構を有するダンパ装置が設けられ、上記扉側取付部材の上記中立位置から上記閉位置側への閉回動時に、上記扉側取付部材が上記閉位置から所定の角度だけ手前の当接位置に達すると、上記可動部材が上記当接部材の当接面に接触し、上記扉側取付部材の上記当接位置から上記閉位置までの閉回動に伴って、上記可動部材が上記当接面上を後端側へ向って摺動するととともに、上記当接面によって移動させられることを特徴としている。
この場合、上記扉側取付部材の上記閉回動時に上記扉側取付部材が上記当接位置から所定の角度だけ手前の前当接位置に達すると、上記可動部材が上記突出部の先端面に接触し、上記扉側取付部材の上記前当接位置から上記閉位置側への回動に伴って、上記可動部材が上記突出部の先端面上を後端側へ向って摺動するとともに、上記先端面によって移動させられ、上記当接面の少なくとも上記突出部に隣接する先端部が上記突出部の先端面の後方延長上に配置され、上記扉側取付部材が閉回動して上記当接位置に達すると、上記可動部材が突出部の先端面から上記当接部材の上記当接面上に乗り移って当該当接面上を摺動することが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、扉側取付部材がその閉回動時に所定の当接位置に達すると、可動部材が当接部材の当接面に接触する。その後、扉側取付部材が当接位置から閉位置まで閉回動するときには、可動部材が当接面上を摺動するとともに、当接面によって移動させられる。このとき、可動部材の移動速度がダンパ機構によって低速に抑えられる。したがって、躯体側取付部材に突出部が設けられたスライドヒンジにおいても、ダンパ装置を取り付けることができ、そのダンパ装置によって閉位置近傍での扉側取付け部材の閉回動速度を低速に抑えることができる。
また、可動部材を突出部の先端面に接触させるようにした場合には、可動部材が突出部の先端面から当接部材の当接面に乗り移るまでの間に扉が閉回動する角度分だけ扉の回動速度が低速に抑えられる角度範囲を広くすることができる。さらに、当接面が先端面の延長上に位置しているので、可動部材が突出部の先端面から当接部材の当接面に円滑に乗り移ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、この発明に係るダンパ付きスライドヒンジ1が用いられた家具Aを示す.家具Aは、前面部が開口した直方体状の躯体Bと、この躯体Bの開口部を開閉する板状の扉Cとを備えている。扉Cは、その一側部(図1において左側部)が躯体Bの一側部に二つのダンパ付きスライドヒンジ1,1(下側のスライドヒンジ1については、後述するダンパ装置3が省略されている。)を介して水平方向へ回動可能に支持されている。扉Cは、躯体Bの開口部を閉じた閉位置と、この閉位置からほぼ90°離れた図1に示す開位置との間を回動可能である。スライドヒンジ1は、家具A以外のものにも適用可能である。
【0010】
ダンパ付きスライドヒンジ1は、図2〜図4に示すように、ヒンジ部2、ダンパ装置3及び当接部材4を備えている。
【0011】
ヒンジ部2は、基部21を有している。この基部21は、躯体Bの一側部内面(図1において、左側部内面。以下、上下及び前後左右は、図1における上下及び前後左右を意味するものとする。)に固定されている。基部21には、第1中間部材22が上下方向(図3において、図面の表裏方向)へ位置調節可能に設けられ、ボルトB1によって固定されている。第1中間部材22には、第2中間部材23が公知の取付構造により着脱可能に取り付けられている。第2中間部材23には、長手方向を前後方向(図3において、左右方向)に向けた躯体側取付部材24が前後方向へ位置調節可能に設けられており、ボルトB2によって固定されている。第2中間部材23の先端部と躯体側取付部材24の先端部との間には、調節ねじB3が設けられている。この調節ねじB3によって躯体側取付部材24の先端部が左右方向(図3において上下方向)へ位置調節されるようになっている。したがって、躯体側取付部材24は、躯体Bに対して着脱可能である。しかも、躯体側取付部材24の少なくとも先端部は、躯体Bに対し上下及び前後左右方向へ位置調節可能である。躯体側取付部材24は、躯体Bに直接固定してもよい。
【0012】
躯体側取付部材24の先端部(躯体Bの前側に位置する端部)は、突出部24aが形成されている。この突出部24aは、躯体Bの一側部から他側部へ向う方向、つまり右方に向かって水平に突出している。この突出部24aには、一対のリンク25,26の一端部が、軸線を上下方向に向けた軸S1,S2を介して水平方向へ回動可能に連結されている。ここで、軸S1,S2の軸線方向及び躯体側取付部材24の前後方向を用いて突出部24aの突出方向を定義すると、突出部24aは、軸S1,S2の軸線方向と、躯体側取付部材24の先端部と後端部とを結ぶ方向との両方向に対して直交する方向に突出している。突出部24aの先端面24bは、後方へ向うにしたがって躯体Bの一側部内面に接近するように若干傾斜させられている。先端面24bは、逆向きに傾斜させてもよく、あるいは一側部内面と平行に延びる平面としてもよい。
【0013】
一対のリンク25,26の他端部は、扉側取付部材27に軸S1,S2と平行な軸S3,S4を介して回動可能に連結されている。この結果、扉側取付部材27が躯体側取付部材24に水平方向へ回動可能に支持されている。扉側取付部材27は、扉Cの背面の左側部に固定されている。したがって、扉Cの左側部は、躯体Bの左側部にヒンジ部2を介して水平方向へ回動可能に支持されている。これから明らかなように、扉側取付部材27と扉Cとは、一体に回動する。そこで、両者の回動位置には、同一の名称を付すものとする。
【0014】
図3及び図8に示すように、扉C(扉側取付部材27)が開位置に回動すると、リンク25が軸S4に突き当たる。これによって、扉Cの開位置が定められている。図11に示すように、扉Cが閉位置に回動すると、リンク26が軸S3に突き当たる。これによって、扉Cの閉位置が定められている。扉Cの開位置及び閉位置は、公知の他の方法によって、例えば扉Cを躯体Bに突き当てることによって定めてもよい。
【0015】
一対のリンク25,26の少なくとも一方と躯体側取付部材24との間には、コイルばね等の弾性部材からなる回動付勢手段(図示せず)が周知の態様で設けられている。この回動付勢手段は、扉Cが閉位置と開位置との間の所定の中立位置、例えば閉位置から開位置へ向って45°だけ離れた位置と、閉位置との間に位置しているときには、一方のリンクを介して扉Cを閉位置側へ回動付勢して閉位置まで回動させる。逆に、扉Cが中立位置と開位置との間に位置しているときには、一方のリンクを介して扉Cを開位置側へ回動付勢して開位置まで回動させる。
【0016】
躯体側取付部材24には、当接部材4が着脱可能に固定されている。当接部材4は、突出部24aより後端側に配置されており、突出部24aの突出方向を向く躯体側取付部材24の外面を覆っている。当接部材4の右方(突出部24aの突出方向)を向く面の先端部には、当接面41が形成されている。この当接面41は、突出部24aの先端面24bの後方延長上に位置するように配置されている。したがって、当接面41は、先端面24bと同一方向へ同一角度で傾斜している。しかも、当接面41の先端縁(突出部24aに隣接する端縁)は、当接面41が先端面24bから僅かに後方へ離間している分だけ先端面24bの後端縁より左側に位置している。当接面41の先端縁は、先端面24bにできる限り接近させることが望ましく、先端面24bの後端縁に接触させることが特に望ましい。そのようにした場合には、当接面41の先端縁が、先端面24bの後端縁と左右方向において同一位置に配置される。また、当接面41は、上下方向においては突出部24aの先端面24bとほぼ同一位置に配置されている。
【0017】
当接部材4には、これを左右方向に貫通する二つの貫通孔42,43が形成されている。一方の貫通孔42は、当接部材4の後端部に配置され、ボルトB2と対向している。他方の貫通孔43は、当接面41に形成されており、ボルトB3と対向している。したがって、貫通孔42,43からドライバ等のねじ回し工具を挿入してボルトB2,B3をそれぞれ回動操作することができる。これにより、当接部材4を躯体側取付部材24に取り付けた状態で、躯体側取付部材24を前後方向及び左右方向へ位置調節することができる。勿論、当接部材4のボルトB1と対向する箇所にも貫通孔を形成し、この貫通孔を通してボルトB1を回動操作するようにしてもよい。
【0018】
ダンパ装置3は、ハウジング31を有している。ハウジング31は、ボルト等の固定手段(図示せず)により扉Cの背面に着脱可能に取り付けられている。しかも、ハウジング31は、その一端部(扉Cを開位置に位置させたときに躯体B側に位置する端部)が扉側取付部材27に係脱可能に係合されており、それによって位置決めされている。
【0019】
ハウジング31には、収容孔31aが形成されている。この収容孔31aは、扉Cを開位置に回動させたときにほぼ前後方向に延びるように配置されている。したがって、扉Cを閉位置に回動させたときには、左右方向に延びることになる。扉Cを開位置に回動させたときに躯体B側に位置する収容孔31aの一端部は開口しており、他端部は底部31bによって閉じられている。
【0020】
収容孔31aには、その開口部からダンパユニット32が挿入されている。ダンパユニット32は、シリンダ(可動部材)33とロッド34とを有している。シリンダ33は、図3において左側に位置する一端部を除く大部分が収容孔31aの開口部側の端部に移動可能に収容されている。ロッド34は、収容孔31aの底部31b側の端部に収容されている。ロッド34の一端部は、シリンダ33にその長手方向へ移動可能に収容されている。ロッド34の他端部は、シリンダ33から突出しており、収容孔31aの底部31bに突き当たっている。したがって、ロッド34は、移動することがなく、シリンダ33がロッド34に対して移動する。
【0021】
シリンダ33の内部には、ダンパ機構部(図示せず)が設けられている。ダンパ機構部は、少なくともシリンダ33がロッド34に対して底部31b側へ移動(以下、後退移動という。)するときに、その移動速度を低速に抑える。また、底部31b側へ後退移動したシリンダ33を図4に示す初期位置まで移動(以下、前進移動という。)させる。
【0022】
シリンダ33には、従動部材35が着脱可能に取り付けられている。従動部材35には、筒部35aが形成されている。この筒部35aは、扉Cを開位置に回動させたときに前後方向に延びるように配置されている。筒部35aの躯体B側に位置する一端部は開口し、他端は底部35bによって閉じられている。筒部35aには、シリンダ33の先端部が挿脱可能に挿入されている。しかも、シリンダ33は、筒部35aに所定の大きさの摩擦抵抗をもって挿入されるのみならず、底部35bに突き当たっている。したがって、従動部材35は、シリンダ33と一体に前進後退移動する。
【0023】
筒部35aの一側部、つまり図11に示すように、扉Bが閉位置に回動したときに躯体Bの後端側を向く側部には、当接部35cが一体に設けられている。当接部35cは、図9に示すように、扉B(扉側取付部材27)が開位置から閉位置に向って閉回動する場合において、中立位置を越えて所定の前当接位置(例えば、閉位置から開位置へ向って30°だけ離れた位置)に達すると、当接部35cの先端部が突出部24aの先端面24bに突き当たるように配置されている。
【0024】
扉Cが前当接位置から閉位置に向って回動するときには、扉側取付部材27が左方(図9において下方)へ移動するともに、後方(図9において左方)へ移動する。換言すれば、扉側取付部材27は、このように移動するように、躯体側取付部材24に一対のリンク25,26を介して回動可能に連結されているのである。したがって、扉Cが前当接位置から閉位置側へ回動すると、当接部35cが先端面24b上を躯体側取付部材24の後端側へ向って摺動するとともに、当接部35cひいては従動部材35が先端面24bによって相対的に後退移動させられる。その結果、シリンダ33が後退移動させられる。このとき、シリンダ33の後退移動速度がダンパ機構部によって低速に抑えられる。
【0025】
扉Cが前当接位置からさらに閉回動して所定の後当接位置(当接位置)に達すると、当接部35cの先端部が当接部材4の当接面41の先端縁に突き当たる。当接部35cの先端部は、扉Cが後当接位置から閉位置へ向って所定の角度だけ回動する間、当接面41と先端面24bとに同時に当接してもよく、扉Cが後当接位置に達した瞬間に先端面24bから離間するとともに、当接面41に突き当たるようにしてもよい。いずれにしても、扉Cが閉回動時に後当接位置に達した後は、当接部35cが先端面24bから当接面41に乗り移り、当接面41上を摺動する。しかも、当接面41によって当接部材35が後退移動させられ、ひいてはシリンダ33が後退移動させられる。勿論、このときもシリンダ33の後退移動速度がダンパ機構部によって低速に抑えられる。
【0026】
上記躯体Bと扉Cとがスライドヒンジ1によって回動可能に連結された家具Aにおいて、いま扉Cが図1及び図8に示す開位置に位置しているものとする。扉Cが開位置から閉位置に向かって回動させられて中立位置を越えると、扉Cはヒンジ部2の回動付勢手段によって閉回動させられる。扉Cが前当接位置まで閉回動すると、図9に示すように、当接部35cが突出部24aの先端面24bに突き当たる。この結果、扉Cの閉回動に伴ってシリンダ33が後退移動させられる。このとき、シリンダ33の後退移動速度がダンパ装置3のダンパ機構部によって低速に抑えられる。扉Cが前当接位置から後当接位置まで閉回動すると、当接部35cが先端面24bから当接面41上に乗り移る。このとき、当接面41が先端面24bの後方延長上に位置しているので、当接部35cは先端面24bから当接面41に円滑に乗り移ることができる。その後、当接部35cは、扉Cの閉回動に伴って当接面41上を後方へ向って摺動する。ここで、当接面41には、貫通孔43が形成されているが、当接部35cは貫通孔43を跨いて摺動する。したがって、当接部35cの円滑な摺動を貫通孔43によって阻害されることはない。また、扉Cの閉回動に伴って当接部35cが後退移動させられ、ひいてはシリンダ33が後退移動させられる。このとき、シリンダ33の後退移動速度は、ダンパ装置3のダンパ機構部により扉Cが閉位置に達するまで低速に抑えられる。したがって、家具に高級感を出すことができる。また、扉Cが閉位置に達したときに躯体Bに突き当たるようになっていたとしても、大きな衝突音が発生することを防止することができる。
【0027】
扉Cを閉位置から開位置まで回動させる場合において、扉Cが閉位置から後当接位置まで回動する間は、当接部35cが当接面41上を先端側に向って摺動する。それに伴ってシリンダ33及び従動部材35がダンパ機構部によって前進移動させられる。扉Cが後当接位置を越えて前当接位置に達するまでは、当接部35cが先端面24b上を摺動し、シリンダ33及び従動部材35がさらに前進移動する。扉Cが前当接位置に達すると、当接部材35及びシリンダ33が初期位置に戻る。扉Cが前当接位置を越えると、当接部35cが先端面24bから離間する。その後、扉Cが中立位置を越えと、扉Cはヒンジ部2の回動付勢手段によって開位置まで回動させられる。
【0028】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、ロッド34を収容孔31aの底部31bに突き当てているが、ダンパユニット32の向きを逆にし、シリンダ33を底部31bに突き当ててもよい。その場合には、ロッド34が前進後退移動する可動部材になる。
また、上記の実施の形態においては、シリンダ(可動部材)33が先端面24b及び当接面41に従動部材35を介して突き当てられているが、シリンダ33を先端面24b及び当接面41に直接突き当ててもよい。勿論、ロッド34が可動部材とされるときには、ロッド34を先端面24b及び当接面41に直接突き当ててもよい。
また、上記の実施の形態においては、扉Cが開位置から前当接部材に達すると、従動部材35の当接部35cが突出部24aの先端面24bに突き当たるようになっているが、従動部材35を先端面24bに突き当たらせることなく、当接部材4の当接面41にだけ突き当たらせるようにしてもよい。その場合には、当接面41を先端面24bの後方延長上に配置する必要がなく、例えば当接面41を先端面24bに対して突出部24aの突出方向へ離間して配置してもよい。ただし、当接部35cを先端面24bに突き当たらせた場合には、当接部35cが先端面24b上を摺動する間に扉Cが回動する角度の分だけ扉の閉回動速度を低速に抑える角度範囲を大きくすることができる。したがって、当接部35cを先端面24bに突き当たらせることが望ましい。
さらに、上記の実施の形態においては、当接面41全体が突出部24aの先端面24bの延長上に配置されているが、従動部材35が先端面24bから当接面41に円滑に乗り移ることができるよう、当接面41の先端部を先端面24bの延長上に配置する限り、当接面41の他の部分は先端面24bの延長上から外してもよい。例えば、当接面41を躯体の一側部内面と平行にしたり、あるいは後方に向うにしたがって一側部内面から離間するよう、先端面24bと逆向きに傾斜させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明に係るダンパ付きスライドヒンジが用いられた家具を、その扉を開位置に回動させた状態で示す斜視図である。
【図2】この発明に係るダンパ付きスライドヒンジの一実施の形態を、扉側取付部材を開位置に回動させた状態で示す斜視図である。
【図3】同実施の形態の縦断面図である。
【図4】同実施の形態の分解斜視図である。
【図5】同実施の形態において用いられている当接部材を示す平面図である。
【図6】同当接部材の底面図である。
【図7】同当接部材の縦断面図である。
【図8】図1に示す家具の要部を、扉を開位置に回動させた状態で示す断面図である。
【図9】同要部を、扉を前当接位置に回動させた状態で示す断面図である。
【図10】同要部を、扉を後当接位置から若干閉位置側へ回動させた状態で示す断面図である。
【図11】同要部を、扉を閉位置に回動させた状態で示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ダンパ付きスライドヒンジ
2 ヒンジ部
3 ダンパ装置
4 当接部材
24 躯体側取付部材
24a 突出部
24b 先端面
25 リンク
26 リンク
27 扉側取付部材
33 シリンダ(可動部材)
41 当接面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体側取付部材と、この躯体側取付部材の先端部に一対のリンクを介して閉位置と開位置との間を回動可能に連結された扉側取付部材と、上記扉側取付部材を上記閉位置と上記開位置との間の所定の中立位置から上記閉位置まで回動させる回動付勢手段とを備え、上記躯体側取付部材の先端部には、上記一対のリンクの回動軸線方向と、上記躯体側取付部材の先端部と後端部とを結ぶ方向との両方向に対して直交する方向に突出する突出部が形成され、この突出部に上記一対のリンクが回動可能に取り付けられたスライドヒンジにおいて、
上記躯体側取付部材には、当接部材が設けられ、この当接部材には、上記突出部の突出方向を向く当接面が設けられ、
上記扉側取付部材には、移動可能な可動部材及びこの可動部材の移動速度を低速に抑えるダンパ機構を有するダンパ装置が設けられ、
上記扉側取付部材の上記中立位置から上記閉位置側への閉回動時に、上記扉側取付部材が上記閉位置から所定の角度だけ手前の当接位置に達すると、上記可動部材が上記当接部材の当接面に接触し、上記扉側取付部材の上記当接位置から上記閉位置までの閉回動に伴って、上記可動部材が上記当接面上を後端側へ向って摺動するととともに、上記当接面によって移動させられることを特徴とするダンパ付きスライドヒンジ。
【請求項2】
上記扉側取付部材の上記閉回動時に上記扉側取付部材が上記当接位置から所定の角度だけ手前の前当接位置に達すると、上記可動部材が上記突出部の先端面に接触し、上記扉側取付部材の上記前当接位置から上記閉位置側への回動に伴って、上記可動部材が上記突出部の先端面上を後端側へ向って摺動するとともに、上記先端面によって移動させられ、上記当接面の少なくとも上記突出部に隣接する先端部が上記突出部の先端面の後方延長上に配置され、上記扉側取付部材が閉回動して上記当接位置に達すると、上記可動部材が突出部の先端面から上記当接部材の上記当接面上に乗り移って当該当接面上を摺動することを特徴とする請求項1に記載のダンパ付きスライドヒンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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