説明

チェックシステム、該チェックシステムを備える設備計画システム及び設備計画方法

【課題】建築物の設計において、特に設計図面を修正した場合にその都度修正設計図面が適切であるか否かを判断する工程を設けることによって、設計者に対して注意を促すとともに常に適切な設計図面を提供し、もって工期の適正化、短縮化を図らしめることのできるチェックシステム、該チェックシステムを備える設備計画システム及び設備計画方法を提供する。
【解決手段】設計者が建築設計装置1を用いて建築物の設計を行うに際して利用する建築物、或いは設備に関する仕様情報を記憶するデータベース2bと、作成された建築物の設計図面に対する分析・評価結果を受信して仕様情報との間で比較を行い、この比較結果を基に、設計図面における設備の設計状態が適切であるか否かを判断する比較・判断手段2cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降機を備える建築物を設計する際のチェックシステム、該チェックシステムを備える設備計画システム及び設備計画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新築の建築物が企画されると、設計者は、例えば、建築物の高さ(何階建てか)、広さ(フロアの床面積)、利用態様等々、建主の意向に沿って建築物の設計を行う。また、建築物が高層化するにつれてエスカレータ等の乗客コンベアやエレベータ(以下、これらをまとめて「昇降機」と表わす)の据え付けに関しても考慮に含まれることになる。但し、一般的に建築物を設計する設計者は昇降機に関する情報を持ち合わせておらず、従って、適宜必要な情報をメーカへ問い合わせることによって設計を進めている。
【0003】
しかしながら、設計図面を完成させるまでに何度もメーカへの問い合わせを行うことになり、問い合わせを受けたメーカも回答を出すのに時間が掛かることになるため、設計の非効率化が指摘される。また、一旦設計図面が決まり建主に提示しても、何らかの事情により設計変更が行われることもある。すると、その度に設計者とメーカとの間でやりとりを行うことになり、煩雑となる。
【0004】
そこで、以上述べた不具合を解消するべく、例えば、特許文献1には、建築設計者が昇降機設置のための適正な建築設計を容易に行うことが可能なCADシステムが示されている。このCADシステムを用いることによって、建築設計者はCAD端末装置で所定の建物仕様データを入力すれば、CADセンター装置から昇降機設置にマッチしたフロアレイアウトモデルを入手することができ、このモデルに基づいてフロアレイアウトについての図面を作成することができる。従って、昇降機設置を前提とした最適なフロアレイアウト設計を容易に行うことができるとされる。
【0005】
また、特許文献2においては、その開示されている構成を採用することによって設計段階から昇降機のレイアウト情報を分かり易く公開することができ、しかも建物特有のカスタマイズ作業を軽減することにより、納期短縮、コスト軽減、後戻り作業の軽減を図り得る建築検討システムを提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−53634号公報
【特許文献2】特開2005−284830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたCADシステムを用いて設計初期の段階において最適なフロアレイアウトモデルを入手して設計を行い設計図面を完成させても、設計図面が施工に当たって適切な図面であるかのチェックを行っていない。さらにその後フロアレイアウトを修正した場合にも、その修正設計図面が適切な図面であるか否かは判断されていない。
【0008】
また、特許文献2に開示される建築検討システムにおいても、実際に設計図面が完成するまでに行われるであろう数度の修正に対応して、その都度その修正設計図面が適切な図面であるか否かの判断は行われていない。
【0009】
このような設計開始から設計図面完成までの流れでは、設計者は建築設計装置上において、実際の建築物の建設に当たって生じうる昇降機等の建築物内の設備の不具合を把握することはできない。特に設計者は設備に関して設備メーカよりもその設備に関する知識が乏しいため、不具合を把握できずに次工程へと設計を進めてしまう可能性がある。このことは設計図面に修正が加えられる程、顕著である。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、建築物の設計において、特に設計図面を修正した場合にその都度修正設計図面が適切であるか否かを判断する工程を設けることによって、設計者に対して注意を促すとともに常に適切な設計図面を提供し、もって工期の適正化、短縮化を図らしめることのできるチェックシステム、該チェックシステムを備える設備計画システム及び設備計画方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、チェックシステムにおいて、設計者が建築設計装置を用いて建築物の設計を行うに際して利用する建築物、或いは設備に関する仕様情報を記憶するデータベースと、作成された建築物の設計図面に対する分析・評価結果を受信して仕様情報との間で比較を行う比較手段と、比較手段における比較結果を基に、設計図面における設備の設計状態が適切であるか否かを判断する判断手段とを備える。
【0012】
本発明の実施の形態に係る第2の特徴は、設備計画システムにおいて、設計者が建築物の設計を行う際に用いる建築設計装置と、設計者が建築設計装置を用いて建築物の設計を行うに際して利用する建築物、或いは設備に関する仕様情報を記憶するデータベースを含み、設計図面における設備の設計状態が適切であるか否かを判断するチェックシステムを備える昇降機センター装置と、建築設計装置と昇降機センター装置とを接続する通信ネットワークとを備える。
【0013】
本発明の実施の形態に係る第3の特徴は、設備計画方法において、建築設計装置の利用により建築物の設計、各設備の決定がなされて設計図面が作成されるステップと、作成された設計図面を分析、評価するステップと、分析・評価結果とデータベースに記憶される建築物、或いは設備に関する仕様情報とを比較するステップと、比較結果を基に設計図面における設備の設計状態が適切であるか否かを判断するステップと、判断の結果に基づいて設計者に対して判断結果を報知するステップとを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、建築物の設計において、特に設計図面を修正した場合にその都度修正設計図面が適切であるか否かを判断する工程を設けることによって、設計者に対して注意を促すとともに常に適切な設計図面を提供し、もって工期の適正化、短縮化を図らしめることのできるチェックシステム、該チェックシステムを備える設備計画システム及び設備計画方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る設備計画システムの全体構成を示す全体図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る建築設計装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る昇降機センター装置の主立った内部構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る設計図面の作成の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る設計者の昇降機センター装置へのアクセス可否を判断する流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係る設計図面のチェックの流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る昇降機選定の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る設備計画システムSの全体構成を示す全体図である。設備計画システムSは、建築設計装置1、昇降機センター装置2及びメーカ側装置3とがそれぞれ通信ネットワーク4を介して接続されることによって構成される。建築設計装置1は、設計者が建築物を設計する際に使用する装置であり、例えばCAD(Computer Aided Design)装置が挙げられる。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態に係る建築設計装置の内部構成を示すブロック図である。
【0019】
建築設計装置1は、CPU(Central Processing Unit)1aと、ROM(Read Only Memory)1bと、RAM(Random Access Memory)1c及び入出力インターフェイス1dがバス1eを介して接続されている。入出力インターフェイス1dには、入力手段1fと、表示手段1gと、通信制御手段1hと、記憶手段1iと、リムーバブルディスク1jとが接続されている。
【0020】
CPU1aは、入力手段1fからの入力信号に基づいてROM1bから情報端末1を起動するためのブートプログラムを読み出して実行し、記憶手段1iに格納されている各種オペレーティングシステムを読み出す。またCPU1aは、入力手段1fや入出力インターフェイス1dを介して、図1において図示していないその他の外部機器からの入力信号に基づいて各種装置の制御を行う。さらにCPU1aは、RAM1cや記憶手段1i等に記憶されたプログラム及びデータを読み出してRAM1cにロードするとともに、RAM1cから読み出されたプログラムのコマンドに基づいて、建築物の設計上必要となるデータの計算または加工等、一連の処理を実現する処理装置である。
【0021】
入力手段1fは、建築設計装置1の操作者(設計者)が各種の操作を入力するキーボード、タブレット、ディジタルペン等の入力デバイスにより構成されており、設計者の操作に基づいて入力信号を作成しバス1eを介してCPU1aに送信される。また、建築設計装置1には、キーボード等だけでなく専用の操作パネルが設けられていても良く、その操作パネル上の入力デバイスを介して操作画面に対する操作を行うこともできる。表示手段1gは、例えば液晶ディスプレイであり、例えばCPU1aからバス1eを介して出力信号を受信し、CPU1aの処理結果や後述する設計図面のチェックがなされた後のチェック結果等を表示する手段である。
【0022】
通信制御手段1hは、LANカードやモデム等の手段であり、建築設計装置1をインターネットやLAN等の通信ネットワークに接続することを可能とする手段である。通信制御手段1h、通信ネットワークを介して、例えば、スキャナ、プリンタ、タブレット、ディジタルペン或いは他の各種システムと建築設計装置1が接続される。また、通信ネットワークを介して送受信したデータ(情報)は入力信号または出力信号として、入出力インターフェイス1d及びバス1eを介してCPU1aに送受信される。
【0023】
記憶手段1iは、半導体や磁気ディスクで構成されており、CPU1aで実行されるプログラムやデータ、或いは、作成途中の設計図面等が記憶されている。
【0024】
リムーバブルディスク1jは、光ディスクやフレキシブルディスクのことであり、ディスクドライブによって読み書きされた信号は、入出力インターフェイス1d及びバス1eを介してCPU1aに送受信される。
【0025】
なお、本発明の実施の形態における建築設計装置1は、上述したようにCAD装置を想定しているが、例えば、通常のいわゆるパソコン(PC)を使用することも可能である。この場合PC内の記憶手段1i、或いはリムーバブルディスク1jに建築物設計図面作成プログラムが格納されており、CPU1aに読み込まれて実行されることにより、建築設計システムが建築設計装置1に実装され使用されるようにされていても良い。
【0026】
なお、図1においては、3台の建築設計装置1Aないし1Cが通信ネットワーク4に接続されている。但し、通信ネットワーク4に接続される建築設計装置1の台数は単数でも複数でも良く、任意の台数を接続することができる。また、これら建築設計装置1Aないし1Cを以下においては適宜「建築設計装置1」と表わす。
【0027】
昇降機センター装置2は、通信ネットワーク4を介して建築設計装置1と接続されている。昇降機センター装置2内には、設計者が建築物を設計する上で必要となる昇降機に関するあらゆる情報が記憶されている。例えば、例えば用途、定員、積載量、速度といった昇降機の仕様、或いは、昇降機を建築物に設置する際に必要とされるスペース、寸法、各種付属設備に関する情報等である。設計者は建築設計装置1を通信ネットワーク4を介して昇降機センター装置2に接続させることで、自身が設計している建築物の仕様に応じて適切であると思われる昇降機を選択、決定することができる。
【0028】
なお、図1の設備計画システムSの全体構成を示す全体図では、昇降機センター装置2は次に説明するメーカ側装置3から独立して通信ネットワーク4に接続しているように示されているが、メーカ側装置3とともに昇降機メーカ内に設置されていても構わない。
【0029】
メーカ側装置3は、昇降機メーカ(の社員)が使用する情報端末であり、通信ネットワーク4に接続されている。昇降機メーカは、このメーカ側装置3を介して昇降機センター装置2にアクセスし、上述した昇降機の仕様に関する各種情報を記憶させる。
【0030】
通信ネットワーク4は、例えば、インターネットやファイアウォール等外部からの不正アクセスに対する防護機能を有するイントラネット等を挙げることができる。但し、後述するように、インターネットを利用する場合には、建築設計装置1を使用する設計者にIDやパスワードを要求することで、所定のセキュリティレベルを確保する必要がある。また、この通信ネットワーク4で使用される通信規格は、特に限定されずいずれの規格であっても良い。
【0031】
図3は、本発明の実施の形態に係る昇降機センター装置2の主立った内部構成を示すブロック図である。昇降機センター装置2は、受信手段2aと、データベース2bと、比較・判断手段2cと、送信手段2dとからなり、チェックシステムを構成する。
【0032】
受信手段2aは、建築設計装置1、或いは、メーカ側装置3からの要求を受信する。受信された要求は、比較・判断手段2cへと送られ、データベース2b内に記憶されている情報との間でその内容が比較される。比較された結果に対しては、何らかの判断、例えば、作成された設計図面における設備の配置等が適切であるか否か、といった判断がなされる。この判断は送信手段2dを介して例えば、建築設計装置1へと要求に対する回答として提示される。
【0033】
次に、設計者が建築設計装置1を利用して昇降機センター装置2との間でのやりとりをしながら設計図面を作成する際の流れについて、適宜建築設計装置1、昇降機センター装置2内の各手段の働きも交えながら説明をする。
【0034】
図4は、本発明の実施の形態に係る設計図面の作成の流れを示すフローチャートである。設計者が設計図面を完成させるためには、大きく2つのステップがある。1つ目のステップは、設計者が適宜昇降機センター装置2にアクセスしつつ建築設計装置1を利用して設計図面を作成する権限を備えているかが判断されるステップである(ST1)。2つ目のステップは、設計者が昇降機センター装置2にアクセスしながら設計図面を完成させるステップである(ST2ないしST7)。
【0035】
この2つ目のステップは、さらに「建築物の設計、各部の決定(ST2)」と、「設計図面の分析・評価(ST3)」と、「チェック(ST4及びST5)」と、「チェック結果に基づく修正(ST6ないしST8)」と、4つのステップに分けることができる。設計者はこれら4つのステップを1サイクルとして、このサイクルを順次繰り返しながら徐々に設計図面を完成させていく。
【0036】
まず、1つ目の大きなステップである、設計者の建築設計装置1へのログイン可否(昇降機センター装置2へのアクセス可否)について判断される(ST1)。設計者は、設計図面を作成するに当たって建築設計装置1を使用する。この建築設計装置1を介して、例えば昇降機センター装置2内に記憶されている各種仕様に関する情報を利用しつつ設計図面を完成させていく。但し、設計者によってはこの昇降機センター装置2にアクセスする権限が制限される場合もある。昇降機センター装置2内には、秘密情報を含む、例えばフロア情報等も記憶されているからである。そこで、まず昇降機センター装置2にアクセスできる権限を備えているか否かの判断(ログイン可否判断)がなされる。
【0037】
図5は、設計者の昇降機センター装置2へのアクセス可否を判断する流れを示すフローチャートである。建築設計装置1を利用する設計者によって自身のID番号とパスワードが入力されるので、入力された情報は通信ネットワーク4を介して昇降機センター装置2へと送信され、受信手段2aが当該情報を受信する(ST11)。送信された入力情報は、そのまま比較・判断手段2cに送られる。比較・判断手段2cは入力された情報を受領すると同時にデータベース2bにアクセスし、入力情報が適切であるか否かを判断するに必要な情報を入手する。
【0038】
データベース2bには、設計者のID番号等が記憶されている。比較・判断手段2cは、入力情報とデータベース2bに記憶されている情報とを比較し、例えば、入力されたID番号とパスワードとが一致する、すなわち、入力情報に該当する情報がデータベース2b内に記憶されているかを確認する。この比較の結果を基に設計者のログインの可否を判断する(ST12)。その結果、データベース2b内に該当する情報が記憶されていない場合には(ST12のNO)、その設計者が昇降機センター装置2にアクセスすること、すなわち、昇降機センター装置2内の情報を利用して設計図面を作成すること自体を拒否する判断を行う(ログインの不許可、ST13)。
【0039】
一方、比較・判断手段2cが設計者が昇降機センター装置2へのログインを許可する判断を行った場合には(ST14)、改めて建築設計装置1から送信される図面分類情報を受信する(ST15)。この図面分類情報とは、既存の建築物について様々な切り口から分類し情報化したものであり、昇降機センター装置2に記憶されている。図面分類情報としては、例えば、商業施設、オフィスビル、ホテルといった建築物の種類ごとや高さ、広さごとに分類されたものを挙げることができる。
【0040】
比較・判断手段2cは、受信した図面分類情報を基にデータベース2bから該当する図面のメニューを入手し、送信手段2dを介して建築設計装置1へと送信する(ST16)。例えば、設計者が建築設計装置1を用いてフロアレイアウトについての設計図面を作成しようとする場合、昇降機センター装置2はその建築設計装置1に対してフロアレイアウトの設計を行うに必要な図面メニューを送信する。
【0041】
設計者は昇降機センター装置2から送信された図面メニューを基に必要な入力情報(例えば建築物の図面を分析した結果など)を入力して再度昇降機センター装置2へと送信する。図面メニューに関して入力された情報を比較・判断手段2cがデータベース2b内の該当する情報と比較してチェックを行う(ST17)。図面メニューに関して入力された情報の例としては、例えば、設計図面作成の目的や予め設定されている工程番号等を挙げることができる。
【0042】
さらにこの比較結果から入力内容がOKであるか否かを判断する(ST18)。ここでのチェックは、上述した設計者のID番号等その設計者自身についての情報と図面分類情報に照らして図面の機密度やその他の事項について当該設計者が設計図面を作成する上で問題がないかをチェックするものである。
【0043】
比較・判断手段2cの判断の結果、問題がある場合には(ST18のNO)、その設計者が昇降機センター装置2にアクセスすることを許可しない(ST19)。ここで問題がある場合とは、例えば、作成しようとする図面が非常に機密度の高いものであり、図面メニューに関して入力された情報を送信した設計者には図面の作成が許可されていないような場合を挙げることができる。
【0044】
一方、問題ない場合には(ST18のYES)、昇降機センター装置2にアクセスすることが許可される(ST20)。これにより、設計者はCAD装置を用いて、或いは設計図面の作成に必要な例えば、記憶手段1iに記憶され、CPU1aに実装される制御プログラムを用いて設計図面の作成を開始することができる。
【0045】
次に上述した2つ目のステップである。このステップは設計者が昇降機センター装置2にアクセスしながら設計図面を完成させるステップである。
【0046】
具体的には、設計者は建築設計装置1を利用して、適宜昇降機センター装置2にアクセスして、昇降機センター装置2内のデータベース2bに記憶されている各種仕様に関する情報を基に設計を行い、各部を決定する(図4のST2参照)。
【0047】
一旦設計図面が完成する、或いは各部の仕様等が決定されると、できあがった設計図面が分析・評価される(ST3)。なお、このステップ3において行われる分析・評価は、建築物の形状や構造等、建築物に直接関係する項目ではなく、建築物の各部、特に昇降機に関する点について行われる。建築物の形状や構造等、建築物に直接関係する項目に関しては、以下に説明するチェックシステムとは別のチェックシステムを利用して行われることを前提としている。
【0048】
建築設計装置1の表示手段1gにおいて表示される、例えば、決定ボタンを押す(クリックする)と、設計者が作成していた設計図面について分析、評価が行われる。なお、ここでは建築設計装置1が分析、評価を行うことを前提にしているが、昇降機センター装置2において分析、評価が行われても良い。
【0049】
分析、評価が行われることによって、設計図面に表わされた各部の情報が収集される。紙等に直接図面を引くのとは違い、建築設計装置1を利用して昇降機センター装置2に記憶されている各種情報を基に設計図面が作成されることから、いわば、設計図面上に様々な電子的な情報が載せられた状態となっている。そこで、この分析、評価によって建築物の各部が、例えば、どのような寸法(構造、意匠、設置環境なども適宜対応可能)を持っているのか、どのような仕様を備える昇降機が選択されているのか、といった情報を収集することができる。
【0050】
分析、評価が終了すると、その結果に基づいて設計図面が適切に作成されているか否かのチェックが昇降機センター装置2に備えられているチェックシステムを利用して行われる(図4のST4参照)。
【0051】
データベース2bに記憶される昇降機に関する情報は、例えば、仕様の変更やモデルチェンジが行われる都度、新しい情報へ更新される。データベース2bに記憶される機器に関する情報は膨大なものであり、これらの機器に関する情報がそれぞれ適宜更新される。従って、更新のたびにその情報を建築設計装置1に提供すると建築設計装置1の記憶容量等の観点から適切ではない。そのため、データベース2b内において適宜情報が更新され記憶される。このことから、分析・評価された情報は昇降機センター装置2に送信されてチェックされる。
【0052】
詳しくは、図6のフローチャートに示されているように、建築設計装置1において分析、評価された情報(分析・評価結果)は、昇降機センター装置2に送信され、受信手段2aにおいて受信される(ST41)。比較・判断手段2cにおいて、まず建築設計装置1から送信された分析・評価結果が1度目のチェックであるか否かが判断される(ST42)。これは、設計対象となる建築物についての設計図面を初めてチェックするのか、或いは、既に何度もチェックを受けていて修正された個所のみをチェックすれば良いかを振り分けるために行われる。
【0053】
最初のチェックに該当すると判断されると(ST42のYES)、次に分析・評価結果の全ての項目についてチェックが行われるか否かが判断される(ST43)。例えば、設計図面の完成途中でこのチェックを受ける場合には、全ての項目についてチェックを受けることはできない。そこでチェックを受ける時点で完成している部分についてのみチェックを受けることになる。分析・評価結果全部のチェックである場合には(ST43のYES)、全ての項目について順次詳細にチェックが行われる(ST44)。
【0054】
ここで、比較・判断手段2cによるチェックは、具体的には、分析・評価結果に関する情報とデータベース2b内に記憶されている情報と比較することによって行われる。上述したように、チェック項目は全ての項目(ここでは昇降機に関するあらゆる項目)である。例えば、交通計算に関するチェックが挙げられる。この項目は、分析・評価結果から建築規模に応じた昇降機が選択されているかをチェックするものである。また、建築物内における昇降機の設置位置とその周辺における環境についてもチェックされる。例えば、昇降機が設置されるすぐ隣の区画に執務室が設けられていると、昇降機が昇降路内を昇降する際の振動、騒音等の影響を受ける。この点をチェックする。
【0055】
また、建築物と設置される昇降機との関係もチェックされる。これは、例えば、昇降機が設置される場所に梁が設けられているか、或いは、乗りかごをガイドするレールを取り付ける昇降路内の壁の材質が固定に耐えうる材質であるか否か等である。これらの関係は、さらに法令との関係においてもチェックの対象となる。例えば、建築基準法に基づいて安全を確保する上で必要な設備が配置されているか、或いは非常用エレベータが設置されているか等々である。
【0056】
一方、昇降機そのもの、すなわち、乗りかご、巻上機の性能、ガイドレールの素材といった項目についてもチェックが行われる。また、乗りかごが昇降路内に収まりよく設置されるか否かといった点についても同様である。例えば、建築物について各階床ごとに設計が行われると、昇降路の位置がずれる、或いは昇降路内の寸法に違いが生ずる、といった不具合が出てきてしまうことが起こり得る。このような弊害を未然に防ぐためである。さらには、昇降機の用品についてもチェックが行われる。例えば、選択された昇降機との関係で正しい用品モデルが組み合わせられているか、昇降機メーカが実現できない仕様の組み合わせでフロア内に配置されていないか、である。この項目については、昇降機の意匠やオプションという点からもチェックされる。
【0057】
以上、チェック項目の一端を挙げたが、上述した項目に限定されるものではない。特に建築物の設計が昇降機等設備のメーカが関知することの少ない場所でなされても、実際に施工が開始された際に確実に設備を据え付けることができるようにチェックされる。このように比較・判断手段2cは全ての項目についてチェックが終了するまでチェックを続ける(ST45のNOからST43へと戻る)。
【0058】
全ての項目についてチェックされない場合、例えば2回目以降のチェックである場合(ST42のNO)、或いは、設計図面の完成途中であって完成した部分のみチェックを受ける場合(ST43のNO)には、比較・判断手段2cは修正個所を確認した上で(ST46)、その修正個所についてそれぞれの修正個所に応じたチェック項目に沿って順次チェックを行う(ST47)。このチェックにおいても必要とされるチェックの全てが終わるまで継続してチェックが行われる。
【0059】
全ての項目についてチェックが終了すると(ST45のYES)、次に修正個所が複数存在した場合のチェックを行う(ST48)。すなわち、チェックが複数回行われると修正個所もそれに伴って1つの設計図面内に複数存在することになる。そこで、それら複数の修正個所相互間の関係をチェックする。このチェックも含めてチェック終了を確認すると(ST49)、比較・判断手段2cはチェック結果を作成する(ST50)。作成されたチェック結果は、送信手段2dを介して建築設計装置1へと送信される(ST51)。
【0060】
建築設計装置1へと送信されたチェック結果は、建築設計装置1の表示手段1gに表示され設計者に対して報知される。この表示されるチェック結果のレイアウトは、特に図示しないが自由に決定することができる。例えば、チェックリスト形式にし、チェックOKの箇所には例えば「○」が、チェックを通らなかった箇所については「×」が表示されるようにしても良い。また、単に「○」、「×」を表示させるだけではなく、「×」がついた箇所には設計図面上に直接飛ぶことのできるリンクが貼られていても良い。さらには、チェック結果そのものを設計図面上に直接表示させるようにしても良い。
【0061】
なお、設計者に対する報知態様については、表示手段1gに画像として表示される他、例えば音声による報知であっても構わない。
【0062】
チェックシステムがチェックを行った結果、全ての項目についてチェックOKである場合には(ST5のYES)、設計図面はこの時点で全て適切に表わされていると判断される。なお、チェックOKであるがこのチェック自体が設計図面の一部に対するものである場合には、設計者によってさらに建築物の設計が続けられ設計図面の作成が行われる。
【0063】
1つでもチェックが通らなかった場合には(ST5のNO)、設計者に対して修正指示が出される。但し、まずチェックの段階で複数修正個所の相互関係について不具合が発見されていないか否かが比較・判断手段2cによって判断される(ST6)。不具合がなく、修正個所の相互関係がOKである場合には(ST6のYES)、修正指示が出され(ST7)、設計者は指示に基づいて修正を行う。この修正が終了すると、再度チェックがなされる(ST4以下)。
【0064】
一方、修正個所の相互関係がOKではない場合にも(ST6のNO)、修正指示が出される(ST8)。但しこの場合は、設計者に対して出された修正指示(ST8)に基づいて設計者は初めから設計をし直す必要がある(ST2以下)。修正個所の相互関係に不都合が生じている場合には、少しずつ設計図面を直すよりも根本的なところから修正する方がその後の設計図面の作成に際し適切であると考えられるからである。
【0065】
以上説明した設計図面の作成の流れに沿って、具体的に昇降機選定を例に挙げてその流れを説明すると、図7のフローチャートに示す流れになる。
【0066】
まず、設計者が建築設計装置1を利用して設計を行うためのログインの可否が判断される(ST61)。ログインが認められると設計者は設計図面の作成を開始する。昇降機センター装置2にアクセスし設計対象となる建築物を決定し(ST62)、その建築物内に予め提示されている計画に基づいて昇降機の設置場所を確定させる(ST63)。
【0067】
そして、例えばここで昇降機の設置場所の適否を判断するために、一旦これまで作成した設計図面の分析、評価を行う(ST64)。その上で、昇降機センター装置2にアクセスしてチェックを行う(ST65)。ここでは、例えば、上述したように昇降機が設置される周囲の環境や構造物との関係、必要な梁が設けられているか等々の項目についてチェックが行われる。
【0068】
チェックが終了すると、この段階ではまだ設置場所についてのチェックであるので、次に、比較・判断手段2cは、データベース2bに記憶されている各種昇降機の中からチェック結果に基づいて設計対象となっている建築物において最適な昇降機を選択し、設計者へと提示する(ST66)。この点については、上述した設計図面の作成フローにおいては触れていなかったが、比較・判断手段2cがチェック結果を基にいくつか採択可能な選択肢を設計者に対して示すようにしても良い。
【0069】
このような提示がなされると設計者はより計画に適した昇降機を容易に選択することができる(ST67)。
【0070】
以上説明した構成及び方法を採用することによって、建築物の設計において、特に設計図面を修正した場合にその都度修正設計図面が適切であるか否かを判断する工程を設けることによって、設計者に対して注意を促すとともに常に適切な設計図面を提供し、もって工期の適正化、短縮化を図らしめることのできるチェックシステム、該チェックシステムを備える設備計画システム及び設備計画方法を提供することができる。
【0071】
特に設計者は上述した、「建築物の設計、各部の決定」と、「設計図面の分析・評価」と、「チェック」と、「チェック結果に基づく修正」との、4つのステップを順次行い、このサイクルを繰り返しながら徐々に設計図面を完成させていくことになる。従って、サイクル内において必ず「チェック」のステップを経ることになるため、設計図面の作成がどの場面にあっても適切な設計図面を取得することができる。
【0072】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上述した本発明の実施の形態においては、建築設計装置を利用して設計図面の作成、修正を行う例を挙げて説明を行ったが、建築設計装置に替えてメーカ側装置を利用しても同じく設計図面の作成、修正を行うことが可能とされていても良い。このような構成にすることによって、例えば、フロアを回収する場合に、建築物の梁等構造を変更させて昇降機の位置も変更する等し、リニューアル等の提案をメーカ側から設計者側へと行うことができる。
【0073】
さらに、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、設計図面が適切であるか否かを判断する工程にて、設計者に対して注意を促すが注意だけにとどまらず、判断結果により他の良い設計図面案があれば提示することも可能である。また、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 建築設計装置
2 昇降機センター装置
3 メーカ側装置
4 通信ネットワーク
S 設備計画システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計者が建築設計装置を用いて建築物の設計を行うに際して利用する建築物、或いは設備に関する仕様情報を記憶するデータベースと、
作成された前記建築物の設計図面に対する分析・評価結果を受信して前記仕様情報との間で比較を行い、比較結果を基に前記設計図面における前記設備の設計状態が適切であるか否かを判断する比較・判断手段と、
を備えることを特徴とするチェックシステム。
【請求項2】
前記比較・判断手段は、前記設備の設計状態が適切ではないと判断した場合に、その旨を前記建築設計装置を介して前記設計者に対して報知する報知情報を作成することを特徴とする請求項1に記載のチェックシステム。
【請求項3】
前記比較・判断手段は、前記設備の設計状態が適切ではないと判断した場合に、適切となるための仕様を持つ前記設備を前記データベースから検索し前記設計者に対して提示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチェックシステム。
【請求項4】
前記データベースには、前記建築設計装置を用いて建築物の設計を行う設計者が前記仕様情報にアクセスできるか否かを判断する設計者情報も記憶されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のチェックシステム。
【請求項5】
設計者が建築物の設計を行う際に用いる建築設計装置と、
前記設計者が前記建築設計装置を用いて建築物の設計を行うに際して利用する建築物、或いは設備に関する仕様情報を記憶するデータベースを含み、設計図面における前記設備の設計状態が適切であるか否かを判断するチェックシステムを備える昇降機センター装置と、
前記建築設計装置と前記昇降機センター装置とを接続する通信ネットワークと、
を備えることを特徴とする設備計画システム。
【請求項6】
前記通信ネットワークには、昇降機メーカにおいて利用されるメーカ側装置が接続されていることを特徴とする請求項5に記載の設備計画システム。
【請求項7】
建築設計装置の利用により建築物の設計、各設備の決定がなされて設計図面が作成されるステップと、
前記作成された設計図面を分析、評価するステップと、
分析・評価結果とデータベースに記憶される建築物、或いは設備に関する仕様情報とを比較するステップと、
比較結果を基に前記設計図面における前記設備の設計状態が適切であるか否かを判断するステップと、
前記判断の結果に基づいて設計者に対して前記判断結果を報知するステップと、
を備えることを特徴とする設備計画方法。
【請求項8】
前記判断するステップの後に、前記判断するステップにおいて前記設備の設計状態が適切ではないと判断した場合に、前記設計図面が適切となるための仕様を持つ前記設備を前記データベースから検索するステップが追加され、
前記設計者に対して前記判断結果を提示するステップにおいて、前記設計者に対して提示される情報に、前記検索された前記設計図面が適切となるための仕様を持つ前記設備に関する情報が含まれることを特徴とする請求項7に記載の設備計画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−262580(P2010−262580A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114584(P2009−114584)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】