説明

チェーンガイドおよびチェーン伝動装置

【課題】優れた耐久性をもつチェーンガイドを提供する。
【解決手段】トルク伝達用チェーン5の外周一部に配置されて、そのチェーン5の走行方向に長く延びるガイドベース15と、そのガイドベース15にチェーン5の走行方向に沿って間隔をおいて取り付けられた複数のローラ軸16と、その各ローラ軸16に回転可能に支持されたローラ17とからなるチェーンガイドにおいて、各ローラ17の中心間距離をローラ17にかかる負荷が大きい領域ほど狭くなるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トルク伝達用チェーンの走行を案内するチェーンガイドおよびそのチェーンガイドを用いたチェーン伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンは、クランク軸の回転をタイミングチェーン(以下、単に「チェーン」という)を介してカム軸に伝達し、そのカム軸の回転により燃焼室のバルブを開閉する。
【0003】
このようなカム軸駆動用のチェーン伝動装置として、クランク軸に取り付けられた駆動スプロケットと、カム軸に取り付けられた従動スプロケットと、駆動スプロケットと従動スプロケットの間に掛け渡されたチェーンと、そのチェーンの弛み側に配置された揺動可能なチェーンガイドと、そのチェーンガイドをチェーンに向けて押圧するチェーンテンショナと、チェーンの張り側に配置された固定のチェーンガイドとを有するものが多く用いられる。
【0004】
ここで、揺動側のチェーンガイドは、チェーンテンショナの付勢力でチェーンを押圧することによりチェーンの張力を一定に保ち、固定側のチェーンガイドは、理想的なチェーンの走行ラインを保ちながらチェーンの振動を抑制する。
【0005】
かかるチェーン伝動装置で使用される揺動側のチェーンガイドや固定側のチェーンガイドとして、チェーン走行方向に沿って延びる案内面をチェーンに滑り接触させる形式のものが知られているが、この滑り形式のチェーンガイドは、チェーンに対する接触が滑り接触なので、チェーンの走行抵抗が大きく、トルクの伝達ロスが大きいという問題がある。
【0006】
このような問題を解消するため、本願発明の発明者らは、チェーン走行方向に沿って間隔をおいて複数のローラを設け、その各ローラでチェーンを案内するチェーンガイドを提案している(特許文献1)。
【0007】
このチェーンガイドは、チェーンに対する接触が転がり接触なので、チェーンの走行抵抗が小さく、トルクの伝達ロスが小さいという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2010/090139号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、この発明の発明者らは、上記転がり形式のチェーンガイドの耐久性を評価するために、クランク軸に取り付けた駆動スプロケットとカム軸に取り付けた従動スプロケットの間にチェーンを掛け渡し、そのチェーンの走行を転がり形式のチェーンガイドで案内する試験機を製作し、その試験機のクランク軸をレッドゾーンで回転させる耐久試験を行なった。
【0010】
この結果、レッドゾーンで数千時間を経過した後も、チェーンガイドの各ローラが損傷せずに使用することができ、実用に耐える程度の耐久性を有することを確認することができたが、更に長時間にわたって耐久試験を継続したところ、ローラを支持するローラ軸やころにうろこ状の剥離(フレーキング)が生じる場合があり、この剥離が生じるローラ軸の分布に一定の傾向があることを見出した。
【0011】
すなわち、カム軸側の端部を中心として揺動可能に支持され、かつ、クランク軸側の端部がチェーンガイドで押圧されるガイドベースと、そのガイドベースにチェーンの走行方向に沿って間隔をおいて取り付けられた複数のローラ軸と、その各ローラ軸に回転可能に支持されたローラとからなるチェーンガイドを使用して耐久試験を行なったところ、このチェーンガイドがローラ軸の剥離によって寿命に達するとき、ガイドベースにチェーンの走行方向に沿って間隔をおいて取り付けられた各ローラ軸のうち、カム軸側の領域のローラ軸ではなく、クランク軸側の領域のローラ軸に剥離が生じる傾向があることが分かった。
【0012】
そして、本願発明の発明者らは、試験条件を様々に変更してかかる傾向が生じる原因を究明したところ、以下の2点が支配的な原因となっていることを見出した。
1)各ローラの中心とそのローラの両側に隣り合うローラの中心とを共通して通る仮想円弧の半径が、ガイドベースのカム軸側の端部からクランク軸側の端部に向かうに従って小さくなるように前記各ローラを配置することにより、クランク軸のスプロケットに対するチェーンの巻き角をできるだけ大きくし、クランク軸のスプロケットの1歯あたりの負荷を抑えることが可能となる。そして、このように各ローラを配置した場合、各ローラの中心とそのローラの両側に隣り合うローラの中心とを共通して通る仮想円弧の半径が小さい領域(すなわちクランク軸側の領域)においては、チェーンの走行方向の曲がりが大きいため、チェーンからローラにかかる負荷が大きくなりやすい点。
2)ガイドベースのチェーンテンショナで押圧される側の端部に近い領域のローラの方が、ガイドベースの揺動中心がある側の端部に近い領域のローラよりも、チェーンテンショナの押圧力の作用点に近く、チェーンテンショナからローラにかかる負荷が大きくなりやすい点。
【0013】
この発明が解決しようとする課題は、優れた耐久性をもつチェーンガイドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、この発明では、トルク伝達用チェーンの外周一部に配置されて、そのチェーンの走行方向に長く延びるガイドベースと、そのガイドベースにチェーンの走行方向に沿って間隔をおいて取り付けられた複数のローラ軸と、その各ローラ軸に回転可能に支持されたローラとからなるチェーンガイドにおいて、前記各ローラの中心間距離をローラにかかる負荷が大きい領域ほど狭くなるように設定した。
【0015】
このようにすると、ローラにかかる負荷が大きい領域ほどローラの中心間距離が狭いので、各ローラにかかる負荷が均一化される。そのため、ローラを支持するローラ軸の寿命を全体として延ばすことができ、優れた耐久性をもつチェーンガイドが得ることができる。
【0016】
各ローラの中心とそのローラの両側に隣り合うローラの中心とを共通して通る仮想円弧の半径がガイドベースの一端部から他端部に向かうに従って小さくなるように前記各ローラを配置する場合、前記仮想円弧の半径が小さい領域ほど前記ローラにかかる負荷が大きくなる。また、前記ガイドベースの一端部を中心として揺動可能に支持し、他端部をチェーンテンショナで押圧する場合、前記チェーンテンショナで押圧される側の端部に近い領域ほど前記ローラにかかる負荷が大きくなる。
【0017】
また、前記ローラを支持する各ローラ軸は、光輝焼入れされた中実の円柱体とすると好ましい。
【0018】
前記ローラは、その一部のローラのみを不等間隔とし、残りを等間隔としてもよいが、全部の前記ローラを不等間隔に配置すると、各ローラにかかる負荷をより効果的に分散することが可能となる。
【0019】
また、この発明では、上記のチェーンガイドを用いたチェーン伝動装置として、駆動スプロケットと従動スプロケットの間に掛け渡されたチェーンと、そのチェーンの弛み側に設けられた揺動可能な上記のチェーンガイドと、そのチェーンガイドをチェーンに向けて押圧するチェーンテンショナとを有するチェーン伝動装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
この発明のチェーンガイドは、ローラにかかる負荷が大きい領域ほどローラの中心間距離が狭いので、各ローラにかかる負荷が均一化され、優れた耐久性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施形態のチェーン伝動装置を示す概略図
【図2】図1に示すチェーンガイドの斜視図
【図3】図2に示すチェーンガイドの縦断面図
【図4】図3に示すチェーンガイドの右側面図
【図5】図3のV−V線に沿った断面図
【図6】図5に示すローラの拡大断面図
【図7】ガイドベースの一部とローラとを示す分解正面図
【図8】(a)は図1に示すカム軸側から2番目のローラの中心と、そのローラの両側に隣り合うローラの中心とを共通して通る仮想円弧を示す模式図、(b)は図1に示すカム軸側から3番目のローラの中心と、そのローラの両側に隣り合うローラの中心とを共通して通る仮想円弧を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に、この発明の実施形態のチェーンガイドを組み込んだチェーン伝動装置を示す。このチェーン伝動装置は、エンジンのクランク軸1に固定して取り付けられた駆動スプロケット2と、カム軸3に固定して取り付けられた従動スプロケット4と、駆動スプロケット2と従動スプロケット4の間に掛け渡されたチェーン5を有し、このチェーン5を介してクランク軸1の回転をカム軸3に伝達し、そのカム軸3の回転により燃焼室のバルブ(図示せず)を開閉する。
【0023】
エンジンが作動しているときのクランク軸1の回転方向は一定(図では右回転)であり、このときチェーン5は、クランク軸1の回転に伴って駆動スプロケット2に引き込まれる側の部分が張り側となり、駆動スプロケット2から送り出される側の部分が弛み側となる。そして、チェーン5の弛み側には、支点軸6を中心として揺動可能に支持されたチェーンガイド7と、チェーンガイド7をチェーン5に向けて押圧するチェーンテンショナ8とが設けられている。一方、チェーン5の張り側には、固定のチェーンガイド9が設けられている。
【0024】
チェーンガイド7は、チェーン5に沿って長く延び、そのカム軸3側の端部に設けた挿入孔10に支点軸6が挿入され、この支点軸6を中心に揺動可能に支持されている。チェーンガイド7のクランク軸1側の端部にはチェーンテンショナ8が接触しており、このチェーンテンショナ8によってチェーンガイド7はチェーン5に向けて押圧されている。
【0025】
固定側のチェーンガイド9も、揺動側のチェーンガイド7と同様に、チェーン5に沿って長く延びる形状である。固定側のチェーンガイド9は、カム軸3側の端部とクランク軸1側の端部にそれぞれ設けられた挿入孔13にボルト14が挿入され、このボルト14の締め付けによって固定されている。
【0026】
図2〜図4に示すように、チェーンガイド7は、チェーン5の走行方向に延びるガイドベース15と、そのガイドベース15にチェーン5の走行方向に沿って間隔をおいて取り付けられた複数のローラ軸16と、その各ローラ軸16に回転可能に支持されたローラ17とからなる。
【0027】
図3に示すように、ガイドベース15の一端部(図1に示すカム軸3側の端部)には挿入孔10が設けられ、ガイドベース15の他端部(図1に示すクランク軸1側の端部)には受け部15aが設けられている。このガイドベース15は、図1に示すように、挿入孔10に挿入した支点軸6を中心として揺動可能に支持され、受け部15aがチェーンテンショナ8で押圧される。
【0028】
図2、図4に示すように、ガイドベース15は、チェーン5の走行方向に沿って長く延びて各ローラ軸16の両端を支持する対向一対の側板18,18と、隣り合うローラ軸16の間に配置されて側板18同士を連結する複数の連結部19とを有する。連結部19は、その両端が側板18に固定され、側板18の対向間隔を保持している。図3および図7に示すように、各側板18の互いに対向する対向面には、ローラ軸16の軸端を支持する円形凹部20と、側板18の凸側の縁から円形凹部20に連通する軸導入溝21とが設けられている。
【0029】
図7に示すように、軸導入溝21は、側板18の凸側の縁から円形凹部20に向かって次第に溝幅が狭くなるテーパ状に形成され、この軸導入溝21を通じてローラ軸16の軸端を円形凹部20に導入するようになっている。ここで、円形凹部20内に導入されたローラ軸16の軸端が軸導入溝21に逆戻りするのを防止するため、軸導入溝21は、狭小部分の幅Dが円形凹部20の内径Dよりも小さくなるよう形成されている。
【0030】
円形凹部20の内径Dは、ローラ軸16の軸端の外径dよりもわずかに小径とされ、ローラ軸16の軸端が締め代をもって円形凹部20に嵌合するようになっている。
【0031】
ガイドベース15は、繊維強化材を配合した合成樹脂の射出成形により形成することができる。合成樹脂としては、例えば、ナイロン66やナイロン46などのポリアミド(PA)を使用することができる。合成樹脂に配合する繊維強化材は、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維などを使用することができる。ガイドベース15はアルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽金属で形成してもよい。
【0032】
ローラ軸16は、SUJ2やSC材等の鋼材で形成された中実の円柱体であり、表面の耐摩耗性を向上させるために光輝焼入れが施されている。
【0033】
図5、図6に示すように、ローラ17は、ローラ軸16の外周に回転可能に装着され、ローラ17の外周に形成された円筒面がチェーン5と接触する。ここで、ローラ17は、外輪22と、外輪22の内側に組み込まれた複数のころ23と、これらのころ23を保持する保持器24とからなるころ軸受である。外輪22は、SPCやSCM等の鋼板を絞り成形してカップ状とされたシェル形外輪である。外輪22の両端には、内向きの鍔25が形成されている。外輪22の外径は10mm〜25mmの範囲に設定されており、全ての外輪22の外径が同一の大きさとされている。
【0034】
なお、この実施形態では、ローラ17を軽量化してチェーン5の走行抵抗を最小限に抑えるためにころ軸受を単独でローラ17として用いているが、ころ軸受の外輪22の外周に円筒状の樹脂部材や鉄部材を取り付けたものをローラ17として用いてもよく、ころ軸受にかえて他の形式の軸受を用いることも可能である。ここで、ころ軸受とは、円筒ころ軸受および針状ころ軸受をいう。
【0035】
図1に示す各ローラ17は、各ローラ17の中心とそのローラ17の両側に隣り合うローラ17,17の中心とを共通して通る仮想円弧の半径が、ガイドベース15のカム軸3側の端部からクランク軸1側の端部に向かうに従って小さくなるように配置されている。また、各ローラ17は、各ローラ17の中心とそのローラ17の両側に隣り合うローラ17,17の中心とを共通して通る仮想円弧の半径が小さい領域ほどローラ17の中心間距離が狭くなるように配置されている。
【0036】
以下、図8(a)および(b)に示すように、各ローラ17をカム軸3側からクランク軸1側に向かって順にローラ17,17,17,17,・・・と称してその配置を具体的に説明する。
【0037】
図8(a)に示すように、ローラ17の中心と、そのローラ17の両側に隣り合う2つのローラ17,17の中心とを共通して通る仮想円弧Aを想定する。次に、図8(b)に示すように、ローラ17の中心と、そのローラ17の両側に隣り合う2つのローラ17,17の中心とを共通して通る仮想円弧Aを想定する。そうすると、図8(a)に示すローラ17,17,17の中心を共通して通る仮想円弧Aの中心Oと、図8(b)に示すローラ17,17,17の中心を共通して通る仮想円弧Aの中心Oは異なる位置にあり、この2つの仮想円弧A,Aの半径R,Rを比較したときに、カム軸3側の仮想円弧Aの半径Rよりも、クランク軸1側の仮想円弧Rの半径Rの方が小さくなるようにローラ17〜17が配置されている。
【0038】
図示しないが、他のローラ17〜17についても同様に、ローラ17の中心と、そのローラ17の両側に隣り合う2つのローラ17,17の中心とを共通して通る仮想円弧A〜Aを想定した場合、これらの仮想円弧A〜Aの半径R〜Rが、カム軸3側からクランク軸1側に向かうに従って小さくなるように各ローラ17〜17が配置されている。
【0039】
このように、両端のローラ17、17を除く全てのローラ17〜17について、ローラ17の中心と、そのローラ17の両側に隣り合う2つのローラ17,17の中心とを共通して通る仮想円弧A〜Aの半径R〜Rがカム軸3側からクランク軸1側に向かうに従って小さくなるように各ローラ17〜17が配置されている。
【0040】
ここで、半径R〜Rがカム軸3側からクランク軸1側に向かうに従って小さくなるとは、半径R〜Rの中に、カム軸3側からクランク軸1側に向かって大きさが変化しないものが含まれていてもよく、その他の半径R〜Rが、カム軸3側からクランク軸1側に向かって小さくなっていれば足りる。
【0041】
このように、仮想円弧A〜Aの半径R〜Rが、ガイドベース15のカム軸3側の端部からクランク軸1側の端部に向かうに従って小さくなるように各ローラ17〜17を配置することにより、図1に示すクランク軸1のスプロケット2に対するチェーン5の巻き角をできるだけ大きくし、クランク軸1のスプロケット2の1歯あたりの負荷を抑えることが可能となる。
【0042】
ところで、図8(a)および(b)に示す各ローラ17〜17に案内されてチェーン5が走行するとき、図8(a)に示すローラ17,17,17の領域よりも、図8(b)に示すローラ17,17,17の領域の方が、チェーン5の走行方向の曲がりが大きい。そのため、チェーン5からローラ17にかかる負荷よりも、チェーン5からローラ17にかかる負荷の方が大きくなりやすい。
【0043】
そこで、各ローラ17〜17にかかる負荷を均一化するため、ローラ17,17,17の中心間距離が、ローラ17,17,17の中心間距離よりも狭くなるように各ローラ17〜17が配置されている。具体的には、ローラ17,17の中心間距離をD12、ローラ17,17の中心間距離をD23、ローラ17,17の中心間距離をD34としたときに、
12+D23>D23+D34
の関係が成立するように各ローラ17〜17の中心間距離D12、D23、D34が設定されている。
【0044】
図示しないが、他のローラ17〜17の中心間距離についても同様に、仮想円弧A〜Aの半径R〜Rが小さい領域ほど、その領域のローラ17〜17の中心間距離が狭くなるように各ローラ17〜17が配置されている。
【0045】
また、図1に示す各ローラ17とチェーンテンショナ8の相対位置関係に着目すると、チェーンテンショナ8で押圧されるガイドベース15の受け部15aに近い側(クランク軸1側)のローラ17の方が、受け部15aから遠い側(カム軸3側)のローラ17よりも、チェーンテンショナ8の押圧力の作用点に近く、チェーンテンショナ8からローラ17にかかる負荷が大きくなりやすい。この点からも、各ローラ17にかかる負荷を均一化するため、チェーンテンショナ8で押圧されるガイドベース15の受け部15aから遠い側のローラ17から近い側のローラ17に向かうに従って、各ローラ17の中心間距離が狭くなるようにローラ17を配置すると好ましい。
【0046】
図1に示すように、固定側のチェーンガイド9も、揺動側のチェーンガイド7と同様に、チェーン5の走行方向に沿って間隔をおいて設けられた複数のローラ33を有するが、このローラ33は等間隔に配置されている。
【0047】
次に、上記構成からなるチェーン伝動装置の動作例を説明する。
【0048】
エンジンが作動しているとき、駆動スプロケット2と従動スプロケット4の間でチェーン5が走行し、そのチェーン5によってクランク軸1からカム軸3にトルクが伝達される。このとき、揺動側のチェーンガイド7は、チェーンテンショナ8の付勢力でチェーン5を押圧することによりチェーン5の張力を一定に保ち、固定側のチェーンガイド9は、理想的なチェーン5の走行ラインを保ちながらチェーン5の振動を抑制する。
【0049】
ここで、チェーンガイド7の各ローラ17は、チェーン5を構成する各コマの背部側の縁に接触しながら回転し、チェーン5とチェーンガイド7の接触が転がり接触なので、チェーン5の走行抵抗が小さく、トルクの伝達ロスが小さい。
【0050】
この実施形態のチェーンガイド7は、ローラ17にかかる負荷が大きい領域(すなわちクランク軸1に近い領域)ほどローラ17の中心間距離が狭いので、各ローラ17にかかる負荷が均一化される。そのため、各ローラ17を支持するローラ軸16の寿命を全体として延ばすことができ、優れた耐久性を発揮する。
【0051】
クランク軸1の回転をカム軸3に伝達するチェーン5としては、サイレントチェーン、ローラチェーン、またはローラチェーンからローラを省いたブシュチェーン等を使用することができる。
【符号の説明】
【0052】
2 駆動スプロケット
4 従動スプロケット
5 チェーン
6 支点軸
7 チェーンガイド
8 チェーンテンショナ
15 ガイドベース
16 ローラ軸
17 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク伝達用チェーン(5)の外周一部に配置されて、そのチェーン(5)の走行方向に長く延びるガイドベース(15)と、そのガイドベース(15)にチェーン(5)の走行方向に沿って間隔をおいて取り付けられた複数のローラ軸(16)と、その各ローラ軸(16)に回転可能に支持されたローラ(17)とからなるチェーンガイドにおいて、
前記各ローラ(17)の中心間距離をローラ(17)にかかる負荷が大きい領域ほど狭くなるように設定したことを特徴とするチェーンガイド。
【請求項2】
前記ローラ(17)にかかる負荷が大きい領域は、前記各ローラ(17)の中心とそのローラ(17)の両側に隣り合うローラ(17,17)の中心とを共通して通る仮想円弧の半径がガイドベース(15)の一端部から他端部に向かうに従って小さくなるように前記各ローラ(17)が配置されたチェーンガイドの前記仮想円弧の半径が小さい領域である請求項1に記載のチェーンガイド。
【請求項3】
前記ローラ(17)にかかる負荷が大きい領域は、前記ガイドベース(15)が一端部を中心として揺動可能に支持され、他端部がチェーンテンショナ(8)で押圧されるチェーンガイドの前記チェーンテンショナ(8)で押圧される側の端部に近い領域である請求項1または2に記載のチェーンガイド。
【請求項4】
前記ローラ(17)を支持する各ローラ軸(16)が、光輝焼入れされた中実の円柱体である請求項1から3のいずれかに記載のチェーンガイド。
【請求項5】
全部の前記ローラ(17)を不等間隔に配置した請求項1から4のいずれかに記載のチェーンガイド。
【請求項6】
駆動スプロケット(2)と従動スプロケット(4)の間に掛け渡されたチェーン(5)と、そのチェーン(5)の弛み側に設けられた揺動可能なチェーンガイド(7)と、そのチェーンガイド(7)をチェーン(5)に向けて押圧するチェーンテンショナ(8)とを有するチェーン伝動装置において、
前記チェーンガイド(7)が請求項1から5のいずれかに記載のチェーンガイドであることを特徴とするチェーン伝動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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