説明

チェーンガイド機構

【課題】摺動面積を減少して走行摩擦抵抗を低減するとともに、走行案内シューの寸法精度が高く、かつ、伝動チェーンと走行案内シューとが円滑に接触・離脱し、騒音や振動を低減するチェーンガイド機構を提供すること。
【解決手段】伝動チェーン120の外リンクプレート121と内リンクプレート122が異なる高さのプレートで構成され、走行案内シュー110が端部から徐々に段差が小さくなり平坦案内面に繋がるように構成され、伝動チェーン120の走行時に、進入側では先行する高さの高いプレートの次に隣接する高さの低いプレートより1つ以上後方の高さの低いプレートが順次接触し、離脱側では先行する高さの低いプレートの次に隣接する高さの高いプレートより1つ以上後方の高さの高いプレートが順次離脱する形状に構成された段差案内面111を有していること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エンジンルーム内のクランク軸とカム軸の夫々に設けたスプロケット間に無端懸回したローラチェーン等の伝動チェーンを走行案内シューによって張力保持、摺動案内を行うチェーンガイド機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、伝動チェーンの張力を適正に保持するテンショナレバーシューおよび伝動チェーンの走行案内シュー等の横断面形状は、その長手方向全長に亘って同一の横断面形状を有し、例えばローラチェーンにおいては、ローラチェーンの一対の外リンクプレートおよび内リンクプレートのすべての端面が走行案内シューの走行案内面の長手方向全長に亘って押接摺動している。
なお、走行案内シューはテンショナレバーおよびガイド部材等のシュー取付部材に取付けられてその形状を保持している。
【0003】
このようなチェーンガイド機構において、摺動面積の減少による走行摩擦抵抗の低減のため、走行案内シューの横断面形状を伝動チェーンの進入側および離脱側において伝動チェーンのすべての外リンクプレートおよび内リンクプレートの端面を摺動案内する平坦案内面を形成し、進入側と離脱側の中間区間において外リンクプレートあるいは内リンクプレートのいずれかの一方の端面を摺動案内する凸状押接面を形成し、平坦案内面と凸状押接面とを連続面で接続したものが公知である。
【0004】
この公知のチェーンガイド機構500の走行案内シュー510は、図11に示すように、シュー取付部材550に取り付けられており、走行案内シュー510の進入側および離脱側には平坦案内面512が形成され、その中間区間は段差案内面511が形成され、該段差案内面511では伝動チェーン520の外リンクプレート521あるいは内リンクプレート522のいずれか一方の端面が摺動案内される。
【0005】
そして、伝動チェーン520の外リンクプレート521および内リンクプレート522は同じ高さを有し、走行案内シュー510の段差案内面511は、図12(A)に示すように、両側部に伝動チェーン520の外リンクプレート521の端面のみを摺動案内する凸状押接面513が形成され中央部に凹溝部514が形成された形状、あるいは、図12(B)に示すように、中央部に伝動チェーン520の内リンクプレート522の端面のみを摺動案内する凸状押接面513が形成された形状に構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3269011号公報(第2頁、図2、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記公知のチェーンガイド機構500は、走行案内シュー510の進入側および離脱側において平坦案内面512が存在するため摺動面積の減少は限られたものとなっていた。
また、走行案内シュー510が、中間部分において凹凸のある断面形状となるため、熱容量や内部残留応力の差により成型時や使用時に歪が生じやすく、寸法精度が悪化するという問題があった。
【0008】
さらに、走行案内シューの摺動面を全て平坦面とし、伝動チェーンの外リンクプレートと内リンクプレートの高さを変えることで外リンクプレートあるいは内リンクプレートのいずれか一方の端面のみを摺動案内することも考えられるが、その場合、摺動案内される外リンクプレートあるいは内リンクプレートのみが走行案内シューと接触・離脱を繰り返すこととなるため、衝撃が大きく騒音や振動が増大するという問題があった。
【0009】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、摺動面積を減少して走行摩擦抵抗を低減するとともに、走行案内シューの寸法精度が高く、かつ、伝動チェーンと走行案内シューとが円滑に接触・離脱し、騒音や振動を低減するチェーンガイド機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本請求項1に係る発明は、外リンクプレートと内リンクプレートを有する伝動チェーンと、前記伝動チェーンのプレートの端面を摺動案内する走行案内シューとを有するチェーンガイド機構において、前記伝動チェーンの外リンクプレートと内リンクプレートが、異なる高さのプレートで構成され、前記走行案内シューが、前記伝動チェーンの進入側端部に凸状押接面を設けて外リンクプレートと内リンクプレートの摺接面を異なる高さとした段差案内面を有し、該段差案内面が、端部から徐々に段差が小さくなり平坦案内面に繋がるように構成され、前記伝動チェーンの走行時に先行する高さの高いプレートの次に隣接する高さの低いプレートより1つ以上後方の高さの低いプレートが順次接触する形状に構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【0011】
本請求項2に係る発明は、外リンクプレートと内リンクプレートを有する伝動チェーンと、前記伝動チェーンのプレートの端面を摺動案内する走行案内シューとを有するチェーンガイド機構において、前記伝動チェーンの外リンクプレートと内リンクプレートが、異なる高さのプレートで構成され、前記走行案内シューが、前記伝動チェーンの離脱側端部に凸状押接面を設けて外リンクプレートと内リンクプレートの摺接面を異なる高さとした段差案内面を有し、該段差案内面が、端部から徐々に段差が小さくなり平坦案内面に繋がるように構成され、前記伝動チェーンの走行時に先行する高さの低いプレートの次に隣接する高さの高いプレートより1つ以上後方の高さの高いプレートが順次離脱する形状に構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【0012】
本請求項3に係る発明は、外リンクプレートと内リンクプレートを有する伝動チェーンと、前記伝動チェーンのプレートの端面を摺動案内する走行案内シューとを有するチェーンガイド機構において、前記伝動チェーンの外リンクプレートと内リンクプレートが、異なる高さのプレートで構成され、前記走行案内シューが、前記伝動チェーンの進入側端部および離脱側端部に凸状押接面を設けて外リンクプレートと内リンクプレートの摺接面を異なる高さとした段差案内面を有し、該段差案内面が、端部から徐々に段差が小さくなり平坦案内面に繋がるように構成され、進入側において前記伝動チェーンの走行時に先行する高さの高いプレートの次に隣接する高さの低いプレートより1つ以上後方の高さの低いプレートが順次接触し、離脱側において前記伝動チェーンの走行時に先行する高さの低いプレートの次に隣接する高さの高いプレートより1つ以上後方の高さの高いプレートが順次離脱する形状に構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【0013】
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたチェーンガイド機構の構成に加えて、前記段差案内面の段差が、最初に前記伝動チェーンが接触する位置において外リンクプレートと内リンクプレートの高さの差の1/2以上の高さを有することにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0014】
本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載されたチェーンガイド機構の構成に加えて、前記段差案内面が、端部から前記伝動チェーンの4ピッチ分以上の長さに渡って設けられていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0015】
本請求項1に係る発明のチェーンガイド機構は、外リンクプレートと内リンクプレートを有する伝動チェーンと、伝動チェーンのプレートの端面を摺動案内する走行案内シューとを有するチェーンガイド機構において、伝動チェーンの外リンクプレートと内リンクプレートが異なる高さのプレートで構成され、走行案内シューが伝動チェーンの進入側端部に凸状押接面を設けて外リンクプレートと内リンクプレートの摺接面を異なる高さとした段差案内面を有し、該段差案内面が端部から徐々に段差が小さくなり平坦案内面に繋がるように構成され、伝動チェーンの走行時に先行する高さの高いプレートの次に隣接する高さの低いプレートより1つ以上後方の高さの低いプレートが順次接触する形状に構成されていることにより、走行案内シューのほぼ全面に渡って外リンクプレートあるいは内リンクプレートの一方のみが摺接するため摺動面積が減少して走行摩擦抵抗が低減されるとともに、走行案内シューの凹凸のある断面形状部分が少なくなり寸法精度を高くすることができ、かつ、走行案内シューへの伝動チェーンの進入時には走行方向前後の外リンクプレートと内リンクプレートとが交互に接触するため、円滑に接触し騒音や振動が低減される。
【0016】
本請求項2に係る発明のチェーンガイド機構は、外リンクプレートと内リンクプレートを有する伝動チェーンと、伝動チェーンのプレートの端面を摺動案内する走行案内シューとを有するチェーンガイド機構において、伝動チェーンの外リンクプレートと内リンクプレートが異なる高さのプレートで構成され、走行案内シューが伝動チェーンの離脱側端部に凸状押接面を設けて外リンクプレートと内リンクプレートの摺接面を異なる高さとした段差案内面を有し、該段差案内面が端部から徐々に段差が小さくなり平坦案内面に繋がるように構成され、伝動チェーンの走行時に先行する高さの低いプレートの次に隣接する高さの高いプレートより1つ以上後方の高さの高いプレートが順次離脱する形状に構成されていることにより、走行案内シューのほぼ全面に渡って外リンクプレートあるいは内リンクプレートの一方のみが摺接するため摺動面積が減少して走行摩擦抵抗が低減されるとともに、走行案内シューの凹凸のある断面形状部分が少なくなり寸法精度を高くすることができ、かつ、走行案内シューからの伝動チェーンの離脱時には走行方向前後の外リンクプレートと内リンクプレートとが交互に離脱するため、円滑に離脱し騒音や振動が低減される。
【0017】
本請求項3に係る発明のチェーンガイド機構は、外リンクプレートと内リンクプレートを有する伝動チェーンと、伝動チェーンのプレートの端面を摺動案内する走行案内シューとを有するチェーンガイド機構において、伝動チェーンの外リンクプレートと内リンクプレートが異なる高さのプレートで構成され、走行案内シューが伝動チェーンの進入側端部および離脱側端部に凸状押接面を設けて外リンクプレートと内リンクプレートの摺接面を異なる高さとした段差案内面を有し、該段差案内面が端部から徐々に段差が小さくなり平坦案内面に繋がるように構成され、進入側において伝動チェーンの走行時に先行する高さの高いプレートの次に隣接する高さの低いプレートより1つ以上後方の高さの低いプレートが順次接触し、離脱側において伝動チェーンの走行時に先行する高さの低いプレートの次に隣接する高さの高いプレートより1つ以上後方の高さの高いプレートが順次離脱する形状に構成されていることにより、走行案内シューのほぼ全面に渡って外リンクプレートあるいは内リンクプレートの一方のみが摺接するため摺動面積が減少して走行摩擦抵抗が低減されるとともに、走行案内シューの凹凸のある断面形状部分が少なくなり寸法精度を高くすることができ、かつ、走行案内シューへの伝動チェーンの進入時および走行案内シューからの伝動チェーンの離脱時には走行方向前後の外リンクプレートと内リンクプレートとが交互に接触・離脱するため、円滑に接触・離脱し騒音や振動が低減される。
【0018】
本請求項4に係る発明のチェーンガイド機構は、請求項1乃至請求項3のいずれかに係るチェーンガイド機構が奏する効果に加えて、段差案内面の段差が最初に伝動チェーンが接触する位置において外リンクプレートと内リンクプレートの高さの差の1/2以上の高さを有することにより、伝動チェーンの振動や進入角度の微妙な変化が生じても、確実に外リンクプレートと内リンクプレートとが順次交互に接触・離脱するため、さらに円滑に接触・離脱し騒音や振動が低減される。
【0019】
本請求項5に係る発明のチェーンガイド機構は、請求項1乃至請求項4のいずれかに係るチェーンガイド機構が奏する効果に加えて、段差案内面が端部から伝動チェーンの4ピッチ分以上の長さに渡って設けられていることにより、接触開始時・離脱時の走行案内シューと伝動チェーンの相対角度が小さくなり、さらに円滑に接触・離脱し騒音や振動が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のチェーンガイド機構の使用形態の説明図。
【図2】本発明の一実施例であるチェーンガイド機構の走行案内シューおよびシュー取付部材の側面図。
【図3】図2の走行案内シューの段差案内面の斜視図。
【図4】図3の伝動チェーン当接断面図。
【図5】図2の他の実施例の走行案内シューの段差案内面の斜視図。
【図6】図5の伝動チェーン当接断面図。
【図7】本発明の一実施例であるチェーンガイド機構の動作説明図。
【図8】本発明の一実施例であるチェーンガイド機構の動作説明図。
【図9】本発明の一実施例であるチェーンガイド機構の動作説明図。
【図10】本発明の一実施例であるチェーンガイド機構の動作説明図。
【図11】従来のチェーンガイド機構の走行案内シューおよびシュー取付部材の側面図。
【図12】図11の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、外リンクプレートと内リンクプレートを有する伝動チェーンと、伝動チェーンのプレートの端面を摺動案内する走行案内シューとを有するチェーンガイド機構において、伝動チェーンの外リンクプレートと内リンクプレートが異なる高さのプレートで構成され、走行案内シューが伝動チェーンの進入側端部および/または離脱側端部に凸状押接面を設けて外リンクプレートと内リンクプレートの摺接面を異なる高さとした段差案内面を有し、該段差案内面が端部から徐々に段差が小さくなり平坦案内面に繋がるように構成され、進入側において伝動チェーンの走行時に先行する高さの高いプレートの次に隣接する高さの低いプレートより1つ以上後方の高さの低いプレートが順次接触する形状、および/または、離脱側において前記伝動チェーンの走行時に先行する高さの低いプレートの次に隣接する高さの高いプレートより1つ以上後方の高さの高いプレートが順次離脱する形状に構成され、摺動面積を減少して走行摩擦抵抗を低減するとともに、走行案内シューの寸法精度が高く、かつ、伝動チェーンと走行案内シューとが円滑に接触・離脱し、騒音や振動を低減するという効果を奏するものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【0022】
すなわち、本発明のチェーンガイド機構の走行案内シューは、テンショナレバー等の可動型のガイド部材に設けられても良く、固定型のガイド部材に設けられても良い。
また、ガイド部材に着脱可能に設けられても、ガイド部材と一体に成形されるものであっても良い。
【0023】
また、本発明のチェーンガイド機構の走行案内シューの具体的な素材としては、伝動チェーンとの摩擦抵抗の少ないものであれば如何なるものでも良く、特に、高温環境下で耐久性を発揮するとともに伝動チェーンの円滑な摺接走行を達成することが可能である素材が好適であり、例えば、ポリアミド6樹脂、ポリアミド46樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアセタール樹脂など合成樹脂材料などの素材を用いるのが好ましい。
【実施例1】
【0024】
以下に、本発明の実施例であるチェーンガイド機構について、図面に基づいて説明する。
本発明のチェーンガイド機構100は、例えばエンジンのタイミングシステムの伝動チェーンのチェーンガイドに使用される。
エンジンのタイミングシステムは、図1に示すように、エンジンルーム内のクランク軸に取付けた駆動スプロケットS1とカム軸に取付けた一対の従動スプロケットS2、S3間に無端懸回した伝動チェーン120を用いて、伝動チェーン120の張力を適正に保持して伝動チェーン120をガイドするテンショナレバーTと伝動チェーン120の走行を案内する固定ガイド部材Gとが押接される。
【0025】
テンショナレバーTは、エンジンルームに取付軸Bで揺動自在に取付けられ、エンジンルームに取付部材Fによって固定されたハウジング内のプランジャPにより押圧付勢されており、固定ガイド部材Gはエンジンルームに取付軸B1、B2で固定されている。
【0026】
本発明の一実施例であるチェーンガイド機構100は上記の固定ガイド部材Gに使用され、図2に示すように、シュー取付部材150のチェーン押接面側に走行案内シュー110が取り付けられており、そのチェーン走行面側は両端部が段差案内面111、中央部が平坦案内面112となるように構成されている。
【0027】
段差案内面111は、伝動チェーン120の内リンクプレート122が外リンクプレート121より背が高い場合、図3、図4に示すように、両側部に伝動チェーン120の外リンクプレート121の端面のみを摺動案内する凸状押接面113が形成され、中央部に凹溝部114が形成され、平坦案内面112に向けて凸状押接面113と凹溝部114の段差が徐々に小さくなって滑らかに平坦案内面112と接続するように形成されている。
【0028】
また、伝動チェーン120の外リンクプレート121が内リンクプレート122より背が高い場合、図5、図6に示すように、中央部に伝動チェーン120の内リンクプレート122の端面のみを摺動案内する凸状押接面113が形成され両側部に凹部115が形成され、平坦案内面112に向けて凸状押接面113と凹部115の段差が徐々に小さくなって滑らかに平坦案内面112と接続するように形成されている。
【0029】
次に、本発明の一実施例であるチェーンガイド機構100において伝動チェーン120が走行案内シュー110の段差案内面111に進入する際の動作について説明する。
この動作例では、伝動チェーン120の内リンクプレート122は外リンクプレート121より背が高く、段差案内面111は両側部に伝動チェーン120の外リンクプレート121の端面のみを摺動案内する凸状押接面113が形成され、中央部に凹溝部114が形成され、平坦案内面112に向けて凸状押接面113と凹溝部114の段差が徐々に小さくなって滑らかに平坦案内面112と接続するように形成されている。
【0030】
まず、図7に示すように、内リンクプレート122Aが段差案内面111の凹溝部114に摺接している状態から矢印方向にチェーンが走行すると、図8に示すように、隣接する外リンクプレート121Bより一つ後方の外リンクプレート121Dが段差案内面111の凸状押接面113に接触する。
なお、隣接する外リンクプレート121Bは、図7の状態となる前に既に段差案内面111の凸状押接面113から離脱している。
【0031】
さらに矢印方向にチェーンが走行すると、図9に示すように、内リンクプレート122Cが段差案内面111の凹溝部114に接触し、さらに矢印方向にチェーンが走行すると、図10に示すように、外リンクプレート121Dが段差案内面111の凸状押接面113から離脱する。
【0032】
そして、図10に示す内リンクプレート122C、外リンクプレート121Dの位置が、図7に示す内リンクプレート122A、外リンクプレート121Bの位置に相当し、以降、内リンクプレート122および外リンクプレート121リンクは同様の順序で接触、離脱が繰り返される。
【0033】
すなわち、内リンクプレート122が段差案内面111に接触した後、隣接する外リンクプレート121より一つ後方の外リンクプレート121が段差案内面111に接触し、その次に隣接する一つ前方の内リンクプレート122が段差案内面111に接触するという順に前後に交互に段差案内面111に接触し、背の高い内リンクプレート122は段差案内面111に接触後もそのまま摺接を継続し、背の低い外リンクプレート121は隣接する一つ前方の内リンクプレート122が段差案内面111に接触後に離脱する。
なお、走行案内シュー110の伝動チェーン120離脱側も同様の形状とすることで、内リンクプレート122および外リンクプレート121は上記接触・離脱と逆の動作となる。
【0034】
このことで、走行案内シュー110への伝動チェーン120の進入・離脱時には走行方向前後の外リンクプレート121と内リンクプレート122とが交互に接触・離脱することで騒音や振動が低減されるとともに、走行案内シュー110のほぼ全面に渡って内リンクプレート122のみが摺接するため、摺動面積が減少して走行摩擦抵抗が低減される。
また、走行案内シュー110の段差案内面111は両端部付近のみでよいため、凹凸のある断面形状部分が少なくなり寸法精度を高くすることができる。
【0035】
なお、各図の寸法関係は、説明のために誇張あるいは変形しており、段差案内面111の凸状押接面113と凹溝部114(凹部115)との段差の高さは、最初に伝動チェーン120が接触する位置において外リンクプレート121と内リンクプレート122の高さの差の1/2以上の高さを有することが好適である。
そうすることで、伝動チェーン120の振動や進入角度に微妙な変化が生じても、確実に外リンクプレート121と内リンクプレート122とが順次交互に接触・離脱するため、円滑に接触・離脱し騒音や振動が低減される。
【0036】
また、段差案内面111は、端部から伝動チェーン120の4ピッチ分以上の長さに渡って設けるのが好適であり、そのことにより、接触開始時・離脱時の走行案内シュー110と伝動チェーン120の相対角度が小さくなり、さらに円滑に接触・離脱し騒音や振動が低減される。
【0037】
以上説明したように、本発明によれば、走行案内シューのほぼ全面に渡って外リンクプレートあるいは内リンクプレートの一方のみが摺接するため摺動面積が減少して走行摩擦抵抗が低減されるとともに、走行案内シューの凹凸のある断面形状部分が少なくなり寸法精度を高くすることができ、かつ、走行案内シューへの伝動チェーンの進入・離脱時には走行方向前後の外リンクプレートと内リンクプレートとが交互に接触・離脱するため、円滑に接触・離脱し騒音や振動が低減されるなど、その効果は甚大である。
【0038】
なお、本発明のチェーンガイド機構が摺接するチェーンはブシュチェーンやサイレントチェーンでも良く、サイレントチェーンの場合、リンクプレートは幅方向に複数枚がほぼ密に存在するため、段差案内面111の凸状押接面113と凹溝部114(凹部115)が交互に設けられた櫛状の形状となる。
【0039】
また、上記実施例では、内リンクプレート122の次に段差案内面111に接触する外リンクプレート121を、隣接する外リンクプレート121より一つ後方の外リンクプレート121としたが、さらに2つ以上後方の外リンクプレート121であっても良い。
【符号の説明】
【0040】
100、500 ・・・チェーンガイド機構
110、510 ・・・走行案内シュー
111、511 ・・・段差案内面
112、512 ・・・平坦案内面
113、513 ・・・凸状押接面
114、514 ・・・凹溝部
115 ・・・凹部
120、520 ・・・伝動チェーン
121、521 ・・・外リンクプレート
122、522 ・・・内リンクプレート
150、550 ・・・シュー取付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外リンクプレートと内リンクプレートを有する伝動チェーンと、前記伝動チェーンのプレートの端面を摺動案内する走行案内シューとを有するチェーンガイド機構において、
前記伝動チェーンの外リンクプレートと内リンクプレートが、異なる高さのプレートで構成され、
前記走行案内シューが、前記伝動チェーンの進入側端部に凸状押接面を設けて外リンクプレートと内リンクプレートの摺接面を異なる高さとした段差案内面を有し、
該段差案内面が、端部から徐々に段差が小さくなり平坦案内面に繋がるように構成され、前記伝動チェーンの走行時に先行する高さの高いプレートの次に隣接する高さの低いプレートより1つ以上後方の高さの低いプレートが順次接触する形状に構成されていることを特徴とするチェーンガイド機構。
【請求項2】
外リンクプレートと内リンクプレートを有する伝動チェーンと、前記伝動チェーンのプレートの端面を摺動案内する走行案内シューとを有するチェーンガイド機構において、
前記伝動チェーンの外リンクプレートと内リンクプレートが、異なる高さのプレートで構成され、
前記走行案内シューが、前記伝動チェーンの離脱側端部に凸状押接面を設けて外リンクプレートと内リンクプレートの摺接面を異なる高さとした段差案内面を有し、
該段差案内面が、端部から徐々に段差が小さくなり平坦案内面に繋がるように構成され、前記伝動チェーンの走行時に先行する高さの低いプレートの次に隣接する高さの高いプレートより1つ以上後方の高さの高いプレートが順次離脱する形状に構成されていることを特徴とするチェーンガイド機構。
【請求項3】
外リンクプレートと内リンクプレートを有する伝動チェーンと、前記伝動チェーンのプレートの端面を摺動案内する走行案内シューとを有するチェーンガイド機構において、
前記伝動チェーンの外リンクプレートと内リンクプレートが、異なる高さのプレートで構成され、
前記走行案内シューが、前記伝動チェーンの進入側端部および離脱側端部に凸状押接面を設けて外リンクプレートと内リンクプレートの摺接面を異なる高さとした段差案内面を有し、
該段差案内面が、端部から徐々に段差が小さくなり平坦案内面に繋がるように構成され、進入側において前記伝動チェーンの走行時に先行する高さの高いプレートの次に隣接する高さの低いプレートより1つ以上後方の高さの低いプレートが順次接触し、離脱側において前記伝動チェーンの走行時に先行する高さの低いプレートの次に隣接する高さの高いプレートより1つ以上後方の高さの高いプレートが順次離脱する形状に構成されていることを特徴とするチェーンガイド機構。
【請求項4】
前記段差案内面の段差が、最初に前記伝動チェーンが接触する位置において外リンクプレートと内リンクプレートの高さの差の1/2以上の高さを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のチェーンガイド機構。
【請求項5】
前記段差案内面が、端部から前記伝動チェーンの4ピッチ分以上の長さに渡って設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のチェーンガイド機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−281362(P2010−281362A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134036(P2009−134036)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】