説明

チオエステル末端化水溶性ポリマーおよびそれを用いてポリペプチドのN末端を改変する方法

【課題】ポリペプチドのα−アミンに対して特異的に、ポリマーを結合体化させるための試薬および方法を提供する。
【解決手段】ポリペプチドのα−アミンに対して特異的に、ポリマーを結合体化させた結合体であり、N末端にシステイン残基またはヒスチジン残基を有するポリペプチドのα−アミンに特異的に結合体化し得る末端チオエステル部分を有する、単官能性PEG、二官能性PEG、および多官能性PEGならびに関連するポリマーであり、PEG分子とポリペプチドとの間にアミド結合を生成するような、ポリペプチドのN末端システイン残基またはヒスチジン残基との適切な反応性を有する、反応性チオエステル末端PEGポリマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ポリペプチドのN末端に選択的に結合体化するために有用な水溶性ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
親水性ポリマー(ポリ(エチレングリコール)(PEGと省略される)、ポリ(エチレンオキシド)(PEOと省略される)としても知られている)の分子および表面への共有結合は、バイオテクノロジーおよび医学においてかなり有用である。PEGは、水および多くの有機溶媒中で有利な溶解特性を有し、毒性および免疫原性が欠如するポリマーである。PEGの1つの用途は、ポリマーを水不溶性分子に共有結合させ、得られたPEG−分子結合体の溶解度を改善することである。例えば、水不溶性薬物パクリタキセルは、PEGに結合された場合、水溶性になることが示された。Greenwaldら、J.Org.Chem.,60:331−336(1995)。PEGはまた、ポリペプチドの改変およびタンパク質療法において、ますます使用されてきている。
【0003】
治療適用のためのポリペプチド(タンパク質を含む)の使用は、種々の発現系に由来するヒトポリペプチドの組換え発現のための改善法およびインビボでの送達の改善法の両方に主に起因して、近年拡大されてきた。短い循環半減期、免疫原性およびタンパク質分解を含むポリペプチド療法に関連する多くの欠点は、遺伝子療法、特異的変異誘発またはシャッフリング変異誘発によるエピトープ変異、天然ポリマーまたは合成ポリマーによるエピトープ領域の遮蔽、融合タンパク質、ならびに保護および遅延放出のための薬物送達ビヒクルへのポリペプチドの組込みを含む種々のアプローチによって改善される。
【0004】
タンパク質のポリマー改変(例えば、ポリ(エチレングリコール)の共有結合)は、治療に有用なタンパク質の薬理学的特性および生物学的特性を改善する方法として通俗性を獲得した。例えば、特定のポリ(エチレングリコール)結合体化タンパク質は、これらのペグ化されない対照物と比較した場合、血漿半減期の有意な増加、抗原性および免疫原性の有意な減少、溶解度の増加ならびにタンパク質分解の有意な減少を有することが示された。前記の特徴に影響する因子は、非常に多く、タンパク質それ自体の特性(タンパク質に結合されるポリ(エチレングリコール)または他のポリマー鎖の数、タンパク質に結合されるポリマー鎖の分子量および構造、タンパク質にポリマーを結合するために使用される化学(すなわち、特定のリンカー)、ならびにタンパク質上のポリマー改変部位の位置)を含む。
【0005】
PEGをタンパク質のような分子に結合するために、末端に官能基を有するPEGの誘導体を調製することによってPEGを「活性化する」ことは、しばしば必要である。この官能基は、PEGに結合される分子上で利用可能な反応性基の型に基づいて選択される。例えば、この官能基は、PEG−タンパク質結合体を形成するために、タンパク質上のアミノ基と反応するように選択され得る。
【0006】
タンパク質に非特異的にまたはランダムにポリ(エチレングリコール)を結合する種々の方法が、開発されてきた。最も一般的には、求電子的に活性化されたポリ(エチレングリコール)は、タンパク質の見出される求核性側鎖と反応される。リジン残基およびN末端に見出されるα−アミン基およびε−アミン基への活性化ポリ(エチレングリコール)の結合は、米国特許第6,057,292号に記載されるような結合体生成物の混合物を生じる。例えば、この結合体は、種々の数(0〜タンパク質中のα−アミン基およびε−アミン基の数の範囲である)のポリ(エチレングリコール)分子をタンパク質分子に結合している結合体化タンパク質(「PEGマー」)の集団からなり得る。しばしば、ランダムなペグ化のアプローチは、生成されたPEGマー生成物の比の変動に起因して、所望されず、特定の場合において、単一で別個のPEG−タンパク質結合体生成物に対して、所望される。非部位特異的ペグ化方法論を使用することによって単独で改変されるタンパク質分子について、ポリ(エチレングリコール)部分は、多くの種々のアミン部位のいずれか1つの部位にて結合され得る。あるいは、この型の非特異的ペグ化は、特に、タンパク質に結合される1つを超えるPEGを有する結合体に対して,結合体化タンパク質の治療有用性の部分的または完全な損失を生じ得る。
【0007】
部位特異的PEG結合または選択的PEG結合のためのいくつかの方法が、記載される。例えば、WO99/45026は、ヒドラジン官能基またはセミカルバジド官能基で終結するポリマーとの反応に適したアルデヒド官能基を形成するための、N末端セリン残基の化学修飾を示唆する。米国特許第5,824,784号および同第5,985,265号は、N末端での選択的攻撃を促進する、還元アルキル化条件およびpH下でタンパク質のアミノ末端と、カルボキシル基を保有するポリマーとの反応を示唆する。WO99/03887ならびに米国特許第5,206,344号および同第5,766,897号は、タンパク質のアミノ酸配列に操作されたシステイン残基(システイン添加改変体)の部位特異的PEG化に関する。これらの方法は、非特異的結合を超えるいくつかの利点を提供するが、ポリペプチドの化学修飾または特定の反応条件(例えば、pH)の注意深い制御を必要としない部位特異的ポリマー結合体化タンパク質を提供するための、改善法および改善試薬に対する検討されていない持続した必要性が存在する。あるいは、その反応性アミノ官能基にてタンパク質を改変するための高い望みに起因して、PEG−ポリマー(PEGmer)の混合物ではなく、タンパク質の単一の同定された部位に結合されるPEGを有するタンパク質−ポリマー結合体を調製するための、特定のタンパク質アミノ基(例えば、N末端アミノ基)と選択的に反応する改善されたポリマー試薬に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第99/45026号公報
【特許文献2】米国特許第5,824,784号
【特許文献3】米国特許第5,985,265号明細書
【特許文献4】国際公開第99/03887号公報
【特許文献5】米国特許第5,206,344号明細書
【特許文献6】米国特許第5,766,897号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Greenwaldら、J.Org.Chem.,60:331−336(1995)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、後述するとおりの特徴を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、詳細に後述するとおりの構成を採用することにより、上記課題が解決される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、後述するとおりの効果が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、ポリマーをポリペプチドのα−アミノ基に特異的に結合するための試薬および方法を提供する。本発明は、N末端にシステインまたはヒスチジンを有するポリペプチドのα−アミンに特異的に結合し得るチオエステル(チオールエステルとも呼ぶ)部分を有する、単官能性PEG、二官能性PEG、および多官能性PEGならびに関連のポリマーを提供する。従って、本発明は、ポリペプチドのN末端システイン残基またはN末端ヒスチジン残基と部位特異的に反応し、アミド結合PEG−ポリペプチド結合体を生成するのに有効な反応性チオエステル末端PEGポリマーを提供する。
【0014】
1つの局面において、本発明は、以下の構造に結合した少なくとも1つの末端を有する水溶性非ペプチドポリマー骨格を含む、チオエステル末端反応性ポリマーを提供する:
【0015】
【化11】

【0016】
(ここで、
Lは、水溶性非ペプチドポリマー骨格への結合点であり;
Zは、加水分解に安定な結合または加水分解に不安定な結合(例えば、O、S、−NHCO−、−CONH−、−OC−、−NHCO−、または−OCNH−)であり;
aは、0または1であり;
各Xは、Hおよびアルキル(例えば、C1〜C6アルキル)から独立して選択され;
mは、0〜約12であり、好ましくは1〜約4であり;
Yは、ヘテロ原子、好ましくはOまたはSであり;そして
Qは、好ましくは、式−S−R(ここで、Rは、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、または置換複素環である)を有する硫黄含有脱離基である)。
【0017】
反応性ポリマーは、単官能性(例えば、mPEG)、二官能性、または多官能性であり得る。ポリマー骨格は、好ましくは、ポリ(アルキレングリコール)(例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール))、またはエチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマーである。他の適切なポリマー骨格の例としては、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリサッカリド、ならびにそれらのコポリマー、ターポリマー、および混合物が挙げられる。
【0018】
別の局面において、本発明は、N末端にシステイン分子またはヒスチジン分子を有するポリペプチドのポリマー結合体であって、以下の構造に結合した少なくとも1つの末端を有する水溶性非ペプチドポリマー骨格を含む、ポリマー結合体を提供する:
【0019】
【化12】

【0020】
(ここで、
L、Z、m、Y、X、およびaは、上記の通りであり、
Wは、−CHSHまたは
【0021】
【化13】

【0022】
であり、そして
ポリペプチドは、ポリペプチド分子であり、ここで、−NH−C(W)H−は、ポリペプチドのN末端システイン残基またはN末端ヒスチジン残基(1つの水素原子が除かれている)を表す。本発明のチオエステル末端ポリマーに結合体化され得るポリペプチドの例としては、タンパク質、タンパク質リガンド、酵素、サイトカイン、造血素、増殖因子、ホルモン、抗原、抗体、抗体フラグメント、レセプター、およびタンパク質フラグメントが挙げられるがこれらに限定されない。
【0023】
さらに別の局面において、N末端にシステイン分子またはヒスチジン分子を有するポリペプチドにポリマー誘導体を結合する方法がまた提供される。この方法は、N末端にシステイン分子またはヒスチジン分子を有するポリペプチド、および上記のようなチオエステル末端ポリマーの両方を提供する工程を包含する。ポリペプチドは、チオエステル末端ポリマーと反応されて、部位特異的な様式で、N末端ヒスチジン分子またはN末端システイン分子の残基と反応性ポリマーとの間にアミド結合を有する結合体を形成する。チオエステル末端ポリマーは、ポリペプチド中の他の位置の遊離アミン基と反応することなく、ポリペプチドのヒスチジン残基またはシステイン残基のN末端アミン基に選択的に結合する。
【0024】
(発明の詳細な説明)
ここで、本明細書中以下に、本発明をより詳細に記載する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で具現化され得、本明細書中に示される実施形態に限定されると解釈されるべきでなく;むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的でかつ完了しており、そして本発明の範囲を当業者十分に伝えるよう提供される。
【0025】
(I.定義)
本明細書中で使用される場合、以下の用語は、示されている意味を有する。
【0026】
本明細書中および添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」、「the」は、文脈上そうでないことが明確に示されていない限り、複数の参照を含む。
【0027】
用語「官能基」、「活性部分」、「反応性部位」、「化学反応基」、および「化学反応部位」は、当該分野において使用されており、そして本明細書中では、分子の明確な、規定可能な部分または単位を示す。これらの用語は、化学の分野においてある程度同義的であり、そして本明細書中では、何等かの機能または活性を発揮し、そして他の分子と反応性である分子の部分を示すために使用される。用語「活性な」は、官能基と関連して使用する場合、反応のために強触媒作用または高い非実用的な反応条件を必要とする基(すなわち、「非反応性」基または「不活性」基)とは対照的に、他の分子上の求電子性基または求核基と容易に反応する官能基を含むことが意図される。例えば、当該分野で理解されているように、用語「活性エステル」は、求核基(例えば、アミン)と容易に反応するエステルを含む。代表的な活性エステルとしては、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルまたは1−ベンゾトリアゾリルエステルが挙げられる。代表的に、活性エステルは、水性触媒中で、分単位でアミンと反応するが、特定のエステル(例えば、メチルエステルまたはエチルエステル)は、求核基と反応するために強い触媒を必要とする。本明細書中で使用する場合、用語「官能基」は、保護された官能基を含む。
【0028】
用語「保護された官能基」または「保護基(protecting group)」または「保護基(protective group)」とは、特定の反応条件下で、分子中の特定の化学的に活性な官能基の反応を防止またはブロックする部分(すなわち、保護基)の存在をいう。保護基は、保護される化学的に反応性の基の型、ならびに用いられる反応条件、および分子中のさらなる反応性基または保護基の存在(存在する場合)に依存して変わる。当該分野で公知の保護基は、Greene,T.W.ら、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS、第3版、John Wiley & Sons,New York,NY(1999)に見出され得る。
【0029】
用語「連結」または「リンカー」(L)は、好ましくは1つ以上の共有結合によって、相互連結部分(例えば、2つのポリマーセグメント)またはポリマーの末端と、生体活性因子(例えば、ポリペプチド)に上に存在する反応性官能基とを連結するために使用される原子または原子集合を言及するために使用される。本発明のリンカーは、加水分解安定性であり得るか、または生理学的に加水分解可能なリンカーもしくは酵素分解可能なリンカーを含み得る。
【0030】
「生理学的に加水分解可能」または「加水分解により分解可能」な結合は、生理学的条件下で水と反応する(すなわち、加水分解される)弱い結合である。pH8、25℃で、約30分未満の加水分解半減期を有する結合が好ましい。結合が水中で加水分解する傾向は、2つの中心原子を連結する連結の一般的な型だけではなく、これらの中心原子に結合した置換基にも依存する。適切な加水分解に不安定な連結または加水分解により分解可能な連結としては、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチドおよびオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
「加水分解安定性の」連結または結合とは、水中で実質的に安定である、すなわち、生理学的条件下で、長期間にわたって、目に見えるいずれの程度までも加水分解を受けない、化学結合、代表的には、共有結合をいう。加水分解に安定な連結の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:炭素−炭素結合(例えば、脂肪族鎖において)、エーテル、アミド、ウレタンなど。一般に、加水分解に安定な連結は、生理学的条件下で、一日あたり約1〜2%未満の加水分解速度を示す連結である。代表的な化学結合の加水分解速度は、ほとんどの標準的な化学教科書に見出され得る。
【0032】
「酵素的に不安定な」または分解可能な連結は、1つ以上の酵素によって分解され得る連結である。
【0033】
用語「ポリマー骨格」とは、ポリマーを形成する繰返しモノマー単位の共有結合された鎖をいう。例えば、PEGのポリマー骨格は、以下である:
−CHCHO−(CHCHO)−CHCH
ここで、nは、代表的に、約2〜約4000の範囲である。理解されているように、このポリマー骨格は、末端官能基またはポリマー骨格に沿って間隔を空けられたペンダント官能化側鎖に共有結合され得る。
【0034】
用語「反応性ポリマー」とは、少なくとも1つの反応性官能基を有するポリマーをいう。
【0035】
他に記載されない限り、本明細書中で、分子量は、数平均分子量(Mn)として表され、これは、
ΣNiMi/ΣNi
として定義され、ここで、Niは、分子量Miを有するポリマー分子の数(またはこれらの分子のモル数)である。
【0036】
用語「アルキル」とは、代表的には約1〜約12の炭素原子長、好ましくは1〜約6の炭素原子長の範囲の炭化水素鎖をいい、直鎖および分枝鎖を含む。これらの炭化水素鎖は、飽和であっても不飽和であってもよい。
【0037】
「シクロアルキル」とは、飽和または不飽和の環式炭化水素鎖をいい、これは架橋化合物、縮合化合物またはスピロ環式化合物を含み、好ましくは、3〜約12の炭素原子、より好ましくは、3〜約8の炭素原子を含む。
【0038】
用語「置換アルキル」または「置換シクロアルキル」とは、以下の1つ以上の非妨害置換基(これらに限定されない)で置換されたアルキル基またはシクロアルキル基をいう:例えば、C3〜C8シクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロブチルなど);アセチレン;シアノ;アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシなど);低級アルカノイルオキシ(例えば、アセトキシ);ヒドロキシ;カルボキシル;アミノ;低級アルキルアミノ(例えば、メチルアミノ);ケトン;ハロ(例えば、クロロまたはブロモ);フェニル;置換フェニルなど。
【0039】
「アルコキシ」とは、−O−R基(ここで、Rは、アルキルまたは置換アルキル、好ましくは、C1〜C6アルキルである)(例えば、メトキシまたはエトキシ)をいう。
【0040】
「アリール」とは、各々が、5〜6個のコア炭素原子の1つ以上の芳香族環を意味する。複数のアリール環は、ナフチルのように縮合され得るか、またはビフェニルのように非縮合であり得る。アリール環はまた、1つ以上の環式炭化水素、ヘテロアリール、もしくはヘテロ環式環と縮合され得るか、または非縮合であり得る。
【0041】
「置換アリール」は、置換基として1つ以上の非妨害基を有するアリールである。フェニル環の置換について、これらの置換基は、任意の配向(すなわち、オルト、メタまたはパラ)であり得る。
【0042】
「ヘテロアリール」は、1〜4個のヘテロ原子(好ましくは、N、OもしくはS、またはそれらの組合せ)を含むアリール基であり、このヘテロアリールは、必要に応じて、炭素原子または窒素原子において、C1〜6アルキル、−CF、フェニル、ベンジルまたはチエニルで置換されるか、またはこのヘテロアリール基中の炭素原子は、酸素原子と一緒になって、カルボニル基を形成するか、あるいはこのヘテロアリール基は、必要に応じて、フェニル環と縮合される。ヘテロアリール環はまた、1つ以上の環式炭化水素環、複素環式環、アリール環またはヘテロアリール環と縮合され得る。ヘテロアリールとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:1つのヘテロ原子を有する5員のヘテロアリール(例えば、チオフェン、ピロール、フラン);1,2位、1,3位に2個のヘテ
ロ原子を有する5員のヘテロアリール(例えば、オキサゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、プリン);3個のヘテロ原子を有する5員のヘテロアリール(例えば、トリアゾール、チアジアゾール);3個のヘテロ原子を有する5員のヘテロアリール;1個のヘテロ原子を有する6員のヘテロアリール(例えば、ピリジン、キノリン、イソキノリン、フェナントリン、5,6−シクロヘプテノピリジン);2個のヘテロ原子を有する6員のヘテロアリール(例えば、ピリダジン、シンノリン、フタラジン、ピラジン、ピリミジン、キナゾリン);3個のヘテロ原子を有する6員のヘテロアリール(例えば、1,3,5−トリアジン);および4個のヘテロ原子を有する6員のヘテロアリール。
【0043】
「置換ヘテロアリール」とは、1つ以上の非干渉基を置換基として有する、ヘテロアリールである。
【0044】
「複素環」または「複素環式」とは、不飽和特徴もしくは芳香族特徴を有するかまたは有さない5原子〜12原子(好ましくは5原子〜7原子)の1つ以上の環と、炭素ではない少なくとも1つの環原子とを意味する。好ましいヘテロ原子としては、イオウ、酸素、および窒素が挙げられる。複数の環は、キノリンまたはベンゾフランのように、縮合され得る。
【0045】
「置換複素環」とは、非干渉基から形成された1つ以上の側鎖を有する複素環である。
【0046】
「非干渉基」とは、分子中に存在する場合に、その分子内に含まれる他の官能基と代表的には非反応性である基である。
【0047】
適切な非干渉置換基または非干渉ラジカルとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ハロ、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、C〜C10アルコキシ、C〜C12アラルキル、C〜C12アルカリール、C〜C10シクロアルキル、C〜C10シクロアルケニル、フェニル、置換フェニル、トルオイル、キシレニル、ビフェニル、C〜C12アルコキシアルキル、C〜C12アルコキシアリール、C〜C12アリールオキシアルキル、C〜C12オキシアリール、C〜Cアルキルスルフィニル、C〜C10アルキルスルホニル、−(CH−O−(C〜C10アルキル)(mは1〜8である)、アリール、置換アリール、置換アルコキシ、フルオロアルキル、複素環式ラジカル、置換複素環式ラジカル、ニトロアルキル、−NO、−CN、−NRC(O)−(C〜C10アルキル)、−C(O)−(C〜C10アルキル)、C〜C10チオアルキル、−C(O)O−(C〜C10アルキル)、−OH,−SO、=S、−COOH、−NR、カルボニル、−C(O)−(C〜C10アルキル)−CF、−C(O)−CF、−C(O)NR、−(C〜C10アルキル)−S−(C〜C12アリール)、−C(O)−(C〜C12アリール)、−(CH−O−(CH−O−(C〜C10アルキル)(各mは1〜8である)、−C(O)NR、−C(S)NR、−SONR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、それらの塩など。本明細書中で使用される各Rは、H、アルキルもしくは置換アルキル、アリールもしくは置換アリール、アラルキル、またはアルカリールである。
【0048】
「ヘテロ原子」とは、炭化水素アナログ化合物中のすべての非炭素原子を意味する。例としては、酸素、イオウ、窒素、リン、ヒ素、ケイ素、セレン、テルル、スズ、およびホウ素が挙げられる。
【0049】
用語「薬物」、「生物学的に活性な分子」、「生物学的に活性な部分」、または「生物学的に活性な薬剤」とは、本明細書中で使用される場合、生物学的生物(ウイルス、細菌、真菌、植物、動物、およびヒトが挙げられるが、これらに限定されない)の任意の物理的特性または生化学的特性に影響を与え得る、任意の物質を意味する。特に、本明細書中で使用される場合、生物学的に活性な分子としては、ヒトもしくは他の動物における疾患の診断、治癒緩和、処置もしくは予防のため、またはヒトもしくは動物の身体的安寧もしくは精神的安寧を増強するために意図される、任意の物質を意味する。生物学的に活性な分子の例としては、ペプチド、タンパク質、酵素、低分子薬物、色素、脂質、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、細胞、ウイルス、リポソーム、微粒子およびミセルが挙げられるが、これらに限定されない。本発明とともに使用するために適切な生物学的に活性な薬剤の種類としては、抗生物質、殺真菌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、心臓血管剤、抗不安剤、ホルモン、成長因子、ステロイド剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
「ポリオレフィンアルコール」とは、ポリマー骨格に結合した複数の付随ヒドロキシル基を有するポリオレフィン骨格(例えば、ポリエチレン)を含むポリマーをさす。例示的ポリオレフィンアルコールは、ポリビニルアルコールである。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「非ペプチド」とは、ペプチド結合を実質的に有さないポリマー骨格を指す。しかし、そのポリマー骨格は、その骨格の長さに沿って間隔の空いた少数のペプチド結合(例えば、約50モノマー単位当たり約1個以下のペプチド結合)を含み得る。
【0052】
「ポリペプチド」または「ポリ(アミノ酸)」とは、α炭素骨格に沿ってアミド結合(ペプチド結合とも呼ばれる)を介して結合した一連のアミノ酸残基(代表的には少なくとも約10〜20残基)を含む、任意の分子を指す。いくつかの場合、これらの用語は、本明細書中において同義的に使用され得、ポリペプチドは、代表的には約10,000Daまでの分子量を有するペプチドであり、一方それを超える分子量を有するペプチドは、タンパク質と一般的に呼ばれる。このペプチドの側鎖の改変が、グリコシル化、ヒドロキシル化などを伴って存在し得る。さらに、他の非ペプチド分子(脂質および小薬物分子を含む)が、このポリペプチドに結合され得る。このポリペプチドは、アミノ酸残基の任意の組み合わせまたは順列を含み得る。本発明のポリマーは、ポリペプチドおよびタンパク質の両方に対する共有結合のために適切である。
【0053】
「アミノ酸」とは、塩基性アミン基と酸性カルボキシル基の両方を含む、有機酸を指す。この用語は、必須アミノ酸および非必須アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸または改変アミノ酸の両方を包含する。最も一般的にアミノ酸は、その完全名または3文字略語もしくは1文字略語のいずれかによって本明細書中で列挙される:グリシン(Gly、G)、アラニン(Ala、A)、バリン(Val、V)、ロイシン(Leu、L)、イソロイシン(Ile、I)、メチオニン(Met、M)、プロリン(Pro、P)、フェニルアラニン(Phe、F)、トリプトファン(Trp、W)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、アスパラギン(Asn、N)、グルタミン(Gln、Q)、チロシン(Tyr、Y)、システイン(Cys、C)、リジン(Lys、K)、アルギニン(Arg、R)、ヒスチジン(His、H)、アスパラギン酸(Asp、D)、およびグルタミン酸(Glu、E)。
【0054】
「残基」により、1つ以上の分子との反応後に残る分子の一部が意味される。例えば、ポリペプチド鎖中のアミノ酸残基は、隣接アミノ酸残基とペプチド結合を形成した後に残る、アミノ酸の一部である。
【0055】
「オリゴマー」とは、2モノマー単位〜約10モノマー単位、好ましくは2モノマー単位〜約5モノマー単位を含む、短いモノマー鎖を指す。
【0056】
用語「結合体」とは、分子(例えば、生物学的に活性な分子」)が反応性ポリマー分子(好ましくは、ポリ(エチレングリコール))と共有結合した結果として形成される実体を指すことが意図される。
【0057】
用語「脱離基」とは、原子(例えば、炭素原子)に共有結合しており、かつその原子から容易に置換されてその結合電子を受け取り得る、原子または原子集合を指す。代表的には、脱離基は、アニオンまたは中性分子である。脱離基が良好であればある程、その脱離基が結合している原子から離れる可能性が高くなる。代表的な良好な脱離基は、強酸の共役塩基である基である。
【0058】
「多官能化」とは、本発明のポリマーの文脈において、3つ以上の官能基が結合しているポリマーを意味し、その官能基は、同じであっても異なっていてもよい。本発明の多官能ポリマーは、代表的には、約3個〜100個の官能基、または3個〜50個の官能基、または3個〜25個の官能基、または3個〜15個の官能基、または3個〜10個の官能基を含むか、あるいは、そのポリマー骨格に結合した3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の官能基を含む。
【0059】
(II.チオエステルポリマー)
1つの局面では、本発明は、チオエステル末端水溶性ポリマーを提供し、このポリマーは、ポリペプチドのN末端アミノ基と選択的に反応して、N末端にて結合した単一水溶性ポリマー鎖を含むポリマー−ポリペプチド結合体を形成し得る。このようなポリマー−ポリペプチド結合体は、本明細書中で、1置換(ポリマー鎖がそのポリペプチドの1つの部位でのみ置換されていることを意味する)と呼ばれる。1つの部位のみでのポリペプチドの改変は、有益である。なぜなら、ポリマー鎖の存在に起因した生物活性の有意な低減の可能性が、このポリペプチド鎖に沿っての種々の部位および複数の部位での無差別またはランダムなポリマー結合と比較して低下するからである。さらに、部位特異的結合体を形成するための本明細書中に提供されるポリマーおよび方法は、通常用いられる先行技術の方法を超えるさらなる利点を提供する。なぜなら、このポリマーと、このポリペプチド内に含まれる他の反応性基/位置との反応を防ぐための複数の保護工程/脱保護工程が不要であるからである。さらに、このような部位選択的改変は、特定の(例えば、モノペグ化)結合体種を単離するためのさらなる結合体精製工程の必要性を除去する。従って、本発明のチオエステルポリマーの使用は、上記の利点を提供し得、水溶性ポリマー結合の有利な特性(例えば、未改変のポリペプチドと比較して、水溶性の増大、血漿半減期の増大、およびタンパク質分解性分解の低減)をさらに提供する。
【0060】
以下でさらにずっと詳細に説明するように、本発明のチオエステル末端ポリマーは、ポリペプチドのN末端システイン残基またはN末端ヒスチジン残基と選択的に反応する。理論によって束縛されないが、この反応は、チオエステル中間体を形成するために、システイン残基のチオール側鎖またはヒスチジン残基のイミダゾール側鎖のいずれかによるチオエステル基の求核攻撃を含む。次いで、このチオエステル中間体は、迅速な再配置を受け、この再配置は、このポリペプチドの末端アミン基への、このポリマーのアシル基の転移をもたらし、それにより、このポリマーとこのポリペプチドのN末端との間にペプチド結合を生じる。理解されるように、N末端システイン残基またはN末端ヒスチジン残基のみが、最初の反応工程に必要な側鎖を提供する(例えば、N末端システインを有するタンパク質の反応性チオール基によって、ポリマー上のチオエステルカルボニル炭素を攻撃する)ので、本発明のポリマーは、分子再配置を介して、このポリペプチド分子中に存在し得る任意の他の側鎖アミン基と反応することなく、N末端アミンに特異的に結合する。本発明は、折畳まれていない状態でさえも、1より多くの遊離システインまたは遊離ヒスチジンを含むポリペプチドの部位特異的PEG結合にとって特に有用である。本発明のポリマーおよび結合体化方法を用いて、折畳まれていない状態にある不溶性ポリペプチドが、それらのネイティブなコンホメーションに再折り畳みされるのを補助し得る。
【0061】
本発明のチオエステル末端ポリマーは、ポリマー骨格の末端とチオエステル基との間に任意の介在連結を有する、チオエステル基に結合したポリマー骨格を含む。本発明のチオエステル末端ポリマーは、以下の構造を有する:
【0062】
【化14】

【0063】
ここで、
Lは、水溶性でかつ非ペプチド性のポリマー骨格に対する結合点であり;
Zは、加水分解に安定な結合または加水分解に不安定な結合(例えば、O、S、−NHCO−、−CONH−、−OC−、−NHCO−、または−OCNH−)であり;
mは、0〜約12、好ましくは1〜約4であり;
各Xは、Hおよびアルキル(例えば、C1−C6アルキル)から独立して選択され;
aは0または1であり;
Yは、ヘテロ原子、好ましくはOまたはSであり;そして
Qは、硫黄含有脱離基(好ましくは、式−S−Rを有する)であり、
ここで、Rは、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環または置換複素環である。
【0064】
(A.ポリマー骨格)
一般に、この水溶性でかつ非ペプチド性のポリマー骨格は、無毒性でかつ生体適合性であるべきである。このことは、このポリマーが、害を引き起こすことなく、生体組織または生物と共存し得ることを意味する。本明細書中でチオエステル末端ポリマー骨格を言及する場合、このポリマー骨格が、多数の水溶性でかつ非ペプチド性のポリマー(例えば、以下に記載されるポリマー)のうちのいずれかであり得ることが理解されるべきである。好ましくは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)がこのポリマー骨格である。用語PEGは、以下でより十分に記載される多数の立体配置または形態(直鎖状形態(例えば、アルコキシPEGまたは二官能性PEG)、分岐状もしくは複数アーム形態(例えば、フォーク型PEGまたはポリオールコアに結合したPEG)、ペンダントPEG、または分解可能な結合をその中に有するPEG)のいずれかの形態のポリ(エチレングリコール)を包含する。
【0065】
その最も単純な形態では、PEGは、式−CHCHO−(CHCHO)−CHCH−(式II)を有し、ここで、nは、約10〜約4000、代表的には約20〜約2000である。
【0066】
PEGポリマー骨格の数平均分子量は変動し得るが、約100Da〜約100,000Da、好ましくは約5,000Da〜約60,000Daの数平均分子量を有するPEGが特に有用である。例えば、約100Da、約200Da、約300Da、約500Da、約800Da、約1,000Da、約2,000Da、約3,000Da、約4,000Da、約5,000Da、約10,000Da、約15,000Da、約20,000、約30,000および約40,000の分子量を有するPEGポリマーが本発明において有用である。
【0067】
末端キャップポリマー(少なくとも1つの末端が比較的不活性な基(例えば、アルコキシ基)によりキャップされているポリマーを意味する)もまた、本発明のポリマー骨格として用いられ得る。例えば、メトキシ−PEG−OH、すなわち、省略してmPEGは、PEGの1形態であり、ここで、このポリマー骨格の1つの末端は、メトキシ基に結合しており、一方、他方の末端は、即座の化学的改変に供されるヒドロキシル基である。mPEGの構造を以下に示す。
【0068】
CHO−(CHCHO)−CHCH−OH(式III)、
ここで、nは上記のとおりである。
【0069】
約100〜約100,000Da、より好ましくは、約2,000〜約60,000Daの数平均分子量を有するモノメトキシ末端PEG分子が、代表的に、タンパク質を結合体化させるのに好ましい。mPEGのような単官能性ポリマーの使用は、二官能性試薬または多官能性試薬を使用する場合にしばしば生じるタンパク質の架橋を防止する。本発明において、mPEG−チオエステルを使用し、単一タンパク質分子に結合された単一PEG分子を生成し得る。しかし、代替的な実施形態において、適切な比率で、ホモ二官能性PEG−チオエステルを利用することは、単一のPEG分子に結合した2つのタンパク質を有する結合体を生じ、この事象においてさえ、このタンパク質は、複数のシステイン残基を含む。PEG誘導体が反応する(すなわち、N末端システイン残基の利用可能なチオール基を介してまず結合し、次いで、アミド結合を形成するように再配列する)と考えられる様式に起因して、本発明のチオエステルポリマー誘導体が、架橋したタンパク質を得ることは可能ではない。なぜならば、他の遊離システイン残基は、利用可能なチオール基および利用可能なアミノ基の両方を有さないからである。従って、本発明の別の利点は、所望されない架橋をポリペプチドに導入することなく、本明細書に記載される型の複数の官能基をポリマーとともに使用することができるということである。
【0070】
例えば、米国特許第5,932,462号(その全体が本明細書で参考として援用される)に記載されるような、複数の側鎖のある(multi−armed)PEG分子または分枝したPEG分子もまた、PEG分子として使用され得る。例えば、PEGポリマー骨格は、以下の構造を有し得る:
【0071】
【化15】

【0072】
ここで、polyおよびpolyは、PEG骨格(例えば、メトキシポリ(エチレングリコール))であり;
R’’は、非反応性部分(例えば、H、メチルまたはPEG骨格)であり;そして
PおよびQは、非反応性結合である。好ましい実施形態において、この分枝PEGポリマーは、メトキシポリ(エチレングリコール)二置換リジンである。
【0073】
あるいは、このPEGポリマーは、叉状(folked)PEGを含み得る。叉状PEGの例は、PEG−YCHZに代表され、ここで、Yは、結合基であり、Zは、活性末端基(例えば、本発明のアルデヒド基)であり、規定された長さの原子鎖によりCHに結合される。国際出願番号PCT/US99/05333(その内容は、本明細書で参考として援用される)は、本発明において使用可能な種々の叉状PEG構造を開示する。Z官能基と分枝炭素原子とを結合している原子鎖は、係留(tethering)基として働き、これらとしては、例えば、アルキル鎖、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、またはこれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0074】
PEGポリマーは、反応性基(例えば、カルボキシル)を有し、PEG鎖の末端ではなくPEG骨格の長さに沿って共有結合した、ペンダントPEG分子を含み得る。ペンダント反応性基は、PEG骨格へ直接結合され得るか、または、結合部分(例えば、アルキレン基)を介して結合され得る。
【0075】
PEGの上記の形態に加えて、ポリマーはまた、ポリマー骨格(上記の任意のポリマーを含む)において1以上の弱い結合または分解可能な結合により調製され得る。例えば、PEGは、加水分解に供されたポリマー骨格において、エステル結合により調製され得る。以下に示されるように、この加水分解は、ポリマーから低分子量のフラグメントへの切断を生じる:
−PEG−CO−PEG− +HO → −PEG−COH +HO−PEG−。
【0076】
ポリマー骨格内での分解可能な結合として有用な、他の加水分解可能な結合としては、以下が挙げられる:カーボネート結合;例えば、アミンとアルデヒドとの反応から生じるイミン結合(例えば、Ouchiら、Polymer Preprints、38(1):582〜3(1997)(これは、本明細書で参考として援用される));例えば、アルコールとリン酸基との反応によって形成されるリン酸エステル結合;ヒドラジドとアルデヒドとの反応によって代表的に形成されるヒドラゾン結合;アルデヒドとアルコールとの間の反応によって代表的に形成されるアセタール結合;例えば、ホルメートとアルコールとの間の反応によって形成される他のエステル結合;(例えば、PEGのようなポリマーの末端にて)アミン基とペプチドのカルボキシル基とによって形成されるペプチド結合;および、例えば、(例えば、ポリマー末端にて)ホスホラミダイト基とオリゴヌクレオチドの5’側ヒドロキシル基とによって形成されるオリゴヌクレオチド結合。
【0077】
用語「ポリ(エチレングリコール)」または「PEG」は、PEGの上記すべての形態を示すか、または含むことが当業者によって理解される。
【0078】
多くの他のポリマーもまた、本発明に適している。非ペプチド性で、かつ水溶性である任意の種々の一官能性ポリマー骨格、二官能性ポリマー骨格または多官能性ポリマー骨格は、本発明において使用され得る。ポリマー骨格は、直鎖状であってもよいし、また、上記の任意の形態(例えば、分枝状、叉状など)であってもよい。適切なポリマーの例としては、米国特許第5,629,384号(その全体が、本明細書で参考として援用される)に記載されるような、他のポリ(アルキレングリコール)、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカリド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、ならびにこれらのコポリマー、ターポリマー、および混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
(B.ポリマー骨格とチオエステルとの間の連結)
ポリマー骨格の末端とチオエステル基との間に介在する連結は、ポリマー骨格を末端チオエステル基に連結するポリマー骨格上の官能基の残基である。従って、理解されるように、連結の構造は、ポリマー骨格の官能基の構造に依存して変化する。連結は、加水分解的に安定な連結(例えば、アミド、ウレタン、エーテル、チオエーテル、または尿素)を含み得る。あるいは、この連結は、加水分解的に不安定な連結(例えば、カルボン酸エステル、リン酸エステル、オルトエステル、無水物、イミン、アセタール、ケタール、オリゴヌクレオチド、またはペプチド)を含み得る。1つの実施形態において、加水分解的に安定な連結または不安定な連結に加えて、ポリマー骨格とチオエステルとの間の連結が、(CHX)として本明細書中で示される、任意のアルキレンスペーサーを含む。
【0080】
上記式Iに示されるように、連結は、好ましくは、以下の構造:
【0081】
【化16】

【0082】
を有し、ここで:
Zは、加水分解的に安定な連結または不安定な連結(例えば、O、S、−NHCO−、−CONH−、−OC−、−NHCO−、または−OCNH−)であり;
mは、0〜約12、好ましくは、1〜約4であり;
各Xは、独立して、Hおよびアルキル(例えば、C1〜C6アルキル)から選択され;そして
aは、0または1である。
【0083】
アルキレン鎖の長さ(すなわち、mの値)は、0〜約12で変化し得る。例えば、mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり得る。好ましくは、mは、0、1、2、3、または4である。アルキレン鎖の各Xは、好ましくは、水素、メチルまたはエチルである。好ましい実施形態において、aは、1であり、そしてZは、ヘテロ原子(例えば、OまたはS)である。
【0084】
(C.チオエステル官能基)
チオエステル官能基は、水可溶性ポリマーの少なくとも1つの末端に共有結合される。チオエステル基は、以下の構造:
【0085】
【化17】

【0086】
を有し、ここで:
Yは、ヘテロ原子(好ましくは、OまたはS)であり;そして
Qは、硫黄含有求電子性脱離基(好ましくは、式−S−Rを有する)であり、ここで、Rは、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、または置換複素環である。
【0087】
使用される特定のR基は、変化し得る。R基は、硫黄原子とともに、ポリペプチドのN末端アミノ酸残基のチオール側鎖またはイミダゾール側鎖によって、カルボニル炭素の求核攻撃の間の置換に適した求電子性脱離基を形成する。好ましいR基としては、フェノール、ニトロフェノール、安息香酸、ピリジン、ピリジンカルボン酸、およびニトロピリジン由来の置換基が挙げられる。置換ピリジニルまたは非置換ピリジニルが、特に好ましい。例1〜3は、チオピリジニル脱離基を有するチオエステル末端PEGポリマーを示す。
【0088】
(D.例示的なポリマー構造)
本発明の線形ポリマーの実施形態は、以下に示されるように構造的に表され得る:
【0089】
【化18】

【0090】
ここで、POLYは、水可溶性非ペプチドポリマー骨格であり、Rは、キャッピング基または官能基であり、そしてZ、X、Y、m、aおよびQは、上記のように規定される。好ましい実施形態において、Rは、メトキシであり、POLYは、ポリ(エチレングリコール)であり、aは、1であり、Zは、Oであり、mは、1〜約3であり、Yは、Oであり、そして各Xは、HまたはCHである。
【0091】
R基は、比較的不活性なキャッピング基(例えば、アルコキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)、アルキル、ベンジル、アリール、またはアリールオキシ(例えば、ベンジルオキシ))であり得る。あるいは、R基は、生物学的に活性な分子上の官能基と容易に反応し得る官能基であり得る。例示的な官能基としては、ヒドロキシ、活性エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルまたは1−ベンゾトリアゾリルエステル)、活性カルボネート(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルカルボネートおよび1−ベンゾトリアゾリルカルボネート)、アセタール、アルデヒド、アルデヒド水和物、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、活性スルホン、アミン、ヒドラジド、チオール、カルボン酸、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ビニルスルホン、ジチオピリジン、ビニルピリジン、ヨードアセトアミド、エポキシド、グリオキサール、ジオン、メシレート、トシレート、またはトレシレート(tresylate)が挙げられる。本発明のポリマー骨格のための末端官能基の特定の例としては、以下が挙げられる:N−スクシンイミジルカルボネート(例えば、米国特許第5,281,698号、および同第5,468,478号を参照のこと)、アミン(例えば、Buckmannら、Makromol.Chem.182:1379(1981)、Zalipskyら、Eur.Polym.J.19:1177(1983)を参照のこと)、ヒドラジド(例えば、Andreszら、Makromol.Chem.179.301(1978)を参照のこと)、スクシンイミジルプロピオネートおよびスクシンイミジルブタノエート(例えば、Olsonら、Poly(ethylene glycol)Chemistry & Biological Applications,pp 170−181,Harris & Zalipsky Eds.,ACS,Washington,DC,1997を参照のこと;米国特許第5.672,662号もまた参照のこと)、スクシンイミジルスクシネート(例えば、Abuchowskiら、Cancer Biochem.Biophys.7:175(1984)およびJoppichら,Makromol.Chem.180:1381(1979を参照のこと)、スクシンイミジルエステル(例えば、米国特許第4,670,417号を参照のこと)、ベンゾトリアゾリルカルボネート(例えば、米国特許第5,650,234号を参照のこと)、グリシジルエーテル(例えば、Pithaら、Eur.J.Biochem.94:11(1979),Ellingら,Biotech.Appl.Biochem.13:354(1991)を参照のこと)、オキシカルボニルイミダゾール(例えば、Beauchampら,Anal.Biochem.131:25(1983),Tondelliら、J.Controlled Release 1:251(1985)を参照のこと)、p−ニトロフェニルカルボネート(例えば、Veroneseら,Appl.Biochem.Biotech.,11:141(1985);およびSartoreら,Appl.Biochem.Biotech.,27:45(1991)を参照のこと)、アルデヒド(例えば、Harrisら、J.Polym.Sci.Chem.Ed.22:341(1984)、米国特許第5,824,784号、米国特許第5,252,714号を参照のこと)、マレイミド(例えば、Goodsonら、Bio/Technology
8:343(1990),Romaniら、Chemistry of Peptides and Proteins 2:29(1984))、およびKogan,Synthetic Comm.22.2417(1992)を参照のこと)、オルトピリジル−ジスルフィド(例えば、Woghirenら、Bioconj.Chem.4.314(1993)を参照のこと)、アクリルオール(例えば、Sawhneyら,Macromolecules,26:581(1993)を参照のこと)、ビニルスルホン(例えば、米国特許第5,900,461号を参照のこと)。上記参考文献の全てが本明細書中において参考として援用される。
【0092】
式Vのホモ二官能性(homobifunctional)の実施形態において、Rは、式−(Z)−(CXH)−CO−S−Rのチオエステル含有部分であり、ここで、Z、a、x、m、およびRは、上で定義されるとおりである。
【0093】
本発明の直鎖状ポリマーのいくつかの特定の例は、以下に示される:
【0094】
【化19】

【0095】
ここで、Rおよびnは、上で定義されるとおりである。
【0096】
本発明のチオエステル末端化ポリマーの複数アームの実施形態の1つの例は、以下の構造:
【0097】
【化20】

【0098】
を有する。
【0099】
ここで、各POLYは、水溶性でかつ非ペプチド性のポリマー骨格であり、R’は、中心コア分子であり、yは、約3〜約100、好ましくは、3〜約25であり、そしてZ、X、Y、m、aおよびRは、上で定義されるとおりである。コア部分R’は、ポリオール、ポリアミン、ならびにアルコール基およびアミン基の組み合わせを有する分子からなる群より選択される分子の残基である。中心コア分子の特定の例としては、グリセロール、グリセロールオリゴマー、ペンタエリトリトール、ソルビトール、およびリジンが挙げられる。
【0100】
中心コア分子は、好ましくは、ポリマー結合に利用可能な少なくとも3つのヒドロキシル基を有するポリオールの残基である。「ポリオール」は、複数の利用可能なヒドロキシル基を含有する分子である。ポリマーアームの所望の数に依存して、ポリオールは、代表的には、3〜約25個のヒドロキシル基を含む。ポリオールは、同様に、本発明から逸脱することなく、他の保護された官能基または保護されていない官能基を含み得る。ヒドロキシル基の間の間隔は、ポリオールによって変化するが、代表的には、各ヒドロキシル基の間に、1〜約20個、好ましくは1〜約5個の原子(例えば、炭素原子)が、存在する。好ましいポリオールとしては、グリセロール、還元糖(例えば、ソルビトール)、ペンタエリトリトール、およびグリセロールオリゴマー(例えば、ヘキサグリセロール)が挙げられる。A21−アームポリマーは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(これは、21個の利用可能なヒドロキシル基を有する)を使用して、合成され得る。選択される特定のポリオールは、ポリマーアームへの結合のために必要とされる、所望の数のヒドロキシル基に依存する。
【0101】
(E.チオエステルポリマーの形成方法)
本発明のチオエステルポリマーは、水溶性で非ペプチド性のポリマーを、当該分野で公知のチオエステルを形成するための任意の数の合成アプローチによって誘導体化することによって、形成され得る。例えば、Field,L.Synthesis,1972,106を参照のこと。例えば、チオエステルは、チオレートのタリウム(I)塩との反応によって、対応する酸塩化物末端化ポリマーから調製され得る(Spessard,G.ら、Organic Synthesis Collection、第7巻、87)。分子内に含まれるさらなる官能基(例えば、ヒドロキシ基または他の官能基)を有するポリマーのチオエステル誘導体化のために、以下のような代替のアプローチが用いられ得る。例えば、本明細書中で記載されるようなチオエステル末端化ポリマーは、酸をジアルキルホスホロクロリデートまたはジフェニルホスホロクロリデートと反応させて、その無水物を形成することによって、対応するカルボン酸末端化ポリマーから形成され得、次いで、これは、対応するチオエステルに転化され得る(Masamune,S.ら、Can.J.Chem.,1975,53,3693;Yamada,S.ら、Chem.Pharm.Bull.1977,25,2423)。なお別の合成アプローチにおいて、チオエステル末端化ポリマーは、相対的に酸性のチオールと、カルボン酸のイミダゾリド(対応するカルボン酸の、N,N−カルボニルジイミダゾールとの反応によって調製され得る)との反応によって、調製され得る(Masamune,S.ら、J.Am.Chem.Soc.,1976,98,7874)。あるいは、ジスルフィドおよびトリフェニルホスフィンを使用して、ポリマーのカルボン酸末端を、対応するチオエステルに転化し得る(Mukaiyama,T.ら、Bull.Chem.Soc.Jpn.,1970,43,1271)。カルボン酸からチオエステルを調製するために使用され得る他の方法としては、アリールチオシアネートの使用(Grieco,P.ら、J.Org.Chem.,1978,43,1283)、チオピリジルクロロホルメートの使用(Corey,E.J.ら、Tetrahedron Lett.,1979,2875)、2−フルオロ−N−メチルピリジニウムトシレートの使用(Watanabe,Y.ら、Chem.Lett.1976,741)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールの使用(Horiki,K.,Synth.Commun.1977,7,251)、およびボロンチオレートの使用(Pelter,A.ら、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.I,1977,1672)が挙げられる。あるいは、O−エステル末端を有するポリマーは、アルミニウム試薬およびホウ素試薬によって、対応するS−エステルに転化され得る。
【0102】
本発明のチオエステルポリマーを形成する好ましい方法は、反応性ポリマーの末端カルボン酸、またはその活性化エステルの、式R−SHのチオール化合物との塩基触媒反応を包含し、ここで、Rは、上で定義されるとおりである。末端カルボン酸基を保有する好ましい反応性ポリマーとしては、カルボキシメチル、プロピオン酸、またはブタン酸基で終結したポリ(エチレングリコール)が挙げられる。チオエステル基をポリマー骨格の末端に連結するための当該分野で公知の任意の他の方法(例えば、上記の方法のいずれか)もまた、本発明から逸脱することなく使用され得る。チオエステル末端化ポリマーを形成する例示的な方法が、実施例1〜3に例示される。
【0103】
(III.ポリマー/ポリペプチド結合体)
(A.ポリマー/ポリペプチド結合体の構造)
本発明のチオエステルポリマーは、そのN末端にてヒスチジン分子またはシステイン分子を有するポリペプチドのα−アミンと選択的に反応して、そのポリマーとポリペプチドとの間にアミド結合を形成する。好ましい実施形態において、このポリマー−ポリペプチド結合体は、水溶性でかつ非ペプチド性のポリマー骨格を含み、このポリマー骨格は、以下の構造:
【0104】
【化21】

【0105】
に結合される少なくとも1つの末端を有し、ここで:
L、Z、Y、m、Xおよびaは、上で定義されるとおりであり;
Wは、その末端アミノ酸がシステインであるかヒスチジンであるかに依存して、−CHSH、または
【0106】
【化22】

【0107】
であり;そして、
ポリペプチドは、ポリペプチド分子である。このポリマー骨格は、上で議論されるポリマー構造のいずれか(例えば、その任意の形態のPEG)を含み得る。
【0108】
ポリペプチドは、N末端のシステイン残基またはヒスチジン残基を有する任意のポリペプチドであり得、このN末端のシステイン残基またはヒスチジン残基は、ポリペプチド中に天然に存在するかポリペプチド配列の改変によって導入されるかにかかわらない。このポリペプチド分子は、好ましくは、以下からなる群より選択される:タンパク質、タンパク質リガンド、酵素、サイトカイン、造血素、増殖因子、ホルモン、抗原、抗体、抗体フラグメント、レセプターおよびタンパク質フラグメント。以下は、N末端のシステイン残基またはヒスチジン残基を含むか、または含むように改変され得るポリペプチド分子の例示であり、決して網羅的なリストではない:カルシトニン、甲状腺ホルモン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン1〜21、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、幹細胞因子、白血病阻害因子、kit−リガンド、flt−3リガンド、エリスロポエチン、トロンボポイエチン、腫瘍壊死因子α、腫瘍壊死因子β、トランスフォーミング増殖因子、骨形成タンパク質、オステオプレテゲリン、組織プラスミノゲン活性化因子、血小板由来増殖因子、線維芽細胞増殖因子、ケラチノサイト増殖因子、上皮増殖因子、ヒト成長ホルモン、インスリン、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、DNAse、レセプター、酵素、融合タンパク質、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、FvフラグメントおよびscFvフラグメント。1つの好ましい実施形態において、このポリペプチドは、インターフェロン分子である。
【0109】
本発明の直線状ポリマー結合体の例示的な実施形態は、以下の構造を有する:
【0110】
【化23】

【0111】
ここで、R、POLY、Z、a、X、m、YおよびWは、上記定義の通りである。
【0112】
ポリマーがマルチアームポリマーである代替的実施形態において、本発明の例示的なポリマー結合体は、以下の構造を有する:
【0113】
【化24】

【0114】
ここで、R’、y、POLY、Z、a、X、m、YおよびWは、上記定義の通りである。
【0115】
本発明に従うポリペプチド結合体は、ポリペプチドのN末端のシステインまたはヒスチジンとの反応によって形成されるアミド結合を有し、この結合体のポリマー部分は、本明細書中および以下の実施例に詳細記載されるように、多数の異なる幾何学(例えば、直線状、分枝、フォーク型など)、分子量、任意の分解可能な連結などを有し得る。本発明に従って調製される例示的な結合体は、実施例4〜7において提供される。
【0116】
(B.ポリマー/ポリペプチド結合体を形成する方法)
本発明は、チオエステル終結ポリマー(例えば、チオエステル終結PEG)を使用して、末端アミノ酸上の残りの遊離官能基(例えば、システイン残基のチオール基)を持続的に改変することも、ポリペプチド鎖中に存在する他のアミン基を改変することもなしに、N末端のシステインまたはヒスチジンのα−アミンを特異的に改変する。いずれの特定の理論によっても束縛されないが、以下の反応スキームIは、N末端システイン分子を有するポリペプチドと本発明の反応性ポリマーとの間で生じると考えられる反応を例示する。示されるように、チオエステル終結ポリマーは、システインの遊離チオール基と最初に反応し、その後、分子内転位を受けて、N末端アミン基とのアミド結合を形成し、従って、所望される場合に、そのチオール基をさらなる改変のために利用可能なままにすると考えられる。このチオール−チオエステル交換は、好ましくは、トリアルキルホスフィン(例えば、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンまたはトリエチルホスフィン)および必要に応じてチオール(例えば、メルカプトプロピオン酸)の使用によってもたらされる。
【0117】
【化25】

【0118】
必要に応じて、N末端システイン分子の場合、第二のチオール反応性ポリマー(例えば、チオール反応性PEG)が、反応スキームIに示されるようなポリペプチドのN末端にて分枝構造を形成するために、遊離チオール基と反応され得、ここで、L’は、システイン分子上の遊離チオール基との、第二のPEGポリマーのチオール反応性末端官能基の反応から生じるリンカーである。1実施形態において、2つのポリマー骨格のみが、このポリペプチドに結合される。
【0119】
チオール反応性官能基の例としては、ビニルスルホン、マレイミド、オルトピリジルジスルフィドおよびヨードアセトアミドが挙げられる。L’リンカーの例としては、
【0120】
【化26】

【0121】
が挙げられる。
【0122】
当業者により容易に理解されるように、本発明の方法は、上記のポリマー誘導体を、末端−CH(W)−NH基(ここで、Wは、上記定義のとおりである)を有する任意の部分(ペプチドであろうとなかろうと)にカップリングするために使用され得る。
【実施例】
【0123】
(IV.実施例)
以下の実施例は、本発明の例示のために与えられるが、本発明の限定として解釈されるべきではない。例えば、mPEGは、本発明を例示するためにこの実施例において使用されるが、PEGの他の形態および本発明の実施において有用な類似のポリマーは、上記で議論したように、本発明によって包含される。
【0124】
添付の実施例において言及される全てのPEG試薬は、Shearwater Corporation、Huntsville、ALから入手可能である。全てのHNMRデータを、Brukerによって製造された、300MHzまたは400MHzのNMR分光光度計によって生成した。
【0125】
実施例1〜3は、本発明のチオエステル終結ポリマーを形成する方法を示す。実施例4〜7は、N末端システイン残基を有する例示的ポリペプチドとの、本発明のチオエステル終結ポリマーとの反応を示す。以下に示されるように、本発明のチオエステルポリマーの使用は、ポリペプチドのN末端アミンへのポリマーの選択的結合を生じる。
【0126】
(実施例1)
(PEG(5000)−α−メトキシ−ω−プロピオン酸,2−ピリジンチオエステル(PEG−PA−OPTE)の調製)
【0127】
【化27】

【0128】
2−メルカプトピリジン(40.0mg、0.36mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(4.0mg、0.030mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(36.7mg、0.30mmol)および1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(2mLの無水ジクロロメタン中に溶解した(84.0mg、0.41mmol))を、無水アセトニトリル(20mL)中のPEG(5000)−α−メトキシ−ω−プロピオン酸(1.5g、0.27mmol)の溶液に添加した。この反応溶液を、アルゴン下で、周囲温度にて一晩攪拌した。次いで、この溶液を減圧にて、ほぼ乾燥するまで濃縮し、その後無水トルエン(50mL)を添加した。この混合物を30分間にわたり室温で攪拌し、濾過し、そして濾液を、減圧にてほぼ乾燥するまで濃縮した。酢酸エチル(200mL)を添加し、この混合物を、含有物が完全に溶解するまで温めた。次いで、この溶液を、攪拌しながら室温まで冷却した。エチルエーテル(50mL)を添加し、沈殿を形成した。この生成物を濾過し、そして生成物が白色になるまで、エチルエーテルでリンスした。次いで、この生成物を、高減圧下で乾燥させた。収率:1.1g。NMR(d6−DMSO):δ2.98ppm(t、2H、−CH−COS−)、δ3.51ppm(s、PEG骨格)、δ7.46ppm(m、不十分な分解、1H、H(ピリジル))、δ7.64ppm(d、1H、H(ピリジル))、δ7.91ppm(t、1H、H(ピリジル))、δ8.60ppm(d、1H、H(ピリジル))。
【0129】
(実施例2)
(PEG(5000)−α−ベンジルオキシ(BZO)−ω−カルボキシメチル,2−ピリジルチオエステル(PEG−CM−OPTE)の調製)
【0130】
【化28】

【0131】
2−メルカプトピリジン(40.0mg、0.36mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(5.0mg、0.035mmol)および1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(2mLの無水ジクロロメタンに溶解した(74.3mg、0.36mmol))を、無水アセトニトリル(20mL)中のPEG(5000)−α−ベンジルオキシ−ω−カルボキシメチル(1.5g、0.30mmol)の溶液に添加した。この反応溶液を、一晩、周囲の温度にてアルゴン下で撹拌した。次いで、この溶液を、減圧下でほぼ乾燥状態まで濃縮し、次いで無水トルエン(30mL)を添加した。この混合物を、室温にて、30分間撹拌し、濾過し、そしてこの濾液をほぼ乾燥状態まで減圧下で濃縮した。酢酸エチル(150mL)を添加し、そしてこの混合物を含有物が完全に溶解するまで温めた。次いで、この溶液を、撹拌しながら室温まで冷却した。エチルエーテル(50mL)を溶液に添加し、そして沈殿を形成した。この生成物を濾過し、生成物が白色になるまでエチルエーテルでリンスした。次いで、この生成物を高真空下で乾燥した。収率:1.1g。
【0132】
【化28A】

【0133】
(実施例3)
(PEG(5000)−α−メトキシ−ω−2−メチルブタン酸,2−ピリジルチオエステルの調製)
【0134】
【化29】

【0135】
2−メルカプトピリジン(44.5mg、0.40mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(4.7mg、0.033mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(40.7mg、0.33mmol)および1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(2mLの無水ジクロロメタンに溶解した(92.8mg、0.45mmol))を、無水アセトニトリル(20mL)中のPEG(5000)−α−メトキシ−ω−2−メチルブタン酸(1.5g、0.30mmol)の溶液に添加した。この反応溶液を、一晩、周囲の温度にてアルゴン下で撹拌した。次いで、この溶液を、減圧下でほぼ乾燥状態まで濃縮し、次いで無水トルエン(50mL)を添加した。この混合物を、室温にて、30分間撹拌し、濾過し、そしてこの濾液をほぼ乾燥状態まで減圧下で濃縮した。酢酸エチル(150mL)を添加し、そしてこの混合物を含有物が完全に溶解するまで温めた。次いで、この溶液を、撹拌しながら室温まで冷却した。2−プロパノール(50mL)を添加し、次いでエチルエーテル(50mL)を添加することによって沈殿を形成した。この生成物を濾過し、生成物が白色になるまで2−プロパノールでリンスした。次いで、この生成物を高真空下で乾燥した。収率:1.2g。
【0136】
【化29A】

【0137】
(実施例4)
(インターフェロンに対するPEG−CM−OPTEの結合体化)
インターフェロンτ(0.45mg)(これは、N末端アミノ酸としてシステインを有する)を、pH7.75で、1M Tris、0.7mM TCEP(トリス[2−カルボキシエチルホスフィン] ヒドロクロリド)および3mM メルカプトプロピオン酸中に、0.3mg/mlで処方した。約1.0mgのmPEG5K−CM−OPTE(実施例2から)を、インターフェロン溶液に添加し、室温にて4時間反応させた。この反応混合物を、脱イオン水で一晩透析した。この生成物を、MALDI−MSで分析した。このマススペクトルは、5000Daの分子量で遊離のPEG、19,979Daの分子量で結合体化していないインターフェロン、および25,065Daの分子量で単一のPEG結合体を示し、このことは、PEG化(PEGylated)生成物が、N末端でポリペプチドに結合した単一のPEG分子のみを有することを意味する。
【0138】
(実施例5)
(インターフェロンに対するPEG−PA−OPTEの結合体化)
インターフェロンτ(0.45mg)を、pH7.75で、0.33M Tris、0.7mM TCEP(トリス[2−カルボキシエチルホスフィン]ヒドロクロリド)中に、0.3mg/mlで処方した。約1.0mgのmPEG5K−PA−OPTE(実施例1からのプロピオン酸のオルトピリジルチオエステル)を、インターフェロン溶液に添加し、次いで室温にて4時間反応させた。この生成物を、SDS−PAGEで分析した。このゲルは、結合体化していないインターフェロン(約20kDa)および単一のPEG結合体化インターフェロン(約29kDa)(すなわち、1つのPEG分子に結合した1つのポリペプチド)に対応する2つのバンドを示した。このPEG−インターフェロン結合体のより遅い移動は、対応する分子量のタンパク質と比較した場合、PEG鎖の大きな水力学的容積に起因する。
【0139】
(実施例6)
(ポリペプチドに対するPEG−CM−OPTEの結合体化)
ポリペプチドCRASKSVSSSGYSYMHWYQQ(MW=2355Da)(配列番号1)を、pH7.75で、0.67M Tris、1.3mM TCEP(トリス[2−カルボキシエチルホスフィン]ヒドロクロリド)および5.3M尿素に、0.67mg/mlで処方した。約21.0mgのmPEG5K−CM−OPTE(実施例2から)を、ポリペプチド溶液に添加し、そして室温にて4時間反応させた。この反応混合物を、脱イオン水で一晩透析した。この生成物を、MALDI−MSで分析した。このマススペクトルは、ポリペプチドに結合した1つのPEG分子を含み、そして7555Daの分子量を有する結合体を示した。これは、チオエステル末端ポリマーが、分子中の他の遊離アミン基(例えば、リジン残基またはアルギニン残基のアミン基)と無作為に反応しなかったことを証明する。
【0140】
(実施例7)
(ポリペプチドに対するPEG−PA−OPTEの結合体化)
ポリペプチドCRASKSVSSSGYSYMHWYQQ(MW=2355Da)(配列番号1)を、pH7.75で、0.67M Tris、1.3mM TCEP(トリス[2−カルボキシエチルホスフィン]ヒドロクロリド)および5.3M尿素に、0.67mg/mlで処方した。約21.0mgのmPEG5K−PA−OPTE(実施例1から)を、ポリペプチド溶液に添加し、そして室温にて4時間反応させた。
【0141】
本発明が上記の説明に示される教示を利用して、本発明の多くの改変および他の実施形態が、本発明の属する分野の当業者に思い浮かぶ。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されることはなく、そして改変および他の実施形態が添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されることが理解されるべきである。特定の用語が本明細書中で利用されるが、これらは一般的でかつ記述的な意味でのみ使用され、目的の限定のためではない。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本願発明の好ましい実施形態によれば、以下のポリマー結合体などが提供される。
【0143】
(項1)
チオエステル末端反応性ポリマーであって、以下の構造:
【0144】
【化1】

【0145】
に少なくとも一方の末端が結合した、水溶性の非ペプチドポリマー骨格を含み、ここで:
Lは、該ポリマー骨格の結合点であり;
Zは、リンカーであり;
mは、0〜約12であり;
Yは、ヘテロ原子であり;
各Xは、独立して、Hおよびアルキルから選択され;
aは、0または1であり;そして
Qは、硫黄含有脱離基である、
反応性ポリマー。
【0146】
(項2)
各Xが、HまたはC1〜C6アルキルである、上記項1に記載の反応性ポリマー。
【0147】
(項3)
各Xが、Hまたはメチルである、上記項2に記載の反応性ポリマー。
【0148】
(項4)
YがOまたはSである、上記項1に記載の反応性ポリマー。
【0149】
(項5)
Qが、式−S−Rを有し、ここで、Rは、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、および置換複素環からなる群より選択される、上記項1に記載の反応性ポリマー。
【0150】
(項6)
が、フェノール、ニトロフェノール、安息香酸、ピリジン、ピリジンカルボン酸、およびニトロピリジンからなる群より選択される、上記項5に記載の反応性ポリマー。
【0151】
(項7)
が、置換または非置換のピリジンである、上記項5に記載の反応性ポリマー。
【0152】
(項8)
aが1であり、そしてZが、−O−、−S−、−NHCO−、−CONH−、−OC−、−NHCO−、および−OCNH−からなる群より選択される、上記項1に記載の反応性ポリマー。
【0153】
(項9)
前記ポリマー骨格が、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、多糖、ならびにこれらのコポリマー、ターポリマーおよび混合物からなる群より選択される、上記項1に記載の反応性ポリマー。
【0154】
(項10)
前記水溶性の非ペプチドポリマー骨格が、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、およびエチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマーからなる群より選択される、上記項1に記載の反応性ポリマー。
【0155】
(項11)
前記ポリマー骨格が、約100Da〜約100,000Daの数平均分子量を有するポリ(エチレングリコール)である、上記項1に記載の反応性ポリマー。
【0156】
(項12)
mが1〜約4である、上記項1に記載の反応性ポリマー。
【0157】
(項13)
以下の構造:
【0158】
【化2】

【0159】
を有する、上記項1に記載の反応性ポリマーであって、ここで
POLYは、水溶性の非ペプチドポリマー骨格であり;
Rは、キャッピング基または官能基であり;そして
は、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、および置換複素環からなる群より選択される、反応性ポリマー。
【0160】
(項14)
Rが、アルコキシ、アルキル、ベンジル、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシル、活性エステル、活性カーボネート、アセタール、アルデヒド、アルデヒド水和物、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、活性スルホン、アミン、ヒドラジド、チオール,カルボン酸、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ビニルスルホン、ジチオピリジン、ビニルピリジン、ヨードアセトアミド、エポキシド、グリオキサール、ジオン、メシレート、トシレート、トレシレートおよび−(Z)−(CHX)−CO−S−Rからなる群より選択される、上記項13に記載の反応性ポリマー。
【0161】
(項15)
POLYが、ポリ(エチレングリコール)である、上記項13に記載の反応性ポリマー。
【0162】
(項16)
以下の構造:
【0163】
【化3】

【0164】
を有する、上記項1に記載の反応性ポリマーであって、ここで:
各POLYは、水溶性の非ペプチドポリマー骨格であり;
R’は、中心コア分子であり;
yは、約3〜約100であり;そして
は、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、および置換複素環からなる群より選択される、反応性ポリマー。
【0165】
(項17)
POLYがポリ(エチレングリコール)である、上記項16に記載の反応性ポリマー。
【0166】
(項18)
R’が、ポリオール、ポリアミン、ならびにアルコールおよびアミン基の組み合わせを有する分子からなる群より選択される分子の残基である、上記項16に記載の反応性ポリマー。
【0167】
(項19)
R’が、グリセロール、グリセロールオリゴマー、ペンタエリトリトール、ソルビトール、およびリジンからなる群より選択される分子の残基である、上記項16に記載の反応性ポリマー。
【0168】
(項20)
N末端にシステイン残基またはヒスチジン残基を有するポリペプチドのポリマー結合体であって、該ポリマー結合体は、以下の構造:
【0169】
【化4A】

【0170】
に少なくとも一方の末端が結合した、水溶性の非ペプチドポリマー骨格を含み、ここで:
Lは、該ポリマー骨格の結合点であり;
Zは、リンカーであり;
Yは、ヘテロ原子であり;
mは、0〜約12であり;
各Xは、Hおよびアルキルから独立して選択され;
aは、0または1であり;
Wは、−CHSHまたは
【0171】
【化5A】

【0172】
であり、そして
ポリペプチドは、ポリペプチド分子である、
ポリマー結合体。
【0173】
(項21)
前記ポリマー骨格が、ポリ(エチレングリコール)である、上記項20に記載のポリマー結合体。
【0174】
(項22)
ポリペプチドが、タンパク質、タンパク質−リガンド、酵素、サイトカイン、造血素、増殖因子、ホルモン、抗原、抗体、抗体フラグメント、レセプター、およびタンパク質フラグメントからなる群より選択される、上記項20に記載のポリマー結合体。
【0175】
(項23)
ポリペプチドが、インターフェロン分子である、上記項20に記載のポリマー結合体。
【0176】
(項24)
ポリマー誘導体を、N末端にシステイン残基またはヒスチジン残基を有するポリペプチドに結合体化させる方法であって、該方法は、以下:
N末端にシステイン残基またはヒスチジン残基を有するポリペプチドを提供する工程;
チオエステル末端ポリマーを提供する工程であって、該ポリマーは、以下の構造:
【0177】
【化6A】

【0178】
に少なくとも一方の末端が結合した、水溶性の非ペプチドポリマー骨格を含み、ここで:
Lは、該ポリマー骨格の結合点であり;
Zは、リンカーであり;
mは、0〜約12であり;
Yは、ヘテロ原子であり;
各Xは、独立して、Hおよびアルキルから選択され;
aは、0または1であり;そして
Qは、硫黄含有脱離基である、工程;
該チオエステル末端ポリマーを、該ポリペプチドと反応させて、以下の構造:
【0179】
【化7A】

【0180】
を有する結合体を形成する工程であって、ここで:
ポリペプチドは、ポリペプチド分子であり、そして
Wは、−CHSHまたは
【0181】
【化8A】

【0182】
である、工程、
を包含する、方法。
【0183】
(項25)
前記ポリマー骨格が、ポリ(エチレングリコール)である、上記項24に記載の方法。
【0184】
(項26)
ポリペプチドが、タンパク質リガンド、酵素、サイトカイン、造血素、増殖因子、ホルモン、抗原、抗体、抗体フラグメント、レセプター、およびタンパク質フラグメントからなる群より選択される、上記項24に記載の方法。
【0185】
(項27)
N末端にシステイン分子を有するポリペプチドの、ポリマー結合体であって、該ポリマー結合体は、N末端において結合した、2つの水溶性の非ペプチドポリマー骨格を含み、該結合体が、以下の構造:
【0186】
【化9A】

【0187】
を有し、ここで:
Lは、該2つのポリマー骨格の各々の結合点であり、
L’およびZは、リンカーであり;
Yは、ヘテロ原子であり;
mは、0〜約12であり;
各Xは、独立して、Hおよびアルキルから選択され;
aは、0または1であり;そして
ポリペプチド、は、ポリペプチド分子である、
ポリマー結合体。
【0188】
(項28)
L’が、以下:
【0189】
【化10A】

【0190】
からなる群より選択される、上記項27に記載のポリマー結合体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端にヒスチジン残基を有するポリペプチドのポリマー結合体であって、該ポリマー結合体は、以下の構造:
【化4B】


に少なくとも一方の末端が結合した、水溶性の非ペプチドポリマー骨格を含み、ここで:
Lは、該ポリマー骨格の結合点であり;
Zは、リンカーであり;
Yは、Oであり;
mは、0〜12であり;
各Xは、Hおよびアルキルから独立して選択され;
aは、0または1であり;
Wは
【化5B】


であり、そして
ポリペプチドは、ポリペプチド分子である、
ポリマー結合体。
【請求項2】
前記ポリマー骨格が、ポリ(エチレングリコール)である、請求項1に記載のポリマー結合体。
【請求項3】
ポリペプチドが、タンパク質、タンパク質−リガンド、酵素、サイトカイン、造血素、増殖因子、ホルモン、抗原、抗体、抗体フラグメント、レセプター、およびタンパク質フラグメントからなる群より選択される、請求項1に記載のポリマー結合体。
【請求項4】
ポリペプチドが、インターフェロン分子である、請求項1に記載のポリマー結合体。
【請求項5】
ポリマー誘導体を、N末端にヒスチジン残基を有するポリペプチドに結合体化させる方法であって、該方法は、以下:
N末端にヒスチジン残基を有するポリペプチドを提供する工程;
チオエステル末端ポリマーを提供する工程であって、該ポリマーは、以下の構造:
【化6B】


に少なくとも一方の末端が結合した、水溶性の非ペプチドポリマー骨格を含み、ここで:
Lは、該ポリマー骨格の結合点であり;
Zは、リンカーであり;
mは、0〜12であり;
Yは、Oであり;
各Xは、独立して、Hおよびアルキルから選択され;
aは、0または1であり;そして
Qは、硫黄含有脱離基であり、Qが、式−S−Rを有し、ここで、Rは、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、および置換複素環からなる群より選択される、工程;
該チオエステル末端ポリマーを、該ポリペプチドと反応させて、以下の構造:
【化7B】


を有する結合体を形成する工程であって、ここで:
ポリペプチドは、ポリペプチド分子であり、そして
Wは
【化8B】


である、工程、
を包含する、方法。
【請求項6】
前記ポリマー骨格が、ポリ(エチレングリコール)である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ポリペプチドが、タンパク質リガンド、酵素、サイトカイン、造血素、増殖因子、ホルモン、抗原、抗体、抗体フラグメント、レセプター、およびタンパク質フラグメントからなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
N末端にヒスチジン分子を有するポリペプチドの、ポリマー結合体であって、該ポリマー結合体は、N末端において結合した、2つの水溶性の非ペプチドポリマー骨格を含み、該結合体が、以下の構造:
【化9B】


を有し、ここで:
Lは、該2つのポリマー骨格の各々の結合点であり、
L’およびZは、リンカーであり;
Yは、Oであり;
mは、0〜12であり;
各Xは、独立して、Hおよびアルキルから選択され;
aは、0または1であり;そして
ポリペプチドは、ポリペプチド分子である、
ポリマー結合体。
【請求項9】
L’が、以下:
【化10B】


からなる群より選択され、そして、ここで、該L’リンカーの左側がLに結合する、
請求項8に記載のポリマー結合体。
【請求項10】
本願明細書中に記載された発明。

【公開番号】特開2010−90387(P2010−90387A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279947(P2009−279947)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【分割の表示】特願2003−534552(P2003−534552)の分割
【原出願日】平成14年10月9日(2002.10.9)
【出願人】(500321438)ネクター セラピューティックス エイエル,コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】