説明

チオフェン含有有機光電材料、並びにその製造方法及び太陽電池部品

本発明は有機材料に関し、下記一般式(1)で表される化合物を含むチオフェン含有有機光電材料に関する。さらに、上記チオフェン含有有機光電材料の製造方法及び上記チオフェン含有有機光電材料を有する太陽電池部品を提供する。上記チオフェン含有有機光電材料はチオフェン環とシアノ基を有するので、広いスペクトル応答を有し、熱的安定性と耐環境安定性が良い。
(化1)


(ここで、R、R、R、Rは、それぞれ同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル鎖であり、m、n、pは、それぞれ同一又は異なって、0〜6の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機材料に関し、具体的にチオフェン含有有機光電材料、並びにその製造方法及び太陽電池部品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界経済は、石炭、石油や天然ガスのような化石エネルギーに主に依存して発展してきた経済である。しかし、これらの再生不可能な化石エネルギーは枯渇していく。21世紀に入って以来、グローバルなエネルギー問題、及びそれに伴う環境汚染と気候温暖化といった諸問題は、ますます激しくなっていく。太陽エネルギーは、分布が広範囲に亘り、資源量が多く、環境を汚染せず、清潔、安全及び入手の便利さなどの突出した利点を持つため、一番期待される再生可能なエネルギー源の一つであると思われている。太陽電池を利用して太陽エネルギーを電気エネルギーに転換する方法は、実行可能で且つ有効な方法である。しかし、現在は商業化されている太陽電池は、シリコンなどを原料とする無機太陽電池であるが、これらの価格が高過ぎて現在多くの人に受け入れられる範囲外のものであり、そのため、これらの使用範囲が制限されることになる。長期に亘り、電池のコストを低減させその使用範囲を広げるため、人々は新規な太陽電池材料を求めている。
【0003】
有機太陽電池は新規な太陽電池であり、無機半導体材料に対して、その源泉が少なく、高価で有毒で且つ製造工程が複雑で、コストが高すぎるなどという問題がある。これは無機太陽電池とは比べられない以下の幾つかの利点があり、たとえば、材料の出所が広く、構造多様性とコントロール可能性があり、コストが低く、安全で且つ環境に優しい、製造工程が簡単で、重量が軽く、大面積にフレキシブルな生産ができ、それに、建築、照明及び発電など様々な分野に広く使用され、重要な発展性及び応用への見込みを有する。従って、国内外の多くの研究機構及び企業は、相当な注意と投入を与える。しかしながら、今まで、有機太陽電池の光電変換効率は無機太陽電池よりずっと低い。そのため、新規な有機光電材料の開発は、有機太陽電池及びその他の半導体部品の効率を向上させることに対して重要な意義を持つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、広いスペクトル応答を有し、安定性が優れたチオフェン含有有機光電材料、及び合成経路が簡単でコストが低いチオフェン含有有機光電材料の製造方法を提供する。
【0005】
本発明は、さらに上記チオフェン含有有機光電材料を有する太陽電池部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
下記一般式(1)で表される化合物を含むチオフェン含有有機光電材料である。
【0007】
(化1)

【0008】
(ここで、R、R、R、Rは、それぞれ同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル鎖であり、m、n、pは、それぞれ同一又は異なって、0〜6の整数である。)
チオフェン含有有機光電材料の製造方法は、
下記一般式で表される化合物A、B、C及びマロンニトリルをそれぞれ用意するステップと、

【0009】
(ここで、R、R、R、Rは、それぞれ同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル鎖であり、m、n、pは、それぞれ同一又は異なって、0〜6の整数である。)
触媒/溶剤の条件下で、化合物AとBとを、それぞれマロンニトリルと縮合反応させ、又は、化合物A及びBと化合物CとをStilleカップリング反応させるステップと、
触媒/溶剤の条件下で、縮合反応で得られた生成物と化合物CとをStilleカップリング反応させ、又は、Stilleカップリング反応で得られた生成物をマロンニトリルと縮合反応させることで、下記一般式(1)で表される化合物を得るステップとを含む。
【0010】
(化1)

【0011】
順に積層したガラス基体層、透明陽極、中間補助層、活性層及び陰極を含む太陽電池部品であって、上記活性層は電子供与体材料と電子受容体材料を含み、上記電子供与体材料は上記チオフェン含有有機光電材料を用いる。
【発明の効果】
【0012】
上記チオフェン含有有機光電材料において、チオフェンは5員環であって、ヒュッケル則を満たし、適度なバンドギャップと広いスペクトル応答を有し、熱的安定性と環境安定性がよい。それに、上記チオフェン含有有機光電材料は電子求引基である2対のシアノ基を有するので、材料のスペクトル応答範囲をさらに拡大することができ、且つ材料の光電特性を向上させることができる。上記チオフェン含有有機光電材料の製造方法において、簡単な合成経路を採用するため、製造コストが減少となる。太陽電池部品は、チオフェン含有有機光電材料を用いることにより、その光電変換効率を向上させることができるだけではなく、太陽電池部品の重量を低減させることもでき、しかも大量生産に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下、図面と実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明する。
【図1】本発明の実施例に係るチオフェン含有有機光電材料化合物の一般式(1)を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係るチオフェン含有有機光電材料の製造フローチャートである。
【図3】本発明の実施例に係るチオフェン含有有機光電材料を用いる太陽電池部品の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の目的、技術案及び利点をより明瞭に説明するため、以下、本発明を図面と実施例に基づいて更に詳しく説明する。なお、ここで具体的な実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は上記実施例に何らか限定されない。
【0015】
図1を参照して、本発明の実施例に係るチオフェン含有有機光電材料は、下記一般式(1)で表される化合物を含む。
【0016】
(化1)

【0017】
(ここで、R、R、R、Rは、それぞれ同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル鎖であり、m、n、pは、それぞれ同一又は異なって、0〜6の整数である。)
本発明の実施例において、チオフェン含有有機光電材料は対称的な分子構造を有し、例えばm=nとなる。本発明の他の実施例において、m=n=p=0となり、この場合、このチオフェン含有有機光電材料の構造は、ビチオフェンであり、その分子量が小さく、それを用いて製造される製品の重量が軽い。本発明の好ましい実施例において、RとRは同一の基であり、例えば、何れも炭素数6の直鎖状のアルキル基であり、即ち何れもヘキサン基であり、RとRとして水素原子が好ましい。本発明の他の好ましい実施例において、m、n、pが1であることが好ましく、即ち、このチオフェン含有有機光電材料はキンクエチオフェンである。
【0018】
図2を参照して、上記チオフェン含有有機光電材料の製造方法は、
下記一般式で表される化合物A、B、C及びマロンニトリルをそれぞれ用意するステップS10と、

【0019】
(ここで、R、R、R、Rは、それぞれ同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル鎖であり、m、n、pは、それぞれ同一又は異なって、0〜6の整数である。)
触媒/溶剤の条件下で、化合物AとBとを、それぞれマロンニトリルと縮合反応させ、又は、化合物A及びBと化合物CとをStilleカップリング反応させるステップS20と、
触媒/溶剤の条件下で、縮合反応で得られた生成物と化合物CとをStilleカップリング反応させ、又は、Stilleカップリング反応で得られた生成物をマロンニトリルと縮合反応させることで、下記一般式(1)で表される化合物を得るステップS30と、を含む。
【0020】
(化1)

【0021】
ステップS10の化合物A、B、C及びマロンニトリルは、市場から購入され、または従来の合成法で製造されることができるため、ここで詳しく説明しない。ここで、上記チオフェン含有有機光電材料に対する説明とほぼ同様に、本発明の実施例において、チオフェン含有有機光電材料は対称的な分子構造を有し、例えばm=nとなり、化合物A、Bを同じ原料から得る。本発明の他の実施例において、m=n=p=0となり、この場合、このチオフェン含有有機光電材料の構造はビチオフェンであり、その分子量が小さく、それを用いて製造される製品の重量が軽い、その原料の出所が広い。本発明の好ましい実施例において、RとRは同一の基であり、例えば、何れも炭素数6の直鎖状のアルキル基であり、即ち何れもヘキサン基であり、RとRとして水素原子が好ましい。本発明の他の好ましい実施例において、m、n、pが1であることが好ましい。
【0022】
ステップS20とS30において、縮合反応とStilleカップリング反応を行う順序によって、2つの形態がある。一つの形態は、先ず、触媒/溶剤の条件下で、化合物AとBとを、それぞれ個別にマロンニトリルと縮合反応させて、化合物A及びB中のアルデヒド基をそれぞれ2−メチレンマロノニトリルに置換する。次に、触媒/溶剤の条件下で、縮合反応で得られた生成物と化合物CとをStilleカップリング反応させて、上記チオフェン含有有機光電材料を得ることである。もう一つの形態は、先ず、化合物A及びBと化合物CとをStilleカップリング反応させて、ジアルデヒド基を有するポリチオフェンを生成する。次に上記ポリチオフェンを、マロンニトリルと縮合反応させて、ポリチオフェンのジアルデヒド基をそれぞれ2−メチレンマロノニトリルに置換し、上記チオフェン含有有機光電材料を得ることである。各反応物のモル比は1:1となっているが、それ以外の比率であっても、反応に影響せずに本実施例の以下の反応を行うことができる。以下それぞれ説明する。
【0023】
一つの形態は、
下記の反応式のように、触媒/溶剤の条件下で、化合物AとBとを、それぞれマロンニトリルと縮合反応させて、化合物A及びB中のアルデヒド基をそれぞれ2−メチレンマロノニトリルに置換し、それぞれ化合物A’及びB’を形成するステップiを含む。
【0024】

【0025】
具体的には、ステップiにおいて、触媒としてはピリジル又はトリエチルアミンであり、好ましくはピリジルが使用され、溶剤としてはエタノール、メタノール、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、DMF、トルエン又はアセトンであり、好ましくはエタノールが使用される。なお、反応終了後、以下の通り精製を行う。反応生成物を飽和塩化ナトリウム水溶液で数回洗浄した後、抽出して乾燥させ、濾過後の濾液を収集し回転蒸発し、次に、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、精製した産物を得る。ここで、抽出剤としては酢酸エチルを使用しても良く、乾燥剤としては無水硫酸マグネシウムを使用しても良く、溶離液(石油エーテル/酢酸エチル)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行っても良い。
【0026】
上記形態は、触媒/溶剤の条件下で、下記の反応式のように、ステップiで形成された化合物A’及びB’と、化合物CとをStilleカップリング反応させて、チオフェン含有有機光電材料を得るステップiiをさらに含む。
【0027】

【0028】
具体的には、ステップiiにおいて、触媒としてはPd(dba)/P(o−Tol)、Pd(PPh又はPd(PPhClのような有機パラジウム触媒であってもよく、好ましくはPd(dba)/P(o−Tol)が使用され、溶剤としてはテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、エチレングリコールジメチルエーテル、ベンゼン又はトルエンであってもよく、好ましくはテトラヒドロフランが使用される。反応終了後、以下の通り精製を行う。反応生成物を室温まで冷却させ、KF溶液を加えて数分間撹拌し、飽和塩化ナトリウム水溶液を加えた後、抽出して乾燥させ、濾過後の濾液を収集し回転蒸発し、n−ヘキサンとエタノールで沈殿を2回行い、その後、得られた粗生成物を濾過してシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、精製した産物を得る。ここで、抽出剤としては酢酸エチルを使用しても良く、乾燥剤としては無水硫酸マグネシウムを使用しても良く、溶離液(石油エーテル/ジクロロメタン)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行っても良い。化合物A’及びB’と、化合物CとをStilleカップリング反応させる時、m≠nとなれば、理論上、化合物A’及びB’自身は化合物CとStilleカップリング反応し、それぞれ(2m+p+2)個のチオフェン環を有する化合物及び(2n+p+2)個のチオフェン環を有する化合物を形成する。この時、上記反応式における目的産物を得る収率は低いが、上記精製ステップを介して精製した一般式における生成物を得ることができる。この時、精製を行って(2m+p+2)個のチオフェン環を有する化合物及び(2n+p+2)個のチオフェン環を有する化合物を精製しチオフェン含有有機光電材料とすることもできると理解できるので、これは本発明の構想内にあるものである。m=nとなれば、化合物A’及び化合物B’は同一のものであり、生成物の収率は約80%以上と高い。
【0029】
もう一つの形態は、
下記の反応式のように、化合物A及びBと、化合物Cとを、Stilleカップリング反応させて、ジアルデヒド基を有するポリチオフェンを生成するステップi’を含む。
【0030】

【0031】
具体的には、この形態二のステップi’における反応条件は、形態一のステップiiにおける反応条件とほぼ同じであり、このステップi’における収率もステップiiとほぼ同じであるので、説明を省略する。
【0032】
上記形態は、下記の反応式のように、ステップi’で形成されたジアルデヒド基を有するポリチオフェンを、マロンニトリルと縮合反応させて、ポリチオフェンのジアルデヒド基をそれぞれ2−メチレンマロノニトリルに置換し、上記チオフェン含有有機光電材料を得るステップii’をさらに含む。
【0033】

【0034】
具体的には、形態二のステップii’における反応条件は、形態一のステップiにおける反応条件とほぼ同じであるので、説明を省略する。
【0035】
上記のチオフェン含有有機光電材料は、複数のチオフェン環を有し、適度なバンドギャップと広いスペクトル応答を有し、波長域が約250−650nmであり、ほとんど全体の可視光波長域を覆い、熱的安定性、環境安定性及び光電特性が良い。そのため、このチオフェン含有有機光電材料は、有機太陽電池、有機電界効果トランジスタ、有機電界発光、有機光学式記憶、有機非線形材料及び有機レーザなど分野に広く使用することができる。
【0036】
図3は、上記実施例に係るチオフェン含有有機光電材料を使う、順に積層したガラス基体層11、透明陽極12、中間補助層13、活性層14及び陰極15を含む太陽電池部品を示す。上記中間補助層13としてはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン:ポリスチレン−スルホン酸(PEDOT:PSSと略称する)が使用され、上記活性層14は電子供与体材料と電子受容体材料を含み、上記電子供与体材料としては上記チオフェン含有有機光電材料が使用され、上記電子受容体材料としては[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチル(PCBMと略称する)であっても良い。上記透明陽極12はインジウムスズ酸化物(ITOと略称する)であってもよく、好ましくはシート抵抗10−20Ω/のインジウムスズ酸化物が使用される。陰極15としてはアルミニウム電極が使用されても良い。ここで、ガラス基体層11を底層としてもよく、作製の時、先ずはガラス基体層11にITO電極を堆積し、次に中間補助層13をITO電極の上に形成し、そしてチオフェン含有有機光電材料及び電子受容体材料を真空蒸着技術によって中間補助層13上に堆積することで活性層14を形成し、その後、真空蒸着技術によって活性層14の上に陰極15を堆積することにより上記太陽電池部品を得る。
【0037】
図に示すように、光照射の下で、光はガラス基体層11及びITO電極12を透過して、活性層14中のチオフェン含有有機光電材料でエネルギーが吸収されて励起子を生成する。これらの励起子は電子供与体/電子受容体材料の界面に到達して、PCBMのような電子受容体材料に電子が移動すると、電荷分離が起こり、フリーキャリアを生成し、即ち自由電子及び自由正孔が生成される。これらの自由電子が電子受容体材料を沿って金属陰極へ移動し蓄積され、自由正孔が電子供与体材料を沿ってITO陽極へ移動し蓄積されることにより、光電流及び光電圧を生成し、光電変換を達成し、それに、バス終端16に接続されると、電力を供給することができる。この過程において、チオフェン含有有機光電材料は広いスペクトル応答を有するので、光エネルギーを十分に利用でき、より高い光電変換効率が得られ、太陽電池部品の発電能力をアップできる。それに、このような有機材料は、太陽電池部品の重量を減少することができ、真空蒸着などの技術で製造でき、大量製造も容易に実現できる。
【0038】
以下、具体的な実施例を用いてチオフェン含有有機光電材料の製造方法及びその特性などを説明する。
【0039】
実施例1
本実施例1のチオフェン含有有機光電材料としては、2,2’−((5,5’’’’−ジヘキシル−[2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’−キンクエチオフェン]−3’’’,4’−ジイル)ビス(メチリデン))ジマロノニトリル(2,2’−((5,5’’’’−dihexyl−[2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’−quinquethiophene]−3’’’,4’−diyl)bis(methanylylidene))dimalononitrile)が挙げられ、その構造式は下記のように表される。
【0040】

【0041】
上記構造式から以下のことが分かる。本実施例1のチオフェン含有有機光電材料は対称的な分子構造を有しており、5個のチオフェン環及び2対の電子求引基であるシアノ基を有する。このような対称的な分子構造により、チオフェン含有有機光電材料はその他の複数のチオフェン環を有する材料より、吸光特性及び光電特性に優れた。形態一により、キンクエチオフェンを製造する方法は、以下の通りである。
【0042】
1)下記構造式で表されるように、2−((2−ブロモ−5−(5−ヘキシルチオフェン−2−イル)チオフェン−3−イル)メチレン)マロンニトリルを製造する。

【0043】
本実施例1のチオフェン含有有機光電材料は対称的な分子構造を有するので、このステップにおいて、化合物A及びBが同一な構造を有し、同じ生成物が得られ、即ち化合物A’及びB’が同じ構造を有する。そのため、ステップ1)を一回だけ行えばよく、製造工程を簡単化させコストを低下させることができる。チオフェン含有有機光電材料は非対称的な分子構造を有すると、化合物A及びBが異なる構造を有し、それぞれステップ1)を行う必要がある。製造ステップは以下の通りである。先ずは、エタノール(50.0 mL)、5−ブロモ−5’−ヘキシル−2,2’−ビチオフェン−4−カルバルデヒド(0.90 g、2.52 mmol、化合物A又はBに属する)及びマロンニトリル(0.19 g、2.80 mmol)を順に加え、加熱回流を行う。次に、速やかに3滴のピリジルを添加し一夜反応させる。それから、反応液を飽和塩化ナトリウム水溶液で数回洗浄した後、酢酸エチルで抽出して、無水硫酸マグネシウムで干燥し、濾過後の濾液を収集し回転蒸発する。最後に、石油エーテル:酢酸エチル(20:1)の溶離液でシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行って、金色の固体を得る。その収率は83%であり、GC−MS m/z=405である。
【0044】
2)下記構造式で表されるように、2,2’−((5,5’’’’−ジヘキシル−[2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’−キンクエチオフェン]−3’’’,4’−ジイル)ビス(メチリデン))ジマロノニトリルを製造する。
【0045】

【0046】
具体的な製造ステップは以下の通りである。圧力管に50mLのTHFを加え、速やかに2−((2−ブロモ−5−(5−ヘキシルチオフェン−2−イル)チオフェン−3−イル)メチレン)マロンニトリル(0.61 g、 1.50 mmol、化合物A’又はB’に属する)、及び2,5−ビス(トリブチルスズ)チオフェン(0.46g、 0.70 mmol、化合物Cに属する)を加え、窒素を液面下に10分間吹き込んだ後、Pd(dba) (0.013 g、 0.014 mol)及びP(o−Tol)(0.0083 g、0.027 mmol)を加え、酸素を除去するため窒素を液面下に10分間吹き込む。それから、蓋を閉め、80℃までに加熱し、一夜反応させる。反応終了後、室温まで冷却させ、KF(10.0 mL, 1.00 M)溶液を加えて30分間撹拌し、飽和塩化ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出して、無水硫酸マグネシウムで干燥し、濾過後の濾液を収集し回転蒸発する。それぞれn−ヘキサンとエタノールで沈殿を2回行い、その後、得られた粗生成物を濾過して石油エーテル:ジクロロメタン(1:2)の溶離液でシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行って、紫黒色の粉末状の固体を得る。その収率は81%であり、GC−MS m/z=733である。
【0047】
実施例2
実施例1と同様な最終生成物とするキンクエチオフェンを例として、形態二により、キンクエチオフェンを製造する方法は、以下の通りである。
【0048】
1)下記構造式で表されるように、5,5’’’’−ジヘキシル−4’,3’’’−ジアルデヒド−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’−キンクエチオフェンを製造する。
【0049】

【0050】
本実施例2のチオフェン含有有機光電材料は対称的な分子構造を有するので、このステップにおいて、化合物A及びBが同一な構造を有し、一種類の原料だけを用いてステップ1)を行えばよく、製造工程を簡単化させコストを低下させることができる。
【0051】
具体的にステップ1)は以下の通りである。圧力管に15mLのTHFを加え、速やかに5−ブロモ−5’−ヘキシル−2,2’−ビチオフェン−4−カルバルデヒド(0.36 g、 1.00 mmol)及び2,5−ビス(トリブチルスズ)チオフェン(0.33 g、 0.50 mmol)を加え、窒素を液面下に10分間吹き込んだ後、Pd(dba) (0.0092 g, 0.010 mol)及びP(o−Tol)(0.0061 g, 0.020 mmol)を加え、窒素を液面下に10分間吹き込む。それから、蓋を閉め、80℃までに加熱し、一夜反応させる。反応終了後、室温まで冷却させ、KF(10.0 mL, 1.00 M)溶液を加えて30分間撹拌し、飽和塩化ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出して、無水硫酸マグネシウムで干燥し、濾過後の濾液を収集し回転蒸発する。石油エーテル:ジクロロメタン(3:1)の溶離液でシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行って、紫色の粉末状の固体を得る。その収率は71%であり、GC−MS m/z=637である。
【0052】
2)実施例1と同様な最終生成物とする2,2’−((5,5’’’’−ジヘキシル−[2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’−キンクエチオフェン]−3’’’,4’−ジイル)ビス(メチリデン))ジマロノニトリルを製造する。
【0053】
製造ステップは以下の通りである。先ずは、エタノール(40.0 mL)、5,5’’’’−ジヘキシル−4’,3’’’−ジアルデヒド−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’−セキシチオフェン、及びマロンニトリル(0.046 g, 0.70 mmol)を順に加え、加熱回流を行う。次に、速やかに3滴のピリジルを添加し一夜反応させる。それから、反応液を飽和塩化ナトリウム水溶液で数回洗浄した後、酢酸エチルで抽出して無水硫酸マグネシウムで干燥し、濾過後の濾液を収集し回転蒸発する。それぞれn−ヘキサンとエタノールで沈殿を2回行い、その後、得られた粗生成物を濾過して石油エーテル:ジクロロメタン(1:2)の溶離液でシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行って、紫黒色の粉末状の固体を得る。その収率は53%であり、GC−MS m/z=733である。
【0054】
上記から分かるように、上記チオフェン含有有機光電材料において、チオフェンは5員環であるので、ヒュッケル則を満たし、適度なバンドギャップと広いスペクトル応答を有し、熱的安定性と環境安定性が優れた。それに、上記チオフェン含有有機光電材料は電子求引基である2対のシアノ基を有するので、材料のスペクトル応答範囲をさらに拡大することができ、且つ材料の光電特性を向上させることができる。上記チオフェン含有有機光電材料の製造方法において、簡単な合成経路を採用しているため、製造コストが減少となる。太陽電池部品は、チオフェン含有有機光電材料を用いることにより、光電変換効率を向上させ太陽電池部品の重量を低減させることができ、且つ大量生産に便利である。
【0055】
上記の説明は、本発明の好適な実施例に関するものであり、本発明はそれに限定されず、本発明の主旨範囲内にある様々な修正や変更などは、全て本発明の保護範囲内のものである。
【符号の説明】
【0056】
11.ガラス基体層
12.透明陽極
13.中間補助層
14.活性層
15.陰極
16.バス終端


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含むチオフェン含有有機光電材料。
(化1)

(ここで、R、R、R、Rは、それぞれ同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル鎖であり、m、n、pは、それぞれ同一又は異なって、0〜6の整数である。)
【請求項2】
前記RとRは、同一の炭素数6の直鎖状のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のチオフェン含有有機光電材料。
【請求項3】
前記RとRは、いずれも水素原子であることを特徴とする請求項1に記載のチオフェン含有有機光電材料。
【請求項4】
m、n、pは、いずれも0又は1であることを特徴とする請求項1に記載のチオフェン含有有機光電材料。
【請求項5】
下記一般式で表される化合物A、B、C及びマロンニトリルをそれぞれ用意するステップと、

(ここで、R、R、R、Rは、それぞれ同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル鎖であり、m、n、pは、それぞれ同一又は異なって、0〜6の整数である。)
触媒/溶剤の条件下で、化合物AとBとを、それぞれマロンニトリルと縮合反応させ、又は、化合物A及びBと化合物CとをStilleカップリング反応させるステップと、
触媒/溶剤の条件下で、縮合反応で得られた生成物と化合物CとをStilleカップリング反応させ、又は、Stilleカップリング反応で得られた生成物をマロンニトリルと縮合反応させることで、下記一般式(1)で表される化合物を得るステップと、を含むチオフェン含有有機光電材料の製造方法。
(化1)

【請求項6】
化合物AとBとをそれぞれマロンニトリルと縮合反応させた縮合反応生成物を、飽和塩化ナトリウム水溶液で数回洗浄した後、抽出して乾燥させ、濾過後の濾液を収集し回転蒸発し、次に、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、精製した生成物を得る精製ステップを含むことを特徴とする請求項5に記載のチオフェン含有有機光電材料の製造方法。
【請求項7】
化合物A及びBと化合物CとをStilleカップリング反応させたカップリング反応生成物の中に、KF溶液を加えて数分間撹拌し、飽和塩化ナトリウム水溶液を加えた後、抽出して乾燥させ、濾過後の濾液を収集し回転蒸発し、n−ヘキサンとエタノールで沈殿を2回行い、その後、得られた粗生成物を濾過してシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、精製した生成物を得る精製ステップを含むことを特徴とする請求項5に記載のチオフェン含有有機光電材料の製造方法。
【請求項8】
前記縮合反応において、触媒としてはピリジル又はトリエチルアミンが使用され、溶剤としてはエタノール、メタノール、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、DMF、トルエン又はアセトンが使用されることを特徴とする請求項5に記載のチオフェン含有有機光電材料の製造方法。
【請求項9】
前記Stilleカップリング反応において、触媒としては有機パラジウム触媒が使用され、溶剤としてはテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、エチレングリコールジメチルエーテル、ベンゼン又はトルエンが使用されることを特徴とする請求項5に記載のチオフェン含有有機光電材料の製造方法。
【請求項10】
順に積層したガラス基体層、透明陽極、中間補助層、活性層及び陰極を含む太陽電池部品であって、
前記活性層は、電子供与体材料と電子受容体材料を含み、
前記電子供与体材料は、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の前記チオフェン含有有機光電材料である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−513670(P2013−513670A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542334(P2012−542334)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/CN2009/075548
【国際公開番号】WO2011/072435
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(511215230)オーシャンズ キング ライティング サイエンスアンドテクノロジー カンパニー リミテッド (15)
【Fターム(参考)】