説明

チオラクトマイシンおよび3−デメチルチオラクトマイシンの製造方法、それらの中間体の製造方法およびそれらの新規な製造中間体

【課題】感染症治療薬、および抗肥満薬として有用なチオラクトマイシンおよび3-デメチルチオラクトマイシンの製造方法の提供。
【解決手段】2,4−ジメチル−2,4−ヘキサジエンカルボン酸を出発原料として、特定のオキサゾリジノン又は、チアゾリジン−2−チオンと反応させた後、数工程を経て、2,4−ジメチル−2−チオ−ヘキサ−3,5−ジエニルエステル誘導体とすることにより、チオラクトマイシンを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸合成酵素(FAS)阻害活性を示し、感染症治療薬としての用途および抗肥満薬としての用途が期待される下記一般式(9)で表されるチオラクトマイシン(R11=Me)および3-デメチルチオラクトマイシン(R11=H)の製造方法、それらの中間体の製造方法およびそれらの新規な製造中間体に関する。
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、R11は水素原子またはメチル基を示す)
【背景技術】
【0004】
チオラクトマイシン(前記一般式(9)、R11=Me)は、Nocardiasp.から単離・構造決定されたチオテトロン酸抗生物質である。(非特許文献1)。
【0005】
近年、各種耐性菌による難治性感染症の蔓延が世界的に問題になっている。チオラクトマイシンは、脂肪酸合成酵素(FAS)を阻害することにより、グラム陽性菌、グラム陰性菌および結核菌に対して抗菌活性を示すことが報告されており(非特許文献 2、3、4)、各種耐性菌による難治性感染症治療薬として有用である。また、チオラクトマイシンやその誘導体には抗マラリア活性を有していることが報告されている(非特許文献 5)。また、FAS阻害という作用メカニズムを有していることから、チオラクトマイシンやその誘導体が抗肥満薬や抗がん剤としての開発が期待される。
【0006】
このようにチオラクトマイシンは、幅広い抗菌活性と興味深い化学構造の2点から世界的に注目される化合物であり、いくつかのグループからチオラクトマイシンの製造法が報告されている。すなわち非特許文献6では、チオラクトマイシンのラセミ体合成が報告されている。非特許文献7では非天然体の立体構造を持つ(-)-チオラクトマイシンの合成法が報告されている。非特許文献8では天然体の立体構造を持つ(+)-チオラクトマイシンの合成法が報告されている。
【0007】
これまでに開示されているチオラクトマイシンおよび3-デメチルチオラクトマイシンの製造法は、工程数、各工程の収率および反応の選択性など、簡便な製造法としては必ずしも満足できるものではなく、優れたチオラクトマイシンおよび3-デメチルチオラクトマイシンの製造法が求められている。
【0008】
また、これまでに、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12、特許文献1などにおいて数多くのチオラクトマイシンを合成のための化合物が報告されているが、本発明はさらに新たな製造中間体を提供するものである。
【非特許文献1】Oishi, I.ら、J. Antibiot. 1982, 35, 391.
【非特許文献2】Miyakawa, S.ら、J. Antibiot. 1982, 35, 411.
【非特許文献3】Noto, T.ら、J. Antibiot. 1982, 35, 401.
【非特許文献4】Slayden, R. A.ら、Antimicrob.Agents Chemother. 1996, 40, 2813.
【非特許文献5】Waller, R. F.ら、Antimicrob.Agents Chemother. 2003, 47, 297.
【非特許文献6】Wang, C. L.ら、Tetrahedron Lett. 1984, 25, 5243.
【非特許文献7】Chambers, M. S.ら、J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1 1984, 25, 5243.
【非特許文献8】McFadden, J. M.ら、Org. Lett. 2002, 4, 3859.
【非特許文献9】Sakya, S. M.ら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 2001, 11. 2751.
【非特許文献10】Suzanne, J. S.ら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 2003, 13, 3685.
【非特許文献11】Suzanne, J. S.ら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 2004, 14, 373.
【非特許文献12】Simon, M. J.ら、Bioorg. Med. Chem. 2004, 12, 683.
【非特許文献13】Petroski, R. J.ら、Synth. Commun. 2001, 31, 89.
【非特許文献14】Ho, G. J. ら、J. Org. Chem. 1995, 60, 2271.
【非特許文献15】Evans, D. A. ら、J. Am. Chem. Soc. 1990. 112. 4011.
【非特許文献16】Fujiki, K. ら、Synthesis. 2002, 343.
【非特許文献17】Fuchs, P. L.ら、Synth. Commun. 1994, 24, 3099.
【特許文献1】WO 2004/005277 パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、感染症治療薬としての用途および抗肥満薬としての用途が期待されるチオラクトマイシンおよび3-デメチルチオラクトマイシン製造方法、それらの中間体の製造方法およびそれらの新規な製造中間体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これまでに報告されているチオラクトマイシンおよび3-デメチルチオラクトマイシンの製造法は、工程数、各工程の収率および反応の選択性において必ずしも満足できるものではない。本発明者らはチオラクトマイシンおよび3-デメチルチオラクトマイシンの簡便な製造法を提供することを目的として鋭意研究を重ねた結果、チオラクトマイシンおよび3-デメチルチオラクトマイシンの新規な製造方法並びにその新規な製造中間体を見出し、本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明は
1)2, 4-ジメチル-ヘキサ-2, 4-ジエンカルボン酸を酸ハロゲン化物と反応させることにより、混合酸無水物に変換後、
一般式(1)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R、R、RおよびRは同一または相異なって水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し、XはOまたはSを示す)で表されるオキサゾリジノン誘導体またはチアゾリジン-2-チオン誘導体と反応させ、
一般式(2)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R、R、R、RおよびXは前記に同じ)で表される3-(2, 4-ジメチルヘキサ-2, 4-ジエノイル)-2-オキサゾリジノン誘導体またはチアゾリジン-2-チオン誘導体を得、これに
一般式(3)
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、Rはハロゲン原子、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよいアリールスルホニル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し、R6およびR7は同一または相異なって水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基または置換されていてもよいアリールメチル基を示し、R8は水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示す)で表される3, 3-ジアルコキシアルキルスルフェニル誘導体を塩基存在下で反応させて、
一般式(4)
【0018】
【化5】

【0019】
(式中、R、R、R、R4、、R、RおよびXは前記に同じ)で表される2-(3, 3-ジアルコシキアルキルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエン酸誘導体を得、これにチタニウムテトラアルコキシドを反応させ、
一般式(5)
【0020】
【化6】

【0021】
(式中、R、RおよびRは前記に同じく、Rは水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示す)で表される2-(3, 3-ジアルコシキアルキル)スルファニル-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体を得、次いで酸で処理することにより
一般式(6)
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、RおよびRは前記に同じ)で表される2, 4-ジメチル-2-(3-オキソアルキルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体を得、これに塩基を反応させて、
一般式(7)
【0024】
【化8】

【0025】
(式中、R10は水素原子、エチル基を除く置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示す)で表される2, 4-ジメチル-2-チオ-ヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体を得、これに酸ハロゲン化物のような求電子剤を反応させて、
一般式(8)
【0026】
【化9】

【0027】
(式中、R10は前記に同じで、R11は水素原子またはメチル基を示す)で表される2, 4-ジメチル-2-(1-オキシアルキル)スルファニルヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体を得、これに塩基を反応させることを特徴とする、
一般式(9)
【0028】
【化10】

【0029】
(R11は前記に同じ)で表されるチオラクトマイシンまたは3-デメチルチオラクトマイシンの製造方法、
【0030】
2)一般式(2)
【0031】
【化11】

【0032】
(式中、R、R、R、RおよびXは前記に同じ)で表される3-(2, 4-ジメチルヘキサ-2, 4-ジエノイル)-2-オキサゾリジノン誘導体またはチアゾリジン-2-チオン誘導体と
一般式(10)
【0033】
【化12】

【0034】
(式中、Rはハロゲン原子、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよいアリールスルホニル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環、および置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し、R12、R13およびR14は同一または相異なって水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基または置換されていてもよい芳香族炭化水素を示す)で表される(2-トリアルキルシリルエチル)スルフェニル誘導体を塩基存在下で反応させて、
一般式(11)
【0035】
【化13】

【0036】
(式中、R、R、R、R4、12、R13、R14およびXは前記に同じ)で表される2, 4-ジメチル-2-(2-トリアルキルシリルエチル)スルファニルヘキサ-3, 5-ジエン酸誘導体を得、これにチタニウムテトラアルコキシドを反応させて得られる
一般式(12)
【0037】
【化14】

【0038】
(式中、R、R12、R13およびR14は前記に同じ)で表される2, 4-ジメチル-2-(2-トリアルキルシリルエチル)スルファニルヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体から2-トリアルキルシリルエチル基の除去を行い、
一般式(7)
【0039】
【化15】

【0040】
(式中、R10は前記に同じ)で表される2, 4-ジメチル-2-チオヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体とすることを特徴とするチオラクトマイシンまたは3-デメチルチオラクトマイシンの中間体の製造方法、
【0041】
3) 一般式(2)
【0042】
【化16】

【0043】
(式中、R、R、R、R4、およびXは前記に同じ)で表される3-(2, 4-ジメチルヘキサ2, 4-ジエノイル)-2-オキサゾリジノン誘導体またはチアゾリジン-2-チオン誘導体またはそれらの塩であることを特徴とするチオラクトマイシンまたは3-デメチルチオラクトマイシンの製造中間体、
【0044】
4) 前記一般式(4)
【0045】
【化17】

【0046】
(式中、R、R、R、R4、、R、R、およびXは前記に同じ)で表される2-(3, 3-ジアルコシキアルキルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエン酸誘導体またはそれらの塩であることを特徴とするチオラクトマイシンまたは3-デメチルチオラクトマイシンの製造中間体、
【0047】
5) 前記一般式(5)
【0048】
【化18】

【0049】
(式中、R、R、RおよびRは前記に同じ)で表される2-(3, 3-ジアルコシキアルキル)スルファニル-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体またはそれらの塩であることを特徴とするチオラクトマイシンまたは3-デメチルチオラクトマイシンの製造中間体、
【0050】
6) 前記一般式(6)
【0051】
【化19】

【0052】
(式中、RおよびRは前記に同じ)で表される2, 4-ジメチル-2-(3-オキソアルキルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体またはそれらの塩であることを特徴とするチオラクトマイシンまたは3-デメチルチオラクトマイシンの製造中間体、
【0053】
7) 前記一般式(8)
【0054】
【化20】

【0055】
(式中、R10およびR11は前記と同じ)で表される2, 4-ジメチル-2-(1-オキシアルキル)スルファニルヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体またはそれらの塩であることを特徴とするチオラクトマイシンまたは3-デメチルチオラクトマイシンの製造中間体、に関するものである。
【0056】
ここで「置換されていてもよい低級アルキル基」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C1〜C6のアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C1〜C6のアルキルカルボニル基、C1〜C6のアルコキシカルボニル基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルコキシカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルキルスルホニルアミノ基、および置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基などから選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいC1〜C6のアルキル基(メチル基、エチル基、1-メチルエチル基、プロピル基、1,1-ジメチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-エチルプロピル基、2-エチルプロピル基、およびヘキシル基など)を意味する。
【0057】
「置換されていてもよい低級シクロアルキル基」とは、置換されていてもよい低級アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C1〜C6のアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C1〜C6のアルキルカルボニル基、C1〜C6のアルコキシカルボニル基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルコキシカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルキルスルホニルアミノ基、および置換されてもよいアリールスルホニルアミノ基などから選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいC1〜C10のシクロアルキル基(シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびメンチル基など)を意味する。
【0058】
「置換されていてもよいアリールメチル基」とはハロゲン原子、置換されていてもよい低級アルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいC1〜C6のアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C1〜C6のアルキルカルボニル基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基、置換されていてもよいアリールアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、およびC1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基などから選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいアリールメチル基(フェニルメチル基、ナフチルメチル基、ピリジルメチル基、キノリルメチル基、およびインドリルメチル基など)を意味する。
【0059】
「置換されていてもよい芳香族炭化水素」とは、ハロゲン原子、置換されていてもよい低級アルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、C1〜C6のアルキルカルボニル基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、およびC1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基などから選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素(ベンゼン環、ナフタレン環、およびアントラセン環など)を意味する。
【0060】
「置換されていてもよい芳香族へテロ環」とは、ハロゲン原子、置換されていてもよい低級アルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいC1〜C6のアルコキシ基、C1〜C6のアルキルカルボニル基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、およびC1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基などから選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよい芳香族へテロ環(窒素原子、酸素原子、硫黄原子の中から任意に選ばれた1〜3個のヘテロ原子を含む5員または6員の芳香族単環式複素環、あるいは9員または10員の芳香縮合複素環、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、キノリン環、ナフチリジン環、キナゾリン環、アクリジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソキサゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンズイミダゾール環、およびベンズオキサゾール環など)を意味する。
【0061】

「置換されていてもよい脂肪族へテロ環」とは、ハロゲン原子、置換されていてもよい低級アルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいC1〜C6のアルコキシ基、C1〜C6のアルキルカルボニル基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、およびC1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基などから選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよい脂肪族へテロ環(窒素原子、酸素原子、および硫黄原子の中から任意に選ばれた1〜3個のヘテロ原子を含む4〜7員の脂肪族単環式複素環、あるいは9員または10員の脂肪族縮合複素環、例えばアゼチジン環、ピロリジン環、テトラヒドロフラン環、ピペリジン環、モルホリン環、およびピペラジン環など)を意味する。
【0062】
「置換されていてもよいアルキルスルホニル基」とはハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C1〜C6のアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C1〜C6のアルキルカルボニル基、C1〜C6のアルコキシカルボニル基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルコキシカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルキルスルホニルアミノ基、および置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基などから選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいC1〜C6のアルキルスルホニル基(メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、1-メチルエチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、t-ブチルスルホニル基、およびヘキシルスルホニル基など)を意味する。
【0063】
「置換されていてもよいアリールスルホニル基」とは、ハロゲン原子、置換されていてもよい低級アルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、C1〜C6のアルキルカルボニル基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、およびC1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基などから選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいアリールスルホニル基(ベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基およびp-クロロベンゼンスルホニル基など)を意味する。
【0064】
「置換されていてもよいC1〜C6のアルコキシ基」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C1〜C6のアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C1〜C6のアルキルカルボニル基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルコキシカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルキルスルホニルアミノ基、および置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基などから選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいC1〜C6のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、およびヘキシルオキシ基など)を意味する。
【0065】
「酸ハロゲン化物」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C1〜C6のアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C1〜C6のアルキルカルボニル基、C1〜C6のアルコキシカルボニル基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルコキシカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルキルスルホニルアミノ基、および置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基などから選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいC1〜C6の酸ハロゲン化物(アセチルクロリド、プロピオン酸クロリド、アクリル酸クロリド、アセチルブロミド、プロピオン酸ブロミド、アクリル酸ブロミドなど)を意味する。
【0066】
「チタニウムテトラアルコキシド」とはチタニウムテトラベンジラート、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラ−t−ブトキシドなどを意味する。ここでハロゲン原子とはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子を意味する。
【0067】
本発明中の好ましい製造中間体化合物としては、
(4R)-3-(2, 4-ジメチル-ヘキサ-2, 4-ジエノイル)-4-(フェニルメチル)-2-オキサゾリジノン、
(4S)-3-(2, 4-ジメチル-ヘキサ-2, 4-ジエノイル)-4-(フェニルメチル)-2-オキサゾリジノン、
(4R)-3-[(2R)-2-(3, 3-ジメトキシプロピルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエノイル]-4-(フェニルメチル)-2-オキサゾリジノン、
(4S)-3-[(2S)-2-(3, 3-ジメトキシプロピルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエノイル]-4-(フェニルメチル)-2-オキサゾリジノン、
(2R)-2-(3, 3-ジメトキシプロピルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステル、
(2S)-2-(3, 3-ジメトキシプロピルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステル、
(2R)- 2, 4-ジメチル-2-(2-ホルミルエチルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステル、
(2S)- 2, 4-ジメチル-2-(2-ホルミルエチルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステル、
(2R) -2, 4-ジメチル-2-プロピオニルスルファニルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステル、
(2S) -2, 4-ジメチル-2-プロピオニルスルファニルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステル、
(2R) -2-アセチルスルファニル-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステル、
(2S) -2-アセチルスルファニル-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステル、
などがあげられる。
【発明の効果】
【0068】
チオラクトマイシンおよび3-デメチルチオラクトマイシンの製造における新規な製造中間体を見出すことによって、チオラクトマイシンおよび3-デメチルチオラクトマイシンの簡便な製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
本発明化合物が塩を形成する場合、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、および燐酸などの無機塩、または酢酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、パルミチン酸、およびトリフルオロ酢酸などの有機酸塩との付加塩が例示できる。
【0070】
なお本発明の化合物である一般式(2)、(4)、(5)、(6)および(8)の化合物には1個または複数の不斉炭素が存在しており、それぞれの化合物にはこれらの不斉炭素に由来する光学異性体が存在しうるが、これらの光学異性体およびそれらの混合物は本発明に包含されるものである。
【0071】
一般式(9)で表される化合物は、例えば下記の製造工程に従って製造することができる。
【0072】
【化21】

【0073】
原料化合物2, 4-ジメチルヘキサ-2, 4-ジエンカルボン酸(13)は公知化合物であり、その製造は例えば非特許文献13等に記載されている方法を参考に実施することができる。
【0074】
(第一工程)
本工程は、公知の方法によって製造した2, 4-ジメチルヘキサ-2, 4-ジエンカルボン酸(13)を適当な酸ハロゲン化物と反応させることにより、混合酸無水物を製造した後、一般式(1)で表されるオキサゾリジノン誘導体またはチアゾリジン-2-チオン誘導体を反応させ、前記一般式(2)で表される3-(2, 4-ジメチルヘキサ2, 4-ジエノイル)-2-オキサゾリジノン誘導体またはチアゾリジン-2-チオン誘導体を製造するものである。
【0075】
本反応は非特許文献14記載の方法を適宜採用して行うことができる。
【0076】
本反応の混合酸無水物を製造する工程は、塩基の存在下または非存在下に酸ハロゲンを用いて行われる。用いる酸ハロゲン化物としては、アクリル酸クロリド、ピバリン酸クロリド、プロピオン酸クロリド、アセチルクロリドなどが例示される。本反応に塩基を用いる場合には、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N, N, N, N-テトラメチルエチレンジアミン、ジアザビシクロ[5. 4. 0]-7-ウンデセン、ジアザビシクロ[4. 3. 0]-5-ノネン、ホスファゼンベースまたはペンタイソプロピルグアニジンなどの有機塩基が例示できる。本反応に用いられる溶媒としては、反応に関与しない限り如何なる溶媒も用いることができるが、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などが用いられる。反応は通常-110℃から100℃で円滑に進行する。
【0077】
オキサゾリジノン誘導体またはチアゾリジン-2-チオン誘導体を導入する工程は、ハロゲン化リチウムを用いて行われる。ハロゲン化リチウムとしては塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウムが例示される。本反応に用いられる溶媒としては、反応に関与しない限り如何なる溶媒も用いることができるが、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などが用いられる。反応は通常0℃から100℃で円滑に進行する。
【0078】
(第二工程)
本工程は、前記第一工程で得られる前記一般式(2)で表される3-(2, 4-ジメチルヘキサ-2, 4-ジエノイル)-2-オキサゾリジノン誘導体または3-(2, 4-ジメチルヘキサ-2, 4-ジエノイル)チアゾリジン-2-チオン誘導体に一般式(3)で表されるスルフェニル化剤を反応させ、一般式(4)で表される3-[2, 4-ジメチル-2-(3, 3-ジアルコシキアルキルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエノイル]-2-オキサゾリジノン誘導体または3-[2, 4-ジメチル-2-(3, 3-ジアルコシキアルキルスルファニル)ヘキサ3, 5-ジエノイル]チアゾリジン-2-チオン誘導体を製造するものである。
【0079】
本反応は、塩基存在下、および添加剤の存在下または非存在下で一般式(12)で表されるスルフェニル化剤を用いて行われる。用いられる塩基としてはリチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドなどのアルカリ金属アミドが用いられる。添加剤を用いる場合には、ヘキサメチルホスホラミド、N, N-ジメチルホルムアミド、N, N’-ジメチルプロピレンウレア、N, N-ジエチルアセトアミド、N, N’-ジメチルイミダゾリジノン、N, N, N’, N’-テトラエチルスルファミド、四塩化チタン、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化セリウム、臭化マグネシウム、ジアルキルボラントリフレートおよびシルバートリフレートなどが例示される。溶媒としては反応に関与しなければいかなるものも用いることができるが、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、およびジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒が好適に用いられる。反応は-110℃から50℃で、円滑に進行する。
【0080】
(第三工程)
本工程は、前記第二工程で得られる前記一般式(4)で表される3-[2-(3, 3-ジアルコシキアルキルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ3, 5-ジエノイル]-2-オキサゾリジノン誘導体または3-[2-(3, 3-ジアルコシキアルキルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ3, 5-ジエノイル]チアゾリジン-2-チオン誘導体にチタニウムテトラアルコキシドを反応させ、一般式(5)で表される2-(3, 3-ジアルコシキプロピル)スルファニル-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体を製造するものである。
【0081】
本反応は、非特許文献15記載の方法を採用して行うことができる。本反応に用いられるチタニウムテトラアルコキシドは、非特許文献15を参考にして要時調製して用いる。本反応に溶媒を用いる場合には、反応に関与しなければいかなるものも用いることができるが、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、およびメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、およびベンジルアルコール等のアルコール系溶媒が用いられる。反応は0℃から150℃で、円滑に進行する。
【0082】
(第四工程)
本工程は、前記第三工程で得られる前記一般式(5)で表される2-(3, 3-ジアルコシキプロピル)スルフェニル-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体のケトンもしくはアルデヒド部分の保護基の除去を行い、一般式(6)で表される2, 4-ジメチル-2-(3-オキソアルキルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体を製造するものである。
【0083】
保護基の除去には塩酸、クエン酸、硝酸および硫酸などの無機酸、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸、ピリジニウムパラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機酸、アンバーリストなどのイオン交換樹脂、またはモンモリロナイトK10などの珪藻土などが例示されるが、1%〜10%塩酸およびトリフルオロ酢酸が好適である。本反応に用いる溶媒は、反応に関与しなければいかなるものも用いることができるが、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトンおよび水が用いられる。反応は-50℃から150℃で、円滑に進行する。
【0084】
(第五工程)
本工程は、前記第四工程で得られる前記一般式(6)で表される2, 4-ジメチル-2-(3-オキソアルキルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体に適当な塩基を反応させて、一般式(7)で表される2, 4-ジメチル-2-チオヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体を製造するものである。
【0085】
本反応で用いる塩基には炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウムおよび炭酸バリウムなどの炭酸塩、またはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N, N, N, N-テトラメチルエチレンジアミン、ジアザビシクロ[5. 4. 0]-7-ウンデセン、ジアザビシクロ[4. 3. 0]-5-ノネン、ホスファゼンベースおよびペンタイソプロピルグアニジンなどの有機塩基が例示できるが、本反応には炭酸セシウムが好適である。本反応に用いる溶媒は、反応に関与しなければいかなるものも用いることができるが、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール等のアルコール系溶媒、およびアセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などが用いられる。反応は-80℃から100℃で、円滑に進行する。
【0086】
(第六工程)
本工程は、前記第五工程で得られる前記一般式(7)で表される2, 4-ジメチル-2-チオヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体に適当な求電子剤を反応させて、一般式(8)で表される2, 4-ジメチル-2-(1-オキソアルキル)スルファニルヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体を製造するものである。
【0087】
本反応は、特許文献1記載の方法を採用して行うことができる。
【0088】
本反応で用いる求電子剤にはアセチルフルオリド、アセチルクロリド、アセチルブロミド、アセチルヨーダイド、無水酢酸、プロピオニルフルオリド、プロピオニルクロリド、プロピオニルブロミド、プロピオニルヨーダイド、プロピオン酸無水物などが例示できる。本反応に塩基を用いる場合には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウムおよび炭酸バリウムなどの炭酸塩、またはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N, N, N, N-テトラメチルエチレンジアミン、ジアザビシクロ[5. 4. 0]-7-ウンデセン、ジアザビシクロ[4. 3. 0]-5-ノネン、ホスファゼンベースおよびペンタイソプロピルグアニジンなどの有機塩基が例示できるが、本反応にはトリエチルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンが好適である。本反応に用いる溶媒は、反応に関与しなければいかなるものも用いることができるが、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、およびメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール等のアルコール系溶媒が用いられる。反応は-30℃から150℃で、円滑に進行する。
【0089】
(第七工程)
本工程は、前記第九工程で得られる前記一般式(8)で表される2, 4-ジメチル-2-(1-オキソアルキル)スルファニルヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体に適当な塩基を反応させて、一般式(9)で表されるチオラクトマイシンまたは3-デメチルチオラクトマイシンを製造するものである。
【0090】
本反応は、特許文献1記載の方法を採用して行うことができる。
【0091】
本反応に用いる塩基には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウムおよび炭酸バリウムなどの炭酸塩、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N, N, N, N-テトラメチルエチレンジアミン、ジアザビシクロ[5. 4. 0]-7-ウンデセン、ジアザビシクロ[4. 3. 0]-5-ノネン、ホスファゼンベースおよびペンタイソプロピルグアニジンなどの有機塩基、またはリチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドなどのアルカリ金属アミドが例示できるが、本反応にはリチウムビス(トリメチルシリル)アミドが好適である。本反応に用いる溶媒は、反応に関与しなければいかなるものも用いることができるが、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、およびメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール等のアルコール系溶媒が用いられる。反応は-110℃から100℃で、円滑に進行する。
【0092】
あるいは、前記一般式(7)で表される化合物は、前記一般式(2)を出発原料とし、例えば下記の製造工程に従っても製造することができる。
【0093】
【化22】

【0094】
(第八工程)
本工程は、前記第一工程で得られる前記一般式(2)で表される3-(2, 4-ジメチルヘキサ3, 5-ジエノイル)-2-オキサゾリジノン誘導体に一般式(10)で表されるスルフェニル化剤を反応させ、一般式(11)で表される3-{2, 4-ジメチル-2-[(2-トリアルキルシリルエチル)スルファニル]ヘキサ-3, 5-ジエノイル}-2-オキサゾリジノン誘導体または3-{2, 4-ジメチル-2-[(2-トリアルキルシリルエチル)スルファニル]ヘキサ-3, 5-ジエノイル}チアゾリジン-2-チオン誘導体を製造するものである。
【0095】
本反応は、塩基存在下、および添加剤の存在下または非存在下で一般式(12)で表されるスルフェニル化剤を用いて行われる。用いられる塩基としてはリチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドなどのアルカリ金属アミドが用いられる。添加剤を用いる場合には、ヘキサメチルホスホラミド、N, N-ジメチルホルムアミド、N, N’-ジメチルプロピレンウレア、N, N-ジエチルアセトアミド、N, N’-ジメチルイミダゾリジノン、N, N, N’, N’-テトラエチルスルファミド、四塩化チタン、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化セリウム、臭化マグネシウム、ジアルキルボラントリフレートおよびシルバートリフレート、などが例示される。溶媒としては反応に関与しなければいかなるものも用いることができるが、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、およびジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒が好適に用いられる。反応は-110℃から50℃で、円滑に進行する。
【0096】
(第九工程)
本工程は、前記第八工程で得られる前記一般式(11)で表される3-{2, 4-ジメチル-2-[(2-トリアルキルシリルエチル)スルファニル]ヘキサ-3, 5-ジエノイル}-2-オキサゾリジノン誘導体および3-{2, 4-ジメチル-2-[(2-トリアルキルシリルエチル)スルファニル]ヘキサ-3, 5-ジエノイル}チアゾリジン-2-チオン誘導体にチタニウムテトラアルコキシドを反応させ、一般式(12)で表される2, 4-ジメチル-2-[(2-トリアルキルシリルエチル)スルファニル]ヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体を製造するものである。
【0097】
本反応は、非特許文献15記載の方法を採用して行うことができる。
【0098】
本反応に用いられるチタニウムテトラアルコキシドは、非特許文献15を参考にして要時調製して用いる。本反応に溶媒を用いる場合には、反応に関与しなければいかなるものも用いることができるが、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、およびメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、およびベンジルアルコール等のアルコール系溶媒が用いられる。反応は0℃から150℃で、円滑に進行する。
【0099】
(第十工程)
本工程は、前記第三工程で得られる前記一般式(12)で表される2, 4-ジメチル-2-[(2-トリアルキルシリルエチル)スルファニル]ヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体の2-トリアルキルシリルエチル基の除去を行い、一般式(7)で表される2-チオ-2-ヘキサジエニルエステル誘導体を製造するものである。
【0100】
2-トリアルキルシリルエチル基の除去にはテトラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化水素・ピリジン、セシウムフルオリドおよびテトラフルオロホウ酸銀などが例示される。本反応に用いる溶媒は、反応に関与しなければいかなるものも用いることができるが、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、およびメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール等のアルコール系溶媒が用いられる。反応は-110℃から150℃で、円滑に進行する。
【0101】
(実施例)
以下、参考例および実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明がこれらに限定されるものでないことはいうまでもない。
【0102】
(参考例1)
2, 4-ジメチル-2, 4-ヘキサジエン酸の合成
【0103】
【化23】

【0104】
文献の方法 (非特許文献13) に従って、トリエチル 2-ホスホノプロピオネート(21.3 g, 89.4 mmoL) の無水ヘキサン溶液 (180 mL) 中に、室温アルゴン雰囲気下でt-BuOLi(94 mL, 94.0 mmoL)、を5分かけて加え、25分攪拌した。次いで氷冷下でチグリルアルデヒド(8.4 mL, 82.6 mmoL)を15分かけて加え、さらに30分攪拌した。反応混合液に氷水を加え、ヘキサンで抽出した(100 mL x 3)。合した有機層を無水硫酸ナトリウム乾燥し、溶媒留去した。残渣にエタノール(90 mL)を加え、次いで10%水酸化ナトリウム水溶液を加えた後、50℃で16時間攪拌した。反応混合液をヘキサンで洗浄し(100 mL x 3)、濃塩酸でpH1とした後、ジエチルエーテルで抽出し(100 mL x 3)、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。残渣を再結晶(MeOH-H2O)にて精製し、5.26 gの薄黄色結晶である表題化合物を得た(収率45%)。再度、ろ液を再結晶にて精製し1.77 gの薄黄色結晶である表題化合物を得た(収率15%)。さらにろ液をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、3.05 gの薄黄色固体の表題化合物を得た(収率26%)。
MS (EI+) (m/z): 140 (M+).
Analysis Calcd. for C8H12O2 : C, 68.54; H, 8.63; Found: C, 68.60; H, 8.60.
IR(KBr): 1663, 1273 cm-1.
【0105】
(実施例1)
(4R)-3-(2, 4-ジメチルヘキサ-2, 4-ジエノイル)-4-(フェニルメチル)-2-オキサゾリジノンの合成
【0106】
【化24】

【0107】
参考例1の化合物(2.00 g, 14.3 mmoL) の無水テトラヒドロフラン溶液 (72 mL) 中に、-15℃でトリエチルアミン(4.8 mL, 34.4 mmoL) を加え、次いでピバロイルクロリド(1.9 mL, 15.4 mmoL)を5分かけて加え、15分攪拌した。リチウムクロリド(730 mg, 17.2 mmoL)を加え、次いで無水テトラヒドロフラン(12 mL)に溶解させた(R)-4-ベンジル-2-オキサゾリジノン(3.20 g, 17.2 mmoL)を5分かけて加えた後、室温に戻して16時間攪拌した。反応混合液に飽和塩化アンモニウム水溶液(100 mL)を加え、酢酸エチルで抽出した(50 mL x 2)。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム(50 mL)、飽和食塩水(50 mL)で順次洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 4:1)にて精製し、3.93 gの無色固体である表題化合物を得た(収率92%)。再結晶(Et2O)を行い1.92 gの無色結晶を得た。再度ろ液を再結晶にて精製し1.50 gの無色結晶を得た。
MS (EI+) (m/z): 299 (M+).
Analysis Calcd. for C18H21NO3 : C, 72.22; H, 7.07; N, 4.68; Found: C, 72.07; H, 7.00; N, 4.70.
IR(KBr): 1786, 1674 cm-1.
【0108】
(実施例2)
(4S)-3-(2, 4-ジメチルヘキサ-2, 4-ジエノイル)-4-(フェニルメチル)-2-オキサゾリジノンの合成
【0109】
【化25】

【0110】
実施例1の方法に従って参考例1の化合物(2.00 g, 14.3 mmoL) 、トリエチルアミン(4.8 mL, 34.4 mmoL)、ピバロイルクロリド(1.9 mL, 15.4 mmoL)、リチウムクロリド(730 mg, 17.2 mmoL)、および(S)-4-ベンジル-2-オキサゾリジノン(3.20 g, 17.2 mmoL)を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 4:1)にて精製し、3.83 gの無色固体である表題化合物を得た(収率89%)。再結晶(Et2O)を行い無色結晶を得た。
MS (EI+) (m/z): 299 (M+).
Analysis Calcd. for C18H21NO3 : C, 72.22; H, 7.07; N, 4.68; Found: C, 72.12; H, 7.07; N, 4.59 .
IR(KBr): 1786, 1674 cm-1.
【0111】
(実施例3)
(4R)-3-[(2R)-2-(3, 3-ジメトキシプロピルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエノイル]-4-(フェニルメチル)-2-オキサゾリジノンの合成
【0112】
(工程1)
チオ酢酸 S-(3,3-ジメトキシプロピル)エステルの合成
【0113】
【化26】

【0114】
3-ブロモプロピオンアルデヒド ジメチルアセタール(11.5 mL, 81.7 mmoL) の無水テトラヒドロフラン溶液 (500 mL) 中に、-10℃でトリエチルアミン(13.7 mL, 98.3 mmoL)を加えたのちチオール酢酸 (6.3 mL, 86.4 mmoL)を5分かけて加え、1時間30分攪拌した後、室温に戻して14時間攪拌した。不溶物をろ過し、ろ液を溶媒留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、14.8 gの無色油状の表題化合物を得た(収率100%)。
MS (EI+) (m/z): 147 (M-OCH3+).
HRMS (EI+) (m/z): Calcd. for C7H14O3S (M-OCH3+): 147.0480. Found, 147.0516.
IR(NaCl): 1694, 1125 cm-1.
【0115】
(工程2)
3,3-ジメトキシプロピルジスルフィドの合成
【0116】
【化27】

【0117】
実施例3の工程1の化合物(22.3 g, 125 mmoL) の無水メタノール溶液 (310 mL) 中に、氷冷下でナトリウムメトキシド (9.24 g, 162 mmoL)を加えた後、室温に戻し50分攪拌した。次いでヨウ素(15.9 g, 62.6 mmoL)を加えて30分攪拌した。反応液を溶媒留去し、H2O(200 mL)を加えた後、酢酸エチルで抽出した(100 mL x 3)。有機層を飽和食塩水(50 mL)で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)にて精製し、16.6 gの薄黄色油状の表題化合物を得た(収率98%)。
MS (EI+) (m/z): 270 (M+).
HRMS (EI+) (m/z): Calcd. for C10H22O4S2(M+): 270.0960. Found, 270.0978.
IR(NaCl): 1122 cm-1.
【0118】
(工程3)
メチル 3,3-ジメトキシプロピルチオールスルホネートの合成
【0119】
【化28】

【0120】
文献の方法(非特許文献16) に従って、実施例3の工程2の化合物(305 mg, 1.13 mmoL) の無水塩化メチレン溶液 (7.0 mL) 中に、室温でメタンスルフィン酸ナトリウム (400 mg, 3.64 mmoL)を加えた後、ヨウ素(580 mg, 2.29 mmoL)を加え、2時間攪拌した。反応液に1mol/Lチオ硫酸ナトリウムを反応液が無色になるまで加え、塩化メチレンで抽出した(50 mL x 1)。有機層をH2O(50 mL)で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)にて精製し、209 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率86%)。
MS (EI+) (m/z): 183 (M-OCH3+).
HRMS (EI+) (m/z): Calcd. For C6H14O4S2(M-OCH3+): 183.0150. Found, 183.0163.
IR(NaCl): 1319, 1132 cm-1.
【0121】
(工程4)
(4R)-3-[(2R)-2-(3, 3-ジメトキシプロピルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエノイル]-4-(フェニルメチル)-2-オキサゾリジノンの合成
【0122】
【化29】

【0123】
実施例1の化合物(598 mg, 2.00 mmoL) の無水テトラヒドロフラン溶液 (10 mL) 中に、室温でヘキサメチルホスホラミド(1.4 mL, 8.05 mmoL)を加えた後、-78℃でナトリウムヘキサメチルジシラジド(2.2 mL, 2.20 mmoL)を5分かけて加えて30分攪拌した。実施例3の工程3の化合物(645 mg, 3.01 mmoL)の無水テトラヒドロフラン溶液(2.0 mL)を5分かけて加えたのち、徐々に昇温させて2時間攪拌した。反応液が0℃になった時点で飽和塩化アンモニウム水溶液(20 mL)を加え、酢酸エチルで抽出した(15 mL x 3)。有機層を飽和食塩水(15 mL)で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)にて精製し、780 mgの無色油状の表題化合物を立体異性体の混合物として得た(収率90%)。さらにHPLC(CHIRALPAK AD-H ヘキサン:2-プロパノール:エタノール=93:4:3)にて精製し、単一の化合物を641 mg得た(収率74%)。
MS (EI+) (m/z): 433 (M+).
HRMS (EI+) (m/z): Calcd. for C23H31NO5S (M +): 433.1881. Found, 433.1941.
IR(NaCl): 1790, 1680 cm-1.
【0124】
(実施例4)
(4S)-3-[(2S)-2-(3, 3-ジメトキシプロピルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエノイル]-4-(フェニルメチル)-2-オキサゾリジノンの合成
【0125】
【化30】

【0126】
実施例3の方法に従って実施例2の化合物(600 mg, 2.00 mmoL) 、ヘキサメチルホスホラミド(1.4 mL, 8.05 mmoL)、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(2.2 mL, 2.20 mmoL)、および実施例3の工程3の化合物(645 mg, 3.01 mmoL)を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 4:1)にて精製し735 mgの無色油状の表題化合物を立体異性体の混合物として得た(収率85%)。さらにHPLC(CHIRALPAK AD-H ヘキサン:2-プロパノール:エタノール=93:1:6)にて精製し、単一の化合物を581 mg得た(収率67%)。
MS (EI+) (m/z): 433 (M+).
HRMS (EI+) (m/z): Calcd. for C23H31NO5S (M +): 433.1881. Found, 433.1881.
IR(NaCl): 1790, 1680 cm-1.
【0127】
(実施例5)
(2R)-2-(3, 3-ジメトキシプロピルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0128】
【化31】

【0129】
無水ベンジルアルコール(4.3 mL, 41.6 mmoL)中に室温でチタニウムイソプロポキシド(0.61 mL, 2.07 mmoL)を加えた後、減圧下(0.5 mmHg〜1.0 mmHg)で2時間半攪拌した。その溶液を実施例5の化合物(432 mg, 1.00 mmoL) に加え、70℃で14時間攪拌した。塩化メチレン(100mL)を加えた後、1mol/L塩酸(5 mL)を加えた。析出した不溶物をセライトで除き、H2O(50 mL)を加えて、塩化メチレンで抽出した(50 mL x 3)。有機層を飽和食塩水(100 mL)で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、250 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率69%)。
MS (EI+) (m/z): 364 (M+).
HRMS (EI+) (m/z): Calcd. for C20H28O4S (M +): 364.1708. Found, 364.1710.
IR(NaCl): 1726 cm-1.
【0130】
(実施例6)
(2S)-2-(3, 3-ジメトキシプロピルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0131】
【化32】

【0132】
実施例5の方法に従って無水ベンジルアルコール(4.8 mL, 46.4 mmoL)、チタニウムイソプロポキシド(0.69 mL, 2.34 mmoL)および、実施例4の化合物(487 mg, 1.12 mmoL) を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、291 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率71%)。
MS (EI+) (m/z): 364 (M+).
HRMS (EI+) (m/z): Calcd. for C20H28O4S (M +): 364.1708. Found, 364.1737.
IR(NaCl): 1726 cm-1.
【0133】
(実施例7)
(2R)- 2, 4-ジメチル-2-(2-ホルミルエチルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0134】
【化33】

【0135】
実施例5の化合物(805 mg, 2.21 mmoL) のテトラヒドロフラン溶液 (9.0 mL) 中に、室温で6%塩酸(7.0 mL)加えて6時間攪拌した。氷冷下で飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20 mL)を加えた後、酢酸エチルで抽出した(15 mL x 3)。有機層を飽和食塩水(15 mL)で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:1)にて精製し、667 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率95%)。
MS (EI+) (m/z): 318 (M+).
HRMS (EI+) (m/z): Calcd. for C18H22O3S (M +): 318.1290. Found, 318.1308.
IR(NaCl): 1726 cm-1.
【0136】
(実施例8)
(2S)- )-2, 4-ジメチル-2-(2-ホルミルエチルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0137】
【化34】

【0138】
実施例7の方法に従って、実施例6の化合物(498 mg, 1.26 mmoL)および6%塩酸(5.0 mL)を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:1)にて精製し、380 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率95%)。
MS (EI+) (m/z): 318 (M+).
HRMS (EI+) (m/z): Calcd. for C18H22O3S (M +): 318.1290. Found, 318.1277.
IR(NaCl): 1726 cm-1.
【0139】
(実施例9)
(2R) -2, 4-ジメチル-2-プロピオニルスルファニルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0140】
【化35】

【0141】
(工程1)
(2R) -2, 4-ジメチル-2-チオヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
無水エタノール(105 mL)に炭酸セシウム(6.81 g, 20.9 mmoL)を懸濁させたのち、氷冷下で実施例7の化合物(666 mg, 2.09 mmoL) の無水エタノール溶液(7.0 mL)を20分かけて加えて20分攪拌した。反応液を飽和塩化アンモニア水溶液/1mol/L塩酸=3/1(120 mL)にあけ、ジエチルエーテルで抽出した (20 mL x 3) 。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。酢酸エチル(100 mL)を加え、再び無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。
【0142】
(工程2)
(2R) -2, 4-ジメチル-2-プロピオニルスルファニルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
工程1で得られた残渣に無水塩化メチレン(21 mL)を加え、氷冷下でトリエチルアミン(0.45 mL, 3.23 mmoL)、プロピオニルクロリド(0.24 mL, 2.69 mmoL)を加え、氷浴上で30分攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(50 mL)を加えた後、塩化メチレンで抽出した(30 mL x 3)。有機層を飽和食塩水(30 mL)で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、501 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率75%)。
MS (EI+) (m/z): 318 (M+).
HRMS (EI+) (m/z): Calcd. for C18H22O3S (M +): 318.1290. Found, 318.1301.
IR(NaCl): 1738, 1694 cm-1.
【0143】
(実施例10)
(2S) -2, 4-ジメチル-2-プロピオニルスルファニルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0144】
【化36】

【0145】
(工程1)
(2S) -2, 4-ジメチル-2-チオヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
実施例9の工程1に従って、炭酸セシウム(3.88 g, 11.9 mmoL)、および実施例8の化合物(380 mg, 1.19 mmoL)を用いて反応を行った。
【0146】
(工程2)
(2S) -2, 4-ジメチル-2-プロピオニルスルファニルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
実施例9の工程2に従って、トリエチルアミン(0.25 mL, 1.57 mmoL)およびプロピオニルクロリド(0.14 mL, 1.57 mmoL)を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、290 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率77%)。
MS (EI+) (m/z): 318 (M+).
HRMS (EI+) (m/z): Calcd. for C18H22O3S (M +): 318.1290. Found, 318.1273.
IR(NaCl): 1738, 1695 cm-1.
【0147】
(実施例11)
(2R) -2, 4-ジメチル-2-アセチルスルファニルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0148】
【化37】

【0149】
(工程1)
(2R) -2, 4-ジメチル-2-チオヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
実施例9の工程1に従って、炭酸セシウム(2.61 g, 8.01 mmoL)および実施例7の化合物(510 mg, 1.60 mmoL) を用いて反応を行った。
【0150】
(工程2)
(2R) -2, 4-ジメチル-2-アセチルスルファニルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
実施例9の工程2に従って、トリエチルアミン(0.45 mL, 3.23 mmoL)およびアセチルクロリド(0.12 mL, 1.57 mmoL)を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、332 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率68%)。
MS (EI+) (m/z): 304 (M+).
HRMS (EI+) (m/z): Calcd. for C18H22O3S (M +): 304.1133. Found, 304.1159.
IR(NaCl): 1738, 1694 cm-1.
【0151】
(実施例12)
(2S) -2, 4-ジメチル-2-アセチルスルファニルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0152】
【化38】

【0153】
(工程1)
(2S) -2, 4-ジメチル-2-チオヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
実施例9の工程1に従って、炭酸セシウム(5.12 g, 15.7 mmoL)および実施例8の化合物(500 mg, 1.57 mmoL)を用いて反応を行った。
(工程2)
(2S) -2, 4-ジメチル-2-アセチルスルファニルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
実施例9の工程2に従って、トリエチルアミン(0.45 mL, 3.23 mmoL)およびアセチルクロリド(0.12 mL, 1.66 mmoL)を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、391 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率82%)。
MS (EI+) (m/z): 304 (M+).
HRMS (EI+) (m/z): Calcd. for C18H22O3S (M +): 304.1133. Found, 304.1114.
IR(NaCl): 1738, 1694 cm-1.
(実施例13)
(4R)-3-{(2R)-2-[(2-トリメチルシリルエチル)スルファニル]-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエノイル}-4-(フェニルメチル)-2-オキサゾリジノンの合成
【0154】
(工程1)
チオ酢酸 S-(2-トリメチルシリルエチル)エステルの合成
【0155】
【化39】

【0156】
文献の方法 (非特許文献17) に従ってビニルトリメチルシラン(2.5 mL, 16.7 mmoL)に、室温でアゾビスイソブチロニトリル(45 mg, 0.266 mmoL)を加えたのちチオール酢酸 (1.0 mL, 13.7 mmoL)を加え、封管中60℃で6時間攪拌した。反応液をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=80:1)にて精製し、2.16 gの無色油状の表題化合物を得た(収率90%)。
MS (CI+) (m/z): 177 (MH+).
HRMS (CI+) (m/z): Calcd. for C7H17OSSi (MH+): 177.0769. Found, 177.0737.
【0157】
(工程2)
(2-トリメチルシリルエチル)ジスルフィドの合成
【0158】
【化40】

【0159】
実施例11の工程1の化合物(2.16 g, 12.7 mmoL) の無水メタノール溶液 (32 mL) 中に、氷冷下でナトリウムメトキシド (940 mg, 16.5 mmoL)を加えた後、室温に戻し25分攪拌した。次いでヨウ素(1.60 g, 6.30 mmoL)を加えて1時間30分攪拌した。反応液を溶媒留去し、H2O(30 mL)を加えた後、酢酸エチルで抽出した(20 mL x 3)。有機層を飽和食塩水(20 mL)で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン)にて精製し、1.49 gの薄黄色油状の表題化合物を得た(収率88%)。
MS (EI+) (m/z): 266 (M+).
HRMS (EI+) (m/z): Calcd. for C10H26S2Si2(M+): 266.1015. Found, 266.0981.
【0160】
(工程3)
メタン (2-トリメチルシリルエチル)チオスルホネートの合成
【0161】
【化41】

【0162】
実施例11の工程2の化合物(1.48 g, 5.55 mmoL) の無水塩化メチレン溶液 (37 mL) 中に、室温でメタンスルフィン酸ナトリウム (1.95 g, 17.8 mmoL)を加えた後、ヨウ素(2.82 g, 11.1 mmoL)を加え、3時間攪拌した。反応液に1mol/Lチオ硫酸ナトリウムを反応液が無色になるまで加え、塩化メチレンで抽出した(50 mL x 1)。有機層をH2O(50 mL)で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)にて精製し、2.10 gの無色油状の表題化合物を得た(収率85%)。
【0163】
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):δ(ppm) 0.07(9H, s), 0.99-1.04(2H, m), 3.20-3.25(2H, m), 3.32(3H, s).
薄層クロマトグラフィー(Merck シリカゲル 60F254) : Rf値 0.15 (ヘキサン:酢酸エチル=10:1)
【0164】
(工程4)
(4R)-3-{(2R)-2-[(2-トリメチルシリルエチル)スルファニル]-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエノイル}-4-(フェニルメチル)-2-オキサゾリジノンの合成
【0165】
【化42】

【0166】
実施例1の化合物(1.90 g, 6.35 mmoL) の無水テトラヒドロフラン溶液 (32 mL) 中に、室温でヘキサメチルホスホラミド(4.4 mL, 25.3 mmoL)を加えた後、-78℃でナトリウムヘキサメチルジシラジド(7.0 mL, 7.00 Lを5分かけて加えて30分攪拌した。実施例11の工程3の化合物(2.00 g, 9.42 mmoL)の無水テトラヒドロフラン溶液(4.5 mL)を5分かけて加えたのち、徐々に昇温させて3時間攪拌した。反応液が0℃になった時点で飽和塩化アンモニウム水溶液(50 mL)を加え、酢酸エチルで抽出した(50 mL x 3)。有機層を飽和食塩水(50 mL)で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、2.39 gの無色油状の表題化合物を立体異性体の混合物(8.4:1)として得た(収率87%)。
MS (FAB+) (m/z): 432 (M+).
HRMS (FAB+) (m/z): Calcd. for C23H34NO3SSi (M +): 432.2029. Found, 432.2067.
【0167】
(実施例14)
(2R)-2-[(2-トリメチルシリルエチル)スルファニル]-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0168】
【化43】

【0169】
無水ベンジルアルコール(5.1 mL, 49.3 mmoL)中に室温でチタニウムイソプロポキシド(0.75 mL, 2.46 mmoL)を加えた後、減圧下(0.5 mmHg〜1.0 mmHg)で2時間攪拌した。その溶液を実施例11の工程4の化合物(528 mg, 1.22 mmoL) に加え、70℃で21時間攪拌した。塩化メチレン(100mL)を加えた後、1mol/L塩酸(10 mL)を加えた。析出した不溶物をセライトで除き、H2O(50 mL)を加えて、塩化メチレンで抽出した(50 mL x 3)。有機層を飽和食塩水(100 mL)で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=19:1)にて精製し、380 mgの無色油状の表題化合物を立体異性体の混合物として得た(収率86%)。
MS (EI+) (m/z): 362 (M+).
HRMS (EI+) (m/z): Calcd. for C20H30O2SSi (M +): 362.1736. Found, 362.1712.
【0170】
(実施例15)
(5R)-4-ヒドロキシ-3, 5-ジメチル-5-(2-メチル-ブタ-1, 3-ジエニル)-5H-チオフェン-2-オン(チオラクトマイシン)の合成
【0171】
【化44】

【0172】
文献の方法(特許文献1) に従って、実施例9の工程2の化合物(498 mg, 1.56 mmoL) の無水テトラヒドロフラン溶液 (78 mL) 中に、-78℃でリチウムヘキサメチルジシラジド(4.0 mL, 4.00mmoL)を加え、0℃になるまで昇温しながら3時間30分攪拌した。反応液を1mol/L塩酸(40 mL)にあけ、酢酸エチルで抽出し(35 mL x 3)、無水硫酸ナトリウムで乾燥して、溶媒留去した。残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20 mL)を加え、ジエチルエーテルで洗浄した(20 mL x 2)。水層に1mol/L塩酸を加え、pHを2とした後、ジエチルエーテルで抽出し(25 mL x 2)、さらに酢酸エチルで抽出した(25 mL x 2)。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して、溶媒留去し、褐色固体の表題化合物を得た(収率91%)。さらにジエチルエーテル:ヘキサン=1:1でトリチュレートし、無色固体の表題化合物を得た(収率63%)。また、機器分析用サンプルは、ジイソプロピルエーテルで再結晶を行うことにより得た。
MS (EI+) (m/z): 210 (M+).
Analysis Calcd. for C11H14O2S : C, 62.83; H, 6.71; Found: C, 62.68; H, 6.54.
IR(KBr): 1605 cm-1.
【0173】
(実施例16)
(5S)-4-ヒドロキシ-3, 5-ジメチル-5-(2-メチルブタ-1, 3-ジエニル)-5H-チオフェン-2-オン(チオラクトマイシン)の合成
【0174】
【化45】

【0175】
実施例15の方法に従って、実施例10の工程2の化合物(320 mg, 1.00 mmoL)、およびリチウムヘキサメチルジシラジド(2.5 mL, 2.5 mmoL)を用いて反応を行い、褐色固体の表題化合物を得た(収率93%)。さらにジエチルエーテル/ヘキサン=1:1でトリチュレートし、無色固体の表題化合物を得た(収率42%)。また、機器分析用サンプルは、ジイソプロピルエーテルで再結晶を行うことにより得た。
MS (EI+) (m/z): 210 (M+).
Analysis Calcd. for C11H14O2S : C, 62.83; H, 6.71; Found: C, 62.51; H, 6.68.
IR(KBr): 1605 cm-1.
【0176】
(実施例17)
(5R)-4-ヒドロキシ-5-メチル-5-(2-メチルブタ-1, 3-ジエニル)-5H-チオフェン-2-オンの合成
【0177】
【化46】

【0178】
実施例15の方法に従って、実施例11の工程2の化合物(318 mg, 1.04 mmoL)、およびリチウムヘキサメチルジシラジド(2.6 mL, 2.6 mmoL)を用いて反応を行い、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ベンゼン:アセトン=4:1)にて精製し、121 mgの茶褐色固体の表題化合物を得た(収率59%)。また、機器分析用サンプルは、ジイソプロピルエーテルで再結晶を行うことにより得た。
MS (EI+) (m/z): 196 (M+).
Analysis Calcd. for C10H12O2S : C, 61.20; H, 6.16; Found: C, 60.90; H, 6.07.
IR(KBr): 1607 cm-1.
【0179】
(実施例18)
(5S)-4-ヒドロキシ-5-ジメチル-5-(2-メチルブタ-1, 3-ジエニル)-5H-チオフェン-2-オンの合成
【0180】
【化47】

【0181】
実施例15の方法に従って、実施例12の工程2の化合物(590 mg, 1.94 mmoL)、およびリチウムヘキサメチルジシラジド(4.8 mL, 4.8 mmoL)を用いて反応を行い、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ベンゼン:アセトン=4:1)にて精製し、210 mgの茶褐色固体の表題化合物を得た(収率55%)。また、機器分析用サンプルは、ジイソプロピルエーテルで再結晶を行うことにより得た。
MS (EI+) (m/z): 196 (M+).
Analysis Calcd. for C10H12O2S : C, 61.20; H, 6.16; Found: C, 60.98; H, 6.08.
IR(KBr): 1607 cm-1.
【産業上の利用可能性】
【0182】
チオラクトマイシンおよび3-デメチルチオラクトマイシンの製造における新規な製造中間体を見出すことによって、チオラクトマイシンおよび3-デメチルチオラクトマイシンの簡便な製造方法を提供できるので有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2, 4-ジメチル-2, 4-ヘキサジエンカルボン酸を酸ハロゲン化物と反応させることにより、混合酸無水物に変換後、
一般式(1)
【化1】

(式中、R、R、RおよびRは同一または相異なって水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し、XはOまたはSを示す)で表されるオキサゾリジノン誘導体またはチアゾリジン-2-チオン誘導体と反応させ、
一般式(2)
【化2】

(式中、R、R、R、RおよびXは前記に同じ)で表される3-(2, 4-ジメチルヘキサ-2, 4-ジエノイル)-2-オキサゾリジノン誘導体またはチアゾリジン-2-チオン誘導体を得、これに
一般式(3)
【化3】

(式中、Rはハロゲン原子、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよいアリールスルホニル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し、RおよびRは同一または相異なって水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基または置換されていてもよいアリールメチル基を示し、Rは水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示す)で表される3, 3-ジアルコキシアルキルスルフェニル誘導体を塩基存在下で反応させて、
一般式(4)
【化4】

(式中、R、R、R、R4、、R、RおよびXは前記に同じ)で表される2-(3, 3-ジアルコシキアルキルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエン酸誘導体を得、これにチタニウムテトラアルコキシドを反応させ、
一般式(5)
【化5】

(式中、R、RおよびRは前記に同じく、Rは水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示す)で表される2-(3, 3-ジアルコシキアルキル)スルファニル-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体を得、次いで酸で処理することにより
一般式(6)
【化6】

(式中、RおよびRは前記に同じ)で表される2, 4-ジメチル-2-(3-オキソアルキルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体を得、これに塩基を反応させて、
一般式(7)
【化7】

(式中、R10は水素原子、エチル基を除く置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示す)で表される2, 4-ジメチル-2-チオヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体を得、これに酸ハロゲン化物のような求電子剤を反応させて、
一般式(8)
【化8】

(式中、R10は前記に同じで、R11は水素原子またはメチル基を示す)で表される2, 4-ジメチル-2-(1-オキシアルキル)スルファニルヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体を得、これに塩基を反応させることを特徴とする、
一般式(9)
【化9】

(式中、R11は前記に同じ)で表されるチオラクトマイシンまたは3-デメチルチオラクトマイシンの製造方法。
【請求項2】
一般式(2)
【化10】

(式中、R、R、RおよびRは同一または相異なって水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し、XはOまたはSを示す)で表される3-(2, 4-ジメチルヘキサ-2, 4-ジエノイル)-2-オキサゾリジノン誘導体またはチアゾリジン-2-チオン誘導体と
一般式(10)
【化11】

(式中、Rはハロゲン原子、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよいアリールスルホニル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し、R12、R13およびR14は同一または相異なって水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基または置換されていてもよい芳香族炭化水素を示す)で表される(2-トリアルキルシリルエチル)スルフェニル誘導体を塩基存在下で反応させ、
一般式(11)
【化12】

(式中、R、R、R、R4、12、R13、R14およびXは前記に同じ)で表される2, 4-ジメチル-2-(2-トリアルキルシリルエチル)スルファニルヘキサ-3, 5-ジエン酸誘導体を得、これにチタニウムテトラアルコキシドを反応させて得られる
一般式(12)
【化13】

(式中、Rは水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し、R12、R13およびR14は前記に同じ)で表される2, 4-ジメチル-2-(2-トリアルキルシリルエチル)スルファニルヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体から2-トリアルキルシリルエチル基の除去を行い、
前記一般式(7)
【化14】

(式中、R10は水素原子、エチル基を除く置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示す)で表される2, 4-ジメチル-2-チオ-ヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体とすることを特徴とするチオラクトマイシンまたは3-デメチルチオラクトマイシンの中間体の製造方法。
【請求項3】
一般式(2)
【化15】

(式中、R、R、RおよびRは同一または相異なって水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し、XはOまたはSを示す)で表される3-(2, 4-ジメチルヘキサ2, 4-ジエノイル)-2-オキサゾリジノン誘導体またはチアゾリジン-2-チオン誘導体またはそれらの塩であることを特徴とするチオラクトマイシンまたは3-デメチルチオラクトマイシンの製造中間体。
【請求項4】
一般式(4)
【化16】

(式中、R、R、RおよびRは同一または相異なって水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し、XはOまたはSを示し、RおよびRは同一または相異なって水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基または置換されていてもよいアリールメチル基を示し、Rは水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示す)で表される2-(3, 3-ジアルコシキアルキルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエン酸誘導体またはそれらの塩であることをを特徴とするチオラクトマイシンまたは3-デメチルチオラクトマイシンの製造中間体。
【請求項5】
一般式(5)
【化17】

(式中、RおよびRは同一または相異なって水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基または置換されていてもよいアリールメチル基を示し、Rは水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し、Rは水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示す)で表される2-(3, 3-ジアルコシキアルキル)スルファニル-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体またはそれらの塩であることを特徴とするチオラクトマイシンまたは3-デメチルチオラクトマイシンの製造中間体。
【請求項6】
一般式(6)
【化18】

(式中、Rは水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し、Rは水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示す)で表される2, 4-ジメチル-2-(3-オキソアルキルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体またはそれらの塩であることを特徴とするチオラクトマイシンまたは3-デメチルチオラクトマイシンの製造中間体。
【請求項7】
一般式(8)
【化19】

(式中、R10は水素原子、エチル基を除く置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級シクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し、R11は水素原子またはメチル基を示す)で表される2, 4-ジメチル-2-(1-オキシアルキル)スルファニルヘキサ-3, 5-ジエニルエステル誘導体、またはそれらの塩であることを特徴とするチオラクトマイシンまたは3-デメチルチオラクトマイシンの製造中間体。

【公開番号】特開2006−327944(P2006−327944A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149835(P2005−149835)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000173762)財団法人相模中央化学研究所 (151)
【出願人】(000001395)杏林製薬株式会社 (120)
【Fターム(参考)】