説明

チタン合金を製造するための方法及び装置

例えばVAR炉を用いて金属インゴットを製造するためのシステム及び方法が、金属源から溶解した金属を受け取り、溶解金属を集めて溶解金属のプールを形成する第1のるつぼであって、オーバーフロー・リップを含む第1のるつぼと、第1のるつぼのオーバーフロー・リップから溶解金属を受け取る第2のるつぼであって、第1のるつぼより小さく、第1のるつぼから電気的に分離された第2のるつぼと、冷却によって凝固させた溶解金属を、第2のるつぼから凝固インゴットの形で取り出す取出し装置であって、凝固インゴットが金属源の直径より小さい直径を有している取出し装置とを含む。取り出された凝固インゴットは、第2のるつぼから取り出されながら、切断装置によって定期的に切断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年5月7日付けで出願した「Method and Apparatus for Manufacturing Titanium Alloys」という名称の同時係属の仮特許出願第61/176,340号の利益を主張するものであり、その開示全体を参照によって本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、金属の処理及び製造、より詳細には、チタン及びチタン合金の処理及び製造を対象にしている。
【背景技術】
【0003】
60年以上の間に、チタン及びチタン合金が産業にきわめて有用であることが分かってきた。まず、そうした使用は航空宇宙用途において、後に化学プロセス産業、オイル及びガス産業、医療産業などの産業用途において見出された。チタンの(航空宇宙用途に有用な)強度と重量の割合及び(化学プロセス、オイル及びガス、並びに医療の用途に有用な)耐食性のユニークな組み合わせによって、その使用に対する大きな需要が生み出されてきた。結果として、チタンの生産は何年にもわたって着実に増している。過去10〜15年にわたる航空宇宙産業及び航空機製造技術の進歩により、近い将来における航空宇宙用途でのチタン製品の使用は、これまでのどの期間よりもずっと急速に成長すると予想される。
【0004】
チタン及びチタンベースの合金から様々な小型部品を造るための製造方法は、最初の合金の溶解から最後の小型部品の製作まで十分に確立されている。そうした小型部品は、例えばファスナ(留め具)、取り付け部品、及び小型の機械加工、鍛造又は成形された部品を含むことができる。チタンは、臀部のインプラントなどの医療デバイスから油井検層ツールに及ぶきわめて多様な用途を有する。一般にチタン製品は、まず通常のインゴット鍛造及び他の熱間加工工程によって、次いでビレット若しくはバーなどのチタン延伸材、又は熱間圧延コイルなどのさらに小さい延伸材からの冷間引抜き及び切削によって製造される。チタンの熱間圧延コイルは巻かれた金属のコイルであり、コイル中の金属の直径は通常、0.200インチ(5.08mm)から0.875インチ(22.225mm)までとすることができる。この後者の種類のコイル(熱間圧延コイル)は、新しい世代の商用及び軍用の航空機が(航空機の)製作により多くの複合材料を使用するため、過去数年の間にきわめて重要になってきている。
【0005】
これまで用いられていたアルミニウム・ファスナは、アルミニウムと複合(グラファイト)材料の間で腐食が増大する可能性があるため、複合材料の使用を増やすことには適合しない。このため、既に重要である新しい航空機用の材料系におけるチタン・ファスナの使用が劇的に増加してきた。1つの実例として、ボーイング737、747及び767などの旧世代の商用航空機、並びに他の商用航空機は、一定ではないが、その機体中にファスナを含めて20,000から40,000ポンド(9,080から18,160kg)の間のチタン合金を使用していた。ボーイング787などのより新しい世代の航空機はその機体中に、エンジンを除いても、200,000ポンド(90,800kg)を超えるチタンを使用する。例えばAirbus Industriesによって製造されるより新しい世代の航空機でも、複合材の使用が同様にかなり増大すると考えられ、結果として多量のチタン・ファスナを必要とする。増加するチタンの使用のほとんどは、航空機の複合材の外板を機体に固定するための様々なチタン合金ファスナ・システムからなる。
【0006】
以下では、小径のチタン及びチタン合金(例えばNiTi合金)の部品、並びに一部の鋼、コバルト若しくはニッケル・ベース合金の部品、又は他の反応性金属の部品(例えばジルコニウム、バナジウム、チタン・アルミニウムなど)を製作するための現行の方法について全般的に記載する。
【0007】
チタン及びチタン合金は、未使用のチタン・スポンジ並びに他の合金金属及び/若しくは母合金を用いて、又はスクラップを用いて、又は特定の用途の要求に応じて未使用材とスクラップのいくつかの組み合わせを用いて溶解する。有用なチタンを製造することができるいくつかの溶解手法、又はその場合に、先に全般的に論じた種類の用途に適した延伸材の構成になるように処理することが可能な反応性金属のインゴットが存在する。現在のところ、こうした溶解手法には、例えば真空アーク溶解、プラズマ・アーク炉若しくは電子ビーム炉、又は冷壁式誘導スカル溶解炉が含まれる。
【0008】
元素チタンのスポンジ及び合金元素の真空アーク溶解は、互いに溶接されるか、或いは真空チャンバ内に取り付けられ、次いで吊り下げられて再溶解されるスポンジ及びスクラップの圧縮された形で始まる。典型的な構成の真空アーク再溶解(「VAR」)炉は、添付した図1〜2の上部に見ることができる。溶解は、未使用のチタン、又は他の反応性金属若しくはスクラップ、又は未使用の金属とスクラップのいくつかの組み合わせからなる再溶解電極を、真空チャンバの一部として銅るつぼも含む真空チャンバの内部に配置すると行われる。電極は、反対の電気ポテンシャルにあるるつぼの底部に当たるまで、銅るつぼの中に降ろされる。これにより、るつぼの底部、すなわちアノードと、電気回路におけるカソードである再溶解電極との間にアークが生じ、それによって犠牲になる電極を溶解し、溶解したチタン金属をるつぼの底部に滴下させるのに十分な熱を発生させ、したがって新しいインゴットが形成されるが、そのインゴットは、その原材料を得た再溶解電極より均質である。ここまでに、銅るつぼの内部で結晶化させた新しい「VAR」インゴットの直径は常に、アークに当たる前の供給源の金属を得る再溶解電極より大きくなっている。例えば米国特許出願公開第2006/0230876号、及びZanner、「Vacuum Arc Remelting − An Overview」を参照されたい。このことは常にあてはまるが、それは、真空アーク再溶解プロセスが、再溶解される電極の銅るつぼの側壁への接触、及びそこでの好ましくない早すぎるアーク発生を防止するために、銅るつぼの壁と再溶解される電極との間に空間又は環状部を必要とするからである。これによって、溶解が不適切に進行する形、或いは制御できない形で動作して溶解の終了が早くなりすぎ、場合によっては銅るつぼ又はVAR溶解装置自体にも損傷を与える恐れがある。真空アーク再溶解炉システムにおけるアークの唯一の適切な位置は、再溶解電極の底部から離れた、るつぼの底部及び新たに溶解及び結晶化したインゴットのプールの真上である。したがって、新たに溶解したインゴットの直径は、例えば30インチ(76.2cm)であるが、インゴットがそれから形成された供給源の再溶解電極の直径は、例えばたかだか24インチ(60.96cm)又は26インチ(66.04cm)である場合がある。
【0009】
新しいインゴットを漸次より均質にし、含まれる欠陥を少なくするために、また鍛造及び熱間加工の効率について言えば、より大きい単一の金属のインゴットを提供するために、この真空アーク再溶解プロセスを複数回実施することができる。前の段落で言及した理由のために、真空アーク再溶解炉における連続した再溶解のたびに、銅るつぼ内に形成される結晶化したインゴットの直径が大きくなる。
【0010】
真空アーク再溶解に加えて、チタン・インゴットを製造するための他の溶解技術は、プラズマ・アーク炉、又は電子ビーム炉又は冷壁式誘導スカル溶解炉を使用することである。すべてのケースにおいてではないが、一般的には、後でVAR炉で再溶解することができる再溶解電極を簡単に製造するために、こうした炉を用いてチタン・スポンジ、母合金又は異なる形状のスクラップなど様々な原材料の形態を凝固させる。プラズマ炉及び電子ビーム炉に対するいくつかのケースでは、特定の需要家及び産業の仕様によって、溶解したままのプラズマ・アークで溶解したインゴット、又は電子ビームで溶解したインゴットを直接使用することが可能である。しかしながら現在では、これは通常、最終的なチタン製品が、機体及び機体用のファスナなどのきわめて重要な航空宇宙用途及び医療製品産業で使用される場合にはあてはまらない。適当な産業上の用途(仕様)では複数の真空溶解サイクルが必要であり、その最後は真空アーク再溶解でなければならない。
【0011】
上記の結果、チタン、反応性金属及び他の産業では、インゴットの溶解サイクルにおける複数の溶解の最後としてVAR溶解が必要とされている。こうした製品の溶解における進歩は、より大きいVARインゴットを製造すること、したがって、インゴットの製造業者及び加工業者に、1回の加熱で、例えばファスナ、又は医療又は化学、若しくはオイル及びガス産業で用いる小型の円形部品などの製品に使用されるより小径の円形製品を後で製造するための、より多くの有効量の金属(1回に溶解した1つのインゴットの製品)を提供することの周辺に集中してきた。進歩は、VAR溶解を自動化すること、コンピュータの使用を導入すること、溶解プロファイル、操業開始及び溶解完了の手順、並びに一度により多量の金属とより多くの複合合金の両方を溶解するより大きいインゴットの製造を助けるための関連手段にも集中してきた。
【0012】
複合チタン合金及び他の反応性金属の合金は、特に溶解するインゴットが大きくなると、溶解サイクルの間、完全に均質な状態に留まらない傾向を示す。したがって、大きいインゴットの中心で生じる低速冷却時に様々な合金成分の分離が起こる傾向にある、大型の溶解プールによって引き起こされるインゴットの均質性の問題のために、すぐに使うことができないチタン又は反応性金属インゴットが製造されることによって、溶解の管理及び規模における進歩が部分的に相殺される。この問題は、複合インゴットの固体状態の加熱を延長し均質化することによって克服することができるが、インゴットの加熱及び均質化には費用がかかり、また天然ガス若しくは電気の形でかなりの量のエネルギーを必要とする。
【0013】
例えば直径30インチ(76.2cm)の溶解したままのインゴットの直径から、例えば航空宇宙用のファスナをそれから成形することができる直径約0.450インチ(11.43mm)の熱間圧延コイルの直径まで直径を減少させるために、大きいチタン及び反応性金属のインゴットはすべて、複数の熱間加工及び変形のサイクルを経る。とりわけ、最後にVARで溶解された直径30インチ(76.2cm)のインゴットは、以下に記載する処理にきわめて類似した処理を受ける。
【0014】
まず、インゴットは、研削してインゴットの表面上の溶解物のアーチファクトを除去することによって調整される。きわめて重要な資本設備があり、またこれに関連する収量低下がある。収量低下は通常、インゴットの重量の約2%から5%まで変動する可能性がある。
【0015】
第2に、インゴットは、合金の融点の約50〜70%程度、すなわち約1,800〜2,200°F(982.22〜1,204.44℃)のきわめて高い温度まで加熱され、溶解したままのインゴットから中間形状に鍛造される。中間形状は一般に、約18インチ(45.72cm)の円形、八角形又は正方形に対して、元の30インチ(76.2cm)のインゴットの約4倍の長さがある。このステップでは、すぐにコイルのミル圧延工程に供することができる製品を得るために、きわめて大型の鍛造プレス、又は圧延機及び分塊圧延機、並びに大型の複数の加熱炉の形の重要な資本設備が必要となる。
【0016】
第3に、その後の熱間加工ステップで問題を引き起こす恐れがある欠陥を除去するために、元のインゴットからの中間の18インチ(45.72cm)のビレットが表面研削によって調整される。
【0017】
第4に、18インチ(45.72cm)のビレットが、高温、すなわち赤熱温度まで加熱され、再び鍛造され、やはり4:1の断面積減少率の約9インチ(22.86cm)の円形又は正方形になされる。
【0018】
第5に、次の処理ステップの前に有害な表面欠陥を除去するために、9インチ(22.86cm)のビレットが研削によって調整される。このステップでは、さらに収量低下が生じる。
【0019】
第6の工程は、9インチ(22.86cm)のビレットを加熱し、約4インチ(10.16cm)の円形ビレットに鍛造又は圧延することを含む。ここでもやはり、9インチ(22.86cm)のビレットについて4:1の断面減少率になる。やはり加熱、及び鍛造又はロール鍛伸加工(roll cogging)工程はここでも費用がかかり、また繰り返される。
【0020】
第7の工程は、さらに後のファスナなどの小型部品にする処理のために処理してコイルにするときに滑らかな状態の表面を有するようにするために、約4インチ(10.16cm)の円形バー又はビレットの表面を調整することである。
【0021】
第8の一般的には最後の熱間加工工程は、名目上4インチ(10.16cm)の円形バー又はビレットをコイルに圧延することであり、次いでコイルは、熱間加工法以外の方法(例えば冷間加工、引抜き及び切削)によって処理して、ファスナなどの製品又は他の小型の円形の構成要素を製造することができる。
【0022】
インゴットを加熱するたびに、かなりのエネルギーが消費されることを明確に理解することができる。また、インゴット及び中間の鍛造されたビレットの様々な研削ステップ及び関連する調整の結果、インゴット又はビレットの表面が高温で繰り返し酸化され、複数の熱間加工ステップにおいて引き起こされる亀裂又は欠陥と共にこの層を除去することが必要になるため、出発時のインゴットの多くの部分が失われ、又は放棄される。産業においては一般的に、溶解したままのVARチタン・インゴットから4インチ(10.16cm)の円形ビレットが形成される時点までの損失が、出発時のインゴットの重量の15%程度になることが許容される。これは、4インチ(10.16cm)バー又はビレットを小径の円形又は熱間圧延コイルに変換する最後の熱間加工サイクルを開始するのに、出発時のインゴットの85%しか利用できないことを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0230876号
【特許文献2】米国特許第5,103,458号
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Zanner、「Vacuum Arc Remelting − An Overview」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、これまでに言及した問題の1つ又は複数を克服すること、及び複数の加熱、鍛造及び研削工程からの経済的な損失を低減することを対象にしている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
一実施例において、金属源から溶解した金属を受け取り、溶解金属を集めて溶解金属のプールを形成する第1のるつぼであって、オーバーフロー・リップを含む第1のるつぼと、第1のるつぼのオーバーフロー・リップから溶解金属を受け取る第2のるつぼであって、第1のるつぼより小さく、第1のるつぼから電気的に分離された第2のるつぼと、冷却によって凝固させた溶解金属を、第2のるつぼから凝固インゴットの形で回収する取出し装置であって、凝固インゴットが金属源の直径より小さい直径を有する取出し装置とを含む、金属インゴットを製造するためのシステムが提供される。凝固インゴットは、第2のるつぼから回収されながら、切断装置によって定期的に切断する。
【0027】
システムは、溶解金属を上面溶解状態に保つために、第2のるつぼより上に設けられた熱源を含むことができる。一形態において、この熱源は非消耗電極を含む。
【0028】
金属源は、チタン若しくはチタン合金、又は他の反応性金属を含むことができる。一形態において、金属源はVAR炉を用いて溶解される金属の消耗電極を含む。
【0029】
他の実施例では、金属源を溶解して第1のるつぼ内に溶解金属のプールを形成するステップと、溶解金属を第1のるつぼから第2のるつぼに移動させるステップであって、第2のるつぼが第1のるつぼより小さく、第1のるつぼから電気的に分離されているステップと、溶解金属を冷却及び凝固させるステップと、冷却及び凝固した金属を第2のるつぼから回収するステップとを含む、金属を製造する方法が提供される。次いで、冷却及び凝固した金属は、第2のるつぼから回収されて凝固インゴットを形成しながら、定期的に切断される。
【0030】
移動させるステップは、溶解金属を、第1のるつぼから、第1のるつぼ内に形成されたオーバーフロー・リップを介して方向付けることを含むことができる。第1のるつぼが溶解金属で充たされると、オーバーフロー・リップは、流れを第1のるつぼから第2のるつぼへ方向付ける。好ましくは、溶解金属を上面溶解状態に保つために、第2のるつぼが加熱される。一形態において、この加熱は非消耗電極を用いて実施される。
【0031】
金属源は、チタン若しくはチタン合金、又は他の反応性金属を含むことができる。一形態において、金属源はVAR炉を用いて溶解される金属の消耗電極を含む。
【0032】
他の実施例では、金属源から溶解した金属を受け取り、溶解金属を集めて溶解金属のプールを形成するるつぼであって、その底部に形成された孔を含み、孔がるつぼの底部から下方に延びる側壁によって画定されるるつぼと、冷却によって凝固させた溶解金属をるつぼの孔から凝固インゴットの形で回収する取出し装置であって、凝固インゴットが金属源の直径より小さい直径を有する取出し装置とを含む、金属インゴットを製造するためのシステムが提供される。切断装置が設けられ、回収された凝固インゴットを、それらがるつぼの孔から回収されるときに定期的に切断する。
【0033】
さらに他の実施例では、金属源を溶解してるつぼ内に溶解金属のプールを形成するステップであって、るつぼがその底部に形成された孔を含み、孔がるつぼの底部から下方に延びる側壁によって画定されるステップと、るつぼの孔の中に金属の出発片を提供するステップであって、金属の出発片が組成的に金属源と同じであるステップと、溶解金属がるつぼ内に溜まることを可能にするステップと、溜められた溶解金属がるつぼ内で約1〜4インチ(2.54〜10.16cm)の高さに達した後、金属を金属の出発片をるつぼの孔から回収するステップであって、金属の出発片は、それに付着した、冷却及び凝固させた金属を有するステップとを含む、金属を製造する方法が提供される。回収された、冷却及び凝固した金属は、それがるつぼの孔から回収されて凝固インゴットを形成すると定期的に切断される。
【0034】
本発明の一目的は、コイル、バー又はロッドの圧延に適した直径を有すると同時に、溶解が途切れずに継続することを可能にする金属インゴットを連続的に製造することである。
【0035】
本発明の他の目的は、コイル、バー又はロッドの圧延に適した直径を有する金属インゴットであって、複数の溶解サイクルにおける最後の溶解としてVAR溶解を必要とする産業上の仕様も満たす金属インゴットを製造するために必要な溶解の数を最小限に抑えることである。
【0036】
本発明の他の目的、態様及び利点は、明細書、図面及び添付の特許請求の範囲を検討することによって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】VAR炉に組み込まれた本発明の第1の実施例を示す図である。
【図2】VAR炉に組み込まれた本発明の第2の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、インゴットをVAR溶解することによって、投入された大きな再溶解電極から、より小さい断面(直径)の溶解インゴットを製造するための装置及び方法に関するものであり、インゴットは、例えば後で直接、より小さいチタンのミル製品及び他の金属製品にすることができ、或いは最大で1つの追加の熱間加工サイクルを用いて処理することができる。より大きい断面の再溶解電極又はインゴットによって供給される溶解物が、妨げられることなく進み続けるのを可能にするために、より小さい断面のインゴット又はより小さい円形のインゴットは、結晶化るつぼから連続的に回収されるか又は型成形されて、連続的に取り出される。こうしたより小さいインゴットは、例えば従来型のVAR炉内でより大きい再溶解電極から溶解され、インゴットが結晶化すると、銅るつぼ又は関連する銅るつぼから漸次回収される。これにより、より大きいロット・サイズ(溶解物のサイズ)を連続的に使用すると同時に、コイル圧延機、又はバー若しくはロッドの圧延機に投入される直径により近い最終的な溶解インゴットの製造が可能になる。これはまた、最終的なインゴットを製造するための複数の溶解サイクルにおける「最後の」溶解としてVAR溶解を必要とする産業上の基準及び仕様すべてに完全に従うものである。本発明のプロセスは、きわめて大きいエネルギーの節約、資本設備の節減、及びこの方法で処理されるチタン(又は他の合金インゴット)の収量の確保をもたらす。
【0039】
本発明は、VAR溶解及び連続的な回収(取り出し)によるインゴットの製造を可能にするものであり、インゴットの直径は、そのインゴットがそれから溶解した、投入された再溶解電極/インゴットより小さい。
【0040】
この方法及び装置は、例えば、直接巻く用意のできた4インチ(10.16cm)の円形(又は同様の直径若しくはサイズのバー若しくはビレット)を製造することができる。本発明の方法及び装置が利用するエネルギーは、従来型のVARインゴットがより大きいインゴットからすぐに巻くことができる形に処理するのに通常利用するエネルギーの30%未満である。本発明は、より小径のインゴットを、以下に記載する独特の手段によってインゴットを結晶化チャンバから連続的に回収することにより製造することも可能にする。
【0041】
本特許文献において、「連続鋳造」という用語は、溶解プロセス自体が最初から最後まで連続的に進行することを意味するのに用いている。これは自明である。
【0042】
本発明の方法及び装置において、本明細書で論じる「連続鋳造」とは、溶解が進行しながら、連続する溶解、鋳造及びその結晶化用の型からのインゴットの回収を意味する。VAR溶解の文脈におけるこの連続したインゴットの製造、回収及び除去は全く新しいものであり、これまで実用化されていない。それは、現在VAR溶解において確立された手法である、連続鋳造及び静的な溶解結晶化用のるつぼ(又は他の冷却チャンバ若しくは受け部)の充填を意味するものではなく、或いはそれを意味しようとするものでもない。米国特許第5,103,458号では、「インゴットの回収」及び「型からのインゴットの回収」という用語が用いられている。明確にするために、これは、VAR溶解サイクルを完了し、溶解プロセスが完了して溶解るつぼ内にインゴットが形成された後の、インゴットを溶解装置から「回収する」又は取り出す標準的な技術を指すものと理解されたい。逆に言えば、本発明は、溶解プロセスを継続しながら、溶解したままのより小径のインゴットを連続的に回収すること、及び取り出すことを可能にするものである。
【0043】
本発明は、溶解したままのインゴットの製造も可能にし、次いでそのインゴットを、最小限の処理又は調整を用いて、また可能性のある追加の熱間加工サイクルを用いることなく、投入された約4インチ(10.16cm)の直径を低減して小さい断面の熱間圧延コイル又は複数の直線ストランドの製品にする連続的なコイル圧延機又はバー圧延機に導入することができる。
【0044】
本発明は、コンピュータと、インゴット溶解炉の様々な制御可能な態様及びパラメータとの間のロジック・ループを介して制御することができる、銅るつぼの底部又は銅るつぼの側面からの取り出し方法も提供する。
【0045】
本発明は、VAR溶解に対して新しく且つユニークであり、また小径のインゴットを溶解した溶解プールから過度の困難を伴わずに簡単且つ連続的に取り出すことを可能にする取り出し装置の各部分も提供し、それによって、その後のコイル又は小さい円形の圧延サイクルに対する表面の不安要因及び欠陥傷を最小限に抑えた、高品質の溶解したままのインゴットを製造する。
【0046】
液体溶解物からの連続的なインゴットの取り出し方法に関する本発明及び記述は、実質的に垂直な面又は実質的に水平な面において処理することができる。本明細書で論じるこうした実例は、実質的に垂直な面におけるものである。
【0047】
本発明は、溶解を継続しながら、鋳造したままの、垂直方向又は水平方向に連続的に溶解及び回収されたインゴットを、真空下で断続的に切断すること及び/又は取り出すことを可能にする。
【0048】
本発明以前には、再溶解される電極がアーク放電して溶解金属を晶析装置の型の中に滴下し、それによって真空下で再溶解される間に、VAR溶解したインゴットが溶解物の晶析装置から連続的に取り出されなかったという点において、本方法及び装置は新しくユニークである。
【0049】
添付した図1の上部に見ることができるように、VAR溶解に対する当技術分野の現状は、犠牲的な再溶解電極/インゴットの直径より大きい溶解したままのインゴットを製造するものである。当業者は、溶解チタンが結晶化チャンバの銅壁に接触すると実質的にすぐに、VAR溶解におけるるつぼであろうと、プラズマ及び/又は電子ビーム溶解における回収用の型であろうと、銅るつぼに接触した溶解チタンの表面が、直ちに凝固したチタン金属のメニスカス又は薄層を形成することに気付くであろう。溶解金属とるつぼの壁の接触域で、このメニスカス、及びメニスカスに隣接する凝固したチタンの追加の層が徐々に成長すると、VARるつぼであろうと、電子ビーム、プラズマ又は他の形の反応性金属の溶解で使われる回収用の型であろうと、結晶化用の容器からインゴットを容易に回収することに大きな障害をもたらす。(メニスカスの領域内の)このケースにおける凝固条件は、接触域内の細かい点にきわめて敏感である(Zanner、「Vacuum Arc Remelting − An Overview」参照)。その場合、インゴットと銅の結晶化用の型(モールド)又はるつぼとの間の接触域が、好結果をもたらす回収技術にとってただ1つの最も重要な焦点になる。反応性金属(又は任意の金属若しくは合金)のメニスカス形成及び凝固の問題に適切に対処することができないと、インゴットが定位置に留まるか、さもなければ動けなくなる。或いは、回収されるより小径のインゴットが移動できる場合には、回収用のプラーが溶解プールから取り出すためにより小径のインゴットに軸方向の引張力を加えると、許容されないインゴット表面の断裂によって、使用可能なインゴットの漸進的な回収が妨げられる可能性がある。
【0050】
その場合、投入された大径のVAR再溶解電極から、小径のインゴットをうまく回収するには、2つの主要な克服すべき問題がある。1つ目は、メニスカスの形成に関連して先に言及した問題を克服する回収の定常状態を得て、メニスカスによって生じる問題に対処することである。
【0051】
2つ目は、回収るつぼの側壁に最も近い、より小さいインゴットの縁部及び頂部が早く凝固しないように、そして追加の高温の金属がこの凝固領域の上を流れることができないように、すなわち「シャット」又は「コールド・シャット」として知られるものが形成されないように、回収されるより小さいインゴットの表面で十分な熱を維持することである。こうしたコールド・シャットは、後続のロッド、コイル又はバーへの熱間圧延工程の間に割れる、裂ける或いは不足することがない使用可能なインゴットの直径を得るために、溶解後に除去する必要がある。しかしながら、必要とされるこうしたコールド・シャットの除去によって、使用可能なインゴットの直径がかなり減少する。例えばコールド・シャットが、4インチ(10.16cm)の円形インゴットの縁部から内部に(すなわち半径から外れて)0.25インチ(6.35mm)移動した場合、すぐに熱間のロッド、バー又はコイリング工程にかけられる滑らかで欠陥のないバー又はビレットを得るためには、4インチ(10.16cm)の直径のインゴットのうち0.50インチ(12.7mm)を直径から除去することが必要になる。これにより、溶解するこの段階だけで、3.5インチ(8.89cm)のバーを直径4インチ(10.16cm)の溶解したままのインゴットの直径で割っただけの、すなわち9.616平方インチ/12.56平方インチ(62.504cm/81.64cm)の収量低下、すなわち23.44%の収量低下が生じることになる。経済的な観点から、これは許容することができない。このため、より小径のインゴットが以下の方法において論じるように取り出される場合、回収るつぼ内のインゴットの表面は、縁部のコールド・シャットの影響を最小限に抑えるのに十分な追加の加熱を受ける必要がある。
【0052】
回収されるより小さいインゴットの上面への追加の加熱は、いくつかの供給源から得ることができる。それには、可能性として以下のものがある。
(1)回収用の型内の、より小径のインゴットの頂部を加熱することができるプラズマ・トーチ。
(2)型から回収される、より小径のインゴットの頂部を加熱することができる電子ビーム・ガン。
(3)冷壁式誘導るつぼを回収るつぼとして用いることができる。この冷壁式誘導るつぼは、おそらくは縁部の影響、すなわちコールド・シャットが一切生じず、インゴットの品質に影響を及ぼさなくなる時点まで、るつぼ内部のより小径のインゴットが高温状態及び/又は液体状態を維持するように、外側の誘導コイルによって加熱される。
(4)回収される、より小径のインゴットの頂部に直接適用されるアークを介して電気的な加熱をもたらすことができ、頂部付近での凝固を遅らせ、回収されるときにより均質な欠陥のないインゴットを可能にする消耗しない銅電極。
【0053】
上記の技術のいずれかを容認又は却下する前に、VAR溶解の基本的な性質を理解することが重要である。VAR溶解は、実際の工程において、再溶解電極又は再溶解されるインゴットが吊り下げられ、銅るつぼの底部に対して、又は類似の組成の「ストライク・プレート」、又は銅るつぼの底部に配置されている同様の組成の金属粒子の小さい堆積物若しくは塊である、再溶解される金属に類似した組成の金属に対して、それ自体をショートさせると生じる(銅るつぼの底部が回路におけるアノードであり、再溶解電極が回路におけるカソードであり、再溶解電極から溶解アークが生成されることに留意されたい)。前述のショートが起こると、再溶解電極が直ちに短い長さだけ回収されてギャップを生成し、ギャップが大きくなり過ぎない限り、ギャップ全体にわたってショートが発生した溶解アークに置き換えられる。通常、ギャップは6〜12mm(0.24〜0.48インチ)程度になる。理想的には、溶解アークがジュール加熱によって均質なプラズマを発生させる(Zanner、「Vacuum Arc Remelting − An Overview」参照)。このアーク及び/又はプラズマは、アークを乱す、妨げる、或いはアークの大きい不均質をもたらす可能性がある迷磁場若しくは意図しない磁場、その下に形成された金属プール、及び/又は溶解の均質なプロセスの影響をきわめて受けやすい。したがって、回収される小さいインゴットの頂部に対する加熱技術を評価するときには、その技術が、再溶解電極の下で、その電極とるつぼの底部又はるつぼの底部に形成された溶解プールとの間に生じる、最も重要なアーク溶解の均質性を妨げる強い磁場又は電流を発生させないように注意を払わなければならない。
【0054】
銅るつぼのインゴット形成システムでは、メニスカスの形成及び関連する結晶化を完全に避けることができないため、回収技術の成功は、そうした影響を組み込み最小限に抑えること、及びにそれに対処するインゴット回収のためのモデル及びプロセス制御機能を確立することに依存することになる。モデルは、以下のことに対応すべきである。
(1)軸方向の引張りであるインゴットを取り出す力によってメニスカスが断裂すること。
(2)漸進的な軸方向の引張りのたびに断裂するメニスカスの量を最小限に抑えること。
(3)小さいインゴットの形成及び回収に対する必要に応じて、メニスカスを処理に十分な薄さに維持するように、溶解物から連続的に回収される小さいインゴットの頂部を加熱すること。
【0055】
このモデルは、メニスカス、及び関連する銅るつぼの接触領域に蓄積した結晶化金属の強度にほんのわずかに打ち勝つように、インゴットを増加的に、一様に且つ漸進的に回収しなければならないことにも対応しなければならない。インゴットの回収によって、インゴットをわずかに引き下ろすのに足りるだけメニスカスがわずかに乱されるはずであり、断裂及びインゴットの下方への取り出しによって溶解金属がプールから流れ、断裂が生じた低温の銅るつぼの壁に接触すると、直ちに新しいメニスカスが形成される。回収は少しずつ行い、モデルの基準を満たすのに十分な頻度で繰り返す必要がある。
【0056】
本発明の実施例を示すための基礎として示したVAR溶解、接触域の問題、メニスカス形成及び金属結晶化、並びにインゴットの加熱の要件についてのこれまでの議論に関して、本発明を実施するための明確な方法として2つの具体的な実施例を提案する。しかしながら、これらの実施例は説明のためのものにすぎず、限定するものではない。当業者には、本発明の趣旨及び範囲に含まれる他の実施例を実施することが可能であることが理解されるであろう。
【0057】
図1に第1の実施例を示すが、図中、上部は、電極送り駆動装置1、炉チャンバ2、溶解電源3、バスバー/ケーブル4、電極ラム5、水ジャケット6、真空吸気ポート7、X−Y軸調節装置8及びロード・セル・システム9を有する従来型のVAR炉を示している。VAR炉は従来の形で動作して、再溶解電極又はインゴットを溶解する。第1の実施例は、図1の10で示すように、VARの銅るつぼからオーバーフローすることによって、再溶解される供給インゴット又は電極より小さいインゴットを回収することを企図している。銅るつぼ10は、浅い水冷式のるつぼであることが好ましい。金属は電極12から溶解し、浅いるつぼ10の中に滴下する。銅るつぼ10は、溶解金属を第1のるつぼ10から第2のより小さい銅るつぼ16に方向付ける放出口14を含む。アークからの熱は、金属がるつぼ10を充たし、放出口14から溢れ出て第2のるつぼ16の中に集められるまで、金属を溶解した状態に保つ。好ましくは、第2のるつぼ16は環状で低温のるつぼであり、その底部に回収機構を有する。より小さい第2のるつぼ16は、以下の特徴を有する必要がある。
【0058】
第2のるつぼ16は、金属がその中に容易に流れる又は落ちるように、第1のVARの銅るつぼ10の十分近くに位置するべきである。第2のるつぼ16はまた、第1の銅るつぼ10から電気的に分離すべきである。電子ビーム溶解でもプラズマ溶解でも、回収インゴットの技術に関するこれまでの方法では、より小さいインゴットがそれから回収されるより小さいるつぼを電気的に分離することができない。こうしたこれまでのケースでは、回収るつぼ及び供給るつぼ、又は炉床は、単一の一体型の製造品で製造されるか、そうでない場合には、完全な組立体に単一の電気回路を設けるように金属コネクタに接続されていた。VAR溶解の場合、より小さいるつぼのより大きい供給るつぼからの電気的分離について考慮すべきことが、これまでの文献では扱われていなかった、又はこれまでの設計では具体化されていなかった。VAR溶解では、より小さい回収るつぼに対して、第1の溶解るつぼとは全く異なるアーク加熱の出力レベルを維持する必要があるため、電気的な分離はきわめて重要である。別個の回路を設けることができないと、より小さいるつぼがより大きい溶解るつぼの電気的アースの一部、したがって、より大きいVAR再溶解るつぼの回路のアーク経路となり、それによって、より小さい回収るつぼに必要とされる低出力のアークが妨げられる。
【0059】
1つの実例として、主要な真空アーク再溶解の電極は、直径を16インチ(40.64cm)から26インチ(66.04cm)の間にすることが可能であり、その場合、約26〜40ボルトの電圧Vで14KAから26KA程度の溶解電流Iのアークを受ける。第2のより小さい回収るつぼは、インゴットの頂部を加熱するのに、4KAから8KAの間の電流Iのアーク、及び24から30ボルトの間の電圧Vを必要とする。こうした異なる電気的な要求及び要件が、別個に制御可能であり且つ分離された状態にとどまることがきわめて重要である。したがって、これが第1のVARるつぼ10とより小さい回収るつぼ16の電気的な分離の理由である。
【0060】
より小さいインゴットのための収集及び回収用のるつぼ16は、新しいより小さいインゴットが形成され回収されるときに、その上に(先に論じた)コールド・シャットが過度に形成するのを防止するために、追加の熱エネルギーの供給源を必要とする。(プラズマ・アーク、電子ビーム、冷壁式誘導加熱及び真空アーク加熱を含めた)利用可能なエネルギー源すべての評価によって、より大きい再溶解るつぼにおける主要な真空アークから独立に制御される異なる電気回路に対する追加の真空アークの熱源が、二次的な加熱に関する問題を解決し、また回収るつぼの二次的な加熱に対する以下の3つの主要な基準を満たすことが確かめられた。
(1)二次的な加熱アークが、主要な真空アーク再溶解のるつぼにおけるより大きい再溶解電極の溶解に用いられる近くの主アークに対する磁場の干渉を最小限に抑える、ほとんど発生させない、又は全く発生させないようにする。
(2)二次的な加熱アークが、より小さいインゴットの表面の早すぎる冷却及び凝固をなくすように、したがって、回収されたインゴットの表面上のコールド・シャット又は他の有害な欠陥をなくして又は低減して許容できるレベルにするように、回収されるより小さいインゴットの表面に十分な加熱を与えるようにする。
(3)二次的な加熱アークが、一連の溶解又は溶解サイクルの最後の溶解として真空アーク再溶解を必要とする、関連する仕様すべての文字通りの意味及び趣旨を満たすようにする。
【0061】
こうした要件は、例えば主要な溶解アークからのアークに本質的に似た形でアークをなすが、消耗されず、先に論じたより小さい電極の頂部を加熱するのに十分なだけの低い出力で動作する、小型で消耗しない水冷式の銅電極18によって満たすことができる。しかしながら、当業者には、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、前述の第2のるつぼ16の上で他の熱源を用いることが可能であることが理解されるであろう。
【0062】
したがって、本発明の第1の実施例が可能である場合には、以下の要素が存在する。
再溶解電極12から滴下する再溶解した金属を集め、それによって溶解金属のプールを形成することにより、従来のVARのように動作する第1の銅るつぼ10。
プールからの金属が、るつぼ10から、完全に別の電気回路の一部である(主要なるつぼから離れた)より小さい収集るつぼ16の中に滴下する又は流れることを可能にする、第1の銅るつぼ10内のオーバーフロー・リップ14。
VARの主要なるつぼ10から流れる溶解金属を集めて、後で回収されてさらに小径のインゴットを形成する、より小径のインゴットに成形するより小さい収集るつぼ16。
頂部を溶解された状態であって、シャット又は経済的な使用を減じる可能性がある問題のない状態に保つために、回収される小さいインゴットの頂部にアークをなす消耗しない水冷式銅電極18。
【0063】
より小さいインゴットの回収速度、より大きい再溶解インゴットとより小さい回収インゴットの溶解速度及び出力レベル、並びにより小さい再溶解インゴットに対する補助的な加熱アークの出力レベルをすべて統合する、プログラマブル・ロジック・コントローラ(「PLC」)の自動制御ループを設けることができる。これは、より小さい回収インゴットをより小さい銅の結晶化るつぼ/型16から取り出す速度が、溶解金属がより大きい再溶解電極12から滴下し、大きい銅るつぼ10のプールに入り、リップ14を越えてより小さい回収るつぼ16に入る速度に等しくなることを保証するために行われる。これによって、より小径のインゴットの連続的な工程及び回収が保証される。
【0064】
より小さいるつぼ16の底部に、20で示す取出し装置が設けられ、溶解物が矢印の方向に導かれる間、インゴットを小さい結晶化るつぼ又は型16から連続的に回収し取り出す。取出し装置20は、インゴットをより小さいるつぼ16から一定の漸進的な形で回収する。プロセス全体が途切れずに継続することができるように、定期的にインゴットを切断してかたわらに移動させる切断装置22が設けられる。
【0065】
図2には本発明の第2の実施例を示すが、図1からの同様の要素は同様参照番号で示され、また変更を要する要素は、プライム符号付きで示してある。第2の実施例は、より直接的な方法によって、より大きいVAR溶解るつぼからより小さいインゴットを回収することに対処する。図2の上部はやはり、電極送り駆動装置1、炉チャンバ2、溶解電源3、バスバー/ケーブル4、電極ラム5、水ジャケット6、真空吸気ポート7、X−Y軸調節装置8及びロード・セル・システム9を有する従来型のVAR炉を示している。VAR炉は従来の形で動作して、再溶解電極又はインゴットを溶解する。第2の実施例では、取出し装置20’は第1のVAR再溶解のるつぼ10’の底部に位置している。第1の実施例において記載した、第2のより小さい電気的に分離されたるつぼは不要である。第2の実施例では、より小さいインゴットのための取出し装置20’が第1のVARるつぼ10’に組み込まれる。その場合、VARるつぼ10’はそれ自体のタンディッシュとして働き、その真上及び再溶解電極12から滴下する金属によって形成された溶解プールの真下で、溶解金属からの回収インゴットを充たす。
【0066】
1つの実例として、VARるつぼの底部が円形であり、直径が約24インチ(60.96cm)である場合、るつぼ10’の底部に4インチ(10.16cm)の孔を作ることができる。4インチ(10.16cm)の孔は下方へ、るつぼ10’の底部から出て、24で示すようにある程度の距離にわたって延びる。回収用の孔24の側面は、標準的な回収るつぼから予想されるように銅であることが好ましい。
【0067】
VAR溶解サイクルの始まりでは、チタン又は組成的に再溶解インゴットと同じである金属の出発片が、4インチ(10.16cm)の孔に挿入されて引張り装置20’に固定され、引張り装置20’は、VARるつぼ10’が真上の溶解物のプールから充たされる又は蓄積されると、より小さいインゴットをVARるつぼ10’の底部から矢印の方向に回収することができる。次いで、VAR溶解が開始され、金属の溶解した液滴がるつぼ10’の底部に対する蓄積を開始し、先に論じたメニスカスを形成する。金属の溶解した液滴は、インゴット・プラー内で出発物のバーの上にも落下し、最初は凝固する。しかしながら、チタンの場合と同様に、チタンの熱伝達は低く、プラーのすぐ上からのアーク電流を継続すると、すぐにプラーのバーの表面においてある程度溶解する。次いで、溶解は、約1〜4インチ(2.54〜10.16cm)の溶解金属がVARるつぼ10’の底部を充たすまで進行する。この時点で小径のインゴットの引張りが始まり、したがって、インゴットをるつぼ10’の底部から回収する。第1の実施例に関連して先に記述したように、プロセス全体が途切れずに継続することができるように、定期的にインゴットを切断してかたわらに移動させる切断装置22が設けられる。
【0068】
本明細書では、特に図面を参照して本発明について記載してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を加えることが可能であることを理解すべきである。当業者には、本開示の教示全体に照らして、様々な他の修正及び変更を行うことが可能であることが理解されるであろう。本明細書に記載した現在のところ好ましい実施例は、説明のためのものにすぎず、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の全範囲、並びにその任意の及びすべての等価物に対して与えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属源から溶解金属を受け取り、該溶解金属を集めて溶解金属のプールを形成する第1のるつぼであって、オーバーフロー・リップを含む第1のるつぼと、
前記第1のるつぼの前記オーバーフロー・リップから前記溶解金属を受け取る第2のるつぼであって、前記第1のるつぼより小さく、且つ前記第1のるつぼから電気的に分離されている第2のるつぼと、
冷却によって凝固させた前記溶解金属を、前記第2のるつぼから凝固インゴットの形で取り出す取出し装置であって、前記凝固インゴットは前記金属源の直径よりも小さい直径を有している取出し装置と
を有する金属インゴットを製造するためのシステム。
【請求項2】
前記凝固インゴットが前記第2のるつぼから取り出されるにしたがって前記凝固インゴットを定期的に切断する切断装置をさらに有する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記溶解金属を上面溶解状態に保つために、前記第2のるつぼより上に設けられた熱源をさらに有する請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記熱源が非消耗電極を有する請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記金属源が、チタン若しくはチタン合金を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記金属源が、前記金属の消耗電極を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記金属源が、VAR炉を用いて溶解される請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
金属源を溶解して第1のるつぼ内に溶解金属のプールを形成するステップと、
前記溶解金属を前記第1のるつぼから第2のるつぼに移動させるステップであって、前記第2のるつぼが前記第1のるつぼより小さく、前記第1のるつぼから電気的に分離されているステップと、
前記溶解金属を冷却及び凝固させるステップと、
前記冷却及び凝固した金属を前記第2のるつぼから取り出すステップと
を含む金属を製造する方法。
【請求項9】
前記冷却及び凝固した金属が前記第2のるつぼから取り出されて凝固インゴットを形成する際に前記金属を定期的に切断するステップをさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記移動させるステップが、前記溶解金属が前記第1のるつぼから前記第2のるつぼへ流れることを可能にするオーバーフロー・リップを介して前記溶解金属を前記第1のるつぼから方向付けることを含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記溶解金属を上面溶解状態に保つために、前記第2のるつぼを加熱するステップをさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記金属源が、チタン若しくはチタン合金を含む請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記金属源が、前記金属の消耗電極を有する請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記金属源が、VAR炉を用いて溶解される請求項8に記載の方法。
【請求項15】
金属源から溶解金属を受け取り、該溶解金属を集めて溶解金属のプールを形成するるつぼであって、その底部に形成された孔を含み、前記孔が前記るつぼの底部から下方に延びる側壁によって画定されるるつぼと、
冷却によって凝固させた前記溶解金属を前記るつぼの孔から凝固インゴットの形で取り出す取出し装置であって、前記凝固インゴットが前記金属源の直径より小さい直径を有する取出し装置と
を有する金属インゴットを製造するためのシステム。
【請求項16】
前記凝固インゴットが前記るつぼの孔から取り出されるにしたがって前記凝固インゴットを定期的に切断する切断装置をさらに有する請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記金属源が、チタン若しくはチタン合金を含む請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記金属源が、前記金属の消耗電極を有する請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記金属源が、VAR炉を用いて溶解される請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
金属源を溶解してるつぼ内に溶解金属のプールを形成するステップであって、前記るつぼがその底部に形成された孔を含み、前記孔が前記るつぼの底部から下方に延びた側壁によって画定されているステップと、
前記るつぼの孔の中に金属の出発片を提供するステップであって、前記金属の出発片が組成的に前記金属源と同じであるステップと、
前記溶解金属が前記るつぼ内に溜まることを可能にするステップと、
前記溜められた溶解金属が前記るつぼ内で約1〜4インチ(2.54〜10.16cm)の高さに達した後、前記金属の出発片を前記るつぼの孔から取り出すステップであって、前記金属の出発片は、それに付着した、冷却及び凝固させた金属を有しているステップと
を含む金属を製造する方法。
【請求項21】
前記冷却及び凝固した金属が前記るつぼの孔から取り出されて凝固インゴットを形成する際に前記金属を定期的に切断するステップをさらに含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記金属源が、チタン若しくはチタン合金を含む請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記金属源が、前記金属の消耗電極を有する請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記金属源が、VAR炉を用いて溶解される請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−525982(P2012−525982A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510011(P2012−510011)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/034039
【国際公開番号】WO2010/129868
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511267860)
【Fターム(参考)】