説明

チタン含有組成物から二酸化チタンを回収するための方法

本発明は、焙焼および選択的浸出ステップを組み合わせることによって、酸化チタン含有組成物(例えば、低品位のまたは高度放射性TiO鉱石など)の選鉱を改善することに努める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱石などの酸化チタン含有組成物から二酸化チタンを回収するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イルメナイトおよび天然ルチルの現在の供給は、TiO市場の絶えざる成長および直接塩素化するためまたは合成ルチルを製造するための高品位鉱石に対する需要が高まっているため、切迫している。新しい海砂/漂砂鉱床には種々の品質があり、多くは、現在の商業的な方法を用いた改良および選鉱には不適切である(Nameny 「Challenges and Opportunities in the TiO Feedstock Industry」、AJM Global Mineral Sands Exploration and Investment Conference,Melbourne、2003)。
【0003】
大部分のTiO鉱石は、ジルコンおよびモナザイト鉱物を、それらが地質学的に近いせいで高濃度に含有している。供給原料にジルコンおよびモナザイト不純物が存在すると、その市場価格を低減させる。アクチニドおよびランタニド不純物が存在すると、操業上の問題(例えば、塩素消費量の多さまたは層の粘着)を生じ、アクチニド、ランタニドおよびその他の重金属を高濃度で含有する有害な廃棄物を発生する。多くの国において厳格な環境規制のために、顔料産業からのそのような有害な廃棄物を処理または廃棄することが、廃棄物処理および管理のコストを上昇させ続けている大きな問題になってきている。
【0004】
TiO鉱石を選鉱する従来の方法は、
a)マグネタイト、モナザイト、ジルコンおよびその他のシリカを含有する脈石を分離するために使用される、重力、磁気および電気的分離などの物理的方法、および
b)化学的方法、すなわち、鉄を除去するために主として使用される酸浸出およびTiO−スラグの形成(高温還元)(Becher、Benilite、Austpacの各方法)である。
【0005】
しかし、これらの方法には、高品質のイルメナイト鉱石が必要である。低品位/高度放射性TiO鉱石を選鉱するために使用する場合は、Cr、V、Nb(これらは顔料の特性を低下させる)およびCaOおよびSiO(これらは層の粘着などの操業上の問題を引き起こす)などの決定的に重要な不純物の濃度が、最終生成物で非常に高くなる。また、TiO相(擬ルチル、イルメナイト、アナターゼ)における溶質不純物(Fe、Nb、U、Th、Ce)が供給原料中に残り、最終的に顔料製造工程(塩素化または硫酸塩化)の廃棄物の流れになる。スラグ化工程(これは、顔料製造用供給原料の主要な供給源である)では、酸化鉄のみが分離され、その他の不純物の大部分は、供給原料、例えばTiOスラグ中に入ってしまう。また、スラグ化工程は、高電力消費および温室ガスの放出のせいで、先行きが予測できない状態に直面している。
【0006】
TiO鉱石供給源(鉱床)の変更および廃棄物処理に関係する環境問題の見地からすると、より環境的に許容しうるTiOの選鉱方法が必要とされている。主として炭素による還元性雰囲気中で、ソーダによってイルメナイトを焙焼することについていくつかの研究が行われてきた(Fathi Habashi編、Handbook of Extractive Metallurgy、第II巻、出版:Wiley−VCH、Berlin、1997年)。しかし、この技法によるTiOの収量は非常に高いわけではない(<90重量%)。この方法の重大な欠点は、鉄が金属の形態で分離されず、浸出可能な生成物が製造されることもないということである(Handbook of Extractive Metallurgy[上記])。酸化的アルカリ焙焼技術については、限られた数の研究が実施されてきた。しかし、TiOの収量ならびにアクチニドおよびランタニドからの分離は、塩素化に必要な水準に達していない(米国特許第A−6346223号)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、焙焼および選択的浸出ステップを組み合わせることによって、酸化チタン含有組成物(例えば、低品位のまたは高度放射性TiO鉱石など)の選鉱を改善することに努める。特に、本発明は、非ランタニド(例えば、Fe、Ca、Si、VおよびCr)、前ランタニド(例えば、ZrおよびNb)、ランタニド(例えば、CeおよびNd)およびアクチニド(例えば、UおよびTh)不純物をチタン鉄含有鉱床から分離するための選鉱方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様から見ると、本発明は、
(a)1種または複数のアルカリ塩、ならびにアルミナ含有材料および酸化カルシウム含有材料の少なくとも1種を含む酸化チタン含有組成物を供給して、装入物を製造するステップ、
(b)前記装入物を酸化的に焙焼して、焙焼された塊を製造するステップ、および
(c)前記焙焼された塊から酸化チタン生成物を回収するステップ
を含む、酸化チタン含有組成物から二酸化チタン生成物を回収するための方法を提供する。
【0009】
本発明の方法により、広範囲にわたる酸化チタン含有組成物の品位を向上させ、顔料製造(塩素化および硫酸塩化)において直接使用するための高純度酸化チタン生成物(好ましくは合成ルチル)を製造することに成功しうる。本発明の方法により、アルミナ含有材料または酸化カルシウム含有材料の存在下で焙焼することによって、そうしなければ、顔料製造における供給原料の一部となる、高濃度の酸化鉄およびランタニドおよびアクチニド不純物からの完全で効率的および経済的な分離を達成することができる。アルミナ含有材料および酸化カルシウム含有材料を添加すると、ジルコンおよびモナザイト鉱物のみならず、TiO相(ルチル、擬ルチル、ブルッカイトなど)の格子に存在しているランタニドおよびアクチニド不純物(溶質)を除去するのに役立つ。ある実施形態においては、本方法はまた、付加価値を加えた副生物およびアルカリ塩として金属有価物を回収し、それによって再循環させて、この方法を経済的に実行可能にする原料(すなわち、アルカリ塩およびアルミナ)の廃棄量および使用量を実質的に減少させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
「酸化チタン含有組成物」は、チタニア(TiO)を含む化合物の形態をした金属酸化物種の混合物を意味する。粉末、鉱石または鉱物またはそれらの混合物などの酸化チタン含有組成物は、合成または(好ましくは)天然であり得る。好ましいものは、鉱石などのチタンの豊富な材料である(例えば、イルメナイト、アナターゼ、イルメナイト海砂、低品位チタン鉄スラグ、天然ルチルまたはペロブスカイトなど)。さらに、第一鉄または第二鉄種(好ましくは、FeO、FeまたはFeなど酸化鉄)などの鉄種を少なくとも1種含むチタン鉄混合物が、好ましい。チタン鉄混合物は、さらにアルミナまたはシリカを含むことができる。酸化チタン含有組成物は、塩素化法または硫酸塩化法からの残渣であり得る。
【0011】
好ましくは、鉱石は、イルメナイト、アナターゼおよびペロブスカイトからなる群から選択される。
【0012】
好ましくは、鉱石は、イルメナイトおよびペロブスカイトの混合物である。
【0013】
好ましくは、1種または複数のアルカリ塩は、1種または複数のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩である。好ましくは、1種または複数のアルカリ塩は、IA属またはIIA属の金属あるいはそれらの混合物の1種または複数の炭酸塩、水酸化物、重炭酸塩または硫酸塩である。例えば、1種または複数のアルカリ塩は、NaCO、KCO、NaSO、KSO、NaOH、NaHSO、KHSO、KHCO、NaHCOおよびKOHからなる群から選択できる。炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムが好ましい。アルカリ塩の量は、組成物(例えば、鉱石)に存在しているTiO、Fe、Al、SiO、およびPのアルカリ化合物の化学式に基づいて計算できる。
【0014】
好ましくは、ステップ(a)は、1種または複数のアルカリ塩、ならびにアルミナ含有材料および酸化カルシウム含有材料を含む酸化チタン含有組成物を供給するステップを含む。
【0015】
ステップ(b)は、空気または別の酸素供給源において、500℃から1000℃、好ましくは、700℃から975℃、より好ましくは、700℃から875℃(例えば、約800℃)の範囲の温度において実行できる。ステップ(b)は、従来のロータリキルンまたは回転炉床炉内で実行できる。ステップ(b)は、適切な時間の長さで(例えば、120分間)、実行できる。
【0016】
ステップ(b)は、通常、チタン酸アルカリおよび複合酸化物塩を形成する。
【0017】
ステップ(a)は、通常、1種または複数のアルカリ塩、ならびにアルミナ含有材料および酸化カルシウム含有材料の少なくとも1種を含む酸化チタン含有組成物を混合(例えば、均一に混合)して、1回分の装入物を製造することを含む。アルミナ含有材料または酸化カルシウム含有材料は、酸化チタン含有組成物に対して制御された量を添加できる。
【0018】
好ましくは、アルミナ含有材料(例えば、アルミナ)は、酸化チタン含有組成物の5から30重量%、好ましくは、酸化チタン含有組成物の10から25重量%、より好ましくは、酸化チタン含有組成物の15から22重量%(例えば、約20重量%)の範囲の量で、1回分の装入物中に存在する。1回分の装入物におけるアルミナ含有材料の正確な量は、酸化チタン含有組成物とアルカリ塩の比、液相の形成およびさまざまな不純物(主として、酸化鉄、ケイ酸塩およびリン酸塩)の濃度によって、通常、決まる。アルミナ含有材料は、アルミナ、水酸化アルミニウム、Al含有粘土およびそれらの混合物であり得る。アルミン酸塩(例えば、NaAlO)もまた使用できる。ステップ(b)の間、酸化チタン含有組成物中のアルミナおよびその他の脈石相は、アルカリ塩と反応し、複合酸化物相(例えば、Na−Al−Si−M−O相など)を形成し、亜鉄酸ナトリウムなどの亜鉄酸塩の溶解性および安定性を増す。それにより、この複合塩相は、酸化チタン含有組成物から酸化鉄を分離するのに役立つ。
【0019】
酸化カルシウム含有材料は、石灰(すなわち、CaOまたはCa(OH))、酸化カルシウム(例えば、方解石)またはそれらの混合物であり得る。好ましくは、酸化カルシウム含有材料(例えば、CaO)は、酸化チタン含有組成物の0.1から5重量%、好ましくは、酸化チタン含有組成物の1から4重量%、より好ましくは、酸化チタン含有組成物の2から3重量%の範囲の量で、1回分の装入物の中に存在する。酸化カルシウム含有材料の添加は、とりわけ希土類元素REE(例えば、UまたはTh)およびNb(De Hoogら、Mineralogical Magazine、61、721〜725頁、1997年)を高濃度で溶解させることができるTiOおよびZrOのペロブスカイトおよびパイロクロア型の相の形成に基づいている。ステップ(b)の間に、CaOはTiOおよびジルコン鉱物と反応し、モナザイトおよびジルコン鉱物中のランタニドおよびアクチニド不純物のほとんどを有利にも吸収する、ペロブスカイト(CaTiO)、ジルコノライト[(Ca,Fe,Y,Th)(Fe,Ti,Nb)Zr]およびヒアルネイト(hiarneite)[(Ca,Mn,Na)(Zr,Mn)(Sb,Ti,Fe)16]などのさまざまなCa−Na−Ti−M−O化合物を形成する。TiOに富む相に存在する溶質不純物は、TiO粒子の表面上に形成されたCaTiOに向かって外側に拡散する。
【0020】
ステップ(c)は、
(c1)焙焼された塊に水性媒質を添加して、水溶液および実質的に不溶性の残渣を製造するステップを含む。
【0021】
水性媒質は、水またはアルカリ溶液(例えば、希釈アルカリ溶液)であり得る。
【0022】
通常、水は、高温で使用される。熱水は、70から90℃の範囲の温度であり得る。ステップ(c1)は、熱水中で20から200分、好ましくは25から100分の間(例えば、40分間)、実行できる。
【0023】
ステップ(c1)において、金属(例えば、ナトリウム)アルミン酸塩、ケイ酸塩、クロム酸塩、バナジン酸塩およびリン酸塩などの水溶性アルカリ化合物を、水溶液に溶解することができる。実質的に不溶性の残渣を洗浄するために、水性媒質を繰り返し添加しうる(通常は、洗浄のpHが約7に到達するまで)。
【0024】
好ましくは、ステップ(c1)は:
(c1a)高温の水を焙焼された塊に添加して、水溶液および実質的に不溶性の残渣を製造するステップ、
(c1b)水溶液にアルカリ性の供給源を添加して、微細な沈殿物の選択分離を高めるステップを含む。
【0025】
微細な沈殿物は、通常、酸化チタン含有組成物(例えば、鉱石)の微粒子および溶解性が限定されているせいで、Fe、Nb、AlまたはRRE(例えば、UおよびTh)の酸化物または水酸化物として沈殿する複合アルカリ塩(例えば、Na−Al−Si−Fe−M−O)の成分を含む。微細な沈殿物は、濾過などの標準的な技法により水溶液から分離できる。
【0026】
アルカリ性の供給源は、好ましくは、炭酸塩、硫酸塩、重硫酸塩または重炭酸塩などのアンモニウム塩である。通常、アンモニウム塩は、沈殿速度を最適にするために、5重量%までの量で添加される。
【0027】
好ましくは、この方法は、
(d)微細な沈殿物から金属有価物を回収するステップ
をさらに含む。
【0028】
ステップ(d)において、金属有価物は、アルミナ含有材料(例えば、アルミナ)、酸化カルシウム含有材料(例えば、CaO)および金属酸化物(例えば、Feなどの酸化鉄またはNbなどの酸化ニオブ)からなる群から分離できる。
【0029】
好ましくは、この方法は、(e)水溶液から金属有価物を回収するステップをさらに含む。
【0030】
ステップ(e)において、金属有価物は、アルカリ塩、アルミナ含有材料(例えば、アルミナ)、酸化カルシウム含有材料(例えば、CaO)、V、FeおよびCrからなる群から選択できる。Nb、Ta、ZrおよびRREの酸化物も、また回収できる(例えば、NbO、ZrO、U、UO、UO、ThO)。
【0031】
好ましくは、ステップ(e)は、
(e1)水溶液を酸性化するステップ
を含む。
【0032】
ステップ(e1)は、弱酸を添加することにより実施できる。通常、酸は無機酸(例えば、フッ化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、酸性酸化物およびそれらの混合物からなる群から選択された無機酸)である。ステップ(e1)は、ギ酸、シュウ酸または酢酸および/またはCOなどの弱有機酸を使用することによって、よりよく制御できる。好ましくは、酸は酸性酸化物、特に好ましくは二酸化炭素である。例えば、ステップ(e1)は、水溶液中に、COガスを通して(またはシュウ酸を送り込んで)バブリングするステップを含むことができる。弱酸および/またはCOを添加することにより、酸化物を選択的に沈殿させるためのpHを正確に制御する。また、COと共に酸を添加することにより、沈殿物の粗粒化速度が促進され、したがって、粗い残渣中に存在するTiOに富む粗粒と共に不純物酸化物の小さな粒子が捕捉されることが低減される。
【0033】
ステップ(d)および(e)において、付加価値を加えた副生物およびアルカリ塩として、金属有価物を回収することにより、原料(すなわち、アルカリ炭酸塩およびアルミナ)の廃棄量および使用量が減少し、この方法を経済的に実行可能になる。
【0034】
この方法のステップ(c)は、好ましくは、
(c2)実質的に不溶性の残渣を酸浸出して、酸浸出液および本質的に酸化チタンからなる固体残渣を製造するステップ
をさらに含む。
【0035】
ステップ(c2)は、酸溶液、好ましくは無機酸溶液(例えば、2〜10%の鉱酸(例えば、HCl、HNOまたはHSO)溶液など)内で実行できる。適切な酸の一例は、5%HClである。好ましくは、酸は高温(例えば、70〜90℃)である。ステップ(c2)は、5から200分間、好ましくは、5から100分間(例えば、10分間)の間、実行できる。通常、酸の濃度および固体と液体の比は、ステップ(c1)からの実質的に不溶性の残渣に存在する、Fe、SiOおよびCaO化合物の不溶性の塩の量に基づく。固体残渣は、濾過などの標準的な技法により酸浸出液から分離できる。
【0036】
ステップ(c2)において、とりわけNb、ZrおよびREE(例えば、UおよびTh)の酸溶解性の塩は、酸浸出液中に溶解できる。チタン酸アルカリは、分解されてTiOとなる。希酸(および場合により次いで水)は、固体残渣を洗浄するために繰り返し添加できる。
【0037】
好ましくは、ステップ(c2)は、
(c2a)酸浸出液から金属有価物を回収するステップ
を含む。
【0038】
ステップ(c2a)において、金属有価物は、酸性化合物、アルカリ化合物および酸化物からなる群から選択できる。具体例は、ZrO、NbおよびTh/UOである。
【0039】
通常、ステップ(c2)の後の固体残渣は、TiOに富み、(ステップ(e1)において製造された酸化物の細かさに応じて)TiOを87重量%以上、好ましくは87〜95重量%含むことができる。(例えば、電解精製技法または仮焼により)固体残渣をさらに精製することができる。仮焼は、アルカリ重硫酸塩および重炭酸塩を使用して行うことができ、鉄、アルミニウム、シリカ、リン酸塩、ランタニドおよびアクチニドの濃度をさらに低下させ、より白色の等級の合成ルチルを製造することができる。
【0040】
固体残渣の精製およびアグロメレーションにより、所望する水準の純度および粒径分布を有する合成ルチルを形成することができる。好ましくは、この方法のステップ(c)は、
(c3)固体残渣の少なくとも一部を、1種または複数のアルカリ水素硫酸塩および/または炭酸塩と共に焙焼して、焙焼物を製造するステップ
をさらに含む。
【0041】
好ましくは、ステップ(c3)は、1から4時間の間、空気または別の酸素供給源の中で、200〜400℃(例えば、約300℃において)などの低温において実行される。好ましいアルカリ水素硫酸塩は、NaHSOおよび/またはKHSOである。通常、NaHSOまたはKHSOと固体残渣の比は、約1:1である。通常、ステップ(c3)は、1時間の間、実行される。
【0042】
この方法のステップ(c)は、好ましくは、
(c4)焙焼物を水浸出して、酸化チタン生成物を製造するステップ
をさらに含む。
【0043】
通常、水は、ステップ(c4)において高温で使用される。熱水は、70から90℃の範囲の温度であり得る。ステップ(c4)は、熱水中で、20から200分、好ましくは、25から100分(例えば、30分)の間、実行できる。酸化チタン生成物は、濾過などの標準的な技法により、水浸出液から分離できる。水および場合により希酸溶液は、焙焼物を洗浄するために、繰り返し添加できる(通常、洗浄液のpHが約7に到達するまで)。
【0044】
酸化チタン生成物は、好ましくは、合成ルチルの形態をしている。本発明の方法は、TiO(合成ルチル)を95重量%以上の純度にすることができる。
【0045】
酸化チタン生成物は、7.5重量%以下、好ましくは、6.5重量%以下、より好ましくは、2重量%以下のFeを含有することができる。
【0046】
酸化チタン生成物は、2.0重量%以下、好ましくは、1.5重量%以下、より好ましくは、0.9重量%以下のAlを含有することができる。
【0047】
酸化チタン生成物は、1.5重量%以下、好ましくは、1重量%以下、より好ましくは、0.75重量%以下、特に好ましくは、0.1重量%以下のSiOを含有することができる。
【0048】
酸化チタン生成物は、250ppm以下、好ましくは、200ppm以下、より好ましくは、155ppm以下、特に好ましくは、50ppm以下のUを含有することができる。
【0049】
酸化チタン生成物は、750ppm以下、好ましくは、600ppm以下、より好ましくは、580ppm以下のThを含有することができる。
【0050】
酸化チタン生成物は、5500ppm以下、好ましくは、2500ppm以下、より好ましくは、1000ppm以下のZrを含有することができる。
【実施例】
【0051】
次に、添付の実施例および図を参照して、本発明を非限定的に説明する。
(実施例I)
オーストラリア産のイルメナイト鉱石
図1に例示されている本発明の一実施形態において、イルメナイト鉱石の選鉱には、以下のステップが含まれる。
【0052】
A.イルメナイト鉱石1(表1に分析結果が示されている)を、アルカリ炭酸塩(ナトリウムまたはカリウム)2、アルミナ(鉱石の20重量%)およびCaO(鉱石の3重量%)3と均一に混合して、装入物4を製造した。
【0053】
B.前記装入物4を、950℃で120分間、空気中で焙焼して、焙焼された塊を製造した。
【0054】
C.焙焼された塊を、80℃で40分間、熱水5により浸出した。溶液を濾過し、固体の粗い残渣7を浸出し、浸出液8のpHが7になるまで繰り返し洗浄した。
【0055】
D.鉱石粒子およびとりわけ、Fe、Al、Nb、U、ThおよびREEの水酸化物の微細な沈殿物6が、洗浄および浸出の間に形成され、濾過により分離された。微細な沈殿物を分離および粗大化するために、アンモニウム塩Aを添加することによって、溶液のpHを制御することができる。回収された添加物3aおよび副生物20(例えば、Fe、Nb)などの金属有価物を回収(R1)するために、微細な沈殿物6を使用した。
【0056】
E.アルカリ塩、アルミナ、酸化鉄/水酸化鉄およびその他の金属有価物を、COガスバブリングおよび/または有機酸Bによって、ステップCの浸出液8から回収(R2)した。
【0057】
F.ステップCからの固体の粗い残渣7を、70℃で10分間、5%HCl酸溶液9により処理した。溶液9を濾過し、固体残渣11を希酸溶液、次いで、水により完全に洗浄して、すべての不純物を除去した。
【0058】
G.ステップFからの浸出液10(とりわけNb、U、ZrおよびREEの酸溶解性の塩を含有している)を、酸およびZrO、NbおよびTh/UOなどの副生物21を回収(R3)するために、処理した。
【0059】
H.ステップFからの固体残渣11を、オーブン内で乾燥した。生成物(合成ルチル)の分析結果を表1に示す。この生成物を、塩素化用に使用することができ、塩素化装置からの廃棄物22を、回収ステップR3に回すことができる。
【0060】
I.ステップHからの固体残渣11の一部を、空気中で300℃において1時間、NaHSO(1:1の割合)と共に焙焼した。残渣11:NaHSOの割合を、不純物の残留物を分析することによって、大きくすることができる。
【0061】
J.ステップIからの焙焼された塊を、80℃で30分間、熱水により浸出した。溶液を濾過し、さらなる固体残渣12を浸出し、浸出液のpHが7になるまで洗浄を繰り返した。
【0062】
K.ステップJからのさらなる固体残渣12をオーブン内で乾燥した。最終生成物中のFe、Al、およびSiOの濃度は、大幅に低下し、それぞれ、<2重量%、<0.5重量%、<0.1重量%であった。ステップJの後の合成ルチルの純度は、したがって、95%を超えていた。
【0063】
要するに、TiOの純度は、最適化されていないステップHにおける87%から、ステップJの後では、95%以上上昇する。
【0064】
【表1】

【0065】
図3は、アルカリ焙焼および水浸出後の、イルメナイト鉱石中のルチル粒子の微細構造である。焙焼用の装入物に5%(鉱石に対して)のCaOを添加することにより、ルチル粒子(灰色)から、ペロブスカイト相(輝相)として溶質不純物を分離することが加速される。
【0066】
(実施例II)
アナターゼ鉱石
アナターゼ鉱石を、実施例Iにおいて記載されているのと同一のステップで処理した。この場合は、約2重量%のCaOが鉱石中に存在していたので、余分なCaOを添加することはしなかった。アナターゼ鉱石と、焙焼および浸出ステップ後の最終生成物と化学分析の結果を表2に掲げる。
【0067】
【表2】

【0068】
図2は、850℃で4時間、アルカリ焙焼した後の、アナターゼ鉱石の顕微鏡写真である。粒子AのX線による元素マップから、Na−Al−Fe−Si−O複合相が形成されていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の方法の実施形態によるTiO鉱石の選鉱のフローチャートを示す図である。
【図2】本発明の方法の実施形態を経た後のアナターゼ鉱石の顕微鏡写真を示す図である。
【図3】本発明の実施形態を経た後のイルメナイト鉱石中のルチル粒子の微細構造を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1種または複数のアルカリ塩、ならびにアルミナ含有材料および酸化カルシウム含有材料の少なくとも1種を含む酸化チタン含有組成物を供給して、装入物を製造するステップ、
(b)前記装入物を酸化的に焙焼して、焙焼された塊を製造するステップ、および
(c)前記焙焼された塊から酸化チタン生成物を回収するステップ
を含む、酸化チタン含有組成物から二酸化チタン生成物を回収するための方法。
【請求項2】
酸化チタン含有組成物は、鉱石である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸化チタン含有組成物は、チタン鉄混合物である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
鉱石は、イルメナイト、アナターゼおよびペロブスカイトからなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項5】
1種または複数のアルカリ塩は、Ia属またはIIa属の金属あるいはそれらの混合物の1種または複数の炭酸塩、水酸化物、重炭酸塩または硫酸塩である請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
1種または複数のアルカリ塩は、NaCO、KCO、NaSO、KSO、NaOH、NaHSO、KHSO、KHCO、NaHCOおよびKOHからなる群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
1種または複数のアルカリ塩は、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択される請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)は、
1種または複数のアルカリ塩、ならびにアルミナ含有材料および酸化カルシウム含有材料を含む酸化チタン含有組成物を供給するステップを含む請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
アルミナ含有材料は、アルミナ、水酸化アルミニウム、Al含有粘土、NaAlOおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
酸化カルシウム含有材料は、石灰、酸化カルシウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)は、
(c1)焙焼された塊に水性媒質を添加して、水溶液および実質的に不溶性の残渣を製造するステップを含む請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
水性媒質は、水またはアルカリ溶液である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
水性媒質は、熱水である請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(c1)は、
(c1a)高温の水を焙焼された塊に添加して、水溶液および実質的に不溶性の残渣を製造するステップ、
(c1b)前記水溶液にアルカリ性の供給源を添加して、微細な沈殿物の選択分離を高めるステップを含む請求項11、12または13に記載の方法。
【請求項15】
アルカリ性の供給源は、アンモニウム塩である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(d)微細な沈殿物から金属有価物を回収するステップ
をさらに含む請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
金属有価物は、アルミナ含有材料、酸化カルシウム含有材料および金属酸化物からなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(e)水溶液から金属有価物を回収するステップ
をさらに含む請求項11から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
金属有価物は、アルカリ塩、アルミナ含有材料、酸化カルシウム含有材料、V、FeおよびCrからなる群から選択される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(e)は、
(e1)水溶液を酸性化するステップ
を含む請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(e1)は、弱有機酸を添加することによって実施される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
弱有機酸は、ギ酸、シュウ酸または酢酸および/またはCOである請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(c)は、
(c2)実質的に不溶性の残渣を酸浸出して、酸浸出液および酸化チタンから本質的になる固体残渣を製造するステップ
をさらに含む請求項11から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
ステップ(c2)は、
(c2a)酸浸出液から金属有価物を回収するステップ
を含む請求項16に記載の方法。
【請求項25】
方法のステップ(c)は、
(c3)固体残渣の少なくとも一部を、1種または複数のアルカリ水素硫酸塩および/または炭酸塩と共に焙焼して、焙焼物を製造するステップ
をさらに含む請求項23または24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
アルカリ水素硫酸塩は、NaHSOまたはKHSOである請求項25に記載の方法。
【請求項27】
方法のステップ(c)は、
(c4)焙焼物を水浸出して、酸化チタン生成物を製造するステップ
を含む請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
水は、ステップ(c4)において高温で使用される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
酸化チタン生成物は、95重量%以上の純度を有する請求項1から28のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−505812(P2007−505812A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526683(P2006−526683)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003925
【国際公開番号】WO2005/028369
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506092237)ザ・ユニバーシテイ・オブ・リーズ (1)
【Fターム(参考)】