チタン酸アルミニウム焼結体及びアルミニウム合金鋳造用耐火物
【課題】溶融アルミニウム合金に対する耐食性に優れるチタン酸アルミニウム焼結体、及びそれを用いたアルミニウム合金鋳造用耐火物を提供する。
【解決手段】本発明のチタン酸アルミニウム焼結体[結晶粒径(長径);2〜15μm]は、アルミニウム合金の溶湯(溶湯温度;約660〜740℃)中において、粒界き裂が閉塞した状態であることを特徴とする。また、本発明のアルミニウム合金鋳造用耐火物は、前記チタン酸アルミニウム焼結体を用いてなることを特徴とする。
【解決手段】本発明のチタン酸アルミニウム焼結体[結晶粒径(長径);2〜15μm]は、アルミニウム合金の溶湯(溶湯温度;約660〜740℃)中において、粒界き裂が閉塞した状態であることを特徴とする。また、本発明のアルミニウム合金鋳造用耐火物は、前記チタン酸アルミニウム焼結体を用いてなることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸アルミニウム焼結体及びアルミニウム合金鋳造用耐火物に関する。更に詳しくは、アルミニウム合金の溶湯に対する耐食性に優れるチタン酸アルミニウム焼結体、及びそれを用いたアルミニウム合金鋳造用耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アルミニウム合金等の鋳造プロセスにおいて用いられるラドル等の鋳造用耐火物の材質には、一般的に鋳鉄が使用されていた。
しかしながら、鋳鉄製の耐火物は、アルミニウム合金溶湯との接触回数が増大するにつれて、溶湯に対する非濡れ性が大きく低下してしまい、耐火物の表面にアルミニウム合金の固着等による腐食が生じる等の不具合があり、問題となっていた。
【0003】
そのため、近年では、アルミニウム合金溶湯に対する耐食性が鋳鉄よりも優れるチタン酸アルミニウム焼結体(Al2TiO5)やサイアロン焼結体等のセラミックスの適用が検討されつつある(特許文献1参照)。
このチタン酸アルミニウム焼結体は熱膨張係数の大きな異方性を有するものであり、製造プロセスにおける焼成後の冷却過程で発生する熱応力によって、結晶粒界に多数の粒界き裂(マイクロクラック)が形成されている。そして、チタン酸アルミニウム焼結体の結晶粒子が加熱によって熱膨張しても、その膨張は多数の粒界き裂の閉塞によって吸収されるため、また、冷却によって熱収縮しても、その収縮が粒界き裂の開口によって吸収されるため、見掛け上の熱膨張係数が小さくなる。そのため、チタン酸アルミニウム焼結体は耐熱衝撃性や断熱性に優れる。また、粒界き裂の存在により、外部からの衝撃に対しても容易に変形し、その衝撃エネルギーを吸収することが可能となるため、耐衝撃性にも優れている。更には、チタン酸アルミニウム焼結体は、純アルミニウムの溶湯中において、焼結体の構成成分であるチタン(Ti)成分が還元・溶解し、焼結体表面にAl2O3層が自己形成されるため、優れた非濡れ性が発現する。
このような観点から、チタン酸アルミニウム焼結体は、アルミニウム合金等の鋳造プロセスにおいて用いられる鋳造用耐火物の材質として有望視されている。
【0004】
しかしながら、前記チタン酸アルミニウム焼結体の耐食性は、鋳鉄よりも優れているとはいえ、アルミニウム合金等の鋳造プロセスにおいて用いられる鋳造用耐火物としては、未だ十分に満足できるものではない。
また、チタン酸アルミニウム焼結体における溶融アルミニウム合金との接触による腐食機構は完全に解明されておらず、未だに不明な点が多く、焼結体の強度を向上させるために添加する焼結助剤の存在が耐食性を低下させる一因となっている等の報告もある。
そのため、アルミニウム合金等の鋳造分野においては、より耐食性に優れたチタン酸アルミニウム焼結体が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−139369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、溶融アルミニウム合金に対する耐食性に優れるチタン酸アルミニウム焼結体、及びそれを用いたアルミニウム合金鋳造用耐火物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、チタン酸アルミニウム焼結体の溶融アルミニウム合金に対する耐食性の向上について鋭意検討した結果、チタン酸アルミニウム焼結体に特有のものである温度と結晶粒径に依存する粒界き裂の開閉現象が、溶融アルミニウム合金中におけるチタン酸アルミニウム焼結体の腐食機構に影響していることを見出した。更に、この腐食機構を解析した結果、溶融アルミニウム合金と直接接触した部位のみならず、溶融アルミニウム合金とチタン酸アルミニウム焼結体との空隙(ガス相)を介しても腐食が進行することを解明し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は以下の通りである。
[1]アルミニウム合金の溶湯中において、粒界き裂が閉塞した状態であることを特徴とするチタン酸アルミニウム焼結体。
[2]チタン酸アルミニウム焼結体の結晶粒径が15μm以下である前記[1]に記載のチタン酸アルミニウム焼結体。
[3]前記アルミニウム合金の溶湯温度以上の温度から降温させた際における、チタン酸アルミニウム焼結体の粒界き裂の発生温度が、前記アルミニウ合金の凝固開始温度以下である前記[1]又は[2]に記載のチタン酸アルミニウム焼結体。
[4]前記[1]乃至[3]のいずれかに記載のチタン酸アルミニウム焼結体を用いることを特徴とするアルミニウム合金鋳造用耐火物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のチタン酸アルミニウム焼結体は、アルミニウム合金溶湯(溶融アルミニウム合金)中において、粒界き裂が閉塞した状態となっているため、溶融アルミニウム合金に対して優れた耐食性を発現し、腐食の進行を十分に抑制することができる。
また、チタン酸アルミニウム焼結体の結晶粒径が15μm以下である場合、溶融アルミニウム合金に対する耐食性が十分に得られる。
更に、チタン酸アルミニウム焼結体の粒界き裂の発生温度が、アルミニウ合金の凝固開始温度以下である場合、溶融アルミニウム合金に対する耐食性がより確実に得られる。
本発明のアルミニウム合金鋳造用耐火物は、特定のチタン酸アルミニウム焼結体を用いて得られるため、溶融アルミニウム合金に対する耐食性に非常に優れている。そのため、アルミニウム合金等の鋳造プロセスにおいて治工具等として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】粒界き裂発生温度(Tmc)と、破壊臨界粒径(Gcr)との関係を示す図である。
【図2】電子顕微鏡写真による実験例1の微細組織の説明図である。
【図3】実験例1における結晶粒径の面積率を示すグラフである。
【図4】光学顕微鏡写真による実験例2の微細組織の説明図である。
【図5】実験例2における結晶粒径の面積率を示すグラフである。
【図6】光学顕微鏡写真による実験例3の微細組織の説明図である。
【図7】実験例3における結晶粒径の面積率を示すグラフである。
【図8】温度と線膨張の関連を説明するグラフである。
【図9】耐食性の試験方法の説明図である。
【図10】実験例1の焼結体(浸漬後)の説明図である。
【図11】実験例2の焼結体(浸漬後)の説明図である。
【図12】実験例3の焼結体(浸漬後)の説明図である。
【図13】粒界き裂発生温度(Tmc)と、破壊臨界粒径(Gcr)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を具体的に説明する。
[1]チタン酸アルミニウム焼結体
本発明のチタン酸アルミニウム焼結体は、チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)を主体とするセラミックスであって、その結晶粒界には、焼結体製造プロセスにおける焼成後の冷却過程(降温過程)で発生する熱応力によって多数の粒界き裂(マイクロクラック)が形成されている。この粒界き裂は、焼結体における結晶の熱膨張により開閉するものであり、具体的には、粒界き裂は昇温に伴って閉塞し、降温に伴って開口する。
このような粒界き裂を結晶粒界に備えるチタン酸アルミニウム焼結体は、加熱時における結晶粒子の熱膨張が粒界き裂の閉塞によって吸収されるため、また、冷却によって熱収縮しても、その収縮が粒界き裂の開口によって吸収されるため、焼結体の見掛け上の熱膨張係数が小さくなるという特有の性質を有しており、その結果、優れた耐熱衝撃性や断熱性を発現する。
【0012】
前記チタン酸アルミニウム焼結体は、アルミニウム合金の溶湯中においては、粒界き裂が閉塞した状態をとるものである。即ち、本発明における焼結体は、一般的な鋳造プロセスにおいて用いられるアルミニウム合金溶湯の温度範囲(通常、660〜740℃)においては、粒界き裂が閉塞していることを意味する。
本発明において、結晶の粒界き裂が閉塞状態か開口状態であるかは、アルミニウム合金の溶湯温度以上であり且つチタン酸アルミニウム焼結体の焼成温度(通常、1400〜1600℃)以下の温度から降温させた際(具体的には、焼結体を約1000℃まで昇温した後に、約25〜100℃まで降温させた際)における、アコースティックエミッション(AE)センサーにて検出される粒界き裂発生音の最大ピーク検出時の温度(粒界き裂発生温度)を境に区別するものとする。即ち、本発明では、上述の条件下において、粒界き裂発生音の最大ピークが検出されるまで(検出時を含まない)が粒界き裂閉塞状態であり、最大ピーク検出時以降が粒界き裂開口状態である。
尚、前記アルミニウム合金の溶湯温度については、後段にて詳細を説明する。また、前記粒界き裂発生音の測定は、実施例に記載の方法と同様にして行うことができる。
【0013】
このようなチタン酸アルミニウム焼結体の結晶粒径は、15μm以下であることが好ましく、より好ましくは2〜15μm、更に好ましくは3〜10μm、特に好ましくは4〜6μmである。この結晶粒径が15μmを超える場合、溶融アルミニウム合金中において、粒界き裂が閉塞した状態とならないおそれがある。一方、この結晶粒径が小さ過ぎる場合、高温域から室温(約25℃)に冷却されても粒界き裂が形成されず、十分な耐熱衝撃性が得られないおそれがある。尚、ここでいう「結晶粒径」とは、チタン酸アルミニウム焼結体の結晶における長径の平均粒子径D50を意味する。
また、チタン酸アルミニウム焼結体における結晶のアスペクト比(長径の平均粒子径D50/短径の平均粒子径D50)は、1.3〜2.0であることが好ましく、より好ましくは1.5〜1.8、更に好ましくは1.6〜1.8である。
長径及び短径の各平均粒子径D50は、実施例に記載の方法と同様にして行うことができる。
【0014】
尚、本発明におけるチタン酸アルミニウム焼結体の結晶粒径は、焼結体製造時の焼成条件等(例えば、焼成温度、焼成時間、焼結助剤の種類や添加量、原料粉末の粒子径)により調節することができる。
【0015】
また、チタン酸アルミニウム焼結体の相対密度は、80〜98%であることが好ましく、より好ましくは85〜96%、更に好ましくは88〜94%である。
【0016】
本発明におけるチタン酸アルミニウム焼結体には、アルミニウム(Al)及びチタン(Ti)以外にも、焼結助剤等に由来する他の金属元素等が含まれていてもよい。具体的な他の元素としては、例えば、Si、Ca、Nb等が挙げられる。
【0017】
前記チタン酸アルミニウム焼結体に含有される各元素の含有量(酸化物換算)の合計を100質量%とした場合、チタン(TiO2換算)及びアルミニウム(Al2O3換算)の含有量の合計は、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは85〜99.9質量%、更に好ましくは90〜99.9質量%である。
更に、チタン(TiO2換算)及びアルミニウム(Al2O3換算)の含有割合は質量比(TiO2:Al2O3)で、40〜50:50〜60であることが好ましく、より好ましくは42〜44:56〜58である。
【0018】
また、本発明におけるチタン酸アルミニウム焼結体は、前述の粒界き裂発生温度が、アルミニウム合金の凝固開始温度以下であることが好ましく、より好ましくは凝固開始温度以下であり且つ室温(約25℃)以上、更に好ましくは溶融開始温度以下である。具体的には、100〜550℃であることが好ましく、特に100〜510℃であることが好ましい。この温度が上述の範囲内である場合、十分な耐食性が得られる。特に、この温度がアルミニウム合金の凝固開始温度以下である場合には、溶融前のアルミニウム合金と焼結体とが同時に加熱されても、アルミニウム合金が完全に溶融状態となり、一般的な処理温度(溶湯温度)まで加熱される前に、焼結体の粒界き裂が閉塞状態となるため、より優れた耐食性を得ることができる。尚、この粒界き裂発生温度は、例えば、下記式により推定することもできる[Ohya et al,J.Amer.Ceram.Soc.,70,C184(1987)参照]。
【0019】
【数1】
Tmc;粒界き裂発生温度(℃)
T0;焼結体固化温度(frozen温度)(℃)
k;定数(14.4)
E;弾性率(200GPa)
Δα;チタン酸アルミニウム焼結体結晶の熱膨張係数差(22×10−6K−1)
γf;破壊エネルギー(22J/m2)
Gcr;破壊臨界粒径(長径)(μm)
【0020】
ここで、前記式における焼結体固化温度(T0)は、チタン酸アルミニウム焼結体を固相焼結により得る場合、通常1000〜1300℃であることが知られているため、この温度範囲における粒界き裂発生温度(Tmc)と、破壊臨界粒径(Gcr)との関係を求めて、図1に示した。
この図1においては、各直線上の座標が粒界き裂を発生する温度と粒径を示し、各直線よりも右上の領域が粒界き裂の閉塞状態を示し、左下の領域が粒界き裂の開口状態を示している。
【0021】
また、前記アルミニウム合金の種類は特に限定されず、一般的なアルミニウム合金の鋳造プロセスにおいて用いられているものを挙げることができる。例えば、アルミニウム(Al)と、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)、銅(Cu)及びニッケル(Ni)、鉄(Fe)及びスズ(Sn)等から選ばれる少なくも1種の金属との合金が挙げられる。具体的には、一般用アルミニウム合金ダイカスト、特殊用アルミニウム合金ダイカスト等が挙げられる。
【0022】
前記一般用アルミニウム合金ダイカスト(JIS記号)としては、ADC10(凝固開始温度;約537〜593℃)、ADC10Z(凝固開始温度;約537〜593℃)、ADC12(凝固開始温度;約515〜582℃)、ADC12Z(凝固開始温度;約515〜582℃)が挙げられる。
前記特殊用アルミニウム合金ダイカスト(JIS記号)としては、ADC1(凝固開始温度;約573〜582℃)、ADC3(凝固開始温度;約557〜596℃)、ADC5(凝固開始温度;約534〜639℃)、ADC6(凝固開始温度;約598〜640℃)、ADC14(凝固開始温度;約507〜648℃)が挙げられる。
尚、凝固開始温度は、冷却時の溶湯の温度変化を熱電対で計測することにより測定することができる。
【0023】
前記アルミニウム合金の溶湯の温度は、一般的なアルミニウム合金の鋳造プロセスにおいて設定される温度とすることができる。通常、この温度は660〜740℃であり、特に680〜720℃、更には690〜710℃とすることができる。
【0024】
[2]アルミニウム焼結体の製造方法
本発明のチタン酸アルミニウム焼結体を製造する方法は特に限定されないが、例えば、原料粉末にチタン酸アルミニウム(Al2TiO5)粉末を用いて、平均粒子径を調節した調整粉末を作製し、その調整粉末を用いて所望形状の加圧成形体を作製し、得られた成形体を焼成することにより製造することができる。尚、原料粉末としては、チタン酸アルミニウム粉末の代わりに、アルミナ(Al2O3)粉末及びチタニア(TiO2)粉末を用いてもよい。また、前記調整粉末は、市販品を用いてもよい。更に、焼結体の製造には、公知の焼結助剤を用いてもよい。
【0025】
前記調整粉末の平均粒子径は、0.1〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜3μmである。
尚、ここでいう平均粒子径とは、平均粒子径D50を意味する。また、この平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定することができる。
【0026】
前記成形体を焼成する際の焼成条件は、得られる焼結体の結晶粒径が所定の範囲となる限り限定されない。
焼成温度は、例えば、1400〜1600℃であることが好ましく、より好ましくは1450〜1550℃である。
また、焼成時間は、例えば、0.5〜5時間であることが好ましく、より好ましくは1〜2時間である。
更に、焼成雰囲気は、例えば、大気雰囲気下等とすることができる。
【0027】
[3]アルミニウム合金鋳造用耐火物
本発明のアルミニウム合金鋳造用耐火物は、前述のチタン酸アルミニウム焼結体を用いることを特徴とする。
前記アルミニウム合金鋳造用耐火物としては、例えば、ラドル、ストーク、樋、管路、溶湯搬送容器、湯だまり等の鋳造用治工具が挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。ここで、部は、特記しない限り質量基準である。
【0029】
[1]チタン酸アルミニウ焼結体の製造
<実験例1>
チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)の原料粉末として、丸ス釉薬合資会社製の「WTA(Lot.080717)」[平均粒子径D50;37μm、ICP分析による化学組成(酸化物換算、単位:質量%);Al2O3:57.45、TiO2:42.2、Nb2O5:0.06、SiO2:0.22、Ca0:0.07]を使用した。そして、この原料粉末をアルミナ乳鉢にて粉砕した後、目開き100μmの篩いに通した。次いで、得られた粉末300gと、エタノール400mLと、直径3mmのアルミナボール(1.25kg)とを用いて、70rpm×96時間の条件にて、ボールミル混合を行った。その後、75℃の条件にて振動流動乾燥を行い、得られた粉末をアルミナ乳鉢にて粉砕した後、目開き48μmの篩いを通すことにより、調整粉末[平均粒子径D50;2.2μm、ICP分析による化学組成(酸化物換算、単位:質量%);Al2O3:57.79、TiO2:41.8、Nb2O5:0.17、SiO2:0.17、Ca0:0.07]を得た。
次いで、得られた調整粉末を、金型[寸法;45×90(mm)]を用いて40MPaの圧力で一軸加圧成形し、更に、6tの圧力で冷間静水圧プレス(CIP)を行って、成形体を得た。
その後、得られた成形体を、前記調整粉末の製造に用いた原料粉末中に埋めた状態で、大気下にて、5℃/分で1450℃まで昇温し、その温度を1時間保持することによって焼成した。次いで、5℃/分で800℃まで降温し、800℃から25℃までは、2℃/分で降温することによって、実験例1のチタン酸アルミニウム焼結体を製造した。
【0030】
<実験例2>
実験例1で得られた調整粉末を、金型[寸法;45×90(mm)]を用いて40MPaの圧力で一軸加圧成形し、更に、6tの圧力で冷間静水圧プレス(CIP)を行って、成形体を得た。
その後、得られた成形体を、前記調整粉末の製造に用いた原料粉末中に埋めた状態で、大気下にて、5℃/分で1550℃まで昇温し、その温度を5時間保持することによって焼成した。次いで、5℃/分で800℃まで降温し、800℃から25℃までは、2℃/分で降温することによって、実験例2のチタン酸アルミニウム焼結体を製造した。
【0031】
<実験例3>
実験例1で得られた調整粉末を、金型[寸法;45×90(mm)]を用いて40MPaの圧力で一軸加圧成形し、更に、6tの圧力で冷間静水圧プレス(CIP)を行って、成形体を得た。
その後、得られた成形体を、前記調整粉末の製造に用いた原料粉末中に埋めた状態で、大気下にて、5℃/分で1550℃まで昇温し、その温度を10時間保持することによって焼成した。次いで、5℃/分で800℃まで降温し、800℃から25℃までは、2℃/分で降温することによって、実験例3のチタン酸アルミニウム焼結体を製造した。
【0032】
[2]チタン酸アルミニウム焼結体における微細組織の観察
実験例1〜3の各チタン酸アルミニウム焼結体における微細組織を、電子顕微鏡及び光学顕微鏡を用いることにより確認した。また、組織写真を基に画像解析処理を行い、結晶粒径(長径の平均粒子径D50)、及び、結晶のアスペクト比(長径の平均粒子径D50/短径の平均粒子径D50)を測定した。更に、焼結体を切削加工により、10×10×厚さ3mmに切り出し、質量を計測することで、相対密度を測定した。その結果を表1に示す。
また、実験例1の電子顕微鏡写真による微細組織の説明図を図2に示し、実験例1における結晶粒径の面積率を示すグラフを図3に示す。また、実験例2の光学顕微鏡写真による微細組織の説明図を図4に示し、実験例2における結晶粒径の面積率を示すグラフを図5に示す。更に、実験例3の光学顕微鏡写真による微細組織の説明図を図6に示し、実験例3における結晶粒径の面積率を示すグラフを図7に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
[3]チタン酸アルミニウ焼結体における熱膨張(線膨張)の温度依存性、及び粒界き裂の温度依存性について
(線膨張の測定)
実験例1〜3の各チタン酸アルミニウム焼結体を切削加工により、幅4×厚さ3×長さ20mmの試験片に切り出した後、大気中において温度範囲約30〜1000℃(昇温時及び降温時)の線膨張(%)の変化を、プッシュロッド式熱膨張計を用いて、昇温速度及び降温速度を5℃/分にて測定し、その相関を図8に示した。
(粒界き裂発生温度の測定)
また、各チタン酸アルミニウム焼結体を切削加工により、10×10×厚さ7mmの試験片に切り出した後、炉に設置し、試験片上部(10×10mm面)にアルミナ棒を押しあて、もう一方の棒の端部を炉外に設置したAEセンサーに取り付ける。その後、大気中において1000℃まで昇温した後、降温時(5℃/分の降温速度)の粒界き裂発生音の最大ピーク検出時の温度(粒界き裂発生温度)を測定した。試験片から発生する粒界き裂発生音は、アルミナ棒を介してAEセンサーに伝達される。その結果を表2に示す。また、それらのピークを図8に併記した。
尚、実験例2及び3においては、ピークが2つ[ピーク(b)及び(c)]あるが、低温側にあるピーク(b)は、結晶粒径(長径)が小さな領域(特に、粒径;約30μm以下)に関するピークであり、高温側にあるピーク(c)は、結晶粒径が大きな領域(特に長径;約30μm超え)に関するピークである。実験例2のピーク(b)と実験例3のピーク(b)とを比較すると、実験例2のピーク(b)の方が大きく、実験例2のピーク(c)と実験例3のピーク(c)とを比較すると、実験例3のピーク(c)の方が大きい。即ち、実験例3は実験例2よりも、より高温まで粒界き裂の多くが開口した状態で存在する。
【0035】
【表2】
【0036】
[4]チタン酸アルミニウム焼結体の耐食性について
実験例1〜3の各チタン酸アルミニウム焼結体を切削加工し、試験片[寸法;10×20×6(mm)](焼結体)を形成した。そして、図9(浸漬前)に示すように、アルミナ坩堝にアルミナ棒を配設し、その上に前記試験片を配置し、更にその上にアルミニウム合金塊[「ADC12」、組成(質量%);Si:11.28、Cu:1.99、Fe:0.89、Mn:0.3、Mg:0.26、Al:残り]を配置した。尚、この際における、試験片と、アルミニウム合金塊との体積比(アルミニウム合金塊/試験片)は、50である。
その後、300cc/分のAr気流中において、5℃/分で720℃まで昇温し、その温度を100時間保持することによって加熱処理を行い、アルミニウム合金塊を溶融させて、試験片である焼結体の底面以外の表面を溶融アルミニウム合金と接触させた。次いで、5℃/分で25℃まで降温し、溶融アルミニウム合金を凝固させた。
【0037】
その後、アルミニウム合金が付着した状態で試験片を切断し[図9(浸漬後)参照]、切断面を鏡面仕上げして、腐食層の状態を電子顕微鏡とエネルギー分散型分光法を用いて分析した。また、試験片に固着したアルミニムを10%NaOH溶液浸漬により除去して、試験片の腐食具合を目視及びX線回折分析により評価した。
そして、実験例1〜3の各焼結体(試験片)における浸漬後の状態(電子顕微鏡により観察)を、それぞれ、図10〜図12に示す。尚、図10〜図12における各試験片の周囲の変色した層が腐食部分を示している。
また、腐食層表面の結晶相をX線回折により同定した結果、MgAl2O4であることが判明した。そして、腐食層断面をエネルギー分散型分光法にて分析した結果、この変色した層がMgAl2O4の生成領域に相当することを確認した。このMgAl2O4の生成は、チタン酸アルミニウムが溶融アルミニウム合金中のMgと反応したものと考えられる[下記反応(1)参照]。
2Al2TiO5+2Mg(液体)→2MgAl2O4+2Ti+O2 (1)
また、溶融アルミニウム合金と接触していない面においても腐食が進行していた。これは、下記反応(2)が気相部を介して進行したものと考えられる。
2Al2TiO5+2Mg(気体)→2MgAl2O4+2Ti+O2 (2)
【0038】
[5]各実験例の評価
溶融アルミニウム合金の溶湯温度(720℃)よりも粒界き裂発生温度の高い部分が存在し、溶湯中において粒界き裂が開口した状態となる実験例2の焼結体(粒界き裂発生温度;約700℃、約950℃、表2参照)では、図11に示すように、腐食層が形成されており、十分な耐食性を備えているとは言えなかった。
また、溶融アルミニウム合金の溶湯温度(720℃)よりも粒界き裂発生温度の高い部分が存在し、溶湯中において粒界き裂が開口した状態となる実験例3の焼結体(粒界き裂発生温度;約700℃、約950℃、表2参照)では、図12に示すように、腐食された面積が大きく(腐食層が厚く)、耐食性に劣っていた。
このように、より高温まで粒界き裂の多くが開口した状態にある実験例3の方が、腐食された面積が大きくなっており、粒界き裂の空隙を介して前述の反応(2)がより進行したものと考えられる。
一方、溶融アルミニウム合金の溶湯温度(720℃)よりも粒界き裂発生温度が低く、溶湯中において粒界き裂が閉塞した状態となる実験例1の焼結体(粒界き裂発生温度;約500℃、表2参照)は、図10から明らかなように、腐食層がほとんど確認できず(腐食面積が少なく)、優れた耐食性を備えていた。
【0039】
以上の結果から、溶融アルミニウム合金中において、チタン酸アルミニウム焼結体の粒界き裂が閉塞した状態となっている場合には、溶融アルミニウム合金に対して優れた耐食性を得られることが分かった。
【0040】
また、実験例1〜3における各粒界き裂発生温度を図1[粒界き裂発生温度(Tmc)と、破壊臨界粒径(Gcr)との関係を示す図]に反映させたものを図13に示した。この図13によれば、粒界き裂発生温度と結晶粒径(長径)との関係が、表1に示す長径と表2に示す粒界き裂発生温度の実測値との関係に近く、耐食性に優れるチタン酸アルミニウム焼結体における最適な結晶粒径を予測できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のチタン酸アルミニウム焼結体は、切削加工が行いやすく、耐熱衝撃性及び断熱性に優れるとともに、溶融アルミニウム合金に対する耐食性に優れているため、アルミニウム合金の鋳造プロセスにおいて用いられるアルミニウム合金鋳造用耐火物等として好適に用いることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸アルミニウム焼結体及びアルミニウム合金鋳造用耐火物に関する。更に詳しくは、アルミニウム合金の溶湯に対する耐食性に優れるチタン酸アルミニウム焼結体、及びそれを用いたアルミニウム合金鋳造用耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アルミニウム合金等の鋳造プロセスにおいて用いられるラドル等の鋳造用耐火物の材質には、一般的に鋳鉄が使用されていた。
しかしながら、鋳鉄製の耐火物は、アルミニウム合金溶湯との接触回数が増大するにつれて、溶湯に対する非濡れ性が大きく低下してしまい、耐火物の表面にアルミニウム合金の固着等による腐食が生じる等の不具合があり、問題となっていた。
【0003】
そのため、近年では、アルミニウム合金溶湯に対する耐食性が鋳鉄よりも優れるチタン酸アルミニウム焼結体(Al2TiO5)やサイアロン焼結体等のセラミックスの適用が検討されつつある(特許文献1参照)。
このチタン酸アルミニウム焼結体は熱膨張係数の大きな異方性を有するものであり、製造プロセスにおける焼成後の冷却過程で発生する熱応力によって、結晶粒界に多数の粒界き裂(マイクロクラック)が形成されている。そして、チタン酸アルミニウム焼結体の結晶粒子が加熱によって熱膨張しても、その膨張は多数の粒界き裂の閉塞によって吸収されるため、また、冷却によって熱収縮しても、その収縮が粒界き裂の開口によって吸収されるため、見掛け上の熱膨張係数が小さくなる。そのため、チタン酸アルミニウム焼結体は耐熱衝撃性や断熱性に優れる。また、粒界き裂の存在により、外部からの衝撃に対しても容易に変形し、その衝撃エネルギーを吸収することが可能となるため、耐衝撃性にも優れている。更には、チタン酸アルミニウム焼結体は、純アルミニウムの溶湯中において、焼結体の構成成分であるチタン(Ti)成分が還元・溶解し、焼結体表面にAl2O3層が自己形成されるため、優れた非濡れ性が発現する。
このような観点から、チタン酸アルミニウム焼結体は、アルミニウム合金等の鋳造プロセスにおいて用いられる鋳造用耐火物の材質として有望視されている。
【0004】
しかしながら、前記チタン酸アルミニウム焼結体の耐食性は、鋳鉄よりも優れているとはいえ、アルミニウム合金等の鋳造プロセスにおいて用いられる鋳造用耐火物としては、未だ十分に満足できるものではない。
また、チタン酸アルミニウム焼結体における溶融アルミニウム合金との接触による腐食機構は完全に解明されておらず、未だに不明な点が多く、焼結体の強度を向上させるために添加する焼結助剤の存在が耐食性を低下させる一因となっている等の報告もある。
そのため、アルミニウム合金等の鋳造分野においては、より耐食性に優れたチタン酸アルミニウム焼結体が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−139369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、溶融アルミニウム合金に対する耐食性に優れるチタン酸アルミニウム焼結体、及びそれを用いたアルミニウム合金鋳造用耐火物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、チタン酸アルミニウム焼結体の溶融アルミニウム合金に対する耐食性の向上について鋭意検討した結果、チタン酸アルミニウム焼結体に特有のものである温度と結晶粒径に依存する粒界き裂の開閉現象が、溶融アルミニウム合金中におけるチタン酸アルミニウム焼結体の腐食機構に影響していることを見出した。更に、この腐食機構を解析した結果、溶融アルミニウム合金と直接接触した部位のみならず、溶融アルミニウム合金とチタン酸アルミニウム焼結体との空隙(ガス相)を介しても腐食が進行することを解明し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は以下の通りである。
[1]アルミニウム合金の溶湯中において、粒界き裂が閉塞した状態であることを特徴とするチタン酸アルミニウム焼結体。
[2]チタン酸アルミニウム焼結体の結晶粒径が15μm以下である前記[1]に記載のチタン酸アルミニウム焼結体。
[3]前記アルミニウム合金の溶湯温度以上の温度から降温させた際における、チタン酸アルミニウム焼結体の粒界き裂の発生温度が、前記アルミニウ合金の凝固開始温度以下である前記[1]又は[2]に記載のチタン酸アルミニウム焼結体。
[4]前記[1]乃至[3]のいずれかに記載のチタン酸アルミニウム焼結体を用いることを特徴とするアルミニウム合金鋳造用耐火物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のチタン酸アルミニウム焼結体は、アルミニウム合金溶湯(溶融アルミニウム合金)中において、粒界き裂が閉塞した状態となっているため、溶融アルミニウム合金に対して優れた耐食性を発現し、腐食の進行を十分に抑制することができる。
また、チタン酸アルミニウム焼結体の結晶粒径が15μm以下である場合、溶融アルミニウム合金に対する耐食性が十分に得られる。
更に、チタン酸アルミニウム焼結体の粒界き裂の発生温度が、アルミニウ合金の凝固開始温度以下である場合、溶融アルミニウム合金に対する耐食性がより確実に得られる。
本発明のアルミニウム合金鋳造用耐火物は、特定のチタン酸アルミニウム焼結体を用いて得られるため、溶融アルミニウム合金に対する耐食性に非常に優れている。そのため、アルミニウム合金等の鋳造プロセスにおいて治工具等として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】粒界き裂発生温度(Tmc)と、破壊臨界粒径(Gcr)との関係を示す図である。
【図2】電子顕微鏡写真による実験例1の微細組織の説明図である。
【図3】実験例1における結晶粒径の面積率を示すグラフである。
【図4】光学顕微鏡写真による実験例2の微細組織の説明図である。
【図5】実験例2における結晶粒径の面積率を示すグラフである。
【図6】光学顕微鏡写真による実験例3の微細組織の説明図である。
【図7】実験例3における結晶粒径の面積率を示すグラフである。
【図8】温度と線膨張の関連を説明するグラフである。
【図9】耐食性の試験方法の説明図である。
【図10】実験例1の焼結体(浸漬後)の説明図である。
【図11】実験例2の焼結体(浸漬後)の説明図である。
【図12】実験例3の焼結体(浸漬後)の説明図である。
【図13】粒界き裂発生温度(Tmc)と、破壊臨界粒径(Gcr)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を具体的に説明する。
[1]チタン酸アルミニウム焼結体
本発明のチタン酸アルミニウム焼結体は、チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)を主体とするセラミックスであって、その結晶粒界には、焼結体製造プロセスにおける焼成後の冷却過程(降温過程)で発生する熱応力によって多数の粒界き裂(マイクロクラック)が形成されている。この粒界き裂は、焼結体における結晶の熱膨張により開閉するものであり、具体的には、粒界き裂は昇温に伴って閉塞し、降温に伴って開口する。
このような粒界き裂を結晶粒界に備えるチタン酸アルミニウム焼結体は、加熱時における結晶粒子の熱膨張が粒界き裂の閉塞によって吸収されるため、また、冷却によって熱収縮しても、その収縮が粒界き裂の開口によって吸収されるため、焼結体の見掛け上の熱膨張係数が小さくなるという特有の性質を有しており、その結果、優れた耐熱衝撃性や断熱性を発現する。
【0012】
前記チタン酸アルミニウム焼結体は、アルミニウム合金の溶湯中においては、粒界き裂が閉塞した状態をとるものである。即ち、本発明における焼結体は、一般的な鋳造プロセスにおいて用いられるアルミニウム合金溶湯の温度範囲(通常、660〜740℃)においては、粒界き裂が閉塞していることを意味する。
本発明において、結晶の粒界き裂が閉塞状態か開口状態であるかは、アルミニウム合金の溶湯温度以上であり且つチタン酸アルミニウム焼結体の焼成温度(通常、1400〜1600℃)以下の温度から降温させた際(具体的には、焼結体を約1000℃まで昇温した後に、約25〜100℃まで降温させた際)における、アコースティックエミッション(AE)センサーにて検出される粒界き裂発生音の最大ピーク検出時の温度(粒界き裂発生温度)を境に区別するものとする。即ち、本発明では、上述の条件下において、粒界き裂発生音の最大ピークが検出されるまで(検出時を含まない)が粒界き裂閉塞状態であり、最大ピーク検出時以降が粒界き裂開口状態である。
尚、前記アルミニウム合金の溶湯温度については、後段にて詳細を説明する。また、前記粒界き裂発生音の測定は、実施例に記載の方法と同様にして行うことができる。
【0013】
このようなチタン酸アルミニウム焼結体の結晶粒径は、15μm以下であることが好ましく、より好ましくは2〜15μm、更に好ましくは3〜10μm、特に好ましくは4〜6μmである。この結晶粒径が15μmを超える場合、溶融アルミニウム合金中において、粒界き裂が閉塞した状態とならないおそれがある。一方、この結晶粒径が小さ過ぎる場合、高温域から室温(約25℃)に冷却されても粒界き裂が形成されず、十分な耐熱衝撃性が得られないおそれがある。尚、ここでいう「結晶粒径」とは、チタン酸アルミニウム焼結体の結晶における長径の平均粒子径D50を意味する。
また、チタン酸アルミニウム焼結体における結晶のアスペクト比(長径の平均粒子径D50/短径の平均粒子径D50)は、1.3〜2.0であることが好ましく、より好ましくは1.5〜1.8、更に好ましくは1.6〜1.8である。
長径及び短径の各平均粒子径D50は、実施例に記載の方法と同様にして行うことができる。
【0014】
尚、本発明におけるチタン酸アルミニウム焼結体の結晶粒径は、焼結体製造時の焼成条件等(例えば、焼成温度、焼成時間、焼結助剤の種類や添加量、原料粉末の粒子径)により調節することができる。
【0015】
また、チタン酸アルミニウム焼結体の相対密度は、80〜98%であることが好ましく、より好ましくは85〜96%、更に好ましくは88〜94%である。
【0016】
本発明におけるチタン酸アルミニウム焼結体には、アルミニウム(Al)及びチタン(Ti)以外にも、焼結助剤等に由来する他の金属元素等が含まれていてもよい。具体的な他の元素としては、例えば、Si、Ca、Nb等が挙げられる。
【0017】
前記チタン酸アルミニウム焼結体に含有される各元素の含有量(酸化物換算)の合計を100質量%とした場合、チタン(TiO2換算)及びアルミニウム(Al2O3換算)の含有量の合計は、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは85〜99.9質量%、更に好ましくは90〜99.9質量%である。
更に、チタン(TiO2換算)及びアルミニウム(Al2O3換算)の含有割合は質量比(TiO2:Al2O3)で、40〜50:50〜60であることが好ましく、より好ましくは42〜44:56〜58である。
【0018】
また、本発明におけるチタン酸アルミニウム焼結体は、前述の粒界き裂発生温度が、アルミニウム合金の凝固開始温度以下であることが好ましく、より好ましくは凝固開始温度以下であり且つ室温(約25℃)以上、更に好ましくは溶融開始温度以下である。具体的には、100〜550℃であることが好ましく、特に100〜510℃であることが好ましい。この温度が上述の範囲内である場合、十分な耐食性が得られる。特に、この温度がアルミニウム合金の凝固開始温度以下である場合には、溶融前のアルミニウム合金と焼結体とが同時に加熱されても、アルミニウム合金が完全に溶融状態となり、一般的な処理温度(溶湯温度)まで加熱される前に、焼結体の粒界き裂が閉塞状態となるため、より優れた耐食性を得ることができる。尚、この粒界き裂発生温度は、例えば、下記式により推定することもできる[Ohya et al,J.Amer.Ceram.Soc.,70,C184(1987)参照]。
【0019】
【数1】
Tmc;粒界き裂発生温度(℃)
T0;焼結体固化温度(frozen温度)(℃)
k;定数(14.4)
E;弾性率(200GPa)
Δα;チタン酸アルミニウム焼結体結晶の熱膨張係数差(22×10−6K−1)
γf;破壊エネルギー(22J/m2)
Gcr;破壊臨界粒径(長径)(μm)
【0020】
ここで、前記式における焼結体固化温度(T0)は、チタン酸アルミニウム焼結体を固相焼結により得る場合、通常1000〜1300℃であることが知られているため、この温度範囲における粒界き裂発生温度(Tmc)と、破壊臨界粒径(Gcr)との関係を求めて、図1に示した。
この図1においては、各直線上の座標が粒界き裂を発生する温度と粒径を示し、各直線よりも右上の領域が粒界き裂の閉塞状態を示し、左下の領域が粒界き裂の開口状態を示している。
【0021】
また、前記アルミニウム合金の種類は特に限定されず、一般的なアルミニウム合金の鋳造プロセスにおいて用いられているものを挙げることができる。例えば、アルミニウム(Al)と、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)、銅(Cu)及びニッケル(Ni)、鉄(Fe)及びスズ(Sn)等から選ばれる少なくも1種の金属との合金が挙げられる。具体的には、一般用アルミニウム合金ダイカスト、特殊用アルミニウム合金ダイカスト等が挙げられる。
【0022】
前記一般用アルミニウム合金ダイカスト(JIS記号)としては、ADC10(凝固開始温度;約537〜593℃)、ADC10Z(凝固開始温度;約537〜593℃)、ADC12(凝固開始温度;約515〜582℃)、ADC12Z(凝固開始温度;約515〜582℃)が挙げられる。
前記特殊用アルミニウム合金ダイカスト(JIS記号)としては、ADC1(凝固開始温度;約573〜582℃)、ADC3(凝固開始温度;約557〜596℃)、ADC5(凝固開始温度;約534〜639℃)、ADC6(凝固開始温度;約598〜640℃)、ADC14(凝固開始温度;約507〜648℃)が挙げられる。
尚、凝固開始温度は、冷却時の溶湯の温度変化を熱電対で計測することにより測定することができる。
【0023】
前記アルミニウム合金の溶湯の温度は、一般的なアルミニウム合金の鋳造プロセスにおいて設定される温度とすることができる。通常、この温度は660〜740℃であり、特に680〜720℃、更には690〜710℃とすることができる。
【0024】
[2]アルミニウム焼結体の製造方法
本発明のチタン酸アルミニウム焼結体を製造する方法は特に限定されないが、例えば、原料粉末にチタン酸アルミニウム(Al2TiO5)粉末を用いて、平均粒子径を調節した調整粉末を作製し、その調整粉末を用いて所望形状の加圧成形体を作製し、得られた成形体を焼成することにより製造することができる。尚、原料粉末としては、チタン酸アルミニウム粉末の代わりに、アルミナ(Al2O3)粉末及びチタニア(TiO2)粉末を用いてもよい。また、前記調整粉末は、市販品を用いてもよい。更に、焼結体の製造には、公知の焼結助剤を用いてもよい。
【0025】
前記調整粉末の平均粒子径は、0.1〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜3μmである。
尚、ここでいう平均粒子径とは、平均粒子径D50を意味する。また、この平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定することができる。
【0026】
前記成形体を焼成する際の焼成条件は、得られる焼結体の結晶粒径が所定の範囲となる限り限定されない。
焼成温度は、例えば、1400〜1600℃であることが好ましく、より好ましくは1450〜1550℃である。
また、焼成時間は、例えば、0.5〜5時間であることが好ましく、より好ましくは1〜2時間である。
更に、焼成雰囲気は、例えば、大気雰囲気下等とすることができる。
【0027】
[3]アルミニウム合金鋳造用耐火物
本発明のアルミニウム合金鋳造用耐火物は、前述のチタン酸アルミニウム焼結体を用いることを特徴とする。
前記アルミニウム合金鋳造用耐火物としては、例えば、ラドル、ストーク、樋、管路、溶湯搬送容器、湯だまり等の鋳造用治工具が挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。ここで、部は、特記しない限り質量基準である。
【0029】
[1]チタン酸アルミニウ焼結体の製造
<実験例1>
チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)の原料粉末として、丸ス釉薬合資会社製の「WTA(Lot.080717)」[平均粒子径D50;37μm、ICP分析による化学組成(酸化物換算、単位:質量%);Al2O3:57.45、TiO2:42.2、Nb2O5:0.06、SiO2:0.22、Ca0:0.07]を使用した。そして、この原料粉末をアルミナ乳鉢にて粉砕した後、目開き100μmの篩いに通した。次いで、得られた粉末300gと、エタノール400mLと、直径3mmのアルミナボール(1.25kg)とを用いて、70rpm×96時間の条件にて、ボールミル混合を行った。その後、75℃の条件にて振動流動乾燥を行い、得られた粉末をアルミナ乳鉢にて粉砕した後、目開き48μmの篩いを通すことにより、調整粉末[平均粒子径D50;2.2μm、ICP分析による化学組成(酸化物換算、単位:質量%);Al2O3:57.79、TiO2:41.8、Nb2O5:0.17、SiO2:0.17、Ca0:0.07]を得た。
次いで、得られた調整粉末を、金型[寸法;45×90(mm)]を用いて40MPaの圧力で一軸加圧成形し、更に、6tの圧力で冷間静水圧プレス(CIP)を行って、成形体を得た。
その後、得られた成形体を、前記調整粉末の製造に用いた原料粉末中に埋めた状態で、大気下にて、5℃/分で1450℃まで昇温し、その温度を1時間保持することによって焼成した。次いで、5℃/分で800℃まで降温し、800℃から25℃までは、2℃/分で降温することによって、実験例1のチタン酸アルミニウム焼結体を製造した。
【0030】
<実験例2>
実験例1で得られた調整粉末を、金型[寸法;45×90(mm)]を用いて40MPaの圧力で一軸加圧成形し、更に、6tの圧力で冷間静水圧プレス(CIP)を行って、成形体を得た。
その後、得られた成形体を、前記調整粉末の製造に用いた原料粉末中に埋めた状態で、大気下にて、5℃/分で1550℃まで昇温し、その温度を5時間保持することによって焼成した。次いで、5℃/分で800℃まで降温し、800℃から25℃までは、2℃/分で降温することによって、実験例2のチタン酸アルミニウム焼結体を製造した。
【0031】
<実験例3>
実験例1で得られた調整粉末を、金型[寸法;45×90(mm)]を用いて40MPaの圧力で一軸加圧成形し、更に、6tの圧力で冷間静水圧プレス(CIP)を行って、成形体を得た。
その後、得られた成形体を、前記調整粉末の製造に用いた原料粉末中に埋めた状態で、大気下にて、5℃/分で1550℃まで昇温し、その温度を10時間保持することによって焼成した。次いで、5℃/分で800℃まで降温し、800℃から25℃までは、2℃/分で降温することによって、実験例3のチタン酸アルミニウム焼結体を製造した。
【0032】
[2]チタン酸アルミニウム焼結体における微細組織の観察
実験例1〜3の各チタン酸アルミニウム焼結体における微細組織を、電子顕微鏡及び光学顕微鏡を用いることにより確認した。また、組織写真を基に画像解析処理を行い、結晶粒径(長径の平均粒子径D50)、及び、結晶のアスペクト比(長径の平均粒子径D50/短径の平均粒子径D50)を測定した。更に、焼結体を切削加工により、10×10×厚さ3mmに切り出し、質量を計測することで、相対密度を測定した。その結果を表1に示す。
また、実験例1の電子顕微鏡写真による微細組織の説明図を図2に示し、実験例1における結晶粒径の面積率を示すグラフを図3に示す。また、実験例2の光学顕微鏡写真による微細組織の説明図を図4に示し、実験例2における結晶粒径の面積率を示すグラフを図5に示す。更に、実験例3の光学顕微鏡写真による微細組織の説明図を図6に示し、実験例3における結晶粒径の面積率を示すグラフを図7に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
[3]チタン酸アルミニウ焼結体における熱膨張(線膨張)の温度依存性、及び粒界き裂の温度依存性について
(線膨張の測定)
実験例1〜3の各チタン酸アルミニウム焼結体を切削加工により、幅4×厚さ3×長さ20mmの試験片に切り出した後、大気中において温度範囲約30〜1000℃(昇温時及び降温時)の線膨張(%)の変化を、プッシュロッド式熱膨張計を用いて、昇温速度及び降温速度を5℃/分にて測定し、その相関を図8に示した。
(粒界き裂発生温度の測定)
また、各チタン酸アルミニウム焼結体を切削加工により、10×10×厚さ7mmの試験片に切り出した後、炉に設置し、試験片上部(10×10mm面)にアルミナ棒を押しあて、もう一方の棒の端部を炉外に設置したAEセンサーに取り付ける。その後、大気中において1000℃まで昇温した後、降温時(5℃/分の降温速度)の粒界き裂発生音の最大ピーク検出時の温度(粒界き裂発生温度)を測定した。試験片から発生する粒界き裂発生音は、アルミナ棒を介してAEセンサーに伝達される。その結果を表2に示す。また、それらのピークを図8に併記した。
尚、実験例2及び3においては、ピークが2つ[ピーク(b)及び(c)]あるが、低温側にあるピーク(b)は、結晶粒径(長径)が小さな領域(特に、粒径;約30μm以下)に関するピークであり、高温側にあるピーク(c)は、結晶粒径が大きな領域(特に長径;約30μm超え)に関するピークである。実験例2のピーク(b)と実験例3のピーク(b)とを比較すると、実験例2のピーク(b)の方が大きく、実験例2のピーク(c)と実験例3のピーク(c)とを比較すると、実験例3のピーク(c)の方が大きい。即ち、実験例3は実験例2よりも、より高温まで粒界き裂の多くが開口した状態で存在する。
【0035】
【表2】
【0036】
[4]チタン酸アルミニウム焼結体の耐食性について
実験例1〜3の各チタン酸アルミニウム焼結体を切削加工し、試験片[寸法;10×20×6(mm)](焼結体)を形成した。そして、図9(浸漬前)に示すように、アルミナ坩堝にアルミナ棒を配設し、その上に前記試験片を配置し、更にその上にアルミニウム合金塊[「ADC12」、組成(質量%);Si:11.28、Cu:1.99、Fe:0.89、Mn:0.3、Mg:0.26、Al:残り]を配置した。尚、この際における、試験片と、アルミニウム合金塊との体積比(アルミニウム合金塊/試験片)は、50である。
その後、300cc/分のAr気流中において、5℃/分で720℃まで昇温し、その温度を100時間保持することによって加熱処理を行い、アルミニウム合金塊を溶融させて、試験片である焼結体の底面以外の表面を溶融アルミニウム合金と接触させた。次いで、5℃/分で25℃まで降温し、溶融アルミニウム合金を凝固させた。
【0037】
その後、アルミニウム合金が付着した状態で試験片を切断し[図9(浸漬後)参照]、切断面を鏡面仕上げして、腐食層の状態を電子顕微鏡とエネルギー分散型分光法を用いて分析した。また、試験片に固着したアルミニムを10%NaOH溶液浸漬により除去して、試験片の腐食具合を目視及びX線回折分析により評価した。
そして、実験例1〜3の各焼結体(試験片)における浸漬後の状態(電子顕微鏡により観察)を、それぞれ、図10〜図12に示す。尚、図10〜図12における各試験片の周囲の変色した層が腐食部分を示している。
また、腐食層表面の結晶相をX線回折により同定した結果、MgAl2O4であることが判明した。そして、腐食層断面をエネルギー分散型分光法にて分析した結果、この変色した層がMgAl2O4の生成領域に相当することを確認した。このMgAl2O4の生成は、チタン酸アルミニウムが溶融アルミニウム合金中のMgと反応したものと考えられる[下記反応(1)参照]。
2Al2TiO5+2Mg(液体)→2MgAl2O4+2Ti+O2 (1)
また、溶融アルミニウム合金と接触していない面においても腐食が進行していた。これは、下記反応(2)が気相部を介して進行したものと考えられる。
2Al2TiO5+2Mg(気体)→2MgAl2O4+2Ti+O2 (2)
【0038】
[5]各実験例の評価
溶融アルミニウム合金の溶湯温度(720℃)よりも粒界き裂発生温度の高い部分が存在し、溶湯中において粒界き裂が開口した状態となる実験例2の焼結体(粒界き裂発生温度;約700℃、約950℃、表2参照)では、図11に示すように、腐食層が形成されており、十分な耐食性を備えているとは言えなかった。
また、溶融アルミニウム合金の溶湯温度(720℃)よりも粒界き裂発生温度の高い部分が存在し、溶湯中において粒界き裂が開口した状態となる実験例3の焼結体(粒界き裂発生温度;約700℃、約950℃、表2参照)では、図12に示すように、腐食された面積が大きく(腐食層が厚く)、耐食性に劣っていた。
このように、より高温まで粒界き裂の多くが開口した状態にある実験例3の方が、腐食された面積が大きくなっており、粒界き裂の空隙を介して前述の反応(2)がより進行したものと考えられる。
一方、溶融アルミニウム合金の溶湯温度(720℃)よりも粒界き裂発生温度が低く、溶湯中において粒界き裂が閉塞した状態となる実験例1の焼結体(粒界き裂発生温度;約500℃、表2参照)は、図10から明らかなように、腐食層がほとんど確認できず(腐食面積が少なく)、優れた耐食性を備えていた。
【0039】
以上の結果から、溶融アルミニウム合金中において、チタン酸アルミニウム焼結体の粒界き裂が閉塞した状態となっている場合には、溶融アルミニウム合金に対して優れた耐食性を得られることが分かった。
【0040】
また、実験例1〜3における各粒界き裂発生温度を図1[粒界き裂発生温度(Tmc)と、破壊臨界粒径(Gcr)との関係を示す図]に反映させたものを図13に示した。この図13によれば、粒界き裂発生温度と結晶粒径(長径)との関係が、表1に示す長径と表2に示す粒界き裂発生温度の実測値との関係に近く、耐食性に優れるチタン酸アルミニウム焼結体における最適な結晶粒径を予測できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のチタン酸アルミニウム焼結体は、切削加工が行いやすく、耐熱衝撃性及び断熱性に優れるとともに、溶融アルミニウム合金に対する耐食性に優れているため、アルミニウム合金の鋳造プロセスにおいて用いられるアルミニウム合金鋳造用耐火物等として好適に用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金の溶湯中において、粒界き裂が閉塞した状態であることを特徴とするチタン酸アルミニウム焼結体。
【請求項2】
チタン酸アルミニウム焼結体の結晶粒径が15μm以下である請求項1に記載のチタン酸アルミニウム焼結体。
【請求項3】
前記アルミニウム合金の溶湯温度以上の温度から降温させた際における、チタン酸アルミニウム焼結体の粒界き裂の発生温度が、前記アルミニウ合金の凝固開始温度以下である請求項1又は2に記載のチタン酸アルミニウム焼結体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のチタン酸アルミニウム焼結体を用いることを特徴とするアルミニウム合金鋳造用耐火物。
【請求項1】
アルミニウム合金の溶湯中において、粒界き裂が閉塞した状態であることを特徴とするチタン酸アルミニウム焼結体。
【請求項2】
チタン酸アルミニウム焼結体の結晶粒径が15μm以下である請求項1に記載のチタン酸アルミニウム焼結体。
【請求項3】
前記アルミニウム合金の溶湯温度以上の温度から降温させた際における、チタン酸アルミニウム焼結体の粒界き裂の発生温度が、前記アルミニウ合金の凝固開始温度以下である請求項1又は2に記載のチタン酸アルミニウム焼結体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のチタン酸アルミニウム焼結体を用いることを特徴とするアルミニウム合金鋳造用耐火物。
【図1】
【図3】
【図5】
【図7】
【図8】
【図13】
【図2】
【図4】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図5】
【図7】
【図8】
【図13】
【図2】
【図4】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−215416(P2010−215416A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60297(P2009−60297)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、委託研究(知的クラスター創成事業(第二期):Al鋳造システム部材の開発)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000173522)財団法人ファインセラミックスセンター (147)
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、委託研究(知的クラスター創成事業(第二期):Al鋳造システム部材の開発)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000173522)財団法人ファインセラミックスセンター (147)
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【Fターム(参考)】
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