説明

チタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法

【課題】熱膨張係数の小さなチタン酸アルミニウム系セラミックスを製造し得る新たな方法を提供すること。
【解決手段】チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末およびケイ素源粉末を含む原材料混合物を焼成するチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法であって、前記ケイ素源粉末の体積基準での累積百分率50%相当粒子径(D50)が5μm以下であることを特徴とするチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法。また、前記原材料混合物が、さらにマグネシウム源粉末を含むチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸アルミニウム系セラミックスは、構成元素としてチタンおよびアルミニウムを含み、X線回折スペクトルにおいて、チタン酸アルミニウムの結晶パターンを有するセラミックスであって、耐熱性に優れたセラミックスとして知られており、従来からルツボのような焼結用の冶具などとして用いられてきたが、近年では、ディーゼルエンジンなどの内燃機関から排出される排ガスに含まれる微細なカーボン粒子を捕集するためのセラミックスフィルターを構成する材料として、産業上の利用価値が高まっている。
【0003】
かかるチタン酸アルミニウム系セラミックスとしては、チタニアなどのチタニウム源化合物の粉末およびアルミナなどのアルミニウム源化合物の粉末を含む原材料混合物を焼成する方法が知られており、上記のような用途での使用に耐えうるために熱膨張係数の小さなものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/105704号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、熱膨張係数の小さなチタン酸アルミニウム系セラミックスを製造し得る新たな方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末およびケイ素源粉末を含む原材料混合物を焼成するチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法であって、
前記ケイ素源粉末の体積基準での累積百分率50%相当粒子径(D50)が5μm以下であることを特徴とするチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法である。
【0007】
本発明においては、前記原材料混合物が、さらにマグネシウム源粉末を含むことが好ましい。また、前記焼成の温度は、1300〜1650℃であることが好ましい。
【0008】
前記ケイ素源粉末の体積基準での累積百分率90%相当粒子径(D90)が18μm以下であることがより好ましく、前記ケイ素源粉末がガラスフリットであることが好ましい。
【0009】
また、前記チタニウム源粉末の体積基準での累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.1〜20μmであることが好ましく、前記アルミニウム源粉末の体積基準での累積百分率50%相当粒子径(D50)が1〜100μmであることが好ましい。マグネシウム源粉末を使用する場合は、前記マグネシウム源粉末の体積基準での累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.5〜20μmであることが好ましい。
【0010】
本発明の製造方法においては、原材料混合物中に含まれるチタニア(TiO2)換算の
チタニウム源粉末の使用量およびアルミナ(Al23)換算のアルミニウム源粉末の使用量の合計量100質量部に対して、チタニア換算のチタニウム源粉末の使用量は30〜70質量部であり、アルミナ換算のアルミニウム源粉末の使用量は30質量部〜70質量部であり、かつ、シリカ(SiO)換算のケイ素源粉末の使用量は、0.1質量部〜20質量部であることが好ましい。また、原材料混合物にマグネシウム源粉末が含まれる場合は、チタニア(TiO2)換算のチタニウム源粉末の使用量とアルミナ(Al23)換算のアルミニウム源粉末の使用量との合計量100質量部に対して、マグネシア(MgO)換算のマグネシウム源粉末の使用量は0.1質量部〜10質量部であることが好ましい。
【0011】
本発明の製造方法においては、さらに、原材料混合物の焼成後に得られたチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成物を解砕する工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末およびガラスフリット等のケイ素源粉末を含む原材料混合物を用いて、熱膨張係数の小さなチタン酸アルミニウム系セラミックスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明においてケイ素源粉末として用いるガラスフリットの二次粒子径(D50)と本発明により得られたチタン酸アルミニウム系セラミックスの熱膨張係数との関係を示すグラフである。
【図2】本発明においてケイ素源粉末として用いるガラスフリットの二次粒子径(D90)と本発明により得られたチタン酸アルミニウム系セラミックスの熱膨張係数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(原材料混合物)
本発明で用いられる原材料混合物は、原材料粉末であるチタニウム源粉末、アルミニウム源粉末およびケイ素源粉末を含む混合物であり、さらにマグネシウム源粉末を含むことが好ましい。なお、本発明では、前記マグネシアスピネル(MgAl24)などの複合酸化物のように、チタニウム源化合物、アルミニウム源化合物およびマグネシウム源化合物のうち2つ以上の金属元素を成分とする化合物の粉末を含む混合物も、それぞれの金属源粉末を混合した原材料混合物に含まれるものとする。また、原材料混合物にはチタン酸アルミニウムやチタン酸アルミニウムマグネシウム自体が含まれていてもよく、例えば、原材料混合物としてチタン酸アルミニウムマグネシウムを使用する場合、チタニウム源化合物、アルミニウム源化合物およびマグネシウム源化合物を兼ね備えた原材料混合物に相当するものとする。
【0015】
(チタニウム源粉末)
本発明に用いられるチタニウム源粉末は、チタンを含有し焼成によりチタン酸アルミニウム系セラミックスを合成できる粉末であれば特に限定されないが、好ましくは酸化チタンの粉末である。酸化チタンとしては、例えば、酸化チタン(IV)、酸化チタン(III)、酸化チタン(II)などが挙げられ、酸化チタン(IV)が好ましく用いられる。酸化チタン(IV)の結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などが挙げられ、アモルファスであってもよく、より好ましくはアナターゼ型、ルチル型である。
【0016】
チタニウム源粉末としては、これを空気中で焼成することによりチタニア(酸化チタン)に導かれる化合物の粉末を用いることもできる。かかる化合物としては、例えばチタニウム塩、チタニウムアルコキシド、水酸化チタニウム、窒化チタン、硫化チタン、チタン金属などが挙げられる。チタニウム塩として具体的には、三塩化チタン、四塩化チタン、硫化チタン(IV)、硫化チタン(VI)、硫酸チタン(IV)などが挙げられる。チタニウムアルコキシドとして具体的には、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)t−ブトキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)n−プロポキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、および、これらのキレート化物などが挙げられる。
【0017】
チタニウム源粉末としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なお、チタニウム源粉末は、その原料由来あるいは製造工程で混入する不可避的不純物を含むものであってもよい。
【0018】
チタニウム源粉末の粒径は、特に限定されるものではないが、他の粉末と混合される前の体積基準での累積百分率50%相当粒子径(D50)が好ましくは0.1〜20μmであり、さらに好ましくは0.1〜10μm、最も好ましくは0.1〜1μmである。また、体積基準での累積百分率90%相当粒子径(D90)は、好ましくは0.1〜20μmであり、さらに好ましくは0.1〜10μm、最も好ましくは0.2〜1.5μmである。
【0019】
(アルミニウム源粉末)
本発明で用いられるアルミニウム源粉末は、アルミニウムを含有し焼成によりチタン酸アルミニウム系セラミックスを合成できる粉末であれば特に限定されないが、好ましくはアルミナである。アルミナの結晶型としては、γ型、δ型、θ型、α型などが挙げられ、アモルファスであってもよいが、好ましくはα型である。
【0020】
アルミニウム源粉末としては、空気中で焼成することによりアルミナに導かれる化合物の粉末を用いることもできる。かかる化合物としては、例えばアルミニウム塩、アルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、金属アルミニウムなどが挙げられる。
【0021】
アルミニウム源粉末としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なお、アルミニウム源粉末は、その原料由来あるいは製造工程で混入する不可避的不純物を含むものであってもよい。
【0022】
アルミニウム塩は、無機酸との無機塩であってもよいし、有機酸との有機塩であってもよい。無機塩としては、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム硝酸塩、炭酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム炭酸塩などが挙げられる。有機塩としては、蓚酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0023】
アルミニウムアルコキシドとしては、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシドなどが挙げられる。
【0024】
水酸化アルミニウムの結晶型としては、例えば、ギブサイト型、バイヤライト型、ノロソトランダイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。アモルファスの水酸化アルミニウムとしては、例えばアルミニウム塩、アルミニウムアルコキシドなどのような水溶性アルミニウム化合物の水溶液を加水分解して得られるアルミニウム加水分解物も挙げられる。
【0025】
アルミニウム源粉末の他の粉末と混合される前の体積基準での累積百分率50%相当粒子径(D50)は、好ましくは1〜100μmであり、さらに好ましくは10〜80μm、最も好ましくは20〜60μmである。また、体積基準での累積百分率90%相当粒子径(D90)は、好ましくは1〜200μmであり、さらに好ましくは10〜150μm、最も好ましくは30〜100μmである。
【0026】
(ケイ素源粉末)
本発明で用いられるケイ素源粉末は、ケイ素元素を含有し焼成によりチタン酸アルミニウム系セラミックスを合成できる粉末であれば特に限定されないが、好ましくは酸化ケイ素の粉末である。酸化ケイ素としては、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素などが挙げられる。
【0027】
前記原材料混合物に含まれるケイ素源粉末としては、空気中で焼成することにより酸化ケイ素(シリカ)に導かれる化合物の粉末を用いることもできる。かかる化合物としては、例えばケイ酸、炭化ケイ素、窒化ケイ素、硫化ケイ素、四塩化ケイ素、酢酸ケイ素、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、長石、ガラスフリットなどが挙げられる。
【0028】
具体的なケイ素源粉末としては、工業的に入手が容易であり、成分組成が安定している等の点から、ガラスフリットなどが好適に用いられる。ガラスフリットとは、ガラスが粉砕されたフレーク又は粉末状のガラスをいう。ガラスフリットを構成するガラスとしては、ケイ酸ガラスなどが挙げられ、一般的なケイ酸(二酸化ケイ素、SiO2)を主成分(全成分中50質量%以上)とするケイ酸ガラスが好適に用いられる。ケイ酸ガラスの他の含有成分としては、一般的なケイ酸ガラスと同様、アルミナ(Al23)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)、酸化カルシウム(CaO)、マグネシア(MgO)を含んでいてもよい。ガラス自体の耐熱水性を向上させるためにZrO2が含有され
ていることが好ましく、添加量は0.1wt%以上、10wt%以下であることが好ましい。また、使用するガラスフリットは、得られるチタン酸アルミニウム系セラミックスの耐熱分解性を向上させるという観点から、屈伏点が700℃以上のものを用いることが好ましい。
【0029】
また、ケイ素源粉末として、アルミニウム源粉末を兼ねた粉末などを用いることもできる。このような粉末としては、例えば、長石の粉末が挙げられる。
【0030】
ケイ素源粉末としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なお、ケイ素源粉末は、その原料由来あるいは製造工程で混入する不可避的不純物を含むものであってもよい。
【0031】
ケイ素源粉末の他の粉末と混合される直前の体積基準での累積百分率50%相当粒子径(D50)は5μm以下であり、好ましくは1〜5μmであり、さらに好ましくは2〜4μm、最も好ましくは3〜4μmである。このような粒子径分布を有するケイ素源粉末を用いることにより、1650℃以下、好ましくは1600℃以下の温度で焼成を行なった場合においても、熱膨張係数が1×10-6(K-1)以下であるチタン酸アルミニウム系セラミックスを得ることができる。
【0032】
さらに、ケイ素源粉末の他の粉末と混合される直前の体積基準での累積百分率90%相当粒子径(D90)についても、18μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは10〜16μm、最も好ましくは12〜16μmである。
【0033】
上記のような粒子径分布を有するケイ素源粉末は、通常、市販されている粉末の粒子径よりも小さいものであるため、市販の粉末等を予め粉砕しておくことにより調製されるものである。この際の粉砕方法は、上記の粒子径分布を得られる方法であれば特に限定されるものではないが、粉砕容器内で粉砕メディアの共存下に撹拌することにより粉砕を行なう方法を好適に用いることができる。
【0034】
具体的には、例えば、粉砕容器内に原材料粉末を粉砕メディアと共に投入した後に、粉砕容器を振動させたり、回転させたりすることにより、原材料粉末が混合されると同時に粉砕される。この際、粉砕容器としては、通常、ステンレス鋼などの金属材料で構成されたものが用いられ、内表面がフッ素樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂などでコーティングされていてもよい。粉砕容器の内容積は、原材料粉末および粉砕メディアの合計容積に対して通常1容量倍〜4容量倍、好ましくは1.2容量倍〜3容量倍である。
【0035】
粉砕メディアとしては、例えば直径1mm〜100mm、好ましくは5mm〜50mmのアルミナビーズ、ジルコニアビーズなどが挙げられる。粉砕メディアの使用量は、原材料粉末の合計量(微粒チタン酸アルミニウムマグネシウムのような複合酸化物等の粉末を使用する場合にはそれらを含む総量。以下、同様。)に対して、通常1質量倍〜1000質量倍、好ましくは5質量倍〜100質量倍である。
【0036】
粉砕容器を振動または回転させるためには、例えば、振動ミル、ボールミル、遊星ミル、高速回転粉砕機などのピンミルなどのような通常の粉砕機を用いることができ、工業的規模での実施が容易である点で、振動ミルが好ましく用いられる。粉砕容器を振動させる場合、その振幅は通常2mm〜20mm、好ましくは12mm以下である。粉砕は、連続式で行ってもよいし、回分式で行ってもよいが、工業的規模での実施が容易である点で、連続式で行うことが好ましい。
【0037】
粉砕に要する時間は、通常、1分〜6時間であり、好ましくは1.5分〜2時間、さらに好ましくは10分〜2時間、最も好ましくは20分〜1.5時間である。また、粉砕容器中に粉砕助剤、解膠剤などの添加剤を加えてもよい。
【0038】
(マグネシウム源粉末)
本発明で用いられるマグネシウム源粉末は、マグネシウムを含有し焼成によりチタン酸アルミニウム系セラミックスを合成できる粉末であれば特に限定されないが、例えば、マグネシア(酸化マグネシウム)、単独で空気中で焼成することによりマグネシアに導かれる化合物を含む粉末が挙げられ、好ましくはマグネシアである。
【0039】
空気中で焼成することによりマグネシアに導かれる化合物としては、例えば、マグネシウム塩、マグネシウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、窒化マグネシウム、金属マグネシウムなどが挙げられる。マグネシウム塩として、具体的には、塩化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ピロりん酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ジメタクリル酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムなどが挙げられる。また、マグネシウムアルコキシドとして、具体的には、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシドなどが挙げられる。
【0040】
マグネシウム源粉末として、アルミニウム源粉末を兼ねた粉末を用いることもできる。このような粉末としては、例えば、マグネシアスピネル(MgAl24)の粉末が挙げられる。
【0041】
マグネシウム源粉末としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なお、マグネシウム源粉末は、その原料由来あるいは製造工程で混入する不可避的不純物を含むものであってもよい。
【0042】
マグネシウム源粉末の他の粉末と混合される前の体積基準での累積百分率50%相当粒子径(D50)は、好ましくは0.5〜20μmであり、さらに好ましくは1〜10μmである。また、体積基準での累積百分率90%相当粒子径(D90)は、好ましくは1〜50μmであり、さらに好ましくは5〜30μmである。
【0043】
(原材料混合物の組成)
原材料混合物中に含まれるチタニア(TiO2)換算のチタニウム源粉末の使用量およびアルミナ(Al23)換算のアルミニウム源粉末の使用量の合計量100質量部あたり、チタニア換算のチタニウム源粉末の使用量は、通常、30〜70質量部であり、好ましくは40〜60質量部である。また、アルミナ換算のアルミニウム源粉末の使用量は、通常、30質量部〜70質量部であり、好ましくは40質量部〜60質量部である。
【0044】
ケイ素源粉末の使用量は、チタニア換算のチタニウム源粉末の使用量およびアルミナ換算のアルミニウム源粉末の使用量の合計量100質量部に対して、シリカ(SiO)換算のケイ素源粉末の使用量で、通常、0.1質量部〜20質量部であり、好ましくは0.1〜10質量部である。
【0045】
前記原材料混合物がさらにマグネシウム源粉末を含む場合、マグネシウム源粉末の使用量は、チタニア換算のチタニウム源粉末の使用量とアルミナ換算のアルミニウム源粉末の使用量との合計量100質量部に対して、マグネシア(MgO)換算のマグネシウム源粉末の使用量で、通常、0.1質量部〜10質量部であり、好ましくは0.1〜8質量部である。
【0046】
(原材料粉末の混合)
本発明の製造方法においては、通常、上記各原材料粉末を混合することで原材料混合物を得ることができる。混合方法は、乾式雰囲気にて混合を行なう方法(乾式混合法)、湿式雰囲気で混合を行なう方法(湿式混合法)のいずれを用いてもよい。また、これらの原材料混合物には微粒チタン酸アルミニウム等が含まれていてもよい。
【0047】
(1) 乾式混合法
乾式雰囲気で混合する場合は、例えば、上記の各原材料粉末を混合し、液体媒体中に分散させること無く、粉砕容器内で撹拌すればよく、粉砕メディアの共存下に粉砕容器内で撹拌することによって原材料粉末の粉砕を同時に行なってもよい。
【0048】
粉砕容器としては通常、ステンレス鋼などの金属材料で構成されたものが用いられ、内表面がフッ素樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂などでコーティングされていてもよい。粉砕容器の内容積は、原材料粉末および粉砕メディアの合計容積に対して通常1容量倍〜4容量倍、好ましくは1.2容量倍〜3容量倍である。
【0049】
粉砕メディアとしては、例えば直径1mm〜100mm、好ましくは5mm〜50mmのアルミナビーズ、ジルコニアビーズなどが挙げられる。粉砕メディアの使用量は、原材料粉末の合計量(微粒チタン酸アルミニウムマグネシウムのような複合酸化物等の粉末を使用する場合にはそれらを含む総量。以下、同様。)に対して、通常1質量倍〜1000質量倍、好ましくは5質量倍〜100質量倍である。
【0050】
混合と同時に原材料粉末の粉砕を行なう場合は、例えば、粉砕容器内に原材料粉末を粉砕メディアと共に投入した後に、粉砕容器を振動させたり、回転させたりすることにより、原材料粉末が混合されると同時に粉砕される。粉砕容器を振動または回転させるためには、例えば振動ミル、ボールミル、遊星ミル、高速回転粉砕機などのピンミルなどのような通常の粉砕機を用いることができ、工業的規模での実施が容易である点で、振動ミルが好ましく用いられる。粉砕容器を振動させる場合、その振幅は通常2mm〜20mm、好ましくは12mm以下である。粉砕は、連続式で行ってもよいし、回分式で行ってもよいが、工業的規模での実施が容易である点で、連続式で行うことが好ましい。
【0051】
粉砕に要する時間は通常1分〜6時間、好ましくは1.5分〜2時間である。
原材料粉末を乾式にて粉砕するにあたっては、粉砕助剤、解膠剤などの添加剤を加えてもよい。
【0052】
粉砕助剤としては、例えばメタノール、エタノールプロパノールなどのアルコール類、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類、トリエタノールアミンなどのアミン類、パルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸類、カーボンブラック、グラファイトなどの炭素材料などが挙げられ、これらはそれぞれ単独または2種以上を組合わせて用いられる。
【0053】
添加剤を用いる場合、その合計使用量は、原材料粉末の合計量100質量部に対して、通常、0.1質量部〜10質量部であり、好ましくは0.5質量部〜5質量部、さらに好ましくは0.75質量部〜2質量部である。
【0054】
(2) 湿式混合法
湿式雰囲気で混合する場合は、例えば、ケイ素源粉末等の原材料粉末を溶媒中に分散させた状態で他の原材料粉末と混合すればよく、通常はケイ素源粉末が溶媒に分散された状態で他の原材料粉末と混合される。その際、溶媒として、通常は水が用いられ、不純物が少ない点で、イオン交換水が好適に用いられる。溶媒の使用量は、原材料粉末の合計量100質量部に対して、通常、20質量部〜1000質量部であり、好ましくは30質量部〜300質量部である。
【0055】
湿式で混合するに際して溶媒には分散剤を添加してもよい。分散剤としては、例えば硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤などが挙げられる。分散剤の使用量は、溶媒の総量100質量部に対して、通常0.1質量部〜20質量部であり、好ましくは0.2質量部〜10質量部である。
【0056】
なお、湿式混合法において、ケイ素源粉末以外の原材料粉末(チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末、マグネシウム源粉末)も種類によっては溶媒に溶解させてから混合することもあるが、溶媒に溶解したこれらの原材料粉末は溶媒留去により、再び固形分となって析出する。
【0057】
湿式混合法においては、媒体撹拌ミル、ボールミル、振動ミルなどの粉砕機を用いて混合することが好ましい。粉砕機を用いて混合することにより、チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末、マグネシウム源粉末ならびにガラスフリット等のケイ素源粉末が共に粉砕されつつ混合されて、組成がより均一な原材料混合物を得ることができる。
【0058】
また、湿式混合法としては、例えば、通常の液体溶媒中での攪拌処理のみを行なう方法が挙げられる。液体溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類や、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類またはイオン交換水などを用いることができ、より好ましくはイオン交換水である。
【0059】
また、湿式混合法においても、粉砕メディアの共存下に粉砕容器内で撹拌することによって原材料粉末の粉砕を同時に行なってもよい。例えば、粉砕容器内に原材料粉末および粉砕メディアを投入したのち、粉砕容器を振動させたり、回転させることにより粉砕を行ってもよい。
【0060】
粉砕容器としては、通常、ステンレス鋼などの金属材料で構成されたものが用いられ、内表面がフッ素樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂などでコーティングされていてもよい。粉砕容器の内容積は、原材料粉末および粉砕メディアの合計容積に対して通常1容量倍〜4容量倍、好ましくは1.2容量倍〜3容量倍である。
【0061】
粉砕メディアとしては、例えば、直径1mm〜100mm、好ましくは5mm〜50mmのアルミナビーズ、ジルコニアビーズなどが挙げられる。粉砕メディアの使用量は、原材料粉末の合計量に対して通常1質量倍〜1000質量倍、好ましくは5質量倍〜100質量倍である。
【0062】
粉砕容器を振動または回転させるためには、例えば、振動ミル、ボールミル、遊星ミル、高速回転粉砕機などのピンミルなどのような通常の粉砕機を用いることができ、工業的規模での実施が容易である点で、振動ミルが好ましく用いられる。粉砕容器を振動させる場合、その振幅は通常2mm〜20mm、好ましくは12mm以下である。粉砕は、連続式で行ってもよいし、回分式で行ってもよいが、工業的規模での実施が容易である点で、連続式で行うことが好ましい。粉砕に要する時間は通常1分〜6時間、好ましくは1.5分〜2時間である。
【0063】
また、原材料粉末を湿式にて粉砕するにあたって、粉砕メディアとは別に粉砕助剤、解膠剤などの添加剤を加えてもよい。
【0064】
粉砕助剤としては、例えばメタノール、エタノールプロパノールなどのアルコール類、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類、トリエタノールアミンなどのアミン類、パルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸類、カーボンブラック、グラファイトなどの炭素材料などが挙げられ、これらはそれぞれ単独または2種以上を組合わせて用いられる。添加剤の合計使用量は、原材料粉末の合計量100質量部に対して、通常、0.1質量部〜10質量部、好ましくは0.5質量部〜5質量部、さらに好ましくは0.75質量部〜2質量部である。
【0065】
上述のような湿式雰囲気での混合を行なった後、溶媒を除去することにより、本発明に用いる原材料混合物を得ることができる。溶媒の除去は、通常、溶媒を留去することにより行われる。溶媒を除去するにあたり、室温にて風乾してもよいし、真空乾燥してもよいし、加熱乾燥をしてもよい。乾燥方法は静置乾燥でもよいし、流動乾燥でもよい。加熱乾燥をする際の温度は特に規定しないが、通常50℃以上250℃以下である。加熱乾燥に用いられる機器として、例えば、棚段乾燥機、スラリードライヤー、スプレードライヤーなどが挙げられる。
【0066】
(焼成工程)
本発明の製造方法においては、上述のようにして得られた粉末状の原材料混合物に対して、粉末状のままで焼成を行なってから成形体としてもよく、原材料混合物を成形した後に焼成を行なってもよい。また、粉末状の原材料混合物を焼成した後に成形体を得て、さらに該成形体を焼成してもよい。
【0067】
焼成温度は、通常1300℃以上、好ましくは1400℃以上であり、また、通常1650℃以下、好ましくは1600℃以下、さらに好ましくは1550℃以下である。焼成温度までの昇温速度は、特に限定されるものではないが、通常1℃/時間〜500℃/時間である。また焼成途中で、一定温度にて保持する過程を設けてもよい。
【0068】
焼成は、通常、大気中で行われるが、用いる原材料粉末、すなわち、チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末およびマグネシウム源粉末と、ケイ素源粉末の種類や使用量比によっては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で焼成してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス中で焼成してもよい。また雰囲気中の水蒸気分圧を低くして焼成してもよい。
【0069】
焼成は、通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉などの通常の焼成炉を用いて行われる。焼成は回分式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。また、静置式で行ってもよいし、流動式で行ってもよい。
【0070】
焼成に要する時間は、原材料混合物がチタン酸アルミニウム系セラミックスに遷移するのに十分な時間であればよく、原材料混合物の量、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気などにより異なるが、通常は10分〜24時間である。
【0071】
焼成物として、塊状のチタン酸アルミニウム系セラミックスが得られる場合は、さらにその焼成物を解砕することにより、チタン酸アルミニウム系セラミックス粉末を得ることができる。解砕は、例えば手解砕、乳鉢、ボールミル、振動ミル、遊星ミル、媒体撹拌ミル、ピンミル、ジェットミル、ハンマーミル、ロールミルなどの通常の解砕機を用いて行うことができる。解砕により得られたチタン酸アルミニウム系セラミックス粉末は、通常の方法で分級してもよい。
【0072】
上述の方法により、目的とする熱膨張係数の低いチタン酸アルミニウム系セラミックスの焼成物を得ることができる。
【0073】
本発明の製造方法で得られるチタン酸アルミニウム系セラミックス(粉末または成形体など)は、X線回折スペクトルにおいて、チタン酸アルミニウムの結晶パターンを含むものであるが、その他に例えばシリカ、アルミナ、チタニアなどの結晶パターンを含んでいてもよい。チタン酸アルミニウム系セラミックスが、チタン酸アルミニウムマグネシウム(Al2(1−x)MgxTi(1+x)O5)である場合、前記xの値は0.01以上であり、好ましくは0.01以上0.7以下、より好ましくは0.02以上0.5以下である。
【0074】
(成形工程)
原材料混合物の焼成前または焼成後の成形には、通常用いられる成形方法を用いることができ、一軸成形や押し出し成形などが用いられる。成形に用いる成形機としては、一軸プレス、押出成形機、打錠機造粒機などが挙げられる。
【0075】
押出し成形を行う際には、原材料混合物に造孔剤、バインダー、潤滑剤や可塑剤、分散剤、溶媒などを添加し成形することができる。造孔剤としては、グラファイト等の炭素材、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類、でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物系材料、氷またはドライアイス等などが挙げられる。バインダーとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類、ポリビニルアルコールなどのアルコール類、リグニンスルホン酸塩などの塩、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等のワックス、EVA、ポリエチレン、ポリスチレン、液晶ポリマー、エンジニアリングプラスチックなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。潤滑剤や可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類、カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩などが挙げられる。溶媒としては、通常イオン交換水等の水が用いられ、イオン交換水等は温度調整されたものを用いることが好ましい。なお、物質によっては造孔剤とバインダーの両方の役割を兼ねるものがある。このような物質としては、成形時には粒子同士を接着して成形体を保形させることができ、その後の焼成時にそれ自身が燃焼して空孔を形成させることができるものであればよく、具体的にはポリエチレンなどが該当する場合がある。
【0076】
原材料混合物の成形により得られる成形体の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、ハニカム構造体、球状構造体、立方構造体、長方ブロック構造体などが挙げられ、この中でもハニカム構造体であることが好ましい。
【0077】
本発明の方法を用いて得られるチタン酸アルミニウム系セラミックスの成形体は、例えば、ルツボ、セッター、コウ鉢、炉材などの焼成炉用冶具、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンなどの内燃機関の排気ガス浄化に用いられる排ガスフィルターや触媒担体、ビールなどの飲食物の濾過に用いる濾過フィルター、石油精製時に生じるガス成分、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素や窒素、酸素などを選択的に透過させるための選択透過フィルターなどのセラミックスフィルター、基板、コンデンサーなどの電子部品などに用いられる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例についての各測定は、次の測定方法により行なった。
【0079】
(チタン酸アルミニウム化率の測定)
チタン酸アルミニウムのチタン酸アルミニウム化率(AT化率)は、粉末X線回折スペクトルにおける2θ=27.4°の位置に現れるピーク(チタニア・ルチル相(110)面)の積分強度(IT)と、2θ=33.7°の位置に現れるピーク(チタン酸アルミニウム相(230)面またはチタン酸アルミニウムマグネシウム相(230)面)の積分強度(IAT)とから、式(1)
【0080】
【数1】

【0081】
により算出した。
(熱膨張係数の測定)
チタン酸アルミニウム系セラミックスの成形焼成体の熱膨張係数の値は、各実施例、比較例において解砕される前の成形焼成体から検体を切り出した後、200℃/hで600℃まで昇温し熱処理をしたのち、熱機械的分析装置(TMA (SIIテクノロジー(株)社製 TMA6300)を用いて、室温から1000℃まで600℃/hで昇温させた際の膨張率で、熱膨張係数(K-1)を測定した。
【0082】
(二次粒子径の測定)
二次粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装社製「Microtrac HRA(X−100)」)により、体積基準での累積百分率50%相当粒子径(D50)および90%相当粒子径(D90)として算出した。
【0083】
(実施例1)
ガラスフリット(タカラスタンダード(株)製、型番「CK−0832M2」)5000gをアルミナビーズ(直径15mm)80kgと共にアルミナ製粉砕容器(内容積50L)に投入した。その後、粉砕容器を振動ミルにより振幅10mm、振動数1200回/分、動力5.5kWにて30分間振動させることにより粉砕容器内のガラスフリットを粉砕し、ケイ素源粉末を得た。粉砕後のガラスフリットのD50は3.6μm、D90は14.6μmであった。
【0084】
酸化チタン粉末(デュポン(株)、「R−900」;D50は0.49μm、D90は0.63μm)3991g、αアルミナ粉末(BET比表面積0.6m2/g、D50は40.2μm、D90は70.2μm)5100g、マグネシア粉末(サンゴバン社製、マグネシアスピネル;D50は5.47μm、D90は15.25μm)546g、および、前述のガラスフリットを粉砕した粉末364gを、アルミナビーズ(直径15mm)80kgと共にアルミナ製粉砕容器(内容積50L)に投入した。これら酸化チタン粉末、αアルミナ粉末、マグネシア粉末およびガラスフリットの混合物の合計容積は約10000cm3であった。このとき、原材料混合物中に含まれるチタニア換算のチタニウム源粉末の使用量およびアルミナ換算のアルミニウム源粉末の使用量の合計量100質量部に対して、チタニア換算のチタニウム源粉末の使用量は43.9質量部、アルミナ換算のアルミニウム源粉末の使用量は56.1質量部、マグネシア換算のマグネシウム源粉末の使用量は6.0質量部、シリカ換算のケイ素源粉末の使用量は4.0質量部である。その後、粉砕容器を振動ミルにより振幅10mm、振動数1200回/分、動力5.5kWにて30分間振動させることにより粉砕容器内の混合物を粉砕し、原材料混合物を得た。
【0085】
この原材料混合物3gを一軸プレスにて0.3t/cm2の圧力下で成形することでΦ20mmの成形体を作成し、大気中、箱型電気炉により昇温速度300℃/時間で1450℃まで昇温し、同温度を4時間保持することにより焼成した。その後、室温まで放冷して、成形焼成体を得た。また、この成形焼成体を乳鉢にて解砕してチタン酸アルミニウム系セラミックスの粉末を得た。
【0086】
(実施例2)
原材料混合物の焼成温度を1500℃とした(昇温速度300℃/時間で1500℃まで昇温し、同温度を4時間保持した)以外は、実施例1と同様にして、チタン酸アルミニウム系セラミックスの成形焼成体および粉末を得た。
【0087】
粉末X線回折法により、実施例1、2で得られたチタン酸アルミニウム系セラミックス粉末の回折スペクトルを得たところ、いずれもチタン酸アルミニウムマグネシウムの結晶ピークを示した。この粉末のAT化率を求めたところ、いずれも100%であった。また、熱膨張係数の値を測定したところ、実施例1では0.75×10-6(K-1)、実施例2では0.78×10-6(K-1)であった。
【0088】
(実施例3)
ケイ素源粉末の調製において、ガラスフリット(タカラスタンダード(株)製、型番「CK−0832M2」)の振動ミルによる粉砕時間(振動時間)を60分間とした以外は、実施例1と同様にして、チタン酸アルミニウム系セラミックスの成形焼成体および粉末を得た。
【0089】
(実施例4)
原材料混合物の焼成温度を1500℃とした(昇温速度300℃/時間で1500℃まで昇温し、同温度を4時間保持した)以外は、実施例3と同様にして、チタン酸アルミニウム系セラミックスの成形焼成体および粉末を得た。
【0090】
粉末X線回折法により、実施例3、4で得られたチタン酸アルミニウム系セラミックス粉末の回折スペクトルを得たところ、いずれもチタン酸アルミニウムマグネシウムの結晶ピークを示した。この粉末のAT化率を求めたところ、いずれの焼成温度も100%であった。また熱膨張係数の値を測定したところ、実施例3では0.73×10-6(K-1)、実施例4では0.73×10-6(K-1)であった。
【0091】
(比較例1)
比較例として、ガラスフリットの前粉砕処理を行なわずに原材料粉末を混合する以外は、実施例1と同様にして、チタン酸アルミニウム系セラミックスの成形焼成体および粉末を得た。
【0092】
(比較例2)
比較例として、ガラスフリットの前粉砕処理を行なわずに原材料粉末を混合する以外は、実施例2と同様にして、チタン酸アルミニウム系セラミックスの成形焼成体および粉末を得た。
【0093】
粉末X線回折法により、比較例1、2で得られた粉末の回折スペクトルを得たところ、いずれもチタン酸アルミニウムマグネシウムの結晶ピークを示した。この粉末のAT化率を求めたところ、いずれも100%であった。また、熱膨張係数の値を測定したところ、比較例1では1.40×10-6(K-1)、比較例2では1.15×10-6(K-1)であった。
【0094】
実施例1〜4、比較例1、2で得られた各チタン酸アルミニウム系セラミックス(成形焼成体)の熱膨張係数と、ケイ素源粉末として用いられるガラスフリットの二次粒子径(D50)の関係を焼成温度毎(実施例1、3および比較例1は1450℃、実施例2、4および比較例2は1500℃)のグラフとして図1にまとめた。図1から分かるように、ガラスフリットの二次粒子径(D50)が約4μm以下の場合に熱膨張係数が1×10-6-1以下となった。
【0095】
図1と同様に、各チタン酸アルミニウム系セラミックス(成形焼成体)の熱膨張係数とガラスフリットの二次粒子径(D90)の関係を図2に示した。図2から分かるように、ガラスフリットの二次粒子径(D90)が約16μm以下の場合に熱膨張係数が1×10-6-1以下となった。
【0096】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末およびケイ素源粉末を含む原材料混合物を焼成するチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法であって、
前記ケイ素源粉末の体積基準での累積百分率50%相当粒子径(D50)が5μm以下であることを特徴とするチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法。
【請求項2】
前記原材料混合物が、さらにマグネシウム源粉末を含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記焼成の温度が1300〜1650℃である、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
前記ケイ素源粉末の体積基準での累積百分率90%相当粒子径(D90)が18μm以下である、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
前記ケイ素源粉末がガラスフリットである、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
前記チタニウム源粉末の体積基準での累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.1〜20μmである、請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
前記アルミニウム源粉末の体積基準での累積百分率50%相当粒子径(D50)が1〜100μmである、請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
前記マグネシウム源粉末の体積基準での累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.5〜20μmである、請求項2記載の製造方法。
【請求項9】
原材料混合物中に含まれるチタニア(TiO2)換算のチタニウム源粉末の使用量およ
びアルミナ(Al23)換算のアルミニウム源粉末の使用量の合計量100質量部に対して、チタニア換算のチタニウム源粉末の使用量は30〜70質量部であり、アルミナ換算のアルミニウム源粉末の使用量は30質量部〜70質量部であり、かつ、シリカ(SiO)換算のケイ素源粉末の使用量は、0.1質量部〜20質量部である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
チタニア(TiO2)換算のチタニウム源粉末の使用量とアルミナ(Al23)換算の
アルミニウム源粉末の使用量との合計量100質量部に対して、マグネシア(MgO)換算のマグネシウム源粉末の使用量は0.1質量部〜10質量部である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項11】
さらに、原材料混合物の焼成後に得られたチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成物を解砕する工程を含む、請求項1記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−132527(P2010−132527A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147921(P2009−147921)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】