説明

チップ型コイル部品

【課題】コイルのインダクタンス値を極力低下させることなく、コイルの抵抗値を低減できるチップ型コイル部品を提供する。
【解決手段】磁性体層20は、積層体を構成している。内部電極26は、磁性体層20上に積層されると共に、それぞれが接続されることによりコイルLを形成している。補助内部電極30は、内部電極26が積層されている磁性体層20上に積層されている。補助内部電極30は、同一の磁性体層20上に積層されている内部電極26と絶縁されていると共に、補助内部電極30が積層されている磁性体層20とは異なる磁性体層20上に積層されている内部電極26に対して並列接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルを内蔵したチップ型コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のチップ型コイル部品として、特許文献1に記載の積層チップインダクタが提案されている。以下に、図9を参照しながら従来の積層チップインダクタについて説明する。図9は、積層チップインダクタの分解斜視図である。
【0003】
図9に示すように、積層チップインダクタでは、同じ形状を有する内部電極102が形成された磁性体層101が、それぞれ2枚ずつ重ねて配置されている。同じ形状を有する2つの内部電極102は、最外層となる上下各2層を除いて、その両端においてビアホール導体103を介して互いに電気的に接続されている。更に、各内部電極102は、ビアホール導体103を介して電気的に直列接続されて、螺旋状のコイルLを形成している。なお、最外層となる上下各2層の内部電極102は、磁性体層101の一辺側に引き出されるように、その一端が形成され、図示しない外部電極と接続されている。前記積層チップインダクタによれば、同じ形状を有する2つの内部電極102が並列接続されているので、コイルLの抵抗値を低くすることができる。
【0004】
しかしながら、前記積層チップインダクタでは、同じ形状を有する内部電極102が形成された磁性体層101がそれぞれ2枚ずつ積層されるので、コイルLの軸長が長くなってしまう。コイルLのインダクタンス値は、軸長に反比例するので、軸長が長くなると、積層チップインダクタのインダクタンス値が低下してしまう。また、コイルLの軸長が長くなるので、コイルLの単位長さ当りに巻くことができるターン数が減少し、コイルLにおいて高いインダクタンス値を得ることができなくなる。
【特許文献1】特開2001−358016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、コイルのインダクタンス値を極力低下させることなく、コイルの抵抗値を低減できるチップ型コイル部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の絶縁体層が積層されて構成された積層体と、前記絶縁体層上に積層されると共に、それぞれが接続されることによりコイルを形成している複数の内部電極と、前記内部電極が積層されている前記絶縁体層上に積層されている補助内部電極と、を備え、前記補助内部電極は、同一の前記絶縁体層上に積層されている前記内部電極と絶縁されていると共に、該補助内部電極が積層されている前記絶縁体層とは異なる前記絶縁体層上に積層されている前記内部電極に対して並列接続されていること、を特徴とする。
【0007】
本発明によれば、異なる絶縁体層上に積層された内部電極に対して補助内部電極が並列接続されるので、コイルの抵抗値を低減することができる。更に、補助内部電極は、内部電極が積層されている絶縁体層上に積層されているので、補助内部電極の積層のために新たな絶縁体層を追加する必要がない。すなわち、補助内部電極が設けられたとしても、コイルの軸長が変化しない。その結果、コイルのインダクタンス値が低下することが抑制される。
【0008】
本発明において、前記補助内部電極は、積層方向から見たときに、前記複数の内部電極が積層されている領域内に配置されていてもよい。
【0009】
本発明において、前記補助内部電極は、積層方向に隣接する前記絶縁体層上に積層された前記内部電極に対して接続されていてもよい。
【0010】
本発明において、前記絶縁体層は、磁性体層であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、補助内部電極が異なる絶縁体層上に積層された内部電極に対して並列に接続されているので、コイルのインダクタンス値を極力低減させることなく、コイルの抵抗値を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るチップ型コイル部品の外観斜視図。
【図2】前記チップ型コイル部品の分解斜視図。
【図3】前記チップ型コイル部品を積層方向上方から見たときの透視図。
【図4】図4(a)は、従来の積層チップインダクタの等価回路図。図4(b)は、本発明の一実施形態に係るチップ型コイル部品の等価回路図。
【図5】第1の変形例に係るチップ型コイル部品の分解斜視図。
【図6】第2の変形例に係るチップ型コイル部品の磁性体層、内部電極及び補助内部電極の構成を示した図。
【図7】第2の実験において作製した第3の試作品の分解斜視図である。
【図8】第2の実験において作製した第4の試作品の分解斜視図である。
【図9】従来の積層チップインダクタの分解斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(チップ型コイル部品の構成について)
以下に、本発明の一実施形態に係るチップ型コイル部品の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、チップ型コイル部品10の外観斜視図である。図2は、チップ型コイル部品10の分解斜視図である。なお、以下では、積層方向を上下方向と規定する。また、チップ型コイル部品10において、積層方向の上端面を上面と呼び、積層方向の下端面を下面と呼び、その他の面を側面と呼ぶ。
【0014】
チップ型コイル部品10は、図1に示すように、概略、積層体12及び外部電極14a,14bを備えている。更に、積層体12は、コイルLを内蔵している。
【0015】
積層体12は、直方体状のブロックであり、図2に示すように、長方形状の複数の磁性体層(絶縁体層)22,20a,20b,20c,20d,20e,20f,24が積層されることにより構成されている。なお、個別の磁性体層20を指すときには、参照符号の後にaないしfの符号を付して記載し、磁性体層20を総称するときには、磁性体層20と記載する。磁性体層20,22,24はそれぞれ、磁性体材料により作製される。磁性体材料の例としては、例えば、透磁率が130程度のNi−Cu−Zn系のフェライトが挙げられる。
【0016】
コイルLは、その軸が上下方向と一致するように積層体12内に設けられている。コイルLは、内部電極26a,26b,26c,26d,26e,26fがそれぞれ、前記磁性体層20a,20b,20c,20d,20e,20f上に積層されると共に、内部電極26a,26b,26c,26d,26e,26fが互いに電気的に直列接続されることにより、構成されている。なお、個別の内部電極26を指すときには、参照符号の後にaないしfの符号を付して記載し、内部電極26を総称するときには、内部電極26と記載する。また、内部電極26が磁性体層20上に積層されるとは、内部電極26が磁性体層20上にスクリーン印刷により形成される場合の他、内部電極26が磁性体層20上に転写されるような場合も含む意味である。
【0017】
各内部電極26は、3/4ターンの長さを有しており、その端部において上下方向に隣接する磁性体層20に積層された内部電極26とビアホール導体Bを介して電気的に直列接続されている。より詳細には、内部電極26aと内部電極26bとは、ビアホール導体B1により電気的に接続されている。内部電極26bと内部電極26cとは、ビアホール導体B2により電気的に接続されている。内部電極26cと内部電極26dとは、ビアホール導体B3により電気的に接続されている。内部電極26dと内部電極26eとは、ビアホール導体B4により電気的に接続されている。内部電極26eと内部電極26fとは、ビアホール導体B5により電気的に接続されている。これにより、螺旋形状を有するコイルLが形成されている。なお、3/4ターンとは、長方形状の磁性体層20の4辺の内の3辺に沿って「コ」字形状の電極が積層されていることを示す。
【0018】
更に、最も上層に配置された内部電極26aは、引き出し部28aを含み、最も下層に配置された内部電極26fは、引き出し部28fを含んでいる。引き出し部28aは、図1に示す外部電極14aに電気的に接続されている。また、引き出し部28fは、図1に示す外部電極14bに電気的に接続されている。これらの内部電極26及びビアホール導体Bは、例えば、銀により作製される。
【0019】
外部電極14a,14bは、コイルLと外部の回路とを電気的に接続するための端子としての役割を果たし、積層体12の互いに対向する側面に形成される。外部電極14a,14bは、例えば、銀電極上にNiめっき及びSnめっきが施されて作製される。
【0020】
ところで、本実施形態に係るチップ型コイル部品10では、コイルLの抵抗値を低減するために、補助内部電極30a,30b,30c,30d,30e,30fが設けられている。なお、個別の補助内部電極30を指すときには、参照符号の後にaないしfの符号を付して記載し、補助内部電極30を総称するときには、補助内部電極30と記載する。以下、補助内部電極30について説明する。
【0021】
補助内部電極30はそれぞれ、図2に示すように、内部電極26が積層されている磁性体層20上の空き領域に積層されている。ただし、同一の磁性体層20上に積層されている内部電極26と補助内部電極30とは互いに絶縁されている。そして、補助内部電極30は、この補助内部電極30が積層されている磁性体層20とは異なる磁性体層20上に積層されている内部電極26に対して、ビアホール導体bにより電気的に接続されている。より詳細には、補助内部電極30は、この補助内部電極30が積層されている磁性体層20と上下方向に隣接する磁性体層20に積層されている内部電極26に対して、2つのビアホール導体bを介して電気的に並列接続されている。以下に、内部電極26と補助内部電極30との接続関係について詳細に説明する。
【0022】
補助内部電極30aは、ビアホール導体b1,b2により内部電極26bに電気的に並列接続されている。補助内部電極30bは、ビアホール導体b3,b4により内部電極26cに電気的に並列接続されている。補助内部電極30cは、ビアホール導体b5,b6により内部電極26dに電気的に並列接続されている。補助内部電極30dは、ビアホール導体b7,b8により内部電極26eに電気的に並列接続されている。補助内部電極30eは、ビアホール導体b9,b10により内部電極26fに電気的に並列接続されている。補助内部電極30fは、ビアホール導体b11,b12により内部電極26eに電気的に並列接続されている。
【0023】
以上のように、チップ型コイル部品10では、各内部電極26に対して補助内部電極30が並列接続されるので、コイルLの抵抗値を低減することができる。更に、補助内部電極30は、内部電極26が積層されている磁性体層20の空き領域に積層されているので、補助内部電極30の積層のために新たな磁性体層20を追加する必要がない。すなわち、補助内部電極30が設けられたとしても、コイルLの軸長が変化しない。その結果、コイルLのインダクタンス値が低下することが抑制される。
【0024】
また、補助内部電極30は、図3に示すように、上方から見たときに、内部電極26からはみ出すことなく内部電極26が積層された領域と重なるように配置されている。図3は、チップ型コイル部品10を上方から見たときの透視図である。このように、補助内部電極30と内部電極26とが重なることにより、コイルLのコイル径を大きくすることができ、コイルLのインダクタンス値を大きくすることができる。
【0025】
また、チップ型コイル部品10では、以下に説明するように、補助内部電極30が設けられているので、補助内部電極30が設けられていないチップ型コイル部品に比べて良好な直流重畳特性を有するようになる。補助内部電極30は、例えば、銀により作製されている。銀は非磁性体であるので、チップ型コイル部品10では、磁性体層20の間に非磁性体層が設けられていることになる。その結果、チップ型コイル部品10は、補助内部電極30が設けられていない閉磁路型のチップ型コイル部品に比べて、良好な直流重畳特性を有するようになる。
【0026】
(従来の積層チップインダクタとの対比)
以下に、チップ型コイル部品10が奏する効果をより明確なものとすべく、チップ型コイル部品10の取得効率と、図9に示す従来の積層チップインダクタの取得効率とを対比する。取得効率とは、コイルのインダクタンス値を抵抗値で割った値である。
【0027】
図4(a)は、図9に示す従来の積層チップインダクタの等価回路図である。図4(b)は、図2に示すチップ型コイル部品10の等価回路図である。なお、図4(a)では、磁性体層101が4層分だけ記載されており、図4(b)では、磁性体層20が3層分だけ記載されているが、実際には、従来の積層チップインダクタでは磁性体層101が14層積層されており、チップ型コイル部品10では磁性体層20が6層積層されている。ただし、積層数が変化しても取得効率が変化しないので、以下では、説明の簡略のため、図4(a)及び図4(b)の等価回路図を用いて、取得効率の比較を行う。
【0028】
以下に、図4(a)に示す等価回路図と図9に示す積層チップインダクタとの対応関係について説明する。LAは、1層目の磁性体層101と2層目の磁性体層101とのそれぞれに積層された内部電極102が有する合成インダクタンス値である。rAa+rAbは、1層目の磁性体層101に積層された内部電極102が有する抵抗値である。rAc+rAdは、2層目の磁性体層101に積層された内部電極102が有する抵抗値である。
【0029】
また、LBは、3層目の磁性体層101と4層目の磁性体層101とのそれぞれに積層された内部電極102が有する合成インダクタンス値である。rBa+rBbは、3層目の磁性体層101に積層された内部電極102が有する抵抗値である。rBc+rBdは、4層目の磁性体層101に積層された内部電極102が有する抵抗値である。
【0030】
次に、図4(b)に示す等価回路図と図2に示すチップ型コイル部品10との対応関係について説明する。L1は、1層目の磁性体層20に積層された内部電極26が有するインダクタンス値である。r2cは、2層目の磁性体層20に積層された補助内部電極30が有する抵抗値である。r1a+r1bは、1層目の磁性体層20に積層された内部電極26が有する抵抗値である。より詳細には、r1bは、補助内部電極30が並列接続されている部分の内部電極26の抵抗値であり、r1aは、残余の部分の内部電極26の抵抗値である。
【0031】
L2は、2層目の磁性体層20に積層された内部電極26が有するインダクタンス値である。r3cは、3層目の磁性体層20に積層された補助内部電極30が有する抵抗値である。r2a+r2bは、2層目の磁性体層20に積層された内部電極26が有する抵抗値である。r2bは、補助内部電極30が並列接続されている部分の内部電極26の抵抗値であり、r2aは、残余の部分の内部電極26の抵抗値である。
【0032】
L3は、3層目の磁性体層20に積層された内部電極26が有するインダクタンス値である。r3a+r3bは、3層目の磁性体層20に積層された内部電極26が有する抵抗値である。
【0033】
以上のように構成された等価回路図において、以下の式(1)及び式(2)が成立するものと仮定する。
rAa=rAc=rBa=rBc=r1a=r2a=r3a=R1・・・(1)
rAb=rAd=rBb=rBd=r1b=r2c=r2b=r3c=r3b=R2・・・(2)
【0034】
式(1)及び式(2)が成立する場合、図4(a)に示す等価回路図の合成抵抗値RdcI及び図4(b)に示す等価回路図の合成抵抗値RdcIIは、それぞれ、以下の式(3)及び式(4)に示す通りとなる。
【0035】
RdcI=(R1+R2)/2×2=R1+R2・・・(3)
RdcII=(R1+R2)+(R1+R2/2)+(R1+R2/2)=3R1+2R2・・・(4)
【0036】
ここで、インダクタンス値は、コイルの巻き数の2乗に比例し、コイルの軸長に反比例する。従って、図4(a)に示す等価回路図のインダクタンス値をLIとし、図4(b)に示す等価回路図のインダクタンス値をLIIとすると、LI及びLIIは、それぞれ式(5)及び式(6)に示す通りとなる。
【0037】
LI=α・(2N)2/4λ=α・N2/λ・・・(5)
LII=α・(3N)2/3λ=α・3N2/λ・・・(6)
【0038】
なお、αは、係数である。また、図4(a)の等価回路図に示すコイルの軸長及び巻き数を4λ及び2Nとし、図4(b)の等価回路図に示すコイルの軸長及び巻き数を3λ及び3Nとする。なお、Nは、1層分の内部電極の長さ(ターン数)である(例えば、3/4ターン)。
【0039】
式(3)ないし式(6)に基づいて、図4(a)の等価回路図の取得効率X1と図4(b)の等価回路図の取得効率X2とを求めると、X1及びX2は、それぞれ式(7)及び式(8)に示す通りとなる。
X1=α・N2/[λ(R1+R2)]・・・(7)
X2=α・3N2/[λ(3R1+2R2)]・・・(8)
【0040】
式(7)及び式(8)によれば、X1<X2であることがわかる。以上より、図9に示す従来の積層チップインダクタよりも本実施形態に係るチップ型コイル部品10の方が、高い取得効率を有していると言える。
【0041】
(変形例)
図5は、第1の変形例に係るチップ型コイル部品10'の分解斜視図である。なお、図5では、図2における構成要素に対応する構成要素については、同じ参照符号を付してある。以下では、第1の変形例に係るチップ型コイル部品10'と図2に示すチップ型コイル部品10との相違点を中心に説明する。
【0042】
第1の変形例に係るチップ型コイル部品10'では、同一の磁性体層20上に積層された内部電極26と補助内部電極30とが接続されている。更に、補助内部電極30の一端は、この補助内部電極30が積層されている磁性体層20とは異なる磁性体層20上に積層されている内部電極26に対して、内部電極26同士を接続するビアホール導体Bを介して接続されている。具体的には、補助内部電極30aは、ビアホール導体b1の代わりにビアホール導体B1を介して内部電極26bに接続されている。補助内部電極30bは、ビアホール導体b4の代わりにビアホール導体B2を介して内部電極26cに接続されている。補助内部電極30cは、ビアホール導体b5の代わりにビアホール導体B3を介して内部電極26dに接続されている。補助内部電極30dは、ビアホール導体b7の代わりにビアホール導体B4を介して内部電極26eに接続されている。補助内部電極30eは、ビアホール導体b10の代わりにビアホール導体B5を介して内部電極26fに接続されている。なお、各補助内部電極30の他端は、ビアホール導体bを介して内部電極26に接続されている。
【0043】
また、磁性体層20f上に積層された補助内部電極30fは、内部電極26fに接続されており、ビアホール導体b11の代わりにビアホール導体B5を介して内部電極26eに接続されている。
【0044】
以上のような第1の変形例に係るチップ型コイル部品10'によれば、内部電極26に補助内部電極30を並列接続するためのビアホール導体に、内部電極26同士を接続するためのビアホール導体Bを兼用しているので、ビアホール導体bの総数を減らすことができる。そのため、チップ型コイル部品10'において生産性の向上及びコストダウンを図ることができる。
【0045】
また、第1の変形例に係るチップ型コイル部品10'によれば、図2に示すチップ型コイル部品10に比べて、内部電極26と補助内部電極30とが並列接続されている部分の長さが長い。そのため、第1の変形例に係るチップ型コイル部品10'におけるr1b,r2b,r2c,r3cの抵抗値は、図2に示すチップ型コイル部品10におけるr1b,r2b,r2c,r3cの抵抗値よりも大きくなる。一方、第1の変形例に係るチップ型コイル部品10'におけるr1a,r2aの抵抗値は、図2に示すチップ型コイル部品10におけるr1a,r2aの抵抗値よりも小さくなる。ここで、並列接続された部分における合成抵抗値の増加量は、残余の部分における抵抗値の減少量よりも小さい。その結果、第1の変形例に係るチップ型コイル部品10'の抵抗値RdcIIは、図2に示すチップ型コイル部品10の抵抗値RdcIIよりも小さくなる。
【0046】
また、チップ型コイル部品10'では、チップ型コイル部品10と同様に、補助内部電極30が設けられているので、補助内部電極30が設けられていないチップ型コイル部品に比べて良好な直流重畳特性を有するようになる。
【0047】
図6は、第2の変形例に係るチップ型コイル部品10''の磁性体層20'a,20'b、内部電極26'a,26'b、補助内部電極30'a1,30'a2の構成を示した図である。図6に示すように、内部電極26'a,26'bは、渦巻き状に積層されている。また、2つの補助内部電極30'a1,30'a2が、同一の磁性体層20'aに積層されている。これらの補助内部電極30'a1,30'a2は、積層される磁性体層20'aとは異なる磁性体層20'b上に積層された内部電極26'bとビアホール導体を介して接続される。なお、内部電極26'が3層以上設けられている場合には、補助内部電極30'a1,30'a2は、それぞれ異なる内部電極26'に接続されていてもよい。具体的には、補助内部電極30'a1が、補助内部電極30'a1が積層された磁性体層20'よりも上方に配置された磁性体層20'に積層された内部電極26'に接続され、補助内部電極30'a2が、補助内部電極30'a2が積層された磁性体層20'よりも下方に配置された磁性体層20'に積層された内部電極26'に接続されていてもよい。
【0048】
チップ型コイル部品10''においても、チップ型コイル部品10と同様に、補助内部電極30'が設けられていないチップ型コイル部品に比べて良好な直流重畳特性を有するようになる。
【0049】
また、補助内部電極30は、この補助内部電極30が積層されている磁性体層20と上下方向に隣接する磁性体層20に積層されている内部電極26に対して、2つのビアホール導体bを介して電気的に並列接続されているが、補助内部電極30の接続方法はこれに限らない。補助内部電極30が接続される内部電極26は、この補助内部電極30が積層されている磁性体層20と上下方向に隣接する磁性体層20に積層されている内部電極26以外の内部電極26であってもよい。
【0050】
また、補助内部電極30は、上方から見たときに、内部電極26と重なるものを例示したが、この補助内部電極30は、内部電極26からはみ出すように配置されていてもよい。
【0051】
また、チップ型コイル部品10,10'において、磁性体層20の一部が非磁性体層に置き換えられてもよい。この場合、コイルLの直流重畳特性が向上する。
【0052】
また、チップ型コイル部品10,10',10''において、磁性体層20,22,24の代わりに、ポリイミド等の絶縁体層が用いられてもよい。
【0053】
(実験結果)
また、本願発明者は、チップ型コイル部品10,10',10''が奏する効果をより明確なものとするために、以下に示す第1の実験及び第2の実験を行った。
【0054】
第1の実験では、チップ型コイル部品10において取得効率が向上することを示すために、補助内部電極30が積層されていないチップ型コイル部品(第1の試作品)と、補助内部電極30が積層されたチップ型コイル部品10(第2の試作品)とを試作して、それぞれのインダクタンス値、抵抗値及び取得効率を計測した。
【0055】
まず、試作したチップ型コイル部品について説明する。第1の試作品及び第2の試作品の構成は以下の通りである。なお、第1の試作品と第2の試作品との相違点は、補助内部電極30の有無のみである。
【0056】
サイズ:2.00mm×1.25mm×0.85mm
磁性体層の材質:Ni−Cu−Zn系フェライト
磁性体層の透磁率:130
外部電極の材質:銀上にNiめっき及びSnめっき
内部電極及び補助内部電極の材質:銀
内部電極の長さ:3/4ターン
コイルLのターン数:6.5ターン
【0057】
以上のような第1の試作品及び第2の試作品におけるインダクタンス値、抵抗値及び取得効率は、表1に示すような値となった。
【0058】
【表1】

【0059】
表1によれば、補助内部電極30が積層されることにより、第2の試作品のインダクタンス値が第1の試作品のインダクタンス値に比べてわずかながら低下していることが理解できる。しかしながら、第2の試作品の抵抗値が第1の試作品の抵抗値よりも大きく低下していることが理解できる。その結果、第2の試作品の取得効率が第1の試作品の取得効率よりも大きく向上していることが理解できる。以上より、補助内部電極30が設けられることにより、チップ型コイル部品10の取得効率が向上することが理解できる。また、第1の実験の結果より、チップ型コイル部品10',10''についても、チップ型コイル部品10と同様に取得効率が向上していると言える。
【0060】
次に、第2の実験について図面を参照しながら説明する。図7は、第2の実験において作製した第3の試作品の分解斜視図である。図8は、第2の実験において作製した第4の試作品の分解斜視図である。なお、図8に示す第3の試作品に係るチップ型コイル部品10'aは、チップ型コイル部品10'とコイルLのターン数が異なる点、及び、磁性体層20fが非磁性体層40fに置き換わっている点以外は同じ構成を有している。
【0061】
第2の実験では、チップ型コイル部品10'において直流重畳特性が向上したことを示すために、補助内部電極30が積層されていない図7に示すチップ型コイル部品50(第3の試作品)と、補助内部電極30が積層された図8に示すチップ型コイル部品10'a(第4の試作品)とを試作して、それぞれの抵抗値を計測すると共に、電流が流れていないときにおけるそれぞれのインダクタンス値(第1のインダクタンス値)及び取得効率(第1の取得効率)、300mAの電流が流れたときにおけるそれぞれのインダクタンス値(第2のインダクタンス値)及び取得効率(第2の取得効率)を計測した。
【0062】
まず、試作したチップ型コイル部品について説明する。第3の試作品及び第4の試作品の構成は以下の通りである。なお、第3の試作品と第4の試作品との相違点は、補助内部電極30の有無のみである。
【0063】
サイズ:2.00mm×1.25mm×0.85mm
磁性体層の材質:Ni−Cu−Zn系フェライト
磁性体層の透磁率:130
非磁性体層の材質:Cu−Zn系フェライト
非磁性体層の位置:中央に1層
外部電極の材質:銀上にNiめっき及びSnめっき
内部電極及び補助内部電極の材質:銀
内部電極の長さ:5/6ターン
コイルLのターン数:9.5ターン
【0064】
以上のような第3の試作品及び第4の試作品における抵抗値、インダクタンス値及び取得効率は、表2に示すような値となった。
【0065】
【表2】

【0066】
表2によれば、第3の試作品では300mAの電流を流すことにより、第2のインダクタンス値が、第1のインダクタンス値に比べて30%低下している。一方、第4の試作品では300mAの電流を流すことにより、第2のインダクタンス値が、第1のインダクタンス値から22%しか低下していない。故に、第4の試作品のインダクタンス値の低下率は、第3の試作品のインダクタンス値の低下率よりも小さくなっていることがわかる。以上より、補助内部電極30が設けられることにより、チップ型コイル部品10'aの直流重畳特性が向上していることが理解できる。また、第2の実験の結果より、チップ型コイル部品10,10''についても、チップ型コイル部品10'aと同様に直流重畳特性が向上していると言える。
【0067】
更に、第4の試作品は、第3の試作品に比べて、優れた直流重畳特性を有している。故に、第4の試作品は、電流が印加された状態であっても、第3の試作品よりも高いインダクタンス値を得ることができる。その結果、第4の試作品は、第3の試作品に比べて、高い第2の取得効率を有することができる。以上より、補助内部電極30が設けられることにより、電流が印加された状態においても、チップ型コイル部品10'aは、チップ型コイル部品50に比べて高い取得効率を得ることができることがわかる。なお、チップ型コイル部品10,10''についても、チップ型コイル部品10'aと同様に、電流が印加されている状態における取得効率が向上していると言える。
【0068】
(製造方法について)
以下に、チップ型コイル部品10の製造方法について図1及び図2を参照しながら説明を行う。
【0069】
まず、磁性体層20,22,24として用いられるセラミックグリーンシートを作製する。例えば、酸化第二鉄(Fe23)を48.0mol%、酸化亜鉛(ZnO)を25.0mol%、酸化ニッケル(NiO)を18.0mol%、酸化銅(CuO)を9.0mol%の比率で秤量したそれぞれの材料を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を750℃で1時間仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕し、フェライトセラミック粉末を得る。
【0070】
このフェライトセラミック粉末に対して結合剤(酢酸ビニル、水溶性アクリル等)と可塑剤、湿潤材、分散剤を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法により、シート状に形成して乾燥させ、所望の膜厚のセラミックグリーンシートを作製する。
【0071】
次に、磁性体層20として用いられるセラミックグリーンシートに対して、図2に示すビアホール導体B,bを形成する。セラミックグリーンシートにレーザビームなどを用いて貫通孔を形成し、この貫通孔にAg,Pd,Cu,Auやこれらの合金などの導電ペーストを印刷塗布などの方法により充填することによって、ビアホール導体B,bを形成する。
【0072】
次に、ビアホール導体B,bを形成したセラミックグリーンシートの主面上に、導電性ペーストをスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布することにより、内部電極26及び補助内部電極30を形成する。
【0073】
次に、セラミックグリーンシートを積層して、未焼成のマザー積層体を形成する。この際、セラミックグリーンシートは、所定枚数ずつ重ねて仮圧着される。そして、全ての仮圧着が完了すると、静水圧などを利用してマザー積層体の本圧着を行う。
【0074】
次に、未焼成のマザー積層体を、個々の積層体にダイサー等によりカットする。これにより、直方体状の積層体を得る。
【0075】
次に、この積層体に、脱バインダー処理及び焼成を施す。これにより、焼成された積層体12を得る。
【0076】
次に、積層体12の表面に、例えば、浸漬法などの公知の方法により主成分が銀である電極ペーストを塗布及び焼き付けすることにより、図1に示すような形状を有する銀電極を形成する。
【0077】
最後に、焼き付けられた銀電極の表面に、Niめっき及びSnめっき又はNiめっき及び半田めっきを施すことにより、外部電極14a,14bが完成する。以上の工程を経て、図1に示すようなチップ型コイル部品10が完成する。
【0078】
なお、磁性体層20の一部を非磁性体層に置き換えた場合には、非磁性体層に用いられるセラミックグリーンシートを作製する必要がある。具体的には、このようなセラミックグリーンシートは、以下のようにして作製される。酸化第二鉄(Fe23)を48.0mol%、酸化亜鉛(ZnO)を43.0mol%、酸化銅(CuO)を9.0mol%の比率で秤量したそれぞれの材料を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を750℃で1時間仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕し、非磁性セラミック粉末を得る。
【0079】
この非磁性セラミック粉末に対して結合剤(酢酸ビニル、水溶性アクリル等)と可塑剤、湿潤材、分散剤を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法により、シート状に形成して乾燥させ、非磁性体層に用いられるセラミックグリーンシートを作製する。
【0080】
なお、チップ型コイル部品10の製造方法として、シート積層法について説明を行ったが、チップ型コイル部品10の製造方法はこれに限らない。例えば、逐次印刷積層法や転写積層法によってチップ型コイル部品10を製造してもよい。
【0081】
また、チップ型コイル部品10において、磁性体層20,22,24の代わりに、ポリイミド等の絶縁体層が用いられた場合には、該絶縁体層は、厚膜印刷法、スパッタリング法、CVD法の膜形成方法及びフォトリソグラフィ技術等を組み合わせて形成される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように、本発明は、チップ型コイル部品に有用であり、特に、コイルのインダクタンス値を極力低減させることなく、コイルの抵抗値を低くすることができる点で優れている。
【符号の説明】
【0083】
10,10',10'' チップ型コイル部品
12 積層体
14a,14b 外部電極
20,20a,20b,20c,20d,20e,20f,20'a,20'b 磁性体層
26,26a,26b,26c,26d,26e,26f,26'a,26'b 内部電極
30,30a,30b,30c,30d,30e,30f,30'a1,30'a2 補助内部電極
B1,B2,B3,B4,B5,b1,b2,b3,b4,b5,b6,b7,b8,b9,b10,b11,b12 ビアホール導体
L コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層されて構成された積層体と、
前記絶縁体層上に積層されると共に、それぞれが接続されることによりコイルを形成している複数の内部電極と、
前記内部電極が積層されている前記絶縁体層上に積層されている補助内部電極と、
を備え、
前記補助内部電極は、同一の前記絶縁体層上に積層されている前記内部電極と絶縁されていると共に、該補助内部電極が積層されている前記絶縁体層とは異なる前記絶縁体層上に積層されている前記内部電極に対して並列接続されていること、
を特徴とするチップ型コイル部品。
【請求項2】
前記補助内部電極は、積層方向から見たときに、前記複数の内部電極が積層されている領域内に配置されていること、
を特徴とする請求項1に記載のチップ型コイル部品。
【請求項3】
前記補助内部電極は、積層方向に隣接する前記絶縁体層上に積層された前記内部電極に対して接続されていること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のチップ型コイル部品。
【請求項4】
前記絶縁体層は、磁性体層であること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のチップ型コイル部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−71537(P2011−71537A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264868(P2010−264868)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【分割の表示】特願2009−525327(P2009−525327)の分割
【原出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】