説明

チップ型電子部品の検査装置

【課題】固体電解コンデンサなどの比較的外形の大きく、質量の大きなチップ型電子部品を安定に吸引して搬送可能な検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】チップ型電子部品3をそれぞれの外周面に保持して搬送する第一、第二の搬送用ドラム1、2と、前記第一の搬送用ドラム1から前記第二の搬送用ドラム2へチップ型電子部品3を受け渡しする受け渡し機構4と、搬送経路で検査を行う検査手段5、6とを備えるチップ型電子部品の検査装置であって、前記第一、第二の搬送用ドラム1、2は、それぞれの外周部に、チップ型電子部品3を吸引保持するための複数の吸引保持孔9と、前記複数の吸引保持孔9全てと減圧源とを連通して繋ぐ空洞部11aを有し、前記空洞部11a内に前記各吸引保持孔9と略同軸となる、加圧源と適宜連通して繋がる吸引開放手段12を設けたチップ型電子部品3の検査装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップコンデンサやチップ抵抗などチップ型電子部品の検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、チップコンデンサやチップ抵抗などのチップ型電子部品を搬送しながら外観検査や電気特性の検査を行う検査装置として、図5に示す装置が知られている。外周面にチップ型電子部品70を吸引して搬送する2つの搬送用ドラム10A、10Bを、所定の間隙Rを設けて回転面が互いに直交するように上下に配置し、搬送用ドラム10Bから搬送用ドラム10Aへ順次チップ型電子部品70を移し替えて搬送する。上記構成で搬送することで、チップ型電子部品70の6側面全てがその搬送経路で外観検査が可能となり、移し替えなどの工程が不要となる。
【0003】
図6は搬送用ドラム10Aにおけるチップ型電子部品吸引部の断面図である。搬送用ドラム10Aは、固定ベース30に所定の間隔Tを設けて真空吸引されて保持される。吸引部には、吸引保持孔11Nと連通して繋がる空洞バッファ12Kがそれぞれ設けられており、円弧状に形成した減圧溝31とアダプタ39を介して減圧装置に繋がれ、チップ型電子部品70を吸引保持孔11Nに吸引保持する。このような吸引部構造とすることで、搬送用ドラム10Aの回転の際に生じる振動や搬送用ドラム10Aの加工精度に起因する減圧状態の変動を、空洞バッファ12Kで吸引することができるため、チップ型電子部品70を安定して吸引部に吸引し搬送することが可能となる。
【0004】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2005−29386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構成では、減圧状態の変動は抑えることができるため、チップ型電子部品70を安定して吸引することができるが、吸引力が大きいため取り外しが難しく、二つの搬送用ドラム10A、10B間でチップ型電子部品70の受け渡しが困難となる課題があった。
【0006】
そこで本発明は、受け渡し部での電子部品の着脱を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に記載の発明は、チップ型電子部品をそれぞれの外周面に保持して搬送する第一、第二の搬送用ドラムと、前記第一の搬送用ドラムから前記第二の搬送用ドラムへチップ型電子部品を受け渡しする受け渡し機構と、前記第一、第二の搬送用ドラムにおける搬送経路で検査を行う検査手段とを備えるチップ型電子部品の検査装置であって、前記第一、第二の搬送用ドラムは、それぞれの外周部に、チップ型電子部品を吸引保持するための複数の吸引保持孔と、前記複数の吸引保持孔と減圧源とを連通して繋ぐ空洞部を有し、前記空洞部内に前記各吸引保持孔と略同軸となる吸引開放孔を有する吸引開放手段を複数設けてなり、前記チップ型電子部品が、前記第一の搬送用ドラムの受け渡し位置に搬送されると同時に、前記吸引開放手段が加圧源と連通して繋がるチップ型電子部品の検査装置であって、チップ型電子部品を安定に吸引しながら搬送することができ、さらに受け渡し機構に搬送されると同時に吸引開放手段によりチップ型電子部品を取り外すことができるため、受け渡し部におけるチップ型電子部品の着脱を容易にすることができるという作用効果を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のチップ型電子部品の検査装置は、二つの搬送用ドラムを所定の間隔で配置し、外周部に吸引保持したチップ型電子部品を前記二つの搬送用ドラムで受け渡しをして搬送する経路で外観検査などを行うチップ型電子部品の検査装置であって、それぞれの搬送用ドラムには吸引保持孔全てと減圧源に連通して繋がる空洞部を有し、前記空洞部の所定の位置に前記各吸引用孔と所定の間隔を有して略同軸上に配置した加圧源からなる吸引開放手段を設けており、チップ型電子部品が受け渡し機構の受け渡し位置に搬送されると同時に前記吸引開放手段から加圧空気を放出する。上記構成とすることにより、チップ型電子部品を安定に吸引しながら搬送することができ、さらに受け渡し機構に搬送されると同時に吸引開放手段によりチップ型電子部品を取り外すことができるため、受け渡し部におけるチップ型電子部品の着脱を容易にすることができる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態におけるチップ型電子部品の検査装置について図を用いて説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態におけるチップ型電子部品の検査装置の概略を示す構成図である。本検査装置は、円盤状の第一、第二の搬送用ドラム1、2と、第一の搬送用ドラム1から第二の搬送用ドラム2へチップ型電子部品3を受け渡しする受け渡し機構4と、その搬送経路にて特性検査を行うための複数の撮像手段5や測定器6と、第一の搬送用ドラム1へチップ型電子部品3を供給する部品供給機構7とを備えている。
【0011】
第一、第二の搬送用ドラム1、2は、所定の間隔Rを有し、その回転面が互いに直交するように配置されている。また、第一、第二の搬送用ドラム1、2の外周側面には、チップ型電子部品3を吸引保持する吸引保持部10を有し、前記チップ型電子部品3の1側面を吸着し、モーター8を駆動させ第一、第二の搬送用ドラム1、2を回転させることで搬送を行う。
【0012】
第一の搬送用ドラム1に吸引保持されたチップ型電子部品3は、受け渡し機構4を介して第二の搬送用ドラム2へ受け渡しをされる。受け渡し機構4は、垂直方向の位置を決定するブロック4aと、水平方向の位置を決定するブロック4bおよび4cから構成される。受け渡し機構4に達したチップ型電子部品3は、ブロック4aで鉛直方向の位置が決定され、相対する二つの側面からブロック4bおよびブロック4cで挟持することで水平方向の位置が決定される。このとき、垂直方向の位置決めが終了すると同時に第一の搬送用ドラム1の吸引保持を解除し、替わって第二の搬送用ドラム2の吸引保持を行った後に水平方向の位置決めを行う。第一、第二の搬送用ドラム1、2は、インデックス機能を有しており、上記受け渡し動作は全て同期して行われる。
【0013】
チップ型電子部品3は、その搬送経路にて6側面全ての外観検査と電気特性の検査を実施する。図1では、第一の搬送用ドラム1での搬送経路で撮像手段5により3側面の外観検査を実施し、第二の搬送用ドラム2での搬送経路にて、残りの3側面の外観検査を実施する。本実施形態の構成とすることで、その搬送経路にて6面全ての外観検査が可能となるため、チップ型電子部品3の移し替え工程が不要となる。
【0014】
図1に示した撮像手段の配置は、一実施の形態を示したのみであり、第一、第二の搬送用ドラム1、2で検査する側面や数の配分は装置構成に応じて適宜変更してもよい。
【0015】
チップ型電子部品3の電気特性の検査は、受け渡し機構4を介したチップ型電子部品3の受け渡し時に行う。ブロック4bおよび4cには、電気抵抗や電気容量、インダクタンスなどを測定するための電気特性の測定器6に接続されている。ブロック4bおよび4cでチップ型電子部品3を挟持して位置決めを行うと同時に、チップ型電子部品3の外部電極を前記電気特性の測定器6に接続して測定するものである。
【0016】
上記のように垂直、水平方向の位置決めと電気特性の検査を行った後、第二の搬送用ドラム2に受け渡されたチップ型電子部品3は、残りの外観検査を行い、その判定結果に応じてそれぞれ別の位置で取出される。このとき、チップ型電子部品3を第二の搬送用ドラム2から吸引を解除するためには、治具などで把持、あるいは係止ブロックなどを用いた機械的手法でも良いし、エアを吹き付ける手法などを用いてもよい。
【0017】
また、上記の第一、第二の搬送用ドラム1、2は、それぞれがリニアガイド上に設置されており、チップ型電子部品3の品種切り替えなどにより間隔Rを変更、調整が容易にできる構成となっている。
【0018】
次に、本発明のポイントであるチップ型電子部品3の吸引保持手段および吸引開放手段について特に図2を用いて説明する。図2は、第一の搬送用ドラム1の断面図を示している。第一の搬送用ドラム1は、2枚から構成される。すなわち、チップ型電子部品3を吸引保持して回転可能な回転用ドラム1aと、減圧源に連通し繋がる減圧源側コネクタ13と、チップ型電子部品3の吸引を解除して排出するための加圧源に連通し繋がる加圧源側コネクタ14とを有した固定用ドラム1bとから構成されている。
【0019】
回転用ドラム1aとモーター(図1の8)の回転軸とは固定用ボルト17で固定連結されており、一方の固定用ドラム1bはボールベアリング16を介して固定ベース18に連結されている。回転用ドラム1aと固定用ドラム1bとは所定の間隔D1を有しており、このD1は、6角ボルトなどの固定用部材15により調整、固定される。この固定用部材15は、複数本を円周方向に均等に配置しているため、高精度に間隔D1を調整可能である。
【0020】
固定用ドラム1bと対向する回転用ドラム1aの面には同心円または、特定の長さを有する円弧状の矩形溝11が形成されている。この矩形溝11は、減圧源側コネクタ13、電磁弁などを介して減圧源として繋がるため、減圧源により間隔D1を保ちながら略真空に保持される空洞部11aとなる。回転用ドラム1aの外周側面には、所定の間隔で吸引保持部10を複数有しており、この吸引保持部10は、吸引保持孔9を介して前記空洞部11と連通して繋がる。
【0021】
一方の吸引開放手段12は以下の構成を有する。回転用ドラム1aと対向する固定用ドラム1bの面には同心円、または特定の長さを有する円弧形状でかつその断面形状が矩形である凸部12bが設けられている。この凸部12bの各部寸法は、回転用ドラム1aと固定用ドラム1bとが所定の間隔D1で対向させたとき、互いに干渉せず、かつ矩形溝11と所定の間隔D2を有するように設計されている。
【0022】
吸引保持部10に対向する前記凸部12bの側面には、加圧源用コネクタ14、電磁弁などを介して加圧源と連通して繋がる吸引開放孔12aが設けられている。この吸引開放孔12aは、回転用ドラム1aがインデックス動作で回転搬送し、所定の位置に搬送されたときのみに、前記吸引保持部10の吸引保持孔9と略同軸上に配置されるように設計されている。
【0023】
図3は、第一の搬送用ドラム1の要部断面の斜視図であり、図4は検査装置を第一の搬送用ドラム1の回転軸方向から見た構成図を示している。
【0024】
チップ型電子部品3が、回転用ドラム1aに吸引保持されているとき、加圧源用の電磁弁は閉じており、吸引開放手段12の凸部12bの内部は周囲と同様に略真空となる。次に、回転用ドラム1aがインデックス動作で回転搬送し、第二の搬送用ドラム2との受け渡し部4に搬送されたとき、すなわち3aの位置に搬送されたとき、図3に示すように凸部12bの吸引開放孔12aと吸引保持孔9とが略同軸となる。受け渡し部4で、チップ型電子部品3を位置決めし、電気特性の測定を終了した後に減圧側の電磁弁を閉じて加圧側の電磁弁を開放することで、加圧源により圧縮された圧縮空気が、加圧用孔12aと吸引保持孔10を通じて吸引保持部9に達し、チップ型電子部品3の吸引は解除されることになる。
【0025】
このように減圧側と加圧側の電磁弁を同期させてもよいし、減圧側に電磁弁を設けず常に減圧した状態でも上記と同等の効果が得られる。
【0026】
上記のように、本実施形態の吸引保持手段と吸引開放手段を設けることにより、安定した吸引力でチップ型電子部品3を搬送し、受け渡し機構4の受け渡し位置でチップ型電子部品3を容易に取り外すことができるため、受け渡し部におけるチップ型電子部品の着脱を容易にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係るチップ型電子部品の検査装置は、二つの搬送用ドラムを所定の間隔で配置し、外周部に吸引保持したチップ型電子部品を前記二つの搬送用ドラムで受け渡しをして搬送する経路で外観検査などを行うチップ型電子部品の検査装置であって、それぞれの搬送用ドラムには吸引保持孔全てと減圧源に連通して繋がる空洞部を有し、前記空洞部の所定の位置に前記吸引用孔と所定の間隔を有して略同軸上に配置した加圧源からなる吸引開放手段を設けており、チップ型電子部品が受け渡し機構の受け渡し位置に搬送されると同時に前記吸引開放手段から加圧空気を放出する。上記構成とすることにより、チップ型電子部品を安定に吸引しながら搬送することができ、さらに受け渡し機構に搬送されると同時に吸引開放手段によりチップ型電子部品を取り外すことができるため、受け渡し部におけるチップ型電子部品の着脱を容易にすることができる効果を奏するため、チップコンデンサやチップ抵抗などチップ型電子部品の検査装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態におけるチップ型電子部品の検査装置の斜視図
【図2】同検査装置に用いる搬送用ドラムの断面図
【図3】同検査装置に用いる搬送用ドラムの切欠き断面斜視図
【図4】同検査装置の一部の側面図
【図5】従来のチップ型電子部品の検査装置の構成図
【図6】同従来例の吸引保持部の断面図
【符号の説明】
【0029】
1 第一の搬送用ドラム
2 第二の搬送用ドラム
3 チップ型電子部品
4 受け渡し機構
5 撮像手段
6 測定器
9 吸引保持孔
10 吸引保持部
11a 空洞部
12 吸引開放手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ型電子部品をそれぞれの外周面に保持して搬送する第一、第二の搬送用ドラムと、前記第一の搬送用ドラムから前記第二の搬送用ドラムへチップ型電子部品を受け渡しする受け渡し機構と、前記第一、第二の搬送用ドラムにおける搬送経路で検査を行う検査手段とを備えるチップ型電子部品の検査装置であって、前記第一、第二の搬送用ドラムは、それぞれの外周部に、チップ型電子部品を吸引保持するための複数の吸引保持孔と、前記複数の吸引保持孔と減圧源とを連通して繋ぐ空洞部を有し、前記空洞部内に前記各吸引保持孔と略同軸となる吸引開放孔を有する吸引開放手段を複数設けてなり、前記チップ型電子部品が、前記第一の搬送用ドラムの受け渡し位置に搬送されると、前記吸引開放手段が加圧源と連通して繋がるチップ型電子部品の検査装置。
【請求項2】
受け渡し機構が、チップ型電子部品の少なくとも2方向より挟持して位置決め保持する受け渡し機構であって、前記チップ型電子部品を挟持するとともに電気特性を検査する請求項1に記載のチップ型電子部品の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−294646(P2007−294646A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120248(P2006−120248)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】