説明

チップ形コンデンサ製造用パレット及びこれを用いたチップ形コンデンサの製造装置

【課題】チップ形コンデンサの製造設備が大型化しコスト高という課題を解決し、簡単な構成でコストを低減し、かつ多品種少量生産にも対応可能なチップ形コンデンサの製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本体部1に設けた保持部2でリード線5a付のコンデンサ5を保持するパレットを用い、このパレットにコンデンサ5を挿入し保持させるコンデンサ挿入部と、リード線5aを所定長に切断し、圧延して偏平部を形成するリード線フォーミング部と、絶縁板をコンデンサ5に装着する絶縁板装着部と、リード線5aを絶縁板の溝に嵌め込むように折り曲げ、絶縁板から突出したリード線5aを切断するリード線加工部と、検査部と、テーピング部からなる工程を順次搬送して製造する構成により、各工程の設備を独立させて簡素化してコスト低減を図り、かつ多品種少量生産に対応できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器に使用されるコンデンサの中で、特に、絶縁板を装着することにより面実装対応を可能にしたチップ形コンデンサを製造する際に有用な、チップ形コンデンサ製造用パレット及びこれを用いたチップ形コンデンサの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図11はこの種のチップ形コンデンサの構成を示した断面図、図12は同底面から見た斜視図であり、図11と図12において30はコンデンサ素子を示し、このコンデンサ素子30は、アルミニウム箔を粗面化して陽極酸化することにより誘電体酸化皮膜を形成した陽極箔と、アルミニウム箔を粗面化した陰極箔とを、その間にセパレータを介在させて巻回することにより構成されているものである。31は上記陽極箔と陰極箔に夫々接続されて外部に引き出された一対のリード線である。
【0003】
32は上記コンデンサ素子30を図示しない駆動用電解液と共に収容した有底筒状のアルミニウムケース、33は上記一対のリード線31を挿通させて上記アルミニウムケース32の開口部に嵌め込まれ、アルミニウムケース32を絞り加工することによって封口を行うゴム製の封口部材である。
【0004】
34は上記リード線31が引き出された側のアルミニウムケース32の端面に当接するように装着された絶縁板であり、この絶縁板34には上記コンデンサ素子30から引き出された一対のリード線31が挿通する孔34a、ならびにこの孔34aに繋がる溝34bが外表面に設けられており、上記孔34aを挿通した一対のリード線31の先端部を上記溝34b内に嵌め込むように折り曲げているものである。
【0005】
また、このように構成された従来のチップ形コンデンサの製造装置は、間欠回転するターンテーブルの周縁に等間隔で設けられたチャック部(図示せず)でリード線31が下向きになる状態でコンデンサを保持し、リード線31の加工から絶縁板34の挿入、リード線31の折り曲げ、切断までの工程を上記ターンテーブル上で連続して行うことによって製造するようにしていたものであった。
【0006】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平8−213283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記従来のチップ形コンデンサの製造装置では、間欠回転するターンテーブルの周縁に等間隔で設けられたチャック部でリード線31が下向きになる状態でコンデンサを保持し、一連の工程を上記ターンテーブル上で連続して行うことによって製造するようにしたものであるため、製造設備が大型化して設備コストが増大するばかりでなく、設備が専用化してしまって多品種少量生産に対応するのが困難であるという課題があった。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を解決し、簡単な構成の設備により設備コストを削減し、かつ、多品種少量生産にも柔軟に対応可能なチップ形コンデンサの製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、一対のリード線が引き出されたコンデンサを保持する保持部が直線上に所定の間隔で複数個設けられた長尺状の本体部と、上記保持部に挿入されたコンデンサを付勢保持するように回動自在に設けられたレバーとを備えたチップ形コンデンサ製造用パレットと、このチップ形コンデンサ製造用パレットに一対のリード線が引き出されたコンデンサをリード線を上にして挿入して保持させるコンデンサ挿入部と、上記コンデンサから引き出された一対のリード線を所定の長さに切断し、切断したリード線を圧延して偏平部を形成するリード線フォーミング部と、このフォーミング後のリード線が挿通する孔ならびにこの孔に繋がる溝を有した絶縁板をリード線を挿通してコンデンサの端面に当接するように装着する絶縁板装着部と、この絶縁板の孔を挿通したリード線を絶縁板に設けた溝に嵌まり込むように折り曲げ、絶縁板から突出したリード線を切断し、さらにリード線の先端を再度折り曲げるリード線加工部と、この一連の加工を終えたコンデンサの電気特性ならびに外観検査を行う検査部と、検査後の良品のみを包装するテーピング部からなり、上記チップ形コンデンサ製造用パレットにコンデンサを保持させた状態で一連の工程を順次搬送して製造する構成としたものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、簡単な構成のチップ形コンデンサ製造用パレットにコンデンサを保持させた状態で一連の工程を順次搬送して製造する構成としたことにより、各工程の設備を独立させることができるようになるために設備を簡素化してコスト低減を図ることが可能になり、しかもチップ形コンデンサ製造用パレットのみを変更するだけで多品種少量生産に対応することが可能になるという格別の効果が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1に記載の発明について説明する。
【0012】
図1(a)〜(d)は本発明の実施の形態1によるチップ形コンデンサ製造用パレットの構成を示した平面図、正面図、底面図と同パレットでチップ形コンデンサを保持した状態の断面図であり、図1において、1は長尺状に形成された本体部、2はこの本体部1の長手方向の直線上に所定の間隔で複数個設けられた孔からなる保持部であり、この保持部2内に一対のリード線5aが引き出されたコンデンサ5を挿入して保持させるものである。
【0013】
3は軸3aを支点として図中の矢印A−B方向に回動自在に装着されたレバー、4はこのレバー3の一端側に弾接するように設けられてコンデンサ5を付勢するようにしたバネであり、上記レバー3を図中の矢印A方向に回動させることにより付勢を解除して保持部2内にコンデンサ5を挿抜自在にし、またレバー3を図中の矢印B方向に回動させる(上述のレバー3のA方向への力を無くすると、バネ4によりB方向へ移動する)ことによりバネ4の力でコンデンサ5を付勢するように構成されたものである。
【0014】
このように構成された本実施の形態によるチップ形コンデンサ製造用パレットは、簡単な構成で一対のリード線5aが引き出されたコンデンサ5を極めて容易に保持することができるため、この保持状態のままで一連の製造工程を順次搬送して加工や組み立てを行うようにすることにより、各工程の設備を独立させることができるようになるために設備を簡素化してコスト低減を図り、従来のような大掛かりな製造装置を用いなくてもチップ形コンデンサの製造を行うことができるようになるものである。
【0015】
また、本実施の形態によるチップ形コンデンサ製造用パレットのみを異なるサイズのチップ形コンデンサに応じて専用化するだけで各工程の設備に対応させることも可能になるため、多品種少量生産に適したものである。
【0016】
(実施の形態2)
本実施の形態は、チップ形コンデンサを製造するための一連の製造工程を各々独立させた構成とし、この各製造工程を上記実施の形態1で説明したチップ形コンデンサ製造用パレットを用いて順次搬送して加工や組み立てを行うようにしたものであり、その詳細を以下に説明する。
【0017】
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項2、3に記載の発明について説明する。
【0018】
図2は本発明の実施の形態2によるチップ形コンデンサの製造装置の構成を示した概念図であり、図2において、6は上記チップ形コンデンサ製造用パレットにコンデンサを挿入して保持させるコンデンサ挿入部、7は上記コンデンサから引き出された一対のリード線を所定の長さに切断し、切断したリード線を圧延して偏平部を形成するリード線フォーミング部、8はコンデンサの端面に絶縁板を装着する絶縁板装着部、9はこの絶縁板が装着されたコンデンサのリード線を絶縁板に設けた溝に嵌まり込むように折り曲げ、絶縁板から突出したリード線を切断するリード線加工部である。10はさらにリード線の先端を再度折り曲げるリード線加工部と上記一連の加工を終えたコンデンサの電気特性を検査する特性検査部、11は同外観を検査する外観検査部、12は検査後の良品のみを包装するテーピング部、13は包装部、14は上記チップ形コンデンサ製造用パレット15を元の位置(矢印Aの方向)に送り返すパレットリターン部である。
【0019】
図3(a)〜(c)は上記コンデンサ挿入部6の構成を示した平面図、部分断面正面図、部分断面側面図であり、図3において、15は上記コンデンサ5を保持するチップ形コンデンサ製造用パレットであり、レバー3の回動操作により付勢状態を解除して一対のリード線5aが引き出されたコンデンサ5をリード線5aを上にして挿入し、レバー3の回動操作によって付勢することによりコンデンサ5を保持させるようにしたものである。
【0020】
16は検査板であり、この検査板16には上記チップ形コンデンサ製造用パレット15に保持されたコンデンサ5から引き出された長さの異なる正負一対のリード線5aの異なる長さに対応するように形成された切り欠き部16aが設けられており、コンデンサ5を保持したチップ形コンデンサ製造用パレット15を図3(c)に示す矢印方向にスライドさせることにより、リード線5aが検査板16に接触せずに通過すればコンデンサ5の極性が正しい方向に挿入されたことを確認でき、また、リード線5aが検査板16に接触すればコンデンサ5の極性が間違った方向に挿入されていることになり、極めて容易に極性検査を行うことができるようにしたものである。
【0021】
図4は上記リード線フォーミング部7を構成する切断部の構成を示した部分断面図であり、図4において、17a、17bは可動刃を示し、チップ形コンデンサ製造用パレット15に保持されたコンデンサ5から引き出された一対のリード線5aを可動刃17aと17bにより所定の長さに切断するように構成されたものである。
【0022】
図5は同じくリード線フォーミング部7を構成する圧延部の構成を示した部分断面図であり、図5において、18はプレス加工部を示し、チップ形コンデンサ製造用パレット15に保持されたコンデンサ5から引き出され、上記切断部により所定の長さに切断された一対のリード線5aを圧延して偏平部を形成するように構成されたものである。
【0023】
図6は上記絶縁板装着部8の構成を示した部分断面図であり、図6において、19はフォーミング加工後のリード線5aが挿通する孔、ならびにこの孔に繋がる溝を有した絶縁板、20はこの絶縁板19を供給する絶縁板供給部で、20aはリードを絶縁板の穴にリード線5aを挿入するためのガイド部、21は絶縁板19を装着した後に絶縁板19が抜けないようにリード線5aを軽く曲げ加工する仮曲げ部であり、チップ形コンデンサ製造用パレット15に保持されたコンデンサ5から引き出された一対のリード線5aを下向きにして、絶縁板供給部20から供給された絶縁板19にリード線5aを挿入するようにしてコンデンサ5の端面に絶縁板19を当接させて装着し、この状態で仮曲げ部21によりリード線5aを軽く曲げることによってコンデンサ5から絶縁板19が抜け落ちるのを防止するように構成されたものである。
【0024】
図7、図8は上記リード線加工部9を構成する折り曲げ部の構成を示した部分断面図であり、図7と図8において、22はリード線5aを折り曲げるV字曲げパンチ、23は折り曲げられたリード線5aを絶縁板19に設けられた溝に嵌まり込むように折り曲げる平面曲げパンチであり、図7に示すように、チップ形コンデンサ製造用パレット15に保持されたコンデンサ5から引き出された一対のリード線5aをV字曲げパンチ22によりV字状に曲げ加工した後、図8に示すように、平面曲げパンチ23により絶縁板19に設けられた溝に嵌まり込むように折り曲げるように構成されたものである。
【0025】
図9は上記リード線加工部9を構成する切断部の構成を示した部分断面図であり、図9において、24aは上刃、24bは内刃、24cは下刃、24dはこれらの刃面を示したものであり、チップ形コンデンサ製造用パレット15に保持されたコンデンサ5に装着された絶縁板19から突出したリード線5aをこれらの切断刃により切断するように構成されたものである。
【0026】
図10は上記リード線加工部9を構成する決め押し部の構成を示した部分断面図であり、図10において、25はリード線5aの先端を再度折り曲げる決め押しパンチであり、上記絶縁板19に設けられた溝に嵌まり込むように折り曲げられたリード線5aの先端部分を再度決め押しするように折り曲げることにより、スプリングバック現象によりリード線5aの先端部分が若干戻って浮きが発生した場合でも、再度溝内に押し込むように構成されたものである。
【0027】
このように本実施の形態によれば、簡単な構成のチップ形コンデンサ製造用パレットにコンデンサを保持させた状態で一連の工程を順次搬送して製造する構成としたことにより、各工程の設備を独立させることができるようになるために設備を簡素化してコスト低減を図ることが可能になり、しかもチップ形コンデンサ製造用パレットのみを変更するだけで多品種少量生産に対応することが可能になるという格別の効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によるチップ形コンデンサ製造用パレット及びこれを用いたチップ形コンデンサの製造装置は、設備を簡素化してコスト低減を図り、多品種少量生産に柔軟に対応できるという効果を有し、各種電子機器に使用されるチップ形コンデンサの製造装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)本発明の実施の形態1によるチップ形コンデンサ製造用パレットの構成を示した平面図、(b)同正面図、(c)同底面図、(d)同パレットでチップ形コンデンサを保持した状態の断面図
【図2】本発明の実施の形態2によるチップ形コンデンサの製造装置の構成を示した概念図
【図3】(a)同装置のコンデンサ挿入部の構成を示した平面図、(b)同部分断面正面図、(c)同部分断面側面図
【図4】同装置のリード線フォーミング部を構成する切断部の構成を示した部分断面図
【図5】同装置のリード線フォーミング部を構成する圧延部の構成を示した部分断面図
【図6】同装置の絶縁板装着部の構成を示した部分断面図
【図7】同装置のリード線加工部を構成する折り曲げ部の構成を示した部分断面図
【図8】同装置のリード線加工部を構成する折り曲げ部の構成を示した部分断面図
【図9】同装置のリード線加工部を構成する切断部の構成を示した部分断面図
【図10】同装置のリード線加工部を構成する決め押し部の構成を示した部分断面図
【図11】チップ形コンデンサの構成を示した断面図
【図12】同底面から見た斜視図
【符号の説明】
【0030】
1 本体部
2 保持部
3 レバー
3a 軸
4 バネ
5 コンデンサ
5a リード線
6 コンデンサ挿入部
7 リード線フォーミング部
8 絶縁板装着部
9 リード線加工部
10 特性検査部
11 外観検査部
12 テーピング部
13 包装部
14 パレットリターン部
15 チップ形コンデンサ製造用パレット
16 検査板
16a 切り欠き部
17a 可動刃
17b 可動刃
18 プレス加工部
19 絶縁板
20 絶縁板供給部
21 仮曲げ部
22 V字曲げパンチ
23 平面曲げパンチ
24a 上刃
24b 内刃
24c 下刃
24d 刃面
25 決め押しパンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のリード線が引き出されたコンデンサを保持する保持部が直線上に所定の間隔で複数個設けられた長尺状の本体部と、上記保持部に挿入されたコンデンサを付勢保持するように回動自在に設けられたレバーとを備えたチップ形コンデンサ製造用パレット。
【請求項2】
チップ形コンデンサ製造用パレットに一対のリード線が引き出されたコンデンサをリード線を上にして挿入して保持させるコンデンサ挿入部と、上記コンデンサから引き出された一対のリード線を所定の長さに切断し、切断したリード線を圧延して偏平部を形成するリード線フォーミング部と、このフォーミング後のリード線が挿通する孔ならびにこの孔に繋がる溝を有した絶縁板をリード線を挿通してコンデンサの端面に当接するように装着する絶縁板装着部と、この絶縁板の孔を挿通したリード線を絶縁板に設けた溝に嵌まり込むように折り曲げ、絶縁板から突出したリード線を切断し、さらにリード線の先端を再度折り曲げるリード線加工部と、この一連の加工を終えたコンデンサの電気特性ならびに外観検査を行う検査部と、検査後の良品のみを包装するテーピング部からなり、上記チップ形コンデンサ製造用パレットにコンデンサを保持させた状態で一連の工程を順次搬送して製造する構成としたチップ形コンデンサの製造装置。
【請求項3】
コンデンサ挿入部でチップ形コンデンサ製造用パレットに保持されたコンデンサから引き出された長さの異なる正負一対のリード線の異なる長さに対応するように形成された切り欠き部を有する検査板をリード線の先端部を通過させることにより、正負の極性方向を確認する極性検査部を設けた請求項2に記載のチップ形コンデンサの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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