説明

チューナブルフィルタカメラ及びスキャン装置

【課題】
高速、高分解能、高感度で、撮影対象のマルチスペクトル画像情報を得ることのできるチューナブルフィルタカメラの提供。撮影対象をスキャンすることで撮影対象のマルチスペクトル画像情報を得ることができるスキャン装置の提供。
【解決手段】
レンズ11を通過して入射された光束を分光するビームスプリッタ12と、ビームスプリッタで分光された光束を任意の波長帯域を選択して透過させるチューナブルフィルタ13と、チューナブルフィルタを透過した光束を受光する受光部14と、を備えたチューナブルフィルタカメラ10。チューナブルフィルタカメラの1次元ラインセンサの配列方向に対し、スキャン対象物を直交方向に移動させる移動手段22を備え、スキャン中にチューナブルフィルタカメラの受光部に蓄積されたデータをリードアウトするようにしたスキャン装置20。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューナブルフィルタカメラ及びチューナブルフィルタカメラを用いたスキャン装置に関し、詳細には、チューナブルフィルタを受光部の前に設けたマルチスペクトル画像情報を取得するカメラ及びスキャン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチスペクトルカメラとしては、2次元モノクロイメージセンサを用い、可視光波長域400〜900nm程度の周波数帯域のうち必要とする特定バンドのみ通過させる回転式バンドパスフィルタを光路に設置し、複数の特定スペクトルイメージを取得する手法がある。
また、1次元ラインセンサ素子を用いて、カラーRGBカメラを構成する場合もあり、例えば、3板式RGBラインセンサ方式(図8参照)と並行配列ラインセンサ方式(図9参照)などがある。
【0003】
3板式RGBラインセンサ方式は、ダイクロックミラーで分光したイメージを、それぞれ光学的同位置に配置したRGB別の各センサに入力する方式であり、イメージのずれが生じることはなく同時刻同位置の1次元情報が得られる。
並行配列ラインセンサ方式は、並行に配置したRGB別の各ラインセンサに分光イメージとして順次入力する方式である。
【0004】
しかしながら、上記、3板式RGBラインセンサ方式は、実際には、数千ビットに及ぶ1次元素子の機械的な同位置調整はかなり困難で、各素子ピクセル間には1ピクセルから2ピクセル程度以上の調整誤差が生じ、ダイクロックプリズム自身の持つ歪み誤差や3つの光路に分離するため顕著な感度低下も無視できず、タクトを上げるためには大光量の光源も必要となるなど問題がある。
【0005】
また、上記、並行配列ラインセンサ方式は、配列ピッチ分視野位置がずれるため、同時刻に同一場所のRGB色情報が得られず、2次元方向のスキャン動作で時間軸を合わせるためクロック同期信号によって同一場所の色情報として再合成する必要が生じる(図10参照)。
但し、3板式RGBラインセンサ方式と比べ、ダイクロックミラーなどを使用しないため減光は比較的に少ないが、それでもセンサ前面に貼り付けた広域のRGBカラーフィルタによる減光は避けられず、特に、資料の劣化を恐れ高感度とするためスキャンレートを落とし蓄積時間を増やすか、あるいは照度を極端に高輝度にするなど工夫が必要である。
なお、本発明に関する従来技術としては以下の文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−300892号公報
【特許文献2】特開平9−144311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マルチスペクトルカメラは、計測対象物の分光反射率を、帯域内に設定された多バンド(波長域)複数の特徴点を精密に捉えることができることから、高レベルの計測を行う手法としては極めて有用であり、マルチスペクトル画像情報取得の重要性が改め認識され、高度なマルチスペクトルカメラの出現が待たれていたが、従来方式で高分解能のマルチスペクトルカメラを構成しようとすれば、図11に示すように、モノクロの1次元ラインセンサカメラを用意し、目的のバンドパスフィルタを必要枚数貼り付けた回転機構を有するカメラとしていた。
【0008】
このような回転機構バンドパスフィルタ方式のマルチスペクトルカメラは、チャンネル数だけ同位置のスキャンを繰り返す必要からタクト時間がチャンネル数分大幅に増すなどの問題があり、前記図9に示す並行配列ラインセンサの場合では、低感度を改善するため、良好なスペクトル画像を得ようとすれば、ハロゲン光源やメタルハライド光源を使用し、更に、スキャンレートを遅くするなどし、積算照明強度を相対的に得るか、あるいは高輝度LED照明装置を用いるなどして、撮影対象である資料を高輝度で照明する必要があった。
【0009】
しかし、従来のマルチスペクトルカメラは、可視光波長域400〜900nmの周波数帯域をモノクロイメージセンサで、必要とする特定バンドのみ通過させる、回転式バンドパスフィルタを光路に設置し、複数の特定スペクトルイメージを取得するなどの手法を取ってきた。
この方式で1次元ラインセンサを使用する場合、バンドパスフィルタ回転機構のみならず、1軸の移動機構が必要で、チャンネル数だけ同位置のスキャンを繰り返す必要もあった。その結果、タクト時間が大幅に増加し、更にバンドパスフィルタによる減光も無視できず低感度になるなど、問題が多かった。
本発明は、従来の問題点を解決するものであり、高速、高分解能、高感度で、撮影対象のマルチスペクトル画像情報を得ることのできるチューナブルフィルタカメラを提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、撮影対象を1回スキャンするだけで撮影対象のマルチスペクトル画像情報を得ることができるスキャン装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明のチューナブルフィルタカメラは、
レンズを通過して入射された光束を分光するビームスプリッタと、
該ビームスプリッタで分光された光束を任意の波長帯域を選択して透過させるチューナブルフィルタと、
該チューナブルフィルタを透過した光束を受光する受光部と、
を備えたことを特徴とする。
(2)本発明のチューナブルフィルタカメラは、前記(1)において、
前記受光部が、
CCDイメージング素子やCMOSイメージング素子などのフォトダイオードアレイの多数個を1列に並べた1次元ラインセンサであることを特徴とする。
(3)本発明のチューナブルフィルタカメラは、前記(1)において、
前記受光部が、CCDイメージング素子やCMOSイメージング素子などのフォトダイオードアレイの多数個を1列に並べた1次元ラインセンサをさらに並行に複数列配列したものであることを特徴とする。
(4)本発明のチューナブルフィルタカメラは、前記(1)〜(3)のいずれかにおいて、
前記チューナブルフィルタが2台設置され、
一方のチューナブルフィルタが光束を透過している間に、
他方のチューナブルフィルタが透過する光束の波長帯域を切替えていることを特徴とする。
(5)本発明のスキャン装置は、前記(1)〜(4)のいずれかのチューナブルフィルタカメラを備えており、
スキャン対象物を該チューナブルフィルタカメラに対して移動させる移動手段を備え、
スキャン中にチューナブルフィルタカメラの受光部に蓄積されたデータをリードアウトするようにしたことを特徴とする。
(6)本発明のスキャン装置は、前記(5)において、
前記チューナブルフィルタカメラの受光部が1次元ラインセンサであり、
該1次元ラインセンサの配列方向に対し、
スキャン対象物を直交方向に移動させる移動手段を備え、
スキャン中にチューナブルフィルタカメラの受光部に蓄積されたデータをリードアウトするようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のチューナブルフィルタカメラは、レンズを通して入射された光束を分光するビームスプリッタと、該ビームスプリッタで分光された光束から任意の波長帯域を選択して透過させるチューナブルフィルタと、該チューナブルフィルタを透過した光束を受光する受光部と、を備えているので、目的によって、ビームスプリッタで分光した光束をチューナブルフィルタを透過させる波長帯域の選定を任意に行え、画像の反射光をマルチスペクトル画像情報として、高分解能、高速、しかも超高感度で取得できる。
また、前記チューナブルフィルタカメラを用いたスキャン装置は、1スキャンで、画像の反射光を、高分解能、高速、しかも自動化で、マルチスペクトル画像情報として取得できる。
本発明のチューナブルフィルタカメラやスキャン装置を用いることにより、資源探査を始め、成分分析等の、従来不可能だったマルチスペクトル分析が高速高感度で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態のチューナブルフィルタカメラの構成を示す概略ブロック図である。
【図2】液晶チューナブルフィルタの動作原理を示す説明図である。
【図3】実施の形態のチューナブルフィルタカメラの動作原理を示す説明図である。
【図4】実施例1のチューナブルフィルタカメラのTDIブロック配列とチューナブルフィルタ切替時間の関係を示す説明図である。
【図5】実施例2のスキャン装置を示す概略説明図である。
【図6】実施例2のスキャン装置におけるデータ切替/転送(再配置)タイミングの構成を示す説明図である。
【図7】実施例2のスキャン装置におけるフロー図である。
【図8】従来例の3板式RGBラインセンサ構造を示す説明図である。
【図9】従来例の平行配列ラインセンサ構造を示す説明図である。
【図10】従来例の平行配列型CCD視野位置ずれを示す説明図である。
【図11】従来例の回転機構バンドパスフィルタ方式のマルチスペクトルカメラを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態のチューナブルフィルタカメラは、ビームスプリッタで分光された光束から任意の波長帯域を選択して透過させるチューナブルフィルタと、チューナブルフィルタを透過した光束を受光する受光部とを備えた、画像情報取得カメラである。
すなわち、入射する光をビームスプリッタで光路を分光し、各受光部の前面に設置したそれぞれのチューナブルフィルタを透過させる波長帯域を選択し、各チューナブルフィルタの後方に設置した各受光部に撮影対象の画像の反射光をマルチスペクトル画像情報として蓄積するようにしたことを特徴とする。
また、2台の受光部と2台のチューナブルフィルタとを、同期させながら交互に切替使用することで、チューナブルフィルタの透過波長帯域切替時間中に発生するイメージデータのロスを無くし、連続的なマルチスペクトル画像情報を取得することができる。
【0014】
本発明の実施形態のチューナブルフィルタカメラを、図面を用いて以下に詳細に説明する。図1は、実施形態のチューナブルフィルタカメラの構成を示す概略ブロック図である。
図示するように、実施形態のチューナブルフィルタカメラ10は、レンズ11、ビームスプリッタ12、チューナブルフィルタ13、受光部14、制御部15を備えており、マルチスペクトル画像情報を取得する対象を、レンズ11、ビームスプリッタ12、チューナブルフィルタ13を通して受光部14上に照射して結像させ、ビデオ信号に変換してチューナブルフィルタカメラ10からCPU51に出力するように構成されている。
すなわち、チューナブルフィルタカメラ10の受光部14に光が照射されると、電荷が時間とともに露光蓄積され、外部よりの並列転送パルスによって、リードアウトレジスターに順次加算した後、一括転送され、ビデオ信号として出力され、ビデオ信号は、時系列パルスと同期させて取り出されるようになっている。
本実施形態のチューナブルフィルタカメラ10では、2台の受光部14a、14bのそれぞれの前面に、液晶複屈折偏光干渉方式のチューナブルフィルタ13a、13bを2台設置するとともに、制御部15によってチューナブルフィルタ13a、13bの波長帯域の切替と、受光部14a、14bでのマルチスペクトル画像情報取得とを、タイミング良くクロック同期させるようにした。
これにより、チューナブルフィルタ13の波長帯域切替時間(例えば50ms)中に発生するマルチスペクトル画像情報取得のロスを無くすことができる。
【0015】
<ビームスプリッタ>
本実施形態のチューナブルフィルタカメラでは、撮影対象からの反射光をビームスプリッタを介して分光して、2台のチューナブルフィルタにそれぞれ入射するようにするようにしている。ビームスプリッタ12は、光束を二つに分割する光学分野の装置をいい、ビームスプリッタに入射した光束の一部は透過してチューナブルフィルタ13aを透過して受光部14aに到達し、一部は反射してチューナブルフィルタ13bを透過して受光部14bに到達する。
これにより、1つの光束を分光させて複数のチューナブルフィルタカメラを使用することが可能となる。
【0016】
<チューナブルフィルタ>
チューナブルフィルタ13は、選択した波長帯域の光束を透過し、それ以外の波長帯域の光束を反射や吸収により透過させない帯域透過フィルタをいう。これにより、撮影対象の反射光をマルチスペクトル画像情報として受光部に取得することができ、撮影対象の反射光の特徴点を精密に捉えることができる。
本実施形態において用いるチューナブルフィルタの原理を図2を用いて説明する。
チューナブルフィルタは、偏光子とネマティック液晶セルを積層することにより構成されており、印加電圧を可変することにより、液晶複屈折偏光干渉を利用して、ピーク波長を任意に高速で可変することができ、任意の波長成分の光を1nmごとに取り出すことができる。
【0017】
液晶複屈折偏光干渉とは液晶材料の複屈折を利用した偏光干渉をいう。
すなわち、図2に示すように、チューナブルフィルタにおいて、液晶分子を平行に配向させた層を生成し、両面に透明電極を配置することにより、液晶分子の長軸方向と短軸方向とでは屈折率の差を利用して、長軸方向に偏光した光と、それに直交する偏光方向の光の間に光路長の差を生じさせる。
そして、透明電極に電圧を印加して、液晶分子を長軸の面に対し垂直方向に傾かせ、直交する両方の光成分の間で光路長の差を小さくし、これを利用し電圧を変化させることによりフーリエ分光を適用することができる。
このような原理を利用したチューナブルフィルタは、PC等からの操作で、可視域から近赤外域の任意の波長を瞬時に選び出すことが可能な光学フィルタであり、可動部品を使用せずに電気的に透過する光の波長をチューニングし制御することが可能である。
このようなチューナブルフィルタとしては、例えば、米国CRI社(Canbridge Reserarch Institute社)のバリスペック(VariSpec)液晶チューナブルフィルタ(LCTF)があり、Lyot Filterチューニングステージとして、光学系を複数積層し、各層に印加する電圧を調整し透過する波長帯域を変化させるチューナブルフィルタ光学ユニットを提供している。
本実施形態では、この液晶チューナブルフィルタをビームスプリッタで分光した光路に2台組み込んでマルチスペクトル画像情報を取得できるチューナブルフィルタカメラとした。
【0018】
<チューナブルフィルタの波長帯域切替>
2台の受光部の前にそれぞれ設置されたチューナブルフィルタの波長帯域切替時間は、チューナブルフィルタの波長帯域切替えに要する時間を勘案して定められる。現状では、チューナブルフィルタにおいて電圧を調整し波長帯域を変化させる動作は比較的時間を要するため、この切替時間はチューナブルフィルタの特性に左右される。
この動作について図3を用いて、実施形態の受光部において取得するマルチスペクトル画像情報の構造を説明する。
すなわち、チューナブルフィルタの波長帯域切替のタイミングは、一方の受光部側で画像取得中は、他方の受光部の画像取得を休止状態とし、この間、他方の受光部側のチューナブルフィルタは、次の画像情報取得への切替準備(波長帯域切替)を行ようにする。
このように、チューナブルフィルタ、受光部をそれぞれ2台用意することにより、チューナブルフィルタの波長帯域切替動作に要する時間が比較的遅い(例えば50ms)のをカバーし、マルチスペクトル画像情報取得のロスを無くすことができる。
【0019】
<受光部>
受光部14としては、CCDイメージング素子やCMOSイメージング素子などのフォトダイオードアレイを1次元又は2次元に配設した集合体が挙げられる。
なお、実施形態のチューナブルフィルタカメラを、移動する撮影対象をスキャンするスキャン装置として用いる場合は、受光部14としては、多数個を1列に並べた1次元ラインセンサや、それらを並行に複数列配列したものを基本バンドとしたものが好適に用いられる。
また、この基本バンドをさらに並行に複数バンド配設してマルチバンドとして構成したものも用いることができる。
これにより、画像の反射光をマルチスペクトル画像情報として、高分解能、高速、しかも超高感度で取得できる。
【0020】
なお、受光部に用いるCCDイメージング素子は、可視光域を広げ、新たなたスペクトル応用解析を目的に、裏面入射型CCD(Back-Thinned CCD)を採用することもできる。
裏面入射型CCDは、受光部(裏面)に、保護膜を含む酸化膜や、ポリシリコン電極など、多数の薄膜を形成する必要がなく、高感度広域な理想的な入射面を形成できる。
また、裏面入射型CCDは、従来の表面入射型CCDでは検出できなかった近赤外〜紫外域の広域な入射光を高い量子効率で検出することができるという利点を有するので好ましく採用される。
【0021】
<制御部>
制御部15は、受光部14a、14bを制御する受光制御部との間で、チューナブルフィルタのタイミング制御、LineCCD制御、マルチバンド制御などの信号をやりとりする信号ドライバー・コントロール回路として用いられる。
【0022】
<スキャン装置>
スキャン装置は、前記のチューナブルフィルタカメラの1次元ラインセンサの配列方向に対し、スキャン対象物を直交方向に移動させる移動手段を備え、該スキャン対象物からの反射光を1次元ラインセンサ上に多重の露光を行い、1次元ラインセンサに蓄積された情報をリードアウトするようにしている。
そして、1次元ラインセンサによって得られた1次元情報を、2次元的なカメラ画像に再現させるため、撮影対象物を移動させる機構(移動体)を備え、一定速度でラインセンサ列方向と直角に移動させ、1次元ラインセンサ1列分のビデオ信号を組み合わせて2次元イメージとして組み立てる構成としている。
【実施例】
【0023】
<実施例1>
以下、実施例により、本発明のチューナブルフィルタカメラをさらに詳細に説明する。
実施例1のチューナブルフィルタカメラは、受光部14として、CCDイメージング素子多数個を1列に並べた1次元ラインセンサを、並行に複数列配列したものを基本バンド16とし、この基本バンド16を、さらに並行に複数バンド配設してマルチバンド17として構成し、レンズ11を通して入射した光束をビームスプリッタ12で分光して2光束とし、チューナブルフィルタ13a、13bを透過させ、受光部14a、14bのそれぞれにマルチスペクトル画像情報を蓄積するようになっている。
【0024】
図4に示すように、実施例1において、画素サイズ:8.5μmのCCDイメージング素子を、画素数:4096bit、1列(1−Line)に配列して、素子長:34.8mmのラインセンサとし、この1列のラインセンサを素子長方向(Y方向)と直角に96−stage(96−Line)TDI方式に並べたものを、40Mhz・4Tap総合転送速度160Mhzの基本バンド16とした(96段TDI−block)。
そして、この基本バンド16を、ダイ上に8バンド(8−block)を並行に配設したものをマルチバンド17の受光部14とし、
このマルチバンド17の受光部14を組み込んでチューナブルフィルタカメラとした。
【0025】
<実施例2>
次に、実施例2として、図4に示した実施例1のチューナブルフィルタカメラを備えたスキャン装置を説明する。
実施例2のスキャン装置20は、図5に示すように、チューナブルフィルタカメラ10の1次元ラインセンサの配列方向Yに対し、スキャン対象物(画像情報取得対象)21を直交方向Xに移動させる移動手段(回転保持ローラー)22を備えており、スキャン対象物21を移動させてその反射光をマルチスペクトル画像情報としてマルチバンド17からなる受光部14上に取得するようにしている。
【0026】
この実施例2のスキャン装置20においては、受光部14で取得するマルチスペクトル画像情報の取得と、チューナブルフィルタ13の波長帯域切替とのタイミングの時間設定を予め計算しておく。
すなわち、図4に示すように、受光部14は、96段TDI構造のラインセンサを用い、
加えてTDI−blockの設置間隔を4Lineに設定しているため、合計96段+4Line=100LineのLine Rate時間内に、一方の受光部の前に設置されたチューナブルフィルタの切替を実行してしまう必要がある。
言い換えれば、実施例のチューナブルフィルタカメラは、チューナブルフィルタを使用するために、この切替時間、アクセス時間より短い設定は動作できない。このため、この切替時間以下にならないカメラ動作時間・Line Rateである必要がある。
【0027】
100Lineの送信時間は、line Rate 36Khz(40Mhz)の場合、約10ms程度であり、18Khz(20Mhz)の場合では、約20ms程度と計算できる。
切替・アクセス時間は50msの液晶チューナブルフィルタを用いた場合は、動作クロックを10Mhz以下に調整し、スキャンスピードを抑えて液晶切替時間以下とならないようにした。
最近では、液晶チューナブルフィルタの切替・アクセス時間が10ms以下の物が現れ始め、更なるカメラ動作時間・Line Rateの高速化が行えるようになってきた。
【0028】
次に、実施例2のスキャン装置で取得した画像のデータフォーマットを図6に示す。
図6に、TDI平行配列8バンドからなる受光部14aと受光部14bとにおいて、交互にチューナブルフィルタ13a、13bを切替えて取得したマルチスペクトル画像情報のデータ構造、及びその画像情報データの転送(再配置)タイミングを示す。
すなわち、TDI平行配列8バンドからなる受光部14aと受光部14bにおいては、スキャン対象物からの画像情報を交互に取得するので、データ構造からすると、100Line分の設置ずれを含んだ構造として記録されている。
この取得したデータ構造を理解しやすいように、図6ではずらして展開図のように表現している。
【0029】
CPUでメモリに記録された画像データの再配置は、先ず、受光部14a側の100Line分の画像情報を読み込みする(1−1)。次に、受光部14b側の100Line分の画像情報を読み込みする(2−1)。次に、受光部14a側の100Line分の画像情報を読み込みする(1−2)。
以上のような繰り返しデータ構造のデータフォーマットで、各TDI−blockがマルチスペクトル画像情報の取得を行ってCPUのメモリ配列とし、これをプログラムで各番号ごとに再配列する事で連続したマルチスペクトル画像情報とすることができる。
【0030】
このような実施例2のスキャン装置におけるマルチスペクトル画像情報の取得の動作の流れを説明した一連の動作フローを図7に示す。
図7に示すように、スキャン装置20は、制御部15からの指示により、CCU、各受光部を初期化し、画像取得開始パルスを受信したら、受光部14a側で画像取得を開始するとともに受光部14b側のチューナブルフィルタの波長帯域切替を開始し、受光部14a側のチャンネル1(バンド1)で100Line分の画像情報を取得する。
次に、受光部14b側で画像取得を開始するとともに受光部14a側のチューナブルフィルタの波長帯域切替を開始し、受光部14b側のチャンネル1(バンド1)で100Line分の画像情報を取得する。
チューナブルフィルタカメラにおいてはこのような動作を繰り返すことによってスキャン対象物のマルチスペクトル画像情報を取得するが、スキャン装置20において、上記の画像取得のタイミングに合わせて制御部15からの指示により回転保持ローラー22を回転駆動させることにより、スキャン対象物の全部のマルチスペクトル画像情報を取得することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のチューナブルフィルタカメラは、従来不可能と思えた多数の革新的応用分野で、高速・高感度な高度アプリケーションに対応可能な、新発想のイメージングセンサとして中心的役割が大いに期待できる。
例えば、特に光や温度による劣化のおそれから、その扱いに当たって照明強度の制限が設けられた文化財のデジタルアーカイブなどに適用できる。
文化財デジタルアーカイブ応用では、顔料分析・文化財修復分析などに利用できる。
医用応用では病理診断・症例データベースなどに利用できる。
分光的色再現分析では、印刷照明メタメリズムの解消・照明下のカラーマネージメント、平面ディスプレイ照明メタメリズムの解消・忠実性・色再現性分析などに利用できる。
測色的分析では、忠実性・多原色表示分析などに利用できる。
高リアリティー映像表現分野では、臨場感重視の分析、その他資源探査・都市温度分布・人口分布解析などなどに利用できる。
また、前記チューナブルフィルタカメラを備えたスキャン装置は、上記の利用分野において、マルチスペクトル画像情報の取得を自動化できる。
このように本発明のチューナブルフィルタカメラ及びそれを備えたスキャン装置は、産業上の利用可能性が極めて高い。
【符号の説明】
【0032】
10 チューナブルフィルタカメラ
11 レンズ
12 ビームスプリッタ
13,13a、13b チューナブルフィルタ
14,14a、14b 受光部
15 制御部
16 基本バンド
17 マルチバンド
20 スキャン装置
21 スキャン対象物(画像情報取得対象)
22 移動手段(回転保持ローラー)
51 CPU
X 直交方向
Y 1次元ラインセンサの配列方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを通過して入射された光束を分光するビームスプリッタと、
該ビームスプリッタで分光された光束を任意の波長帯域を選択して透過させるチューナブルフィルタと、
該チューナブルフィルタを透過した光束を受光する受光部と、
を備えたことを特徴とするチューナブルフィルタカメラ。
【請求項2】
前記受光部が、
CCDイメージング素子やCMOSイメージング素子などのフォトダイオードアレイの多数個を1列に並べた1次元ラインセンサであることを特徴とする請求項1に記載のチューナブルフィルタカメラ。
【請求項3】
前記受光部が、CCDイメージング素子やCMOSイメージング素子などのフォトダイオードアレイの多数個を1列に並べた1次元ラインセンサをさらに並行に複数列配列したものであることを特徴とする請求項1に記載のチューナブルフィルタカメラ。
【請求項4】
前記チューナブルフィルタが2台設置され、
一方のチューナブルフィルタが光束を透過している間に、
他方のチューナブルフィルタが透過する光束の波長帯域を切替えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のチューナブルフィルタカメラ。
【請求項5】
前記(1)〜(4)のいずれかのチューナブルフィルタカメラを備えたスキャン装置であって、
スキャン対象物を該チューナブルフィルタカメラに対して移動させる移動手段を備え、
スキャン中にチューナブルフィルタカメラの受光部に蓄積されたデータをリードアウトするようにしたことを特徴とするスキャン装置。
【請求項6】
前記チューナブルフィルタカメラの受光部が1次元ラインセンサであり、
該1次元ラインセンサの配列方向に対し、
スキャン対象物を直交方向に移動させる移動手段を備え、
スキャン中にチューナブルフィルタカメラの受光部に蓄積されたデータをリードアウトするようにしたことを特徴とする請求項5のスキャン装置。

【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−138652(P2012−138652A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287797(P2010−287797)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(501298926)浜松メトリックス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】