説明

チューブポンプ

【課題】
本発明は、チューブポンプにおける弾性チューブの脱着操作の容易化を目的としている。
【課題を解決するための手段】
本発明に成るチューブポンプは、ハウジングに収納され輸液動作のための弾性チューブを扱く複数組のローラとガイドローラを有し、これらが夫々ベースの支軸で転動自在のアームに保持されて、該アームに摺接するカム機構により、該ローラ及びガイドローラの少なくも1組が、ロータ回転中心に対し偏移可能に構成され、また、ローラの位置調整に連繋する回転角調整リングをも備えるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工透析装置等に搭載されるチューブポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平6−142190号公報
【特許文献2】特開平6−218042号公報
【特許文献3】特開2002−349451号公報
【0003】
人工透析装置等人体を対象とする機器の信頼性は、これが極めて厳しく求められることは言うまでもないことで、その信頼性を補完する手段として、取扱いの容易化の必然性が自明の点もよく知られている。
【0004】
上述引用文献もその一例で、当該チューブポンプの取扱い性の容易化に係る提案であって、詳細は夫々の公報に譲ることとするが、機器本体の複雑化の懸念を窺わせつつも、取扱い性の改良の実現を意図するものであることに違いは無く、夫々が改善の跡を見せていることに異議を唱えるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の構成は、上述引用文献を含むいずれの周知技術も、当該チューブの着脱・機器のセットやリセット等に際し、取扱者の負担や迅速性については未だ多くの改善を期待されているのが実態であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に成るチューブポンプは、駆動軸を回転自在に保持する平板状底部と、該底部周縁に軸方向に伸張し2個のチューブ挿通溝が設けられると共にその内周面が円弧状を成す側壁を有するハウジングと、前記駆動軸と一体を成し、前記ハウジングの内周面に沿って転動する複数のローラと、チューブを挟持するようにして案内するための対のガイドローラとを有するロータ部と、を備え、ハウジングの内周面に沿うように案内され挿通される弾性チューブ内の液体をローラの転動押圧によって移送するように構成され、前記ロータ部を構成するローラ及びガイドローラが複数組設けられるもので、少なくもその1組が、ロータ回転中心に対し偏移可能に構成され、また、
【0007】
前記ロータ部は、駆動軸に固定され、径方向に伸張する腕部を有するベースと、片端が、該ベースの腕部端縁近傍に設けられている支軸により転動可能なアームと、該アームに保持されて、アームの転動によりロータ回転中心に対し偏移可能なローラ及びガイドローラを備え、また、
【0008】
前記ロータ部は、アームの内周面側に摺接するカム機構を備え、該カム機構によりアームが転動自在であるように構成され、更にまた、
【0009】
前記ベースが、駆動軸と嵌合する中心部の円筒状ボスと、該円筒状ボスの根元部に駆動軸と同心で円形状を成す噛合い構造を備えると共に、前記円筒状ボスの外周面に固定保持可能で且つカム端面とも嵌合可能に形成され、その片端面に前記ベースの円形状噛合い構造に対応する嵌合手段を有する回転角調整リングをも備えるように構成され、好ましくは、該カム機構が、これと一体を成すアーム転動操作ハンドルを備えるように構成され、また、
【0010】
ハウジングに開閉自在に保持されるカバーが、カムが所定の回転位置にセットされ、回転角調整リングと嵌合した状態でなければ前記カム機構と一体を成すハンドルと干渉して閉じられないように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に成るチューブポンプは、弾性チューブ操作の取扱いを簡素化し、当該チューブの脱着の容易化と共に、人的操作の簡便化による装着状態の安定性・信頼性の向上を実現している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面によって本発明の実施例を説明する。
なお、下記実施例では輸液のため転動しチューブを扱くローラが、1個ずつの対を成す例を示すが、当該ローラは、周知構成にも見られるように複数個で構成されればよく、その数は任意である。
【実施例1】
【0013】
図1は本願発明に成るチューブポンプの例の全体像を示す分解斜視図で、チューブポンプ1が、モータ2と、該モータの出力軸側に設けられたハウジング3と、輸液通路を形成するチューブ4と、該ハウジング内部に配置され、本願発明の主体である輸液動作での前記チューブを扱くためのロータ部を構成する各部材を示すものである。
【0014】
図2は、図1に示すロータ部が、ハウジング3に収納されて、輸液通路を形成するチューブ4を扱く様子を示す斜視図で、ローラ13及びガイドローラ14を保持するアームが、該アームの内面に摺接するカム12によって対のローラ13が互いに離間するように展伸し、一方のローラ13がチューブ4を押圧しながら転動することで扱く状態を示している。
【0015】
図3は、上述図2に対応し、図1に示すロータ部が、ハウジング3に収納されて、輸液通路を形成するチューブ4着脱等の操作のため、当該チューブ4を押圧する側のローラ13が回転軸心方向に偏移・退避し、チューブ4から離間した様子を示す斜視図で、カム12の転回で後述する復帰バネ16の作用で転動自在に設けられている対のアーム11の可動側先端が、互いに接近するように収縮することで、押圧側のローラ13が駆動軸2−1の中心方向に引き寄せられ、偏移している状態を示している。
【0016】
図4及び図5は夫々、上述カム12により、対のアーム11の可動側先端が最大離間状態である輸液動作時(a)と、カム12の転回で前記アーム11の可動側先端が回転軸心方向に引き寄せられて最接近状態となって、押圧側のローラ13がチューブ4から離間して扱きを開放したチューブ脱着時(b)のロータ部10だけを示す正面図と側面図である。
【0017】
上述図4と図5の、カム12が伸展状態での様子(a)とカム12が収縮状態での様子(b)とが、夫々前記図2と図3の斜視全体図に対応することは言うまでも無い。
【0018】
図6及び図7は夫々、上述図2及び図3に示す斜視全体図で説明しているロータ部(10)の構成を補足する説明図で、夫々が、カム12の伸展状態での輸液動作状態の様子(図6)とカム12の収縮状態でのローラ13がチューブ4から離間したチューブ脱着操作状態での様子(図7)であることは自明である。
【0019】
図8は、図1に示すロータ部を、チューブポンプ1として結合する構成を説明するもので、モータ2の出力軸である駆動軸2−1に、ベース17が嵌着固定されて、該ベース17から径方向に伸張する腕17−3の先端近傍にアームの支軸11−1で転動自在にアーム11を保持している。
【0020】
図示はしていないが、図1を参照して、対のアーム11の互いに向き合う内面側には、該内面に摺接するようにカム12が嵌着され、該カム12の転動操作で前記アーム11の可動側端に保持されたローラ13のチューブ4との離接を行うものである。
【0021】
図9を参照して、上述駆動軸2−1に固定されるベース17には、駆動軸2−1と嵌合するための中心孔を構成する円筒状のボス17−1と共に、該ボス17−1の根元部には円環状の噛合手段が設けられている。
【0022】
そして、上述ボス17−1の外周面には、前記円環状の噛合手段と係合する形状端面を備える回転角調整リング15が固定される。
【0023】
詳細は省くが、該回転角調整リング15は、図8に見るように、その端面にカム12との係合構造を備え、駆動軸2−1に固定されるアーム11に対するカム12の摺接部位の調整により、ローラ13のチューブ4との当接位置を調整するものである。
【0024】
図9は、図8に対応する側面図で、上述回転角調整リング15と、ローラ13、ガイドローラ14を備えるアーム11の装着への様子を示している。
【0025】
上述の通り、輸液動作のためチューブ4を押圧して扱くローラ13の、当該チューブ4との離接に係るカム12については、本願発明を構成する主要な構成要件ではあるが、カム機構そのものは周知のものであるので詳細は割愛する。
【0026】
また、図10に示す通り、カム12が所定の回転位置にセットされ、回転角調整リング15と嵌合した状態でなければ、カム12と一体のハンドル12−1がカバー5と干渉してカバー5が閉じられないように構成されている。
【0027】
上述の通り、カム12とこれに当接するアーム11でローラ13がチューブ4を押圧し扱く状態でしか上述カバー5が閉じられないことは、図示も省略しているが、カバー5の開閉に連動するスイッチが閉じ状態でONすることによりロータ部10の輸液動作状態となるように構成されていることを意味している。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に成るチューブポンプは、血液、透析液等を人体に送液する医療分野や、化学物資が混入された液体を送液する分析分野、醤油、食用油等を送液する食品分野等に広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に成るチューブポンプの例の、全体像を示す分解図
【図2】図1の例の輸液動作時を示す斜視図
【図3】図1の例のチューブ脱着時を示す斜視図
【図4】ロータ部の展伸状態・収縮状態双方を示す正面図
【図5】ロータ部の展伸状態・収縮状態双方を示す側面図
【図6】図2に対応する輸液動作時の正面図(a)と要部断面図(b)
【図7】図3に対応するチューブ脱着時の正面図(a)と要部断面図(b)
【図8】ロータ部のカム装着前正面略図
【図9】ロータ部のカム装着前側面略図
【図10】図6、図7に対応する、カムとカバーの干渉状態を説明する輸液動作時(a)とチューブ脱着時(b)の要部断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 チューブポンプ
2 モータ
3 ハウジング
4 チューブ
5 カバー
10 ロータ部
11 アーム
11−1 アームの支軸
12 カム
12−1 ハンドル
13 ローラ
13−1 ローラの支軸
14 ガイドローラ
15 回転角調整リング
16 復帰バネ
17 ベース
17−1 円筒状のボス
17−2 円環状に形成された噛合手段
17−3 腕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸を回転自在に保持する平板状底部と、該底部周縁に軸方向に伸張し2個のチューブ挿通溝が設けられると共にその内周面が円弧状を成す側壁を有するハウジングと、該ハウジングに開閉自在に保持されるカバーと、前記駆動軸と一体を成し、前記ハウジングの内周面に沿って転動する複数のローラと、チューブを挟持するようにして案内するための対のガイドローラとを有するロータ部と、を備え、ハウジングの内周面に沿うように案内され挿通される弾性チューブ内の液体をローラの転動押圧によって移送するように構成されるチューブポンプにおいて、
前記ロータ部を構成するローラ及びガイドローラは、複数組設けられ、少なくもその1組が、ロータ回転中心に対し偏移可能に構成されていること、を特徴とするチューブポンプ。
【請求項2】
前記ロータ部は、駆動軸に固定され、径方向に伸張する腕部を有するベースと、片端が、該ベースの腕部端縁近傍に設けられている支軸により転動可能なアームと、該アームに保持されて、アームの転動によりロータ回転中心に対し偏移可能なローラ及びガイドローラを備えること、を特徴とする請求項1に記載のチューブポンプ。
【請求項3】
前記ロータ部は、アームの内周面側に摺接するカム機構を備え、該カム機構によりアームが転動自在であるように構成されていること、を特徴とする請求項2に記載のチューブポンプ。
【請求項4】
前記ベースが、駆動軸と嵌合する中心部の円筒状ボスと、該円筒状ボスの根元部に駆動軸と同心で円形状を成す噛合い構造を備えると共に、前記円筒状ボスの外周面に固定保持可能で且つカム端面とも嵌合可能に形成され、その片端面に前記ベースの円形状噛合い構造に対応する嵌合手段を有する回転角調整リングをも備えること、を特徴とする請求項3に記載のチューブポンプ。
【請求項5】
前記カム機構が、アーム転動手動操作のための、一体を成すハンドルを備えること、を特徴とする請求項3又は4に記載のチューブポンプ。
【請求項6】
ハウジングに開閉自在に保持されるカバーが、カムが所定の回転位置にセットされ、回転角調整リングと嵌合した状態でなければ前記カム機構と一体を成すハンドルと干渉して閉じられないように構成されていること、を特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のチューブポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−230908(P2006−230908A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53488(P2005−53488)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000228730)日本サーボ株式会社 (276)
【Fターム(参考)】