説明

チューブ被覆管体の製造方法

【課題】皺の発生又は皺立ち等の歪みの実質的にないチューブを有するチューブ被覆管体を製造できるチューブ被覆管体の製造方法を提供すること。
【解決手段】管状基体の外周面にチューブ5が配置されたチューブ被覆管体を、管状の固定筒11内で半径方向外側に拡径させたチューブ5の内部に管状基体を挿入して、製造するチューブ被覆管体の製造方法であって、チューブ5の両端部それぞれを、その周方向に部分的に固定筒11の内周面に圧接すると共に、チューブ5の両端部それぞれの周方向に一巡するように固定筒11に圧接して、チューブ5を固定筒11に固定する工程を有することを特徴とするチューブ被覆管体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チューブ被覆管体の製造方法に関し、さらに詳しくは、皺の発生又は皺立ち等の歪みの実質的にないチューブを有するチューブ被覆管体を製造できるチューブ被覆管体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター及びビデオプリンター等のプリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機等の画像形成装置は現像剤を定着させる定着装置を備えている。この定着装置は、通常、複数の弾性ローラ又はベルトを備え、加熱及び/又は加圧によって記録体に転写された現像剤を記録体に定着させる。この弾性ローラは、現像剤離型性の改善を目的として、弾性体と弾性体の外周を被覆する管体とを備えている。
【0003】
このような弾性ローラの管体は、単層構造であってもよいが各種機能を発揮するように複層構造とされることがある。例えば、複層構造の管体として、管状基体と管状基体の外周面に配置されたフッ素樹脂チューブとを備えた管体が挙げられる。この管体は、例えば、管状基体をフッ素樹脂チューブに挿入して製造される。このとき、フッ素樹脂チューブは通常薄層であるから製造工程中において皺が発生しやすく、製造される弾性ローラのフッ素樹脂チューブに皺が残存して外周面が平坦にならないことがある。このように弾性ローラの外周面に皺が存在していると、例えば定着ローラ又は加圧ローラとして定着装置に装着されたときに現像剤を均一に加熱及び/又は加圧できず、現像剤を所望のように記録体に定着できなくなる。
【0004】
単層構造のプラスチックチューブに皺が発生することを防止することを目的とする装置に関するものとして、例えば、特許文献1には「金属パイプ内周面にプラスチックチューブを沿わせて密着させ、そのプラスチックチューブ両端を、前記金属パイプの両端部を覆うように折り返して保持し、前記プラスチックチューブ内面に処理剤を塗布するものにおいて、前記金属パイプには、その内周面から外周面に通じる複数の通気孔を設け、これら全ての通気孔をふさぐように前記金属パイプ外周面に密着し、かつ前記金属パイプを挟んで支持するホルダと、このホルダに接続されてホルダと金属パイプ外周面との間に設けられた空洞と、前記通気孔を通じて前記金属パイプとプラスチックチューブとの隙間を減圧する吸引機とを備えたことを特徴とするチューブ加工処理装置」が記載されている。
【0005】
ところで、定着ローラではなく、エンドレスベルト、特に定着ベルトに関するものであるが、特許文献2には「エンドレス状のベルト基体を用意する第1の工程と、このベルト基体内に、緊密に中子を挿入して被挿入体を構成する第2の工程と、前記被挿入体の外周面に接着剤を塗布する第3の工程と、前記被挿入体の外周に、少なくとも径方向に沿う弾性を有するフッ素樹脂製チューブを緊密に被覆する第4の工程と、前記被挿入体の外径よりも径小な口径を有する扱きリングを、該被挿入体の外周に被覆された前記フッ素樹脂製チューブの外周の一端に嵌合させ、該扱きリングを該被挿入体の軸方向に沿って他端に向けて移動させて、前記第3の工程で塗布した接着剤を該被挿入体と該フッ素樹脂製チューブとの間で扱く第5の工程と、前記中子を前記ベルト基体から取り出す第6の工程と、前記接着剤を硬化させる第7の工程と、を具備することを特徴とするフッ素樹脂製チューブ被覆ベルトの製造方法」が記載されている。
【0006】
また、同じくエンドレスベルトに関するものであるが、特許文献3には「エンドレス状のベルト基体を用意する第1の工程と、前記ベルト基体内に、緊密に中子を挿入して被挿入体を構成する第2の工程と、前記被挿入体の外周に、少なくとも径方向に沿う弾性を有するフッ素樹脂製チューブを緊密に被覆する第3の工程と、前記被挿入体と前記フッ素樹脂製チューブとの間に、所定の流動性を有する接着剤を注入する第4の工程と、前記被挿入体の外径よりも径小な口径を有する扱きリングを、該被挿入体の外周に被覆された前記フッ素樹脂製チューブの外周の一端に嵌合させ、該扱きリングを該被挿入体の軸方向に沿って他端に向けて移動させて、前記第4の工程で注入された前記接着剤を該被挿入体と該フッ素樹脂製チューブとの間で扱く第5の工程と、前記中子を前記ベルト基体から取り出す第6の工程と、前記接着剤を硬化させる第7の工程と、を具備することを特徴とするフッ素樹脂製チューブ被覆ベルトの製造方法」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平07−037625号公報
【特許文献2】特開2002−036361号公報
【特許文献3】特開2002−036383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の「チューブ加工処理装置」においては「プラスチックチューブの両端を折り返して保持」するから、プラスチックチューブの折り返し時又は後に折り返した部分に皺が発生しやすくなる。
【0009】
また、特許文献2のフッ素樹脂製チューブ被覆ベルトの製造方法及び特許文献3のフッ素樹脂製チューブ被覆ベルトの製造方法においても「フッ素樹脂製チューブを径方向に外方に拡径させながら挿入パイプ24の外周面に折り返」して固定している(特許文献2の0036欄〜0040欄及び図8〜図11等、並びに、特許文献3の0041欄及び図7〜図10等)から、特許文献1と同様にフッ素樹脂製チューブを折り返した部分に皺が発生しやすくなる。
【0010】
さらに、特許文献2のフッ素樹脂製チューブ被覆ベルトの製造方法及び特許文献3のフッ素樹脂製チューブ被覆ベルトの製造方法においては「扱きリングを被挿入体の軸方向に沿って移動させる」第5の工程を有している。この第5の工程においては、しごき条件を精密に設定し、スリーブと扱きリングとの軸線を高精度に一致させ、さらに接着剤の塗布量を軸線及び周方向に管理して扱きリングを移動させないと、かえってフッ素樹脂製チューブに皺が発生しやすくなることがある。
【0011】
この発明は、皺の発生又は皺立ち等の歪みの実質的にないチューブを有するチューブ被覆管体を製造できるチューブ被覆管体の製造方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、管状基体の外周面にチューブが配置されたチューブ被覆管体を、管状の固定筒内で半径方向外側に拡径させた前記チューブの内部に前記管状基体を挿入して、製造するチューブ被覆管体の製造方法であって、前記チューブの両端部それぞれを、その周方向に部分的に前記固定筒の内周面に圧接すると共に、前記両端部それぞれの周方向に一巡するように前記固定筒に圧接して、前記チューブを前記固定筒に固定する工程を有することを特徴とするチューブ被覆管体の製造方法であり、
請求項2は、前記固定する工程は、自身の軸線に対して直交方向に拡張可能であって複数の分割部材を有する拡開部材を拡張させて、前記分割部材で前記両端部それぞれを部分的に前記内周面に圧接する第1サブ工程を有することを特徴とする請求項1に記載のチューブ被覆管体の製造方法であり、
請求項3は、前記固定する工程は、前記第1サブ工程に次いで、前記固定筒に圧接する外表面を有する押さえ部材を前記チューブに内挿して、前記外表面で前記両端部それぞれを密閉状態に前記固定筒に圧接する第2サブ工程を有することを特徴とする請求項2に記載のチューブ被覆管体の製造方法であり、
請求項4は、前記固定する工程の後に、耐熱性中子に外装された前記管状基体を前記チューブ内に配置する工程を有することを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載のチューブ被覆管体の製造方法であり、
請求項5は、前記配置する工程の後に、前記チューブが接着剤を介して外周面に配置された前記管状基体を前記耐熱性中子に外装された状態で前記接着剤を硬化させる工程を有することを特徴とする請求項4に記載のチューブ被覆管体の製造方法であり、
請求項6は、前記固定する工程の後に、中子に外装された前記管状基体を前記チューブ内に配置する工程を有することを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載のチューブ被覆管体の製造方法であり、
請求項7は、前記配置する工程の後に、前記中子を前記チューブ内から抜脱して耐熱性中子を前記管状基体内に配置する工程と、前記チューブが接着剤を介して外周面に配置された前記管状基体を前記耐熱性中子に外装された状態で前記接着剤を硬化させる工程とを有することを特徴とする請求項6に記載のチューブ被覆管体の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法は、チューブの両端部それぞれをその周方向に部分的に固定筒の内周面に圧接すると共に両端部それぞれの周方向に一巡するように固定筒に圧接してチューブを固定筒に固定する工程を有しているから、チューブの両端部それぞれを固定筒の外周面に折り返さなくてもほぼ均等な密閉状態に固定筒の内面に固定でき、皺をほとんど発生させずに固定筒に固定したチューブに管状基体を挿入できる。したがって、この発明によれば、皺の発生又は皺立ち等の歪みの実質的にないチューブを有するチューブ被覆管体を製造できるチューブ被覆管体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法に用いられる固定筒等の一例を示す軸線に沿う平面での概略断面図である。
【図2】図2は、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法に用いられる拡開部材の一例を示す、軸線に垂直な平面での主要部断面図である。
【図3】図3は、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法においてチューブを固定筒に挿入した状態を示す軸線に沿う平面での概略断面図である。
【図4】図4は、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法においてチューブを固定した状態を示す軸線に沿う平面での概略断面図である。
【図5】図5は、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法においてチューブを固定筒の内周面に吸着した状態を示す軸線に沿う平面での概略断面図である。
【図6】図6は、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法の一例である第一製造方法において固定筒に吸着されたチューブ内に管状基体を挿入した状態を示す軸線に沿う平面での概略断面図である。
【図7】図7は、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法の一例である第一製造方法において固定筒へのチューブの吸着を解除した状態を示す軸線に沿う平面での概略断面図である。
【図8】図8は、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法の一例である第一製造方法において管状基体をチューブで被覆した被覆体に耐熱性中子を挿入した状態を示す軸線に沿う平面での概略断面図である。
【図9】図9は、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法の別の一例である第二製造方法において固定筒に吸着されたチューブ内に耐熱性中子に外装された管状基体を挿入した状態を示す軸線に沿う平面での概略断面図である。
【図10】図10は、耐熱性中子に外装された被覆体を示す軸線に沿う平面での概略断面図である。
【図11】図11は、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法によって製造されるチューブ被覆管体の一例を示す軸線に沿う平面での概略断面図である。
【図12】図12は、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法によって製造されるチューブ被覆管体の別の一例を示す軸線に垂直な平面での概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法を説明する前に、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法によって製造されるチューブ被覆管体について、簡単に説明する。
【0016】
この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法によって製造されるチューブ被覆管体は、管状基体と、この管状基体の外周面に配置されたチューブとを少なくとも備えている。したがって、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法によって製造されるチューブ被覆管体は、管状基体及びチューブの他にこれらの間に配置される弾性層及び接着剤層等を備えていてもよい。このようなチューブ被覆管体の一例として、図11に示されるように、管状基体4と管状基体4の外周面に配置されたチューブ5とを備えたチューブ被覆管体1が挙げられる。チューブ被覆管体の別の一例として、例えば、図12に示されるように、管状基体4と管状基体4の外周面に配置された弾性薄層6と弾性薄層6の外周面に配置されたチューブ5を備えたチューブ被覆管体2が挙げられる。
【0017】
管状基体4は、例えば、鉄、ステンレス鋼、ニッケル、銅等の高い熱伝導を有する金属材料で管状に形成され、一層構造とされても二層以上が積層された積層構造とされてもよい。又は、この管状基体4は、カーボンブラック、金属(アルミニウム、ニッケル、銅等)若しくはそれらの合金、金属酸化物(酸化スズ、酸化亜鉛等)又は無機酸化物(チタン酸カリウム等)で導電性が付与された樹脂で管状に形成されていてもよい。このような樹脂として、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。管状基体4は、通常薄層に形成され、例えば、その全体の厚さは、20〜100μmであるのが好ましく、30〜50μmであるのが特に好ましい。管状基体4はメッキ等が施されてもよい。複層構造の管状基体として、例えば、ニッケル電鋳基材と銅層とニッケルメッキ層とがこの順で直接積層された3層構造の管状基体が挙げられる。なお、積層される各層の間にはプライマー層等が挿設されてもよい。
【0018】
所望により設けられる弾性薄層6は、例えば、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等のゴムを含有するゴム組成物で、通常、1〜200μmの厚さに、好ましくは30〜150μmの厚さに形成される。この弾性薄層6は所望によりプライマー又は接着剤層を介して管状基体4の外周面に形成される。
【0019】
チューブ5は、現像剤離型性等の観点から好ましくはフッ素樹脂組成物で、通常、1〜200μmの厚さ、好ましくは5〜50μmの厚さの管状を、所望によりプライマー及び/又は接着剤層を介して、管状基体4又は弾性薄層6の外周面を被覆するように、配置されている。フッ素樹脂組成物としてフッ素樹脂と所望により各種添加剤とを含有するフッ素樹脂組成物を挙げることができる。フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられる。
【0020】
これらのチューブ被覆管体1及び2は、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法によって製造されるから、後述するように、チューブ5に皺又は皺立ち等の歪みが実質的になく平坦な外周面を有している。
【0021】
この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法は、管状基体の外周面にチューブが配置されたチューブ被覆管体を、管状の固定筒内で半径方向外側に拡径させたチューブの内部に管状基体を挿入して、製造する方法である。このような製造方法においては、管状基体とチューブとの密着性を確保するためにチューブの内径は管状基体の外径よりも小さくなっている。したがって、内径が小さく薄肉のチューブに皺を実質的に発生させることなしに管状基体を挿入するのは容易ではないが、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法によれば、チューブに皺の発生又は皺立ち等の歪みを実質的に生じさせることなく管状基体をチューブに挿入できる。なお、この発明において、管状基体は、例えば図11に示されるように管状基体4そのものでもよく、また、図12に示されるように外周面に弾性薄層6を有する管状基体4であってもよく、さらに、図示しないが、外周面に弾性薄層と接着剤層(塗布層)とを有する管状基体であってもよい。また、この発明において「実質的に皺等がない」とは、皺等がまったくない場合に加えて、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法によって製造されたチューブ被覆管体を用いて弾性ローラとしたときに弾性ローラは初期の機能を発揮する程度に微小な皺等が存在する場合をも含む。
【0022】
この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法は、チューブの両端部それぞれをその周方向に部分的に固定筒の内周面に圧接すると共に両端部それぞれの周方向に一巡するように固定筒に圧接してチューブを固定筒に固定する工程を有している。したがって、チューブの両端部それぞれを固定筒の外周面に折り返さなくてもほぼ均等な密閉状態に固定筒の内面に固定でき、皺をほとんど発生させずに固定筒に固定したチューブに管状基体を挿入できる。
【0023】
この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法を具体的に説明する。この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法の一例である製造方法(以下、この発明に係る第一製造方法と称する。)は、第1中子に外装されたチューブを固定筒内に配置する第1工程と、チューブの両端部それぞれをその周方向に部分的に固定筒の内周面に圧接すると共に両端部それぞれの周方向に一巡するように固定筒に圧接してチューブを固定筒に固定する第2工程と、固定筒及びチューブで形成された空間を減圧してチューブを固定筒の内周面に吸着する第3工程と、第1中子を固定筒内から抜脱した後に第2中子に外装された管状基体を固定筒に吸着されたチューブ内に配置する第4工程と、チューブの吸着を解除する第5工程と、第2中子をチューブ内から抜脱した後に第1中子に外装された耐熱性中子を管状基体内に配置する第6工程と、チューブの両端部それぞれの圧接を解除した後に第1中子を固定筒から抜脱する第7工程と、第1中子から被覆原体を取り出して耐熱性中子に外装された状態で接着剤を硬化する第8工程とを有している。
【0024】
この発明に係る第一製造方法においては、第1工程として、図3に示されるように、第1中子15に外装されたチューブ5を固定筒11内に配置する工程を実施する。なお、図3〜図8は、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法の特徴であるチューブ5の両端部の保持機構又は保持状態に着目した図面とし、理解しやすいように一端部のみが図示されている。したがって、図3〜図8において、図示した一端部と図示していない他端部とは特に言及しない限り対称になっている。
【0025】
この第1工程においては、第1中子15と固定筒11とチューブ5とを準備する。チューブ5は前記した通りであり、通常、その軸線長さは管状基体4よりも長く設定される。
【0026】
第1中子15は、チューブ5内に挿入されてチューブ5を自身の外周面に保持する棒状部材であり、例えば、図3に示されるように、チューブ5の内径とほぼ同径の中子本体41と、中子本体41の両端部から中子本体41よりも外径の小さな細径部42とを有している。中子本体41と細径部42との外径差は後述する拡開部材12が細径部42の外周に中子本体41の外周面から突出しないように配置可能な値に設定されている。
【0027】
固定筒11は、チューブ5を半径方向に拡径した状態に固定する部材であり、図1及び図3に示されるように、筒本体21と、筒本体21の両端部それぞれに配置される管状端部22とを有している。筒本体21は、チューブ5及び管状基体4等を挿入可能な軸孔23を有する管状部材であり、その両端部それぞれに形成された管状大径部25にOリング24が配置されている。この筒本体21は、その軸孔23に配置されたチューブ5を吸引するための吸引孔(図示しない。)が少なくとも1つ形成され、この吸引孔は真空装置等に接続されている。管状端部22は、筒本体21を略同一の外径と、チューブ5及び後述する管状押さえ部材13等の外径よりも大きな内径とを有する管状部材である。この管状端部22はその軸線方向の略中央に形成された管状溝部26にOリング27が配置されている。
【0028】
この発明に係る第一製造方法の第1工程においては、まず、第1中子15にチューブ5を外装すなわち被覆するサブ工程を実施する。このサブ工程は、チューブ5に第1中子15を挿入して外周面にチューブ5を保持する。このとき、図3に示されるように、第1中子15はチューブ5の開口端部から中子本体41が出現しないように挿入される。すなわち、チューブ5と細径部42との間に後述する拡開部材12が進入可能な空間28が形成されるようにチューブ5に第1中子15が挿入される。第1中子15にチューブ5をより緊密に保持するのであれば、第1中子15を中空構造として外周面に穿孔された吸引孔でチューブ5を吸引吸着することもできる。
【0029】
この第1工程においては、次いで、図3に示されるように、第1中子15を固定筒11に挿入してチューブ5を固定筒11内に配置するサブ工程を実施する。このとき、第1中子15はチューブ5の開口端部がOリング27よりも管状端部22の開口部側に位置するように固定筒11内に挿入される。
【0030】
このようにして第1中子15に外装されたチューブ5を固定筒11内に配置する第1工程が完了してチューブ5が固定筒11内に配置される。
【0031】
この発明に係る第一製造方法においては、第2工程として、図4に示されるように、チューブ5の両端部それぞれを、その周方向に部分的に固定筒11の内周面に圧接すると共に両端部それぞれの周方向に一巡するように固定筒11に圧接して、チューブ5を固定筒11に固定する工程を実施する。この第2工程においてチューブ5の両端部の部分的な圧接の後に一巡するように圧接するとチューブ5に皺等の発生を防止できる。
【0032】
この発明に係る第一製造方法の第2工程においては、チューブ5の端部を拡径させる拡開部材12及びチューブ5の端部を固定筒11に圧接する管状押さえ部材13を使用する。図2には拡開部材12の縮閉状態が示されている。この拡開部材12は、図2に示されるように、自身の軸線に対して直交方向すなわち半径方向に拡張可能で、円弧状の外周面を有する複数具体的には6個の可動爪31を有している。そして、拡開部材12は可動爪31が最も近接した縮閉状態にあるときにチューブ5と管状端部22との空間28に進入可能で、かつ可動爪31が拡開した拡開状態にあるときに固定筒11特に管状端部22の内周面に圧接可能な形状及び寸法になっており、可動爪31は断面円弧状になっている。拡開部材12は可動爪31それぞれが半径方向に独立に又は同期して前進すなわち拡開し、又は、後進すなわち縮閉するようになっている。
【0033】
管状押さえ部材13は、図1及び図4に示されるように、管状部材であり、その外径はOリング27の内径よりも小さく、かつOリング24の内径よりも大きく、その内径は固定筒11の軸孔23に挿脱される部材、例えば第1中子15、管状基体4等の外径よりも大きくなっている。
【0034】
この発明に係る第一製造方法の第2工程においては、まず、チューブ5の両端部それぞれを固定筒11の内周面にその周方向に部分的に圧接する第1サブ工程を実施する。この第1サブ工程は、拡開部材12を拡張させて可動爪31それぞれでチューブ5の両端部それぞれを部分的に固定筒11の内周面に圧接する工程である。このサブ工程は、図3に示されるように、第1工程で形成された空間28に縮閉状態にある拡開部材12を進入させる。次いで、拡開部材12の可動爪31それぞれを半径方向に前進させて拡径させ、その外周面でチューブ5の端部を半径方向に押し広げつつ固定筒11すなわち管状端部22の内周面に、具体的にはOリング27に圧接させる。拡開部材12が拡開すると隣接する可動爪31同士は周方向に離間するから、チューブ5の端部は可動爪31の外周面で周方向に部分的に固定筒11の内周面に圧接されて固定される。そして、チューブ5の端部のうち可動爪31で固定筒11に部分的に圧接された部分は固定筒11の内周面に密着しているので吸着したときに皺等が発生しにくくなるが、チューブ5の端部のうち可動爪31で固定筒11に圧接されていない部分特にその可動爪31近傍は固定筒11の内周面に密着していないので吸着したときに皺が発生しやすくなる。
【0035】
この発明に係る第一製造方法の第2工程においては、次いで、チューブ5の両端部それぞれの周方向に一巡するように固定筒11に圧接する第2サブ工程を実施する。この第2サブ工程は、固定筒11の周方向に一巡するように圧接する外表面を有する管状押さえ部材13をチューブ5に内挿して、その外表面でチューブ5の両端部それぞれを密閉状態すなわち周方向に一巡するように固定筒11に圧接する工程である。具体的には、第2サブ工程は、図4に示されるように、端部が可動爪31で部分的に圧接されたチューブ5内に拡開部材12の内部を経て管状押さえ部材13をチューブ5内に進入させて、その端面と固定筒11具体的には管状大径部25に配置されたOリング24とでチューブ5を狭圧保持する。このとき、チューブ5の両端部それぞれは拡開部材12で固定されているから、チューブ5が薄肉であってもチューブ5を変形等させることなく管状押さえ部材13をチューブ5内に円滑に進入させることができる。このようにして管状押さえ部材13をチューブ5内に進入させると、チューブ5は拡開部材12によって圧接された端部よりも中央側でその両端部それぞれがその周方向に一巡するようにOリング24に圧接され、その周方向の全体にわたって密閉状態となるように固定筒11に固定される。そして、この全体的に密閉状態となるように固定された部分はOリング24に密着しているので吸着したときに皺等が発生しにくくなる。
【0036】
このようにして、チューブ5の両端部それぞれを部分的に圧接すると共に中央側で全体的に圧接してチューブ5を固定筒11に固定する。そうすると、固定筒11の軸孔23内には、図4に示されるように、固定筒11の内周面と固定筒11内に配置されたチューブ5とで両端が閉塞された空間32が形成される。
【0037】
この発明に係る第一製造方法においては、第3工程として、図5に示されるように、固定筒11及びチューブ5で形成された空間32(図5において図示しない。)を減圧してチューブ5を固定筒11の内周面に吸着する工程を実施する。なお、チューブ5が第1中子15に吸着保持されている場合には先に吸着保持を解除する。このようにして吸引孔から空間32を減圧すると、チューブ5はその両端部が固定筒11に固定されているから軸線方向全体にわたって拡径して固定筒11の内周面に吸着される。このとき、チューブ5の両端部それぞれは管状押さえ部材13で周方向の全体にわたって密閉状態となるように固定されているから、空間32はほぼ均一に減圧され、また空間32の真空度が高くなり、拡径に伴ってチューブ5に皺が発生することを防止できる。
【0038】
この発明に係る第一製造方法においては、第4工程として、図6に示されるように、第1中子15を固定筒11内から抜脱した後に第2中子16に外装された管状基体4を、固定筒11に吸着されたチューブ5内に配置する工程を実施する。
【0039】
この発明に係る第一製造方法の第4工程においては、管状基体4及び管状基体4を保持する第2中子16を使用する。管状基体4は前記した通りであり、通常、その外周面に接着剤が塗布されている。第2中子16は、管状基体4内に挿入されて管状基体4を自身の外周面に保持する棒状部材であり、例えば、図6に示されるように、管状基体4の内径とほぼ同じ外径を有している。
【0040】
この発明に係る第一製造方法の第4工程においては、まず、第1中子15を固定筒11内から抜脱するサブ工程を実施し、次いで、第2中子16に外装された管状基体4を固定筒11に吸着されたチューブ5内に配置するサブ工程を実施する。このサブ工程において、第2中子16に管状基体4を保持する時期は第1工程から第4工程までに実施されればよく、例えば第1工程における第1中子15の固定筒11への挿入と同時に行うこともできる。
【0041】
この発明に係る第一製造方法においては、第5工程として、図7に示されるように、空間32の減圧を解除してチューブ5の固定筒11への吸着を解除する工程を実施する。そうすると、チューブ5は自身の弾性等によって拡径状態が復元して、その内部に配置された管状基体4の外周面に、通常接着剤(図示しない。)を介して、密接する。このようにして、管状基体4の外周面をチューブ5が被覆した被覆原体8が得られる。
【0042】
この発明に係る第一製造方法においては、第6工程として、図8に示されるように、第2中子16をチューブ5内から抜脱した後に第1中子15に外装された耐熱性中子17を、管状基体4内に配置する工程を実施する。この発明に係る第一製造方法の第6工程においては耐熱性中子17を使用する。この耐熱性中子17は管状基体4の変形等を防止する部材であり、その外径は管状基体4の内径とほぼ同一である。この耐熱性中子17は通常金属で形成される。なお、耐熱性中子17及び管状基体4の肉厚によっては第1中子15を使用できないことがある。この場合には耐熱性中子17の内径と略同一の外径を有する第3中子を第1中子に代えて用いることができる。
【0043】
この発明に係る第一製造方法の第6工程においては、まず、第2中子16を管状基体4換言するとチューブ5内から抜脱する工程を実施する。このようにして第2中子16を抜脱するとチューブ5の両端部は依然として固定筒11に固定されているから被覆原体8は固定筒11内に留まる。この第6工程においては、次いで、第1中子15に外装された耐熱性中子17を管状基体4内に配置する工程を実施する。このサブ工程において、第1中子15に耐熱性中子17を保持する時期は特に限定されず、例えば第4工程における第2中子16の固定筒11への挿入と同時に行うこともできる。このようにして第6工程を実施すると耐熱性中子17に保持された被覆原体8が得られる。
【0044】
この発明に係る第一製造方法においては、第7工程として、チューブ5の両端部それぞれの圧接を解除した後に、耐熱性中子17と共に第1中子15を固定筒11から抜脱する工程を実施する。この発明に係る第一製造方法の第7工程においては、まず、チューブ5の両端部それぞれの圧接を解除する工程を実施する。具体的には、第2工程と逆の手順で管状押さえ部材13を後退させた後に拡開部材12を縮閉させる。このようにして被覆原体8は固定筒11への固定状態から開放される。この第7工程においては、次いで、耐熱性中子17を固定筒11から抜脱する工程を実施する。そうすると、第1中子15と共に耐熱性中子17に保持された被覆原体8が固定筒11から抜脱される。
【0045】
この発明に係る第一製造方法においては、被覆原体8をしばらく放置する工程を実施することもできる。
【0046】
この発明に係る第一製造方法においては、管状基体4の外周面に接着剤が塗布されている場合には、第8工程として、第1中子15から耐熱性中子17及び被覆原体8を取り出して、図10に示されるように、耐熱性中子17に外装された状態で接着剤を硬化する工程を実施する。この工程は通常被覆原体8を加熱して接着剤を硬化させる。このとき、被覆原体8は耐熱性中子17でその形状が保持又は規制されているからたとえ管状基体4が薄層であったとしてもまた大径であったとしても管状基体4に変形及び歪み等を生じさせることなく接着剤を硬化させることができ、その結果、チューブ5に皺の発生又は皺立ち等の歪みを実質的に生じさせることがない。
【0047】
この発明に係る第一製造方法においては、所望により、チューブ5の両端部を切断する工程を実施する。このようにして図11に示されるチューブ被覆管体1を製造できる。
【0048】
この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法の別の一例である製造方法(以下、この発明に係る第二製造方法と称する。)は、第1中子に外装されたチューブを固定筒内に配置する第I工程と、チューブの両端部それぞれをその周方向に部分的に固定筒の内周面に圧接すると共に両端部それぞれの周方向に一巡するように固定筒に圧接してチューブを固定筒に固定する第II工程と、固定筒及びチューブで形成された空間を減圧してチューブを固定筒の内周面に吸着する第III工程と、第1中子を固定筒内から抜脱した後に第2中子に耐熱性中子と共に外装された管状基体を固定筒に吸着されたチューブ内に配置する第IV工程と、チューブの吸着を解除する第V工程と、チューブの両端部それぞれの圧接を解除した後に第2中子を固定筒から抜脱する第VI工程と、第2中子から被覆原体を取り出して耐熱性中子に外装された状態で接着剤を硬化する第VII工程とを有している。
【0049】
この発明に係る第二製造方法は、第IV工程において固定筒に挿入する管状基体に耐熱性中子を予め内装しておくこと以外は、この発明に係る第一製造方法と基本的に同様である。したがって、この発明に係る第二製造方法における第I工程から第III工程の説明は省略する。
【0050】
この発明に係る第二製造方法においては、第IV工程として、図9に示されるように、第1中子15を固定筒11内から抜脱した後に第2中子16に耐熱性中子17と共に外装された管状基体4を固定筒11に吸着されたチューブ5内に配置する工程を実施する。この発明に係る第二製造方法の第IV工程においては、まず、第1中子15を固定筒11内から抜脱するサブ工程を実施し、次いで、第2中子16に耐熱性中子17と共に外装された管状基体4を固定筒11に吸着されたチューブ5内に配置するサブ工程を実施する。このサブ工程において、第2中子16に耐熱性中子17及び管状基体4を保持する時期は第I工程から第IV工程までに実施されればよく、また、耐熱性中子17と管状基体4とを別々に保持してもよく、管状基体4に耐熱性中子17を挿入して管状基体4を保持した耐熱性中子17を第2中子16に保持させてもよい。このようにして第IV工程を実施すると、図9及び図6に示されるように、耐熱性中子17が第2中子16と管状基体4との間に配置されていること以外は図6に図示された状態と基本的に同様になる。なお、この発明に係る第二製造方法においては、図9に示されるように、第2中子16の外周面に耐熱性中子17が外装されるように寸法が適宜に調整されている。
【0051】
この発明に係る第二製造方法においては、次いで、第一製造方法の第5工程と基本的に同様にして第V工程を実施して、管状基体4の外周面をチューブ5が被覆した被覆原体8が耐熱性中子17に保持された状態で得られる。このようにして第V工程を実施すると、第1中子15に代えて第2中子16が耐熱性中子17内に配置されていること以外は図8に図示された状態となる。したがって、この発明に係る第一製造方法における第6工程は実施する必要はない。
【0052】
この発明に係る第二製造方法においては、次いで、第一製造方法の第7工程と基本的に同様にして第VI工程を実施して、第2中子16と共に耐熱性中子17に保持された被覆原体8が固定筒11から抜脱される。
【0053】
この発明に係る第二製造方法においては被覆原体8をしばらく放置する工程を実施することもできる。
【0054】
この発明に係る第二製造方法においては、管状基体4の外周面に接着剤が塗布されている場合には、第一製造方法の第8工程と基本的に同様にして第VII工程を実施して接着剤を硬化させる。このとき、被覆原体8は耐熱性中子17でその形状が保持又は規制されているからたとえ管状基体4が薄層であったとしてもまた大径であったとしても管状基体4に変形及び歪み等を生じさせることなく接着剤を硬化させることができ、その結果、チューブ5に皺の発生又は皺立ち等の歪みを実質的に生じさせることがない。
【0055】
この発明に係る第二製造方法においては、所望により、チューブ5の両端部を切断する工程を実施する。このようにして図11に示されるチューブ被覆管体1を製造できる。
【0056】
この発明に係る第一製造方法及びこの発明に係る第二製造方法においては、チューブ5の両端部それぞれを、その周方向に部分的に固定筒11の内周面に圧接すると共に両端部それぞれの周方向に一巡するように固定筒11に圧接して、チューブ5を固定筒11に固定する第2工程及び第II工程を実施するから、チューブ5の両端部それぞれは部分的な圧接固定と全体的な圧接固定によって皺等が実質的に発生することなく固定筒11に固定される。したがって、このように皺のない状態でチューブ5を固定筒11に固定できるからチューブ5を皺のない状態で管状基体4の外周面に被覆すなわち密接させることができる。
【0057】
また、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法、すなわち、この発明に係る第一製造方法及びこの発明に係る第二製造方法においては、前記固定する工程すなわち第2工程及び第II工程において、チューブ5の両端部それぞれを固定筒11の開口端に沿って折り返すことなくチューブ5を固定筒11に固定するから、折り返し時に発生しやすい皺が発生することもない。したがって、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法において、前記固定する工程は、好ましくは、チューブの両端部それぞれを固定筒の開口端に沿って折り返すことなく、チューブを固定筒に固定する工程である。
【0058】
さらに、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法、すなわち、この発明に係る第一製造方法及びこの発明に係る第二製造方法においては、管状基体4の外周面に配置されたチューブ5の外周面を扱く工程を有しないから扱く際に発生しやすい皺が発生することもない。したがって、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法において、好ましくは、管状基体の外周面に配置されたチューブの外周面を扱く工程を有しない。
【0059】
したがって、この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法、すなわち、この発明に係る第一製造方法及びこの発明に係る第二製造方法によれば、皺の発生又は皺立ち等の歪みの実質的にないチューブを有するチューブ被覆管体を製造できる。
【0060】
この発明に係る第二製造方法は、管状基体4を予め耐熱性中子17に外装させてチューブ5内に配置する第VI工程を有しているから、管状基体4と耐熱性中子17とを別々にチューブ5内に配置するこの発明に係る第一製造方法よりも工程数が少なく、作業効率及び装置の稼動安定性等に着目すると、好ましい製造方法である。
【0061】
この発明に係るチューブ被覆管体の製造方法は、前記した二例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係る第一製造方法及びこの発明に係る第二製造方法においては、管状基体4を用いたが、この発明においては、外周面に弾性薄層が形成された管状基体を用いることができる。このとき製造されるチューブ被覆管体は図12に示されるチューブ被覆管体2となる。
【0062】
この発明に係る第一製造方法及びこの発明に係る第二製造方法においては、第1中子15、第2中子16及び耐熱性中子17を用いているが、この発明において、寸法及び耐熱性等を確保できれば第1中子、第2中子及び耐熱性中子を同一部材として用いてもよく、また、これら中子のうちのいずれかを用いなくてもよい。接着剤の硬化時におけるチューブの皺の発生を防止する耐熱性中子を用いるこの発明に係る第一製造方法は、例えば、チューブを固定筒内に配置する工程と、チューブの両端部それぞれをその周方向に部分的に固定筒の内周面に圧接すると共に両端部それぞれの周方向に一巡するように固定筒に圧接してチューブを固定筒に固定する工程と、固定筒及びチューブで形成された空間を減圧してチューブを固定筒の内周面に吸着する工程と、管状基体を固定筒に吸着されたチューブ内に配置する工程と、チューブの吸着を解除する工程と、耐熱性中子を管状基体内に配置する工程と、チューブの両端部それぞれの圧接を解除した後に耐熱性中子を固定筒から抜脱する工程と、耐熱性中子に外装された状態で接着剤を硬化する工程とを有している。また、接着剤の硬化時におけるチューブの皺の発生を防止する耐熱性中子を用いるこの発明に係る第二製造方法は、例えば、チューブを固定筒内に配置する工程と、チューブの両端部それぞれをその周方向に部分的に固定筒の内周面に圧接すると共に両端部それぞれの周方向に一巡するように固定筒に圧接してチューブを固定筒に固定する工程と、固定筒及びチューブで形成された空間を減圧してチューブを固定筒の内周面に吸着する工程と、耐熱性中子に外装された管状基体を固定筒に吸着されたチューブ内に配置する工程と、チューブの吸着を解除する工程と、チューブの両端部それぞれの圧接を解除した後に耐熱性中子を固定筒から抜脱する工程と、耐熱性中子に外装された状態で接着剤を硬化する工程とを有している。
【0063】
この発明に係る第一製造方法及びこの発明に係る第二製造方法においては、Oリング24及び管状大径部25、並びに、Oリング27及び管状溝部26を備えた固定筒11を用いてOリング24及びOリング27それぞれにチューブ5を圧接させているが、この発明においては、Oリング及び管状大径部、並びに/又は、Oリング及び管状溝部を備えない固定筒を用いて固定筒に直接チューブを圧接してもよい。
【0064】
この発明に係る第一製造方法及びこの発明に係る第二製造方法においては、6個の可動爪31を有する拡開部材12を用いてチューブ5の端部それぞれの6箇所を固定筒11に圧接させているが、この発明においては、少なくとも2個の可動爪を有する拡開部材を用いてチューブの端部それぞれの少なくとも2箇所を固定筒に圧接させてもよい。
【0065】
この発明に係る第一製造方法及びこの発明に係る第二製造方法においては、管状押さえ部材13を用いているが、この発明において、図4に示されるように、第1中子、第2中子及び耐熱性中子等が通過しない押さえ部材は中実の押さえ部材としてもよい。
【0066】
この発明に係る第二製造方法においては、第2中子16に耐熱性中子17と共に外装された管状基体4をチューブ5内に配置しているが、この発明においては、第1中子に耐熱性中子と共に外装された管状基体をチューブ内に配置することもできる。
【符号の説明】
【0067】
1、2 チューブ被覆管体
4 管状基体
5 チューブ
6 弾性薄層
8 被覆原体
11 固定筒
12 拡開部材
13 管状押さえ部材
15 第1中子
16 第2中子
17 耐熱性中子
21 筒本体
22 管状端部
23 軸孔
24、27 Oリング
25 管状大径部
26 管状溝部
28、32 空間
31 可動爪
41 中子本体
42 細径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状基体の外周面にチューブが配置されたチューブ被覆管体を、管状の固定筒内で半径方向外側に拡径させた前記チューブの内部に前記管状基体を挿入して、製造するチューブ被覆管体の製造方法であって、
前記チューブの両端部それぞれを、その周方向に部分的に前記固定筒の内周面に圧接すると共に前記両端部それぞれの周方向に一巡するように前記固定筒に圧接して、前記チューブを前記固定筒に固定する工程を有することを特徴とするチューブ被覆管体の製造方法。
【請求項2】
前記固定する工程は、自身の軸線に対して直交方向に拡張可能であって複数の分割部材を有する拡開部材を拡張させて、前記分割部材で前記両端部それぞれを部分的に前記内周面に圧接する第1サブ工程を有することを特徴とする請求項1に記載のチューブ被覆管体の製造方法。
【請求項3】
前記固定する工程は、前記第1サブ工程に次いで、前記固定筒に圧接する外表面を有する押さえ部材を前記チューブに内挿して、前記外表面で前記両端部それぞれを密閉状態に前記固定筒に圧接する第2サブ工程を有することを特徴とする請求項2に記載のチューブ被覆管体の製造方法。
【請求項4】
前記固定する工程の後に、耐熱性中子に外装された前記管状基体を前記チューブ内に配置する工程を有することを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載のチューブ被覆管体の製造方法。
【請求項5】
前記配置する工程の後に、前記チューブが接着剤を介して外周面に配置された前記管状基体を前記耐熱性中子に外装された状態で前記接着剤を硬化させる工程を有することを特徴とする請求項4に記載のチューブ被覆管体の製造方法。
【請求項6】
前記固定する工程の後に、中子に外装された前記管状基体を前記チューブ内に配置する工程を有することを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載のチューブ被覆管体の製造方法。
【請求項7】
前記配置する工程の後に、前記中子を前記チューブ内から抜脱して耐熱性中子を前記管状基体内に配置する工程と、前記チューブが接着剤を介して外周面に配置された前記管状基体を前記耐熱性中子に外装された状態で前記接着剤を硬化させる工程とを有することを特徴とする請求項6に記載のチューブ被覆管体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−171306(P2012−171306A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37929(P2011−37929)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】