説明

チョコレート成形型および該チョコレート成形型に適用される配管用Oリング

【課題】成形型の破片のチョコレートへの混入を確実に防止し得るチョコレート成形型の提供と、該チョコレート成形型に適用される配管用Oリングの経年劣化に起因する局所的な崩壊に伴う異物の除去を確実にするOリングを提供する。
【解決手段】ポリカーボネート、ポリアミドまたはアクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどの不飽和ニトリル化合物を主体とする共重合体からなる合成樹脂材料に黒色酸化鉄粉が混入されてなる。チョコレート成形金型10に形成された開口部を介して当該成形金型内に、溶融した加圧されたチョコレートを注入する配管と接続される接続部に設けられるゴムまたはPTFEからなる環状体からなり、当該環状体に黒色酸化鉄粉が混入され、当該黒色酸化鉄粉のゴムに対する配合率が20〜45重量%であり、PTFEに対する配合率は25〜65重量%であるOリング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチョコレート成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートの成形に使用される成形型は、合成樹脂材料製の平行な外側脚部を備えており、この外側脚部の最上面部には加工食品を流し込まれるくぼみが設けられていて、例えば冷蔵工場などでの後工程で加工される食品が流し込まれる。
【0003】
そして、突き出た連結具を備えた2本の平行チェーンを使用して、製造工場内で成形型を輸送していた。この連結具は、成形型の本体に接触すると、成形型を押し動かして成形工場内を移動する。したがって、移動時に成形型が破損する可能性がある。
【0004】
特許文献1には、成形型と押し型とを用いたチョコレートの製法が開示されている。成形型は、上方に向かってやや広がるテーパ状の内壁を有する凹部を有しており、押し型は、当該凹部の内壁に対して所定の間隙をもって挿入される形状を有し、その突出面を複数に分割する溝を有している。押し型の内部には、例えばプロピレングリコールの水溶液などからなる冷媒が流れる流路が形成されている。押し型は、この冷媒によって、−10℃〜+10℃、より好ましくは−3℃〜+5℃に冷却されるようになっている。
【0005】
まず、成形型の凹部に、加熱溶融した状態のチョコレートの生地を所定量注入する。チョコレートの生地の量は、押し型で押したときに、チョコレートの生地が成形型の内周に沿って流動し、シェル形状を形成するのに充分な量である。
【0006】
つぎに、押し型の流路内に冷媒を流して押し型を冷却し、その状態でモールドの凹部内に挿入し、数秒から数十秒間押し型を挿入した状態で保持する。チョコレートの生地は、押し型と成形型との間隙と、押し型の溝内に流動し、冷却された押し型によって冷却固化される。その後、成形型に振動を加えたり、金槌で叩くなどして、成形型から製品を取り出すのであるが、このとき成形型が破損する可能性がある。
【0007】
また、成形型と押し型とから構成されていると、押し型の成形型への挿入と、除去との繰り返し動作により、成形型が破損する可能性がある。
【0008】
従来、チョコレート、マシュマロ、ゼリーなど、原料が流動状生地のものの成形は、平坦なベルトコンベヤ上に適宜間隔に置いた枠状の成形型に、上方より生地をドロップさせるか、成形型を通して押出し、ベルトに振動を与えてエヤー抜きを行ない、その後冷却して行なっている。人形、動物などの立体製品を成形する場合は、弾性の袋状の成形型内に生地を流し込んで充填し、製品を取出す時には冷却あるいは加熱して製品を固化させた後、型内に空気を圧入して、成形型を膨張させて製品を取出している。このとき成形型が破損する可能性がある。
【0009】
チョコレート成形型としては、ブリキ、ステンレスなどの金属製のものや、ポリカーボネート製のものが用いられていた。
【0010】
従来、チョコレートを成形型から外すとき、離型性が悪く、鋳型を裏側から強打したり、鋳型を無理に捩じらないと、外れないという問題点を、高ニトリル樹脂からなるチョコレート成形型を用いることにより解決したものが知られている(特許文献2参照)。
【0011】
特許文献2記載の発明において、高ニトリル樹脂とは、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどの不飽和ニトリル化合物を主体とする共重合体であって、不飽和ニトリル化合物単位を50重量%以上90重量%以下、好ましくは55重量%以上85重量%以下含むものである。
【0012】
チョコレート製造プラントのみならず、食品加工プラントの場合、プラントを定期的に停止して、配管および継手を保守点検することによって経年劣化の有無を目視により確認し、配管系統に配設された濾過器(strainer)によって異物を除去しているが、メッシュが大きければ異物がメッシュを通過し、異物の混入が避けられず、メッシュを小さくすると、配管中を流れる流体の抵抗になり、そのうえ、メッシュが目詰まりを起こすという問題がある。
【0013】
【特許文献1】特許第3413161号公報
【特許文献2】特許第2728280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、チョコレートの製造工程全体をみたときに、型自体の離型時の破損や、型の輸送時の破損に伴って生じた破片(異物)や、配管系統のOリングの経年変化に伴う破損による破片の、溶融状態で配管系統内を流れるチョコレートへの混入の危険性が高いことに鑑みて、金型の破片のチョコレートへの混入を確実に防止し得るチョコレート成形型の提供と、該チョコレート成形型に適用されるチョコレート製造プラント用配管Oリングの経年劣化に起因する局所的な崩壊に伴う異物の除去を確実にするOリングを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のチョコレート製造プラント用のチョコレート成形金型は、ポリカーボネート、ポリアミドまたはアクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどの不飽和ニトリル化合物を主体とする共重合体からなる合成樹脂材料に黒色酸化鉄粉が混入されてなることを特徴としている。
【0016】
また、前記黒色酸化鉄粉の前記合成樹脂材料に対する配合率が25〜65重量%であることが好ましい。
【0017】
また、前記チョコレート成形金型に形成された開口部を介して当該成形金型内に、溶融した加圧されたチョコレートを注入する配管が接続され、当該開口部と配管とを接続する接続部にOリングが設けられており、当該Oリングが、ゴムまたはPTFEからなる環状体に黒色酸化鉄粉が混入され、当該黒色酸化鉄粉のゴムへの配合率が20〜45重量%またはPTFEに対する配合率が25〜65重量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、チョコレートの製造過程で粉砕した成形金型の砕片を、チョコレート中に混入することなく確実に回収・除去することができ、かつチョコレート製造プラントの配管中を流れる溶融したチョコレート(流体)の抵抗にならず、メッシュが目詰まりを起こすことがなく、Oリングの経年劣化に起因する局所的な崩壊に伴う異物を確実に回収・除去できるチョコレート成形金型およびOリングを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
添付図面を参照しつつ本発明のチョコレート製造プラント用のチョコレート成形金型、およびこれに用いられるOリングについて、以下に詳細に説明する。
【0020】
図1および2は本発明のチョコレート製造プラント用のチョコレート成形金型として採用される金型の一例を示す説明図である。図3の(a)は、本発明のOリングの一例を示す平面説明図であり、(b)は(a)のA−A線断面説明図である。図4は、図3のOリングが使用された食品加工プラント用配管継手構造体を示す説明図である。図5は、図3のOリングが使用された他の食品加工プラント用配管継手構造体を示す説明図である。
【0021】
本発明のチョコレート製造プラント用のチョコレート成形金型(以下、単に「金型」という)は、たとえばポリカーボネート、ポリアミドまたはアクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどの不飽和ニトリル化合物を主体とする共重合体からなる合成樹脂に黒色酸化鉄粉が混入されてなるものである。そして、前記黒色酸化鉄粉の前記合成樹脂に対する配合率は、好適には、25〜65重量%である。本発明において、金型とは、図1に参照符号10により示されるような、下型10aと上型10bとからなり、当該下型10aと上型10bとの間に画定されるキャビティーCに、溶融した加圧されたチョコレート12を圧縮機11によって配管Pを介して充填し、当該金型10を急冷して、固形化するものや、図2に示されるように、パレット状の金型10に設けられたキャビティーCに、溶融したチョコレート12をノズルNを介して充填するもののほか、押し型を含むものなど、当業者に自明な金型はすべて含まれる。
【0022】
また、図1を参照すると、チョコレート成形金型10の下型10aに形成された開口部10cを介して成形金型10のキャビティーC内に、溶融した加圧されたチョコレートを注入する配管Pと、金型10の開口部10cとを接続する接続部に、後述するOリング1が設けられている。
【0023】
図3において、参照符号1は本発明のOリングを示しており、参照符号1aは環状体、参照符号Fは黒色酸化鉄粉(Fe34)をそれぞれ示している。
【0024】
図3を参照すると、本実施の形態にかかわるOリング1は、矩形断面を有する環状体1aから構成されている。環状体の厚さL1は、2〜7mmが好適であり、幅L2は、5〜30mmが好適であり、かつ図4に示される取付溝gの寸法(深さ・幅)よりも僅かに大きいことが好ましい。
【0025】
そして、当該Oリング1は、ゴムまたはPTFEと、該ゴムまたはPTFEに均一に混入された黒色酸化鉄粉とから構成される。
【0026】
ゴム材としては、例えば、シリコーンゴム、EPDM、IIR、NBR、CR、FRのほか、エラストマーなどがあり、樹脂材としてPTFEなどが採用され得る。本発明のOリングが食品加工プラントのシール材として使用されることから、シリコーンゴム、EPDM、FRなどのゴム材と、PTFEが樹脂材として好適に採用される。
【0027】
黒色酸化鉄粉Fのゴムに対する配合率としては、20〜45重量%が好ましい。
【0028】
黒色酸化鉄粉Fの粒径としては、0.1〜1μmの範囲のものが採用される。これは、粒径が非常に小さいため、ゴムに混ぜやすいという利点と、酸化しているため耐酸性があり、さびにくいという利点があり、着磁性にすぐれ、磁力を受けやすいというさらなる利点があるためである。黒色酸化鉄粉は市販されているものを採用することができる。
【0029】
つぎに図4を参照すると、本発明のチョコレート製造プラント用配管継手構造体は、隣り合う2つの配管P1、P2と、当該隣り合う2つの配管P1、P2のそれぞれの端部に設けられたフランジ継手f1、f2と、前記フランジ継手f2の間に挟持されたOリング1とから構成される。
【0030】
そして、Oリング1の環状体1aは、前記フランジ継手f1、f2の対向する面に略円形状に設けられ、かつ矩形状の断面形状を有した取付溝g内に装着され、ボルトナット(図示されず)など従来より公知の締結手段によって挟持される。
【0031】
また、図4に示されるような食品加工プラント用配管継手構造体を採用した場合、毎日の作業後に行う分解洗浄工程でのOリングの遺失や破損等によって生じた異物や、使用中にOリング1が局所的に崩壊して生じた異物は、配管系統内に磁石が設けられたトラップ(trap)(図示されず)が配設されていることにより、Oリング1には磁性粉が含まれているため、トラップによって確実に捕捉される。配管系統には、濾過器(図示されず)が配設されてはいるが、近年固形物の含まれた製品を製造する場合が多く、濾過器の目を大きくしなければならないなど、異物の捕捉が難しい場合があり、このOリングを使用することにより、配管系統に異物が混入することを回避でき、ひいては加工された食品中への異物の混入を防止することができる。
【0032】
さらに、本発明によれば、図5に示されるように、取付溝gがフランジ継手(接続金具)f1、f2のうちf1にしかない場合でも、Oリング1と接続金具f1との間に隙間が発生することのない食品加工プラント用配管継手に適用されるOリングを提供することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のチョコレート製造プラント用のチョコレート成形金型として採用される金型の一例を示す説明図である。
【図2】本発明のチョコレート製造プラント用のチョコレート成形金型として採用される金型の他の例を示す説明図である。
【図3】(a)は、本発明のOリングの一例を示す平面説明図であり、(b)は(a)のA−A線断面説明図である。
【図4】図3のOリングが使用された食品加工プラント用配管継手構造体を示す説明図である。
【図5】図3のOリングが使用された他の食品加工プラント用配管継手構造体を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 Oリング
1a 環状体
F 黒色酸化鉄粉
f1、f2 フランジ継手(接続金具)
g 取付溝
P、P1、P2 配管
10 成形型(金型)
10a 下型
10b 上型
10c 開口部
11 圧縮機
12 チョコレート
C キャビティー
N ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート、ポリアミドまたはアクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどの不飽和ニトリル化合物を主体とする共重合体からなる合成樹脂材料に黒色酸化鉄粉が混入されてなる
ことを特徴とするチョコレート製造プラント用のチョコレート成形金型。
【請求項2】
前記黒色酸化鉄粉の前記合成樹脂材料に対する配合率が20〜65重量%である請求項1記載のチョコレート成形金型。
【請求項3】
請求項1〜2記載のチョコレート製造プラント用のチョコレート成形金型と、当該成形金型に接続される配管との接続部に設けられるOリングであって、
前記チョコレート成形金型に形成された開口部を介して当該成形金型内に、溶融した加圧されたチョコレートを注入する配管と接続される接続部に設けられるゴムまたはPTFEからなる環状体からなり、
当該環状体に黒色酸化鉄粉が混入され、当該黒色酸化鉄粉のゴムに対する配合率が20〜45重量%であり、PTFEに対する配合率は25〜65重量%である
ことを特徴とするOリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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