説明

チラコイドエキスを送達するための経口用組成物および経口投与経路

本発明は、経口投与用のチラコイドエキスの新たな使用または新たな使用方法、および経口投与用に許容可能な担体を添加したチラコイドエキスを含む組成物を提供する。医薬品としての使用のほかに、チラコイドエキスはその無毒性および、物質ならびに抗炎症性化合物を多く含む食事を提供できることから、食品または栄養補助食品の組成物、または薬物にも使用される。したがって、本発明によれば、活性酸素種の形成もしくは炎症が関与する疾患や障害を、治療防止するための経口用組成物を作製するうえでのチラコイドエキスの使用が提供される。また、個人において、活性酸素種炎症の形成が関与する疾患や障害を治療または予防するための方法であって、有効量のチラコイドエキスを経口投与する工程を含む方法も提供する。さらに、経口摂取または経口投与用のビヒクルおよびチラコイドエキスを含む経口用組成物が提供する。また、経口摂取または経口投与用の担体および精製チラコイドを含む経口用組成物は、担体が、水、生理食塩水またはプロピレングリコールから必須になるものではなく、食品もしくは栄養補助食品、またはペレット剤、またはカプセル封入した顆粒もしくはカプセル封入した粉末としても提供される。担体は、組成物全体の0.01〜95%(w/w)の量で存在することが可能である。精製チラコイドは対象の体重1kgあたり、用量0.1から10mgを実現する量で存在することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チラコイドエキスの経口投与、またはチラコイドエキスを含む組成物の経口投与に関する。
【背景技術】
【0002】
チラコイドは、真核生物(植物および藻類)および原核生物の細胞(細菌)において光合成を担う特殊化された膜である。これらの光合成生物は、一連の複雑な反応でCO2を炭水化物に還元することにより、このガスを有機物質へ変換する。この還元反応のための電子は、根本的には水に由来し、水はさらに酸素およびプロトンに変換される。このプロセスのためのエネルギーは光により供給されるが、光は色素(主にクロロフィルおよびカロチノイド)により吸収される。
【0003】
光合成反応センターでの最初の電子移動(電荷分離)反応により、コファクターの連鎖に沿って電子が伝達されクロロフィル上の「正孔」を埋める、バケツリレーのような一連の長いレドックス(還元-酸化)反応が作動しはじめる。酸素を産生する光合成生物はすべて、光化学系Iおよび光化学系II(PSIおよびPSII)と呼ばれる2種類の反応センターを備えている。PSIおよびPSIIはともに、チラコイド膜の中にある色素/タンパク質の複合体である。
【0004】
最近、抗酸化性および抗炎症性の双方を備える機能的で完全なチラコイド膜エキスとその他の抗炎症性化合物との併用がそれぞれ、国際特許公報WO01/49305号およびWO03/04042号に記載されている。チラコイドエキスの抗酸化性および抗炎症性は、in vitro、ex vivo、in situおよびin vivo試験で実証されている。具体的には、チラコイドエキスが、一重項酸素種をはじめとする有毒な活性酸素種を捕捉すること、炎症の減弱に向けて炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインを調節することが示された。
【0005】
in vivoでは、チラコイドエキスの局所適用(傷害部位での直接適用)が、ヘアレスマウスの紫外線で誘発された皮膚損傷を防止または低減すること、およびラットならびにマウスのTPA誘発耳介炎症を緩和させることが示され、TNBSまたはDSSで誘発されたラットの腸粘膜損傷を防止することが明らかになっている。また、チラコイドエキスの腹腔内注射では、カラゲナン誘発肢浮腫を低減することが明らかになった。しかし、現在、経口での抗酸化剤および/または抗炎症剤としてのチラコイドエキスの使用可能性を確かめたデータは得られていない。
【特許文献1】国際特許公報WO01/49305号
【特許文献2】国際特許公報WO03/04042号
【非特許文献1】Journal of Pharmaceutical Sc.(1963)、vol 52、918頁以降
【特許文献3】米国特許第5,733,551号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、経口での治療薬としてのチラコイドエキスの使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、チラコイドエキスの新たな使用、すなわち経口投与のための新たな使用、および経口投与用の許容可能な担体を添加したチラコイドエキスを含む組成物を提供する。医薬品としての使用のほかに、チラコイドエキスは、無毒性であることと抗酸化物質および抗炎症性化合物を多く含む食事を提供できることから、食品または栄養補助食品の組成物にも使用される。
【0008】
したがって、本発明によれば、活性酸素種の形成もしくは炎症が関与する疾患や障害を治療または予防する経口用組成物の作製におけるチラコイドエキスの使用を提供される。また、個人において、活性酸素種の形成もしくは炎症が関与する疾患や障害を治療または予防するための方法であって、有効量のチラコイドエキスを経口投与する工程を含む方法も提供する。さらに、経口摂取または経口投与のためのビヒクルおよびチラコイドエキスを含む経口用組成物を提供する。
【0009】
したがって、発明によれば、活性酸素種の形成もしくは炎症が関与する疾患や障害を、治療または予防する経口用組成物を作製するうえでの精製チラコイドの使用を提供される。
【0010】
さらに、組成物の成分に対する酸化損傷を防止するための経口用組成物の作製における精製チラコイドの使用を提供する。具体的な実施形態では、本経口用組成物は食品または栄養補助食品である。別の実施形態では、本経口用組成物は酸化による損傷、障害または疾患に対する薬物である。
【0011】
また、対象において、活性酸素種の形成もしくは炎症が関与する疾患や障害を治療または予防する方法であって、有効量の精製チラコイドを経口投与する工程を含む方法も提供する。
【0012】
経口摂取または経口投与用の担体および精製チラコイドを含む経口用組成物であって、担体が、水、生理食塩水またはプロピレングリコールから必須になるものではない組成物は、食品もしくは栄養補助食品、またはペレット剤、カプセル封入した顆粒もしくはカプセル封入した粉末の形態の薬物としても提供される。
【0013】
担体は、組成物全体の0.01〜95%(w/w)の量で存在してよい。
【0014】
精製チラコイドは対象の体重1kgあたり0.1から10mgの用量を実現する量で存在する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
チラコイドエキス(以下「精製チラコイド」または「PCT」とも言う)は、経口投与されたときに活性であることを以下に明らかにする。本エキスは、液体組成物(非凍結乾燥エキス)として、または水、生理食塩水もしくは経口投与に適した他のプロピレングリコール溶液(濃度100%以下)でもどした凍結乾燥エキス、または固体組成物(そのままか、もしくは経口投与のために薬剤学的に許容可能な担体を添加して)として調製することができる。凍結乾燥チラコイド、水または生理食塩水でもどしたチラコイドのほか、精製されプロピレングリコール中で得られたチラコイドから必須になるチラコイド組成物は、WO01/49305に開示されているが、経口投与のための使用については、前記参考文献には開示されなかった。
【0016】
引用された文献の内容はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
賦形剤および担体は、医薬品分野で広く使用されており、当業者に知られている。なかでも、結合剤、崩壊剤および/または充填剤が現在使用されている。製品の形状もさまざまである。乾燥製品は、ペレット剤、およびフリーフォームまたはカプセル型の粉末ならびに顆粒を含む。液体製品は、脂質(油脂)、安定剤、乳化剤、界面活性剤、ポリマー、および/または組成物の味覚、芳香、外観を向上させる着色剤もしくは香味添加剤を含むことができる。
【0018】
結合剤の例には、ゼラチン、セルロース、セルロースエーテル、アミロース、デキストロース、ポリグリコール、トラガカント、ペクチン、アルギン酸およびポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。
【0019】
崩壊剤の例には、デンプン、加工デンプン(グリコール酸デンプンナトリウム、デンプン1500など)、ペクチン、ベトナイト、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース誘導体、アルギン酸、PVP、ウルトラアミロペクチン、架橋PVPまたは架橋CMC(Ac-Di-Sol/FMCなど)が挙げられる。
【0020】
充填剤の例には、ラクトース、グルコース、フルクトース、リン酸カルシウム、硫酸塩または炭酸塩、デンプン、加工デンプン、ソルビトールおよびマンニトールなどの糖アルコール、セルロース誘導体、サッカロース、および/または微結晶セルロースが挙げられる。
【0021】
経口使用のための担体を形成する補助剤の種類および選択については、Journal of Pharmaceutical Sc.(1963)、vol 52、918頁以降に実施例がいくつか記載されている。
【0022】
植物原料を含むスフェロイドの調製は、米国特許第5,733,551号に記載されている。
【0023】
活性成分量、すなわちチラコイド量は一般に、1日1回投与または複数回投与で1ug〜1gの範囲とすることができる。ヒトでは、体重1kgあたり0.1〜10mgの用量範囲が適すると思われる。したがって、平均70Kgの対象では、1日あたり5〜10mgから500〜1000mgの投与レジメンが適切であろう。20、40および60%(40、80および120mg)のチラコイドを含む200mgペレット剤の例が作製され、以下に記載されている。200〜300mgのペレット剤は、純粋な圧縮したチラコイド(補助剤を一切用いない)から作製することもできる。
【0024】
本発明を、具体的な実施例、実施形態および図を参照しながら以下に記載する、その目的は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明を説明することにある。
【実施例】
【0025】
(実施例1:チラコイドが経腸吸収化合物および経口用化合物として作用する)
<方法論>
<実験動物>
雄のウィスターラット(180〜200g)を実験に用いた。動物は、Charles River Canada(St-Constant、ケベック州、カナダ)から購入した。動物は、環境(t=25℃)および湿度(60%)を制御した12時間の明暗サイクルの部屋に収容し、標準実験食および飲料水を自由に摂取させた。本実験は、TransBIOTech(Levis、ケベック州、カナダ)の倫理委員会により承認された。
【0026】
<試薬>
12-Oテトラデカノイルホルボール13-アセテート(TPA、P-8139)およびカラゲナン(C-1138)は、Sigma Chemical Co.(St-Louis、ミズーリ州、米国)から購入した。
【0027】
<チラコイドエキスの調製>
チラコイドエキスは、参照によりその全内容が本明細書に組み込まれている、国際特許公報WO01/49305号に記載のホウレン草の葉(Spinacia oleacea)から抽出した。チラコイドの完全性は、分光光度法(Beckman DU 640)(Lichtenthale、1987年)および蛍光定量法(Hansatech Instruments Ltd、英国)(Maxwell、2000年)により評価した。
【0028】
<プロトコール1:TPA誘発ラット耳介浮腫>
雄のウィスターラット(180〜200g、Charles River)を一晩(18h)絶食させた。アセトンに溶解したTPAを6ug/耳で局所適用(Yamamoto Sら、1994年)して、ラットの右耳介に浮腫を誘発させた。左耳介(対照)にはビヒクルを塗布した(アセトン、20ul)。
【0029】
TPA塗布6時間後に、ラットを麻酔し(ペントバルビタール、80mg/kg)、各耳介よりメタルパンチにて直径6mmの円を切除した。TPA誘発性腫脹は、左耳介と比較した右耳介のパンチ生検による厚さの増大(mm)を評価し、浮腫指数とした。
【0030】
チラコイドエキス(25mg/kg)は、事前に挿入したカテーテルを介して十二指腸に直接投与(5ml/kg)した。対照群には生理食塩水(5ml/kg)を投与した。
【0031】
<プロトコール2:カラゲナン誘発ラット肢浮腫>
一晩(18h)絶食させた雄のウィスターラット(180〜200g)に、カラゲナン(生理食塩水0.9%の1%懸濁液100ul)(Boughton-Smithら、1993年)を右後肢に下位足底注射する直前に、チラコイドエキス(滅菌生理食塩水中25mg/kg)を強制経口投与し(5ml/kg)、またはプロトコール1に記載のようにin situで放出するようにカテーテルで注入した。
【0032】
カラゲナン注射直前および5時間後に、肢の外周を測定した。各動物ごとにカラゲナン注入後に測定し、注入前の値と比較した肢の外周(mm)が増加として、浮腫を表わした。
【0033】
<統計分析>
データは平均±平均の標準誤差で示されている。群間差の平均をt検定により比較した(SigmPlot、2001年、Windows(登録商標)、バージョン7.10用)。
【0034】
<結果>
<ラットにおけるTPA誘発耳介浮腫に対するチラコイドの作用>
対照ラット群では、TPAの局所適用により6時間後の耳介の厚さの増大(50%)が誘発された(図1)。チラコイド(挿入カテーテルによる十二指腸への直接投与25mg/kg)の同時投与により、TPA誘発耳介浮腫は有意に減少した(45%)。
【0035】
<カラゲナン誘発ラット肢浮腫に対するチラコイドの作用>
対照ラット群では、カラゲナンの下位足底注射により5時間後の肢の外周が増大(5.63±1.29)が誘発された(図2)。チラコイドエキス(25mg/kg)の、予め挿入したカテーテルによる十二指腸への直接投与、または強制経口投与(5ml/kg)による同時処置は、浮腫をそれぞれ54%、65%抑制した。
【0036】
上記の結果は、チラコイドエキスの腸内投与または経口投与が可能なことを示している。TPA誘発ラット耳介浮腫およびカラゲナン誘発ラット肢浮腫のような炎症モデルでは、25mg/kgの用量で約50%の浮腫減少が観察された。したがって、経口用量1日あたりの10〜1000mgのチラコイドを、単独、または他の補助医薬品との併用により使用することができると考えられる。目的の用途は、製薬のほか、栄養補助食品、添加物、保存料または栄養素自体としての食品業界での使用である。
【0037】
(実施例2:チラコイドエキスは、経口用製品として調製することができる)
<材料と方法>
<材料>
本試験では、3種類の市販ポリマー、アルギン酸ナトリウム、低粘度のカルボキシメチルセルロース(CMC1)および高粘度カルボキシメチルセルロース(CMC2)を用いた。PCT複合体はPureCell Technologies inc.により提供された。
【0038】
<圧縮に対するPCTの安定性>
まず、PureCell Technologies inc.のPTC自体をなんらかの賦形剤とともに圧縮し、圧縮後のPCTの生物活性維持能を評価した。PCTのみからなる200mg錠剤は、直径9mmのパンチを用いてCarver油圧プレスで1、2.5、5Tの乾き圧縮により作製した。作製した錠剤は潰して粉末にし、PureCell Technologies inc.に送り、複合活性を検査した。
【0039】
<高分子賦形剤存在下での圧縮に対するPCTの安定性>
20、40または60%のPCTを含有する3種類のポリマー(アルギン酸ナトリウム、CMCJまたはCMC2)のうちの1種をベースにした200mg錠剤は、直径9mmのパンチを用いてCarver油圧プレスで2.5Tの乾き圧縮により作製した。作製した錠剤は、PureCell Technologies inc.に送り、複合活性を検査した。
【0040】
<人工胃腸液における錠剤の挙動>
2シリーズの200mg錠剤を作製した。1つは、PCTを含まない3種類のポリマー(アルギン酸ナトリウム、CMC1またはCMC2)のうちの1種からなるもの、もう1つは、20、40または60%のPCTを含有する3種類のポリマーのうちの1種をベースにしたものであった。錠剤は、直径9mmのパンチを用いてCarver油圧プレスで2.5Tの乾き圧縮により得た。
【0041】
錠剤の挙動を、人工胃液(SGF)および人工腸液(SIF)中で検査した。これらの媒質は、ペプシンおよびパンクレアチンを添加しなかったという違いはあるが、米国薬局方(1990年)に従い調製した。ペプシンおよびパンクレアチンを添加しなかった理由は、検査したポリマーがいずれも、これらの酵素により加水分解されないことである。本媒質は以下により調製した。
【0042】
−SGFについては、塩酸ナトリウム2gおよび7mLのHC1 (37%)を十分量の水に溶解して1Lとした。
−SIFについては、一塩基性リン酸カリウム6.8gを水250mLに溶解し、0.2N水酸化ナトリウム190mlを前記溶液に添加してpH7.5となるよう調整した。次に、前記溶液が1Lとすると、人工腸液は完成した。
【0043】
実際には、胃腸での挙動については、錠剤をSGF50mLに1時間入れた後、SIF50mLに5時間入れた。錠剤の挙動は、各1時間後に評価(ガラス接着性、膨潤性、溶解性)した。
【0044】
<結果>
<圧縮に対するPCTの安定性>
膜の完全性に対する圧縮力の影響は認められなかった。全カロチン量および全クロロフィル量は同じであり、したがって、クロロフィル/カロチン比は変化しなかった(図3)。
【0045】
PCTの光合成作用は、圧縮中に約35%の活性が失われた事実により、圧縮により中程度の影響を受けたが、圧縮力が本活性に影響しているとは思われないということが言える(図4)。
【0046】
<ポリマー存在下での圧縮に対するPCTの安定性>
カロチンおよびクロロフィルのさまざまな含量は、錠剤中のPCT量に比例して増加し、各ケースにおけるクロロフィル/カロチン比は変化しなかった。その一方で、同量のPCTを有するが、異なるポリマーで調製した錠剤において判定した色素の量はさまざまであった(図5)。実際、CMC1では、CMC2よりも多量の色素が検出された。CMC2では、アルギン酸よりも多量の色素が検出された。
【0047】
アルギン酸は、CMC賦形剤よりも色素量が少ない結果になったと思われる。考えられる説明としては、アルギン酸のより高い接着能によって、色素部分は保持される、またはアッセイを妨害することが挙げられる。CMC賦形剤のうち、CMC1(低粘度)は最も多量の色素が検出される結果となった。高粘度のCMC2で多量の色素が保持されたという同様の影響は、この挙動を説明することができる。しかし、高分子賦形剤における違いは、全カロチノイド、Chla/Chlb比および Chl/Car比の点から見ればはるかに少ない。
【0048】
光合成活性に関して、PCT20%のCMC1を含有する錠剤ではより高い活性が保持され、アルギン酸およびCMC2の順に低下した。本活性の増加は、錠剤の含有量に厳密には比例しないものの、錠剤の含有量に伴い増加し続けた。PCT成分が20%から40および60%に増加すると、光合成活性は適度に増加したと考えられる(図6)。
【0049】
<人工胃腸液における錠剤の挙動>
ポリマーのみからなる錠剤の挙動を表1に示す。SGF中で1時間インキュベーションする間に、アルギン酸およびCMC1のポリマーマトリクスは、わずかに膨潤しガラスに接着するのに対し、CMC2は同じくガラスに接着するものの、膨潤体積がより大きい。SIFでのインキュベーション1時間後、すべての高分子錠剤はゲルに周りを囲まれ、ガラスに接着したままであった。さらにSIFでのインキュベーション4時間後、異なる種類の錠剤が依然としてガラスに接着していた。膨潤し続けるアルギン酸は、SIFでのインキュベーション4時間後に溶解し始めるが、5時間後も全体的にゲルを形成することはない。CMC1は、SIFでのインキュベーションわずか2時後に溶解し始め、5時間後では溶解がきわめて進み、全体的にゲルフォーム下にあった。CMC2は、最も大きい膨潤体積を示し、全体的にゲルフォーム下にあったが、溶解しているようには思われない。CMC2のペレット剤の溶解を改善するには、他の補助剤を添加するべきである。
【0050】
20、40または60%のPCTを含有する錠剤の挙動は、PCTを含まないポリマー対応物の挙動に類似していた。追加観察では、SIF中に緑色のPCTの遊離が見られた。アルギニン酸を用いると、PCTの遊離はほとんど見られず、PCTの負荷量を上げても有意な増加は見られない。CMC2は高度に膨潤したゲルを形成する。これは、わずかにPCTを遊離するものであるが、その遊離量はPCTの錠剤負荷量に伴い増加した。CMC1の溶解により、PCTの遊離は促進され、実際に5時間で完全に遊離する。ペレット剤の溶解、速度もしくは時間、およびチラコイドの遊離を調整するために、補助剤を添加することができる。
【0051】
上記に記載の本発明は、同様の変更がさまざまな方法で行われることは明白である。当業者は、本発明の趣旨から逸脱することなく、これに他のさらなる変更および修正を行うことが可能であることを認識している。そのような変更および修正はすべて、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内であるものとする。
【0052】
【表1】

【0053】
[参考文献]

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】TPA誘発耳介浮腫に対する、チラコイド腸内投与の影響を示す図である。
【図2】カラゲナン誘発肢浮腫に対する、チラコイドの腸内投与および経口投与の影響を示す図である。
【図3】チラコイドを異なる圧力で圧縮した後の、色素の完全性を評価するための色素用量を表す図である。
【図4】異なる圧力で圧縮した後の、チラコイドの光合成活性を示す図である。
【図5】多様なポリマーの存在下で圧縮した後の、チラコイドの色素の完全性を示す図である。
【図6】チラコイド光合成活性に対する、多様なポリマーにおけるさまざまなチラコイド濃度の影響を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性酸素種の形成または炎症が関与する疾患または障害を治療または予防する経口用組成物の作製における精製チラコイドの使用。
【請求項2】
組成物の成分に対する酸化損傷を防止するための経口用組成物の作製における精製チラコイドの使用。
【請求項3】
前記経口用組成物が食品または栄養補助食品である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
対象において、活性酸素種の形成もしくは炎症が関与する疾患または障害を治療または予防する方法であって、有効量の精製チラコイドを経口投与する工程を含む方法。
【請求項5】
経口摂取または経口投与のための担体および精製チラコイドを含む経口用組成物であって、前記担体が、水、生理食塩水またはプロピレングリコールから必須になるものではない経口用組成物。
【請求項6】
食品または栄養補助食品である、請求項5に記載の経口用組成物。
【請求項7】
ペレット剤、カプセル封入した顆粒およびカプセル封入した粉末からなる群から選択される薬物である、請求項5に記載の経口用組成物。
【請求項8】
前記担体が0.01から95%(w/w)の量で存在する、請求項5に記載の経口用組成物。
【請求項9】
前記精製チラコイドが、対象の体重1kgあたり0.1から10mgの用量を実現する量で存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用または方法または組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−533619(P2007−533619A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526498(P2006−526498)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/CA2004/001724
【国際公開番号】WO2005/027944
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(502237272)ピュアセル・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】