説明

ツロブテロール含有貼付剤

支持体上にゴム、粘着付与樹脂および軟化剤からなる粘着剤層が積層された貼付剤であって、その粘着剤層に有効成分としてツロブテロールを1〜4重量%の低濃度溶解状態で含有し、放出制御剤として高級脂肪酸を0.1〜3重量%配合したツロブテロールを低濃度に含有し安定な放出制御能を有する貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ツロブテロール含有経皮吸収用貼付剤に関する。
【背景技術】
ツロブテロールの経口剤の持つ欠点を補う製剤として、近年ツロブテロールの経皮吸収型製剤が数多く提案されている(特開平11−228395号公報、特許第2753800号明細書:特開平7−285854号公報、国際公開第97/14411号パンフレットおよび特許第2633089号明細書:特開平5−194202号公報参照)。
ツロブテロールを粘着剤に単純に溶解した貼付剤は、有効な血中濃度を維持するに必要な持続性が得られない等の欠点がある。
従って、ツロブテロール濃度を高める手段や、粘着層を厚くし、含量を増加させる手段が試みられている。
例えば、特開平11−228395号公報では、ツロブテロールが十分に溶解できる貼付剤構成成分を用いる高濃度溶解型ツロブテロール貼付剤が提案されている。
しかし、このような貼付剤は、長期間保管時、ツロブテロール濃度が高いため、温度などの環境変化による影響を受けやすく、例えば、製造直後、良好な品質であったとしても、経時後、粘着剤層に、ツロブテロールが析出する、もしくは、濃度差ができることにより、放出挙動が初期と異なる恐れがある。
一般的に、貼付剤に、その構成成分あるいはその構成成分以外の物質を多量に加えることは、貼付剤に必須とされる粘着性・保形性などの基本物性を崩してしまい、さらには薬物を安定に放出することが困難となる。
高含量型ツロブテロール貼付剤に関しても、粘着剤重量の増加が過ぎると、基本物性が悪化し、貼付中に違和感を与え、衣服と擦れによって脱落が生じることがある。
また、高濃度・高含量溶解型ツロブテロール貼付剤は、貼付剤に含まれるツロブテロールが多量となることが避けられず、これは、コスト的に実用性に欠けたものであると言える。
一方、溶解型と結晶型ツロブテロールとを特定割合で配合した貼付剤(特許第2753800号明細書参照)、ツロブテロールを粘着剤中で再結晶した貼付剤(国際公開第97/14411号パンフレット参照)、ツロブテロールと特定のコポリマーからなり、ツロブテロールを懸濁またはマイクロカプセル化し、粘着層に配合する、もしくは、マトリックス層、粘着層、リザーバー層を構築し、積層化した貼付剤(特許第2633089号明細書参照)などが、ツロブテロールの作用時間を持続させる経皮吸収製剤として提案されている。
しかしながら、これらの貼付剤においても、長期間保存されるとき、温度など環境変化の影響を受けやすく、例えば、夏期の気温上昇により、貼付剤中の結晶、懸濁、または、マイクロカプセル部のツロブテロールが溶けだしたり、逆に冬場の気温低下により、溶解していたツロブテロールの析出を生じる。積層型も同じく、環境変化により、マトリックス積層とリザーバー層間でツロブテロールもしくは他の貼付剤成分の移動が生じ、貼付剤からのツロブテロール放出挙動が変動し、治療効果に影響を及ぼす可能性がある。
また、同時に、これらの貼付剤は、ツロブテロールの懸濁、マイクロカプセル化とマトリックスへの安定的な混合方法、マトリックス中でのツロブテロールの再結晶化条件、また、マトリックス、リザーバー層の構築、積層化に複雑な製造プロセスが必要とされる等の問題点がある。
【発明の開示】
本発明の目的はツロブテロールを低濃度に含有しながら、安定な放出制御能を有する貼付剤を提供することにある。
本発明者等は上記の問題点に鑑み、鋭意研究を行った結果、高級脂肪酸、ゴム、粘着付与樹脂、軟化剤を、適切に組み合わせた粘着剤層に、ツロブテロールを低濃度で配合した貼付剤が、意外にも、治療上有効な持続した放出量を示し、かつ放出挙動を容易に制御でき、経時変化が少なく、さらには、粘着性・保形性など貼付剤としての基本物性を適正化でき、そして製造方法を簡便化しうることを見出し、本発明を完成した。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例1と比較例1を適用した場合のツロブテロールの血清中濃度推移を示す図である。
第2図は実施例1と比較例2及び比較例3を適用した場合のツロブテロールのラット摘出皮膚における透過量推移を示す図である。
第3図は実施例1と比較例1、比較例4及び比較例6を適用した場合のラット摘出皮膚におけるツロブテロール透過量推移を示す図である。
第4図は実施例4と比較例5を適用した場合のラット摘出皮膚におけるツロブテロール透過量推移を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
すなわち本発明は、支持体上にゴム、粘着付与樹脂および軟化剤からなる粘着剤層が積層された貼付剤において、該粘着剤層に有効成分としてツロブテロールを1〜4重量%、そして放出制御剤として高級脂肪酸、好ましくは炭素数11〜22の高級脂肪酸、特に好ましくは炭素数14〜18の高級脂肪酸を0.1〜3重量%配合してなるツロブテロール含有貼付剤に関する。
本発明はまた、上記粘着剤層のゴムが5〜35重量%、粘着付与樹脂が20〜70重量%、そして軟化剤が5〜60重量%配合されたツロブテロール含有貼付剤にも関する。
従来から提案されているツロブテロール貼付剤では、粘着剤の構成に、極性の高い官能基もしくは反応基を持たせたアクリル系粘着剤、極性の高い粘着付与樹脂例えばロジン系樹脂などの物質の使用が必要とされている。しかしながら、本発明に係る貼付剤製剤では、これらの物質を必要としないばかりか、むしろそれらは、ツロブテロールの放出挙動、経時的な安定性を大きく変化させる要因となり、その配合は好ましくないことも判明した。
以下に、本発明製剤の構成を更に具体的に説明する。
本発明製剤に有効成分として配合されるツロブテロールは、経皮吸収され気管支拡張の治療効果を発揮するものであるが、その配合量は1〜4重量%の低濃度であることを特徴とする。配合量が1重量%未満であると、治療効果を発揮させるためには貼付面積が大きくなり、また、4重量%を越えると、高濃度、高含量になり、薬物の放出制御のために、他成分の配合が多大に必要とされ、強いては、粘着剤としての基本物性を崩してしまう可能性があり好ましくない。
本発明製剤に配合される高級脂肪酸は、ツロブテロールの放出挙動を安定に制御する働きがあり、放出制御剤として用いられる。高級脂肪酸としては炭素数11〜22、好ましくは14〜18の高級脂肪酸が用いられ、具体的にはリノール酸、リノレン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、イソステアリン酸、リシノール酸などが挙げられ、特に、オレイン酸、ステアリン酸が好ましい。
その配合量は、0.1〜3重量%であり、好ましくは0.2〜2重量%、より好ましくは、0.3〜1重量%である。配合量が0.1重量%未満であると、ツロブテロールが速やかに放出されてしまい、また、3重量%を越えると、放出を過度に抑制するので好ましくない。
本発明製剤に配合されるゴムは、粘着剤の強度を調整する働きがある。天然ゴム、もしくは、合成ゴムのイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・イソプレンブロック共重合体から選ばれるが、品質の面から合成ゴムが好ましく、特に、スチレン・イソプレンブロック共重合体が好ましい。
その配合量は通常5〜35重量%であり、好ましくは10〜30重量%、特に好ましくは15〜25重量%である。配合量が5%未満であると、粘着剤の強度が不十分となり、また、35重量%を越えると、強度が過度に高まり、粘着力が低下する。
本発明製剤に配合される粘着付与樹脂は、粘着剤の粘着力を調整する働きがある。例えば、石油系樹脂、ポリテルペン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂などが挙げられ、特に、石油系樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂が好ましい。
その配合量は通常20〜70重量%であり、好ましくは30〜60重量%、特に好ましくは、40〜55重量%である。配合量が20重量%未満であると、粘着力が不十分となり、70重量%を越えると、粘着力が過度となり、好ましくない。
本発明製剤に配合される軟化剤は、粘着剤の粘性を調節する働きがあり、粘着力、強度、さらには感触の改善など、基本物性の微調整に用いるものである。液状ゴム、液状樹脂、オイル、流動パラフィン、ポリブテンなどが挙げられ、特に流動パラフィン、ポリブテンが好ましい。
その配合量は、ゴム、粘着付与樹脂の配合に応じ、通常5〜60重量%の範囲である。
本発明製剤は、上記構成の粘着剤層を、支持体と剥離ライナーで被覆し製造されるが、粘着剤層の重量は、20〜200g/m、好ましくは50〜150g/mの範囲が好ましい。重量が20g/m未満の場合、粘着力が非常に弱くなり、200g/mを越えると、粘着力が過度に高まり、皮膚に損傷を与える可能性がある。また、いたずらに重量を増やすことは、コスト面を考慮しても好ましくない。
支持体としては、通常用いられるもので、上記の粘着剤が塗布できるものであればよいが、貼付中、皮膚に過度に違和感を与えず、剥離時に、粘着剤が皮膚に残らない様に十分保持できるものが望ましい。また、ツロブテロールが吸着しない物質がよく、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、もしくはそれらに、紙、布、不織布などを貼り合わせたものから選ばれる。
なお、ライナーとしては、ツロブテロールが吸着しない物質がよく、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系フィルム、もしくはそれらをベースとした積層物から選ばれる。また、ライナーを除去する際に、粘着剤から容易に剥がれるのがよく、場合によれば、接着面にシリコーン樹脂などの剥離剤を塗布してもよい。
本発明製剤の製造方法は、溶媒乾燥法が適している。例えば、粘着剤の構成成分を有機溶剤に溶解させ、ライナーの片面に均一に塗布する。次に、塗布物を乾燥し有機溶剤の除去を行い、支持体を貼り合わせた後、適切な寸法に裁断し包装袋の中に密封するものである。
別の製造手段として、ホットメルト法も考えられる。すなわち、粘着剤の構成成分を、約100〜200℃の高温状態にて溶解、混練し、さらに高温下で塗布した後、冷却して完成されるものである。
しかし、この方法は、有機溶剤を必要としない利点はあるものの、熱負荷が非常に大きく、構成成分物を幾分変性させてしまい、基本物性、さらには、ツロブテロールの放出挙動などの品質が安定せず、また、作業には極めて高度な製造プロセスの管理が必要とされる。製造方法を簡便化、実用化の面からは、この方法は第一手段としては選択され難い。
【実施例】
以下に、本発明を、実施例、試験例などを挙げて説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】

上記の配合量にて、ツロブテロールとオレイン酸を適量のトルエンに溶解した(溶解液A)。これとは別に、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、脂環属飽和炭化水素樹脂、ポリブテン、流動パラフィン、ジブチルヒドロキシトルエンを適量のトルエンに均一になるまで混合した(混合液B)。
溶解液Aと混合液Bを均一になるまで攪拌し得られた液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)ライナーの剥離処理面上に、粘着剤重量が100g/mになるように塗布、乾燥し、粘着剤面にPET支持体を貼り合わせ、適切なサイズにカットし、包装袋中に密封した。
【実施例2】

上記の配合量にて実施例1と同様の方法で作製した。
【実施例3】

上記の配合量にて実施例1と同様の方法で作製した。
【実施例4】

上記の配合量にて実施例1と同様の方法で作製した。
比較例1
市販の結晶型ツロブテロール貼付剤(商品名:ホクナリンテープ、製造:北陸製薬(株)):ツロブテロール濃度:10重量%、含量2mg/枚、寸法10cm
比較例2
実施例2において、オレイン酸1重量%を除き、替わりに、流動パラフィン1重量%を加えたツロブテロール貼付剤。実施例1と同様の方法に基づき作製した。
比較例3
実施例2において、脂環族飽和炭化水素樹脂43重量%の替わりに、ロジングリセリンエステル43重量%を配合したツロブテロール貼付剤。実施例1と同様の方法に基づき作製した。
比較例4

上記の配合量にて、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体とジオレフィン・オレフィン共重合体を150℃で加熱し撹拌した。ツロブテロールを加え撹拌し得られた混合物を110℃に保ちながらPETライナーの剥離処理面上とPET支持体の間に挟み込み粘着剤が250g/mになるように定圧展延した。得られた貼付剤を適切なサイズにカットし、包装袋に密封した。
本品は特許第2633089号明細書の実施例(試料2a)の方法に基づき作製された高濃度・高含量溶解型貼付剤である。
比較例5

上記の配合にて、比較例4の方法に基づき比較例5の粘着剤層5−1、2を作製した。粘着剤層5−1のPET支持体、及び粘着剤層5−2のPET支持体を取り除き、それぞれの粘着剤面を貼り合わせ積層型ツロブテロール製剤を作製した。得られた貼付剤を適切なサイズにカットし、包装袋に密封した。
本品は特許第2633089号明細書に基づき作製した積層化溶解型貼付剤である。
比較例6

上記の配合量にて、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体とポリイソブチレンと脂環族飽和炭化水素樹脂を適量のトルエンに均一になるまで混合した。混合液にツロブテロールとミリスチン酸イソプロピルを加え均一になるまで混合し、得られた液をPETライナーの剥離処理面上に、粘着剤重量が40g/mになるよう塗布、乾燥し、PET支持体を貼り合わせ、適切なサイズにカットし、包装袋に密封した。
本品は特開平11−228395号公報の実施例8の方法に基づき作製した高濃度溶解型貼付剤である。
試験例1
実施例1で得られた貼付剤(ツロブテロール濃度:2重量%、寸法:10cm)と比較例1の市販の貼付剤を、除毛したラット背部に貼付した。貼付後、2、4、8、10、24時間後に、血液を採取し、HPLCを用い、血清中ツロブテロール濃度を測定した。実施例1と比較例1の貼付剤を適用した場合のツロブテロールの血清中濃度推移を第1図に示した。
この試験結果より、実施例1の貼付剤は、5倍濃度のツロブテロールを含有する比較例1の市販の貼付剤と同様なツロブテロール濃度推移であることから、本発明の貼付剤は、低濃度溶解型にてツロブテロールを放出制御でき持続性のある貼付剤であることが示された。
また、国際公開第97/14411号パンフレットによれば、結晶型ツロブテロール貼付剤は、貼付剤からの薬物放出性と持続性を安定化させるために、ツロブテロールの粒径を、平均2〜20μm内に揃えることが要求されている。よって、製法上、粘着剤層でツロブテロールを粒径を揃えながら結晶化させるために、温度、期間(時間)をコントロールした熟成過程(エージング)が必要とされる。
しかしながら、実施例1の貼付剤は、ツロブテロール低濃度溶解型で、かつ、結晶配合によらない放出制御能を有していることから、上記のような複雑な熟成過程を必要とせず、非常に簡便な製造方法で製造が可能であることが示された。
試験例2
除毛したラット腹部皮膚を摘出しフランツ型拡散セルに取り付けた。リン酸緩衝液をリザーバー液とし、試験の間、37℃に保ち、撹拌を続けた。
実施例1で得られた貼付剤と比較例2、比較例3の製剤を直径13mmの円型にカットし(実施例、比較例のツロブテロール濃度、含量:2重量%、200μg/cm)、摘出皮膚に貼付した後、経時的に、リザーバー液を少量採取し、HPLCを用いて、透過したツロブテロール量を測定した(ラット摘出皮膚薬物透過試験)。
実施例1と比較例2、比較例3の貼付剤を適用した場合のツロブテロール透過量の推移を第2図に示した。
実施例1:ツロブテロール濃度2重量%、含量200μg/cm
比較例2と比較例3:ツロブテロール濃度2重量%、含量200μg/cm
この試験結果より、実施例1の薬物透過量は一定に推移した。一方、高級脂肪酸を未添加とする比較例2は、薬物透過量が上昇し、後半の持続性が低下する傾向が示された。また、極性を有するロジングリセリンエステルを配合した比較例3は薬物透過量が大きく減少した。
試験例3
保存温度差による放出への影響
保存温度差による放出への影響を見る為に、実施例1と比較例1、比較例4、及び、比較例6を4℃、及び、40℃の恒温室で3週間保存した後、室温に戻し、試験例2と同じ方法により、ラット摘出皮膚薬物透過試験を実施した。
実施例1と比較例1、比較例4、及び比較例6の貼付剤を適用した場合のツロブテロール透過量の推移を第3図に示した。そして保存温度差による薬物透過量比を表1に示した。
実施例1:ツロブテロール濃度2重量%、含量200μg/cm
比較例1:ツロブテロール濃度10重量%、含量200μg/cm(結晶型ツロブテロール貼付剤)
比較例4:ツロブテロール濃度5.5重量%、含量1375μg/cm(高濃度・高含量溶解型ツロブテロール貼付剤)
比較例6:ツロブテロール濃度5重量%、含量200μg/cm(高濃度溶解型ツロブテロール貼付剤)

この試験結果より、実施例1は、薬物透過量が安定しており、保存温度差の影響を受けにくい貼付剤であることが示された。
一方、比較例群は、いずれも保存温度差の影響を受け易いことが示された。これは、温度差の影響により、粘着剤中の結晶と溶解部分の比が変化すること、また、薬物濃度が高いことにより、粘着剤中の飽和度が変動する、もしくは、薬物が他粘着剤の構成成分と分離しやすくなることにより、薬物透過量が大きく上下変動する可能性があることが示唆された。
試験例4
保存期間の放出への影響
保存期間の放出への影響を見る為に、実施例4にて製造12時間後と室温下2ヶ月保存したもの、及び、比較例5にて粘着剤層5−1と5−2を貼り合わせ12時間後と室温下2ヶ月保存したものを用い、試験例2と同じ方法により、ラット摘出皮膚薬物透過試験を行った。なお、比較例5は、薬物濃度の低い5−1側を皮膚に貼付した。
実施例4と比較例5適用によるツロブテロール透過量の推移を第4図に示した。
実施例4:ツロブテロール濃度3重量%、含量240μg/cm
比較例5:(粘着剤層5−1)ツロブテロール濃度1重量%、含量50μg/cm
+(粘着剤層5−2)ツロブテロール濃度5.5重量%、含量1108μg/cm(積層化貼付剤)
この試験結果より、実施例4の貼付剤は、経時的に薬物透過量の変化が少ない貼付剤であることが示された。
一方、比較例5の貼付剤は、経時的に透過量が上昇変化した。薬物濃度の高い粘着剤であっても、薬物濃度の低い層を貼り合わせることで、薬物透過量を抑制し制御できるが、長期的には、粘着剤層間で薬物移行が生じ濃度が平均化されることにより、薬物放出制御が損なわれることが推察された。
産業上の利用の可能性
本発明は、粘着剤層に、ツロブテロールを低濃度に溶解し、高級脂肪酸、ゴム、粘着付与樹脂、軟化剤を、適切な割合に調製することにより得られ、ツロブテロールの放出挙動を容易に制御でき、放出パターンの経時安定性に優れたものである。さらに、粘着性・保形性など貼付剤の基本物性を適正に調製でき、製造方法を簡便化しうることにより、従来公知のツロブテロール貼付剤に比し、以下の特徴と利点を持つものである。
(1)ツロブテロールが低濃度であるにも拘わらず、十分なツロブテロール放出量を示し、ツロブテロール放出挙動を幅広く、簡便に制御できるので、治療目的に応じ、効果を最適化することができる。
(2)ツロブテロール放出量、放出挙動を制御しつつ、粘着剤としての基本物性を調節することが可能であることより、治療効果があり皮膚状態に適した物性の貼付剤を提供することが可能である。
(3)保管時、環境変化による影響が少なく、品質を、より長期間安定的に保つことができる。
(4)製造方法が非常に簡便で実用化に優れている。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にゴム、粘着付与樹脂および軟化剤からなる粘着剤層が積層された貼付剤において、該粘着剤層に有効成分としてツロブテロールを1〜4重量%、そして放出制御剤として高級脂肪酸を0.1〜3重量%配合してなるツロブテロール含有貼付剤。
【請求項2】
粘着剤層のゴムが5〜35重量%、粘着付与樹脂が20〜70重量%、そして軟化剤が5〜60重量%配合された請求項1記載のツロブテロール含有貼付剤。
【請求項3】
高級脂肪酸が炭素数11〜22の高級脂肪酸である請求項1または2記載のツロブテロール含有貼付剤。

【国際公開番号】WO2004/112770
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【発行日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507264(P2005−507264)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008777
【国際出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000215958)帝國製薬株式会社 (44)
【Fターム(参考)】