説明

ティシュペーパーの製造方法及びティシュペーパー製品

【課題】コンタクトエンボス受けロールの紙粉を除去する。
【解決手段】
複数の連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとした後、その積層連続シートを積層連続シートの下方側に配置したコンタクトエンボスロールと積層連続シートの上方側に配置したコンタクトエンボス受けロールとの間を通してコンタクトエンボスを付与して積層一体化するにあたり、コンタクトエンボス受けロールに対してドクターブレードを設置して、コンタクトエンボス受けロールに付着した紙粉を掻き取るようにして除去しつつコンタクトエンボスを付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマシンに設置されたコンタクトエンボス付与手段を構成するコンタクトエンボス受けロールの紙粉除去を伴うティシュペーパーの製造方法及び当該製造方法により製造されたティシュペーパー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパーの箱詰め製品は、一般的に、抄紙設備において薄葉紙を抄造して巻き取ることで一次原反ロール(一般にジャンボロールともいわれている)を製造し、次いで、プライマシンにおいて、上記抄紙設備で製造された複数の一次原反ロールから繰り出した一次連続シートを重ね合わせて巻き取り、複数のプライからなる二次原反ロールを製造し、その後に、インターフォルダ(折り畳み設備)において、上記プライマシンで製造された二次原反ロールから繰り出した二次連続シートを折り畳みながら積み重ね、所定の長さに切断するなどしてティシュペーパー束を得て、このティシュペーパー束を収納箱(ティシュカートン)内に収納することによって製造される。
【0003】
ここで、プライマシンにおいて一次連続シートを複数プライの積層連続シートに加工する際には、積層連続シートが各プライの連続シートに離れないようにすべく、積層連続シートに対してティシュペーパー製品幅の内側両端となる位置にコンタクトエンボスを付与する。
【0004】
このコンタクトエンボスは、具体的には、積層状態の一次連続シートを、平滑なロール(コンタクトエンボス受けロール)と、表面に凹凸加工、ローレット加工等を施したコンタクトエンボスロールとの間に挟み圧力をかけることによって付与する。
【0005】
ここで、コンタクトエンボスを付与するにあたっては、積層連続シートに対して、各ロールを所定圧で押しつける操作を行うことから、当該部位においては、紙粉の発生或いは紙粉の付着・堆積が生ずるため、これを清掃する必要がある。
【0006】
そして、特に、従来、コンタクトエンボス受けロールにおける紙粉除去は、コンタクトエンボス受けロールの表面にオンジナオイル等の石油類を含ませたフェルトドクターを押し当てることで付着した紙粉を拭き取るようにしていた。
【0007】
しかし、フェルトドクターでは紙粉を確実に除去することができず、製品に紙粉が混入したり、ロール表面に紙粉が付着した箇所でのコンタクトエンボスロールの当りが強くなり積層連続シートに孔が開き品質不良を発生させることがあった。
【0008】
これは、近年、高品質ティシューや保湿系ティシューなど柔らかな紙質のものが求められるようになり、これに伴って紙粉発生量が増加し、これまで比較的平滑で紙粉付着の少なかったコンタクトエンボス受けロールにおける紙粉付着が顕著になってきており、問題が顕在化しつつある背景がある。
【0009】
コンタクトエンボス受けロールの紙粉除去については、改善のためプライマシン全体を停止させてコンタクトエンボス受けロールの清掃頻度を増やす対策等も行われているが、このようなことはプライマインにおける生産効率が悪化するという問題があった。
【0010】
また、従来のコンタクトエンボスロールから紙粉を除去する方法では、コンタクトエンボス受けロールの表面を常時平滑に維持することができない。そして、コンタクトエンボス受けロールの表面が平滑でない場合には、コンタクトエンボスを鮮明に付与することができなくなる。
【0011】
このことは、特に水系のローション薬液を付与した保湿系ローションティシューを製造する際には、コンタクトエンボスを鮮明にかつしっかりと付与することが通常のティシュペーパーより求められることから、重要な問題となる。
【0012】
特に、ローション薬液を付与する場合には、ローション薬液を付与した際に、コンタクトエンボスが消失しやすい問題が有り、しっかりと確実なコンタクトエンボスの付与が求められるため、コンタクトエンボス受けロールの紙粉除去がいっそう重要なものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−132891号公報
【特許文献2】特開平5−321189号公報
【特許文献3】特表2001−525447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明の主たる課題は、上記問題点を改善したコンタクトエンボス受けロールの紙粉除去を伴うティシュペーパーの製造方法、特にコンタクトエンボス受けロール表面を平滑な状態に維持することができる紙粉除去を伴うティシュペーパーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための手段及びそれらの作用効果は次記のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
ティシュペーパー製品の製造方法であって、
抄紙設備により抄造され巻き取られた一次原反ロールから、インターフォルダに供するためのティシュペーパー製品用の二次原反ロールを、連続的に製造するプライマシンにおいて、
複数の一次原反ロールから繰り出された複数の連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとした後、その積層連続シートを積層連続シートの下方側に配置したコンタクトエンボスロールと積層連続シートの上方側に配置したコンタクトエンボス受けロールとの間を通してコンタクトエンボスを付与して積層一体化するにあたり、
前記コンタクトエンボス受けロールに対してドクターブレードを設置して、コンタクトエンボス受けロールに付着した紙粉を掻き取るようにして除去しつつコンタクトエンボスを付与することとした、
ことを特徴とするティシュペーパー製品の製造方法。
【0016】
〔請求項2記載の発明〕
ドクターブレードとコンタクトエンボス受けロールとの接する位置を、コンタクトエンボス受けロールの回転軸より上方かつ、コンタクトエンボス受けロールの回転軸よりも積層連続シートの流れ方向において上流側とした請求項1記載のティシュペーパーの製造方法。
【0017】
〔請求項3記載の発明〕
前記ドクターブレードを、カーボン製のドクターブレードとした請求項1又は2記載のティシュペーパーの製造方法。
【0018】
〔請求項4記載の発明〕
ドクターブレードのコンタクトエンボス受けロールに対するニップ圧をエアシリンダーにより調節する請求項1〜3の何れか1項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【0019】
〔請求項5記載の発明〕
ドクターブレードのコンタクトエンボス受けロールに対するニップ圧を50〜300g/cmとする請求項1〜4の何れか1項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【0020】
〔請求項6記載の発明〕
ドクターブレードに対してエアを噴射してドクターブレードを冷却する請求項1〜5の何れか1項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【0021】
〔請求項7記載の発明〕
ドクターブレード上に堆積する紙粉をコンタクトエンボスロール及びコンタクトエンボス受けロールの回転を止めることなく連続的又は簡潔的に除去する請求項1〜6の何れか1項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【0022】
〔請求項8記載の発明〕
コンタクトエンボス受けロールのドクターブレードと接する位置よりも、コンタクトエンボス受けロールの回転方向前方側にフェルトドクターを設置して、ドクターブレードによる紙粉の掻き取り前に予備的な紙粉清掃を行なう請求項1〜7の何れか1項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【0023】
〔請求項9記載の発明〕
請求項1〜8の何れか1項に記載のティシュペーパーの製造方法により製造されたことを特徴とするティシュペーパー製品。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば以下の作用効果を奏する。
コンタクトエンボス受けロールに対してドクターブレードを設けることで、コンタクトエンボス付与に伴うコンタクトエンボス受けロールの回転に伴って、コンタクトエンボス受けロール上の紙粉が掻き取られ連続的に確実に除去されるので、コンタクトエンボス受けロールの表面の平滑性が維持されて鮮明で確実なコンタクトエンボスの付与が可能となるとともに、積層連続シートに紙粉が付着することが防止され品質不良の発生が防止される。また、プライマシンを停止させることなく紙粉を除去することができるようになり生産効率も向上する。
【0025】
また、ドクターブレードとコンタクトエンボス受けロールとの接する位置を、コンタクトエンボス受けロールの回転軸より上方かつ、コンタクトエンボス受けロールの回転軸よりも積層連続シートの流れ方向において上流側とすると、ドクターブレードで掻き取った紙粉がドクターブレード上に堆積することになるため、掻き取った紙粉が積層連続シート上に落下することが無くなり、不良品の発生を確実に防止できるようになる。
【0026】
他方、カーボン製のドクターブレードを用いた場合には、以下のようなさらなる利点がある。まず、カーボン製のドクターブレードは、炭素繊維をエポキシ樹脂等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の母材により硬化して形成されたものである。そして、プライマシンは元来高速に運転されるものであるためコンタクトエンボス受けロールに対してドクターブレードを設置すると、コンタクトエンボス受けロールとドクターブレードとの摩擦によりドクターブレードが熱を持つ。このため、カーボン製のドクターブレードは、この摩擦熱により上記母材に若干の軟化・溶融が生ずる。なお、この軟化等の現象は湿潤条件下で著しくなる。これは、エポキシ樹脂がある程度水を吸収する性向があるからである。そして、カーボン製のドクターブレードの母材がこのように軟化・溶融した場合には、コンタクトエンボス受けロールの表面を炭素繊維を含む母材が被覆するようになり、もってコンタクトエンボス受けロールの表面の凹凸が埋め、ロール表面を平滑にするコーティング効果を奏し、紙粉が付着し難くなるとともに、コンタクトエンボスがより確実に形成されるようになる。
【0027】
他方、ドクターブレードは、エアシリンダーによってコンタクトエンボス受けロールとのニップ圧を調節するようにするのが望ましい。このようにすると、コンタクトエンボス受けロールの紙粉除去効果をより高めることができる。なお、かかるエアシリンダーの圧力を高めることでドクターブレードのコンタクトエンボス受けロールへの圧を調整し、上記摩擦熱の発生を調整することができる。
【0028】
その一方で、ドクターブレードの摩擦熱による摩耗が過度に進行しないように、ドクターブレードにエアを噴射するなどするようにするのが望ましい。これにより、ドクターブレードとコンタクトエンボス受けロールとの摩擦による熱を調整することができる。
【0029】
なお、ドクターブレードのニップ圧は50〜300g/cmであるのが望ましい。
また、ドクターブレードに対して噴射するエアのエア圧は、紙粉が過度に飛散しないように0.05〜0.3MPaであるのが望ましい。
【0030】
他方、ドクターブレード上に堆積する紙粉をコンタクトエンボスロール及びコンタクトエンボス受けロールの回転を止めることなく連続的又は簡潔的に除去することで、積層連続シートへの紙粉の落下のおそれがより確実に防止され、コンタクトエンボス不良或いは紙粉混入による不良品発生のおそれがより確実に防止される。
【0031】
他方、コンタクトエンボス受けロールのドクターブレードと接する位置よりも、コンタクトエンボス受けロールの回転方向前方側にフェルトドクターを設置して、ドクターブレードによる紙粉の掻き取り前に予備的な紙粉清掃を行なうのが望ましい。特にフェルトドクターにオンジナオイル等の清掃用油を含浸させると、コンタクトエンボス受けロールの冷却効果を奏するとともに、コンタクトエンボス受けロールに付着した紙粉を膨潤させてドクターブレードによる紙粉の掻き取り効果が高められる。
【0032】
本発明によると以上の効果とともに、下記の副次的な効果をも奏する。すなわち、積層連続シートの品質不良の発生が防止されることですることで、損紙発生量が低減され、歩留が向上する。また、二次原反ロールの巻取り長さを、長くすることができ、歩留の向上、プライマシンの運転効率、生産性が向上する。さらに、コンタクトエンボス受けロールに付着した紙粉を除去する手間が低減され、プライマシンのメンテナンスによる停止時間を短縮でき、生産性及び運転効率が向上する。コンタクトエンボスが鮮明に入った製品となり、製品品質が向上する。さらに、カーボン製ドクターブレードの使用によるコンタクトエンボス受けロールの表面が平滑になることにより、機械負荷が小さくなり使用電力を低減することができる。さらに、カーボン製ドクターブレードの使用によるコンタクトエンボス受けロール表面のコーティング効果により、コンタクトエンボス受けロールの傷や摩耗が軽減し、交換周期を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明にかかる抄紙設備及び一次原反ロールの製造方法例を示す概略図である。
【図2】本発明にかかるプライマシンでの二次原反ロールの製造方法例を示す概略図である。
【図3】本発明にかかるコンタクトエンボスの付与を説明するための概略図である。
【図4】本発明にかかるコンタクトエンボス受けロールの紙粉除去方法を説明するための図である。
【図5】本発明にかかるティシュペーパー束の収納工程及びティシュペーパー製品を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本発明の実施形態を説明する。なお、図中の矢印HDは水平方向を、矢印LDは上下方向を示している。
〔抄紙工程:一次原反ロールの製造方法及び製造設備〕
本発明にかかる一次原反ロールJR(ジャンボロールとも称される)は、図1に示す抄紙設備例X1により、以下のようにして製造することができる。
【0035】
まず、ヘッドボックスからパルプスラリーに適宜の薬品を添加して予め調整した紙料がワイヤーパートのワイヤ上に供給して湿紙Wを形成する(フォーミング工程:図示しない)。
【0036】
次にこの湿紙Wをプレスパート31のボトムフェルト31Bに移送し、その後、トップフェルト31T及びボトムフェルト31Bに挟持したまま、トップロール32とボトムロール33の間を通過させて搾水する(脱水工程)。
【0037】
その後、搾水された湿紙Wを、トップフェルト31Tに載せた状態で、タッチロール34を介してヤンキードライヤー35の表面に付着させて乾燥させた後にドクターブレード36(なお、抄紙設備におけるドクターブレードは特許請求の範囲におけるプライマシンにおけるコンタクトエンボス受けロールの紙粉除去を目的とするドクターブレードとは別異のものである)によって掻き剥がしてドライクレープを有する乾燥原紙S1(後述の一次連続シート)とする(乾燥工程)。ここで、湿紙の状態でクレープを行なうウェットクレープではなくドライクレープとすることでティシュペーパーに適した柔らかなクレープ加工紙となる。
【0038】
そして、このクレープ加工された乾燥原紙S1をワインディングドラム37を有する巻き取り手段38によって、前記乾燥原紙S1の裏面が一次原反ロールJRの軸側に対向するようして(巻き取り内面となるようにして)巻き取り、一次原反ロールJRとする(一次原反巻き取り工程)。
【0039】
かかる一次原反ロールJRは、抄紙設備X1の性能によっても相違するが、概ね直径が1000〜5000mm、長さ(幅)が1500〜9200mm、巻き長さが5000〜80000mである。
【0040】
なお、一次原反巻き取り工程の前段にドクターブレード36により掻き剥がした乾燥原紙S1に対してカレンダー工程(図示せず)を設け表裏面の平滑化処理をしてもよい。
【0041】
ここで、乾燥原紙S1の裏面とは、ヤンキードライヤー35のシリンダと接していた面の反対側の面のことを意味する。なお、カレンダー工程の有無にもよるが一般には鏡面のヤンキードライヤーに接していた表面のほうが滑らかで表面性に優れる。
【0042】
ここで、一次原反ロールJRを構成する一次連続シートS1は、後にティシュペーパーに加工されるものであり、最終製品を構成するティシュペーパーとほぼ同等の坪量となる。従って、これを考慮して一次連続シートS1は具体的にはJIS P 8124による坪量が、10〜30g/m2、好ましくは12〜25g/m2、より好ましくは13〜20g/m2とする。坪量が10g/m2未満であると、ティシュペーパーの柔らかさの点においては好ましいが、使用時の適正な強度の確保することが難しくなるとともに、後段のインターフォルダにおける加工が困難となる。さらに、鼻水等の裏抜けが効果的に防止することが困難となる。他方、坪量が30g/m2を超えると、ティシュペーパーが硬くなりすぎて、肌触りが悪化する。特に鼻水をかんだときにごわついた感じがするようになり使用感が悪化する。
【0043】
また、紙厚(尾崎製作所製ダイヤルシックネスゲージにより測定)は50〜200μm、好ましくは60〜180μm、より好ましくは70〜140μmとするのが望ましい。
【0044】
本発明にかかるティシュペーパーでは製品時の紙厚が120〜400μm、特に150〜350μmであるのが望ましく、特にこれを2プライ〜3プライで達成するのが望ましい。上記一次連続シートS1の紙厚とするとティシュペーパーの製品時の当該範囲とすることができる。そして、製品時の紙厚が、120μm未満であると十分な紙力かつ鼻水の裏抜け防止性を達成するのが困難となり、400μmをこえると特に鼻水をかんだときにごわついた感じがするようになり使用感が悪化する。
【0045】
また、一次連続シートS1は、クレープ率が8〜30%、好ましくは10〜22%である。クレープ率が8%未満であると、後段の加工時に断紙しやすいとともに伸びの少ないコシのないティシュペーパーとなる。他方、クレープ率が30%超過であると、加工時のシートの張力コントロールが難しく断紙しやすくなり、また、製造後にはシワが発生して見栄えの悪いティシュペーパーとなりやすくなる。
【0046】
ここで、クレープ率とは、下式で表わされるものとする。
クレープ率:{(製紙時のドライヤーの周速)−(リール周速)}/(製紙時のドライヤーの周速)×100。
【0047】
また、一次連続シートS1は、JIS P 8113に規定される乾燥引張強度(以下、乾燥紙力ともいう)の縦方向が、2プライで200〜700cN/25mm、好ましくは250〜600cN/25mm、特に好ましくは300〜600cN/25mmとし、他方、横方向が、2プライで100〜300cN/25mm、好ましくは130〜270cN/25mm、特に好ましくは150〜250cN/25mmとするのが望ましい。原紙の乾燥引張強度が低すぎると、製造時及び使用時の断紙や伸び等のトラブルが発生し易くなり、高過ぎると使用時にごわごわした肌触りとなる。
【0048】
これらの紙力は公知の方法により調整でき、例えば、乾燥紙力増強剤を紙料或いは湿紙に内添する、紙料のフリーネスを低下(例えば30〜40ml程度低下)させる、原料パルプのNBKP配合率を適宜変更する等の既知の手法を適宜組み合わせることができる。
なお、乾燥紙力剤としては、澱粉、ポリアクリルアミド、CMC(カルボキシメチルセルロース)若しくはその塩であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース亜鉛等を用いることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド・メラミン樹脂、熱架橋性塗工PAM等を用いることができる。
乾燥紙力剤を内添する場合、その添加量はパルプに対する重量比で0.5〜1.0kg/パルプt程度とすることができる。
【0049】
ここで、本発明にかかるティシュペーパーにおいては、鼻かみ、鼻紙等の体液の拭取り用途に用いられることから湿潤紙力剤は内添するのが望ましい。この湿潤紙力剤はポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂などの強いカチオン性のものが好適に用いられる。この場合、その湿潤紙力剤の添加量はパルプに対して、重量比で4.0〜20.0kg/パルプtとするのが望ましい。更には、後述するアニオン性もしくはカチオン性を持つ両性サイズ剤との結合を考慮し、7.0〜18.0kg/パルプtとするのがより望ましい。より好ましくは9.0〜15.0kg/パルプtとするのがさらに望ましい。
5.0kg/パルプt未満ではティシューに必要な湿潤紙力が得られないのと同時に、サイズ剤の定着が遅くなりサイズ剤の効果が十分に発現しない。20.0kg/パルプt超とすれば、カチオン性の強い湿潤紙力剤が抄紙原料中の微細繊維を集め、ティシューの紙質を硬くしたり、あるいは白水系を含む系内でアニオン性物質をトラップし、凝集物の原因となりシートに異物を混入させる恐れがある。
【0050】
ここで、一次原反ロール(一次原反シート)の原料となる紙料について説明すると、紙料は繊維原料としてパルプを主原料とするスラリー(パルプスラリー)に適宜の薬品を添加したものである。
本発明においては、原料パルプは特に限定されず、ティシュペーパーに用いられる適宜の原料パルプを選択して使用することができる。
【0051】
好ましくは、原料パルプは、NBKPとLBKPとを配合したものが好ましい。また、古紙パルプが配合されていてもよいが、得られるティシュペーパーの風合いの点でも望ましいことから、バージンパルプのNBKPとLBKPのみから構成されているのがよい。その場合の配合割合としては、NBKP:LBKP=25:75〜40:60が望ましい。この範囲であると紙力と柔らかさのバランスが優れるものとなる。
【0052】
紙料に添加する薬品例としては、上記乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤のほか剥離剤、接着剤、pH調整剤、粘剤、消泡剤、防腐剤、スライムコントロール剤、染料、などが挙げられる、なお、これらの薬品は、適宜の工程で湿紙に付与してもよい。
【0053】
〔プライマシンにおける工程:二次原反ロールの製造方法及び製造設備〕
本発明においては、抄紙設備X1で製造された一次原反ロールJRを、図2に例示するプライマシンX2において二次原反ロールRを製造する。
本発明においては、このプライマシンX2が、重ね合わせ部51、コンタクトエンボス付与手段54、巻き取り手段56を有し、かかるプライマシンX2において積層連続シートを巻取った二次原反ロールRを製造する。なお、図示の形態のプライマシンでは、好適な例として、カレンダー処理を行なうカレンダー部52、ローション薬液を付与する薬液付与手段53及び積層連続シートをスリットするスリット手段55も設けられている。以下、各手段、各部における工程についてさらに詳述する。
【0054】
なお、プライマシンX2においては、二次原反ロールRを製造するにあたって、加工速度を350〜1100m/分、好ましくは400〜900m/分、より好ましくは500〜750m/分とするのが望ましい。350m/分未満だと十分な生産性とは言えない。他方、1100m/分超過であると安定的に生産するのが困難となる。
【0055】
(積層工程)
プライマシンX2は、一次原反ロールJRを2つ以上セット可能であり、各一次原反ロールJR,JRから繰り出した一次連続シート(図示例ではS11、S12)は、その連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とする重ね合わせ部(積層手段)51に供給されるように構成されている。ここで重ね合わせ部51はガイドロール或いは一対のニップロールで構成され、各一次連続シートS11,S12を積層して各一次連続シートを積層する。
【0056】
なお、図示例では、各一次原反ロールJR,JRから繰り出される一次連続シートS11,S12の表面が、それぞれ積層連続シートS2の表面(ここで積層連続シートの「表面」とは積層外面である積層連続シートS2の表裏面のことである)となるようして重ね合わせ部51に供給されるようになっている。一次連続シートS11,S12の裏面がそれぞれ積層連続シートS2の表面となるよう構成してもよいし、一次連続シートS11,S12のどちらか一方の裏面が積層連続シートS2の表面となり、他方の表面が積層連続シートS2の表面となるようしてもよいが、一次原反シートS11,S12の表面は、乾燥時にヤンキードライヤー57の表面に接していることから裏面と比較して毛羽立ちが少なく滑らかで肌触りが良いので、一次連続シート(乾燥原紙S1)の表面が積層連続シートS2の表裏面を構成するようにするのが望ましい。
【0057】
また、図示例では一次原反ロールJRを2つセットしていわゆる2プライの積層連続シートを巻取る例であるが、3セット、4セットとして3プライ、4プライの積層連続シートを巻取るようにすることも可能である。
【0058】
(コンタクトエンボス付与工程)
本形態にかかるプライマシンX2では、積層手段51の後段にコンタクトエンボス付与手段54を有し、積層連続シートS2がコンタクトエンボス手段54に供給される。
コンタクトエンボス付与手段54は、図3に示すように、積層連続シートの上方に位置する金属ロール又は弾性ロールであるコンタクトエンボス受けロール54Bと、積層連続シートの下方に位置する表面に細かい凸部を有する金属製で硬質のコンタクトエンボスロール54Aとが所定の圧力を有して相互に外周面同士を当接しつつ、それぞれ回転可能に設置されており、コンタクトエンボスロール54Aとコンタクトエンボス受けロール54Bとの間で積層連続シートS2を挟みつつ搬送することで、積層連続シートS2に対して、積層連続シートS2の連続方向に沿って層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスCEが施される。
【0059】
また、コンタクトエンボスロール54Aとコンタクトエンボス受けロール54Bとは、積層連続シートS2の幅方向におけるティシュペーパー製品の幅L1の幅方向中央に該当する部分に対して、左右端部に2つ配置され、当該位置にコンタクトエンボスが付与されるようになっている。
このようにコンタクトエンボスCEを付与することによって、複数の一次連続シート(S11、S12)を積層して成る積層連続シートS2の層間剥離が防止される。
【0060】
なお、本形態ではコンタクトエンボスロール54Aにおける表面の細かい凸部の形状は特に限定されず、点状、正方形、長方形、円形、楕円形等の形状のものとすることができる。また、凸部の配列も特に限定されず、例えば、縦横等間隔、千鳥状とすることができる。また、凸部を1列に配置してコンタクトエンボスを連続して付与する他に、凸部を2列以上の複数列配置することも考えられる。そして、コンタクトエンボスを緊密に複数列付与するように凸部が配置された群を複数並べて、複数のコンタクトエンボス群を付与するようにしても良い。
【0061】
ここで、本発明にかかるプライマシンX2におけるコンタクトエンボス付与手段54においては、特に図4に示されるように、コンタクトエンボス受けロール54Bに対してドクターブレード91の刃先が所定角で対向するようにして設置されており、コンタクトエンボス受けロール54Bに付着した紙粉を掻き取るようにして除去するようになっている。
【0062】
ドクターブレード91とコンタクトエンボス受けロール54Bとの接する位置Tは、コンタクトエンボス受けロール54Bの回転軸Cより上方かつ、コンタクトエンボス受けロール54Bの回転軸Cよりも積層連続シートS2の流れ方向において上流側である。この位置であると、コンタクトエンボス付与時のコンタクトエンボス受けロール54Bの回転にともなって掻き取られる紙粉P1がドクターブレード91上に堆積するようになり紙粉P1が積層連続シートS2に落下しないようにすることができる。より具体的には、上記位置において、さらにドクターブレード91とコンタクトエンボス受けロール54Bとの接する位置Tとコンタクトエンボス受けロール54Bの回転軸Cとコンタクトエンボス受けロール54Bの回転軸Cから上方に向かう垂線Pとの角度aが0〜90度、好ましくは10〜40度、特に好ましくは20〜30度となる関係となる位置であるのが望ましい。
【0063】
また、本形態のドクターブレード91については、炭素繊維をエポキシ樹脂等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の母材により硬化して形成されたカーボン製のドクターブレード91とされている。炭素繊維としては、PAN、PITCH等を用いることができる。カーボン製のドクターブレード91を用いることで、上記プライマシンX2の運転速度とした際に、コンタクトエンボス受けロール54Bとドクターブレード91との摩擦熱によって、ドクターブレード91を構成する熱可塑性樹脂に若干溶融してコンタクトエンボス受けロール54Bの表面をコーティングするように作用し、コンタクトエンボス受けロール54Bの平滑性を向上させる効果等を奏する。
【0064】
他方、本形態では、ドクターブレード91の基端側の支持部がエアシリンダー(図示しない)に接続されており、エアシリンダーによって、ドクターブレード91のコンタクトエンボス受けロール54Bに対するニップ圧が調整されるように構成されている。ドクターブレード91のコンタクトエンボス受けロール54Bに対するニップ圧を50〜300g/cm、より好ましくは90〜110g/cmである。この範囲とすると、紙粉の除去が好適に行える。
【0065】
また、本形態では、ドクターブレード91の刃先部分に対して圧空を噴射するスプレー(図示しない)が設けられており、ドクターブレード91とコンタクトエンボス受けロール54Bとの摩擦によって過度にドクターブレード91が加熱された際に冷却することができるように構成されている。圧空の噴射の制御は、例えば図示はしないがドクターブレード91に熱センサーを設け、この熱センサーによりドクターブレード91の温度が閾値を超えた際に噴射するなどの適宜の制御するようにした既知の制御手段により行なうことができる。
この場合の冷却用のエアの噴射圧は、0.05〜0.3MPa、好ましくは0.5〜0.15MPaである。
【0066】
他方、本形態におけるドクターブレード91の位置では、ドクターブレード91により掻き取られた紙粉P1がドクターブレード91上に堆積するため、この紙粉を連続的又は簡潔的に除去する除去手段(図示しない)が設けられている。この除去手段は、例えば、ドクターブレード91の上方に臨むように配された吸引ノズル等により構成される。この吸引ノズルにより紙粉を吸引して除去する。このようにすれば、コンタクトエンボスロール54A及びコンタクトエンボス受けロール54Bの回転を止めることなく連続的又は簡潔的に紙粉を除去することができる。
【0067】
他方、本形態では、コンタクト受けエンボスロール54Bのドクターブレード91と接する位置Tよりも、コンタクトエンボス受けロール54Bの回転方向前方側にフェルトドクター92が設置されており、ドクターブレード91による紙粉の掻き取り前に予備的な紙粉清掃が行なわれるようになっている。フェルトドクター92は、柔軟性の繊維素材であるフェルトがコンタクトエンボス受けロール54Bに接するように構成されたものでありコンタクトエンボス受けロール54Bの回転に伴ってフェルトドクター92がコンタクトエンボス受けロール54Bの表面を拭き取る。
【0068】
ここで、フェルトドクター92には、オンジナオイル等の清掃用石油類を含浸させるようにするとコンタクトエンボス受けロール54Bの冷却効果と付着紙粉へのオイル浸潤による飛散防止効果が得られ、ドクターブレード91による掻き取り効果が向上する。
【0069】
他方、本形態では、好ましくコンタクトエンボスロール54Aにもドクターブレード93が設けられており、コンタクトエンボスロール54Aに付着した紙粉P2の除去をも行なうように構成されている。コンタクトエンボスロール54Aに用いるドクターブレード92は、ナイロン製等適当な可撓性を有する既知のものが用いられる。
【0070】
(スリット工程及び巻き取り工程)
他方、本形態にかかるプライマシンX2は、コンタクトエンボス付与手段54の後段にスリット手段55を有し、コンタクトエンボスが付与された積層連続シートS2がスリット手段55に供給される。
スリット手段55は、積層連続シートS2の幅方向に間隔を開けて並設された複数のロールカッター及び受け部からなり、かかるスリット手段55において積層連続シートS2は、後段設備のインターフォルダに適した所定の幅にスリットされる。すなわち、マルチスタンド式インターフォルダで折り畳むのであれば、ティシュペーパーの幅又はその複数倍幅となるようにスリットされる。また、ロータリー式インターフォルダであれば、ロータリー式インターフォルダの幅に応じた幅にスリットする。
【0071】
そして、スリットされた積層連続シートS2は、巻き取り手段56に案内されて巻き取られ二次原反ロールRとされる。この際、スリットされた各積層連続シートは、同軸で巻取られ、二次原反ロールRが形成される。ここで、巻取り手段56は、積層連続シートを二次原反ロールRに案内するための2つのワインディングドラム56Aを有していて、これら2つのワインディングドラム56Aが二次原反ロールRの外周面に接して積層連続シートS2を案内している。
かくして本発明にかかる二次原反ロールRが形成される。
【0072】
(カレンダー工程)
なお、プライマシンX2においては、重ね合わせ部51から巻き取り部56までの間にカレンダー部52を一つ以上設けて積層連続シートS2に対してカレンダー加工をすることができる。図示の本形態では、好ましく、重ね合わせ部51の後段に設けられ連続シートS11、S12が積層された状態でカレンダー処理を行なえるようにしている。
【0073】
カレンダー部52におけるカレンダーの種別は、特に限定されないが、表面の平滑性向上と紙厚の調整の理由からソフトカレンダー又はチルドカレンダーとすることが好ましい。ソフトカレンダーとは、ウレタンゴム等の弾性材を被覆したロールを用いたカレンダーであり、チルドカレンダーとは金属ロールからなるカレンダーのことである。
【0074】
カレンダー部の数は、適宜変更することができる。複数設置すれば加工速度が速くとも十分に平滑化できるという利点を有する一方、一つであるとスペースが狭くとも設置可能であるという利点を有する。
【0075】
二つ以上のカレンダー部を設置する場合、水平方向、上下方向、或いは斜め方向に並設することができ、また、これらの設置方向を組み合わせて配置することができる。水平方向に並設すると、抱き角度を小さくなるため加工速度が高速とすることができ、上下方向に並設すると設置スペースを小さくすることができる。なお、ここで言う抱き角度とはロールの軸中心から見てシートが接している間(軸と直行する断面の円弧の一部)の角度を意味する(以下同じ)。
【0076】
カレンダー加工におけるカレンダー種別、ニップ線圧、ニップ数なども制御要因として抄紙を行うようにし、これらの制御要因は、求めるティシュペーパーの品質すなわち紙厚や表面性によって適宜変更することが好ましい。
【0077】
カレンダー加工を行なうことでティシュペーパーの表面が平滑になりそれのみで滑らかさが向上する。また、特に本発明では、サイズ剤が紙面表面(表層部)に均一に付与されることになり、より一層の滑らかさの向上が図られる。
【0078】
(ローション薬液付与工程)
また、プライマシンX2は、保湿系のローションティシューの生産が行えるようにローション薬液手段53を設けることができる。なお、本発明においては薬液付与手段は必須ではない。但し、本発明においてはコンタクトエンボス受けロールの紙粉除去性能が高められている。ローション薬液を付与したティシューなどは紙粉が発生しやすいため本発明にかかるコンタクトエンボス受けロールにおける紙粉除去は、かかるローション薬液を付与したティシュペーパーの製造には特に適する。
【0079】
図示の本形態では、重ね合わせ部51の後段であってコンタクトエンボス付与手段54の前段にローション薬液付与手段が設けられている。ローション薬液付与手段53は、複数の付与装置で構成することができ、図示の形態では、二機のドクターチャンバー式フレキソ印刷機53A,53Bが連設されて配置され、積層連続シートの表裏面にローション薬液を付与するように構成されている。
【0080】
ここで、複数の付与装置を設置する場合、各装置は、水平方向、上下方向、或いは斜め方向に並設しても良く、水平方向を含めたこれらの設置方向を組み合わせて配置しても良い。水平方向に並設すると抱き角度を小さくすることができるため、加工速度を高速とすることができ、上下方向に並設すると水平方向における設置スペースを小さくすることができる。
【0081】
なお、プライマシンX2にて積層連続シートS11に対するローション薬液の付与は、フレキソ印刷、グラビア印刷、スプレー塗工、インクジェット印刷、カーテンコーターを採用することができる。
【0082】
但し、プライマシンX2の高速性に対応でき、しかも刷版の柔軟性、高速対応性、薬液の飛散防止、付与量の調整が容易である等の要件からフレキソ印刷が適する。紙面に刷版ロール等を接触させないことから紙厚の低下を招かないという点では、刷版ロール等を用いず直接的に薬液を紙面に塗工する非接触形の塗工形態であるスプレー塗工、インクジェット印刷、カーテン塗工が望ましい。但し、これらの非接触式の塗工は薬液の均一付与、塗工量の調整がフレキソ印刷等のロール転写式の付与手段と比較して高速性の点では劣る。従って、本発明においては、ロール転写方式のほうが望ましく、総合的にはフレキソ印刷が最も望ましい。
【0083】
他方、ローション薬液としては、後述するカーボン製のドクターブレードとの相性の点、安価である点等から水系のローション薬液が望ましく、その成分は、水及びポリオールを含むものである。特にポリオールを70〜90%、水分を1〜15%を含むのが望ましく、さらに機能性薬品を0.01〜22%含むものであるのがより望ましい。
【0084】
前記ポリオールとしては、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびその誘導体等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類が挙げられる。
【0085】
上記成分のうち、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールを主成分とすることが、滑らかさ、保湿性等の官能高価、及び薬液の粘度、付与量を安定させる上で好ましい。
【0086】
前記機能性薬剤としては、柔軟剤、界面活性剤、無機および有機の微粒子粉体、油性成分などがある。柔軟剤、界面活性剤はティシューに柔軟性を与えたり表面を滑らかにする効果があり、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤を適用する。無機および有機の微粒子粉体は表面を滑らかな肌触りとする。油性成分は滑性を高める働きがあり、流動パラフィン、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールを用いることができる。
【0087】
また機能性薬剤としてポリオールの保湿性を助けたり、維持させる薬剤として親水性高分子ゲル化剤、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、ヒアルロン酸若しくはその塩、セラミド等の1種以上を任意の組合せ等の保湿剤を加えることができる。
【0088】
また機能性薬剤として各種天然エキス等のエモリエント剤、ビタミン類、配合成分を安定させる乳化剤、薬液の発泡を抑え付与を安定させるための消泡剤、防黴剤、有機酸などの消臭剤を適宜配合することができる。さらには、ビタミンC、ビタミンEの抗酸化剤を含有させてもよい。
【0089】
また、水系のローション薬液はシートに塗工した場合にシートを構成するパルプ繊維との親和性に優れ、シートの厚み方向(Z方向とも称される)に含浸し、シート全体及びその表面性を改質するように作用する。
水系のローション薬液を十分な量、用いつつも安定的かつ高速に生産することができ、保湿性(しっとり感)、柔軟性(柔らかさ感)、表面の滑らかさ性(滑らかさ感)の向上と生産性の向上が図られる。
【0090】
他方、ローション薬液の付与量は、1.5〜5.0g/m2、好ましくは2.0〜4.5g/m2、より好ましくは2.4〜3.0g/m2とする。5.0g/m2超過であると、紙力低下や伸びなどにより断紙したり、品質的にべたつき感が過ぎる場合も出てくるとともに、後述のインターフォルダでの加工が困難となる。1.5g/m2未満であると滑らかさやしっとり感など未塗工品との品質差を感じられなくなってしまう。より好ましく、2.4〜3.0g/m2とすると厚み感、しっとり感といった官能評価において極めて優れたものとなる。
【0091】
他方、薬液付与装置53Bで付与する際のローション薬液の温度は30℃〜60℃、好ましくは35℃〜55℃とすることが好ましい。
また、薬液付与装置53Bで付与する際のローション薬液は、粘度が40℃で1〜700mPa・sが望ましい。より好ましくは50〜400mPa・s(40℃)である。1mPa・sより小さいと特に、薬液が飛散しやすくなり、逆に700mPa・sより大きいと安定した付与量とするコントロールがしにくくなる。
【0092】
〔インターフォルダにおける工程及び収納工程〕
上述のプライマシンX2で製造された二次原反ロールRは、既知のマルチスタンド式インターフォルダやロータリー式インターフォルダにセットされ、セットされた二次原反ロールRから二次連続シートを繰り出して折り畳むと共に積層することによって、所謂ポップアップ式に折り畳まれた長尺のティシュペーパー束を製造する。
【0093】
そして、その後に図5(a)に示すように、インターフォルダで得られた長尺のティシュペーパー束30は、切断手段において所定の間隔で裁断(切断)されてティシュペーパー束30aとされ、このティシュペーパー束30aは、更に後段設備において収納箱Bに収納される。かくして、図5(b)に示すようなティシュペーパー製品が製造される。
【0094】
なお、収納箱Bの上面にはミシン目Mが設けられており、このミシン目Mで収納箱B上面の一部を破断することにより収納箱Bの上面が開口するようになっている。この開口は中央にスリットを有するフィルムFによって覆われており、このフィルムFに設けられたスリットを介して一枚を取り出すと次の一枚の一部が露出されるポップアップ式にティシュペーパーTを取出すことができるようになっている。
【符号の説明】
【0095】
51・・・重ね合わせ部(積層手段)(積層工程)
52・・・カレンダー手段(平滑化工程)
53・・・ローション薬液付与手段(ローション薬液付与工程)
54・・・コンタクトエンボス手段(コンタクトエンボス工程)
55・・・スリット手段(スリット工程)
56・・・巻き取り手段(巻き取り工程)
S11、S12・・・連続シート
S2・・・積層連続シート
JR・・・一次原反ロール
R・・・二次原反ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティシュペーパー製品の製造方法であって、
抄紙設備により抄造され巻き取られた一次原反ロールから、インターフォルダに供するためのティシュペーパー製品用の二次原反ロールを、連続的に製造するプライマシンにおいて、
複数の一次原反ロールから繰り出された複数の連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとした後、その積層連続シートを積層連続シートの下方側に配置したコンタクトエンボスロールと積層連続シートの上方側に配置したコンタクトエンボス受けロールとの間を通してコンタクトエンボスを付与して積層一体化するにあたり、
前記コンタクトエンボス受けロールに対してドクターブレードを設置して、コンタクトエンボス受けロールに付着した紙粉を掻き取るようにして除去しつつコンタクトエンボスを付与することとした、
ことを特徴とするティシュペーパー製品の製造方法。
【請求項2】
ドクターブレードとコンタクトエンボス受けロールとの接する位置を、コンタクトエンボス受けロールの回転軸より上方かつ、コンタクトエンボス受けロールの回転軸よりも積層連続シートの流れ方向において上流側とした請求項1記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項3】
前記ドクターブレードを、カーボン製のドクターブレードとした請求項1又は2記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項4】
ドクターブレードのコンタクトエンボス受けロールに対するニップ圧をエアシリンダーにより調節する請求項1〜3の何れか1項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項5】
ドクターブレードのコンタクトエンボス受けロールに対するニップ圧を50〜300g/cmとする請求項1〜4の何れか1項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項6】
ドクターブレードに対してエアを噴射してドクターブレードを冷却する請求項1〜5の何れか1項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項7】
ドクターブレード上に堆積する紙粉をコンタクトエンボスロール及びコンタクトエンボス受けロールの回転を止めることなく連続的又は簡潔的に除去する請求項1〜6の何れか1項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項8】
コンタクトエンボス受けロールのドクターブレードと接する位置よりも、コンタクトエンボス受けロールの回転方向前方側にフェルトドクターを設置して、ドクターブレードによる紙粉の掻き取り前に予備的な紙粉清掃を行なう請求項1〜7の何れか1項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載のティシュペーパーの製造方法により製造されたことを特徴とするティシュペーパー製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−213910(P2012−213910A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80582(P2011−80582)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】