説明

ティシュペーパー製品

【課題】 柔らかく、手触り感の良好なティシュぺーパー製品を確実かつ安定して提供する。
【解決手段】 複数枚のティシュペーパーを2枚1組として所謂ポップアップ方式で折り畳んだものを略直方体の収納箱に収納したティシュペーパー製品において、前記ティシュペーパーをJIS P 8220の方法に準じて離解して得られた繊維のTAPPI T234hm−84の方法に準じて測定した繊維粗度が、6〜16mg/100mであることを特徴とするティシュペーパー製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシュペーパーに関する。さらに詳しくは、本発明は、柔らかく肌触りが良い、ティシュペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパーは、柔らかく、手触り感が良く、強度も強く、伸縮性もあり、しかも吸収性に優れていることが望まれている。従来、ティシュペーパー用のパルプとしては、広葉樹、針葉樹から木材チップ、即ちリグノセルロース材料を蒸解して得られた化学パルプから製造されたスラリー状態のままのスラッシュパルプと、このスラッシュパルプを脱水、乾燥させて得られるドライパルプが使用されている。
【0003】
ティシュペーパーの強度、特に引張り強度を保つため、平均繊維長が長く引張り強度が高い針葉樹パルプを使用するが、針葉樹パルプは剛直なため単独で使用すると柔らかさと手触り感は低下する。一方、広葉樹パルプは細くしなやかで柔らかさと手触り感は良いが、平均繊維長が短かく引張り強度が低いためティシュペーパー用のパルプとしては単独で用いられることは少ない。従って、引張り強度を維持しながら柔らかさと手触り感も悪化させないために、針葉樹パルプと広葉樹パルプとを併用する方法が一般的である。
【0004】
ティシュペーパーの重要な品質である柔らかさや手触り感の向上を図る技術に関しては従来より研究がなされており、例えば抄紙し積層するパルプの種類やその使用比率を調節してティシュペーパーを製造する方法(特許文献1)、長網、短網、ツインワイヤー、円網ヤンキーマシン等の抄紙機を適宜選択することにより製造する方法(特許文献2)、あるいは、原料のセルロースパルプとして繊維粗度が3〜8mg/100mの範囲にあり、繊維長0.2mm以下の微細繊維含有量が0.5〜4.0重量%の範囲にある広葉樹パルプを絶乾重量で30〜70重量%含有させて柔らかさを付与する方法(特許文献3)、等が開示されている。しかしながら、これらの方法では、針葉樹パルプの配合比率、種類あるいは叩解条件等により、製品の柔らかさや手触り感が必ずしも期待通りに発現されないという問題点を有している。
【0005】
また、原料パルプに紙用柔軟剤を添加してパルプ自体の滑りを良くすることにより、得られるティシュペーパーの手触り感を良くし、柔らかさを付与する方法も知られており、例えば、脂肪酸エステル系柔軟化剤(特許文献2)、第4級アンモニウム塩型カチオン活性剤(特許文献4)、ウレタンアルコール若しくはその塩、又はカチオン化物(特許文献5)、非陽イオン系界面活性剤(特許文献6)、ポリリン酸塩(特許文献7)、ポリシロキサン(特許文献8)等が開示されている。しかしながら、これらの方法は、良好な柔軟効果が得られる場合があるが、起泡性が大きいために、抄紙作業そのものに支障を来すおそれがあり、場合によっては紙力と吸水性の低下を招くという問題点を有している。
【0006】
また、ティシュペーパーの湿潤強度を向上するために、紙用湿潤紙力増強剤として尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアマイド、ポリアミン、エピクロロヒドリン樹脂等を用いる方法が知られているが、ティシュペーパーの場合、ホルムアルデヒド樹脂が嫌われるため、ポリアマイド、ポリアミン、エピクロロヒドリン樹脂が主として用いられている。しかしながら、エポキシ樹脂の結合は非常に堅固であり、水に不溶性であるばかりでなく、ティシュペーパー自体が剛直になり、柔らかさと手触り感が低下するという問題点を有している。
【0007】
また、ティシュペーパーの平滑性を向上させるため、ティシュ抄紙機の後に、上下各1本の一対の十分に研磨されたチルドロールと金属ロールからなる1組又は2組のカレンダーによりティシュペーパーの表面処理が行われている。しかしながら、カレンダー処理は、平滑性を向上させるために線圧を高くすると、ティシュペーパーは厚みが薄くなると共に剛直となり、手触り感も悪くなるという問題点を有している。
【特許文献1】特開昭54−46914号公報
【特許文献2】米国特許第3,296,065号明細書
【特許文献3】特許第2800595号公報
【特許文献4】特開昭48−22701号公報
【特許文献5】特開昭60−139897号公報
【特許文献6】特開平2−99690号公報
【特許文献7】特開平2−36288号公報
【特許文献8】特開平2−224626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来のティシュペーパーの有する問題点を克服し、柔らかく、手触り感が良いティシュペーパーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、柔らかくて手触り感の良いティシュペーパーを安定的に得るための要因を多角的に検討した結果、製品ティシュペーパーを特定条件で離解した場合に得られる繊維の繊維粗度が特定の範囲になるような条件でティシュペーパーを製造することにより、上記問題点を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、複数枚のティシュペーパーを2枚1組として所謂ポップアップ方式で折り畳んだものを略直方体の収納箱に収納したティシュペーパー製品において、前記ティシュペーパーをJIS P 8220の方法に準じて離解して得られた繊維のTAPPI T234hm−84の方法に準じて測定した繊維粗度が、6〜16mg/100mであることを特徴とするティシュペーパー製品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のティシュペーパー製品は、これを所定条件で離解して得られる繊維の繊維粗度が6〜16mg/100mであることを特徴とする。製品を構成する繊維の繊維粗度がこの範囲になるように抄造することにより、柔らかくて手触り感が良く、さらに、強度の強いティシュペーパー製品を確実かつ安定して得ることができる。
【0011】
すなわち、繊維粗度は、単位長さ当りの繊維の重量を示しており、繊維の断面積との相関が大きく、その値が小さいほど細くしなやかな繊維であることを示している。また、ティシュパーパーを構成する繊維の繊維粗度に影響する要因の一つに原料パルプ繊維の繊維間結合力があり、繊維間結合力が大きいと、製品を構成する繊維は離解され難くなって繊維粗度は大きくなり、得られる製品の強度は強くなるが、柔らかさが劣るようになる。一方、繊維間結合力が小さいと、製品を構成する繊維は離解され易くなって繊維粗度は小さくなり、得られる製品は柔らかくなるが、強度が劣るようになる。
【0012】
本発明において、上記の繊維粗度を有するティシュペーパー製品は、原料パルプの配合比率、叩解条件、抄紙条件等を調節することにより製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、ティシュペーパー製品は、これをJIS P 8220の方法に準じて離解し、得られる繊維をTAPPI T234hm−84の方法に準じて測定した繊維粗度が、6〜16mg/100mであることが好ましい。繊維粗度が6mg/100m未満になると、ティシュペーパーの強度が低下し、また、製造時に微細繊維の除去が必要となり、そのため高性能のスクリーン設備の設置と設備の運転により製造コストの上昇を招く。また、繊維粗度が16mg/100mを越えて大きくなると、ティシュペーパーは剛直となり、柔らかさと手触り感が劣るようになる。
【0014】
本発明において、ティシュペーパー製品は、木材等のリグノセルロース材料から得られるセルロースパルプを主体として用いて製造される。セルロースパルプは、公知の蒸解法で蒸解した未漂白のスラッシュパルプ及びそのパルプを絶乾パルプ重量当りの水分含有量が3〜25%の範囲に乾燥したドライパルプを水に再溶解したパルプ、または、該未漂白パルプをハンター白色度80〜90%まで漂白したスラッシュパルプ及びそのパルプを絶乾パルプ重量当りの水分含有量が3〜25%の範囲に乾燥したドライパルプを水に再溶解したパルプ等が使用できるが、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)が好適に用いられる。
【0015】
本発明で使用される広葉樹パルプの繊維粗度は、3〜10mg/100mの範囲内であることが好ましい。また、針葉樹パルプの繊維粗度は、8〜15mg/100mの範囲内にあることが好ましい。
広葉樹パルプの使用比率は、絶乾で30〜70質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは35〜50質量%の範囲内である。広葉樹パルプの比率が70質量%を超えると、ティシュペーパーの強度、特に引張り強度が低下する。また、広葉樹パルプが30質量%未満では、ティシュペーパーが剛直となり、所望の効果が得られなくなる。
【0016】
本発明において、使用されるセルロースパルプは、フリーネス(CSF)400〜600mlとなるように叩解することが好ましい。
【0017】
本発明において、ティシュペーパーを製造するための抄紙機としては、円網フォーマー、サクションブレストフォーマー(円網タイプ、長網タイプ)、ツインワイヤーフォーマー(Cラップフォーマー、Sラップフォーマー)、クレセントフォマー等のヤンキーマシンが挙げられる。ヤンキードライヤー上でウェットクレープ又はドライクレープをつけるか、若しくはウェットクレープをつけ、更にドライクレープをつけることによってティシュペーパーの原紙が得られる。
【0018】
本発明において、抄紙方法としては、従来型の全パルプを混合して均一な1つの層として抄紙する方法、及び、2層以上のもを重ね合わせて1枚とするいわゆる積層抄紙方法のいずれも適用することができるが、積層抄紙方法を適用することが好ましい。すなわち、ティシュペーパーを2層とし、その1層が繊維粗度の低い広葉樹パルプを含み、該パルプを含む層をヤンキードライヤーの鏡面に接して乾燥させ、次いで該ヤンキードライヤーの鏡面に接した広葉樹パルプを含む層が外側、即ち使用者が手に触れる面、になるように2枚のティシュペーパーを重ね合わせると、手触り感が一層向上する。
【0019】
本発明において、ティシュペーパーを製造するためのカレンダー処理は、オンマシンカレンダー処理及び/またはプライマシンカレンダー処理によるソフトカレンダー処理が行われる。ソフトカレンダー処理は、2枚重ねのティシュペーパーを、通常上下1対の金属ロールあるいは金属ロールと弾性ロールの対からなるカレンダーにより行われる。
【0020】
ソフトカレンダー装置における金属ロールとしては、例えばチルドロール、合金チルドロール、鋼鉄チルドロール、更にはロール表面を硬質クロムメッキした金属ロール等が使用される。
【0021】
または、弾性ロールとしては、天然ゴム、スチレンゴム、二トリルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化エチレンゴム、ブチルゴム、多硫化ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の各種樹脂、コットン、ぺーパー、ウール、ナイロン等からなる弾性ロールが使用される。
【0022】
弾性ロールは、シェアー硬度(ASTM規格、D−2240)で80〜95度、好ましくは85〜92度を有する弾性ロールが用いられる。このような弾性ロールとしては、ウレタンゴム及び芳香族アミド樹脂を用いた弾性ロールが取扱いが容易で、寿命が長いことから好ましい。
【0023】
本発明においてソフトカレンダー処理は、スイミングロールを使用して4〜10kg/cmの線圧を加えて行うことが好ましい。スイミングロールを用いることにより、固定ロールを用いた場合に比較して、カレンダー処理後のウェブ幅方向のテンションが均一なものにすることができる。
【0024】
カレンダー処理は、オンマシンカレンダーで1スタック処理した後、プライマシンで2枚重ねとして、さらに1〜2スタック処理することが好ましい。また、カレンダー処理後の重ね合わせたウェブの密度は、0.26〜0.34g/cm3とすることが好ましい。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何等制限されるものではない。なお、実施例及び比較例中の%は、特にことわらない限り質量%を示す。また、実施例及び比較例において行った評価と評価法は次の通りである。
【0026】
繊維粗度:
TAPPI T234hm−84の方法に準じて行った。すなわち、ティシュペーパー製品をJIS P 8220の方法により離解し、得られた試料の一定量を採取してカヤーニFS−200自動繊維長分布測定機(バルメット オートメーション社製)により繊維本数及び数平均繊維長を測定し、繊維本数に数平均繊維長を乗じた値で別途に測定したパルプの絶乾重量を除し、繊維粗度(mg/100m)を求めた。
【0027】
ソフトネス:
J.TAPPI 紙パルプ試験法No.34−80、衛生用薄葉紙の柔らかさ試験法により測定した。すなわち、ティシュペーパーのシート(200×200mm)を一定の隙間(6.35mm)に押し入れるのに必要な仕事量をHandle−O−Meter(熊谷理機工業社製)により測定し、mN/10cmで表示した。
【0028】
手触り感:
男子5人、女子5人で官能評価し、次の区分で表示した。
◎:非常に良い 〇:良い △:普通 ×:悪い
【0029】
実施例1
原料パルプとしては、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)として市販のドライパルプ(セニブラ社製)70%と自製のスラッシュパルプ30%を配合したものを使用し、また、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)として市販のドライパルプ(HSPP社製、品名:HS−300)70%と自製のスラッシュパルプ30%を配合したものを用い、フリーネス560ml(CSF)に叩解したものを使用した。
なお、自製LBKPは、アルカリ酸素脱リグニン処理後に硫酸を用いて酸処理(pH3、温度100℃、保持時間120分)を行い、D−E/O−Dの漂白工程で漂白した、白色度84.2%のパルプを使用し、また、自製NBKPは、アルカリ酸素脱リグニン処理後D−E/O−P−Dの漂白工程で漂白した、白色度84.2%のパルプを使用した。
各々の原料パルプに湿潤紙力増強剤(ディックハーキュレス社製、商品名:カイメンK−1300)を絶乾パルプ重量当り0.10%添加し、さらに、カチオン化デンプン(王子コンスターチ社製、商品名:ケートF)を絶乾パルプ重量当り0.15%添加し、ツインワイヤータイプの2層抄き合わせ式のヤンキー抄紙機で抄紙してLBKPの層とNBKPの層を積層し、LBKPの層がヤンキードライヤーの鏡面に接するようにして乾燥し、坪量11.5g/m2 のティシュペーパーペーパーウェブを抄造した。また、ドライヤーと巻き取りリールとの速度差を設けることによりドライクレープを付与した。
次いで、得られたティシュペーパーウェブを、ヤンキードライヤーの鏡面に接したLBKPの層が外側になるように2枚重ね合わせ、ソフトカレンダー処理を2回施してティシュペーパーとした。
この2枚重ねのティシュペーパーを、縦197mm×横229mmに断裁し、200組をポップアップ方式で折り畳み、略直方体の収納箱に収納し、ティシュペーパー製品を製造した。
得られたテッシュペーパー製品の繊維粗度は14mg/100mであった。
【0030】
実施例2
原料パルプとして市販のドライパルプのみを使用した以外は、実施例1と同様にしてティシュペーパー製品を製造した。
得られたティシュペーパー製品の繊維粗度は、11mg/100mであった。
【0031】
比較例1
原料パルプとしてNBKPのみを使用した以外は、実施例1と同様にしてティシュペーパー製品を製造した。
得られたティシュペーパー製品の繊維粗度は、18mg/100mであった。
【0032】
各実施例及び比較例で得られたティシュペーパー製品について評価した結果を表1に示す。表1から明らかなように、製品を構成する繊維の繊維粗度が適正な範囲にある実施例1及び実施例2の本発明のティシュペーパー製品は、柔らかく、手触り感も良好であるのに対して、比較例1のティシュペーパーは、手触り感が劣るものであり、本発明の効果が確認された。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のティシュペーパー製品は、これを所定条件で離解して得られる繊維の繊維粗度が6〜16mg/100mの範囲にあるものであり、製品を構成する繊維の繊維粗度がこの範囲になるように抄造することにより、柔らかくて手触り感が良く、さらに、強度の強いティシュペーパー製品を確実かつ安定して得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のティシュペーパーを2枚1組として所謂ポップアップ方式で折り畳んだものを略直方体の収納箱に収納したティシュペーパー製品において、
前記ティシュペーパーをJIS P 8220の方法に準じて離解して得られた繊維のTAPPI T234hm−84の方法に準じて測定した繊維粗度が、6〜16mg/100mであることを特徴とするティシュペーパー製品。



【公開番号】特開2006−132051(P2006−132051A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324722(P2004−324722)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】