説明

ティーチング装置およびティーチング方法

【課題】周辺機器との干渉を抑えるために記録される位置データの容量を抑えつつ、作業者に位置データの記録操作を意識させずにティーチングを行うことができるティーチング装置を得ること。
【解決手段】ティーチング装置50は、ロボットに対して動作経路のティーチングを行うティーチング装置であって、ロボットを移動させる際に操作される入力部に対する操作内容を受信する受信部と、ロボットの位置を検出する位置検出部と、入力部に対する操作内容が切替えられたときのロボットの位置データを位置検出部に送信させる制御部と、位置検出部から送信された位置データを記録する記憶部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットを自動運転させるためにロボットの動作経路をティーチングするティーチング装置およびティーチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットに自動運転を行わせるために、ロボットに動作経路のティーチングを行う場合がある。従来の動作経路のティーチング方式においては、ロボットの位置データを連続的に記録するために、一定時間ごとのサンプリングや、ロボットの移動や動作角度の変化に伴って一定以上の座標変化があるごとのサンプリングが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
溶接、シーリング、塗装作業など、ロボットで行わせるための動作軌跡が重要となる作業で上述したようなティーチングを行う場合には、ロボットのアームを直接作業者が動かして、その時のロボットの動作軌跡を記録するために、一定時間ごとや、一定以上の座標変化によって、ロボットの位置データのサンプリングを行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2511072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の方式においては、ロボットの軌跡追従動作を精度良く再現させるために、位置データを数mmsec単位の時間ごとや数μmm単位の座標変化ごとにサンプリングする必要がある。このため、大容量の位置データを記録しておく必要があり、さらにリアルタイムに位置データを記録していく必要がある。そのため、この方式においては高度な制御系を要する。
【0006】
一方、ロボットを使用する用途として、コンパクトなセルシステム内でロボットを動かそうとするときには、ロボットと周辺機器が密接な位置に設置される場合があり、特にロボットのアームやハンドが周辺機器と干渉しやすくなる。そこで、ロボットのアームやハンドと周辺機器との干渉を回避させるような用途で動作経路を記録させたい場合、干渉を回避できる位置ごとでデータを記録する程度のデータ量で十分である。例えば、周辺機器のコーナー部分などの数ポイント程度で位置データを記録すればよい。しかしながら、上述したように、数mmsec単位の時間ごとや数μmm単位の座標変化ごとにサンプリングする場合には、干渉の回避のために必要なデータ以外のデータ量が膨大となり、プログラムや制御等が複雑となる欠点があった。
【0007】
一方、サンプリングする位置データを減らすために、サンプリング時間や座標変化量を大きく設定すると、干渉を回避したい位置でデータが記録されない可能性が高くなる。したがって、単純にサンプリング時間や座標変化量を大きくしてデータ量を減らした場合には、ロボットと周辺機器との干渉が生じやすくなる。
【0008】
また、コンパクトなセルシステム内においては、システム内に作業者の手が入るスペースが無く、作業者がアームを直接動作させてティーチングすることが困難な場合もある。作業者がアームを直接動作させることが困難である場合には、ティーチングペンダントなどの外部操作によってティーチングを行う場合がある。
【0009】
ティーチングペンダントを用いたティーチング作業では、外部操作によってロボットを操作しつつ、適当な位置でロボットの位置データを記録する操作を作業者が行う必要がある。しかしながら、周辺機器との干渉を回避するようにロボットを操作することに作業者が集中することで、ロボットの位置データを記録する操作を作業者が忘れてしまう場合がある。
【0010】
ロボットの位置データを記録するためには、例えば、記録させる位置変数を作成または選択して、記録スイッチを押すなどの操作、すなわちロボットを移動させるための操作とは別途の操作が必要となる。ロボットと周辺機器とが干渉しないように操作することも熟練を要する作業であるため、それとは別途に行わなければならない位置データを記録するための操作は忘れられがちになるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、周辺機器との干渉を抑えるために記録される位置データの容量を抑えつつ、作業者に位置データの記録操作を意識させずにティーチングを行うことができるティーチング装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ロボットに対して動作経路のティーチングを行うティーチング装置であって、ロボットを移動させる際に操作される入力部に対する操作内容を受信する受信部と、ロボットの位置を検出する位置検出部と、入力部に対する操作内容が切替えられたときのロボットの位置データを位置検出部に送信させる制御部と、位置検出部から送信された位置データを記録する記憶部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、周辺機器との干渉を抑えるために記録される位置データの容量を抑えつつ、作業者に位置データの記録操作を意識させずにティーチングを行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1にかかるティーチング装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示すティーチング装置が適用されたロボットにおけるティーチングを説明するための図である。
【図3】図3は、ティーチングペンの詳細な構成を示す図である。
【図4】図4は、ティーチングによって記憶部に記録された位置データの例を示す図である。
【図5】図5は、ティーチングモードにおいてロボットに動作経路をティーチングする際の手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態にかかるティーチング装置およびティーチング方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかるティーチング装置の概略構成を示すブロック図である。図2は、図1に示すティーチング装置が適用されたロボットにおけるティーチングを説明するための図である。
【0017】
ロボット1は、アーム1aやハンド2を作業エリア内で移動させることで、所望の作業を行う。本実施の形態では、ロボット1として6軸ロボットを例示している。ロボット1の作業エリア内には、図2に示すように、ロボット1以外の周辺機器5が配置されている場合がある。そのため、所望の作業を行う際に、アーム1aやハンド2を周辺機器5に干渉しないように移動させる必要がある。
【0018】
ティーチング装置50は、ロボット1に所望の作業を行わせつつ、干渉を避けた動作経路をティーチングするための装置である。ティーチング装置50は、図1に示すように、ティーチングペンダント(入力部)3、受信部51、制御部52、駆動部53、姿勢検出部(位置検出部)54、記憶部55を備えて構成される。
【0019】
図3は、ティーチングペンダント3の詳細な構成を示す図である。ティーチングペンダント3は、ロボット1をジョグ操作するためのものである。ティーチングペンダント3には、ロボット1の動作方向ごとに制御できるように複数の操作スイッチ16が設けられている。例えば、ロボット1のハンド2をX方向に移動させる操作スイッチ16やY方向に移動させる操作スイッチ16が設けられている。また、操作スイッチ16には、ロボット1の操作モードをティーチングモードに切替えるモード切替スイッチも含まれる。ティーチングモードは、ロボット1に動作経路をティーチングする際に利用するモードである。
【0020】
ティーチングペンダント3は、作業者4によって操作スイッチ16が操作されると、操作内容を示す情報を受信部51に送信する。ティーチングペンダント3は、操作内容を示す情報をワイヤレスで受信部51に送信する。なお、ティーチングペンダント3と受信部51を配線で接続して、有線で情報を送信するように構成してもよい。
【0021】
図1に戻って、受信部51は、ティーチングペンダント3から送信された情報を受信して制御部52に転送する。制御部52は、作業者4による操作スイッチ16の操作に内容に応じて駆動部53を制御する。
【0022】
制御部52は、ティーチングモードにおいて、作業者4によるティーチングペンダント3に対する操作が切り替わったとき、すなわちロボット1を移動させるために新たな操作が操作スイッチ16に対して行われたときに、姿勢検出部54に対してロボット1の位置データを送信するように指示する。
【0023】
例えば、ハンド2をX方向へ移動させるように操作スイッチ16の操作を行っているときに、さらにハンド2をY方向へ移動させる操作スイッチ16の操作を行ったときに、姿勢検出部54に位置データを送信させる。このような操作を行った場合には、X方向に移動させる操作に加えて、新たにY方向に移動させるための操作が操作スイッチに行われており、この新たな操作に基づいて姿勢検出部54への指示がなされる。
【0024】
なお、X方向への移動が指示されている間、ハンド2は直進動作を行い、Y方向への移動指示が加えられることで、ハンド2は斜め移動動作を行う。また、ハンド2の移動を停止させる場合にも、操作スイッチ16への操作がなくなるので、新たな操作が操作スイッチ16に対して行われたとして、制御部52から姿勢検出部54に対して位置データを送信するように指示がなされる。
【0025】
図2では、ティーチングモードにおいて、ハンド2を位置P01から位置P06まで、周辺機器5を避けながら移動させる例を示している。この例では、位置P01〜P06ごとに操作スイッチ16に対する操作が切り替わり、制御部52から姿勢検出部54に対して位置データを送信するように指示がなされる。
【0026】
制御部52は、姿勢検出部54から送信された位置データを記憶部55に記憶させる。図4は、ティーチングによって記憶部55に記録された位置データの例を示す図である。図4に示すように、位置P01〜P06ごとにロボット1の位置を示す位置データが記録される。
【0027】
制御部52は、ティーチングモードを抜けてロボット1に通常の作業を行わせる場合には、記憶部55に記録された位置データを参照して、ハンド2を位置P01〜P06まで移動させるように駆動部53を制御する。
【0028】
駆動部53は、例えばモータであり、ロボット1のアーム1aやハンド2を移動させる。駆動部53は、制御部52に制御されることで、作業者4による操作スイッチ16の操作内容に応じた動きをロボット1に行わせる。
【0029】
姿勢検出部54は、ロボット1の姿勢を検出する。姿勢検出部54は、制御部52からの指示に基づいて、ロボット1の姿勢を示す位置データを制御部52に送信する。
【0030】
図5は、ティーチングモードにおいてロボット1に動作経路をティーチングする際の手順を説明するためのフローチャートである。まず、ティーチングペンダント3を操作してティーチングモードにすることで、動作経路のティーチングが開始される。ティーチングモードが開始された時点でのロボット1の現在位置の位置データが記録される(ステップS1)。具体的には、制御部52から姿勢検出部54に位置データを送信するように指示がなされ、送信された位置データが記憶部55に記録される。
【0031】
次に、作業者4によって操作スイッチ16が操作されることで(ステップS2,Yes)、ジョグ操作が行われる(ステップS3)。次に、操作スイッチ16に対する操作が切り替わると(ステップS4,Yes)、その時点でのロボット1の現在位置の位置データが記録される(ステップS5)。操作スイッチ16に対する操作が切り替わるとは、例えば、作業者4が操作スイッチ16を押すことを止めた場合や、新たに他の操作スイッチ16を押した場合である。
【0032】
そして、ティーチングペンダント3の操作スイッチ16が作業者4によって操作されてティーチングモードから抜けることで(ステップS6,Yes)、動作経路のティーチングが終了する。
【0033】
なお、操作スイッチ16が操作されない場合(ステップS2,No)であっても、ティーチングモードから抜けなければ(ステップS6,No)、動作経路のティーチングは継続される。
【0034】
以上説明したように、ロボット1への動作経路のティーチングにおいて、操作スイッチ16に対する操作が切り替わるときに自動的にロボット1の位置データが記録するので、作業者4による記録忘れを防ぐことができる。また、位置データの記録が自動的に記録されるので、作業者4はロボット1の操作に集中することができるので、誤操作が起きにくくなる。
【0035】
また、操作スイッチ16に対する操作が切り替わる箇所で位置データが記録されるので、記憶部55に記録される位置データの量を抑えることができる。そのため、ロボット1を制御するために大容量で高度な制御系を用いずに済むため、コストの抑制を図ることができる。
【0036】
また、操作スイッチ16に対する操作の切替えは、図2に示すように、ロボット1が周辺機器5に衝突するのを回避するために行われる場合が多い。したがって、操作スイッチ16に対する操作が切り替わる箇所で位置データを記録することで、位置データの容量を抑えつつ、ロボット1と周辺機器5との衝突の発生を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明にかかるティーチング装置は、産業用ロボットに対する動作経路のティーチングに有用であり、特に、ティーチングペンダントを用いたティーチングに適している。
【符号の説明】
【0038】
1 ロボット
1a アーム
2 ハンド
3 ティーチングペンダント(入力部)
4 作業者
5 周辺機器
16 操作スイッチ
50 ティーチング装置
51 受信部
52 制御部
53 駆動部
54 姿勢検出部(位置検出部)
55 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットに対して動作経路のティーチングを行うティーチング装置であって、
前記ロボットを移動させる際に操作される入力部に対する操作内容を受信する受信部と、
前記ロボットの位置を検出する位置検出部と、
前記入力部に対する操作内容が切替えられたときの前記ロボットの位置データを前記位置検出部に送信させる制御部と、
前記位置検出部から送信された位置データを記録する記憶部と、を備えることを特徴とするティーチング装置。
【請求項2】
前記入力部には、前記ロボットを移動させる際に操作される複数の操作スイッチが設けられており、
前記操作スイッチに新たな操作が行われたとき、または前記操作スイッチに対する操作が解除されたときに、前記入力部に対する操作内容が切替えられたと前記制御部が判断することを特徴とする請求項1に記載のティーチング装置。
【請求項3】
ロボットに対して動作経路のティーチングを行うティーチング方法であって、
前記ロボットを移動させる際に操作される入力部に対する操作内容を受信し、
前記入力部に対する操作内容が切替えられたときの前記ロボットの位置データを検出して送信し、
送信された前記位置データを記録することを特徴とするティーチング方法。
【請求項4】
前記入力部には、前記ロボットを移動させる際に操作される複数の操作スイッチが設けられており、
前記操作スイッチに新たな操作が行われたとき、または前記操作スイッチに対する操作が解除されたときに、前記入力部に対する操作内容が切替えられたと判断することを特徴とする請求項3に記載のティーチング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−196736(P2012−196736A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62400(P2011−62400)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】