説明

テイコプラニンの産生のための微生物およびプロセス

【課題】 Actinoplanes teichomyceticus nov. sp.(ATCC−31121)株に比べてより高い生産性を有する変異株。このような変異株を用いて好気条件下でテイコプラニンを調製するための醗酵プロセス。
【解決手段】 韓国微生物保存センターに受託番号KCCM−10601で寄託された変異株Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315を用いる、テイコプラニンの最大産生のための醗酵方法。韓国微生物保存センターに、受託番号KCCM−10601で寄託されている、単離されたActinoplanes teichomyceticus BNG 2315。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テイコプラニン(teicoplanin)を産生する微生物、およびActinoplanes teichomyceticus種に属する単離変異株を用いて好気条件下で、同化可能な炭素源、窒素源および鉱物塩を含む培養培地上でテイコプラニンを調製するための醗酵プロセスに関する。
【0002】
特に、本発明は、単離された変異株Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315(KCCM−10601)に関する。この微生物は、先行技術(特許文献1)に記載された微生物よりも約6倍を超えて高い生産性で、テイコプラニンを産生する。本発明はまた、この変異株を用いて好気条件下でテイコプラニンを調製するための醗酵プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
テイコプラニンは、Actinoplanes teichomyceticusによって産生される抗生物質の1つであり、バンコマイシン−リストセチンファミリーの糖ペプチド抗生物質に分類されている。その機構は、細胞壁生合成を阻害することであり、そしてメチシリン耐性Staphylococcus aureus、コアグラーゼ陰性Staphylococcus、ClostrdiumおよびEnterococcusなどのグラム陽性抗生物質耐性病原体に対して投与されている。
【0004】
多すぎる抗生物質の投与によって生じている種々の種類の抗生物質に対して耐性の微生物(特に、メチシリン耐性微生物)の出現は、重篤な健康問題を引き起こし得る。さらに、メチシリン耐性微生物はまた、他のあらゆる抗生物質(例えば、アミノグリコシド類、テトラサイクリン類、セファロスポリン類、セファマイシン類、ペネム類、カルバペネム類、およびマクロライド類)に対して耐性であり、このことは、重篤な疾患を生じる。
【0005】
メチシリン耐性S.aureusからの保護という世界規模の問題は、バンコマイシンおよびテイコプラニンの使用の増大を生じた。これらの抗生物質は、これらの病原体の有効な処置のための唯一の薬剤である。
【0006】
テイコプラニンは、Actinoplanes teichomyceticus nov. sp.(ATCC−31121)株を炭素源、窒素源および無機塩を含む培養培地中で培養することによって産生される抗生物質である(非特許文献1,特許文献1)。しかし、特許文献1に記載された株は、市販規模では所望されるものではない。なぜなら、これは、50mg/L未満の生産性でテイコプラニンを高コストで産生するからである。
【特許文献1】米国特許第4,239,751号
【非特許文献1】J.Antibiotics,276−283,1978
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
テイコプラニンを産生する上記株に比べてより高い生産性を有する変異株の単離が必要とされている。また、このような変異株を用いて好気条件下でテイコプラニンを調製するための醗酵プロセスの開発が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、Actinoplanaceae科のActinomycetalesのテイコプラニン産生株に対する本研究者らのスクリーニング研究過程において、本発明者らは、大韓民国の雪嶽山(Sorak Mountain、Korea)において収集された土壌サンプルから新規株を単離した。この単離株は、先行技術文献(米国特許第4,239,751号)に記載された株の約20倍の生産性でテイコプラニンを産生する。
【0009】
この株は、反復的な変異誘発処理に供された。ついで、テイコプラニン耐性変異株が単離された。この変異株は、先行技術文献(米国特許第4,239,751号)に記載された株の約60倍の生産性でテイコプラニンを産生する。
【0010】
(発明の要旨)
本発明の目的は、韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganism)に受託番号KCCM−10601で寄託された変異株Actinoplanes teichoplanes BNG2315を用いて、テイコプラニンを最大限産生するための醗酵方法を提供することである。この方法は、以下の工程を包含する: i)グルコース15g/L〜25g/L、デキストリン40g/L〜80g/L、ペプトン4g/L〜6g/L、ナタネ粗引き粉(meal)16g/L〜20g/L、ダイズ粉16g/L〜20g/L、MgSO・7HO 0.4g/L〜0.6g/L、CaCO 4g/L〜6g/L、およびNaCl 1.0g/L〜1.4g/Lを含む産生培地上で、該培地の曝気速度が1分間当たり、1培地容量につき、空気0.5〜2.0容量である条件で変異株細胞を醗酵させる工程;ii)該変異株細胞および他の残渣を、該醗酵培地から取り除く工程;およびiii)工程ii)の該醗酵培地からテイコプラニンを単離および回収する工程。
【0011】
さらに、醗酵のために使用されるこの変異株細胞は、Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315(KCCM−10601)を、グルコース25g/L〜35g/L、酵母抽出物2.0g/L〜3.0g/L、ダイズ粉7.0g/L〜11.0g/L、ナタネ粗引き粉7.0g/L〜11.0g/L、NaCl 1.0g/L〜1.4g/L、CaCl 0.08g/L〜0.12g/L、MgSO・7HO 0.4g/L〜0.6g/LおよびCaCO 4g/L〜6g/Lを含む培地において培養することによって調製される。
【0012】
他方、本発明はまた、韓国微生物保存センターに、受託番号KCCM−10601で寄託されている、単離されたActinoplanes teichomyceticus BNG 2315を提供する。
【0013】
従って、本発明のこれらおよび他の利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読みかつ理解すれば、当業者には明白になることが理解される。
【発明の効果】
【0014】
Actinoplanes teichomyceticus nov. sp.(ATCC−31121)株に比べてより高い生産性を有する変異株が、単離された。また、このような変異株を用いて好気条件下でテイコプラニンを調製するための醗酵プロセスが、開発された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
上記変異株は、Actinoplanes teichomyceticusに属することが、細胞の脂肪酸分析および16s rDNA配列分析などの分類学的調査を通じて決定された。
【0016】
しかし、この変異株は、いくつかの培養上および生理学上の特性、ならびにテイコプラニンを産生する能力という点で、米国特許第4,239,751号に記載されたオリジナル株とは明らかに区別される。従って、新たに単離された培養物を、Actinoplanes teichomyceticus BNG 23と命名し、この培養物に対して紫外線照射処理によって得られたその変異株を、Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315と命名した。
【0017】
ついで、この変異株は、Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315として、ブダペスト条約下で、韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganism;住所:大韓民国ソウル,ソデムン−ク,ホンジェ1−ドン、ユリムビルディング、361−221)に、2004年7月28日に、受託番号KCCM−10601として寄託された。
【0018】
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
(テイコプラニン産生微生物の単離)
変異株Actinoplanes teichomyceticus BNG 23を、大韓民国雪嶽山から収集した土壌サンプルから、キャピラリーチューブ法により単離した。上記の土壌サンプルからの微生物を、Actinomycetalesのメンバーの同定のための選択培地上に接種した。ついで、分類学的な特性によってActinomycetalesのメンバーとして選択された候補培養物を、グルコース、デキストリン、ダイズ粉、ジャガイモタンパク質、および鉱物塩を含む水性栄養培地中で増殖させた。この培養ブロスを濾過し、そして高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、テイコプラニンのアッセイについて標準的なプロトコールを用いて分析した。テイコプラニン産生体として選択された候補培養物を、0.3%(v/v)のS.aureusの水性懸濁物(1mlあたり10細胞を含む)を接種したDifco Nobel寒天培地上で実施される微生物アッセイに供した。最後に、テイコプラニン産生体として選択された候補培養物を、分類学的に同定し、そして培養物によって産生されたテイコプラニンとして推定された化合物を、その物理化学的特性に関して分析した。
【0020】
結論として、本発明者らは、Actinoplanes teichomyceticusに属し、そして先行技術(米国特許第4,239,751号)に記載された微生物の約20倍の生産性でテイコプラニンを産生する新規培養物を単離した。
【0021】
(実施例2)
(テイコプラニンの高産生変異株の単離)
上記母株よりもさらに効率よくテイコプラニンを産生する変異株を単離するために、変異誘発のための処理を紫外線照射によって行った。母株を、オートミール寒天スラントにおいて32℃で12日間培養した。通常の生理食塩水緩衝液を、このスラントに加え、そしてこれらを激しく混合し、ついで、懸濁物をNo.2 Wattman Paperを用いて濾過した。胞子懸濁物を、30W 紫外線ランプによる紫外線照射に供し、そして暗所にて2時間4℃で静置した。胞子懸濁物を、100mg/Lテイコプラニンを含むソイトン(soytone)寒天培地上に移し、そして7日間32℃でインキュベートした。
【0022】
病原性微生物Bacillus subtilisの培養物を、プレート上に増殖したコロニーの上に接種し、そして32℃で18時間インキュベートした。それら自身の周りに、母株の周りに形成された阻害ゾーンよりもより大きな阻害ゾーンを形成するコロニーを、候補変異株として選択し、そしてこれらを、Actinoplanes teichomyceticus BNGと命名し、コロニーに従う番号を伴わせた。候補変異株を、以下の表1に示す産生培地を含む7Lバッチ醗酵槽中で120時間培養した。
【0023】
醗酵槽規模で選択された変異株を、その生産性および安定性について、5回の別個の実験により測定した。驚くべきことに、本発明者らは、先行技術(米国特許第4,239,751号)において報告された微生物よりも約60倍高い生産性でテイコプラニンを産生する、変異株Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315を、単離し、そしてこの株をブダペスト条約下で韓国微生物保存センターに、受託番号KCCM−10601で寄託した。
【0024】
(表1)
(産生培地の組成)
【0025】
【表1】

(実施例3)
(変異株Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315の分類学的同定)
新たに単離したテイコプラニン産生株を細胞脂肪酸、細胞壁組成および16s rDNA配列の分析によって分類学的に同定した。細胞脂肪酸の分析は、Actinoplanes teichomyceticusとの98%の類似性を示し、そしてこの株のジアミノピメリン酸(diaminopimeric acid)は、Actinoplanes teichomyceticusのジアミノピメリン酸と同じくメソ体である。特に、この新たに単離されたテイコプラニン産生株の16s rDNAの配列は、Actinoplanes teichomyceticusの16s rDNA配列と99%の相同性を示す。結果として、この新たに単離されたテイコプラニン産生株は、Actinoplanes teichomyceticusに属すると決定された。しかし、この株は、米国特許第4,239,751号に記載される株Actinoplanes teichomyceticusとは、以下に記載されるいくつかの培養特性および生理学的特性によって明らかに区別される。従って、この変異株は、Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315と割当てられ、そしてブダペスト条約の下で、韓国微生物保存センター(Korea Culture Center of Microorganism)に受託番号KCCM−10601として寄託された。
【0026】
図1は、Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315が比較16s rDNA配列決定によって位置決めされた、詳細な系統樹を示す。
【0027】
(実施例4)
(変異株Actinoplanes teichomyceticus BNS 2315の培養特性)
(1)肉眼試験
オートミール寒天培地で生成するコロニーのサイズは、直径3〜4mmである。コロニーの形状は、十分に規定されかつ規則的な輪郭であり、淡橙色を有する中心のドーム様の隆起である。明るい橙色〜深橙色の植物性菌糸体が、培地のほとんどで生成される。しかし、この植物性菌糸体の色は、ジャガイモ、スキムミルクおよびavena酵母寒天培地では淡褐色である。いくつかの培地では、淡褐色の可溶性色素が生成される。長菌糸から生成された十分に発達した気中菌糸体が、いくつかの培地で見出される。
【0028】
表2は、種々の標準的な培地で培養したActinoplanes teichomyceticus BNG 2315の培養特性を報告する。これらの培養特性は、30℃で7〜14日間のインキュベーションの後に決定した。
【0029】
(表2)
(培養特性(32℃で14日間インキュベートした))
【0030】
【表2】

(2)顕微鏡試験
ほとんどの培地で多量に生成された胞子嚢は、主に、コロニーのドーム上で見出される。この胞子嚢は、球形〜楕円形であり、規則的な輪郭を有し、15〜20μmの範囲の直径を有する。胞子嚢柄は、真っ直ぐであり、直径約15μmおよび2μmである。高度に運動性の胞子は、球形〜楕円形であり、直径1.5〜2μmである。植物性菌糸体は、直径0.5〜1μmの薄い、ねじれた分枝状の菌糸から構成される。
【0031】
(実施例5)
(変異株Actinoplanes techomyceticus BNG 2315の生理学的特性)
変異株Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315の生理学的特性を、他のテイコプラニン生成体と比較した。表3は、炭素源の使用を報告する。
【0032】
(表3)
(糖質の使用)
【0033】
【表3】

表4は、他の生理学的特性を報告する。株Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315を、A.uthaensis、A.coloradoensisおよびA.teichomyceticusと同時に培養した。Actinoplanes teichomyceticus種の一般的な特性と比較すると、糖質の使用に関するActinoplanes teichomyceticus BNG 2315の特性は、ラムノースおよびラクトースの使用を除いて同じであった。さらに、主要な生理学的特性も、ゼラチンの液状化およびリンゴ酸カルシウムの加水分解を除いて同一であった。結果として、この変異株を、Actinoplanes teichomyceticusに属すると決定したが、Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315として割り当てた。なぜなら、この変異株は、生理学的特性ならびに形態学的特性および染色特性に基づいて、すべてのこれらの種とは明らかに区別され得るからである。この変異株を、2004年7月28日に、ブダペスト条約の下で、韓国微生物保存センター(Korea Culture Center of Microorganism)に受託番号KCCM−10601として寄託した。
【0034】
(表4)
(生理学的特性)
【0035】
【表4】

(実施例6)
(好気性醗酵によるテイコプラニンの産生)
テイコプラニンの産生のために、変異株Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315を、同化可能な炭素源、窒素源、および無機塩源を含む、水性栄養培地中にて好気条件下で醗酵させる。より具体的には、Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315を、実質的な菌糸体増殖が存在するまで、5〜9の範囲のpH値にて、より好ましくはpH7にて、栄養培地中で好気的に前培養する。そのフラスコを、28〜34℃にて、より好ましくは32℃にて、24〜48時間振盪し、その後、その前培養物を、最終濃度5〜10%にてジャー発酵槽に接種するために使用する。上記栄養培地の例として、前培養物は、表5に示されるような以下の組成(g/L)を有し得る。
【0036】
(表5)
(前培養培地の組成)
【0037】
【表5】

Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315の醗酵を、以下の通りに実行する。小規模醗酵において、Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315の前培養物を、表6に列挙される産生培地を含む7Lのジャー発酵槽に接種する。
【0038】
(表6)
(種培養培地の組成)
【0039】
【表6】

接種物は、3〜15%の範囲にあり、より好ましくは5%である。醗酵バッチを、900rpmにて攪拌しながら、そして30%より高い空気飽和で曝気を維持しながら、好気条件下でインキュベートする。その温度を、25〜37℃にて、より好ましくは32℃にて、維持する。pHは、醗酵の間に変化するが制御しない。
【0040】
大規模醗酵(5,000L)において、Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315の前培養物を、表6に列挙される滅菌培地300Lを含む種発酵槽(500L)に接種し、その後、上記の好気条件下で30℃にて48時間インキュベートする。
【0041】
その種培養物(300L)を、表7に列挙される産生培地3,000Lを含む主発酵槽(5,000L)に接種する。
【0042】
(表7)
(産生培地の組成)
【0043】
【表7】

その主醗酵を、水中好気条件下で、攪拌(80〜150rpm)および曝気(培地の50〜200(v/v)%容量、より好ましくは150(v/v)%容量)しながら、実行する。
【0044】
間隔を空けて、培養ブロスを取り出し、増殖、糖の消費、およびテイコプラニンの濃度について分析する。10mlの培養ブロスを、5N NaOHを用いてpH11に調整し、そして450gにて10分間遠心分離する。増殖を、PMV(充填菌糸体体積(Packed Mycelial Volume))として測定し、テイコプラニンの濃度を、C18逆相カラム、UV検出器、およびクォータナリ(quaternary)・ポンプを備えるHPLC(高速液体クロマトグラフィー)によって決定する。糖の全量を、フェノール−硫酸法によって決定し、グルコースの濃度を、DNS法によって測定する。
【0045】
5,000L規模での醗酵の時間経過が、図2に示される。テイコプラニンの合成は、増殖期が終わって全残留糖が30g/L未満になったときに、始まる。グルコースの消費は、対数増殖期の間の36時間で完了し、その後、デキストリンが、増殖およびテイコプラニンの合成のために消費される。
【0046】
この培地のpHは、増殖期の間にpH6.5まで減少し、その後、抗生物質産生期(図2においてデータは、示されない)の間にpH8.0まで上昇した。この増殖は、48時間でPMVとして29%に達し、テイコプラニンの合成は、140時間まで多少直線的に継続し、140時間で、横ばいになり始める。変異株Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315により産生されるテイコプラニンの最大濃度は、3.2g/Lであり、これは、米国特許第4,239,751号において報告されたActinoplanes teichomyceticus nov. sp. ATCC−31121によるよりも64倍多い。
【0047】
(表8)
(テイコプラニンについての生産性の比較)
【0048】
【表8】

小規模醗酵(7L)において、変異株Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315は、表8において示されるように、米国特許第4,239,751号において報告されたActinoplanes teichomyceticus nov. sp. ATCC−31121による50mg/Lと比較して、6日間以内で3.0g/Lより多いテイコプラニンを産生した。大規模醗酵(5,000L)において、本変異株Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315は、いくつかの別個の実験において、2.5g/L〜3.2g/Lのテイコプラニンを再現的に産生した。
【0049】
テイコプラニンは、A2−1、A2−2、A2−3、A2−4、A2−5と呼ばれる5つの主成分の混合物からなる。すべてのテイコプラニン成分は、分子量が1564〜1908の範囲である糖ペプチドアナログである。これらは、直鎖状ヘプタペプチドアグリコンならびにD−マンノースおよびD−グルコサミンによって形成される、同じコア糖ペプチドを有する。上記A2群の5つの成分は、さらなるN−アシル−グルコサミンを含み、そして異なるアシル脂肪族側鎖によって区別される。これらのA2群成分を、逆相HPLCにおける保持時間に従って、親油性が増加する順に、A2−1からA2−5へと順位付けし得る(図3)。表9は、テイコプラニンA2複合体の組成を示す。
【0050】
(表9)
(テイコプラニンA2複合体の組成)
【0051】
【表9】

A2群の単一成分群は、異なる生物学的活性を有する。A2−3およびA2−4は、Staphylococcus aureusに対して、それぞれ、A2−1およびA2−2の両方よりも2倍高い生物学的活性を有する。
【0052】
図2および表9に示されるように、変異株Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315(KCCM−10601)により産生されるテイコプラニンA2複合体はまた、5つの成分を含むが、A2群の組成は、米国特許4,239,751号において報告されたActinoplanes teichomyceticus nov. sp. ATCC−31121により産生される組成と異なる。換言すると、変異株Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315(KCCM−10601)により産生されるテイコプラニンA2複合体中のA2−3およびA2−4の内容量は、米国特許第4,239,751号において報告されたActinoplanes teichomyceticus nov. sp. ATCC−31121による内容量よりも、2倍および1.4倍多い。このことは、テイコプラニン複合体の生物学的活性の増加をもたらす。
【0053】
結論として、醗酵の結果、ならびに培養特性および生理学的特性は、本発明の変異株が、先行技術において報告された他のテイコプラニン産生株とは明確に区別されることを、示す。
【0054】
(発明の要約)
本発明は、新たな単離変異株培養物Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315を提供する。この培養物は、以前に報告された微生物(例えば、Actinoplanes teichomyceticu nov.sp.ATCC31121)よりも約60倍を超えて高い生産性でテイコプラニンを産生する能力を有する。本発明はまた、変異株Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315を、炭素源、窒素源および鉱物塩を含む培養培地中で用いて好気条件でテイコプラニンを産生するための醗酵プロセスを提供する。
【0055】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみ、その範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315が比較のための16s rDNA配列決定によって位置づけられた、系統樹を示す。
【図2】図2は、5000L規模で、変異株Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315を用いた醗酵の時間経過を示す。
【図3】図3は、変異株Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315(KCCM−10601)の培養ブロスのHPLC分析のクロマトグラムを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganism)に受託番号KCCM−10601で寄託された変異株Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315を用いる、テイコプラニンの最大産生のための醗酵方法であって、該方法は、以下の工程:
i)グルコース15g/L〜25g/L、デキストリン40g/L〜80g/L、ペプトン4g/L〜6g/L、ナタネ粗引き粉16g/L〜20g/L、ダイズ粉16g/L〜20g/L、MgSO・7HO 0.4g/L〜0.6g/L、CaCO 4g/L〜6g/L、およびNaCl 1.0g/L〜1.4g/Lを含む産生培地上で、該培地の曝気速度が1分間当たり、1培地容量につき、空気0.5容量〜2.0容量である条件で変異株細胞を醗酵させる工程;
ii)該変異株細胞および他の残渣を、該醗酵培地から取り除く工程;および
iii)工程ii)の該醗酵培地からテイコプラニンを単離および回収する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
醗酵に使用される前記変異株細胞は、Actinoplanes teichomyceticus BNG 2315(KCCM−10601)を、グルコース25g/L〜35g/L、酵母抽出物2.0g/L〜3.0g/L、ダイズ粉7.0g/L〜11.0g/L、ナタネ粗引き粉7.0g/L〜11.0g/L、NaCl 1.0g/L〜1.4g/L、CaCl 0.08g/L〜0.12g/L、MgSO・7HO 0.4g/L〜0.6g/LおよびCaCO 4g/L〜6g/Lを含む培地において培養することによって調製される、請求項1に記載の醗酵方法。
【請求項3】
韓国微生物保存センターに受託番号KCCM−10601で寄託されている、単離されたActinoplanes teichomyceticus BNG 2315。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−166739(P2006−166739A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360639(P2004−360639)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(504458127)バイオンジーン カンパニー, リミテッド (1)
【Fターム(参考)】