説明

テクスチュアデータ処理装置、テクスチュアデータ処理方法、プログラム、エンボス版製造装置、エンボス版製造方法、及びシート

【課題】エンボス版の製造時等にテクスチュアの繋ぎ目を目立たなくするテクスチュアデータ処理装置等を提供する。
【解決手段】テクスチュアデータ処理装置1は、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データであるハイトデータ67を切り出し範囲65で切り出し、切り出し範囲65のハイトデータ67のテクスチュアデータ66に含まれる制御点63を抽出する制御点抽出部27と、切り出し範囲65の制御点63−1を、制御点63−4の隣であって切り出し範囲65の外に付加し、付加された制御点63−1’を含む制御点63により生成されるテクスチュアデータ66に基づくハイトデータ67を生成する制御点付加部28と、ハイトデータ67の画素値に応じて、ハイトデータ67−1でハイトデータ67−2を上書きし、ハイトデータ67−3でハイトデータ67−4を上書きするテクスチュア上書き部29と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データでありエンボス版の製造に用いられるハイトデータのシームレス処理を行うテクスチュアデータ処理装置、テクスチュアデータ処理方法、プログラム、およびシームレス処理されたハイトデータを用いてエンボス版の製造を行うエンボス版製造装置、エンボス版製造方法、さらにはこれにより作製されるシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建材の壁紙等に用いられるエンボス版またはシートの意匠には、織物布地等のテクスチュアに近い表面形状を有するものがある。このようなシートの製造工程には、テクスチュア表面形状のエンボス版を製造するために織物布地等のテクスチュアの型を取る工程が含まれる。型取りの方法には、シリコンやスキャナを用いて対象の素材から型を取得する手法と、コンピュータ等の計算装置を用いてテクスチュア表面の凹凸の質感をデータとして生成する手法とがある。
【0003】
コンピュータ等を用いて織物布地等のテクスチュア表面形状を有するエンボス版またはシートを生成する技術としては、例えば、特許文献1、2、3に示すものが公知である。特許文献1では、たて糸とよこ糸を交互に織った「平織」布地を表現したシートを作成するため、布領域のサイズ、糸幅、繊維幅、糸の高さ等のパラメータを用い、たて糸及びよこ糸の相対座標値を算出し、その相対座標値に基づいて布領域における各画素の高さを決定し、織物データを生成する手法が開示されている。また、特許文献2は、特許文献1を基本概念として、たて糸とよこ糸とがほぼ2対1の割合で表れる「綾織り」布地を表現したシートを作成するものである。また、特許文献3では、絹調の布地を表現したシートを作成するために、光の乱反射を多く発生させる多角錐形状を布領域内に適用し、その座標値に応じた高さを決定し、織物データを作成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−58459号公報
【特許文献2】特開2001−179825号公報
【特許文献3】特開2001−113891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1〜3に記載された織物データは、繊維のレベルまで細密に表現したモデルではない。そのため布地表面から繊維の飛び出した、いわゆる「ケバ」や、撚り糸の太さのばらつきである「ムラ」といった実際の布地の質感を表現できる程、精細なものではなかった。
【0006】
また、上記のように自動生成した、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データであるハイトデータを用いてエンボス版を製造する際には、当該ハイトデータを縦横に並べるようにしてエンボス版のサイズに応じたハイトデータを形成する必要があるが、その際には、テクスチュア(ハイトデータ)のつなぎ目をシームレスに処理する必要がある。これを行わないと、エンボス版を用いて作製した壁紙等で、ハイトデータの繋ぎ目で一定の模様が形成され、これが不自然に見えることなどがあるためである。
【0007】
特に、上記のようにケバやムラといった実際の布地の質感等を微細に表現するようなテクスチュアでは、これらのケバやムラの微細な形状まで考慮してシームレス処理する必要があり、単に画素値を滑らかに連続させるといった処理だけでは不自然な画像となる可能性がある。
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データであるハイトデータのシームレス処理を行い、ハイトデータを用いたエンボス版の製造時にテクスチュアの繋ぎ目を目立たなくするテクスチュアデータ処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために第1の発明は、テクスチュアデータ生成情報に基づいて隣り合う制御点間でテクスチュアデータを生成し所定の方向に連続して配置される制御点を含むテクスチュアデータに基づく、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データでありエンボス版の製造に用いられるハイトデータのシームレス処理を行うテクスチュアデータ処理装置であって、前記ハイトデータを所定の範囲で切り出し、前記所定の範囲のハイトデータのテクスチュアデータに含まれる制御点を抽出する制御点抽出手段と、前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部の制御点を、他方の端部の制御点の前記所定の方向に沿った隣であって前記所定の範囲の他方の端部の外に付加し、前記制御点、および前記付加された制御点により生成されるテクスチュアデータに基づくハイトデータを生成する制御点付加手段と、前記ハイトデータの画素値に応じて、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたハイトデータで前記所定の範囲の一方の端部で対応する位置のハイトデータを上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたハイトデータで前記所定の範囲の他方の端部で対応する位置のハイトデータを上書きするテクスチュア上書き手段と、を具備することを特徴とするテクスチュアデータ処理装置である。
【0010】
また、前記ハイトデータ上書き手段は、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたハイトデータの画素値と、前記所定の範囲の一方の端部のハイトデータの画素値を、対応する位置において比較し、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたハイトデータの画素値が示すテクスチュアの高さが、前記所定の範囲の一方の端部のハイトデータの画素値が示すテクスチュアの高さよりも高い場合、前記位置における画素値を前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたハイトデータの画素値とし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたハイトデータの画素値と、前記所定の範囲の他方の端部のハイトデータの画素値を、対応する位置において比較し、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたハイトデータの画素値が示すテクスチュアの高さが、前記所定の範囲の他方の端部のハイトデータの画素値が示すテクスチュアの高さよりも高い場合、前記位置における画素値を前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたハイトデータの画素値とすることが望ましい。
【0011】
前述した目的を達成するために第2の発明は、テクスチュアデータ生成情報に基づいて隣り合う制御点間でテクスチュアデータを生成し所定の方向に連続して配置される制御点を含むテクスチュアデータに基づく、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データでありエンボス版の製造に用いられるハイトデータのシームレス処理を行うテクスチュアデータ処理装置であって、前記ハイトデータを所定の範囲で切り出し、前記所定の範囲のハイトデータのテクスチュアデータに含まれる制御点を抽出する制御点抽出手段と、前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部の制御点を、他方の端部の制御点の前記所定の方向に沿った隣であって前記所定の範囲の他方の端部の外に付加し、前記制御点、および前記付加された制御点によりテクスチュアデータを生成する制御点付加手段と、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたテクスチュアデータを、前記所定の範囲の一方の端部で対応する位置に上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたテクスチュアデータを、前記所定の範囲の他方の端部で対応する位置に上書きし、テクスチュアデータによるハイトデータを生成するテクスチュア上書き手段と、を具備することを特徴とするテクスチュアデータ処理装置である。
【0012】
また、第1の発明または第2の発明の前記テクスチュア上書き手段は、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたハイトデータまたはテクスチュアデータを、前記所定の範囲の一方の端部に上書きする際、前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部から所定量ずらした位置に上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたハイトデータまたはテクスチュアデータを、前記所定の範囲の他方の端部に上書きする際、前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った他方の端部から所定量ずらした位置に上書きするようにしてもよい。
【0013】
また、前記テクスチュアデータには、前記所定の方向に沿って、その高さ位置が周期性を有する部分が含まれ、前記所定の範囲は、前記所定の方向に沿った一端と他端で前記高さ位置の位相が一致するものとすることができる。
さらに、前記テクスチュアデータは、たて糸、よこ糸を有する織物のデータであり、前記所定の方向は、前記たて糸に沿った方向、前記よこ糸に沿った方向とすることができる。
【0014】
また、第3の発明は、テクスチュアデータ生成情報に基づいて隣り合う制御点間でテクスチュアデータを生成し所定の方向に連続して配置される制御点を含むテクスチュアデータに基づく、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データでありエンボス版の製造に用いられるハイトデータのシームレス処理を行うテクスチュアデータ処理装置を用いたテクスチュアデータ処理方法であって、前記ハイトデータを所定の範囲で切り出し、前記所定の範囲のハイトデータのテクスチュアデータに含まれる制御点を抽出する制御点抽出ステップと、前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部の制御点を、他方の端部の制御点の前記所定の方向に沿った隣であって前記所定の範囲の他方の端部の外に付加し、前記制御点、および前記付加された制御点により生成されるテクスチュアデータに基づくハイトデータを生成する制御点付加ステップと、前記ハイトデータの画素値に応じて、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたハイトデータで前記所定の範囲の一方の端部で対応する位置のハイトデータを上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたハイトデータで前記所定の範囲の他方の端部で対応する位置のハイトデータを上書きするテクスチュア上書きステップと、を具備することを特徴とするテクスチュアデータ処理方法である。
【0015】
また、第4の発明は、テクスチュアデータ生成情報に基づいて隣り合う制御点間でテクスチュアデータを生成し所定の方向に連続して配置される制御点を含むテクスチュアデータに基づく、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データでありエンボス版の製造に用いられるハイトデータのシームレス処理を行うテクスチュアデータ処理装置を用いたテクスチュアデータ処理方法であって、前記ハイトデータを所定の範囲で切り出し、前記所定の範囲のハイトデータのテクスチュアデータに含まれる制御点を抽出する制御点抽出ステップと、前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部の制御点を、他方の端部の制御点の前記所定の方向に沿った隣であって前記所定の範囲の他方の端部の外に付加し、前記制御点、および前記付加された制御点によりテクスチュアデータを生成する制御点付加ステップと、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたテクスチュアデータを、前記所定の範囲の一方の端部で対応する位置に上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたテクスチュアデータを、前記所定の範囲の他方の端部で対応する位置に上書きし、テクスチュアデータによるハイトデータを生成するテクスチュア上書きステップと、を具備することを特徴とするテクスチュアデータ処理方法である。
【0016】
また、第5の発明は、コンピュータを第1の発明または第2の発明に記載のテクスチュアデータ処理装置として機能させるためのプログラムである。
【0017】
また、第6の発明は、テクスチュアデータ生成情報に基づいて隣り合う制御点間でテクスチュアデータを生成し所定の方向に連続して配置される制御点を含むテクスチュアデータに基づく、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データであるハイトデータのシームレス処理を行い、シームレス処理されたハイトデータを用いてエンボス版の製造を行うエンボス版製造装置であって、前記ハイトデータを所定の範囲で切り出し、前記所定の範囲のハイトデータのテクスチュアデータに含まれる制御点を抽出する制御点抽出手段と、前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部の制御点を、他方の端部の制御点の前記所定の方向に沿った隣であって前記所定の範囲の他方の端部の外に付加し、前記制御点、および前記付加された制御点により生成されるテクスチュアデータに基づくハイトデータを生成する制御点付加手段と、前記ハイトデータの画素値に応じて、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたハイトデータで前記所定の範囲の一方の端部で対応する位置のハイトデータを上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたハイトデータで前記所定の範囲の他方の端部で対応する位置のハイトデータを上書きするテクスチュア上書き手段と、前記テクスチュア上書き手段により生成されたハイトデータを複数並べて出力するハイトデータ出力手段と、前記ハイトデータ出力手段により出力されたハイトデータに基づいて、テクスチュアの表面形状をエンボス版シリンダに形成したエンボス版を製造するエンボス版製造手段と、を具備することを特徴とするエンボス版製造装置である。
【0018】
また、第7の発明は、テクスチュアデータ生成情報に基づいて隣り合う制御点間でテクスチュアデータを生成し所定の方向に連続して配置される制御点を含むテクスチュアデータに基づく、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データであるハイトデータのシームレス処理を行い、シームレス処理されたハイトデータを用いてエンボス版の製造を行うエンボス版製造装置であって、前記ハイトデータを所定の範囲で切り出し、前記所定の範囲のハイトデータのテクスチュアデータに含まれる制御点を抽出する制御点抽出手段と、前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部の制御点を、他方の端部の制御点の前記所定の方向に沿った隣であって前記所定の範囲の他方の端部の外に付加し、前記制御点、および前記付加された制御点によりテクスチュアデータを生成する制御点付加手段と、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたテクスチュアデータを、前記所定の範囲の一方の端部で対応する位置に上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたテクスチュアデータを、前記所定の範囲の他方の端部で対応する位置に上書きし、テクスチュアデータによるハイトデータを生成するテクスチュア上書き手段と、前記テクスチュア上書き手段により生成されたハイトデータを複数並べて出力するハイトデータ出力手段と、前記ハイトデータ出力手段により出力されたハイトデータに基づいて、テクスチュアの表面形状をエンボス版シリンダに形成したエンボス版を製造するエンボス版製造手段と、を具備することを特徴とするエンボス版製造装置である。
【0019】
第6の発明、第7の発明のエンボス版製造装置において、前記エンボス版製造手段は、前記エンボス版シリンダに対して、打刻刃またはレーザビームを用いて前記テクスチュアの表面形状を彫刻する彫刻手段とすることができる。
【0020】
また、第6の発明、第7の発明のエンボス版製造装置において、前記エンボス版製造手段は、レジスト層をコーティングした前記エンボス版シリンダ、または該エンボス版シリンダへの露光処理に用いるフォトマスクに対して、前記ハイトデータに基づく露光パターンを形成するパターン露光手段と、前記露光パターンが形成された前記エンボス板シリンダ、または前記フォトマスクに対して腐食処理を施す腐食装置と、を含むことも望ましい。
【0021】
また、第8の発明は、テクスチュアデータ生成情報に基づいて隣り合う制御点間でテクスチュアデータを生成し所定の方向に連続して配置される制御点を含むテクスチュアデータに基づく、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データであるハイトデータのシームレス処理を行い、シームレス処理されたハイトデータを用いてエンボス版の製造を行うエンボス版製造装置を用いたエンボス版製造方法であって、前記ハイトデータを所定の範囲で切り出し、前記所定の範囲のハイトデータのテクスチュアデータに含まれる制御点を抽出する制御点抽出ステップと、前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部の制御点を、他方の端部の制御点の前記所定の方向に沿った隣であって前記所定の範囲の他方の端部の外に付加し、前記制御点、および前記付加された制御点により生成されるテクスチュアデータに基づくハイトデータを生成する制御点付加ステップと、前記ハイトデータの画素値に応じて、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたハイトデータで前記所定の範囲の一方の端部で対応する位置のハイトデータを上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたハイトデータで前記所定の範囲の他方の端部で対応する位置のハイトデータを上書きするテクスチュア上書きステップと、前記テクスチュア上書き手段により生成されたハイトデータを複数並べて出力するハイトデータ出力ステップと、前記ハイトデータ出力手段により出力されたハイトデータに基づいて、テクスチュアの表面形状をエンボス版シリンダに形成したエンボス版を製造するエンボス版製造ステップと、を具備することを特徴とするエンボス版製造方法である。
【0022】
また、第9の発明は、テクスチュアデータ生成情報に基づいて隣り合う制御点間でテクスチュアデータを生成し所定の方向に連続して配置される制御点を含むテクスチュアデータに基づく、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データであるハイトデータのシームレス処理を行い、シームレス処理されたハイトデータを用いてエンボス版の製造を行うエンボス版製造装置を用いたエンボス版製造方法であって、前記ハイトデータを所定の範囲で切り出し、前記所定の範囲のハイトデータのテクスチュアデータに含まれる制御点を抽出する制御点抽出ステップと、前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部の制御点を、他方の端部の制御点の前記所定の方向に沿った隣であって前記所定の範囲の他方の端部の外に付加し、前記制御点、および前記付加された制御点によりテクスチュアデータを生成する制御点付加ステップと、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたテクスチュアデータを、前記所定の範囲の一方の端部で対応する位置に上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたテクスチュアデータを、前記所定の範囲の他方の端部で対応する位置に上書きし、テクスチュアデータによるハイトデータを生成するテクスチュア上書きステップと、前記テクスチュア上書き手段により生成されたハイトデータを複数並べて出力するハイトデータ出力ステップと、前記ハイトデータ出力手段により出力されたハイトデータに基づいて、テクスチュアの表面形状をエンボス版シリンダに形成したエンボス版を製造するエンボス版製造ステップと、を具備することを特徴とするエンボス版製造方法である。
【0023】
また、第10の発明は、第6の発明または第7の発明のエンボス版製造装置によって製造されたエンボス版を用いてシート表面形状を加工した壁紙シートである。
【0024】
以上の構成により、テクスチュアの微細な形状を表すテクスチュアデータを反映させたハイトデータのシームレス処理を行うので、精密なシームレス処理を行うことができ、テクスチュアデータが繊維のケバ等の不規則な部分を有する場合でも精度の高いシームレス処理を行うことができる。また、複数並べたときに端部が滑らかに連続するハイトデータの1単位の処理を行うので、扱うデータが小さく、計算処理にかかる負担を軽減することができ、高解像度のデータであっても計算処理の負担を抑えることができるという利点を有する。また、テクスチュアの上書きの際に上書き位置を所定量ずらすことで、シームレス処理されたハイトデータを所定量ずらして並べその繋ぎ目がより自然に見えるようにすることもできる。また、たて糸、よこ糸により構成される織物のデータなど、テクスチュアデータが所定の方向に沿って高さ位置に周期性を有する場合は、所定の範囲を周期性を考慮して定めることでハイトデータを滑らかに連続させることができる。さらに、このようにシームレス処理され複数並べたハイトデータをエンボス版の製造に用いることで、エンボス版として、テクスチュアの微細な形状を表現し、複数並べたテクスチュアの表面形状(ハイトデータ)どうしが滑らかに連続するものを作製することができる。このようなエンボス版で作製したシートは、微細な形状を表現するとともに、繋ぎ目が不自然に見えたりすることがなく、意匠性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データであるハイトデータのシームレス処理を行い、ハイトデータを用いたエンボス版の製造時にテクスチュアの繋ぎ目を目立たなくするテクスチュアデータ処理装置等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】テクスチュアデータ処理装置1のハードウエア構成を示すブロック図
【図2】テクスチュアデータ処理装置1の機能ブロック図
【図3】テクスチュアデータ処理の流れを示すフローチャート
【図4】テクスチュアデータ生成の流れを示すフローチャート
【図5】繊維データについて説明する図
【図6】円柱モデル34の糸データについて説明する図
【図7】円錐台モデル36について説明する図
【図8】糸データの3D画像の一例
【図9】織物の組織について説明する図。(A)は平織、(B)は綾織。
【図10】糸の変形について説明する図
【図11】ベジエ曲線に基づいて変形された糸の3D画像の一例
【図12】生成された織物データの3D画像の一例
【図13】糸の太さの「ムラ」を表現した織物データの3D画像の一例
【図14】糸データに「ケバ」を付加した織物データの3D画像の一例
【図15】生成されたハイトデータの画像の一例
【図16】生成されたハイトデータの画像の一例
【図17】シームレス処理の流れを示すフローチャート
【図18】制御点の抽出について説明する図
【図19】制御点によるテクスチュアデータ生成について説明する図
【図20】制御点の付加とハイトデータの上書きについて説明する図
【図21】上書きされた後のハイトデータを説明する図
【図22】連続するハイトデータについて説明する図
【図23】ハイトデータの上書きと複数並べた配置を説明する図
【図24】複数並べたハイトデータの画像の一例
【図25】ハイトデータの上書きと複数並べた配置を説明する図
【図26】織物布地調エンボス版製造装置9のハードウエア構成の一例を示すブロック図
【図27】エンボス版製造装置9Aの全体構成図
【図28】エンボス版製造装置9Bの全体構成図
【図29】エンボス版の製造に供するフォトマスクの製造装置9Cを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0028】
[第1の実施の形態]
まず、本発明に係るテクスチュアデータ処理装置1について説明する。
図1は、本実施の形態のテクスチュアデータ処理装置1のハードウエア構成を示す。
テクスチュアデータ処理装置1は、図1に示すように、例えば、制御部10、記憶部11、メディア入出力部12、周辺機器I/F部13、通信部14、入力部15、表示部16、印刷部17等がバス18を介して接続されて構成される。
【0029】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Accsess Memory)等により構成される。
CPUは、記憶部11、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス18を介して接続された各部を駆動制御する。制御部10のCPUは後述するテクスチュアデータ処理(図3参照)を実行する。
【0030】
ROMは、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持する。RAMは、ロードしたプログラムやデータを一時的に保持するとともに、制御部10が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。
【0031】
記憶部11は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、制御部10が実行するプログラムや、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティング・システム)等が格納されている。これらのプログラムコードは、制御部10により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて実行される。
【0032】
メディア入出力部12(ドライブ装置)は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、PDドライブ、CDドライブ、DVDドライブ、MOドライブ等のメディア入出力装置であり、データの入出力を行う。
【0033】
通信部14は、通信制御装置、通信ポート等を有し、ネットワークとの通信を媒介する通信インタフェースであり、通信制御を行う。
入力部15は、例えば、キーボード、マウス等のポインティング・デバイス、テンキー等の入力装置であり、入力されたデータを制御部10へ出力する。
【0034】
表示部16は、例えば液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路(ビデオアダプタ等)で構成され、制御部10の制御により入力された表示情報をディスプレイ装置上に表示させる。
印刷部17は、プリンタであり、生成されたハイトデータ等の画像の印刷処理等を行う。
【0035】
次に、本発明のテクスチュアデータ処理装置1の機能について、図2を参照して説明する。なお、本実施形態では、テクスチュアデータとしてたて糸、よこ糸を有する織物のデータの例をあげて説明する。ただし、テクスチュアデータはこれに限られることはない。
【0036】
図2に示すように、テクスチュアデータ処理装置1の制御部10は、テクスチュアデータ(織物データ)のハイトデータを生成するための機能として、テクスチュアデータ生成部19と、シームレス処理部20、出力部30を有する。テクスチュアデータ生成部19は、パラメータ入力部21、繊維形状生成部22、糸の形状生成部23、織物の組織生成部24、織物の形状生成部25、階調画像生成部26を有する。シームレス処理部20は、制御点抽出部27、制御点付加部28、テクスチュア上書き部29を有する。
【0037】
すなわち、制御部10は、テクスチュアの高さ情報を画素値で表すハイトデータを生成するために、テクスチュアデータ処理装置1の各部を制御して、パラメータ入力、繊維形状生成、糸の形状生成、織物の組織生成、織物の形状生成、階調画像生成の各処理を行い、生成したハイトデータのシームレス処理を行うために、テクスチュアデータ処理装置1の各部を制御して、制御点抽出、制御点付加、テクスチュア上書きの各処理を行い、生成したハイトデータの出力を行う。これらの処理の詳細については後述する。
【0038】
次に、テクスチュアデータ処理装置1の動作を説明する。
図3のフローチャートに示すように、テクスチュアデータ処理装置1の制御部10は、テクスチュアデータ生成ステップ(ステップS1)、ハイトデータのシームレス処理ステップ(ステップS2)、及び出力ステップ(ステップS3)の各ステップを含むテクスチュアデータ処理プログラムを実行することにより、テクスチュアデータのハイトデータを生成し、ハイトデータのシームレス処理を行い、シームレス処理後のハイトデータを複数並べて出力する。
【0039】
まず、テクスチュアデータ生成ステップS1における処理を説明する。テクスチュアデータ生成ステップとしては、図4に示すように、パラメータ入力ステップ(ステップS11)、繊維形状生成ステップ(ステップS12)、糸の形状生成ステップ(ステップS13)、織物の組織生成ステップ(ステップS14)、織物の形状生成ステップ(ステップS15)、階調画像生成ステップ(ステップS16)が含まれ、テクスチュアの高さ情報を表すデータであるハイトデータを生成する。
【0040】
<パラメータ入力ステップ(図4のステップS11)>
本実施の形態のテクスチュアデータ処理装置1において、制御部10は、まず、後述する繊維生成ステップS12、糸の形状生成ステップS13、織物の組織生成ステップS14、織物の形状生成ステップS15、階調画像生成ステップS16で利用されるパラメータの入力を受け付ける。
【0041】
繊維生成ステップS12で利用されるパラメータとしては、繊維の長さ、繊維の揺らぎの幅、及び繊維の分節数等が挙げられる。
糸の形状生成ステップS13で利用されるパラメータとしては、糸の単位長さ当りの繊維数、繊維の撚り(回転角度)、糸の半径、糸の形状を表現するモデルを定義する関数等が挙げられる。
織物の組織生成ステップS14で利用されるパラメータとしては、織物の一組織におけるたて糸及びよこ糸の表裏配置情報を定義する二値の行列等が挙げられる。
織物の形状生成ステップS15で利用されるパラメータとしては、たて糸及びよこ糸の間隔、繊維の「ケバ」や「ムラ」を調整するための値等が挙げられる。
階調画像生成ステップS16で利用されるパラメータとしては、階調数等が挙げられる。
【0042】
各種パラメータの入力を受け付ける際、制御部10は必要なパラメータを入力するための入力画面を生成し、表示部16に表示するようにしてもよい。また、制御部10は、入力部15から入力されたパラメータを、RAMに保持する。入力されたパラメータは、各ステップで読み出され、繊維データ、糸データ、または織物データの生成に使用される。
【0043】
<繊維形状生成ステップ(図4のステップS12)>
次に、制御部10は、繊維の形状を定義する。
制御部10は、入力されたパラメータ「繊維の長さ」に基づいて、3次元空間内に任意の長さの線または任意数の点群の集合を設定する。ここで、線とは、直線、曲線、または曲線の集合を含むものとする。以下の説明では、繊維を定義するため、任意の長さの線分を繊維データとして3次元空間内に設定する。そして、パラメータ「分節数」に基づいて、その線分(任意の長さの線または任意数の点群の集合を設定した場合は、線または点群の集合)を区切り、各ノード(区切られた線分の1要素)をパラメータ「繊維の揺らぎ」の幅内にランダムに揺らして配置することにより、繊維データを生成する。
【0044】
具体的には、図5(A)に示すように、繊維31の両端を含む分節数をNとした場合、線分の始点の座標をn、終点の座標をnNn−1、i番目のノードの始点の座標をniとする。これらの座標n、nNn−1、niは3次元ベクトルで表される。
i番目のノードの始点の座標nは、次の式(1)に示す位置となる。
【0045】
【数1】

【0046】
ここで、Znは、各ノードに揺らぎを与えるために設定される3次元ベクトルである。Znの各要素を、区間[JgMin,JgMax]の乱数とすれば、ランダムな揺らぎをもつ繊維を表現できる。
【0047】
また、定義した繊維データに、図5(B)に示すような所望の表面形状を付加してもよい。繊維の表面の形状は、定義した繊維データ上のサンプル点sを中心とした、球表面の関数である式(2)の論理和として定義する。或いは、多角形によって定義する。
【0048】
【数2】

【0049】
ここで、xは3次元ベクトルであり、rはサンプル点sから表面までの距離とする。
【0050】
<糸の形状生成ステップ(図4のステップS13)>
次に、制御部10は、糸の形状を定義する。糸は、繊維を束ね、撚ったものとして表現される。
【0051】
糸の形状を表現するため、所定の閉じた空間内に、繊維データが所定数配置される。このような糸のモデルを閉空間モデルと呼ぶものとする。閉空間モデルは、その閉空間を表現する関数によって定義される。
閉空間モデルの一例として、例えば、図6に示すような、所定の単位長の長さ及びパラメータ「糸の半径」分の半径rを持つ円柱モデル34を使用する。
制御部10は、まず、円柱モデル34内に、繊維データ31,31,31,・・・をパラメータ「繊維数」だけ略平行に配置する(図6(A))。
各繊維データ31,31,31,・・・は、円柱モデル34の上面と下面とを結ぶ方向(図中z方向)に対して略平行に配置されるものとする。
【0052】
具体的には、制御部10は、繊維生成ステップS12で生成された繊維データ31に対して、平行移動等の処理を行い、円柱モデル34内に複数の繊維31をランダムに配置する。
各繊維の移動のベクトルT=(Ttx,Tty,Ttz)は式(3)の値となる。
【0053】
【数3】

【0054】
ここで、lは円柱モデル34の長さ、Z,Z,Z,Z,Zは区間[0,1]の乱数列の値とし、各繊維にそれぞれ設定される。
【0055】
また、図7に示すように、上面と下面の半径が異なる円錐台を複数連結した円錐台モデル36を使用して糸を形成してもよい。
【0056】
円錐台モデル36を用いる場合は、式(3)のrを、糸の長軸(z軸)の値に応じた円錐台の半径を返す関数r(a)に置き換える。
円錐台の半径を返す関数r(a)を式(4)で定義するものとする。
【0057】
【数4】

【0058】
ここで、aは、区間[0,1]の値、rとrは、それぞれ円錐台の上面と下面の半径である。
【0059】
また制御部10は、パラメータ「繊維の撚り(回転角度θ)」の分だけ、糸に含まれる各繊維データを回転させ、撚りを表現する(図6(B)、(C))。
【0060】
制御部10は、繊維データ31の各ノードを糸の中心軸(円柱モデル34または円錐モデル36の上面及び下面の中心を結ぶ軸)を回転の軸として、繊維データの1端点を固定しつつ、各ノード端点を順次θ度回転させる。
【0061】
図6(C)は、糸35の長軸の任意位置における垂直断面(x−y)である。図6(C)の黒点は、糸35に含まれる繊維データを意味する。
繊維データを回転させる際は、各ノード端点を順次円の接線方向にθ度移動させるとともに、ノード長さの補正を行う。一般的な回転処理では、回転の軸から離れた点ほど移動量が多くなる。そのため、糸の外側の繊維が密に表現されてしまう。これを避けるため、各ノードの長さが元の長さを保つように移動後の位置を補正する。
【0062】
すなわち、式(5)に示すように、i番目のノード端点の座標nを、n’’の位置に移動する。
【0063】
【数5】

【0064】
ここで、iは区間[0,N]とする。Nは、ノード数を表す上限値である。
この回転処理によって繊維の束である糸が撚られ、図8に示すような糸データが生成される。図8は、撚りの処理が行われた糸の3D画像を示す図である。糸の長軸が回転軸(z軸)である。図8に示すように、糸の複数の繊維が撚られた様子が表現される。
【0065】
<織物の組織生成ステップ(図4のステップS14)>
次に、制御部10は、織物の組織を定義する。
織物は、たて糸とよこ糸とから構成されるため、たて糸とよこ糸との交差する点(以下、組織点と呼ぶ)では、たて糸及びよこ糸のうちどちらか一方が表面に現れ、他方は裏面に現れる。
【0066】
図9(A)は平織の基本単位となる組織、図9(B)は綾織の基本単位となる組織を表している。図中、黒で示すブロックがたて糸であり、白で示すブロックがよこ糸である。
【0067】
定義した一組織の繰り返しである完全組織の場合、全組織の表裏の関係は、一単位の組織の行列Aにより定義される。以下、一単位の組織の表裏の関係を示す行列Aを表裏配置情報と呼ぶ。
例えば、平織の表裏配置情報は、式(6)に示すような2×2行列により定義される。
【0068】
【数6】

【0069】
一方、たて糸の数をM、よこ糸の数をNとした場合、組織点の数はM・N点である。
ここで、組織点の位置を、たて糸のインデックスj、よこ糸のインデックスkで表現すると、たて糸のインデックスjと行列Aの行数mの余剰、またはよこ糸のインデックスkと列数nの余剰を参照することにより、注目する組織点が行列Aのどの要素に該当するかが決定され、各糸の表裏配置情報が決定される。
また、ここでは、行列Aの要素が1のとき、たて糸が表であるとして定義する。更に、たて糸の長軸をz方向、よこ糸の長軸をx方向、表裏をy方向に配置するものとする。
【0070】
以上から、各組織点におけるたて糸の座標g=(g,g,g)は式(7)で定義される。
【0071】
【数7】

【0072】
ここで、Iwarpは、たて糸の間隔と、Iweftは、よこ糸の間隔、rは、たて糸の半径である。
【0073】
よこ糸については、行列Aを−Aとすることで、同様に組織点での座標を算出できる。
【0074】
本実施の形態では、制御部10は、ステップS14の処理を、組織点の数M・N回だけ繰り返す。
【0075】
<織物の形状生成ステップ(図4のステップS15)>
次に、制御部10は、たて糸とよこ糸の繊維が、それぞれ隣り合う組織点間を滑らかに補間するように、繊維を構成する各ノードを適宜平行移動する処理を行う。
図10は、糸56の変形について説明する図である。図10では、紙面の左右方向をz方向、紙面上下方向をy方向、紙面鉛直方向をx方向としている。
糸46と糸56とが交差するz位置zから、糸47と糸56とが交差するz位置zk+1までの間を、糸56内の繊維が滑らかに補間する。
【0076】
ここで、二つの値(隣り合う組織点の座標)を滑らかに補間する関数f(y,y,t)を用いる。
とyは対象となる組織点のy軸の座標であり、tは、隣り合う組織点間の位置を示し[0,1]の値をとる媒介変数である。
【0077】
糸を変形するために、以下の式(8)に示すf’(y,y,t)を、各繊維を構成するノードのy座標に加える。
【0078】
【数8】

【0079】
上述の媒介変数tは、糸生成時の式(3)のZと同値である。
ここでは、補間の関数f(y,y,t)の一例として、式(9)に示す3次元ベジエ曲線を用いるものとする。
【0080】
【数9】

【0081】
なお、式(9)に代えて、式(10)を使用してもよい。式(10)のパラメータy,yは、布地の織り方に依存するパラメータであり、ユーザにより指定可能とする。
また、ベジエ曲線に代えて、他の補間の関数としてもよい。
【0082】
【数10】

【0083】
変形処理された糸の3D画像を、図11に示す。
また、たて糸とよこ糸をそれぞれ6本ずつ用いた平織の織物の3D画像を図12に示す。
図11、図12に示すように、本テクスチュアデータ処理装置1で生成された糸データまたは織物データは、糸に含まれる繊維の質感が微細に表現されていること分かる。
【0084】
この段階で、更に、生成した織物データについて、糸の太さの「ムラ」や、糸の表面もしくは内部に含まれる繊維がほつれている様子を示す「ケバ」を調整するようにしてもよい。
【0085】
糸の「ムラ」を表現するために、制御部10は、糸を定義した円錐台モデル36の上面の半径と、その上面と接している下面の半径とが同値となるようにしつつ、それらの半径をランダムに揺らす。すなわち、糸の円錐台の上面もしくは下面の半径を区間[JrMin,JrMax]の乱数として与える。
糸に「ムラ」を加えたときの織物の3D画像を図13に示す。
【0086】
また、「ケバ」を表現するために、制御部10は、まず、糸として束ねられた繊維の中から「ケバ」とする繊維を所望の数Nだけ無作為に選択する。ここで、Nは区間[NfMin,NfMax]の無作為な値とする。NfMinは0以上、NfMaxは糸の円錐台モデル36に充填された繊維の数N以下とする。
制御部10は、選択した繊維を糸の表面に飛び出させるために、直線状に変形させ、各ノードにノイズを付加する。ケバとなる繊維のノードnの位置は、式(11)のn’に移動する。
【0087】
【数11】

【0088】
このとき、Zf1は糸の飛び出し距離を定義するパラメータであり、区間[Jf1Min,Jf1Max]の乱数とする。Zf2は、繊維の揺らぎを定義するパラメータであり、各要素が区間[Jf2Min,Jf2Max]の乱数の3次元ベクトルとする。
【0089】
糸の「ケバ」を付加した織物の3D画像を図14に示す。
【0090】
<階調画像生成ステップ(図4のステップS16)>
次に、テクスチュアデータ処理装置1は、生成された織物データの3次元形状をハイトフィールドに変換する処理を行う。制御部10は、生成された織物データの3次元形状の表側から繊維の表面で最も高い部分を選択し、テクスチュアの高さ情報を例えば256階調の階調画像(グレースケール等)で表し、2次元平面に射影したハイトデータを生成する。
【0091】
ハイトフィールドに変換する処理において、制御部10は、織物データの繊維の線分をラスタライズした後に、距離に依存した減衰関数を用いて曲面を生成する。或いは、制御部10は、線分を中心とする陰関数を用いたモデリングを行って曲面を生成し、その後ラスタライズしてハイトデータを生成するようにしてもよい。
【0092】
本発明の実施の形態に係るテクスチュアデータ処理装置1により生成したテクスチュアデータの例として、表1に示すパラメータを設定し、生成した織物データのハイトデータを示す。
【0093】
【表1】

【0094】
このようなパラメータを用いて生成したハイトデータを、256階調のグレースケールで表現した画像を図15及び図16に示す。
図15及び図16に示すように、織物データは、糸の撚りの「ムラ」や繊維の「ケバ」等の微細な形状が表現されており、実際の布地の質感を十分微細に表現している。
【0095】
このように、テクスチュアデータ処理装置1の制御部10は、図3のテクスチュアデータ生成ステップS1において、3次元空間内に任意の長さの線や任意数の点群の集合を設定し、この線や点群の集合を任意の分節数に区切った各ノードの端点を所定の揺らぎ幅内にランダムに揺らすことにより、繊維データを定義し、複数の繊維データを、例えば円柱または円錐台といった閉空間モデル内に略平行に配置し、配置された各繊維データの各線分端点を所定角度だけ回転させることにより表現される糸データを生成する。そして制御部10は、生成された複数の糸データを、織物のたて糸及びよこ糸として夫々所定間隔で配置し、各糸データの表裏配置に基づいて、該たて糸及びよこ糸の形状を変形し、織物形状データを生成する。更に制御部10は、生成された織物形状データを2次元座標空間のハイトフィールドデータに変換し、ハイトデータとして出力する。
【0096】
従って、織物を繊維のような微細なレベルまで表現することが可能となり、写実性が向上する。
【0097】
また、テクスチュアデータ処理装置1では、繊維データに対するパラメータとして、繊維の長さ、繊維の揺らぎ幅、繊維を構成するノードの数等をユーザの所望の値で入力可能としたり、糸データに対するパラメータとして、繊維データの数、回転角度、糸の半径、糸の閉空間モデルを定義する関数等をユーザの所望の値で入力可能とするため、繊維の形状、糸の形状、繊維の粗密さ、織物の糸間隔、繊維のケバ、糸のムラ等を直感的に操作でき、様々な質感の織物データを得ることができる。
【0098】
また、糸データを生成する際は、糸の撚りを表現するために繊維を回転させる際に、元の繊維の長さを保つようにしているため、糸の太さ方向位置における繊維の不均衡がなくなり、実際の繊維を撚っているような自然な糸データを生成できる。
また、ハイトデータの出力サイズを任意に変更できるので、実用性が向上する。
【0099】
なお、上述の実施の形態では、平織について説明したが、綾織としてもよい。この場合、上述の平織の織物組織の表裏配置情報を示す式(6)に代えて、次の式(12)を用いるものとする。
【0100】
【数12】

【0101】
なお、以上のステップでは、たて糸とよこ糸の交点(組織点)が制御点として設定され、前述のような、テクスチュアを生成するためのテクスチュア生成情報が各制御点(を示す情報)と紐付けられる等してRAM等に記憶される。これらの情報は、以降のシームレス処理ステップS2におけるシームレス処理で用いられる。
【0102】
即ち、制御点は3次元空間内で糸の通り道となるものであり、X、Y、Z軸の位置情報を有する。Y軸の値は、糸が通過する高さを指す。また、糸の生成のために、糸の太さ、制御点間に存在する繊維の数、撚りの角度、ケバとなる繊維の数、ケバとなった場合にでる方向と出る距離等の情報を有する。さらに、糸を構成する繊維の生成のために、繊維の数、繊維のちぢれ、繊維の太さ等の情報を有する。各パラメータは、制御点間を補間する補間関数(線形または非線形)に依存し、形状生成関数を用いて3次元空間内の制御点間に織物データ(テクスチュアデータ)を形成する。以上のような情報がテクスチュア生成情報の例である。
【0103】
次に、シームレス処理ステップ(図3のステップS2)における処理を説明する。テクスチュアデータ生成装置1の制御部10は、ステップS2において、ステップS1で生成されたハイトデータのシームレス処理を行う。エンボス版の製造に用いるハイトデータとしては、自動生成されたハイトデータを一定範囲で切り出し、これを並べることになるが、そのままではこれらの画像(ハイトデータ)の繋ぎ目は連続しない。よってこれらの画像を並べたときにシームレスに連続されるよう、ステップS2のシームレス処理が必要になる。
【0104】
シームレス処理ステップ(図3のステップS2)としては、図17に示すように、制御点抽出ステップ(ステップS71)、制御点付加ステップ(ステップS72)、テクスチュア上書きステップ(ステップS73)が含まれる。
【0105】
<制御点抽出ステップS71(図17のステップS71)>
まず、制御部10は、ステップS1で生成されたハイトデータの所定の範囲を切り出し、ハイトデータのテクスチュアデータに含まれる複数の制御点を抽出する。
【0106】
よこ糸60の場合、図18(A)に示すように、制御点63が、よこ糸60の方向に沿って連続するように、よこ糸60(60−1〜60−4)とたて糸59(59−1〜59−4)の交点に配置される。図18(A)は平織の場合を示す。平織の場合、よこ糸60については、たて糸59より低いY座標(高さ)の制御点63とたて糸59より高いY座標の制御点63が、よこ糸60の方向に沿って交互に連続する。本実施形態ではシームレス処理を主によこ糸60の場合について説明するが、たて糸の場合も同様の処理が行われる。なお、たて糸59に係る制御点は、たて糸59の方向に沿って連続するように、たて糸59とよこ糸60の交点に配置される。
【0107】
制御部10は、図18(A)に示すように、ハイトデータを所定の切り出し範囲65で切り出し、切り出し範囲65内の、よこ糸60に沿って連続する制御点63を抽出する。
【0108】
切り出し範囲65は、例えばよこ糸60−1について示す図18(B)で表されるように、よこ糸60の方向に沿った両端でよこ糸60のY座標(高低を周期的に繰り返す)の高低の位相を合わせるように設定する。即ち、切り出し範囲65でよこ糸60の方向に沿ったY座標(高さ)の変動がn周期(nは自然数)存在するように切り出す。図18(B)ではn=2である。このような処理を行うのは、端部の位相を揃えない場合、後述するシームレス処理されたハイトデータが、これを並べた場合に繋ぎ目の位置で高いもしくは低い値で連続し不自然に見える可能性があるためである。なお、この切り出し範囲65は予め選択し、これに基づいて制御部10が上記の処理を行うことができる。また、処理の際に操作者が入力部15を介して定めるものであってもよい。また、図18(B)において62は繊維のケバである。
【0109】
図18(B)に示すように、よこ糸60−1に沿った切り出し範囲65をみると、よこ糸60−1の方向に沿って連続する制御点63−1〜63−4が抽出される。制御点63−1は切り出し範囲65の左端部に位置し、制御点63−4は切り出し範囲65の右端部に位置する。
【0110】
図19に示すように、制御点63は、位置情報や、糸の太さ等の前述した情報を有し、制御点63の、所定の方向(よこ糸60の方向やたて糸59の方向)に隣り合う一組は、これらの情報や制御点63間を補間する補間関数等のテクスチュア生成情報により、形状生成関数を用いて制御点間によこ糸60やケバ62等のテクスチュアデータ66を補間、生成する。
【0111】
制御点63−1〜63−4が抽出された状態を示す図が図20である。図20は図18(A)のよこ糸60−1の方向に沿って制御点63−1〜63−4を見たものである。図において縦軸はY軸に対応し、テクスチュアデータ66の高さ方向を示す。横軸はX軸に対応し、よこ糸60−1に沿った方向を示す。
【0112】
制御点63−1〜63−4を抽出すると、図20(A)に示すように、これらの間にテクスチュアデータ66が生成される。即ち、各制御点の間でよこ糸60やケバ62等のテクスチュアデータ66が補間、生成される。なお、切り出し範囲65の左右端部(制御点63−1と切り出し範囲65の左端との間、制御点63−4と切り出し範囲65の右端との間)では、制御点63−1の左側や制御点63−4の右側に制御点が存在しないため、テクスチュアデータ66(よこ糸60)が補間されない。
【0113】
また、図20において67は、テクスチュアデータ66のY値(高さ)の最高値を示すハイトデータであり、当該最高値を0〜255の画素値であらわしたもので、自動的に、または入力部15を介した操作者の操作により、テクスチュアデータ66に基づいて生成することができる。
【0114】
<制御点付加ステップ(図17のステップS22)>
続いて、制御部10は、図20(B)に示すように、抽出した制御点63の左端の制御点63−1を、切り出し範囲65の右端部の外でよこ糸60−1の方向に沿って制御点63−4の隣に付加(コピー)し、制御点63−1’とする。制御点63−1’の持つテクスチュア生成情報は、X軸方向(よこ糸60−1の方向)の位置情報を除いて、制御点63−1と同様のものである。
【0115】
すると、制御点63−4と制御点63−1’の間にテクスチュアデータ66が補間、生成される。即ち、前述のテクスチュア生成情報により、切り出し範囲65の右端部と、切り出し範囲65の右外側でよこ糸60が補間され、ケバ62’等が生成される。
【0116】
これに伴って、切り出し範囲65の右外側でもテクスチュアデータ66に基づいてハイトデータ67が生成される。
【0117】
<テクスチュア上書きステップ(図17のステップS23)>
次に、制御部10は、ハイトデータ67の画素値に応じて、図20(C)に示す、切り出し範囲65の右端部の外側の部分のハイトデータ67−1を、切り出し範囲65の左端部のハイトデータ67−2に上書きする。この際、ハイトデータ67−1の左端(切り出し範囲65の右端)を切り出し範囲65の左端に対応させる。
【0118】
制御部10は、このとき対応する位置で画素値を比較し、ハイトデータ67−1の画素値が示すテクスチュアの高さが、ハイトデータ67−2の画素値が示すテクスチュアの高さよりも高い場合には、当該位置でハイトデータ67−2の画素値をハイトデータ67−1の画素値とする。そうでない場合は、ハイトデータ67−2の画素値を維持する。
【0119】
ステップS23の処理は、切り出し範囲65の左外側についても行う。即ち、ハイトデータ67の画素値に応じて、切り出し範囲65の左端部の外側の部分のハイトデータ67−3を、切り出し範囲65の右端部のハイトデータ67−4に上書きする。この際、ハイトデータ67−3の右端(切り出し範囲65の左端)を切り出し範囲65の右端に対応させる。上記と同様、制御部10は、このとき対応する位置で画素値を比較し、ハイトデータ67−3の画素値が示すテクスチュアの高さが、ハイトデータ67−4の画素値が示すテクスチュアの高さよりも高い場合には、当該位置でハイトデータ67−4の画素値をハイトデータ67−3の画素値とする。そうでない場合は、ハイトデータ67−4の画素値を維持する。
【0120】
以上の処理を行うと、図21に示すような図18(B)の切り出し範囲65でよこ糸60−1に沿ってハイトデータ67が生成される。これは、任意の位置でテクスチュアの高さの最高値を表すハイトデータ67の生成においては、切り出し範囲65の右(左)端部の外側で生成したテクスチュアデータ66を、切り出し範囲65の左(右)端部に、テクスチュアデータ66の左(右)端と切り出し範囲65の左(右)端を対応させて上書きし図21のテクスチュアデータ66を生成したことに実質等しくなり、ハイトデータ67のよこ糸60−1の方向に沿った端部Aと端部A’が連続するようになる。
【0121】
即ち、図22(A)に示すように、ハイトデータ67を横にならべた場合に、その繋ぎ目69でハイトデータ67は滑らかに連続する。これは、テクスチュアデータ66の端部同士が繋ぎ目69で連続することよりわかる。
【0122】
一方、図22(B)は切り出し範囲65のテクスチュアデータ66をそのまま連続させたものだが、その繋ぎ目69で、常にテクスチュアデータ66の高さ情報が不連続になる。従って、切り出し範囲65のハイトデータ67をそのまま繋ぎ合わせると繋ぎ目69が不自然になる。
【0123】
このように、本実施形態のシームレス処理により生成されたハイトデータは、その繋ぎ目において画素値が連続するので、画像を繋ぎ合わせたときに繋ぎ目が不自然にならない。
【0124】
図23(A)に示すように、ステップS72〜S73の処理を図18(A)のよこ糸60−2からよこ糸60−4に沿って配置された制御点63についても行い、図23(B)に示すようなハイトデータ67を生成すると、よこ糸60−2に対応するハイトデータ67の端部Bと端部B’、よこ糸60−3に対応するハイトデータ67の端部Cと端部C’、よこ糸60−4に対応するハイトデータ67の端部Dと端部D’も連続するようになる。なお、簡単のため図23では各よこ糸60の幅方向を1つの画素で表している。
【0125】
制御部10は、たて糸59−1からたて糸59−4に沿って配置された制御点63についても同様の処理を行い、切り出し範囲65のハイトデータ67を生成する。後述の出力ステップで出力を行う際に、図23(C)に示すように縦横に位置を合わせて並べると、縦横方向に滑らかに連続するシームレス画像を生成、出力することができる。
【0126】
このようなシームレス画像が図24であり、端部が滑らかに連続することがわかる。
【0127】
なお、ステップS72では切り出し範囲65の右端部の外側にテクスチュアデータ66を補間、生成したが、ステップS72ではどちらか一方の端部の外側に制御点を付加すればよい。即ち、ステップS72で左端部の外側に制御点を付加して切り出し範囲65の左端部の外側でテクスチュアデータ66を補間、生成するようにしてもよい。
【0128】
また、制御点付加ステップS72で上記と同様にしてテクスチュアデータ66を生成し、テクスチュア上書きステップS73では、切り出し範囲65の右端部の外側に生成したテクスチュアデータ66を切り出し範囲65の左端部に、当該テクスチュアデータ66の左端(切り出し範囲65の右端)と切り出し範囲65の左端を対応させて上書きし、切り出し範囲65の左端部の外側に生成したテクスチュアデータ66を切り出し範囲65の右端部に、当該テクスチュアデータ66の右端(切り出し範囲65の左端)と切り出し範囲65の右端を対応させて上書きしてもよい。これは、図21のテクスチュアデータ66を実際に生成することになり、当該テクスチュアデータ66に基づいて生成されるハイトデータ67の端部Aと端部A’(図21)は、滑らかに連続する。この場合では、画素値の大小を判定する必要がない。
【0129】
また、テクスチュア上書きステップS23では、ハイトデータ67またはテクスチュアデータ66を上書きする際に、よこ糸60の方向に沿った端部に上書きせず、よこ糸60と直交する方向に所定量ずらした位置の端部に上書きするようにしてもよい。即ち、図25(A)に示すように、よこ糸60−1、60−2、60−3、60−4について生成された切り出し範囲65の右端部の外側のハイトデータ66で、よこ糸60−3、60−4、60−1、60−2について生成された切り出し範囲65の左端部のハイトデータ66をそれぞれ上書きし、よこ糸60−1、60−2、60−3、60−4について生成された切り出し範囲65の左端部の外側のハイトデータ67で、よこ糸60−3、60−4、60−1、60−2について生成された切り出し範囲65の右端部のハイトデータ67をそれぞれ上書きしてもよい。テクスチュアデータ66を上書きする場合も同様である。
【0130】
この場合、よこ糸60−1に対応するハイトデータ67とよこ糸60−3に対応するハイトデータ67が連続し、よこ糸60−2に対応するハイトデータ67とよこ糸60−4に対応するハイトデータ67が連続するようになる。即ち、図25(B)に示す端部Aと端部C’、端部A’と端部C、端部Bと端部D’、端部B’と端部Dが連続するようになる。
【0131】
制御部10により、たて糸59については前述したようにシームレス処理を行い、切り出し範囲65のハイトデータを生成する。すると、切り出し範囲65のハイトデータ67は、後述の出力ステップで出力を行う際に、図25(C)のように、縦方向(よこ糸60の方向と直交するZ軸方向)に所定量位置をずらして並べたときに繋ぎ目が連続するようになる。切り出し範囲65のハイトデータ67を位置をずらして並べるので、繋ぎ目がより自然に見えるようになる。
【0132】
なお、上記した上書き位置をずらす所定量やその方向は、生成されるハイトデータ67の並べ方により様々に定めることができる。上書きの際にずらすか否かを含め、上書きの方法は予め選択しておき、これに基づいて制御部10が上記の処理を行うことができる。また、処理の際に操作者が入力部15を介して定めるものであってもよい。
【0133】
以上のようにシームレス処理(図3のステップS2)が行われ、シームレス処理されたハイトデータが生成される。本実施形態によれば、テクスチュアの微細な形状を表すテクスチュアデータを反映させながらハイトデータのシームレス処理を行うので、精密なシームレス処理を行うことができ、テクスチュアデータが繊維のケバ等の不規則な部分を有する場合でも精度の高いシームレス処理を行うことができる。また、複数並べたときに端部が滑らかに連続するハイトデータの1単位の処理を行うので、扱うデータが小さく、計算処理にかかる負荷を軽減することができ、高解像度のデータであっても計算処理の負担を抑えることができるという利点を有する。
【0134】
また、本実施形態のシームレス処理は、繊維データに限らず、テクスチュア生成情報を用いて、所定の方向に隣り合う制御点間でテクスチュアデータが生成できる制御点を含み、これを用いて生成されるテクスチュアデータ(ハイトデータ)全般に適用することができる。テクスチュアの種類により前述のテクスチュア生成情報の種類は異なる。
【0135】
さらに、本実施形態では、周期的に高さが変動するよこ糸やたて糸を含む繊維データをテクスチュアデータの例として説明を行ったが、周期性を有するデータのみに適用されるものでもない。周期性のないデータであっても、上記の条件を満たしていれば同様の手順で適用することが可能であり、その場合はステップS71における制御点抽出の条件(端部の位相が一致するように切り出し範囲65を定める)が必要でなくなる。
【0136】
さらに、ハイトデータで表す高さ情報は、上述したように実際の高さを表すものに限らず、高さ情報とみなし、後述のエンボス版製造の際に高さ情報として用いるものを含む。例えば陰影等の色彩情報を高さ情報としてエンボス版あるいはこれにより製造されるシート等で表現する場合も考えられ、例えばY軸を所定の色(高さの最高値とみなす)との色差として上記のシームレス処理等を行うことなどができる。
【0137】
<出力ステップ(図3のステップS3)>
制御部10は、予め設定された数(大きさ)や並べ方で、あるいは入力部15から入力される指示操作にしたがって、シームレス処理されたハイトデータ67を、図23(C)や図25(C)のように複数並べられた状態でRAMや記憶部11またはメディア入出力部12に接続された記憶媒体等に記憶し出力する。その大きさは、後述するエンボス版の大きさに応じたものとできる。また、これらを表示部16に表示させたり、印刷部17に出力して印刷したりする場合もある。
【0138】
[第2の実施形態]
次に、本発明に係るエンボス版製造装置、及びシートについて説明する。
【0139】
本第2の実施の形態のエンボス版製造装置9は、第1の実施の形態のテクスチュアデータ処理手順に従って生成しシームレス処理され、エンボス版シリンダの大きさに応じて複数並べられ出力されたハイトデータに基づいて、エンボス版シリンダにテクスチュア表面形状のエンボス彫刻を施すものである。
【0140】
図26に示すように、エンボス版製造装置9は、ハイトデータを出力または格納するコンピュータ91(テクスチュアデータ処理装置1)と、エンボス版製造手段92と、を備える。
【0141】
コンピュータ91は、ハイトデータを生成してシームレス処理しエンボス版シリンダの大きさに応じて複数並べた、または予め生成されシームレス処理されエンボス版シリンダの大きさに合わせて複数並べたハイトデータを記憶部に記憶する。また、コンピュータ91は、エンボス版製造手段92の動作を制御する。
【0142】
第2の実施の形態では、エンボス版製造手段92として、機械彫刻またはレーザ彫刻を施す彫刻機93を利用するものとする。
図27に第2の実施の形態のエンボス版製造装置9Aの構成を示す。
【0143】
図27に示すように、エンボス版製造装置9Aは、コンピュータ91、彫刻機93、支持台101、及び回転駆動部104を備える。
彫刻機93は、彫刻機制御部931、駆動部932、及び彫刻用刃(打刻刃)933を備える。彫刻機制御部931は、コンピュータ91から入力されるテクスチュアのハイトデータに従って彫刻機駆動部932を駆動し、彫刻用刃933を支持台101,101に支持されたエンボス版シリンダ100の版面に対して深さ方向に上下動するとともに、エンボス版シリンダ100の回転軸方向(図中A−A方向)に移動させる。回転駆動部104は、コンピュータ91から入力される指示に従って、支持台101,101に支持されたエンボス版シリンダ100を回転軸A−A方向を中心に回転する。
これにより、彫刻機93は、コンピュータ91から入力されたテクスチュアのハイトデータに従った深さで金属製或いは樹脂製のエンボス版シリンダ100に彫刻を施し、織物布地等のテクスチュアの表面形状を形成する。
【0144】
なお、彫刻機93は、彫刻用刃933に代えて、レーザ等を用いる方式のものでもよい。この場合、彫刻機93は、図27の駆動部932及び彫刻用刃933に代えて、走査部、レーザ発振器、及び光学ユニットを備え、レーザ発振器によって生成されるレーザビームを光学ユニットを介して照射する。
彫刻機制御部931は、走査部を駆動し、光学ユニットをエンボス版シリンダ100の回転軸方向(図中A−A方向)に移動させるとともに、レーザ発振器を制御してレーザの出力値を深さ情報(ハイトデータ)に従った出力値に変調する。これにより、エンボス版シリンダ100の所定位置に所定の出力でレーザビームを照射して、エンボス版シリンダ100の表面に織物布地等のテクスチュア表面形状の凹凸を彫刻する。
【0145】
彫刻機93は、例えば、階調画像(ハイトデータ)におけるグレースケール0%の部分を凸、グレースケール100%の部分を凹として彫刻を行う。彫刻の深さは任意に設定可能であるが、例えば、500μmに設定した場合は、グレースケール0%の部分は深さ0μm、グレースケール50%の部分は深さ250μm、グレースケール100%の部分は深さ500μmで彫刻される。
【0146】
グレースケール画像データからエンボス版シリンダを彫刻する手法については、例えば特開2008−246853に詳述されている。
【0147】
本第2の実施の形態のエンボス版製造装置9Aにより製造されたエンボス版を用いて、所望のシートに対してエンボス加工を行えば、織物布地等のテクスチュアの表面形状を有するシートを得ることが可能となる。シートは、紙、樹脂、合成皮革、金属等からなり、例えば、壁紙等の建材として利用される。
【0148】
以上説明したように、第2の実施の形態のエンボス版製造装置9Aによれば、第1の実施の形態と同様の手法で生成された、繊維等のテクスチュアの微細な形状を表現し、端部が滑らかに連続するように複数並べられたハイトデータに基づいて、エンボス版シリンダ100に織物布地等のテクスチュアの表面形状を形成することが可能となる。また、このエンボス版シリンダ100を用いて、所望のシートにエンボス加工を施すことが可能となる。これにより、エンボス版シリンダとして、微細な形状を表現し、複数並べたテクスチュア表面形状(ハイトデータ)どうしが滑らかに連続するものを作製することができる。テクスチュア表面形状どうしが滑らかに連続する当該シリンダで得られたシートは、微細な形状を表現するとともに、繋ぎ目が不自然に見えたりすることがなく、意匠性に優れたものとなる。
【0149】
また、この手法で製造したエンボス版には、実際の布地等のテクスチュア素材を型取る手法を用いた場合に生じる、例えば布地の皺やよれ、或いは布地表面の起伏の低減(繊維のつぶれ)等の質感の損失が生じない。
また、エンボス版を用いてシート表面を織物布地等のテクスチュア表面形状に加工し、量産することが可能となる。
【0150】
なお、第2の実施の形態において、ハイトデータは、例えば、彫刻機93に接続されたコンピュータ91とは異なるコンピュータ等にて生成されたものを、記憶媒体を介してコンピュータ91に入力したり、所定の通信インタフェースを介してコンピュータ91に入力したりしてもよい。
【0151】
[第3の実施形態]
第3の実施の形態のエンボス版製造装置は、第1の実施の形態のテクスチュアデータ処理手順に従って生成しシームレス処理され、エンボス版シリンダの大きさに応じて複数並べられ出力されたハイトデータに基づいて、エンボス版シリンダにエッチングの手法を用いて織物布地等のテクスチュア表面の凹凸形状を形成する。
【0152】
図28に示すように、第3の実施の形態のエンボス版製造装置9Bは、ハイトデータの生成等を行うコンピュータ91(テクスチュアデータ処理装置1)、パターン露光装置96、腐食装置98、支持台101、及び回転駆動部104を備える。また、支持台101にはレジスト層をコーティングしたエンボス版シリンダ200が取り付けられている。
支持台101及び回転駆動部104の構成及び動作は、第2の実施の形態と同様である。
【0153】
なお、コンピュータ91のハイトデータは、例えば、別のコンピュータ等にて生成されたものを、記憶媒体を介して入力したり、所定の通信インタフェースを介して入力したりしてもよい。
【0154】
パターン露光装置96は、走査部961、レーザ発振器962、及び光学ユニット963を備える。パターン露光装置96は、コンピュータ91から入力されるテクスチュアのハイトデータに従って走査部961を駆動し、レーザ照射口である光学ユニットをエンボス版シリンダ200の回転軸方向(図中A−A方向)に移動させるとともに、レーザ発振器962を制御して深さ情報(ハイトデータ)に従った出力値に変調する。本実施形態では、所定の画素値を閾値としてハイトデータを二値化し、当該閾値を境にレーザがON/OFFになるよう制御を行う。これにより、レジスト層をコーティングしたエンボス版シリンダ200の所定位置にレーザビームを照射し、露光部と非露光部とからなるパターンを形成する露光処理を行う。レジスト層としては、ポジ型レジスト、ネガ型レジストのいずれも用いることができる。ポジ型レジストの場合は、露光処理により露光部のレジスト層がゲル化する。ネガ型レジストの場合は、露光処理により露光部のレジスト層が硬化する。この露光処理が完了したエンボス版200は図示しない現像装置において現像、および版洗浄によって、レジスト層のうち露光部(ポジ型レジストの場合)もしくは非露光部(ネガ型レジストの場合)が除去され、レジスト部のパターンが形成される。その後、腐食装置98によりエンボス版に腐食液を作用させると、露出した金属面が腐食を受けて窪み、パターンに応じた凹凸構造が形成される。その後洗浄処理を行いレジスト部を除去する。このレジスト層コーティング、露光処理、現像処理、洗浄処理(非レジスト部の除去)、腐食処理、洗浄処理(レジスト部の除去)を、上記の閾値を変えて複数回繰り返すことにより、エンボス版シリンダ200の表面に深さの異なる凹凸が形成される。
【0155】
閾値は、エンボス版作成時にコンピュータ91の入力部等を介して定めてもよいが、閾値の決定を表示部等のグラフや数字を見ながら行うことになり、エンボス版作成時の手間がかかる。そのため、閾値は予め(複数)定めておき、ハイトデータの出力時(ステップS3)に、テクスチュアデータ処理装置1の制御部10により、あるいは入力部15から入力される指示操作に従って、元のハイトデータから閾値に基づくハイトデータを前もって作成し、これをパターン露光装置96に入力して閾値に応じたレーザのON/OFFの制御を行うとよい。例えば、画像処理ソフトのポスタリゼーション機能等を用いて閾値に基づく複数階調(多値画像)のハイトデータを作成し、これに基づき閾値に応じたレーザのON/OFFの制御を行う。また、各閾値に基づく二階調(二値画像)のハイトデータをそれぞれ作成しておき、閾値に応じたレーザのON/OFFの制御を、用いる二値画像のハイトデータを変えることで行ってもよい。閾値に基づくハイトデータを予め作成しておくと、エンボス版作成時に閾値を定める手間が省け、またエッチング時のマスク形状やマスク面積が、閾値に基づくハイトデータより視覚的に捉えられるので、版面の凹凸がイメージしやすく好適である。
【0156】
また、レーザビームによってレジストを形成する手段としては、レジスト層をコーティングしたシリンダに直接描画(レジスト層を焼飛ばす)をし、現像処理や、洗浄処理による非レジスト部の除去を必要としないレーザ刷版装置もあり、多く用いられている。この場合のエンボス版製造装置の構成は、現像装置等を必要としない点を除いて上記のエンボス版製造装置9Bと同様である。また、パターン露光装置96は、コンピュータ91から入力されるテクスチュアのハイトデータについて、上記の閾値を境にレーザがON/OFFになるよう上記と同様の制御を行い、レジスト層をコーティングしたエンボス版シリンダ200の所定位置にレーザビームを照射し、露光部のレジスト層を焼き飛ばし除去してレジスト部のパターンを形成する。レーザ発振機962が発振するレーザとしては、YAGレーザやファイバーレーザを使用することができる。その後、上記と同様の腐食処理を行いパターンに応じた凹凸構造をエンボス版に形成し、洗浄処理によりレジスト部の除去を行う。これらレジスト層コーティング、露光処理、腐食処理、洗浄処理(レジスト部の除去)を、上記の閾値を変えて複数回繰り返すことにより、エンボス版シリンダ200の表面に深さの異なる凹凸が形成される。このように、レーザによりレジスト層が焼き飛ばされるので、現像処理や、洗浄処理による非レジスト部の除去が不要になる。
【0157】
本第3の実施の形態のエンボス版製造装置9Bを使用して製造されたエンボス版を利用して、紙、樹脂、合成皮革、金属等からなる所望のシートに対してエンボス加工を行えば、織物布地等のテクスチュアの表面形状を有するシートを得ることが可能となる。上記の手順により、エンボス版シリンダとして、微細な形状を表現し、複数並べたテクスチュア表面形状(ハイトデータ)どうしが滑らかに連続するものを作製することができ、テクスチュア表面形状どうしが滑らかに連続する当該シリンダで得られたシートは、微細な形状を表現するとともに、繋ぎ目が不自然に見えたりすることがなく、意匠性に優れたものとなる。
【0158】
以上説明したように、第3の実施の形態のエンボス版製造装置9Bによれば、第1の実施の形態と同様の手法で生成された、織物等の微細なテクスチュア表面形状のハイトデータに基づいて、テクスチュア表面形状(ハイトデータ)の端部どうしが滑らかに連続するエンボス版シリンダ200を形成することが可能となる。その結果、織物の繊維のレベル等テクスチュアの表面形状を微細に表現し、テクスチュアの繋ぎ目が不自然にならないエンボス版が得られる。また、この手法で製造したエンボス版には、実際の布地等のテクスチュア素材を型取る手法を用いた場合に生じる、例えば布地の皺やよれ、或いは布地表面の起伏の低減(繊維のつぶれ)等の質感の損失が生じない。
【0159】
また、このエンボス版シリンダ200を用いて、所望のシート表面を織物布地調に加工し、量産することが可能となる。
【0160】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態のエンボス版製造装置は、第3の実施の形態と同様に、第1の実施の形態のテクスチュアデータ処理手順に従って生成しシームレス処理され、エンボス版シリンダの大きさに応じて複数並べられ出力されたハイトデータに基づいて、エンボス版シリンダにエッチングの手法を用いて織物布地等のテクスチュア表面の凹凸形状を形成する。エッチングにはフォトマスク97を使用する。
【0161】
図29(A)に示すように、本第4の実施の形態では、上述のコンピュータ91及びパターン露光装置96、腐食装置98をフォトマスク97の製造段階で利用する。すなわち、フォトマスク製造装置9Cは、ハイトデータの生成等を行うコンピュータ91(テクスチュアデータ処理装置1)及びパターン露光装置96、腐食装置98によって構成される。
【0162】
なお、コンピュータ91のハイトデータは、例えば、別のコンピュータ等にて生成されたものを、記憶媒体を介して入力したり、所定の通信インタフェースを介して入力したりしてもよい。
【0163】
フォトマスク97は、フォトマスク基板973上に遮光膜972が形成され、更にその上にレジスト層971がコーティングされる。このような状態のフォトマスク97に対して、パターン露光装置96は、第3の実施形態と同様の方法でテクスチュアのハイトデータ(所定深さ方向位置の2値データ)に従った露光を行なうことにより、レジスト層971に露光部と非露光部とを形成する。露光後に、現像、洗浄し、不要なレジスト層を除去しレジスト部のパターンを形成する。更に、腐食装置98により腐食液を作用させ、腐食、洗浄を行うことにより不要な遮光膜を除去するとともにレジスト部を除去し、フォトマスク基板973上に遮光パターンを形成する。
【0164】
このように遮光パターンの形成されたフォトマスク97は、必要な深さ位置の数だけ製造され、それぞれ図29(B)に示すようにエンボス版シリンダ200への露光の際に使用される。
図29(B)に示すように、フォトマスク97にてレジスト層のコーティングされたエンボス版シリンダ200を覆い、露光することにより、フォトマスク97に形成されている遮光パターンに従った露光部及び非露光部が形成される。更に、第3の実施形態と同様、現像処理、洗浄処理を行うことにより不要なレジスト層が除去されてレジスト部のパターンが形成され、腐食処理、洗浄処理を行うことにより、エンボス版シリンダ200の表面に凹凸が形成されレジスト部が除去される。フォトマスク97を交換して、レジスト層コーティング、露光、現像、洗浄(非レジスト部の除去)、腐食、洗浄(レジスト部の除去)を繰り返すことにより、エンボス版シリンダ200の表面に複数段に凹凸が形成される。
【0165】
以上説明したように、本第4の実施の形態のフォトマスク製造装置9Cによれば、ハイトデータに基づく遮光パターンを施したフォトマスク97を製造できる。このフォトマスク97を使用して、エンボス版のエッチングを行えば、ハイトデータに基づく凹凸が形成されたエンボス版を得ることが可能となる。その結果、織物の繊維のレベル等テクスチュアの表面形状を微細に表現し、テクスチュアの繋ぎ目が不自然にならないエンボス版が得られる。また、この手法で製造したエンボス版には、実際の布地等のテクスチュア素材を型取る手法を用いた場合に生じる、例えば布地の皺やよれ、或いは布地表面の起伏の低減(繊維のつぶれ)等の質感の損失が生じない。
【0166】
また、このように製造されたエンボス版を利用して、紙、樹脂、合成皮革、金属等からなる所望のシートに対してエンボス加工を行えば、織物布地等のテクスチュアの表面形状を有するシートを得ることが可能となる。上記の手順により、エンボス版シリンダとして、微細な形状を表現し、複数並べたテクスチュア表面形状(ハイトデータ)どうしが滑らかに連続するものを作製することができ、テクスチュア表面形状どうしが滑らかに連続する当該シリンダで得られたシートは、微細な形状を表現するとともに、繋ぎ目が不自然に見えたりすることがなく、意匠性に優れたものとなる。
【0167】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係るテクスチュアデータ処理装置等の好適な実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0168】
1・・・・・・・テクスチュアデータ処理装置
9・・・・・・・エンボス版製造装置
10・・・・・・制御部
15・・・・・・入力部
16・・・・・・表示部
17・・・・・・印刷部
19・・・・・・テクスチュア生成部
20・・・・・・シームレス処理部
21・・・・・・パラメータ入力部
22・・・・・・繊維形状生成部
23・・・・・・糸の形状生成部
24・・・・・・織物の組織生成部
25・・・・・・織物の形状生成部
26・・・・・・階調画像生成部
27・・・・・・制御点抽出部
28・・・・・・制御点付加部
29・・・・・・テクスチュア上書き部
30・・・・・・出力部
31・・・・・・繊維データ
34、35、36・・糸のモデル
43〜47、59・・・・・・たて糸
51〜56、60・・・・・・よこ糸
62・・・・・・ケバ
63・・・・・・制御点
65・・・・・・切り出し範囲
66・・・・・・テクスチュアデータ
67・・・・・・ハイトデータ
69・・・・・・繋ぎ目
91・・・・・・コンピュータ
92・・・・・・エンボス版製造手段
93・・・・・・彫刻機
96・・・・・・パターン露光装置
97・・・・・・フォトマスク
98・・・・・・腐食装置
100・・・・・エンボス版シリンダ
200・・・・・エンボス版シリンダ(レジスト層被覆)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テクスチュアデータ生成情報に基づいて隣り合う制御点間でテクスチュアデータを生成し所定の方向に連続して配置される制御点を含むテクスチュアデータに基づく、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データでありエンボス版の製造に用いられるハイトデータのシームレス処理を行うテクスチュアデータ処理装置であって、
前記ハイトデータを所定の範囲で切り出し、前記所定の範囲のハイトデータのテクスチュアデータに含まれる制御点を抽出する制御点抽出手段と、
前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部の制御点を、他方の端部の制御点の前記所定の方向に沿った隣であって前記所定の範囲の他方の端部の外に付加し、前記制御点、および前記付加された制御点により生成されるテクスチュアデータに基づくハイトデータを生成する制御点付加手段と、
前記ハイトデータの画素値に応じて、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたハイトデータで前記所定の範囲の一方の端部で対応する位置のハイトデータを上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたハイトデータで前記所定の範囲の他方の端部で対応する位置のハイトデータを上書きするテクスチュア上書き手段と、
を具備することを特徴とするテクスチュアデータ処理装置。
【請求項2】
前記ハイトデータ上書き手段は、
前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたハイトデータの画素値と、前記所定の範囲の一方の端部のハイトデータの画素値を、対応する位置において比較し、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたハイトデータの画素値が示すテクスチュアの高さが、前記所定の範囲の一方の端部のハイトデータの画素値が示すテクスチュアの高さよりも高い場合、前記位置における画素値を前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたハイトデータの画素値とし、
前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたハイトデータの画素値と、前記所定の範囲の他方の端部のハイトデータの画素値を、対応する位置において比較し、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたハイトデータの画素値が示すテクスチュアの高さが、前記所定の範囲の他方の端部のハイトデータの画素値が示すテクスチュアの高さよりも高い場合、前記位置における画素値を前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたハイトデータの画素値とすることを特徴とする請求項1記載のテクスチュアデータ処理装置。
【請求項3】
テクスチュアデータ生成情報に基づいて隣り合う制御点間でテクスチュアデータを生成し所定の方向に連続して配置される制御点を含むテクスチュアデータに基づく、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データでありエンボス版の製造に用いられるハイトデータのシームレス処理を行うテクスチュアデータ処理装置であって、
前記ハイトデータを所定の範囲で切り出し、前記所定の範囲のハイトデータのテクスチュアデータに含まれる制御点を抽出する制御点抽出手段と、
前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部の制御点を、他方の端部の制御点の前記所定の方向に沿った隣であって前記所定の範囲の他方の端部の外に付加し、前記制御点、および前記付加された制御点によりテクスチュアデータを生成する制御点付加手段と、
前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたテクスチュアデータを、前記所定の範囲の一方の端部で対応する位置に上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたテクスチュアデータを、前記所定の範囲の他方の端部で対応する位置に上書きし、テクスチュアデータによるハイトデータを生成するテクスチュア上書き手段と、
を具備することを特徴とするテクスチュアデータ処理装置。
【請求項4】
前記テクスチュア上書き手段は、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたハイトデータまたはテクスチュアデータを、前記所定の範囲の一方の端部に上書きする際、前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部から所定量ずらした位置に上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたハイトデータまたはテクスチュアデータを、前記所定の範囲の他方の端部に上書きする際、前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った他方の端部から所定量ずらした位置に上書きすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のテクスチュアデータ処置装置。
【請求項5】
前記テクスチュアデータには、前記所定の方向に沿って、その高さ位置が周期性を有する部分が含まれ、
前記所定の範囲は、前記所定の方向に沿った一端と他端で前記高さ位置の位相が一致するものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のテクスチュアデータ処理装置。
【請求項6】
前記テクスチュアデータは、たて糸、よこ糸を有する織物のデータであり、前記所定の方向は、前記たて糸に沿った方向、前記よこ糸に沿った方向であることを特徴とする請求項5記載のテクスチュアデータ処理装置。
【請求項7】
テクスチュアデータ生成情報に基づいて隣り合う制御点間でテクスチュアデータを生成し所定の方向に連続して配置される制御点を含むテクスチュアデータに基づく、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データでありエンボス版の製造に用いられるハイトデータのシームレス処理を行うテクスチュアデータ処理装置を用いたテクスチュアデータ処理方法であって、
前記ハイトデータを所定の範囲で切り出し、前記所定の範囲のハイトデータのテクスチュアデータに含まれる制御点を抽出する制御点抽出ステップと、
前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部の制御点を、他方の端部の制御点の前記所定の方向に沿った隣であって前記所定の範囲の他方の端部の外に付加し、前記制御点、および前記付加された制御点により生成されるテクスチュアデータに基づくハイトデータを生成する制御点付加ステップと、
前記ハイトデータの画素値に応じて、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたハイトデータで前記所定の範囲の一方の端部で対応する位置のハイトデータを上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたハイトデータで前記所定の範囲の他方の端部で対応する位置のハイトデータを上書きするテクスチュア上書きステップと、
を具備することを特徴とするテクスチュアデータ処理方法。
【請求項8】
テクスチュアデータ生成情報に基づいて隣り合う制御点間でテクスチュアデータを生成し所定の方向に連続して配置される制御点を含むテクスチュアデータに基づく、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データでありエンボス版の製造に用いられるハイトデータのシームレス処理を行うテクスチュアデータ処理装置を用いたテクスチュアデータ処理方法であって、
前記ハイトデータを所定の範囲で切り出し、前記所定の範囲のハイトデータのテクスチュアデータに含まれる制御点を抽出する制御点抽出ステップと、
前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部の制御点を、他方の端部の制御点の前記所定の方向に沿った隣であって前記所定の範囲の他方の端部の外に付加し、前記制御点、および前記付加された制御点によりテクスチュアデータを生成する制御点付加ステップと、
前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたテクスチュアデータを、前記所定の範囲の一方の端部で対応する位置に上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたテクスチュアデータを、前記所定の範囲の他方の端部で対応する位置に上書きし、テクスチュアデータによるハイトデータを生成するテクスチュア上書きステップと、
を具備することを特徴とするテクスチュアデータ処理方法。
【請求項9】
コンピュータを請求項1から請求項8のいずれかに記載のテクスチュアデータ処理装置として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
テクスチュアデータ生成情報に基づいて隣り合う制御点間でテクスチュアデータを生成し所定の方向に連続して配置される制御点を含むテクスチュアデータに基づく、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データであるハイトデータのシームレス処理を行い、シームレス処理されたハイトデータを用いてエンボス版の製造を行うエンボス版製造装置であって、
前記ハイトデータを所定の範囲で切り出し、前記所定の範囲のハイトデータのテクスチュアデータに含まれる制御点を抽出する制御点抽出手段と、
前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部の制御点を、他方の端部の制御点の前記所定の方向に沿った隣であって前記所定の範囲の他方の端部の外に付加し、前記制御点、および前記付加された制御点により生成されるテクスチュアデータに基づくハイトデータを生成する制御点付加手段と、
前記ハイトデータの画素値に応じて、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたハイトデータで前記所定の範囲の一方の端部で対応する位置のハイトデータを上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたハイトデータで前記所定の範囲の他方の端部で対応する位置のハイトデータを上書きするテクスチュア上書き手段と、
前記テクスチュア上書き手段により生成されたハイトデータを複数並べて出力するハイトデータ出力手段と、
前記ハイトデータ出力手段により出力されたハイトデータに基づいて、テクスチュアの表面形状をエンボス版シリンダに形成したエンボス版を製造するエンボス版製造手段と、
を具備することを特徴とするエンボス版製造装置。
【請求項11】
テクスチュアデータ生成情報に基づいて隣り合う制御点間でテクスチュアデータを生成し所定の方向に連続して配置される制御点を含むテクスチュアデータに基づく、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データであるハイトデータのシームレス処理を行い、シームレス処理されたハイトデータを用いてエンボス版の製造を行うエンボス版製造装置であって、
前記ハイトデータを所定の範囲で切り出し、前記所定の範囲のハイトデータのテクスチュアデータに含まれる制御点を抽出する制御点抽出手段と、
前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部の制御点を、他方の端部の制御点の前記所定の方向に沿った隣であって前記所定の範囲の他方の端部の外に付加し、前記制御点、および前記付加された制御点によりテクスチュアデータを生成する制御点付加手段と、
前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたテクスチュアデータを、前記所定の範囲の一方の端部で対応する位置に上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたテクスチュアデータを、前記所定の範囲の他方の端部で対応する位置に上書きし、テクスチュアデータによるハイトデータを生成するテクスチュア上書き手段と、
前記テクスチュア上書き手段により生成されたハイトデータを複数並べて出力するハイトデータ出力手段と、
前記ハイトデータ出力手段により出力されたハイトデータに基づいて、テクスチュアの表面形状をエンボス版シリンダに形成したエンボス版を製造するエンボス版製造手段と、
を具備することを特徴とするエンボス版製造装置。
【請求項12】
前記エンボス版製造手段は、前記エンボス版シリンダに対して、打刻刃またはレーザビームを用いて前記テクスチュアの表面形状を彫刻する彫刻手段であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載のエンボス版製造装置。
【請求項13】
前記エンボス版製造手段は、
レジスト層をコーティングした前記エンボス版シリンダ、または該エンボス版シリンダへの露光処理に用いるフォトマスクに対して、前記ハイトデータに基づく露光パターンを形成するパターン露光手段と、
前記露光パターンが形成された前記エンボス板シリンダ、または前記フォトマスクに対して腐食処理を施す腐食手段と、
を含むことを特徴とする請求項10または請求項11に記載のエンボス版製造装置。
【請求項14】
テクスチュアデータ生成情報に基づいて隣り合う制御点間でテクスチュアデータを生成し所定の方向に連続して配置される制御点を含むテクスチュアデータに基づく、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データであるハイトデータのシームレス処理を行い、シームレス処理されたハイトデータを用いてエンボス版の製造を行うエンボス版製造装置を用いたエンボス版製造方法であって、
前記ハイトデータを所定の範囲で切り出し、前記所定の範囲のハイトデータのテクスチュアデータに含まれる制御点を抽出する制御点抽出ステップと、
前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部の制御点を、他方の端部の制御点の前記所定の方向に沿った隣であって前記所定の範囲の他方の端部の外に付加し、前記制御点、および前記付加された制御点により生成されるテクスチュアデータに基づくハイトデータを生成する制御点付加ステップと、
前記ハイトデータの画素値に応じて、前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたハイトデータで前記所定の範囲の一方の端部で対応する位置のハイトデータを上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたハイトデータで前記所定の範囲の他方の端部で対応する位置のハイトデータを上書きするテクスチュア上書きステップと、
前記テクスチュア上書き手段により生成されたハイトデータを複数並べて出力するハイトデータ出力ステップと、
前記ハイトデータ出力手段により出力されたハイトデータに基づいて、テクスチュアの表面形状をエンボス版シリンダに形成したエンボス版を製造するエンボス版製造ステップと、
を具備することを特徴とするエンボス版製造方法。
【請求項15】
テクスチュアデータ生成情報に基づいて隣り合う制御点間でテクスチュアデータを生成し所定の方向に連続して配置される制御点を含むテクスチュアデータに基づく、テクスチュアの高さ情報を画素値で表す画像データであるハイトデータのシームレス処理を行い、シームレス処理されたハイトデータを用いてエンボス版の製造を行うエンボス版製造装置を用いたエンボス版製造方法であって、
前記ハイトデータを所定の範囲で切り出し、前記所定の範囲のハイトデータのテクスチュアデータに含まれる制御点を抽出する制御点抽出ステップと、
前記所定の範囲の前記所定の方向に沿った一方の端部の制御点を、他方の端部の制御点の前記所定の方向に沿った隣であって前記所定の範囲の他方の端部の外に付加し、前記制御点、および前記付加された制御点によりテクスチュアデータを生成する制御点付加ステップと、
前記所定の範囲の他方の端部の外に生成されたテクスチュアデータを、前記所定の範囲の一方の端部で対応する位置に上書きし、前記所定の範囲の一方の端部の外に生成されたテクスチュアデータを、前記所定の範囲の他方の端部で対応する位置に上書きし、テクスチュアデータによるハイトデータを生成するテクスチュア上書きステップと、
前記テクスチュア上書き手段により生成されたハイトデータを複数並べて出力するハイトデータ出力ステップと、
前記ハイトデータ出力手段により出力されたハイトデータに基づいて、テクスチュアの表面形状をエンボス版シリンダに形成したエンボス版を製造するエンボス版製造ステップと、
を具備することを特徴とするエンボス版製造方法。
【請求項16】
請求項10または請求項11に記載のエンボス版製造装置によって製造されたエンボス版を用いてシート表面形状を加工したシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−148184(P2011−148184A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10991(P2010−10991)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】