説明

テトラアミノベンゼン誘導体の製造方法およびその中間体

【課題】テトラアミノベンゼン誘導体の提供。
【解決手段】2,5−ジハロゲノ−p−フェニレンジアミン類をベンジル化して得られる1,4−ビス(ジベンジルアミノ)−2,5−ジハロゲノベンゼン類を、Pd触媒の存在下、芳香族アミンと反応させて、式3


[Bnはベンジル基、Ar,Arは互いに同一でも異なっていてもよく、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基または2−アントラセニル基を表す。]で示される1,4−ビス(ジベンジルアミノ)−2,5−ジアミノベンゼン誘導体とし、さらに脱ベンジル化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱、高強力繊維として知られているポリベンズイミダゾール(PBI)等の合成繊維原料等として有用なテトラアミノベンゼン誘導体の製造方法およびその中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラアミノベンゼン誘導体に関して、4−ニトロ−2,5−ジフルオロアニリンを原料として、過酸化水素によりアミノ基を酸化し、次いで1,4−ジフルオロ−2,5−ジニトロベンゼンをアニリンと反応させて、N,N’−ジフェニル−1,4−ジアミノ−2,5−ジニトロベンゼンを得、さらにニトロ基をアミノ基に還元して、N,N−ジフェニル−1,2,4,5−テトラアミノベンゼンを製造するという報告がある(例えば、非特許文献1参照)。しかし、この方法では、原料が高価であること、アミノ基の酸化反応に90%過酸化水素水を使用しなければならず、非常に危険であること等の欠点があり、経済的且つ工業的に極めて不利である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Material Research Society Symposium Proceeding, Vol.134,p113−140(1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のことから、テトラアミノベンゼン誘導体を安価に、且つ高い収率で合成する方法とそのプロセスの開発が望まれていた。本発明は、経済性に優れ、高収率で合成可能なテトラアミノベンゼン誘導体の新規な製造方法とその合成中間体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、新規なテトラアミノベンゼン誘導体の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、下記一般式(1)で表されるジハロゲノフェニレンジアミン類のアミノ基をベンジル基で保護し、次いで、ベンジル基で保護された下記一般式(2)で表されるジハロゲノフェニレンジアミン類をパラジウム触媒の存在下、芳香族アミンと反応させ、さらに、一般式(3)で表されるテトラアミノベンゼン類を脱ベンジル化することにより、下記一般式(4)で表されるテトラアミノベンゼン類の製造方法を提供するものである。
【0007】
【化1】

[式中、Xはハロゲン原子を表す。]
【0008】
【化2】

[式中、Bnはベンジル基、Xはハロゲン原子を表す。]
【0009】
【化3】

[式中、Bnはベンジル基、Ar,Arは互いに同一でも異なっていてもよく、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基または2−アントラセニル基を表す。]
【0010】
【化4】

[式中、Ar,Arは互いに同一でも異なっていてもよく、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基または2−アントラセニル基を表す。]
また、本発明は、上記一般式(2)で表される化合物、上記一般式(3)で表される化合物を提供するものである。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の反応である一般式(1)で表される化合物から一般式(2)で表される化合物の合成について説明する。反応器に一般式(1)で表されるジハロゲノフェニレンジアミン類、ベンジル化剤、塩基性物質および溶媒を仕込み、撹拌下に所定温度で所定時間反応させることにより、一般式(2)で表される化合物を得ることができる。ベンジル基でアミノ基を保護した一般式(2)で表されるジハロゲノフェニレンジアミン類は、通常の方法、例えば再結晶などにより容易に分離精製することができる。
【0013】
本発明において使用されるベンジル化剤としては、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、ベンジルヨージド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
これら各種ベンジル化剤を前記ジハロゲノフェニレンジアミン類に反応させる本発明の方法において、ベンジル化剤の使用量は、2,5−ジハロゲノ−p−フェニレンジアミンに対し4〜8倍モルの範囲が好ましい。4倍モルより少ない場合は、原料であるジハロゲノフェニレンジアミン類が未反応で残存し、8倍モルより多い場合は、大量のベンジル化剤が残存するため、効率的でない。
【0015】
本発明において使用される溶媒としては、メチレンクロライド、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたはジメチルホルムアミド等が挙げられ、好ましくはジメチルホルムアミドであるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
使用される塩基性物質としては、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属重炭酸塩のような酸受容体が挙げられる。
【0017】
反応温度は、0〜100℃、好ましくは50〜70℃の範囲であるが、この範囲に限定されるものではない。
【0018】
反応時間は、原料であるジハロゲノフェニレンジアミン類、塩基の量および反応温度等によって一概には言えないが、数分〜72時間の範囲から選択することができる。
【0019】
本発明における反応は、常圧下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことも、また加圧下で行うこともできる。
【0020】
本発明の反応である一般式(2)で表される化合物から一般式(3)で表される化合物の合成について説明する。一般式(2)で表されるベンジル化されたジハロゲノフェニレンジアミン類と芳香族アミンを、塩基およびパラジウム触媒の存在下に反応させることにより、一般式(3)で表される化合物を容易に合成することができる。そして、通常の方法、例えば再結晶などにより容易に分離精製することができる。
【0021】
本発明において使用される芳香族アミン(Ar−NHおよびAr−NH)としては、特に限定されるものではないが、Ar,Arは互いに同一でも異なっていてもよく、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基または2−アントラセニル基である芳香族アミンが好ましく使用される。
【0022】
芳香族アミンの使用量は、ベンジル化されたジハロゲノフェニレンジアミン類に対し、3〜20倍モルの範囲が好ましい。3倍モルより少ない場合は、ベンジル化されたジハロゲノフェニレンジアミン類が未反応で残存し、得られた芳香族二級アミンがさらに反応系中のハロゲン化アリールと反応して、目的物の選択性が低下する原因となる。また、20倍モルより多い場合は、大量の芳香族アミンが残存するため効率的でなく、反応終了後の後処理操作も煩雑になる。
【0023】
本発明において使用される塩基としては、無機塩基および/または有機塩基から選択すればよく、特に限定されるものではないが、より好ましくは、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウム−tert−ブトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシドであり、それらを反応系にそのまま加えても、またアルカリ金属、水素化アルカリ金属もしくは水酸化アルカリ金属とアルコールからその場で調製したものを反応系に供してもよい。使用される塩基の量は、反応で生成するハロゲン化水素に対し、0.5倍モル以上使用することが好ましい。塩基の量が0.5倍モル未満では、一般式(3)で表されるテトラアミノベンゼン類の収率が低くなる場合がある。また、塩基を大過剰に加えても一般式(3)で表されるテトラアミノベンゼン類の収率に変化はないが、反応終了後の後処理操作が煩雑になることから、より好ましい塩基の量は1〜5倍モルの範囲である。
【0024】
また、本発明において使用されるパラジウム触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム等の4価パラジウム化合物類、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウム(II)アセチルアセトナート、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)、パラジウム(II)トリフルオロアセテート等の2価パラジウム化合物類、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等の0価パラジウム化合物類等が挙げられる。
【0025】
パラジウム化合物の使用量は、特に限定されるものではないが、上記一般式(2)で表されるジハロゲノフェニレンジアミン類1モルに対し、パラジウム換算で通常0.000001〜20モル%の範囲である。パラジウム化合物が上記範囲内であれば、高い選択率でテトラアミノベンゼン誘導体を合成することができるが、活性をさらに向上させたり、高価なパラジウム化合物を使用したりすることから、より好ましいパラジウム化合物の使用量は、ジハロゲノフェニレンジアミン類1モルに対し、パラジウム換算で0.0001〜5モル%の範囲である。
【0026】
本発明において使用されるパラジウム触媒に関し、三級ホスフィンを触媒配位子として併用すると、さらに効率的に反応を進行させることができる。本発明において、パラジウム触媒と組み合わせて使用される三級ホスフィンとしては、特に限定されるものではなく、例えば、トリエチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−iso−ブチルホスフィン、トリ−sec−ブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類が挙げられるが、アリールアミン誘導体の選択性を向上させることから、トリ−tert−ブチルホスフィンがより好ましい。本発明において、三級ホスフィンは、パラジウム触媒に対して通常0.01〜10000倍モルの範囲で使用すればよい。三級ホスフィンの使用量が上記範囲内であれば、一般式(3)で表されるテトラアミノベンゼン誘導体の選択率に変化はないが、活性をさらに向上させたり、高価な三級ホスフィンを使用したりすることから、より好ましい三級ホスフィンの使用量は、パラジウム触媒に対して0.1〜10倍モルの範囲である。本発明においては、通常、パラジウム化合物と三級ホスフィンを組み合わせたものを触媒として使用する。添加方法としては、反応系にそれぞれ単独で加えても、予め錯体の形に調製してから添加してもよい。
【0027】
本発明における反応は、通常、不活性溶媒存在下で行う。使用される溶媒としては、本反応を著しく阻害しない溶媒であればよく、特に限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶媒や、ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン、ジオキサン等のエーテル系有機溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホトリアミド等を挙げることができる。これらのうちより好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶媒である。
【0028】
本発明における反応は、常圧下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことも、また加圧下で行うこともできる。
【0029】
本発明における反応は、反応温度20〜300℃の範囲、より好ましくは50〜200℃の範囲で行われるが、この範囲に限定されるものではない。
【0030】
本発明における反応時間は、ベンジル化されたジハロゲノフェニレンジアミン類、塩基、パラジウム触媒の量および反応温度等によって一概には言えないが、数分〜72時間の範囲から選択することができる。
【0031】
本発明の反応である一般式(3)で表される化合物から一般式(4)で表される化合物の合成について説明する。反応器に、一般式(3)で表されるテトラアミノベンゼン誘導体、パラジウム触媒および溶媒を仕込み、水素雰囲気下、撹拌下に所定温度で所定時間反応させる。反応後、反応液からパラジウム触媒を除去する。脱ベンジル化した一般式(4)で表されるテトラアミノベンゼン誘導体は、通常の方法、例えば再結晶などにより容易に分離精製することができる。
【0032】
本発明において使用される溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族有機溶媒、ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタンなどのエーテル系有機溶媒が挙げられ、好ましくはテトラハイドロフランであるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
使用されるパラジウム触媒は、均一系触媒でも不均一系触媒でもよく、特に限定されるものではないが、公知の担持金属触媒も用いることができる。担体としては、珪藻土、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、マグネシア、ジルコニア、チタニア、活性炭が挙げられるが、特に活性炭が好ましい。
【0034】
パラジウム触媒の使用量は、反応条件により異なるが、一般式(3)で表されるテトラアミノベンゼン誘導体に対して、1〜5%金属−担持触媒として0.1〜30重量%、好ましくは1〜10重量%用いることができる。
【0035】
反応温度は、0〜100℃、好ましくは40〜60℃の範囲であるが、この範囲に限定されるものではない。
【0036】
本発明における反応は、常圧、水素下で行われるが、窒素、アルゴン等の不活性ガスを含ませることも可能であり、また加圧下で行うこともできる。
【0037】
反応時間は、一般式(3)で表されるテトラアミノベンゼン誘導体、触媒量および反応温度等によって一概には言えないが、数時間〜72時間の範囲から選択することができる。
【0038】
一般式(4)で表されるテトラアミノベンゼン誘導体は、脱ベンジル反応後、塩酸を作用させて、塩酸塩として遊離させることができる。使用する塩酸は市販の濃塩酸(37%)でもよく、その使用量は、テトラアミノベンゼン誘導体に対して、4倍モル以上必要であるが、好ましくは8倍モル以上である。
【0039】
また、一般式(4)で表されるテトラアミノベンゼン誘導体の合成に有用な中間体である、下記一般式(2)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物は、本発明に含まれる。
【0040】
【化5】

上記一般式(2)中、Xはハロゲン原子を示し、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれかである。
【0041】
さらに、一般式(2)で表される化合物の具体例を以下に例示する。
【0042】
【化6】

【0043】
【化7】

上記一般式(3)中、Ar,Arは互いに同一でも異なっていてもよく、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基または2−アントラセニル基である。なお、一般式(3)で表される化合物の好ましい具体例を以下に例示するが、本発明の化合物はこれらに限定されるものではない。
【0044】
【化8】

【発明の効果】
【0045】
本発明によるテトラアミノベンゼン誘導体の新規な製造方法により、高収率且つ経済的に一般式(4)で表されるテトラアミノベンゼン誘導体を製造することができる。また、本発明の化合物は、テトラアミノベンゼン誘導体の合成中間体として有用である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。生成物の分析には次の機器を使用した。
【0047】
核磁気共鳴分析装置:バリアン社製 Gemini200
質量分析装置:日立製作所製 M−80B(測定方法:FD−MS分析)
液体クロマトグラフィー:東ソー製 カラム(ODS−80Ts、4.6mmID×250mm)を用い、メタノール/テトラヒドロフラン=9/1(v/v)を溶出溶媒として、流量1.0mL/分、カラム温度40℃で通液し、東ソー製 紫外可視検出器(UV−8020)にて検出した。
【0048】
また、テトラアミノベンゼン誘導体のうち、塩酸塩については、東ソー製 カラム(ODS−80Ts、4.6mmID×250mm)を用い、アセトニトリル/水=2/1(v/v)を溶出溶媒として、流量0.5mL/分、カラム温度40℃で通液し、東ソー製 紫外可視検出器(UV−8010)にて検出した。
【0049】
実施例1
1,4−ビス(ジベンジルアミノ)−2,5−ジクロロベンゼンの合成
500mLの四つ口フラスコに、2,5−ジクロロ−p−フェニレンジアミン 17.7g(0.10mol)、ベンジルブロミド82.1g(0.48mol)、炭酸カリウム66.3g(0.48mol)、N,N−ジメチルホルムアミド 150gを仕込んだ。窒素置換後、60℃で16時間反応させた。室温まで冷却後、反応液を濾過し、得られた白色固体をトルエン500gに溶解させ、純水500gでトルエン溶液を洗浄した。トルエン溶液を濃縮し、白色固体42.2gを得、さらにo−キシレン 150gから再結晶して、1,4−ビス(ジベンジルアミノ)−2,5−ジクロロベンゼンの白色固体を37.5g得た。生成物の分析(液体クロマトグラフィー分析)により、純度は97.7%であった。
【0050】
FD−MS:536
H−NMR(CDCl):7.11−7.35(20H m)、6.91(2H s)、4.10(8H s)
実施例2
,N,N,N−テトラベンジル−N,N−ジフェニル−1,2,4,5−テトラアミノベンゼンの合成
200mLの四つ口フラスコに、1,4−ビス(ジベンジルアミノ)−2,5−ジクロロベンゼン 11.0g(20.5mmol)、アニリン18.5g(0.20mol)、ナトリウム−tert−ブトキシド 6.0g(62mmol)、o−キシレン 80gを仕込んだ。次いで、酢酸パラジウム90mg(0.40mmol)とトリ−tert−ブチルホスフィン 320mg(1.60mmol)とをo−キシレン 5.0gと共に加え、還流下、15時間反応させた。室温まで冷却後、反応液を水100mLに添加し、トルエン100mLで2回抽出した。テトラヒドロフランを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。さらに、トルエン50gから再結晶し、N,N,N,N−テトラベンジル−N,N−ジフェニル−1,2,4,5−テトラアミノベンゼンの白色固体を11.9g得た。生成物の分析(液体クロマトグラフィー分析)により、純度は98.6%であった。
【0051】
FD−MS:650
13C−NMR(CDCl):144.30、137.65、136.57、131.39、129.30、129.03、128.22、127.12、119.62、116.08、113.90、56.99
実施例3
,N−ジフェニル−1,2,4,5−テトラアミノベンゼンとその四塩酸塩の合成
200mLの四つ口フラスコに、N,N,N,N−テトラベンジル−N,N−ジフェニル−1,2,4,5−テトラアミノベンゼン 1.0g(1.5mmol)、10%Pd/C(エヌイーケムキャット社製 PE−type)0.10g、テトラヒドロフラン40gを仕込んだ。窒素置換し、さらに水素置換した。水素雰囲気下、50℃で40時間反応させた。反応終了後、反応液を濾過して固形物を除き、真空減圧下で溶媒を留去して、残渣を得た。脱気したトルエン50mLから再結晶して、N,N−ジフェニル−1,2,4,5−テトラアミノベンゼンの微灰色固体を0.17g得た。生成物の分析(液体クロマトグラフィー分析)により、純度は93.5%であった。この固体をテトラヒドロフラン100mLに溶解させ、濃塩酸(37%)を10mL加えた。析出した結晶を濾別後、乾燥し、N,N−ジフェニル−1,2,4,5−テトラアミノベンゼン四塩酸塩を0.20g得た。生成物の分析(液体クロマトグラフィー分析)により、純度は99.7%であった。
【0052】
FD−MS:290
13C−NMR(DMSO−d):146.33、133.24、128.51、124.48、116.85、113.97、111.44

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

[式中、Xはハロゲン原子を表す。]
で示される2,5−ジハロゲノ−p−フェニレンジアミン類をベンジル化して得られる下記一般式(2)
【化2】

[式中、Bnはベンジル基、Xはハロゲン原子を表す。]
で示される1,4−ビス(ジベンジルアミノ)−2,5−ジハロゲノベンゼン類を、パラジウム触媒の存在下、芳香族アミンと反応させて、下記一般式(3)
【化3】

[式中、Bnはベンジル基、Ar,Arは互いに同一でも異なっていてもよく、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基または2−アントラセニル基を表す。]
で示される1,4−ビス(ジベンジルアミノ)−2,5−ジアミノベンゼン誘導体とし、さらに脱ベンジル化することを特徴とする下記一般式(4)
【化4】

[式中、Ar,Arは互いに同一でも異なっていてもよく、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基または2−アントラセニル基を表す。]
で示されるテトラアミノベンゼン誘導体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の一般式(4)で示されるテトラアミノベンゼン誘導体に塩酸を作用させることを特徴とするテトラアミノベンゼン誘導体塩酸塩の製造方法。
【請求項3】
下記一般式(2)で示されるベンジル化されたジハロゲノフェニレンジアミン誘導体。
【化5】

[式中、Bnはベンジル基、Xはハロゲン原子を表す。]
【請求項4】
下記一般式(3)で示されるテトラアミノベンゼン誘導体。
【化6】

[式中、Bnはベンジル基、Ar,Arは互いに同一でも異なっていてもよく、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基または2−アントラセニル基を表す。]
【請求項5】
一般式(3)において、Ar,Arが共にフェニル基であることを特徴とする請求項4に記載のテトラアミノベンゼン誘導体。

【公開番号】特開2011−42607(P2011−42607A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190878(P2009−190878)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】