説明

テンショナー

【課題】使い勝手が良く、巻掛条体を適切な緊張状態に常に維持可能なテンショナーを提供する。
【解決手段】円盤部13と、円盤部13の一面13a側で円盤部13の中心から偏心位置に突設されると共にテンション付加用の回転体Kが取着される第1軸部11と、円盤部13の他面13b側で第1軸部11と異なる偏心位置に突設された第2軸部12と、を有する偏心構造体1を備え、偏心構造体1が第2軸部12の軸心L12回りに回動・固定自在に取着されるベース部材2を具備し、さらに、ベース部材2にスライド・固定自在に取着され、円盤部13の外周面13cに当接して、回転体Kが押圧する巻掛条体からの外力によって偏心構造体1が回動するのを防止するストッパー部材5を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンショナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チェーン等の巻掛条体を緊張状態にするテンショナーは、巻掛条体にテンションを付加する回転体と、その回転体を所定の中心位置から偏心位置で支持する偏心構造体と、を備え、偏心構造体を回動させることで、回転体を巻掛条体に押圧して、その巻掛条体を適切な緊張状態にするものがあった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−303954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、偏心構造体を用いて回転体を押圧させるテンショナーは、調整等の使い勝手が良いといった利点があるものの、巻掛条体からの外力を回転体が受けた場合に、偏心構造体が回動して、巻掛条体から回転体が逃げることがあり、適切なテンションを常に付加できないという問題があった。また、偏心構造体は、製造に時間や費用がかかるといった問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、使い勝手が良く、巻掛条体を適切な緊張状態に常に維持可能なテンショナーの提供を目的とする。さらに、別の目的として、容易に製造可能なテンショナーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のテンショナーは、円盤部と、該円盤部の一面側で該円盤部の中心から偏心位置に突設されると共にテンション付加用の回転体が取着される第1軸部と、上記円盤部の他面側で該第1軸部と異なる偏心位置に突設された第2軸部と、を有する偏心構造体を備え、上記偏心構造体が上記第2軸部の軸心回りに回動・固定自在に取着されるベース部材を具備し、さらに、上記ベース部材にスライド・固定自在に取着され、上記円盤部の外周面に当接して、上記回転体が押圧する巻掛条体からの外力によって上記偏心構造体が回動するのを防止するストッパー部材を備えたものである。
また、上記ベース部材は、上記ストッパー部材が取着される台座部を有し、上記ストッパー部材は、上記台座部を抱き込み状とする横断面コの字状に形成されているものである。
また、上記ベース部材に上記ストッパー部材を固定するための2本の固定ボルト部材と、該2本の固定ボルト部材が夫々挿通する貫孔を有する矩形状のワッシャー部材と、を備え、上記ワッシャー部材は、4つの角部に、夫々、上記ストッパー部材に食い付くための爪部を有するものである。
【0007】
また、円盤部と、該円盤部の一面側で該円盤部の中心から偏心位置に突設されると共にテンション付加用の回転体が取着される第1軸部と、上記円盤部の他面側で該第1軸部と異なる偏心位置に突設された第2軸部と、を有する偏心構造体を備え、上記円盤部は、上記第1軸部が突設される第1円板部材と、上記第2軸部が突設される第2円板部材と、から成り、上記第1軸部は、基端側に第1段差部をもって形成された第1小径軸部を有する第1軸部材から成り、上記第2軸部は、基端側に第2段差部をもって形成された第2小径軸部を有する第2軸部材から成り、上記第1円板部材に上記第1小径軸部が挿入される第1孔部が設けられると共に、上記第2円板部材に上記第2小径軸部が挿入される第2孔部が設けられ、さらに、上記第1円板部材に上記第2小径軸部を露出させる第1貫通孔部が貫設されると共に、上記第2円板部材に上記第1小径軸部を露出させる第2貫通孔部が設けられ、上記第2貫通孔部内で上記第1小径軸部を溶接した第1溶接固着部と上記第1段差部との挟持力、及び、上記第1貫通孔部内で上記第2小径軸部を溶接した第2溶接固着部と上記第2段差部との挟持力、によって、上記第1円板部材と上記第2円板部材を圧接して固着したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、チェーンやベルト等の巻掛条体からの外力(正逆反転時の衝撃力や押圧に対する反力)を受けても、偏心構造体が回動するのを防止でき、巻掛条体を適切な緊張状態に常時維持できる。容易かつ迅速にテンション(緊張力)を微調整できる。また、製造が容易であって、製作費用を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の一形態を示す正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】要部断面側面図である。
【図4】ワッシャー部材の一例を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は(a)のB−P−B断面図である。
【図5】偏心構造体の一例を示す断面側面図である。
【図6】第1・第2円板部材の一例を示す正面図である。
【図7】第1・第2円板部材の一例を示す断面側面図である。
【図8】偏心構造体の製造方法を説明する要部拡大断面図である。
【図9】作用説明図である。
【図10】短円筒部材の一例を示す断面側面図である。
【図11】要部拡大断面図である。
【図12】作用説明図である。
【図13】使用状態説明図である。
【図14】使用状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明のテンショナーは、周回駆動するように懸架されたチェーンやベルト等の巻掛条体に適切な緊張力を維持させる(テンションを付与する)ものである。
図1及び図3に於て、スプロケット等のテンション付加用の回転体Kが回転自在に取着される第1軸部11と、第1軸部11が一面(一端面)13aに突設される円盤部13と、円盤部13の他面(他端面)13bから突出する第2軸部12と、を有する偏心構造体1を備えている。
【0011】
図1乃至図4に於て、第1軸部11が挿通すると共に回転体Kが外嵌状に取着する段付の短円筒部材3と、偏心構造体1が第2軸部12の軸心(回動軸心)L12廻りに回動自在に取着されるベース部材2と、ベース部材2にスライド自在に取着されるストッパー部材5と、ストッパー部材5をベース部材2に固定するための2本の固定ボルト部材6,6と、2本の固定ボルト部材6,6の頭部とストッパー部材5の間に1枚配設されるワッシャー部材7と、ベース部材2の背面側から偏心構造体1を固定するための固着具8と、を備えている。
【0012】
図1と図3及び図5に於て、偏心構造体1は、第1軸部11が円盤部13の中心から偏心位置に突設されると共に第2軸部12が第1軸部11と異なる偏心位置に突設されている。
第1軸部11と第2軸部12は、相互に平行に配設され、夫々の外周は雄ねじに形成されている。
【0013】
また、円盤部13は、円盤部13の中心を挟んで対称位置に配設される2つ(複数)のU字状の切欠部13d,13dを有している。
切欠部13d,13dは、外周面13cからラジアル方向に切り欠かれ、外周面13c側、かつ、一面13a側及び他面13b側に開口している。切欠部13dは、六角レンチ等の調整用工具の引掛用であって、偏心構造体1を回動させる際に、調整用工具を差し込んで(係止させて)ハンドル部を形成することで、容易に偏心構造体1を回動させることができると共に、固定の際に固着具8の締め付け力で偏心構造体1が回動するのを(共廻りを)使用者が押さえることができる。また、切欠部13dは正面から見て(図1のように見て)容易に位置を確認でき、使い勝手を向上させている。
【0014】
図1乃至図3に於て、ベース部材2は、薄板状であって、偏心構造体1とストッパー部材5が取着される横断面コの字状の台座部21と、台座部21の長手方向側縁部21a,21aから外方へ突出する一対の鍔部29,29と、を有している。台座部21は第1軸部11と同方向に一対の鍔部29,29より突出しているとも言える。ベース部材2は、2〜5mm薄板材をプレス加工にて台座部21及び鍔部29を一体状に(1枚板で)形成している。
【0015】
台座部21は、ストッパー部材5及び偏心構造体1取付用の平坦面を形成する取付壁部21cを有し、その取付壁部21cに、偏心構造体1の第2軸部12が差し込まれる取付貫孔22と、2本の固定ボルト部材6,6が、夫々螺着する固定用ねじ孔26,26と、が形成されている。取付貫孔22と2つの固定用ねじ孔26,26の中心は、正面視で(図1に示すように)、台座部21の幅方向の中心線L2上に(直線線状)配設している。
【0016】
ベース部材2の取付貫孔22を挿通した第2軸部12の雄ねじ部に、ベース部材2の背面からナット等の固着具8を螺着することで、偏心構造体1を固定し、固着具8を緩めることで、偏心構造体1を第2軸部12の軸心L12廻りに回動自在としている。
【0017】
鍔部29,29は、巻掛条体が設けられる装置やL字状のアタッチメント等の相手部材に取着するための取付ボルト部材が挿通可能な長孔29aが設けられている。長孔29aは、1つの鍔部29に長手方向に2箇所設けられ、ベース部材2に合計で4箇所設けられている。
【0018】
図1乃至図3に於て、ストッパー部材5は、薄板状であって、ベース部材2の表面側(第1軸部11の突出方向側)に配設されている。ベース部材2の取付壁部21cに平行状の平板部51と、台座部21の両側壁部21b,21bに沿うように平板部51の両側縁部で折曲げられた抱き込み用の片部52,52と、スライド方向先端側で平板部51に対して直角状に突設され円盤部13の外周面13cに当接して廻り止めを行う当り部53と、を有している。当り部53は、円筒部13の一面13aより(第1軸部11の突出方向へ)突出しないように設けられ、短円筒部材3との干渉が防止され、短円筒部材3を様々なものに交換可能(自在)としている。
【0019】
ストッパー部材5は、1〜5mmの1枚の薄板材をプレス加工して折曲げて、平板部51と一対の片部52,52と、当り部53と、を一体状に(1枚板で)形成している。縦断面L字に形成されると共に台座部21を抱き込み状とする横断面コの字状に形成されている。
また、平板部51には、2本の固定ボルト部材6,6のねじ部が挿通すると共に、ベース部材2の中心線L2に沿って形成される位置調整用の長円孔51aが貫設されている。
【0020】
図1乃至図4に於て、ワッシャー部材7は、2本の固定ボルト部材6,6のねじ部が夫々挿通する貫孔76,76を有する矩形状である。さらに、具体的には1〜5mmの薄板材をプレス加工して形成された薄板状かつ正面視長方形状である。固定ボルト部材6,6の頭部が当接する平板部70と、中心線L2に沿って配設された2つの貫孔76,76と、4つ角に配設された爪部75,75,75,75と、を有している。爪部75は、ストッパー部材5へ食い込ませる方向、かつ、幅方向内方及び長手方向内方に、折曲げられている。
【0021】
図5乃至図7に於て、円盤部13は、薄板状の第1円板部材81と薄板状の第2円板部材82とから成る。第1軸部11は、基端側に第1段差部61cをもって形成された第1小径軸部61aを有すると共に第1段差部61cより先端側が雄ねじに形成された第1軸部材61から成る。第2軸部12は、基端側に第2段差部62cをもって形成された第2小径軸部62aを有すると共に第2段差部62cより先端側が雄ねじに形成された第2軸部材62から成る。
【0022】
第1円板部材81と第2円板部材82は同一形状である。第1・第2円板部材81,82は、その中心S1,S2から偏心した位置に第1・第2孔部81a,82aを有し、第1・第2孔部81a,82aと異なる偏心位置に第1・2貫通孔81b,82bを有している。さらに、第1・第2貫通孔81b,82bは、第1・第2円板部材81,82の一端面側の内径を拡径状にする第1・第2テーパー部81c,82cを有している。また、中心S1,S2を挟んで対称に配設された2つのU字状の第1・第2切欠部81d,82dを有している。
【0023】
偏心構造体1の製造方法は、第1円板部材81と第2円板部材82をプレス機にて打ち抜いて(プレス加工で)形成する。そして、図8に示すように、第1孔部81aと第2貫通孔82bとが同心状に連通するように、かつ、第2孔部82aと第1貫通孔81bとが同心状に連通するように、重ね合わせる。また、第1切欠部81d,81dと、第2切欠部82d,82dとが一致するように重ね合わせる。
【0024】
そして、第1軸部材61の第1段差部61cが第1円板部材81の端面(円盤部13の一面13aとなる面)に当接するまで、第1小径軸部61aを、第1孔部81aに挿入する。第1小径軸部61aを第2貫通孔82bから露出させる。
また、第2軸部材62の第2段差部62cが第2円板部材82の端面(円盤部13の他面13bとなる面)に当接するまで、第2小径軸部62aを、第2孔部82aに挿入する。挿入された第2小径軸部62aを第1貫通孔81bから露出させる。
【0025】
その後、図9に示すように、第1小径軸部61aを第2貫通孔82b内で第2円板部材82に溶接して第1溶接固着部Y1を形成すると共に、第2小径軸部62aを第1貫通孔81b内で第1円板部材81に溶接して第2溶接固着部Y2を形成する。この際、孔内で、溶接するため、固着に必要な溶接用の溶融金属を溢れることなく流し込むことができ、さらに、第1・第2貫通孔81b,82bが第1・第2テーパー部81c,82cを有するので、十分な量の溶融金属を流し込むことを可能にすると共に、溶融金属と第1・第2円板部材81,82との接触を広くしている。
【0026】
第1溶接固着部Y1と第1段差部61cとの挟持力、及び、第2溶接固着部Y2と第2段差部62cとの挟持力、によって、第1円板部材81と第2円板部材82を圧接して一体状に固着し、円盤部13を形成している。また、第1切欠部81d,81dと、第2切欠部82d,82dとが一致することで、円盤部13に調整工具用の切欠部13d,13dが形成される。
つまり、第1円板部材81と第2円板部材82の端面同士をスポット溶接等で直接的に固着する必要がなく、第1軸部11と第2軸部12を形成するための溶接で第1円板部材81と第2円板部材82を一体状に固着して円盤部13を形成していると言える。言い換えると、円盤部13を形成する部材を、2つの円板部材に分割することで、プレス加工と溶接で円盤部13を形成でき、設備の簡略化や製造時間の短縮化により製造費用を低減している。
【0027】
図10に於て、短円筒部材3は、第1軸部11が挿通する中心孔の内周面をストレート状に形成している。つまり、第1軸部11に螺合する雌ねじ部を形成していない素孔である。このように形成することで、第1軸部11への取付・取り外しを容易にし、使い勝手を向上させている。
また、短円筒部材3を複数種類設け、交換自在としている。種類とは、基準端面Eからの全長寸法L、回転体Kが取着される小径部長さ寸法V、基準端面Eからの回転体Kの当りとなる段差面までの当り面寸法W、小径部の外径寸法d、当り面を形成するための大径部の外径寸法D、基準端面Eから回転体Kの厚み方向の中心線Lkまでの取付基準寸法Z、が夫々異なるものを備えていることである。なお、回転体Kとは、チェーン等に嵌合するスプロケットや、無端ベルトを押圧するローラ等である。
【0028】
そして、図11に示すように、第1軸部11は、複数種類の短円筒部材3の内、全長寸法Zが一番小さいものが挿通(取付)された場合に、短円筒部材3の抜け止めを行う固着部材4を螺着しても、第1軸部11の雄ねじ部が固着部材4から突出する余長ねじ部分Gを有している。この余長ねじ部分(調整ねじ部)Gを設けることで、全長寸法Lや取付基準寸法Zが異なる短円筒部材3に対応可能としている。なお、固着部材4は、ナット部材等雌ねじ部を有するものであれば良い。
【0029】
また、第1軸部11が余長ねじ部分Gを有しているので、図12に示すように、短円筒部材3と、円盤部13の間に、調整用のカラー部材9を配設可能とし、円筒部13の一面13aから回転体Kの基準中心線Lkまでの取着寸法Z´を変更・調整自在としている。カラー部材9は、1枚、或いは、複数枚で、厚み寸法が異なる様々な種類のものである。例えば、薄板状の市販のワッシャーや、短円筒状部材等である。このように取着寸法Z´や短円筒部材3を変更・調整自在にでき、様々な回転体Kや巻掛条体に対応可能な使い勝手の良いものとしている。
【0030】
次に、本発明のテンショナーの使用方法(作用)について説明する。
図13及び図14に示すように、偏心構造体1は、回動軸心L12廻りに回転して、第1軸部11に取着された回転体Kを、図示省略の巻掛条体へ接近・離間するように回動(揺動)させる。
巻掛条体に回転体Kを押圧させ、適切なテンションを付加する位置で、固着具8(図3参照)を締め付けて偏心構造体1をベース部材2に固定する。そして、ストッパー部材5の当り部53を、円盤部13の外周面13cに当接させ、固定ボルト部材6,6にてベース部材2にストッパー部材5を固定する。
【0031】
ここで、正逆反転駆動による衝撃力や押圧に対する反力等の巻掛条体からの外力によって、回転体Kが押圧され、偏心構造体1が回動軸心L12廻りに回動しようとしても、ストッパー部材5によって、その回動が阻止され、巻掛条体を常に適切な緊張状態に保持(維持)可能とする。
【0032】
また、ストッパー部材5は、台座部21を抱き込み状としているため、台座部21の取付壁部21cとストッパー部材5の平板部51の間、及び、台座部21の両側壁部21b,21bとストッパー部材5の両片部52,52の間、で摩擦力が働き、固定後の滑り(位置ズレ)を防止する。また、図13に於て、矢印Fのような力をストッパー部材5が受けた場合に、片部52が(ベース部材2の)台座部21の側壁部21bに沿って接しているため、その力をベース部材2で受けると共に、ストッパー部材5が傾くような位置ズレが防止される。
また、固定ボルト部材6,6を緩めてスライド移動させる際に、一対の片部52,52が、台座部21の両側壁部21b,21bに摺動して、適切な姿勢が保持され(傾きや拗れを防止し)スムーズな直線スライド往復移動を可能にする。
【0033】
また、ストッパー部材5を設けたことで、偏心構造体1をベース部材2に固定するための、第2軸部12の雄ねじ径や固着具8を、小さいものにすることができる。例えば、M10(ねじ径が10mm)の雄ねじと、それに対応するナット部材(固着具8)とすることができ、工具(スパナ)の取り回しや締め付け作業を容易に行うことが可能となる。
また、偏心構造体1の移動量や回転体Kの押込み量(寸法)を確認した後、使用者が姿勢や視線を大きく変更させずに、ベース部材2の表面側から、ストッパー部材5を外周面13cに当接させて仮止めすることもでき、使い勝手が良く、迅速な調整作業を可能としている。また、外力をベース部材2とストッパー部材5で受けるため、剛性が強く変形が防止される。
【0034】
また、固定ボルト部材6,6を締め付けた際に、ワッシャー部材7の爪部75が、ストッパー部材5に食い込んで、ストッパー部材5の滑り(位置ズレ)を防止する。また、1枚のワッシャー部材7に、2本の固定ボルト部材6,6が挿通するように構成しているため、固定ボルト部材6,6がワッシャー部材7の廻り止めとなって、爪部75がストッパー部材5に食い付き可能な適切な姿勢に保たれる。
例えば、2本の固定ボルト部材6,6夫々に1枚ずつ爪部75を有するワッシャーを介設すると、固定ボルト部材6の軸心廻りにワッシャーが回転する場合や、爪部75が長円孔51aに落ち込んで、食い込みによる滑り防止効果を得ることができない虞がある。
【0035】
また、ベース部材2、ストッパー部材5、ワッシャー部材7、第1・第2円板部材81,82の各孔部や切欠部、形状の成形を、プレス機による折曲げ加工や打ち抜き加工によって形成するため、加工時間が短いと共に安価に製造でき、生産効率が高く、大量生産に好適である。また、使用する部材は、すべて金属の鋼材であるため、ステンレス化が可能になり、様々な環境に対応可能なテンショナーが得られる。
【0036】
なお、本発明は、設置時の取付形式が変更可能であって、図示省略するが、ベース部材2の鍔部29に、縦断面L字状のアタッチメント部材等の連結補助部材を付設したものとするも良い。
【0037】
以上のように、本発明のテンショナーは、円盤部13と、円盤部13の一面13a側で円盤部13の中心から偏心位置に突設されると共にテンション付加用の回転体Kが取着される第1軸部11と、円盤部13の他面13b側で第1軸部11と異なる偏心位置に突設された第2軸部12と、を有する偏心構造体1を備え、偏心構造体1が第2軸部12の軸心L12回りに回動・固定自在に取着されるベース部材2を具備し、さらに、ベース部材2にスライド・固定自在に取着され、円盤部13の外周面13cに当接して、回転体Kが押圧する巻掛条体からの外力によって偏心構造体1が回動するのを防止するストッパー部材5を備えたので、チェーンやベルト等の巻掛条体からの外力(正逆反転時の衝撃力や反力)を受けても、偏心構造体1が回動するのを防止して、巻掛条体を適切な緊張状態に常に維持できる。偏心構造体1の利点(調整が容易であると共に、様々な方向から巻掛条体に回転体Kを接近させて押圧可能という使い勝手の良さ)を残しながらも、デメリットであった偏心構造体1の逃げを克服でき、高い操作性と信頼性を得ることができる。
【0038】
また、ベース部材2は、ストッパー部材5が取着される台座部21を有し、ストッパー部材5は、台座部21を抱き込み状とする横断面コの字状に形成されているので、固定状態ではベース部材2と接する面が広く、十分な摩擦力が得られ、スライド方向の滑りを防止できると共に外力を受けた偏心構造体1が回動しようとして、ストッパー部材5を傾かせようとする力が働いても、台座部21が回り止めとなって、確実に回動を防止できる。スライド可能状態では、台座部21に摺動して拗れることなくスムーズに直線往復移動させることができる。
【0039】
また、ベース部材2にストッパー部材5を固定するための2本の固定ボルト部材6,6と、2本の固定ボルト部材6,6が夫々挿通する貫孔76,76を有する矩形状のワッシャー部材7と、を備え、ワッシャー部材7は、4つの角部に、夫々、ストッパー部材5に食い付くための爪部75,75,75,75を有するので、外力を受けた偏心構造体1に押圧されてストパー部材5が滑るのをより効果的に防止できる。また、ワッシャー部材7が、2本の固定ボルト部材6,6によって適切な姿勢に保持されるので、固定作業を迅速に行うことができると共に、確実に爪部75を食い込ませて、ストッパー部材5の滑りを防止できる。食い込んでいる爪部75の復元力がスプリングのように作用して、振動による固定ボルト部材6,6の弛みを防止でき、より確実にストッパー部材5を固定できる。
【0040】
また、円盤部13と、円盤部13の一面13a側で円盤部13の中心から偏心位置に突設されると共にテンション付加用の回転体Kが取着される第1軸部11と、円盤部13の他面13b側で第1軸部11と異なる偏心位置に突設された第2軸部12と、を有する偏心構造体1を備え、円盤部13は、第1軸部11が突設される第1円板部材81と、第2軸部12が突設される第2円板部材82と、から成り、第1軸部11は、基端側に第1段差部61cをもって形成された第1小径軸部61aを有する第1軸部材61から成り、第2軸部12は、基端側に第2段差部62cをもって形成された第2小径軸部62aを有する第2軸部材62から成り、第1円板部材81に第1小径軸部61aが挿入される第1孔部81aが設けられると共に、第2円板部材82に第2小径軸部62aが挿入される第2孔部82aが設けられ、さらに、第1円板部材81に第2小径軸部62aを露出させる第1貫通孔部81bが貫設されると共に、第2円板部材82に第1小径軸部61aを露出させる第2貫通孔部82bが設けられ、第2貫通孔部82b内で第1小径軸部61aを溶接した第1溶接固着部Y1と第1段差部61cとの挟持力、及び、第1貫通孔部81b内で第2小径軸部62aを溶接した第2溶接固着部Y2と第2段差部62cとの挟持力、によって、第1円板部材81と第2円板部材82を圧接して固着したので、円盤部13を形成する部材を、プレス加工によって製造でき、(切削機械加工よりも)加工時間が短く製造費用を低減できると共に、大量生産を容易かつ迅速に行うことができる。第1・第2円板部材81,82同士をスポッット溶接する必要がなく、第1・第2軸部11,12の形成と、円盤部13の形成を同じ溶接工程で行え、容易に製造できる。
【符号の説明】
【0041】
1 偏心構造体
2 ベース部材
5 ストッパー部材
6 固定ボルト部材
7 ワッシャー部材
11 第1軸部
12 第2軸部
13 円盤部
13a 一面
13b 他面
13c 外周面
21 台座部
61 第1軸部材
61a 第1小径軸部
61c 第1段差部
62 第2軸部材
62a 第2小径軸部
62c 第2段差部
75 爪部
76 貫孔
81 第1円板部材
81a 第1孔部
81b 第1貫通孔
82 第2円板部材
82a 第2孔部
82b 第2貫通孔
L12 第2軸部の軸心
K 回転体
Y1 第1溶接固着部
Y2 第2溶接固着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤部(13)と、該円盤部(13)の一面(13a)側で該円盤部(13)の中心から偏心位置に突設されると共にテンション付加用の回転体(K)が取着される第1軸部(11)と、上記円盤部(13)の他面(13b)側で該第1軸部(11)と異なる偏心位置に突設された第2軸部(12)と、を有する偏心構造体(1)を備え、
上記偏心構造体(1)が上記第2軸部(12)の軸心(L12)回りに回動・固定自在に取着されるベース部材(2)を具備し、
さらに、上記ベース部材(2)にスライド・固定自在に取着され、上記円盤部(13)の外周面(13c)に当接して、上記回転体(K)が押圧する巻掛条体からの外力によって上記偏心構造体(1)が回動するのを防止するストッパー部材(5)を備えたことを特徴とするテンショナー。
【請求項2】
上記ベース部材(2)は、上記ストッパー部材(5)が取着される台座部(21)を有し、
上記ストッパー部材(5)は、上記台座部(21)を抱き込み状とする横断面コの字状に形成されている請求項1記載のテンショナー。
【請求項3】
上記ベース部材(2)に上記ストッパー部材(5)を固定するための2本の固定ボルト部材(6)(6)と、該2本の固定ボルト部材(6)(6)が夫々挿通する貫孔(76)(76)を有する矩形状のワッシャー部材(7)と、を備え、
上記ワッシャー部材(7)は、4つの角部に、夫々、上記ストッパー部材(5)に食い付くための爪部(75)(75)(75)(75)を有する請求項1又は2記載のテンショナー。
【請求項4】
円盤部(13)と、該円盤部(13)の一面(13a)側で該円盤部(13)の中心から偏心位置に突設されると共にテンション付加用の回転体(K)が取着される第1軸部(11)と、上記円盤部(13)の他面(13b)側で該第1軸部(11)と異なる偏心位置に突設された第2軸部(12)と、を有する偏心構造体(1)を備え、
上記円盤部(13)は、上記第1軸部(11)が突設される第1円板部材(81)と、上記第2軸部(12)が突設される第2円板部材(82)と、から成り、
上記第1軸部(11)は、基端側に第1段差部(61c)をもって形成された第1小径軸部(61a)を有する第1軸部材(61)から成り、
上記第2軸部(12)は、基端側に第2段差部(62c)をもって形成された第2小径軸部(62a)を有する第2軸部材(62)から成り、
上記第1円板部材(81)に上記第1小径軸部(61a)が挿入される第1孔部(81a)が設けられると共に、上記第2円板部材(82)に上記第2小径軸部(62a)が挿入される第2孔部(82a)が設けられ、
さらに、上記第1円板部材(81)に上記第2小径軸部(62a)を露出させる第1貫通孔部(81b)が貫設されると共に、上記第2円板部材(82)に上記第1小径軸部(61a)を露出させる第2貫通孔部(82b)が設けられ、
上記第2貫通孔部(82b)内で上記第1小径軸部(61a)を溶接した第1溶接固着部(Y1)と上記第1段差部(61c)との挟持力、及び、上記第1貫通孔部(81b)内で上記第2小径軸部(62a)を溶接した第2溶接固着部(Y2)と上記第2段差部(62c)との挟持力、によって、上記第1円板部材(81)と上記第2円板部材(82)を圧接して固着したことを特徴とするテンショナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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