説明

テンション測定装置及び糸巻取装置

【課題】 糸のテンションを精度良く測定することができるテンション測定装置、及びそのようなテンション測定装置を備える糸巻取装置を提供する。
【解決手段】 テンションセンサ6は、糸道に沿って走行する糸Yのテンションを測定するテンション測定装置である。テンションセンサ6は、ベース20と、ベース20に取り付けられ、糸Yの接触によって変形させられる変形部30であるロードセル部31及びロッド部34と、変形部30の変形方向と交差する関係を有する方向が固定方向となるようにベース20に取り付けられ、変形部30の変形に基づいて糸Yのテンションを電気信号として検出する検出部40であるケーシング41及び回路基板43と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸道に沿って走行する糸のテンションを測定するテンション測定装置、及びそのようなテンション測定装置を備える糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給糸ボビンからパッケージに糸を巻き取る糸巻取装置が知られている。このような糸巻取装置には、テンション付与部によって付与された糸のテンションを測定するために、テンション測定装置が搭載される場合がある。例えば、特許文献1には、走行する糸が接触する糸ガイドと、糸ガイドを支持する支持体と、支持体が取り付けられた弾性板と、弾性板が取り付けられた内ケースと、内ケースを収容する外ケースと、内ケースと外ケースとの間に充填された樹脂層と、を備えるテンションセンサが記載されている。このテンションセンサにおいては、弾性板の歪に基づいて糸のテンションが検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−38722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のテンションセンサでは、何らかの外力が外ケースに作用して外ケースが変形すると、その変形が樹脂層及び内ケースを介して弾性板に伝わり、その結果、糸のテンションの測定精度が劣化するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、糸のテンションを精度良く測定することができるテンション測定装置、及びそのようなテンション測定装置を備える糸巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のテンション測定装置は、糸道に沿って走行する糸のテンションを測定するテンション測定装置であって、ベースと、ベースに取り付けられ、糸の接触によって変形させられる変形部と、変形部の変形方向と交差する関係を有する方向が固定方向となるようにベースに取り付けられ、変形部の変形に基づいてテンションを電気信号として検出する検出部と、を備える。
【0007】
このテンション測定装置では、検出部が、変形部の変形方向と交差する関係を有する方向が固定方向となるようにベースに取り付けられている。これにより、ベースに対する検出部の固定力が変形部に伝わり難くなる。よって、このテンション測定装置によれば、糸のテンションを精度良く測定することができる。
【0008】
また、変形部は、変形部の変形方向と略垂直に交差する関係を有する方向に形成されたベースの第1取付面に取り付けられており、検出部は、第1取付面と交差する関係を有するベースの第2取付面に固定具によって取り付けられていており、固定具による固定方向は、糸が変形部に接触する方向と略垂直に交差する関係を有してもよい。この構成によれば、何らかの外力が検出部に作用して検出部が変形しても、その変形が変形部に伝わり難くなる。よって、糸のテンションを精度良く測定することができる。
【0009】
また、第2取付面は、第1取付面と略垂直に交差する関係を有し、固定具による固定方向は、第2取付面と略垂直に交差する関係を有する方向であってもよい。この構成によれば、検出部の変形が変形部に更に伝わり難くなるので、糸のテンションをより精度良く測定することができる。
【0010】
また、ベースは、第1取付面が設けられた第1壁部と、第2取付面が設けられ、第1壁部と交差する関係を有する第2壁部と、を有してもよい。この構成によれば、変形部に検出部の変形を一層伝わり難くすることができる。
【0011】
また、第2壁部は、第1壁部と略垂直に交差する関係を有していてもよい。この構成によれば、変形部に検出部の変形をより一層伝わり難くすることができる。
【0012】
また、変形部は、第1取付面に取り付けられた一端部を有するロードセル部と、糸を支持する一端部、及びロードセル部の他端部に接続された他端部を有するロッド部と、を有してもよい。この構成によれば、ロードセル部の歪に基づいて糸のテンションを電気信号として容易に且つ確実に検出することができる。
【0013】
また、検出部は、第2取付面に取り付けられたケーシングと、ケーシングに収容され、電気信号を処理する回路基板と、を有してもよい。この構成によれば、ケーシングや回路基板の変形が変形部に伝わることに起因する糸のテンションの測定精度の劣化を抑制することができる。
【0014】
また、第1取付面と交差する関係を有するベースの第3取付面に取り付けられ、糸道に糸を案内するガイド板を更に備えてもよいし、第1取付面と交差する関係を有するベースの第4取付面に取り付けられ、変形部を覆うカバーを更に備えてもよい。これらの構成によれば、ガイド板やカバーの変形が変形部に伝わることに起因する糸のテンションの測定精度の劣化を抑制することができる。
【0015】
本発明の糸巻取装置は、上述した本発明のテンション測定装置と、糸を巻き取る巻取部と、を備える。この糸巻取装置によれば、上述したように糸のテンションを精度良く測定することができるテンション測定装置を備えているので、所定テンションでの糸の巻取りを実現することができる。
【0016】
また、テンション測定装置において、変形部が、ベースの第1取付面に取り付けられており、検出部が、第1取付面と交差する関係を有するベースの第2取付面に取り付けられている場合には、第1取付面と交差する関係を有するベースの第5取付面に取り付けられ、テンション測定装置を支持する台座を更に備えてもよい。この構成によれば、台座の変形が変形部に伝わることに起因する糸のテンションの測定精度の劣化を抑制することができる。
【0017】
また、糸道に沿ってテンション測定装置の上流側に配置され、糸に所定テンションを付与するテンション付与部を更に備えてもよい。この構成によれば、精度良く測定された糸のテンションに基づいてテンション付与部をフィードバック制御することができるため、所定テンションでの糸の巻取りをより確実に実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、糸のテンションを精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態の糸巻取装置である巻取ユニットの正面図である。
【図2】本発明の一実施形態のテンション測定装置であるテンションセンサの縦断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿ってのテンションセンサの断面図である。
【図4】図2のテンションセンサの一部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1に示されるように、巻取ユニット(糸巻取装置)1は、給糸ボビンBからパッケージPに糸Yを巻き取る装置である。給糸ボビンBは、前工程の精紡機で形成され、例えば、トレーにセットされた状態で精紡機から搬送される。なお、複数の巻取ユニット1が並設されることで自動ワインダが構成されている。
【0022】
巻取ユニット1には、ボビン支持部2、糸解舒補助装置3、プレクリアラ4、ゲート式テンサ(テンション付与部)5、テンションセンサ(テンション測定装置)6、下糸捕捉装置7、スプライサ8、カッター9、ヤーンクリアラ11、上糸捕捉装置12及び巻取部13が、糸Yの走行経路(すなわち、糸道)に沿って上流側(ここでは、下側)から順に設けられている。これらの各構成は、機台14に取り付けられている。また、巻取ユニット1には、巻取ユニット1の各構成を制御する制御部15、及び巻取ユニット1の動作状況等を表示するディスプレイ(表示部)16が設けられている。制御部15は、自動ワインダの全体を制御する制御装置との間で、ワインディング動作に関する種々の情報を送受信する。
【0023】
ボビン支持部2は、給糸ボビンBを直立させた状態で支持する。糸解舒補助装置3は、給糸ボビンBの上方に配置された筒状部材によって、給糸ボビンBから解舒された糸Yのバルーンを制御する。ゲート式テンサ5は、櫛歯状の固定ゲート及び可動ゲートからなる一対のゲートによって糸Yをジグザグ状に保持することで、走行する糸Yに所定テンションを付与する。テンションセンサ6は、糸道に沿って走行する糸Yのテンションを測定する装置である。制御部15は、テンションセンサ6によって測定された糸Yのテンションに基づいて、走行する糸Yに所定テンションが付与されるようにゲート式テンサ5をフィードバック制御する。
【0024】
プレクリアラ4は、糸道を挟んで所定間隔で配置された一対の規制部材によって、規定値よりも大きい糸欠点の通過を予め規制する。ヤーンクリアラ11は、糸Yの巻取中にスラブ等の糸欠点を検出する。カッター9は、プレクリアラ4によって糸欠点の通過が規制されたとき、或いはヤーンクリアラ11によって糸欠点が検出されたときに、糸Yを切断する。スプライサ8は、カッター9による糸Yの切断時、或いは糸Yの糸切れ時に、給糸ボビンB側の糸端とパッケージP側の糸端とを継ぐ。
【0025】
下糸捕捉装置7は、軸線αを中心に上下方向へ回動可能に構成されており、その回動端には吸引口7aが設けられている。吸引口7aは、スプライサ8の上部とプレクリアラ4の下部との間で回動する。上糸捕捉装置12は、軸線βを中心に上下方向へ回動可能に構成されており、その回動端には吸引口12aが設けられている。吸引口12aは、スプライサ8の下部と巻取部13との間で回動する。これにより、下糸捕捉装置7は、下方向に回動して吸引口7aで給糸ボビンB側の糸端を吸引し、その後、上方向に回動して給糸ボビンB側の糸端をスプライサ8に引き渡す。一方、上糸捕捉装置12は、上方向に回動して吸引口12aでパッケージP側の糸端を吸引し、その後、下方向に回動してパッケージP側の糸端をスプライサ8に引き渡す。
【0026】
巻取部13は、給糸ボビンBから解舒された糸YをパッケージPに巻き取って満巻のパッケージPを形成する。巻取部13は、ドラム溝17aが形成された巻取ドラム17、及びパッケージPを回転可能に支持するクレードル18を有している。クレードル18は、パッケージPの表面を巻取ドラム17の表面に対して適切な接圧で接触させる。巻取部13は、モータで巻取ドラム17を駆動回転させてパッケージPを従動回転させることにより、糸Yを所定幅で綾振りしつつ糸YをパッケージPに巻き取っていく。
【0027】
次に、上述したテンションセンサ6について、より詳細に説明する。なお、以下の説明では、便宜上、糸道におけるテンションセンサ6の上流側を下側、その反対側を上側、テンションセンサ6の糸道に対して糸Yが導入出される側を前側、その反対側を後側という。
【0028】
図2及び図3に示されるように、テンションセンサ6は、金属により一体的に形成されたベース20を備えている。ベース20は、空間Sを囲む側壁部(第1壁部)21、上壁部22、下壁部23及び後壁部24を有している。ベース20は、更に、側壁部21の外側(すなわち、空間Sの反対側)において上下方向に延在する縦壁部25、及び縦壁部25の下端部から前側に延在する横壁部(第2壁部)26を有している。ここで、横壁部26は、側壁部21と略垂直に交差する関係を有している。なお、一方の壁部と他方の壁部とが交差する関係を有するとは、一方の壁部の所定壁面と他方の壁部の所定壁面とが直接的に交差する場合だけでなく、一方の壁部の所定壁面を含む仮想面と他方の壁部の所定壁面を含む仮想面とが交差する場合も含む。
【0029】
側壁部21の前端部の内側(すなわち、空間S側)の側面(第1取付面)21aには、糸Yの接触によって変形させられる変形部30が取り付けられている。変形部30は、金属により一体的に形成されたロードセル部31及びロッド部34を有し、より詳細には、次のように構成されている。
【0030】
すなわち、側壁部21の側面21aには、ロードセル部31の前端部(一端部)31aがボルト32によって取り付けられている。ロードセル部31は、前後方向に延在する直方体状に形成されており、その側面には、歪ゲージ33が例えば印刷等によって設けられている。ロードセル部31の後端部(他端部)31bには、ロッド部34の後端部(他端部)34bが接続されている。ロッド部34は、前後方向に延在する円柱状(ただし、後端部34bは直方体状)に形成されており、その前端部(一端部)34aには、側壁部21側から糸Yに接触する接触部36が設けられている。接触部36は、糸Yとの摩擦抵抗が低く且つ摩耗の少ないセラミック等の材料により円筒状に形成されており、その周面には、糸Yが安定して接触するように溝36aが設けられている。このように、変形部30は、変形部30の変形方向と略垂直に交差する関係を有する方向に形成されたベース20の側面21aに取り付けられている。
【0031】
ベース20の上壁部22には、側壁部21側から糸Yに接触するヤーンガイド51が取り付けられている。一方、ベース20の下壁部23には、側壁部21の反対側から糸Yに接触するヤーンガイド52が取り付けられている。ヤーンガイド51,52は、糸Yとの摩擦抵抗が低く且つ摩耗の少ないセラミック等の材料により板状に形成されている。これにより、糸道に沿って走行する糸Yが、ロッド部34の接触部36及び各ヤーンガイド51,52の三箇所に接触して所定角度で屈曲し、糸Yのテンションに応じて、ロッド部34を介してロードセル部31に歪を生じさせる。そして、ロードセル部31に歪が生じると、ロードセル部31の歪量に応じた電気信号が歪ゲージ33から出力される。
【0032】
ベース20の横壁部26の上面(第2取付面)26aには、変形部30の変形に基づいて糸Yのテンションを電気信号として検出する検出部40が取り付けられている。ここで、横壁部26の上面26aは、側壁部21の側面21aと略垂直に交差する関係を有している。検出部40は、ケーシング41及び回路基板43を有し、より詳細には、次のように構成されている。なお、一方の面と他方の面とが交差する関係を有するとは、一方の面と他方の面とが直接的に交差する場合だけでなく、一方の面を含む仮想面と他方の面を含む仮想面とが交差する場合も含む。
【0033】
すなわち、横壁部26の上面26aには、ベース20に対して空間Sの反対側に並設されたケーシング41の取付部41aがボルト(固定具)42によって取り付けられている。ケーシング41は、樹脂により直方体箱状に形成されている。ケーシング41には、糸Yのテンションを電気信号として検出するためにその電気信号を処理する回路基板43が収容されている。回路基板43は、配線44を介して歪ゲージ33と電気的に接続されており、ロードセル部31の歪量に応じた電気信号を歪ゲージ33から取得し、その電気信号に基づいて糸Yのテンションを電気信号として出力する。このように、検出部40は、ベース22の側面21aと略垂直に交差する関係を有するベース22の上面26aにボルト42によって取り付けられていている。そして、ボルト42による固定方向は、糸Yが変形部30に接触する方向と略垂直に交差する関係を有している。
【0034】
図2及び図4に示されるように、ベース20の上側には、テンションセンサ6の糸道に対して糸Yを導入する際に、糸Yをヤーンガイド51に案内するガイド板53が配置されている。ガイド板53は、ベース20の側壁部21の上端面(第3取付面)21bにボルト(固定具)54によって固定されている。一方、ベース20の下側には、テンションセンサ6の糸道に対して糸Yを導入する際に、糸Yをヤーンガイド52に案内するガイド板55が配置されている。ガイド板55は、巻取ユニット1の機台14側に設けられた台座14aに取り付けられている。テンションセンサ6は、ベース20の横壁部26の下面(第5取付面)26bに台座14aがボルト(固定具)56(図3参照)によって取り付けられることで、台座14aに支持されている。ここで、側壁部21の上端面21b及び横壁部26の下面26bのそれぞれは、側壁部21の側面21aと略垂直に交差する関係を有している。そして、ボルト54による固定方向及びボルト56による固定方向のそれぞれは、糸Yが変形部30に接触する方向と略垂直に交差する関係を有している。
【0035】
図3及び図4に示されるように、ベース20の側壁部21の前端面(第4取付面)21cには、樹脂により形成されたカバー61がボルト(固定具)62によって取り付けられている。カバー61は、ベース20の上壁部22と下壁部23との間において変形部30を覆っている。ここで、側壁部21の前端面21cは、側壁部21の側面21aと略垂直に交差する関係を有している。そして、ボルト62による固定方向は、糸Yが変形部30に接触する方向と略垂直に交差する関係を有している。カバー61には、糸Yを支持するロッド部34の前端部34aを突出させる凹部61aが形成されている。凹部61aの底面には、粘着性を有する円環状の弾性部材63が僅かな隙間を介してロッド部34を包囲するように配置されている。この状態で、凹部61aには、樹脂により形成された包囲部材64が嵌められている。包囲部材64は、ロッド部34の接触部36における糸Yの接触箇所を露出させて、ロッド部34の前端部34aを包囲している。カバー61及び包囲部材64には、テンションセンサ6の糸道に対して糸Yを導入する際に、糸Yをロッド部34の接触部36に案内するガイド板57(図2参照)が取り付けられている。
【0036】
このように、ロッド部34の前端部34aを突出させるカバー61の凹部61aの底面には、粘着性を有する円環状の弾性部材63が僅かな隙間を介してロッド部34を包囲するように配置されている。これにより、変形部30を覆うカバー61内に風綿が侵入して糸Yのテンションの測定精度が劣化するのを防止することができる。
【0037】
図2に示されるように、ベース20には、エアー流路71,72,73を有するブロー機構70が設けられている。エアー流路71は、上下方向に延在するように縦壁部25内に形成されている。エアー流路71の下端部71bは、ケーシング41を介して巻取ユニット1のエアー供給源に接続されている。エアー流路72は、エアー流路71の上端部71aから横方向に延在するように、側壁部21の上端部及び上壁部22内に形成されている。エアー流路72の先端部には、下側に開口するエアー噴射孔74、及び上側に開口するエアー噴射孔75が設けられている。エアー流路73は、エアー流路71の下端部71bから分岐して横方向に延在するように、側壁部21の下端部内に形成されている。エアー流路73の先端部には、側方に開口するエアー噴射孔76が設けられている。
【0038】
このように、ベース20には、テンションセンサ6の所定部分に対してエアーを噴射することができるブロー機構70が設けられている。そのため、所定タイミングでブロー機構70からエアーを噴射することで、テンションセンサ6に付着した風綿を除去し、テンションセンサ6に風綿が堆積するのを防止することができる。
【0039】
以上説明したように、テンションセンサ6では、糸道に沿って走行する糸Yが、ロッド部34の接触部36及び各ヤーンガイド51,52の三箇所に接触して所定角度で屈曲し、糸Yのテンションに応じて、ロッド部34を介してロードセル部31に歪を生じさせる。そして、ロードセル部31の歪量に応じた電気信号が歪ゲージ33から出力されると、回路基板43が、ロードセル部31の歪量に応じた電気信号に基づいて、糸Yのテンションを電気信号として出力する。このように、テンションセンサ6では、変形部30がロードセル部31及びロッド部34によって構成されているため、ロードセル部31の歪に基づいて糸Yのテンションを電気信号として容易に且つ確実に検出することができる。
【0040】
このとき、ロードセル部31及びロッド部34(すなわち、変形部30)の変形方向(ここでは、ロッド部34の接触部36における糸Yの接触箇所から側壁部21に向かう方向、すなわち、糸Yによる押圧力が変形部30に作用する方向)と略垂直に交差する関係を有する方向が固定方向となるように、ケーシング41(すなわち、検出部40)がベース20に取り付けられている。より詳細には、変形部30が、変形部30の変形方向と略垂直に交差する関係を有する方向に形成されたベース20の側面21aに取り付けられている。そして、検出部40が、ベース22の側面21aと略垂直に交差する関係を有するベース22の上面26aにボルト42によって取り付けられており、ボルト42による固定方向が、糸Yが変形部30に接触する方向と略垂直に交差する関係を有している(つまり、ボルト42による固定方向が、ベース22の上面26aと略垂直に交差する関係を有する方向となっている)。これにより、ベース20に対するケーシング41の固定力がロードセル部31に伝わり難くなる。なお、固定方向とは、ベース20に他の部材を固定するために固定具によって付与される固定力が作用する方向である。従って、ベース20に対するケーシング41の固定方向は、ボルト42の軸方向である。
【0041】
また、ロードセル部31及びロッド部34(すなわち、変形部30)の変形方向と略垂直に交差する関係を有する方向が固定方向となるように、ガイド板53がベース20に取り付けられている。より詳細には、ガイド板53が、ベース22の側面21aと略垂直に交差する関係を有するベース22の上端面21bにボルト54によって取り付けられており、ボルト54による固定方向が、糸Yが変形部30に接触する方向と略垂直に交差する関係を有している。これにより、ベース20に対するガイド板53の固定力がロードセル部31に伝わり難くなる。ベース20に対するガイド板53の固定方向は、ボルト54の軸方向である。
【0042】
また、ロードセル部31及びロッド部34(すなわち、変形部30)の変形方向と略垂直に交差する関係を有する方向が固定方向となるように、カバー61がベース20に取り付けられている。より詳細には、カバー61が、ベース22の側面21aと略垂直に交差する関係を有するベース22の前端面21cにボルト62によって取り付けられており、ボルト62による固定方向が、糸Yが変形部30に接触する方向と略垂直に交差する関係を有している。これにより、ベース20に対するカバー61の固定力がロードセル部31に伝わり難くなる。ベース20に対するカバー61の固定方向は、ボルト62の軸方向である。
【0043】
更に、ロードセル部31及びロッド部34(すなわち、変形部30)の変形方向と略垂直に交差する関係を有する方向が固定方向となるように、台座14aがベース20に取り付けられている。より詳細には、台座14aが、ベース22の側面21aと略垂直に交差する関係を有するベース22の下面26bにボルト56によって取り付けられており、ボルト56による固定方向が、糸Yが変形部30に接触する方向と略垂直に交差する関係を有している。これにより、ベース20に対する台座14aの固定力がロードセル部31に伝わり難くなる。ベース20に対する台座14aの固定方向は、ボルト56の軸方向である。
【0044】
以上により、テンションセンサ6によれば、糸Yのテンションを精度良く測定することができる。なお、一方の方向と他方の方向とが交差する関係を有するとは、一方の方向と他方の方向とが交点を有するように交差する場合だけでなく、一方方向と他方の方向とがねじれの位置にある場合も含む。
【0045】
また、ケーシング41及び回路基板43(すなわち、検出部40)が取り付けられたベース20の横壁部26の上面26aが、ロードセル部31及びロッド部34(すなわち、変形部30)が取り付けられたベース20の側壁部21の側面21aと略垂直に交差する関係を有している。しかも、ケーシング41及び回路基板43が取り付けられた横壁部26が、ロードセル部31及びロッド部34が取り付けられた側壁部21と略垂直に交差する関係を有している。これらにより、何らかの外力がケーシング41や回路基板43に作用してケーシング41や回路基板43が変形しても、その変形がロードセル部31に伝わり難くなる。よって、テンションセンサ6によれば、ケーシング41や回路基板43の変形がロードセル部31に伝わることに起因する糸Yのテンションの測定精度の劣化を抑制して、糸Yのテンションを精度良く測定することができる。
【0046】
また、ガイド板53が取り付けられたベース20の側壁部21の上端面21bが、ロードセル部31及びロッド部34が取り付けられたベース20の側壁部21の側面21aと略垂直に交差する関係を有している。更に、カバー61が取り付けられたベース20の側壁部21の前端面21cが、ロードセル部31及びロッド部34が取り付けられたベース20の側壁部21の側面21aと略垂直に交差する関係を有している。これらにより、何らかの外力がガイド板53やカバー61に作用してガイド板53やカバー61が変形しても、その変形がロードセル部31に伝わり難くなる。従って、ガイド板53やカバー61の変形がロードセル部31に伝わることに起因する糸Yのテンションの測定精度の劣化を抑制することができる。
【0047】
また、巻取ユニット1では、テンションセンサ6によって精度良く測定された糸Yのテンションに基づいてゲート式テンサ5をフィードバック制御することができるため、所定テンションでの糸Yの巻取りを確実に実現することができる。
【0048】
また、巻取ユニット1では、テンションセンサ6を支持する台座14aが取り付けられたベース20の横壁部26の下面26bが、ロードセル部31及びロッド部34が取り付けられたベース20の側壁部21の側面21aと略垂直に交差する関係を有している。これにより、何らかの外力が台座14aに作用して台座14aが変形しても、その変形がロードセル部31に伝わり難くなる。従って、台座14aの変形がロードセル部31に伝わることに起因する糸Yのテンションの測定精度の劣化を抑制することができる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ゲート式テンサ5に代えて、いわゆるディスク式テンサ等、糸道に沿って走行する糸Yに所定テンションを付与することができる他のテンション付与部を適用してもよい。
【0050】
また、検出部40は、変形部30の変形方向と垂直以外の角度で交差する関係を有する方向が固定方向となるようにベース20に取り付けられていてもよい。この場合にも、変形方向と固定方向とが平行である場合に比べれば、ベース20に対する検出部40の固定力が変形部30に伝わり難くなる。同様に、ガイド板53やカバー61、台座14aも、変形部30の変形方向と垂直以外の角度で交差する関係を有する方向が固定方向となるようにベース20に取り付けられていてもよい。
【0051】
また、検出部40が取り付けられたベース20の取付面は、変形部30が取り付けられたベース20の取付面と垂直以外の角度で交差する関係を有していてもよい。この場合にも、取付面同士が平行である場合に比べれば、検出部40の変形が変形部30に伝わり難くなる。同様に、ガイド板53やカバー61、台座14aが取り付けられたベース20の取付面も、変形部30が取り付けられたベース20の取付面と垂直以外の角度で交差する関係を有していてもよい。
【0052】
また、検出部40が取り付けられたベース20の壁部は、変形部30が取り付けられたベース20の壁部と垂直以外の角度で交差する関係を有していてもよい。この場合にも、壁部同士が平行である場合に比べれば、検出部40の変形が変形部30に伝わり難くなる。なお、検出部40が取り付けられたベース20の取付面と、変形部30が取り付けられたベース20の取付面とは、同一の壁部に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…巻取ユニット(糸巻取装置)、5…ゲート式テンサ(テンション付与部)、6…テンションセンサ(テンション測定装置)、13…巻取部、14a…台座、20…ベース、21…側壁部(第1壁部)、21a…側面(第1取付面)、21b…上端面(第3取付面)、21c…前端面(第4取付面)、26…横壁部(第2壁部)、26a…上面(第2取付面)、26b…下面(第5取付面)、30…変形部、31…ロードセル部、31a…前端部(一端部)、31b…後端部(他端部)、34…ロッド部、34a…前端部(一端部)、34b…後端部(他端部)、40…検出部、41…ケーシング、42,54,56,62…ボルト(固定具)、43…回路基板、53…ガイド板、61…カバー、Y…糸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸道に沿って走行する糸のテンションを測定するテンション測定装置であって、
ベースと、
前記ベースに取り付けられ、前記糸の接触によって変形させられる変形部と、
前記変形部の変形方向と交差する関係を有する方向が固定方向となるように前記ベースに取り付けられ、前記変形部の変形に基づいて前記テンションを電気信号として検出する検出部と、を備えることを特徴とするテンション測定装置。
【請求項2】
前記変形部は、前記変形部の前記変形方向と略垂直に交差する関係を有する方向に形成された前記ベースの第1取付面に取り付けられており、
前記検出部は、前記第1取付面と交差する関係を有する前記ベースの第2取付面に固定具によって取り付けられており、
前記固定具による前記固定方向は、前記糸が前記変形部に接触する方向と略垂直に交差する関係を有することを特徴とする請求項1記載のテンション測定装置。
【請求項3】
前記第2取付面は、前記第1取付面と略垂直に交差する関係を有し、
前記固定具による前記固定方向は、前記第2取付面と略垂直に交差する関係を有する方向であることを特徴とする請求項2記載のテンション測定装置。
【請求項4】
前記ベースは、
前記第1取付面が設けられた第1壁部と、
前記第2取付面が設けられ、前記第1壁部と交差する関係を有する第2壁部と、を有することを特徴とする請求項2又は3記載のテンション測定装置。
【請求項5】
前記第2壁部は、前記第1壁部と略垂直に交差する関係を有することを特徴とする請求項4記載のテンション測定装置。
【請求項6】
前記変形部は、
前記第1取付面に取り付けられた一端部を有するロードセル部と、
前記糸を支持する一端部、及び前記ロードセル部の他端部に接続された他端部を有するロッド部と、を有することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項記載のテンション測定装置。
【請求項7】
前記検出部は、
前記第2取付面に取り付けられたケーシングと、
前記ケーシングに収容され、前記電気信号を処理する回路基板と、を有することを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項記載のテンション測定装置。
【請求項8】
前記第1取付面と交差する関係を有する前記ベースの第3取付面に取り付けられ、前記糸道に前記糸を案内するガイド板を更に備えることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項記載のテンション測定装置。
【請求項9】
前記第1取付面と交差する関係を有する前記ベースの第4取付面に取り付けられ、前記変形部を覆うカバーを更に備えることを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項記載のテンション測定装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載のテンション測定装置と、
前記糸を巻き取る巻取部と、を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項11】
前記テンション測定装置において、前記変形部が、前記ベースの第1取付面に取り付けられており、前記検出部が、前記第1取付面と交差する関係を有する前記ベースの第2取付面に取り付けられている場合には、
前記第1取付面と交差する関係を有する前記ベースの第5取付面に取り付けられ、前記テンション測定装置を支持する台座を更に備えることを特徴とする請求項10記載の糸巻取装置。
【請求項12】
前記糸道に沿って前記テンション測定装置の上流側に配置され、前記糸に所定テンションを付与するテンション付与部を更に備えることを特徴とする請求項10又は11記載の糸巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−68483(P2013−68483A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206483(P2011−206483)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】